JP5130991B2 - コールドスプレー方法、コールドスプレー装置 - Google Patents
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Description
材料粉末としては、金属、合金、金属間化合物、セラミックスなどが用いられる。また、作動ガスとしては、窒素やアルゴンガス等の不活性ガス、若しくはヘリウムや水素などが用いられ、材料粉末の融点よりも低い温度に設定される。
このため、ランニングコスト低減のため作動ガス回収装置が必要となり、装置コストが上昇し、また装置が大型化しまうという問題があった。
第一の発明は、材料粉末をノズルから作動ガスとともに高速で噴射して基材上に堆積させるコールドスプレー方法において、前記材料粉末を加速させる作動ガスとして過熱蒸気を用いることを特徴とする。
また、前記基材のうちの少なくとも前記材料粉末の堆積領域を、前記過熱蒸気の温度よりも20℃以上の高温に加熱することを特徴とする。
また、前記基材のうちの少なくとも前記材料粉末の堆積領域の温度を、前記過熱蒸気の温度よりも20℃以上の高温に加熱する基材加熱部を備えることを特徴とする。
従来のプラズマ溶射法、フレーム溶射法、高速フレーム溶射法などに比べ、材料粉末をあまり加熱せずに固相状態のまま基材Bに付着させることができる。
これによって得た皮膜Rは、緻密で密度、熱伝導率・導電性が高い、密着性も良好である等の優れた性質を有する。特に、材料粉末Aを加熱して溶融させないので、酸化や熱変質が殆どないという優れた性質を有する。
また、過熱蒸気は、空気の4倍の熱伝導率があるため、効率よく粉末を加温できる。
更に、過熱蒸気は他のガスよりも基材を温めるという点においても優れているので、基材の温度上昇により粉末の付着効率が向上する。
図1は、本実施形態に係るコールドスプレー装置1の概略構成を示す模式図である。図2は、本実施形態に係るコールドスプレー部10の概略構成を示す模式図である。
コールドスプレー装置1は、コールドスプレー部10と、基材Bを載置すると共に基材Bを一定温度に温度制御する基材温度調整部50等から構成される。
なお、材料粉末Aの吹き付け速度(噴射速度)は、300〜800m/s程度である。
また、基材Bとしては、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄鋼材料、ニッケル基合金が用いられる。
例えば、材料粉末Aとしてアルミニウム又はアルミニウム合金、基材Bとして鉄鋼材料又はニッケル基合金を用いる場合には、過熱蒸気Hの温度K1は、200〜300℃であることが好ましい。
なお、アルミニウム合金の熱処理温度は、110〜180℃程度である。この温度で熱処理を続けると、材料設計上、意図した組織から過時効した組織となって、本来の機械的特性が損なわれる危険性がある。コールドスプレー法は、局所的かつ短時間の施工であるので、必ずしも致命的な過時効を及ぼすとは限らない。
しかし、過熱蒸気Hの温度K1(少なくとも基材Bの上昇温度)を110〜180℃の温度域より低温であることが好ましい。したがって、基材Bとしてアルミニウム又はアルミニウム合金を用いる場合には、過熱蒸気Hでの施工は不向きとなる。
ノズル11Nから材料粉末Aとともに噴射される過熱蒸気Hとしては、0.27〜0.69MPa程度の圧力であることが好ましい。特に、0.59〜0.69MPa程度が好適である。
過熱蒸気Hの温度K1は、過熱蒸気状態を維持可能な温度、すなわち図3において飽和蒸気曲線よりも高温側となる。スプレーガン11と基材Bは、大気圧下にあるので、過熱蒸気Hの温度K1は、終始、100℃以上に維持される。特に、結露の可能性が殆どなくなるように、200℃以上とすることが好ましい。
温度センサ15aと圧力センサ15bは、それぞれ一つずつで一組となって、複数個所に配置される。
また、結露センサ15cとしては、例えばACMセンサを用いることができる。ACMセンサは、2種の金属の電位差を利用して、結露状態を検出するものである。2種の金属間に絶縁体をおき、乾燥状態では電流は流れないが、結露した際には水が媒体となり2種の金属の有する電位差に起因した電流が流れる。この電流のON/OFFをモニタリングすることで、結露状態か否かを検出することが出来る。
なお、結露監視としては、温度を管理すればよい。必要であればノズル11Nや配管途中にヒータや誘導コイルなどを配置して加熱してもよい。過熱蒸気Hを加熱することで、飽和蒸気温度曲線温度以上の温度を維持することができる。これにより、コールドスプレー部10内での結露を防ぐことができる。特に、ノズル11Nでは圧力と温度が共に下がることが予測されるので、そこでの監視が重要である。
また、結露センサ15cの検出結果により、過熱蒸気Hに含まれる水分が結露していないかを直接的に判断することができる。
なお、状態センサ15としては、温度センサ15aと圧力センサ15bからなる場合であってもよいし、結露センサ15cのみからなる場合であってもよい。
すなわち、状態センサ15により過熱蒸気Hが飽和水蒸気となり更に液相状態となると、過熱蒸気発生器13や不図示のガス供給部等を制御して、発生させる過熱蒸気Hの温度K1と圧力を上昇させる。これにより、ノズル11Nから噴射される過熱蒸気Hが基材Bに到達する前に結露することを回避する。
加熱ヒータ54としては、高周波コイル(高周波誘導加熱装置)が好適に用いられる。交流電源に接続された加熱ヒータ54(高周波コイル)を作動させると、加熱プレート52の表面付近に高密度のうず電流が発生し、そのジュール熱で加熱プレート52が誘導加熱するようになっている。
これにより、基材Bが例えばセラミックスのように非導電性物質の場合であっても、加熱プレート52上に基材Bを載置することで、加熱プレート52からの熱伝導により加熱される。
したがって、温度制御部58は、温度センサ56の検出結果に基づいて加熱ヒータ54を制御することで、基材Bを所望の温度に加熱・維持することが可能となっている。
また、基材Bと過熱蒸気Hの温度差を大きくしないことが好ましいので、基材Bを過熱蒸気Hの温度と同程度以上、具体的には、基材Bを過熱蒸気Hの温度よりも少なくとも20以上、好ましくは100℃以上の高温となるように設定する。
これによって得た皮膜Rは、緻密で密度、熱伝導率・導電性が高い、密着性も良好である等の優れた性質を有する。特に、材料粉末Aを加熱して溶融させないので、酸化や熱変質が殆どないという優れた性質を有する。
また、材料粉末Aを加速させる作動ガスとして、過熱蒸気Hを用いているので、ランニングコストを極めて安価に抑えることができる。また、作動ガス回収装置などが不要となるので、装置の小型化・低価格化を図ることができる。
なお、過熱蒸気(空気)Hの分子量は、18g/molであり、材料粉末Aを十分に加速させることができる。
例えば、基材Bが導電体の場合には、加熱プレート52を用いなくてもよい。すなわち、加熱ヒータ54(高周波コイル)を作動させると、基材Bにうず電流が発生して、非接触かつ直接に基材Bを誘導加熱される。
つまり、基材Bのうち、すくなくとも材料粉末Aが堆積して皮膜Rが形成される領域(堆積領域)を加熱すればよい。
10…コールドスプレー部
11N…ノズル
13…過熱蒸気発生器
15…状態センサ
50…基材温度調整部(基材加熱部)
B…基材
A…材料粉体
R…皮膜
H…過熱蒸気(作動ガス)
K1…過熱蒸気の温度
K2…基材の加熱温度
Claims (6)
- 材料粉末をノズルから作動ガスとともに高速で噴射して基材上に堆積させるコールドスプレー方法において、
前記材料粉末を加速させる作動ガスとして過熱蒸気を用いることを特徴とするコールドスプレー方法。 - 前記過熱蒸気の温度は、200℃以上であることを特徴とする請求項1に記載のコールドスプレー方法。
- 前記基材のうちの少なくとも前記材料粉末の堆積領域を、前記過熱蒸気の温度よりも20℃以上の高温に加熱することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコールドスプレー方法。
- 材料粉末をノズルから作動ガスとともに高速で噴射して基材上に堆積させるコールドスプレー装置において、
前記材料粉末を加速させる作動ガスとしての過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生器を備えることを特徴とするコールドスプレー装置。 - 前記過熱蒸気と前記材料粉末とが噴射されるスプレー部に、前記過熱蒸気の状態を計測する状態センサを備えることを特徴とする請求項4に記載のコールドスプレー装置。
- 前記基材のうちの少なくとも前記材料粉末の堆積領域の温度を、前記過熱蒸気の温度よりも20℃以上の高温に加熱する基材加熱部を備えることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のコールドスプレー装置。
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