本発明は、密閉容器内に電動要素と、この電動要素にて駆動されると共に、複数の圧縮要素から構成される圧縮機構部とを収容して成る密閉式電動圧縮機に関するものである。
従来より密閉式電動圧縮機、例えば、ロータリコンプレッサでは、密閉容器内に電動要素と、この電動要素にて駆動される圧縮機構部とが収容されている。密閉容器は、本体を構成する筒体と、この筒体の一端開口を閉塞し、電動要素に給電するためのターミナルを備えたエンドキャップと、筒体の他方の開口を閉塞し、密閉容器の底部を構成するボトムとから成る。また、電動要素は、周知の如くステータと、このステータの内側で回転するロータとから構成されている。そして、ターミナル及び配線を介して電動要素に通電されると、圧縮機構部のシリンダ内に冷媒が吸入され、この冷媒はローラとベーンの動作により圧縮され、高温高圧の冷媒となり、密閉容器内に吐出される。その後、密閉容器内に吐出された高温高圧の冷媒は、該密閉容器に連通接続された冷媒配管からロータリコンプレッサの外部に吐出されていた(例えば、特許文献1参照)。
特許第3843917号公報
ところで、上記圧縮機構部が複数の圧縮要素から成る密閉式電動圧縮機では、密閉容器の電動要素側に配置された圧縮要素が密閉容器の筒体の中央部に近い位置となり、圧縮要素に冷媒を導入するための冷媒導入管、或いは、圧縮要素から冷媒を吐出するための冷媒吐出管などの冷媒配管を接続するためのスリーブが密閉容器の中央に近づくこととなる。
このスリーブは、密閉容器に溶接にて固定されるが、密閉容器は内部の圧力が高圧となると膨らむため、特に、密閉容器の中央部が最も膨らむため、上述の中央に近い位置の圧縮要素に対応するスリーブの固定箇所に損傷が発生し易くなる。
更に、従来の密閉式電動圧縮機では、電動要素のステータが密閉容器の筒体の内周面に焼き嵌めにて固定されていたが、上述のような密閉容器の変形(膨張)により、ステータの固定が緩んで当該ステータがずれたり、落下するといった問題も生じていた。
そこで、本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、複数の圧縮要素から圧縮機構部が構成された密閉式電動圧縮機において、スリーブの損傷とステータの落下を抑制して、密閉式電動圧縮機の信頼性の改善を図ることを目的とする。
本発明の密閉式電動圧縮機は、密閉容器内に電動要素と、この電動要素にて駆動される圧縮機構部とを収容し、圧縮機構部を、複数の圧縮要素にて構成して成るものであって、密閉容器は、本体を構成する筒体と、この筒体に取り付けられたエンドキャップとを備え、密閉容器の筒体には、圧縮機構部の各圧縮要素にそれぞれ冷媒を導入するための冷媒導入管、及び/又は、各圧縮要素からそれぞれ冷媒を吐出するための冷媒吐出管が接続される複数のスリーブが溶接固定されており、電動要素のステータは、複数枚の電磁鋼板を積層し、カシメ固定して成り、密閉容器内側に焼き嵌めにて保持され、且つ、このステータの下端部は密閉容器の筒体の軸方向における中央部に対応しており、当該ステータの下端部は、密閉容器の筒体の中央部に溶接にて固定されていることを特徴とする。
請求項2の発明の密閉式電動圧縮機は、上記発明において各圧縮要素により圧縮される冷媒として二酸化炭素を使用することを特徴とする。
本発明によれば、密閉容器内に電動要素と、この電動要素にて駆動される圧縮機構部とを収容し、圧縮機構部を、複数の圧縮要素にて構成して成る密閉式電動圧縮機において、密閉容器の筒体に溶接固定され、圧縮機構部の各圧縮要素にそれぞれ冷媒を導入するための冷媒導入管、及び/又は、各圧縮要素からそれぞれ冷媒を吐出するための冷媒吐出管が接続される複数のスリーブを備え、電動要素のステータは、密閉容器内側に焼き嵌めにて保持され、且つ、このステータは、密閉容器に溶接にて固定されているので、密閉容器の膨らみを抑えることができる。これにより、スリーブに発生する損傷とステータのずれや落下を効果的に防止、若しくは、抑制することができるようになる。
また、密閉容器は、本体を構成する筒体と、この筒体に取り付けられたエンドキャップとを備え、ステータは複数枚の電磁鋼板を積層し、カシメ固定して成り、その下端部は密閉容器の筒体の軸方向における中央部に対応しており、この筒体の中央部に溶接にて固定されているので、密閉容器の膨らみを最も効果的に抑制することができる。これにより、特に、複数有る圧縮要素のうちの密閉容器中央に近い位置の圧縮要素に対するスリーブの損傷を防止、或いは、抑制することができるようになると共に、ステータ全体の落下及び電磁鋼板の落下を最も効果的に防止することができる。
特に、上記発明に記載の発明において各圧縮要素により圧縮される冷媒として請求項2の発明の如く圧縮により著しく高い圧力となる二酸化炭素を使用した場合には、効果的となる。これにより、二酸化炭素冷媒を使用した密閉式電動圧縮機の信頼性の向上を図ることができるようになる。
本発明は、複数の圧縮要素から成る圧縮機構部を備えた密閉式電動圧縮機において、密閉容器の変形によって、冷媒導入管や冷媒吐出管が接続されるスリーブに損傷と、密閉容器に焼き嵌めにて保持されたステータがずれたり落下する不都合を極力抑制するために成されたものである。このようなスリーブの損傷とステータのずれや落下を抑制するという目的を、ステータを密閉容器内側に焼き嵌めにて保持し、且つ、密閉容器に溶接にて固定することにより実現した。以下、図面に基づき本発明の実施形態を詳述する。
図1は本発明の一実施例の密閉式電動圧縮機の縦断側面図である。本実施例に係る密閉式電動圧縮機は、密閉容器2内に駆動要素としての電動要素3と、この電動要素3にて駆動される複数の回転圧縮要素(圧縮要素)から構成された回転圧縮機構部6(圧縮機構部)を収容して成るロータリコンプレッサ1である。本実施例のロータリコンプレッサ1は、回転圧縮機構部6が第1の回転圧縮要素4及び第2の回転圧縮要素5から成り、外部からの低圧冷媒を第1の回転圧縮要素4で圧縮し、密閉容器2内に吐出した後、第2の回転圧縮要素5に吸い込んで圧縮する内部中間圧型多段(2段)圧縮式のロータリコンプレッサである。具体的に、図1に示す本実施例のロータリコンプレッサ1は、鋼板からなる縦型円筒状の密閉容器2内に、この密閉容器2の内部空間の上側に電動要素3が設けられ、この電動要素3の下側に当該電動要素3の回転軸7により駆動される回転圧縮機構部6(第1及び第2の回転圧縮要素4、5)が配設されている。そして、本実施例のロータリコンプレッサ1には冷媒として二酸化炭素 (CO2)が使用される。
前記密閉容器2は、本体を構成する円筒状を呈した筒体2Aと、この筒体2Aの電動要素3が配置される側となる一端(上端)の開口を閉塞する略椀状のエンドキャップ(蓋体)2Bと、該筒体2Aの他端(下端)の開口を閉塞する同じく略椀状のボトム(底体)2Cとで構成されている。また、エンドキャップ2Bの上面には円形の取付孔2Dが形成され、この取付孔2Dには電動要素3に電力を供給するためのターミナル(配線を省略)8が取り付けられている。また、本実施例のボトム2Cは、密閉容器2の底部に位置し、オイル溜めとして使用される。即ち、ボトム2Cの内部にはオイルが貯留され、そこから給油手段としてのオイルポンプ9によりオイルが汲み上げられ、回転軸7内の図示しないオイル孔を介して各摺動部等に供給可能に構成されている。
一方、前記電動要素3は、密閉容器2の筒体2Aの一端側の空間(上部空間)の内周面に沿って環状に固定されたステータ10と、このステータ10の内側に若干の間隔を設けて挿入設置されたロータ11とから構成されており、このロータ11は中心を通り鉛直方向に延びる回転軸7に固定されている。
上記ステータ10は、後述する複数枚の電磁鋼板(後述するステータ用鉄板15)を積層した積層体12から成り、この積層体12の歯部16(図1では図示されず)に直巻き(集中巻き)方式により巻装されたステータコイル13を有している。また、ロータ11もステータ10と同様に電磁鋼板の積層体14で構成されている。
他方、前記回転圧縮機構部6は、中間仕切板19を挟んで、2段目となる第2の回転圧縮要素5を密閉容器2内の電動要素3側、1段目となる第1の回転圧縮要素4を電動要素3とは反対側に配置されている。即ち、本実施例のロータリコンプレッサ1では、中間仕切板19を挟んで第1の回転圧縮要素4が下側、第2の回転圧縮要素5が上側に配置されている。当該第1及び第2の回転圧縮要素4、5は、シリンダ20、22と、電動要素3の回転軸7に形成された偏心部24、26に嵌合されて、各シリンダ20、22内で偏心回転するローラ28、30と、各ローラ28、30に当接して各シリンダ20、22内を低圧室側と高圧室側にそれぞれ区画するベーン(図示せず)と、各ベーンを常時ローラ28、30側に付勢するためのバネ部材としてのスプリング(図示せず)と、第1の回転圧縮要素4を構成するシリンダ22の一方(下側)の開口を閉塞すると共に、回転軸7の副軸受け34Aを有する下部支持部材34と、第2の回転圧縮要素5を構成するシリンダ20の一方(上側)の開口を閉塞すると共に、回転軸7の主軸受け32Aを有する上部支持部材32によって構成される。
従って、本実施例のロータリコンプレッサ1では、回転軸7は当該回転軸7の軸方向における略中央部を主軸受け32Aにより支持され、下方を副軸受け34Aにより支持されている。尚、上記偏心部24、26はそれぞれ180度の位相差を有して回転軸7に設けられている。
上部支持部材32及び下部支持部材34には、吸込ポート36、38を介してシリンダ20、22の内部とそれぞれ連通する吸込通路40、42と、上部支持部材32のシリンダ20とは反対側(上側)の面を凹陥させ、この凹陥部を上部カバー44にて閉塞することにより形成された吐出消音室50と、下部支持部材34のシリンダ22とは反対側(下側)の面を凹陥させ、この凹陥部を下部カバー46にて閉塞することにより形成された吐出消音室52とが設けられている。即ち、吐出消音室50は上部カバー44にて閉塞され、吐出消音室52は下部カバー46にて閉塞される。
上部カバー44は上部支持部材32の主軸受け32Aが貫通する孔が形成された略ドーナッツ状の円形鋼板から構成されており、周辺部が4本のボルト60により、上から上部支持部材32に固定されている。このボルト60の先端は下部支持部材34に螺合する。
同様に、下部カバー46もドーナッツ状の円形鋼板から構成されており、周辺部の4カ所をボルト65にて下から下部支持部材34に固定され、図示しない吐出ポートにて第1の回転圧縮要素4のシリンダ22内部と連通する吐出消音室52の下面開口部を閉塞する。このボルト60の先端は上部支持部材32に螺合する。
そして、第1の回転圧縮要素4の吐出消音室52と密閉容器2内とは連通路にて連通されている。この連通路は上部支持部材32、シリンダ20、22、中間仕切板19を貫通する図示しない孔であり、当該孔の一端が吐出消音室52の上面にて開口し、当該吐出消音室52内と連通すると共に、他端が上部支持部材32を貫通して密閉容器2内と連通している。係る構成により、第1の回転圧縮要素4で圧縮され吐出消音室52内に吐出された中間圧の冷媒が当該連通路を介して密閉容器2内に吐出されることとなる。
そして、本実施例のロータリコンプレッサ1では、冷媒として地球環境に優しい自然冷媒である前記二酸化炭素を使用するものとする。また、潤滑油としてのオイルは、例えば鉱物油(ミネラルオイル)、PAG(ポリアルキレングリコール)、アルキルベンゼン油、エーテル油、エステル油等該存のオイルが使用される。
また、密閉容器2の筒体2Aの側面には、上部支持部材32と下部支持部材34の吸込通路40、42、吐出消音室50、上部カバー44の上側(電動要素3の下端)に対応する位置に、スリーブ70、71、72及び73がそれぞれ溶接固定されている。スリーブ70とスリーブ71は上下に隣接すると共に、スリーブ72はスリーブ70の略対角線上にある。また、スリーブ73はスリーブ70と略90度ずれた位置にある。
そして、スリーブ70内には回転圧縮機構部6の第2の回転圧縮要素5のシリンダ20に冷媒ガスを導入するための冷媒導入管82の一端が挿入接続され、この冷媒導入管82の一端はシリンダ20の吸込通路40と連通する。冷媒導入管82は密閉容器2の上側を通過してスリーブ73に至り、他端はスリーブ73内に挿入接続されて密閉容器2内に連通する。
また、スリーブ71内には回転圧縮機構部6の第1の回転圧縮要素4のシリンダ22に冷媒ガスを導入するための冷媒導入管84の一端が挿入接続され、この冷媒導入管84の一端はシリンダ22の吸込通路42と連通する。また、スリーブ72内には第2の回転圧縮要素5から冷媒を吐出するための冷媒吐出管86が挿入接続され、この冷媒吐出管86の一端は吐出消音室50と連通する。
ここで、前述した電動要素4のステータ10について、図2及び図3を用いて詳細に説明する。図2は図1に示す本実施例のロータリコンプレッサ1のステータ10及び密閉容器2の縦断平面図、図3は図2に示すステータ10のA−A断面の一部を示す図である。ステータ10は、珪素鋼板などの電磁鋼板からなる複数枚のステータ用鉄板15から構成されている。具体的に、このステータ用鉄板15の内周には6個の歯部16が形成されており、これら歯部16の間に内方及び上下に開放したスロット17が6箇所形成されている。そして、ステータ用鉄板15は、複数枚積層され、各ステータ用鉄板15にそれぞれ4箇所設けられたカシメ部18が相互にカシメ固定されてステータ10が構成されている。
以上の構成で、次に本実施例のロータリコンプレッサ1の動作を説明する。ターミナル8及び図示されない配線を介して電動要素3のステータコイル13に通電されると、電動要素3が起動してロータ11が回転する。この回転により回転軸7と一体に設けた偏心部24、26に嵌合されたローラ28、30がシリンダ20、22内を偏心回転する。
これにより、冷媒導入管84及び下部支持部材34に形成された吸込通路42を経由して吸込ポート38からシリンダ22の低圧室側に吸入された低圧の冷媒ガスは、ローラ30と図示しないベーンの動作により圧縮されて中間圧となり、シリンダ22の高圧室側より図示しない吐出ポートを経て吐出消音室52内に吐出される。吐出消音室52に吐出された中間圧の冷媒ガスは、図示しない連通路を経て密閉容器2内に吐出される。これにより、密閉容器2内は中間圧となる。
そして、密閉容器2内の中間圧の冷媒ガスは、冷媒導入管82を通って、上部支持部材32に形成された吸込通路40を経由して吸込ポート36からシリンダ20の低圧室側に吸入される。吸込ポート36からシリンダ20の低圧室側に吸入された中間圧の冷媒ガスは、ローラ28と図示しないベーンの動作により2段目の圧縮が行われて高温高圧の冷媒ガスとなり、シリンダ20の高圧室側から図示しない吐出ポート内を通り上部支持部材32に形成された吐出消音室50内に吐出される。吐出消音室50に吐出された高温高圧の冷媒ガスは、該吐出消音室50内に連通された冷媒吐出管86からロータリコンプレッサ1の外部に吐出される。
ところで、本実施例の如き回転圧縮機構部が複数の圧縮要素(本実施例では第1の回転圧縮要素4と第2の回転圧縮要素5の2つの圧縮要素)から成る密閉式電動圧縮機では、密閉容器2の電動要素3側に位置する圧縮要素(本実施例では第2の回転圧縮要素5)が密閉容器2の筒体2Aの中央部の近い位置となる。従って、第2の回転圧縮要素5に冷媒を導入する冷媒導入管82を接続するためのスリーブ70及び第2の回転圧縮要素5から冷媒を吐出するための冷媒吐出管86を接続するためのスリーブ72が密閉容器2の中央に近づく。
この場合、前述の如くロータリコンプレッサ1の密閉容器2内には第1の回転圧縮要素4で圧縮された中間圧の冷媒ガスが吐出されるが、当該密閉容器2内に吐出されるガスの圧力により、密閉容器2が膨らむように変形する(膨張する)恐れがある。特に、ファンロックなどの異常時には冷媒の圧力が異常上昇し、密閉容器2内の圧力が密閉容器2の設計圧を超えて上昇する問題が生じていた。このように、密閉容器2内の圧力が異常に上昇し続けると、密閉容器2が圧力に耐えられなくなって大きく変形し(膨張し)、係る密閉容器2の変形により、当該密閉容器2に溶接固定されたスリーブに悪影響を来す恐れがあった。特に、密閉容器2の中央部が最も膨らむため、上述したように中央に近い位置の第2の回転圧縮要素5に対応するスリーブの固定箇所に損傷が発生し易かった。特に、本実施例のロータリコンプレッサ1の如く二酸化炭素冷媒を使用した場合、二酸化炭素冷媒は他の冷媒と比べて圧縮により極めて高い圧力となるため、係る圧力による密閉容器2の変形の問題がより深刻であった。
更に、従来よりロータリコンプレッサの密閉容器内に収容された電動要素は、当該密閉容器の筒体の内周面に焼き嵌めにて固定されていたため、係る密閉容器2の変形によりステータ10の固定が緩んで、ステータ10がずれたり、落下するといった問題も生じていた。
そこで、本発明のロータリコンプレッサ1では、電動要素3のステータ10を密閉容器2内側に焼き嵌めにて保持し、且つ、このステータ10を、密閉容器2に溶接にて固定するものとする。本実施例では、ステータ10を密閉容器2の本体を構成する筒体2Aの軸方向における中央部に溶接にて固定するものとする。この場合、本実施例のロータリコンプレッサ1は、図1に示すように筒体2Aの軸方向における中央部にステータ10の下端部が位置するよう配置されているため、当該ステータ10の下端部が密閉容器2の筒体2Aに溶接にて固定されることとなる。
ここで、ロータリコンプレッサ1の組み立て方法について説明する。先ず、筒体2Aに予め形成されたスリーブ70〜73を取り付けるための図示しない円形の孔内にスリーブ70〜73を順次挿入して、各スリーブ70〜73を筒体2Aに溶接(プロジェクション溶接)にて固定する。
このとき、スリーブ70〜73の溶接時の熱により筒体2Aが変形するため、筒体2Aの内面に器具を挿入して筒体2Aの内面を広げて筒体2A内の円形状及び所定の内径となるように再度筒体2Aを成型し、次に、筒体2Aの他端(下端)の開口部にボトム2Cを挿入し、筒体2Aとボトム2Cとを溶接固定する。
次に、電動要素3とこの電動要素3の回転軸7に回転圧縮機構部6を取り付けて予め一体に成型した電動要素3及び回転圧縮機構部6を密閉容器2内に挿入し、電動要素3のステータ10を密閉容器2の内側に焼き嵌めにて固定する。具体的には、筒体2Aの上下を反転して、即ち、ボトム2Cを上側とした状態で、該筒体2Aを加熱して膨張させ、予め組み立てられた上記電動要素3及び回転圧縮機構部6を該回転圧縮機構部6側から筒体2Aのボトム2Cとは反対側(後にエンドキャップ2Aが取り付けられる側)の開口に挿入し、当該筒体2A内の位置決めされた所定の位置に配置する。この状態で、加熱された筒体2Aが冷めて筒体2Aが縮むと、電動要素3のステータ10の外周面が筒体2Aの内周面に固着(焼き嵌め)される。これにより、スタータ10が密閉容器2内側(筒体2Aの内周面)に焼き嵌めにて保持される。
その後、筒体2Aの軸方向における中央部(即ち、本実施例ではステータ10の下端に対応する位置)に該筒体2Aの外周面側から内周面側に向かってドリルで孔90を形成し、該孔90からステータ10と筒体2Aとを溶接にて固定する。即ち、各孔90から溶接を行うことで、溶融した高温の溶接材と、当該孔90近傍のステータ用鉄板15、及び、孔90付近の筒体2Aとが溶けてこれらが一体化される。これにより、ステータ10と筒体2Aとが接合される。本実施例では図2に示すように筒体2Aのステータ10の下端に対応する位置に略120度の間隔を存して3箇所の孔90を形成し、各孔90を溶接してステータ10と筒体2Aとを接合するものとする。
また、本実施例では、図4に示す如きステータ10を構成するステータ用鉄板15のうち、最も回転圧縮機構部6側(下側)に配置されたステータ用鉄板15Aの他のステータ用鉄板15Bが積層されていない側となる回転圧縮機構部6側の面(底面)と、溶接部92の回転圧縮機構部6側となる一端(下端)とが一致するように孔90を形成し、溶接を行うものとする。尚、図1、図2及び図4において、溶接部92は、孔90に沿った形状で示しているが、実際の溶接部はステータ10のステータ用鉄板15と筒体2Aの一部とが溶けあって一体となり、これら全体が溶接部となる。
また、本実施例では、上述のようにステータ用鉄板15Aの底面と溶接部92部の一端(下端)とを位置させるものとしたが、これに限らず、例えば、図5に示すように溶接部92の一端(下端)がステータ用鉄板15Aの底面より上側となる位置に孔90を形成しても差し支えない。即ち、溶接部92の一端(下端)がステータ用鉄板15Aの底面より回転圧縮機構部6側となる位置に孔90を形成した場合、溶接時に溶接材がステータ用鉄板15Aの下側に流れ込み、密閉容器2内に垂れ落ちる不都合が生じる。
そこで、本発明は少なくとも係る溶接部92の回転圧縮機構部6側の一端(下端)がステータ10を構成する最も回転圧縮機構部6側(下側)のステータ用鉄板15Aの他のステータ用鉄板15Bが積層されていない側である回転圧縮機構部6側の面(底面)若しくは、該面より他のステータ用鉄板15Bが積層されている側(回転圧縮機構部6とは反対側、即ち、本実施例では上側)に孔90を形成して、溶接するものであれば、図4、或いは、図5に示す位置に限らず有効である。
一方、上述したようにステータ10の下端部を密閉容器2(筒体2A)に溶接にて固定した後、次に、筒体2Aのボトム2Cとは反対側の開口に予めターミナル8が取り付けられたエンドキャップ2Bを溶接する。これにより、密閉容器2が構成される。そして、当該密閉容器2内に窒素ガスを封入し、その状態で、各スリーブ70〜73内に前述した各冷媒配管(冷媒導入管82、冷媒導入管84及び冷媒吐出管86)を溶接する。このように、上述の如きエンドキャップ2Bを筒体2Aに取り付けて密閉容器2を完成させた状態で、密閉容器2内に窒素を置換して、各スリーブ70〜73内に各冷媒配管を溶接することで、溶接により各冷媒配管が酸化される不都合を防ぐことができる。
以上詳述したように、本発明のロータリコンプレッサ1によれば、ステータ10が密閉容器2内側に焼き嵌めにて保持され、且つ、このステータ10は、密閉容器2に溶接にて固定されているので、ステータ10のずれや落下を未然に解消することができる。また、係る溶接固定により、密閉容器2の変形を極力防ぐことができるようになる。即ち、密閉容器2内の圧力が異常上昇しても係るステータ10と密閉容器2(筒体2A)との溶接による固着状態が維持されれば、当該溶接部8における密閉容器2の変形(膨らみ)を抑えることができる。これにより、前述したスリーブの損傷、特に、密閉容器2の中央に近い位置の第2の回転圧縮要素5に対するスリーブ70、72に発生する損傷を効果的に防止、若しくは、抑制することができるようになる。
特に、密閉容器2が最も膨らみやすい密閉容器2の筒体2Aの軸方向における中央部にてステータ10を溶接固定することで、密閉容器2の膨らみを最も効果的に抑制することができるようになる。
また、本実施例の如くステータ10の下端部を、密閉容器2に溶接して固定することで、搬送時等に誤って回転圧縮機構部6側を下としてロータリコンプレッサ1を落下させた場合にも、ステータ用鉄板15が落下する不都合を確実に回避することができる。従って、本発明により密閉容器2の耐圧性の向上と、ロータリコンプレッサ1の信頼性の向上を図ることができる。
特に、他の冷媒と比べて圧縮により極めて高い圧力となる二酸化炭素冷媒を使用したロータリコンプレッサ1では、本発明は効果的である。これにより、二酸化炭素冷媒を用いたロータリコンプレッサ1の信頼性の向上を図ることができるようになる。
尚、上記実施例1では、密閉容器2内において、ステータ10を筒体2Aの軸方向における中央部に下端部が位置するように配置して、ステータ10の下端部を密閉容器2の筒体2Aに溶接にて固定するものとしたが、例えば、図6に示すようにステータ10を密閉容器2の筒体2Aに溶接固定しても良い。図6は、本参考例1の密閉式電動圧縮機の縦断側面図である。本参考例に係る密閉式電動圧縮機は、前記実施例1と同様に内部中間圧型多段(2段)圧縮式のロータリコンプレッサ1である。従って、本参考例では前記実施例1のロータリコンプレッサ1と異なる構成のみ説明する。尚、図6において、前記図1乃至図5と同一の符号が付されているものは、同様、或いは、類似の効果若しくは作用を奏するものとする。
本参考例のロータリコンプレッサ1は、ステータ10を筒体2Aの軸方向における中央部よりも回転圧縮機構部6とは反対側(即ち、ロータリコンプレッサ1の上側)の位置に溶接にて固定したものである。この場合、筒体2Aの軸方向における中央部よりも回転圧縮機構部側に当該筒体2Aの外周面側から内周面側に向かってドリルで孔95を形成し、該孔95からステータ10と筒体2Aとを溶接にて固定する。本参考例では筒体2Aの軸方向におけるステータ10の略中央部に対応する位置の筒体2Aに略120度の間隔を存して3箇所の孔95を形成し、各孔95からステータ10と筒体2Aとを溶接にて固定する。即ち、孔95から溶接を行うことで、溶融した高温の溶接材と、当該孔95近傍のステータ用鉄板15、及び、孔95付近の筒体2Aとが溶けてこれらが一体化される。これにより、ステータ10と筒体2Aとが接合される。また、当該ステータ10と密閉容器2の溶接は、前記実施例1で説明したステータ10の下端部と密閉容器2の溶接と同様の方法、及び、順序で行うものとする。尚、図6に示す溶接部96は、孔95に沿った形状で示しているが、実際の溶接部はステータ10のステータ用鉄板15と筒体2Aの一部とが溶けあって一体となり、これら全体が溶接部となる。
以上詳述した本参考例の場合にも、ステータ10が密閉容器2内側に焼き嵌めにて保持され、且つ、このステータ10は、密閉容器2に溶接にて固定されているので、ステータのずれや落下を未然に解消しながら、密閉容器2の変形を極力防ぐことができるようになる。
特に、本参考例では、ステータ10を筒体2Aの軸方向における中央部よりも回転圧縮機構部6とは反対側(即ち、ロータリコンプレッサ1の上側)の位置に溶接にて固定したので、ステータ10が筒体2Aの中央に対してスリーブ70及びスリーブ72の反対側となる位置で溶接にて固定されることとなるので、密閉容器2の中央に最も近い位置であって、筒体2Aの軸方向における中央部よりも回転圧縮機構部6側の筒体2Aに溶接固定された第2の回転圧縮要素5のスリーブ70、72とステータ10の溶接箇所とを充分に離すことができる。これにより、ステータ10を筒体2Aに溶接固定する際に、スリーブ70、72の溶接箇所に与える溶接の悪影響を抑制することができる。
次に、本発明の他の実施例の密閉式電動圧縮機について図7を用いて説明する。本実施例に係る密閉式電動圧縮機は、前記実施例1と同様に内部中間圧型多段(2段)圧縮式のロータリコンプレッサ1である。従って、本実施例では前記実施例1のロータリコンプレッサ1と異なる構成のみ説明する。尚、図7において、前記図1乃至図6と同一の符号が付されているものは、同様、或いは、類似の効果若しくは作用を奏するものとして説明を省略する。
本実施例のロータリコンプレッサ1は、前記実施例1のステータ10の下端部の溶接に加えて、ステータ10の上端部も密閉容器2に溶接にて固定したものである。本実施例では、図8に示すようにステータ10を構成するステータ用鉄板15のうち、最も回転圧縮機構部6とは反対側(上側)に配置されたステータ用鉄板15Cの他のステータ用鉄板15Bが積層されていない側となる回転圧縮機構部6とは反対側の面(上面)と、溶接部93の回転圧縮機構部6とは反対側となる一端(上端)が一致するように孔91を形成し、溶接を行うものとする。
この場合、ステータ10の上端に対応する位置となる筒体2Aに筒体2Aの外周面側から内周面側に向かってドリルで孔91を形成し、該孔91からステータ10と筒体2Aとを溶接にて固定する。本実施例では筒体2Aのステータ10の上端に対応する位置に略120度の間隔を存して3箇所の孔91を形成し、各孔91からステータ10と筒体2Aとを溶接にて固定する。即ち、孔91から溶接を行うことで、溶融した高温の溶接材と、当該孔91近傍のステータ用鉄板15、及び、孔91付近の筒体2Aとが溶けてこれらが一体化される。これにより、ステータ10と筒体2Aとが接合される。また、当該ステータ10の上端部と密閉容器2の溶接は、実施例1で説明したステータ10の下端部と密閉容器2の溶接と同時、若しくは、その直前、或いは、直後の何れかの順序で行うものとする。尚、図7及び図8において、溶接部92及び溶接部93は孔90、91に沿った形状で示しているが、実際の溶接部はステータ10のステータ用鉄板15と筒体2Aの一部とが溶けあって一体となり、これら全体が溶接部となる。
また、本実施例では、上述のようにステータ用鉄板15Cの上面と溶接部93部の一端(上端)とを位置させるものとしたが、これに限らず、例えば、図9に示すように溶接部93の一端(上端)がステータ用鉄板15Cの上面より下側となる位置に孔91を形成しても差し支えない。即ち、溶接部93の一端(上端)がステータ用鉄板15Cの上面より回転圧縮機構部6とは反対側となる位置に孔91を形成した場合、溶接時に溶接材がステータ用鉄板15Cの上側から密閉容器2内に流れ込む不都合が生じる。
そこで、本発明は少なくとも係る溶接部93の回転圧縮機構部6とは反対側の一端(上端)がステータ10を構成する最も回転圧縮機構部6とは反対側(上側)のステータ用鉄板15Cの他のステータ用鉄板15Bが積層されていない側である回転圧縮機構部6とは反対側の面(上面)若しくは、該面より他のステータ用鉄板15Bが積層されている側(回転圧縮機構部6側、即ち、本実施例では下側)に孔91を形成し、溶接するものであれば、図8、或いは、図9に示す位置に限らず有効である。
以上詳述したように、本実施例のロータリコンプレッサ1によれば、前記各実施例と同様にステータのずれや落下を未然に解消しながら、密閉容器2の変形を極力防ぐことができるようになる。
また、実施例1と同様に密閉容器2が最も膨らみやすい密閉容器2の筒体2Aの軸方向における中央部にてステータ10を溶接固定することで、密閉容器2の膨らみを最も効果的に抑制することができるようになる。更に、ステータ10の下端部を、密閉容器2に溶接して固定することで、搬送時等に誤って回転圧縮機構部6側を下としてロータリコンプレッサ1を落下させた場合にも、ステータ用鉄板15が落下する不都合を確実に回避することができる。
特に、本実施例のロータリコンプレッサ1によれば、前記実施例1のステータ10の下端部の溶接に加えて、ステータ10の上端部を、密閉容器2に溶接して固定することで、回転圧縮機構部6とは反対側を下としてロータリコンプレッサ1を落下させた場合においても、この状態で下側となるステータ用鉄板15が落下する不都合を解消することができる。
これらにより、複数枚のステータ用鉄板15を積層し、それらをカシメ固定して成るステータ10を備えた電動要素3を有するロータリコンプレッサ1おいて、ステータ用鉄板15が落下、或いは、ずれるなどの不都合を防ぐことが可能となる。即ち、誤ってロータリコンプレッサ1を落下させてしまった場合にもステータ10を構成するステータ用鉄板15がずれたり、落下すると言った不都合を防ぐことができるので、ロータリコンプレッサ1の信頼性の向上を図ることができるようになる。
尚、上記各実施例では本発明を内部中間圧型多段(2段)圧縮式ロータリコンプレッサ1に適用させるものとしたが、内部高圧型多段圧縮式ロータリコンプレッサ100に適用することも可能である。図10はこの場合の一例を示すロータリコンプレッサ100の縦断側面図である。尚、図10において図1乃至図9と同一の符号が付されているものは同様、或いは、類似の効果、或いは、作用を奏するものであるので、ここでは説明を省略する。
本実施例のロータリコンプレッサ100は、外部からの低圧冷媒を第1の回転圧縮要素4で圧縮した後、当該第1の回転圧縮要素4で圧縮された中間圧の冷媒を第2の回転圧縮要素5に吸い込んで圧縮し、密閉容器2内に吐出する内部高圧型多段(2段)圧縮式のロータリコンプレッサである。
即ち、本実施例のロータリコンプレッサ100は、第2の回転圧縮要素5の吐出消音室50と密閉容器2内とが連通路にて連通されている。この連通路は、上部カバー44を貫通する図示しない孔であり、この孔の一端が吐出消音室50の上面にて開口し、吐出消音室50内と連通すると共に、他端が上部カバー44の上面を貫通して密閉容器2内に開口し、当該密閉容器2内と連通している。係る構成により、第2の回転圧縮要素5で圧縮され吐出消音室50内に吐出された高温高圧の冷媒が当該連通路を介して密閉容器2内に吐出されることとなる。
また、密閉容器2の筒体2Aの側面には、上部支持部材32と下部支持部材34の吸込通路40、42、吐出消音室52、電動要素3の回転圧縮機構部6とは反対側(即ち、本実施例では電動要素3の上側)に対応する位置に、スリーブ70、71、75、76がそれぞれ溶接固定されている。スリーブ70とスリーブ71は上下に隣接すると共に、スリーブ75はスリーブ71の対角線上にある。
そして、スリーブ70内には前記各実施例と同様にシリンダ20に冷媒ガスを導入するための冷媒導入管82の一端が挿入接続され、この冷媒導入管82の一端はシリンダ20の吸込通路40と連通する。冷媒導入管82は密閉容器2の上側を通過してスリーブ75に至り、他端はスリーブ75内に挿入接続されて吐出消音室52内に連通する。
また、スリーブ71内には前記各実施例と同様にシリンダ22に冷媒ガスを導入するための冷媒導入管84の一端が挿入接続され、この冷媒導入管84の一端はシリンダ22の吸込通路42と連通する。また、スリーブ76内には冷媒吐出管86が挿入接続され、この冷媒吐出管86の一端は密閉容器2内に連通する。
そして、本実施例のロータリコンプレッサ100も、前記各実施例と同様に冷媒として地球環境に優しい自然冷媒である二酸化炭素を使用するものとする。また、潤滑油としてのオイルも同様に、例えば鉱物油(ミネラルオイル)、PAG(ポリアルキレングリコール)、アルキルベンゼン油、エーテル油、エステル油等該存のオイルが使用される。
以上の構成で、次に本実施例のロータリコンプレッサ100の動作を説明する。ターミナル8及び図示されない配線を介して電動要素3のステータコイル13に通電されると、電動要素3が起動してロータ11が回転する。この回転により回転軸7と一体に設けた偏心部24、26に嵌合されたローラ28、30がシリンダ20、22内を偏心回転する。
これにより、冷媒導入管84及び下部支持部材34に形成された吸込通路42を経由して吸込ポート38からシリンダ22の低圧室側に吸入された低圧の冷媒ガスは、ローラ30と図示しないベーンの動作により圧縮されて中間圧となり、シリンダ22の高圧室側より図示しない吐出ポートを経て吐出消音室52内に吐出される。
吐出消音室52に吐出された中間圧の冷媒ガスは、該吐出消音室52内に連通された冷媒導入管82を通って、上部支持部材32に形成された吸込通路40を経由して吸込ポート36からシリンダ20の低圧室側に吸入される。吸込ポート36からシリンダ20の低圧室側に吸入された中間圧の冷媒ガスは、ローラ28と図示しないベーンの動作により2段目の圧縮が行われて高温高圧の冷媒ガスとなり、シリンダ20の高圧室側から図示しない吐出ポート内を通り上部支持部材32に形成された吐出消音室50内に吐出される。
吐出消音室50に吐出された高温高圧の冷媒ガスは、そこから図示しない連通路を経て密閉容器2内に吐出される。これにより、密閉容器2内は高圧となる。そして、密閉容器2内に吐出された高温高圧の冷媒ガスは、電動要素3の隙間を通って密閉容器2の上方の空間に移動し、そこに接続された冷媒吐出管86からロータリコンプレッサ100の外部に吐出される。
上述したように、ロータリコンプレッサ100の密閉容器2内には第2の回転圧縮要素5で圧縮された高圧の冷媒ガスが吐出されることとなる。この場合、本実施例のロータリコンプレッサ100では第2の回転圧縮要素5で圧縮された高温高圧の二酸化炭素冷媒が密閉容器2内に吐出されるため、前記各実施例の如く中間圧の二酸化炭素冷媒が密閉容器2内に吐出される場合より、密閉容器2内の圧力が遙かに高くなり、前述した圧力による密閉容器2の変形の問題がより一層深刻であった。
そこで、本実施例のロータリコンプレッサ100では、前記実施例1のロータリコンプレッサ1と同様に、ステータ10を密閉容器2内側に焼き嵌めにて保持し、且つ、このステータ10の下端部を、密閉容器2に溶接にて固定するものとする。また、本実施例のロータリコンプレッサ100も同様にステータ10の下端部が筒体2Aの軸方向における中央部に対応して構成されているため、当該ステータ10の下端部を密閉容器2に溶接することで、ステータ10が筒体2Aの中央部に溶接にて固定されることとなる。
尚、ロータリコンプレッサ100の組み立て方法、及び、孔90の形成位置等は前記実施例1で詳述したものと同様であるため、ここでは説明を省略する。
このように、ステータ10が密閉容器2内側に焼き嵌めにて保持され、且つ、このステータ10は、密閉容器2に溶接にて固定されているので、ステータのずれや落下を未然に解消することができる。また、係る溶接固定により、密閉容器2の変形を極力抑えることができるようになる。即ち、密閉容器2内の圧力が異常上昇しても係るステータ10と密閉容器2(筒体2A)との溶接による固着状態が維持されれば、当該溶接部8における密閉容器2の変形(膨らみ)を抑制することができる。これにより、前述したスリーブの損傷、特に、密閉容器2の中央に近い位置の第2の回転圧縮要素5に対するスリーブ70に発生する損傷を効果的に防止、若しくは、抑制することができるようになる。
特に、密閉容器2が最も膨らみやすい密閉容器2の筒体2Aの軸方向における中央部にてステータ10を溶接固定することで、密閉容器2の膨らみを最も効果的に抑制することができるようになる。
また、本実施例の如くステータ10の下端部を、密閉容器2に溶接して固定することで、搬送時等に誤って回転圧縮機構部6側を下としてロータリコンプレッサ1を落下させた場合にも、ステータ用鉄板15が落下する不都合を確実に回避することができる。従って、本発明により密閉容器2の耐圧性の向上と、ロータリコンプレッサ1の信頼性の向上を図ることができる。
特に、他の冷媒と比べて圧縮により極めて高い圧力となる二酸化炭素冷媒を使用すると共に、本実施例の如く密閉容器2内が高温高圧となるロータリコンプレッサ100では、本発明は特に効果的である。これにより、密閉容器2内に高温高圧の二酸化炭素冷媒が吐出される内部高圧型ロータリコンプレッサ100の密閉容器2の膨らみ(変形)を抑制することができるようになり、密閉容器2に溶接固定されたスリーブ70、7175、76の破損やステータ10のずれや落下を極力防ぐことが可能となるので、当該ロータリコンプレッサ100の信頼性の向上を図ることができるようになる。
また、前記参考例1で詳述した構成、即ち、図11に示すようにステータ10を筒体2Aの軸方向における中央部よりも回転圧縮機構部6とは反対側(ロータリコンプレッサ1の上側)の位置に溶接にて固定する構成を、内部高圧型多段圧縮式のロータリコンプレッサ100に適用しても有効である。図11は、この場合のロータリコンプレッサ100の縦断側面図であり、当該図11において、前記図1乃至図10と同一の符号が付されているものは、同様、或いは、類似の効果若しくは作用を奏するものとする。また、本参考例2におけるロータリコンプレッサ100の動作は前記実施例3のロータリコンプレッサ100と同様であるため説明を省略する。
このように、ステータ10を筒体2Aの軸方向における中央部よりも回転圧縮機構部6とは反対側(即ち、ロータリコンプレッサ1の上側)の位置に溶接にて固定したので、ステータ10が筒体2Aの中央に対してスリーブ70の反対側となる位置で溶接にて固定されることとなるので、密閉容器2の中央に最も近い位置であって、筒体2Aの軸方向における中央部よりも回転圧縮機構部6側の筒体2Aに溶接固定された第2の回転圧縮要素5のスリーブ70とステータ10の溶接箇所とを充分に離すことができる。これにより、ステータ10を筒体2Aに溶接固定する際に、スリーブ70の溶接箇所に与える溶接の悪影響を抑制することができる。
次に、図12に示す密閉式電動圧縮機は本発明のもう一つの他の実施例であり、本実施例に係る密閉式電動圧縮機は、前記実施例4、5と同様に内部高圧型多段(2段)圧縮式のロータリコンプレッサ100である。従って、本実施例では前記実施例3及び参考例2のロータリコンプレッサ100と異なる構成のみ説明する。尚、図12において、前記図1乃至図11と同一の符号が付されているものは、同様、或いは、類似の効果若しくは作用を奏するものとして説明を省略する。
前記実施例3のロータリコンプレッサ100では、実施例1のコンプレッサ1と同様にステータ10を密閉容器2内側に焼き嵌めにて保持し、且つ、このステータ10の下端部を、密閉容器2に溶接にて固定するものとしたが、本実施例のロータリコンプレッサ100では、実施例2で示したロータリコンプレッサ1と同様に上記ステータ10の下端部の溶接に加えて、ステータ10の上端部も密閉容器2に溶接にて固定するものとする。この場合、孔91の形成位置等は前記実施例3で詳述したものと同様であるため、ここでは説明を省略する。
このように、本実施例のロータリコンプレッサ100によれば、前記実施例3のロータリコンプレッサ100の構成(即ち、ステータ10が密閉容器2内側に焼き嵌めにて保持され、且つ、このステータ10の下端部は、密閉容器2に溶接にて固定)に加えて、ステータ10の上端部も密閉容器2に溶接にて固定されているので、誤ってロータリコンプレッサ100を落下させてしまった場合にもステータ10を構成するステータ用鉄板15がずれたり、落下すると言った不都合を防ぐことができるので、ロータリコンプレッサ1の信頼性の向上を図ることができるようになる。
尚、上記各実施例では縦型の多段圧縮式のロータコンプレッサを例に挙げて説明したが、本発明の密閉式電動圧縮機は、各実施例のロータリコンプレッサに限定されるものでなく、少なくとも、複数の圧縮機構部が複数の圧縮要素にて構成される密閉式電動圧縮機であれば、有効である。例えば、複数の圧縮要素を有する単段、例えば、2気筒型のロータリコンプレッサや、3段以上の圧縮要素を有するロータリコンプレッサにも有効であると共に、更に、ロータリコンプレッサに限らず、スクロール等、他の形式の圧縮機であっても差し使えない。また、横型の密閉式電動圧縮機に本発明を適用することも可能である。
本発明の一実施例の密閉式電動圧縮機の縦断側面図である。(実施例1)
図1の密閉式電動圧縮機の電動要素のステータ及び密閉容器の横断平面図である。
図2のステータのA−A断面図である。
図1の密閉式電動圧縮機のステータと密閉容器の溶接部の拡大図である。
図1の密閉式電動圧縮機の他の例のステータと密閉容器の溶接部の拡大図である。
参考例の密閉式電動圧縮機の縦断側面図である。(参考例1)
本発明の他の実施例の密閉式電動圧縮機の縦断側面図である。(実施例2)
図7の密閉式電動圧縮機のステータの上端部と密閉容器の溶接部の拡大図である。
図7の密閉式電動圧縮機の他の例のステータの上端部と密閉容器の溶接部の拡大図である。
本発明の第3実施例の密閉式電動圧縮機の縦断側面図である。(実施例3)
もう一つの参考例の密閉式電動圧縮機の縦断側面図である。(参考例2)
本発明の第4実施例の密閉式電動圧縮機の縦断側面図である。(実施例4)
1 ロータリコンプレッサ(密閉式電動圧縮機)
2 密閉容器
2A 筒体
2B エンドキャップ
2C ボトム
3 電動要素
4 第1の回転圧縮要素
5 第2の回転圧縮要素
6 回転圧縮機構部
7 回転軸
8 ターミナル
9 オイルポンプ
10 ステータ
11 ロータ
12、14 積層体
13 ステータコイル
15 ステータ用鉄板(電磁鋼板)
16 歯部
17 スロット
18 カシメ部
19 中間仕切板
20、22 シリンダ
24、26 偏心部
28、30 ローラ
32 上部支持部材
32A 主軸受け
34 下部支持部材
34A 副軸受け
36、38 吸込ポート
40、42 吸込通路
44 上部カバー
46 下部カバー
50、52 吐出消音室
60、65 ボルト
70、71、72、73 スリーブ
82、84 冷媒導入管
86 冷媒吐出管
90、91、95 孔
92、93、96 溶接部