以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mは、図10に示すように、インストルメントパネル(以下「インパネ」と省略する)1の上面2の内部に配置されるトップマウントタイプとされている。助手席用エアバッグ装置Mは、図1に示すように、折り畳まれたエアバッグ15と、エアバッグ15に膨張用ガスを供給するインフレーター8と、エアバッグ15及びインフレーター8を収納保持する収納部位としてのケース6と、エアバッグ15をケース6に取り付けるためのリテーナ11と、折り畳まれたエアバッグ15の上方を覆うエアバッグカバー10と、折り畳まれたエアバッグ15の周囲を覆うカバー布34と、を備えて構成されている。
なお、本明細書での上下、前後、及び、左右の方向は、特に断らない限り、車両の上下、前後、及び、左右の方向に一致するものである。
エアバッグカバー10は、合成樹脂製のインパネ1と一体的に形成されて、エアバッグ15の展開膨張時に、前後二枚の扉部10a,10bをエアバッグ15に押させて開かせ、ケース6の上端側に形成される突出用開口6cを開口させるように、構成されている。また、エアバッグカバー10における扉部10a,10bの周囲には、ケース6に連結される連結壁部10cが、形成されている。
インフレーター8は、複数のガス吐出口8bを有した略円柱状の本体部8aと、インフレーター8をケース6に取り付けるためのフランジ部8cと、を備えて構成されている。
収納部位としてのケース6は、上端側に長方形状の開口を有した板金製の略直方体形状に形成され、インフレーター8を下方から挿入させて取り付ける略長方形板状の底壁部6aと、底壁部6aの外周縁から上方に延びてエアバッグカバー10の連結壁部10cを係止する周壁部6bと、を備えて構成されている。ケース6には、底壁部6aの部位に、車両のボディ側に連結される図示しないブラケットが、配設されている。
なお、エアバッグ15とインフレーター8とは、エアバッグ15内に配設される円環状のリテーナ11のボルト11aを、エアバッグ15、ケース6の底壁部6a、及び、インフレーター8のフランジ部8c、を貫通して、ナット12止めさせることにより、ケース6に取り付けられている。
エアバッグ15は、図10に示すように、膨張完了時に、インパネ1の上面2とインパネ1上方のウィンドシールド4との間を塞ぐように配置可能な袋状とされている。具体的には、エアバッグ15は、図2,3に示すように、膨張完了時の形状を、前端側を頂部とした略四角錐形状とされるもので、膨張完了時に、乗員側となる後端側において略上下方向に沿って配置される乗員側壁部22と、乗員側壁部22の外周縁から車両前方側に延びるとともに前端側にかけて収束される先細り形状(実施形態の場合、略円錐形状)の周壁部16と、を備えている。周壁部16は、上下両側で略左右方向に沿って配置される上側壁部16a,下側壁部16bと、左右両側で略前後方向に沿って配置される左側壁部16c,右側壁部16dと、から構成されている。
膨張完了時のエアバッグ15の前端付近となる下側壁部16bの前端近傍における左右の中央となる位置には、エアバッグ15の内部に膨張用ガスを流入させるように円形に開口されて、周縁17をケース6の底壁部6aに取り付けられるガス流入口18が、形成されている。ガス流入口18の周縁17には、リテーナ11のボルト11aを挿通させて、ガス流入口18の周縁17をケース6の底壁部6aに取り付けるための複数の取付孔19が、形成されている。また、エアバッグ15における左側壁部16cと右側壁部16dとの領域には、余剰の膨張用ガスを排気可能なベントホール20が、形成されている(図2,3参照)。
また、実施形態の場合、エアバッグ15の内部には、図3に示すように、ガス流入口18を覆って、ガス流入口18から流入する膨張用ガスGの流れを制御する整流布24が、配設されている。整流布24は、ガス流入口18の上方を覆うとともに、前後方向の両端側を開口させた略筒形状とされるもので、ガス流入口18から流入した膨張用ガスGを、前後両側に整流する構成とされている。すなわち、実施形態のエアバッグ15では、ガス流入口18から流入した膨張用ガスGは、整流布24の前後の開口24a,24bから、前後方向側に向かうように整流されて、エアバッグ15内に流入することとなる(図3参照)。この整流布24は、図4に示すような整流布素材31から、構成されている。整流布素材31は、ガス流入口18の周縁17に連結される連結部31aと、連結部31aの左右両側から延びる本体部31b,31bと、を備える構成とされている。
エアバッグ15は、所定形状の基布の周縁相互を結合させて構成されるもので、実施形態の場合、図4に示すように、第1パネル部27と、第2パネル部28と、の2枚の基布から、構成されている。また、エアバッグ15には、ガス流入口18の周縁17を補強する補強布30も、配設されている(図3参照)。なお、エアバッグ15を構成する第1パネル部27,第2パネル部28,補強布30、及び、整流布24を構成する整流布素材31は、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる可撓性を有した織布から形成されている。第1パネル部27は、図4に示すように、略正六角形状の2つの布材(上側部27a及び下側部27b)を連結させた形状として、中央付近の左右両縁を凹ませた略瓢箪形に形成されている。この第1パネル部27は、エアバッグ15における周壁部16の領域を、構成するもので、詳細には、上側部27aが、周壁部16における上側壁部16aの全域と、左側壁部16c,右側壁部16dの上半分の領域と、を構成し、下側部27bが、周壁部16における下側壁部16bの全域と、左側壁部16c,右側壁部16dの下半分の領域と、を構成している。第2パネル部28は、略正六角形に近似した略円形状とされるもので、エアバッグ15における乗員側壁部22の領域を構成している。そして、エアバッグ15は、整流布素材31の連結部31aを、予め補強布30を縫着させておいた第1パネル部27のガス流入口18の周縁17に縫着させ、本体部31b,31bの縁部相互を縫着させて整流布24を形成した後、第1パネル部27及び第2パネル部28の周縁相互を、縫合して、製造されている。
カバー布34は、膨張初期のエアバッグ15の左右方向の中央付近に配置されるように構成されるとともに、折り畳まれたエアバッグ15の周囲を覆うように配置されて、エアバッグ15とともにケース6内に収納されている。カバー布34は、折り畳まれたエアバッグ15とともにケース6内に収納された状態での上端34a側を自由端として、下端34b側をエアバッグ15に連結されるとともに、エアバッグ15の膨張初期において、インパネ1に接近して位置する近接物(幼児等の近接小柄乗員)との間に介在されるように構成されている。具体的には、カバー布34は、エアバッグ15と別体とされて、左右方向の幅寸法L1(図5参照)を、エアバッグ15をケース6内に収納可能に折り畳んで構成される折り完了体の左右方向の幅寸法L2(図9のC参照)と略同一として、膨張完了時のエアバッグ15の左右の幅寸法より小さく設定される帯状の布材から構成されるもので、下端34b側に設けられてエアバッグ15に連結される連結部35と、連結部35における車両搭載時の後縁側から延びるように構成されて長手方向を前後方向に略沿わせた帯状のカバー本体部36と、を備える構成とされ、このカバー本体部36における連結部35から離れた先端36aが、カバー布34の上端34aであって、自由端とされている。
連結部35には、インフレーター8の本体部8aを挿通可能な挿通孔35aと、挿通孔35aの周囲に形成されてリテーナ11のボルト11aを挿通可能な貫通孔35bと、が、形成されており、連結部35は、エアバッグ15におけるガス流入口18の周縁17と、ケース6の底壁部6aと、の間に介在された状態で、エアバッグ15をケース6に連結させるリテーナ11を利用して、エアバッグ15に連結されている。
カバー本体部36は、実施形態の場合、車両搭載時において、ケース6に収納可能に縮めるように折り畳まれた前後縮小折りエアバッグ48の周囲を、後方側から、上方を経て、前方側にかけて覆うように、配設されている。このカバー本体部36(カバー布34における上端34a側の部位)は、エアバッグ15の展開膨張時に、先端36a側の部位を、エアバッグ15とともにケース6の突出用開口6c(インパネ1における開口面1a)から突出して、膨張初期において、エアバッグ15の後方側を覆うように、配置されることとなる(図11参照)。そして、このカバー本体部36において、ケース6の突出用開口6c(インパネ1における開口面1a)から突出する先端36a側には、貫通孔37が、形成されている。この貫通孔37は、カバー本体部36を略長方形状に切り欠いて形成されるもので、エアバッグ15の膨張初期に、インパネ1に接近して位置する近接物と接触する領域に、形成されて、近接物が、この貫通孔37の部位で、直接エアバッグ15と接触可能なように、構成されている。実施形態の場合、貫通孔37は、左右方向の中心を、カバー本体部36の幅方向(左右方向)の中心と一致させるように、形成されている。
具体的には、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、近接物として、幼児等の近接小柄乗員NPを想定しており、カバー布34に設けられた貫通孔37は、エアバッグ15の展開膨張時におけるエアバッグカバー10が開いて形成されたインパネ1の開口面1aから、前後の中心までの距離L3(図11のA参照)を、130〜180mm(望ましくは、140〜160mm)の範囲内に設定されて、エアバッグ15の膨張初期に、図11のAに示すごとく、インパネ1におけるエアバッグカバー10の後方の領域に顔面NFを接触させ、開いた扉部10bに近接して頭部NHを配置させるように位置している近接小柄乗員NPの頭部NHと接触する領域に、形成されている。また、貫通孔37は、前後方向側の開口幅寸法W1(図5参照)を、50〜120mm(望ましくは、50〜100mm)の範囲内に設定することが好ましい。開口幅寸法W1が50mm未満では、膨張するエアバッグ15と近接小柄乗員NPの頭部NHとが接触する領域が小さく、近接小柄乗員NPとエアバッグ15を構成する基布(乗員側壁部22)との間に生じる摩擦力が小さすぎて、展開するエアバッグ15が近接小柄乗員NPに対して上方へすり抜ける虞れがあり、逆に、開口幅寸法W1が120mmを超えると、膨張するエアバッグ15に伴って後方側へ移動してくるカバー本体部36の貫通孔37に、近接小柄乗員NPの頭部NHがはまり込んでしまう虞れが生じるためである。実施形態の場合、貫通孔37は、エアバッグカバー10が開いて形成されたインパネ1の開口面1aから前後の中心までの距離L3を150mmに設定されて、前後方向側の開口幅寸法W1と左右方向側の開口幅寸法W2(図5参照)とを、共に100mmに設定されている。
また、実施形態のカバー布34では、カバー本体部36における貫通孔37の周縁の部位(貫通孔37の前方に位置する前側カバー部36b,貫通孔37の後方に位置する後側カバー部36c,貫通孔37の左方に位置する左側カバー部36d,貫通孔37の右方に位置する右側カバー部36e)が、エアバッグ15の膨張初期において、近接小柄乗員NPの頭部NHが、貫通孔37の部位でエアバッグ15と直接接触した際に、展開するエアバッグ15と近接小柄乗員NPの頭部NHとの間に介在されることとなる。実施形態の場合、カバー布34は、左右方向の幅寸法L1を、200mmに設定されており、貫通孔37の左右両縁側に位置する左側カバー部36d,右側カバー部36eは、共に、左右方向の幅寸法L4(図5参照)を50mmに設定されている。
貫通孔37の後方に位置する後側カバー部36cは、前後方向側の幅寸法L5を、100〜180mm(望ましくは、110〜170mm)の範囲内に設定されることが好ましい。この後側カバー部36cは、貫通孔37の部位で近接小柄乗員NPの頭部NHとエアバッグ15が接触し、エアバッグ15が上方へのすり抜けを抑えられた状態で、近接小柄乗員NPを後方移動させつつ、下方に向かって展開する際に、近接小柄乗員NPとエアバッグ15との間に介在される部位であり、前後方向側の幅寸法L5が100mm未満では、近接小柄乗員NPを覆う領域が小さく、下方に向かって展開するエアバッグ15が近接小柄乗員NPに対して滑りがたく、近接小柄乗員NPを、不必要に後方に押圧する虞れが生じ、逆に、前後方向側の幅寸法L5が、180mmを超えても、長すぎて、近接小柄乗員NPを覆う領域が必要以上に大きくなるのみであって、材料の無駄となるためである。なお、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mにおいて、エアバッグ15が、通常着座位置に着座した乗員を保護するように膨張を完了させた状態では、カバー布34は、インパネ1の上面2とエアバッグ15における周壁部16との間に介在されて、インパネ1の上面2に沿うように、自由端(上端34a)側を後下方に向けて配置されることとなる(図10参照)。
なお、実施形態では、カバー布34は、図5に示すように、連結部35の前端側で連結させたような形状のカバー布用基布39を、連結部35の前端側で折り返して、カバー本体部36の先端36a側の領域を除いて、2枚積層させ、カバー本体部36の中間部位に配置される縁部を他方に縫着させた2枚重ね状として、構成されている(図2,3参照)。このカバー布用基布39は、実施形態の場合、エアバッグ15と同様に、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる可撓性を有した織布から形成されている。
次に、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mの車両への搭載について説明すると、まず、各取付孔19からボルト11aを突出させるように、内部にリテーナ11を配設させた状態で、エアバッグ15を折り畳む。具体的には、エアバッグ15は、予備折り工程を経た後、前後方向の幅寸法を縮めるような前後縮小折り工程と、左右方向の幅寸法を縮めるような左右縮小折り工程と、を経て折り畳まれることとなる。
予備折り工程では、図6,7に示すような予備折りエアバッグ42を形成することとなる。この予備折りエアバッグ42は、周壁部16の領域に、前後方向あるいは左右方向に沿う谷折りの折目を付けて、周壁部16を折り畳み、乗員側壁部22の略全域を、平らに展開させるようにして、ガス流入口18を中心とした左右対称形として形成されている。また、予備折りエアバッグ42では、乗員側壁部22における上縁22aの近傍部位が、ガス流入口18と上下方向で対向されるように、ガス流入口18の上方位置に配置されている(図7参照)。
その後、予備折りエアバッグ42において、ガス流入口18の周縁17から突出しているリテーナ11のボルト11aを、カバー布34における連結部35の貫通孔35bに挿通させ、予備折りエアバッグ42の外周側にカバー布34を配置させた後、予備折りエアバッグ42を、前後縮小折り工程と左右縮小折り工程とにより折り畳む。
前後縮小折り工程では、予備折りエアバッグ42は、前後方向の幅寸法を縮めるように折り畳まれることとなる。具体的には、図8のA,Bに示すように、まず、ガス流入口18の後方に位置する後側部位43を、後端43a側から、周壁部16側に向かって巻くようにロール折りし、このロール折り部位を、ガス流入口18上に載せるように折り返して、後側折畳部44を形成する。次いで、図8のB,図9のAに示すように、予備折りエアバッグ42においてガス流入口18の前方に位置する前側部位45を、前端45aをガス流入口18側に接近させるように左右方向に沿った折目で折り返して、前側折畳部46を形成し、この前側折畳部46を、後側折畳部44とガス流入口18との間に介在させるようにガス流入口18上に載せれば、前後縮小折りが完了し、前後方向の幅寸法をケース6に収納可能な寸法に縮められた前後縮小折りエアバッグ48を形成することができる。その後、図9のA,Bに示すように、この前後縮小折りエアバッグ48の周囲に、カバー布34を配置させる。カバー布34は、前後縮小折りエアバッグ48における左右方向の中央の部位の周囲を、後方側から、後側折畳部44の上方を経て、前方側にかけて覆うように、配設されるもので、カバー本体部36の先端36a(カバー布34における自由端となる上端34a)側の部位を、後側折畳部44と前側折畳部46との間に介在されている(図1及び図9のB参照)。このとき、貫通孔37は、後側折畳部44の上面側に、配置されることとなる。
その後、左右縮小折り工程において、前後縮小折りエアバッグ48を、左右方向の幅寸法を縮めるように、折り畳む。具体的には、図9のB,Cに示すように、前後縮小折りエアバッグ48において、ガス流入口18より左側に位置する左側部位49と、ガス流入口18より右側に位置する右側部位51と、を、それぞれ、前後方向に折った折目をつけて、カバー布34の左右両縁付近で折り返しつつ、端部49a,51aをガス流入口18に接近させて、ガス流入口18上に載せるように蛇腹折りして、左側折畳部50,右側折畳部52を形成すれば、左右縮小折りが完成し、左右方向の幅寸法をケース6に収納可能な寸法に縮められた折り完了体54を形成することができる。この折り完了体54では、前後縮小折りエアバッグ48における左側部位49,右側部位51を折り畳んで形成される左側折畳部50,右側折畳部52は、カバー布34の上方に載置されることとなる(図9のC参照)。
そして、エアバッグ15の折り畳みが完了したならば、折り完了体54の周囲を、折り崩れ防止用の破断可能なラッピングシート13(図1参照)によりくるむ。このとき、リテーナ11のボルト11aは、ラッピングシート13から突出させておく。その後、各ボルト11aをケース6の底壁部6aに挿通させつつ、折り完了体54をケース6の底壁部6aに載置させる。次いで、インフレーター8の本体部8aを、底壁部6aの下方から、ケース6内に挿入させるとともに、底壁部6aから突出している各ボルト11aを、インフレーター8のフランジ部8cに挿通させ、インフレーター8のフランジ部8cから突出した各ボルト11aにナット12を締結させれば、ケース6の底壁部6aに対して、折り畳まれたエアバッグ15とインフレーター8とを取り付けることができ、このとき、同時に、カバー布34の連結部35も、エアバッグ15側に連結されることとなる。
その後、車両に搭載されたインパネ1におけるエアバッグカバー10の連結壁部10cに、ケース6の周壁部6bを連結させ、ケース6に設けられた図示しない所定のブラケットを、車両のボディ側の部材に固定させれば、助手席用エアバッグ装置Mを車両に搭載することができる。
助手席用エアバッグ装置Mの車両への搭載後、車両の前面衝突時、インフレーター8のガス吐出口8bから膨張用ガスが吐出されれば、エアバッグ15が、内部に膨張用ガスを流入させて膨張し、ラッピングシート13を破断するとともに、エアバッグカバー10の扉部10a,10bを、図10に示すように押して開かせることとなる。そして、エアバッグ15は、扉部10a,10bが開いて形成されたケース6の突出用開口6c(インパネ1における開口面1a)から、上方へ突出するとともに、インパネ1の上面2と、インパネ1の上方のウィンドシールド4と、の間を塞ぐように、車両の後方側へ展開膨張して、図10に示すように、膨張を完了させることとなる。
実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、エアバッグ15は、乗員側壁部22の略全域を平らに展開した状態で上縁22a側をガス流入口18の上方に載せるように折り畳んだ予備折りエアバッグ42を、前後方向の幅寸法と左右方向の幅寸法を縮小するように折り畳んで、ケース6内に収納されている。そのため、エアバッグ15は、膨張初期に、前側折畳部46,左側折畳部50,右側折畳部52の折りを解消しつつ、ケース6の突出用開口6c(インパネ1における開口面1a)から突出する際に、乗員側壁部22の上縁22a側の部位を、強く後方に押し出すように展開することとなって、乗員側壁部22が上下方向に略沿うように配置された後、後側折畳部44が、ロール折りを解くように下方に向かって展開することとなる(図10の二点鎖線参照)。そして、このロール折りを解消しつつ、周壁部16の部位が折りを解消されることから、エアバッグ15は、乗員側壁部22を上下方向に広く展開させた状態で、全体を後方移動させるようにして、膨張を完了させることとなる。そのため、通常着座位置に着座している乗員を保護する場合、エアバッグ15は、図10に示すように、乗員を保護する乗員側壁部22を、上下左右に広く展開させた状態で、後方移動するように、展開膨張することから、エアバッグ15により、乗員を部分的に不必要に押圧することを抑制できる。
また、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、折り畳まれたエアバッグ15の周囲に、カバー布34が配置されており、エアバッグ15が、膨張用ガスの流入時に、収納部位としてのケース6から上方へ突出する際に、エアバッグ15に伴って、折り畳まれたエアバッグ15の周囲を覆っているカバー布34も、ケース6から上方へ突出することとなる。そして、このカバー布34は、インパネ1におけるケース6近傍に近接物が接触している場合、エアバッグの膨張初期において、この近接物とエアバッグ15との間に、介在されるように、エアバッグ15の後方側を覆うこととなる。具体的には、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、近接物として、幼児等の近接小柄乗員NPを想定しており、さらに詳細には、インパネ1におけるエアバッグカバー10の後方の領域に顔面NFを接触させ、開いた扉部10bに近接して頭部NHを配置させるように位置している近接小柄乗員NPの頭部NHを覆い可能に、カバー布34を設定している。
そして、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、カバー布34において、近接小柄乗員NPの頭部NHと直接接触する領域に、貫通孔37が形成されていることから、エアバッグ15の展開膨張時に、インパネ1におけるエアバッグカバー10の後方の領域に顔面NFを接触させ、開いた扉部10bに近接して頭部NHを配置させるように位置している近接小柄乗員NPの頭部NHが、膨張初期のエアバッグ15と接触すれば、近接小柄乗員NPの頭部NHは、この貫通孔37の部位で、展開するエアバッグ15と直接接触することとなる(図11のA参照)。そのため、貫通孔37のエリアを介在させて近接小柄乗員NPの頭部NHとエアバッグ15の乗員側壁部22との間に生じる摩擦力により、エアバッグ15の全体が、近接小柄乗員NPの頭部NHに対して滑って、上方へすり抜けるように移動することを防止できる。また、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、エアバッグ15と近接小柄乗員NPの頭部NHとは、カバー布34に設けられた貫通孔37の部位のみで接触するものであり、貫通孔37の左右両側の部位では、エアバッグ15と近接小柄乗員NPの頭部NHとの間に貫通孔37の左右両縁側の部位である左側カバー部36d,右側カバー部36eが介在されることから、この部位では、近接小柄乗員NPの頭部NHとエアバッグ15の乗員側壁部22との間に摩擦力が発生せず、ある程度、エアバッグ15を上方側若しくは後方側へ滑らせることができて、膨張初期のエアバッグ15の全体が、近接小柄乗員NPの頭部NHを大きく後方へ押圧することも、防止できる。すなわち、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、展開するエアバッグ15が、上方へすり抜けるように近接小柄乗員NPの頭部NHに対して過度に移動することを抑え、かつ、近接小柄乗員NPの頭部NHを過度に後方に押圧することを抑えられた状態で、近接小柄乗員NPの頭部NHを後方移動させるように押圧しつつ、上下左右に広がるように展開することとなって、近接小柄乗員NPの頭部NHの前面側を広く覆うように展開することとなる。
実施形態の助手席用エアバッグ装置Mの場合、詳細に説明すれば、エアバッグ15は、膨張初期において、左側折畳部50,右側折畳部52の折りを解消し、かつ前側折畳部46の折りを解消するようにして、ケース6の突出用開口6c(インパネ1における開口面1a)から突出することとなり、インパネ1におけるエアバッグカバー10の後方の領域に顔面NFを接触させ、開いた扉部10bに近接して頭部NHを配置させるように位置している近接小柄乗員NPの頭部NHが、図11のAに示すように、額付近の部位NHfを、貫通孔37の部位で、上縁22a側を後方に強く押し出された状態の乗員側壁部22の左右方向の中央22b付近と直接接触させることとなる。このとき、貫通孔37の左右両縁側の領域では、左側カバー部36d,右側カバー部36eが、乗員側壁部22と近接小柄乗員NPの頭部NHとの間に、介在されることとなる。そして、左側カバー部36d,右側カバー部36eの領域では、貫通孔37の部位で近接小柄乗員NPの頭部NHと接触している乗員側壁部22の中央22bの左右両側の部位22cが、近接小柄乗員NPの頭部NHに対して、後方(上方)側へ滑るような態様となる(図11のAの二点鎖線参照)。そのため、実施形態では、このエアバッグ15が、近接小柄乗員NPの頭部NHに対して上方へすり抜けるように、過度に上方移動することを抑えられ、かつ、近接小柄乗員NPの頭部NHを部分的に強く後方へ押圧することを抑えられた状態で、近接小柄乗員NPの頭部NHを後方移動させることとなる。
その後、図11のBに示すように、後側折畳部44が、ロール折りを解消するようにして、後方移動した近接小柄乗員NPとインパネ1との間の隙間に進入するように、下方に向かって展開することとなる。このとき、カバー布34も、後側折畳部44の下方移動に伴って、下方移動することとなるが、近接小柄乗員NPの頭部NHと乗員側壁部22との間には、カバー布34における貫通孔37の後方に配置される後側カバー部36cが介在されることとなる。そのため、近接小柄乗員NPの頭部NHが、下方に向かって展開する乗員側壁部22と直接接触することを抑えられて、エアバッグ15が、近接小柄乗員NPの頭部NHを後方に向かって不必要に押圧することを抑えて、後側折畳部44の折りを解くように、円滑に下方へ展開されることとなる。そして、乗員側壁部22が、図12のAに示すように、カバー布34を近接小柄乗員NPの頭部NHとの間に介在させるようにして、近接小柄乗員NPの頭部NHの前方に、上下左右に広く展開されることとなる。その後、この上下左右に広く展開している乗員側壁部22を、近接小柄乗員NPを部分的に強く押圧することを抑えて、後方に向かって突出させつつ、エアバッグ15が膨張を完了させることとなる(図12のB参照)。
そのため、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、上方のウィンドシールド4との間に大きな隙間を設けるようにして、インパネ1におけるエアバッグ15の収納部位(ケース6)近傍に、頭部NHを接触させるように近接小柄乗員NPが位置している状態でも、エアバッグ15が、近接小柄乗員NPの頭部NHを適度な押圧力で後方へ移動させつつ、近接小柄乗員NPの前面側に、近接小柄乗員NP側への部分的な突出を抑えて上下左右に広く展開した状態で配置させることができる。
したがって、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、インパネ1におけるエアバッグ15の収納部位(ケース6)近傍に接触している近接小柄乗員NP等の近接物を、下方に向かって不必要に押圧することを抑えることができる。
また、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、カバー布34は、エアバッグ15の膨張初期に左右方向の中央付近に配設され、さらに、貫通孔37が、カバー布34の左右方向の中央付近で、全周を囲まれるように部分的に切り欠かれて配設されている。そのため、エアバッグ15の展開膨張時、カバー布34の貫通孔37が、エアバッグ15(乗員側壁部22)の左右方向の中央付近に安定して配置され、かつ、口開きするような開口形状の変形も抑制されることから、エアバッグ毎に、エアバッグ15が、安定して近接小柄乗員NPに対して摩擦力を作用させることができる。ちなみに、貫通孔37の周縁の一部に開放されたエリアがある場合、貫通孔37は、展開膨張するエアバッグ15に伴う移動時に、口開きするように変形して、開口形状を安定させることができない。その結果、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、カバー布34の奏する作用・効果を、エアバッグ15毎に安定させることができる。
そして、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、カバー布34を、二枚のカバー布用基布39を積層させて構成していることから、カバー布34の強度を向上させることができ、エアバッグ15の展開膨張時に、カバー布34が、ケース6の突出用開口6cから後方に向かって突出するエアバッグ15の押圧力を受けつつエアバッグ15とともに後方移動する際に、カバー布34における貫通孔37の周縁、特に、貫通孔37の左右両縁側に配置される左側カバー部36d,右側カバー部36eの部位に破れが生じて、左側カバー部36d,右側カバー部36eが破断することを、防止できる。そのため、貫通孔37の周縁の部位の破損を抑えて、貫通孔37の開口形状を安定させることができる。
なお、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、近接物として、幼児等の近接小柄乗員NPを想定しており、インパネ1におけるエアバッグカバー10の後方の領域に顔面NFを接触させ、後方側の扉部10bの開き時の軌跡上に頭部NHを配置させるように位置している近接小柄乗員NPの頭部NHを覆い可能に、カバー布34における貫通孔37を、エアバッグカバー10が開いて形成されたインパネ1の開口面1aから前後の中心までの距離L3を130〜180mmの範囲内に設定し、前後方向側の開口幅寸法W1を、50〜120mmの範囲内に設定したものを使用しているが、この貫通孔の配置位置や大きさは、想定する近接物に応じて適宜変更可能である。勿論、近接物は、幼児等の近接小柄乗員に限られるものではなく、例えば、ヘッドレストを前方側(インパネ側)に向けるようにして助手席に設定されているチャイルドシートのヘッドレストも、近接物となりうる。
また、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、カバー布34に設けられた貫通孔37の開口形状を略長方形状としているが、貫通孔の開口形状はこれに限られるものではなく、円形や略楕円形等としてもよい。