JP5137125B2 - 集積化可能な非可逆回路素子 - Google Patents
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Description
従来のアイソレータ/サーキュレータでは、良好な非可逆動作特性を得るために、フェライトを伝送線路と接地面で挟んだ構造をしており、一般にフェライトの表面に伝送線路を形成している。特許文献1が開示するマイクロ波集積回路アイソレータはフェライト円板をセラミック基板内に埋設し、それらの表裏面にわたってマイクロストリップ導体と接地導体とを形成している。
特許文献3には、マイクロストリップ線路上にフェライト磁性体を載置させた非可逆回路素子が記載されている。しかしながら、特許文献3には、金属キャップ、及び、誘電体基板の裏面側の無導体部については記載も示唆もされていない。
本発明は上記問題点を解決し、回路基板上の、他の電子素子を配置する面に形成することができる、集積化可能な非可逆回路素子(アイソレータ/サーキュレータ)を提供することを目的とする。
表面にY字型の中心接合部を有するマイクロストリップ線路と、裏面に接地導体と、が設けられた誘電体基板と、
前記誘電体基板の表面側に設けられ、少なくとも前記中心接合部を覆う金属キャップと、
を有する非可逆回路素子であって、
前記マイクロストリップ線路上の信号伝送方向を非可逆的に設定するジャイロ磁気領域を、前記金属キャップと前記マイクロスリップ線路とで囲われた領域に発生させるジャイロ磁気領域発生部材をさらに有し、
前記ジャイロ磁気領域発生部材は、平板状誘電体と平板状フェライトとからなり、前記マイクロストリップ線路上に前記平板状誘電体を積層し、前記平板状誘電体上に前記平板状フェライトを積層した構造であり、
前記誘電体基板の裏面に設けられた接地導体は、前記誘電体基板の表面の前記金属キャップで覆われた領域に対向する部分の少なくとも一部に無導体部が設けられている、ことを特徴とする非可逆回路素子。
前記ジャイロ磁気領域発生部材は、さらに積層配設された平板状永久磁石を有する。
前記金属キャップと前記誘電体基板の接地導体とは電気的に接続されている。
前記金属キャップは、軟磁性材料からなる。
前記マイクロストリップ線路上に前記平板状誘電体を積層し、前記平板状誘電体の上に前記平板状フェライトを積層し、前記平板状フェライトの上に前記平板状永久磁石を積層するのが重要である。なお、平板状永久磁石は無くても良い。
平板状永久磁石を用いない場合には、前記平板状フェライトは硬磁性フェライトであることが好ましい。
更に、前記金属キャップは、マイクロストリップ線路に対向する縁部に切り込みを有することが好ましい。
特に、誘電体基板の表面にY字型のマイクロストリップ線路を形成し、その表面にジャイロ磁気領域となる平板状誘電体と平板状フェライトと金属キャップを設置することで、非可逆回路素子を極めて小型化できる。
さらに、誘電体基板の裏面に接地導体が欠失した無導体部を設けることで、非可逆的伝送特性を得るための電磁波の電場と磁場を、入力側伝送領域からジャイロ磁気領域に、さらにジャイロ磁気領域から出力側伝送領域に効率的に誘導することができる。
同様に、ジャイロ磁気領域の金属キャップと、誘電体基板の裏面に存在する接地導体を電気的に接続することや、ジャイロ磁気領域において平板状永久磁石を配設することもまた効率的な非可逆的伝送に資するものである。
<実施形態1>
図1は、本発明の実施形態1による非可逆回路素子の構造の一例を示す図である。図1(a)は非可逆回路素子の、上面からの透視図であり、図1(b)は図1(a)の一点鎖線ACBに沿った断面図である。本実施形態の非可逆回路素子は、誘電体基板2の第一の基板面(表面)にマイクロストリップ線路1を形成し、第二の基板面(裏面)に接地導体6を形成している。誘電体基板2表面の中心接合部8の上側に平板状誘電体5と、平板状フェライト4とを配置する。さらに、中心接合部8と平板状誘電体5と平板状フェライト4とを覆うように金属キャップ3を配置する。誘電体基板2の第二の基板面には接地導体6が形成されているが、中心接合部8と対向する部分の少なくとも一部が、接地導体6に覆われていない(欠失した)無導体部9を有する構造となっている。
図4は本発明の実施形態2の非可逆回路素子の構造を示す図である。図4(a)は本実施形態の非可逆回路素子の斜視図、図4(b)は構造を表す図である。図4に示す非可逆回路素子200は、中心接合部8を含むマイクロストリップ線路1、誘電体基板2、金属キャップ3、平板状フェライト4、平板状誘電体5、接地導体6、永久磁石7から構成される。実施形態1との違いは、平板状フェライト4に磁場を印加するための永久磁石7を配置していることである。平板状フェライト4がYIGフェライトのような軟磁性フェライトである場合、非可逆回路素子として動作させるには、平板状フェライト4の板面に対して実質的に垂直に磁場を印加する必要がある。図4に示す非可逆回路素子200では、平板状誘電体5、平板状フェライト4、磁場を平板状フェライト4に印加するための永久磁石7を金属キャップ3が覆う構造となっている。永久磁石7は、最大エネルギー積の大きなSmCo系材料やNdFeB系の材料が好ましいが、硬磁性フェライトを用いることも可能である。
非可逆回路素子の構造を、実施形態2のようにすることで、ジャイロ磁気領域12を、他の電子素子などを取り付ける基板面と同じ面に配置することができるため、他の電子素子との集積化が可能となり、さらに、すでに開発されている高効率のYIGフェライトを使用することができる。
図5は本発明の実施形態3の非可逆回路素子の構造を示す図である。図5(a)は本実施形態の非可逆回路素子の斜視図、図5(b)は構造を表す図である。非可逆回路素子300は、マイクロストリップ線路1、誘電体基板2、金属キャップ3、平板状フェライト4、平板状誘電体5、接地導体6、永久磁石7から構成される。マイクロストリップ線路1の中心接合部8に対向する接地導体6が形成されている基板面の一部には無導体部9を設ける。非可逆回路素子300では、平板状誘電体5、平板状フェライト4、バイアス磁場を平板状フェライト4に印加するための永久磁石7を金属キャップ3が覆う構造となっている。平板状フェライト4の直径は無導体部9の直径とほぼ等しく、平板状誘電体5の直径は、平板状フェライト4の直径よりも大きく、金属キャップ3の内径とほぼ等しい。
勿論、これらの大小は逆であってもよい。
非可逆回路素子の構造を、実施形態3のようにすることで、ジャイロ磁気領域12を、他の電子素子などを取り付ける基板面と同じ面に配置することができるため、他の電子素子との集積化が可能となり、さらに、すでに開発されている高効率のYIGフェライトを使用することができる。また、電磁波の電場と磁場を、伝送領域からジャイロ磁気領域、さらにジャイロ磁気領域から伝送領域へと伝搬する際の、電磁波の電場と磁場の分布の転換をより効率的に行うことができる。
図6は、本発明の実施形態4の非可逆回路素子の構造を示す図である。図6(a)は非可逆回路素子400の、上面からの透視図であり、図6(b)は図6(a)の断面図である。本実施形態の非可逆回路素子400は、誘電体基板2の第一の基板面(表面)に中心接合部8を含むマイクロストリップ線路1を形成し、第二の基板面(裏面)に接地導体6を形成している。誘電体基板2表面の中心接合部8の上側に平板状誘電体5と、平板状フェライト4とを配置する。さらに、中心接合部8と平板状誘電体5と平板状フェライト4とを覆うように金属キャップ3を配置する。誘電体基板2の第二の基板面は接地導体6が形成されているが、中心接合部8と対向する部分の少なくとも一部が、接地導体6に覆われていない無導体部9を有する構造となっている。平板状フェライト4の直径は無導体部9の直径と等しく、平板状誘電体5の直径は、金属キャップ3の外径と等しい。伝送領域のマイクロストリップ線路1と、ジャイロ磁気領域のマイクロストリップ線路1の幅が異なるのは、電磁波を効率よく伝送するためにインピーダンス整合をしているためである。
誘電体基板2:厚さ0.1mm、誘電率20.0のセラミック基板
平板状誘電体5:厚さ0.1mm、誘電率20.0のセラミックス
平板状フェライト4(YIGフェライト単結晶体):4πMs=850G、ΔH=2 Oe、厚み0.1mm
金属キャップ3:厚さ0.1mmの鉄
マイクロストリップ線路1および接地導体6:銅
とし、非可逆回路素子400の非可逆伝送特性を有限要素法により計算した結果を図7に示す。Port1から非可逆回路素子400に入射する電磁波の電力をP1、Port1から非可逆回路素子400に入射した電磁波のうち、反射してPort1に戻る電磁波の電力をP’、Port1から非可逆回路素子400に入射した電磁波のうち、Port2に伝送される電磁波の電力をP2、さらに、Port1から非可逆回路素子400に入射した電磁波のうち、Port3に伝送される電磁波の電力をP3とすると、挿入損失、アイソレーション、反射損失は,それぞれ(1)式、(2)式、(3)式で表わされる。
(反射損失)=10log(P1’/P1) (1)
(挿入損失)=10log(P2/P1) (2)
(アイソレーション)=10log(P3/P1) (3)
非可逆回路素子としては、挿入損失は絶対値が小さく、反射損失およびアイソレーションは絶対値が大きいことが好ましい。
図6に示す実施形態4の構造では、図7に示すように、1.97GHz付近で挿入損失0.77dB、アイソレーション16.75dBという良好な伝送特性の結果が得られた。
Claims (5)
- 表面にY字型の中心接合部を有するマイクロストリップ線路と、裏面に接地導体とが設けられた誘電体基板と、前記誘電体基板の表面側に設けられ、少なくとも前記中心接合部を覆う金属キャップとを有する非可逆回路素子であって、前記マイクロストリップ線路上の信号伝送方向を非可逆的に設定するジャイロ磁気領域を、前記金属キャップと前記マイクロストリップ線路とで囲われた領域に発生させるジャイロ磁気領域発生部材をさらに有し、前記ジャイロ磁気領域発生部材は、平板状誘電体と平板状フェライトからなり、前記マイクロストリップ線路上に前記平板状誘電体を積層し、前記平板状誘電体の上に前記平板状フェライトを積層した構造であり、前記誘電体基板の裏面に設けられた接地導体は、前記誘電体基板の表面の前記金属キャップで覆われた領域に対向する部分の少なくとも一部に無導体部が設けられていることを特徴とする非可逆回路素子。
- 前記ジャイロ磁気領域発生部材は、さらに積層配設された平板状永久磁石を有する、ことを特徴とする請求項1記載の非可逆回路素子。
- 前記金属キャップと前記誘電体基板の接地導体とは電気的に接続されている、ことを特徴とする請求項1又は2記載の非可逆回路素子。
- 前記金属キャップは、軟磁性材料からなる、ことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の非可逆回路素子。
- 前記金属キャップは、マイクロストリップ線路に対向する縁部に切り込みを有する、ことを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の非可逆回路素子。
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