JP5130580B2 - 幹細胞における低線量被ばくの検出マーカー、及び該マーカーを用いる幹細胞での低線量被ばくレベルを推定又は検出する方法 - Google Patents

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Description

本発明は、幹細胞における低線量被ばくの検出マーカー、及び、該マーカーを用いる幹細胞での低線量被ばくレベルを推定又は検出する方法等に関する。
近年、医療分野において数mGy程度の低線量放射線の使用が増加するに伴い、その影響による白血病又はガンに対する懸念が高まってきている(非特許文献1)。医療診断で主に使用される放射線の線量はきわめて低く、例えば、CTスキャン用には0.07〜55.9mGy,X線用には0.05〜11.69mGyが使用されている(非特許文献2)。
しかしながら、これまで、放射線防護や放射線管理の立場からは、このような低線量放射線による影響は統計的現象であり、その生物、特に、人体・生命への影響又は分子的メカニズム直接評価する方法はなく、その評価が困難であった。そこで、主に原子爆弾による被爆被害を受けた生存者のような、高線量放射線被ばく集団からの疫学的研究(情報)に基づき、それらを外挿することによって、低線量放射線への被ばくによるリスクを予防的に安全側に評価することが行われてきた。このような外挿モデルは、細胞には、低線量放射線への被ばくの際にも、高線量放射線への被ばくと同様に放射線による損傷を修復する機能がある、との前提に立っている(非特許文献3)。
しかしながら、近年、低線量域の放射線において、高線量域の単なる延長上とは異なる生物学的な反応が指摘され始めている。例えば、極低線量域の放射線により引き起こされる分子的現象として、H2A変異体であるγ−H2AXのセリン(139)のリン酸化が解明され、これは細胞における最も深刻な損傷であるDNA二本鎖切断(DSB)への細胞の初期段階の応答の一つとして、信頼度の高い高感度のバイオマーカーになり得ることが示された(非特許文献4)。γ−H2AXの解析により、1〜2mGy程度の極めて低線量域の放射線でさえも、ヒト繊維芽細胞にDNA二本鎖切断を誘発し、しかも、細胞の修復機能はこれを適切に機能しないことが解明され、高線量放射線被ばくと低線量放射線被ばくとではその影響が異なることが示唆された。
これまでに、放射線による影響の分子論的解析のためにゲノム規模のアプローチが試みられ(18,19)、20以上もの報告がなされて来たが、その殆どは、高線量放射線に焦点を当てたものである。最近になって、DNAマイクロアレイを用いて、20mGyの低線量放射線への被ばくに対して幾つかの転写産物が減少することが同定された(非特許文献5)。更に、ヒト繊維芽細胞が10mGyの放射線に被ばくした際に、CXCケモカインをコードする遺伝子が発現したことが見出されている(非特許文献6)。
Brenner DJ, Doll R, Goodhead DT, et al. Cancer risks attributable to low doses of ionizing radiation: assessing what we really know. Proc Natl Acad Sci U S A 2003;100:13761-13766. Kawaura C, Aoyama T, Koyama S, et al. Organ and Effective Dose Evaluation in Diagnostic Radiology Based on in-Phantom Dose Measurements with Novel Photodiode-Dosemeters. Radiat Prot Dosimetry 2006;26:26. Clarke R. Control of low-level radiation exposure: time for a change? J Radiol Prot 1999;19:107-115. Rothkamm K, Lobrich M. Evidence for a lack of DNA double-strand break repair in human cells exposed to very low x-ray doses. Proc Natl Acad Sci U S A 2003;100:5057-5062. Amundson SA, Lee RA, Koch-Paiz CA, et al. Differential responses of stress genes to low dose-rate gamma irradiation. Mol Cancer Res 2003;1:445-452. Fujimori A, Okayasu R, Ishihara H, et al. Extremely low dose ionizing radiation up-regulates CXC chemokines in normal human fibroblasts. Cancer Res 2005;65:10159-10163.
既に記載したように、医療分野で使用される放射線は10mGy以下、数mGy程度のものが多く、従って、このような低線量域の放射線による影響に関する分子的メカニズムを解明することが望まれている。
そこで、本発明の目的は、数mGy程度の低線量での放射線による影響を判定又は検出する方法、低線量被ばくによる該細胞のアポトーシスへの誘導を予測する方法、低線量放射線誘導性の細胞アポトーシスを阻害する物質をスクリーニング誘導を予測する方法等を提供することである。
本発明者は、HiCEP法を用いることによって、幹細胞の一種であるマウス胚性幹細胞(ES細胞)において、低線量域の放射線照射の1時間後に、PPP1CA,BAD及びBCL−XL遺伝子の発現が有意に増加することを見出し、これら遺伝子が低線量被ばくの検出マーカーとなり得ることを確認して、本発明を完成させた。
本発明は、上記知見に基づきなされたものである。
即ち、本発明は第一の態様として、幹細胞におけるPPP1CA,BAD及び/又はBCL−XL遺伝子の発現量の増加を測定することにより、該幹細胞での低線量被ばくを判定又は検出する方法に係る。
本発明は第二の態様として、幹細胞におけるPPP1CA,BAD及び/又はBCL−XL遺伝子の発現量の増加を測定することにより、低線量被ばくによる該幹細胞のアポトーシスへの誘導を予測する方法に係る。
本発明は第三の態様として、(1)被検物質との共存下で幹細胞に低線量放射線を照射する工程、及び(2)該幹細胞におけるPPP1CA,BAD及び/又はBCL−XL遺伝子の発現の変動を測定する工程を含む、低線量放射線誘導性の細胞アポトーシスを阻害する物質をスクリーニングする方法に係る。
本発明は四の態様として、(1)低線量放射線を照射された幹細胞に被検物質を接触させる工程、及び(2)該幹細胞におけるPPP1CA,BAD及び/又はBCL−XL遺伝子の発現の変動を測定する工程を含む、低線量放射線誘導性の細胞アポトーシスを阻害する物質をスクリーニングする方法に係る。
本発明は五の態様として、低線量被ばく後の細胞におけるPPP1CA,BAD及び/又はBCL−XL遺伝子の発現量の増加を測定することにより、該細胞が幹細胞又は体細胞のいずれかであるかを判定又は検出する方法に係る。
PPP1CA,BAD及び/又はBCL−XL遺伝子の発現産物から成る、幹細胞における低線量被ばくの検出マーカー。
本発明は六の態様として、PPP1CA,BAD及び/又はBCL−XL遺伝子の発現産物から成る、幹細胞における低線量被ばくの検出マーカーに係る。
本発明方法により、幹細胞での低線量放射線被ばくを分子的メカニズムに基づき、判定又は検出することが出来る。これによって、生体の発生や細胞の分化など生命の根幹へ放射線の与える影響・リスクを評価することが可能となる。又、低線量被ばくによる幹細胞のアポトーシスへの誘導を予測したり、低線量放射線誘導性の細胞アポトーシスを阻害する物質をスクリーニングしたり、幹細胞と体細胞との応答性の相違に基づき、幹細胞を判定することが可能となる。
本発明方法において、低線量被ばくの原因となる、放射線の発生源、種類、被爆態様・経緯等に特に制限はない。因みに、放射線には、物質に電離作用を及ぼす電離放射線と非電離放射線があり、更に電離放射線は、エックス線及びガンマ線等の電磁放射線とα線及びβ線などの粒子線とに大別される。このうち、エックス線は1pm〜100nm程度の波長を有する電磁波であり、波長範囲はガンマ線と一部重なるが、加速した電子を原子にぶつけることにより人工的に得られる放射線である。エックス線の有する透過、吸収、散乱、電離、及び励起等多様な相互作用を利用して、医療分野におけるエックス線撮影及びエックス線CTに代表される各種診断、各種材料の非破壊検査、結晶構造解析等に利用されている。又、医療器具・装置、放射光利用施設、又は原子力発電所等の産業施設等における不慮の事故によって発生する恐れがある。
本発明方法の目的を考慮すると、エックス線のような電磁放射線、特に、上記のような各種医療器具・装置、及び産業施設における事故によって発生したエックス線を代表的な例として挙げることができる。
尚、放射線の吸収線量とは、実際に人体等の被ばく対象物質に吸収された放射線のエネルギーを示す物理量であり、電離放射線の照射による物質1kg当り1ジュールの吸収エネルギーを単位にとり、これを1グレイ(Gy)と呼ぶ。尚、かかる放射線の吸収線量は当業者に公知の任意の方法、例えば、放射線の測定にはGM管(ガイガーミューラー計数管)を被ばく対象物質の横に置くことにより測定することができる。因みに、GM管には円筒形の内部にヘリウム、アルゴン等の不活性ガスが詰められており、高電圧をかけておくと、放射線が入射するとGM管内部のある原子が励起され、壁材と反応して内部に電子を放出させ、電子は内部のガスに電離を引き起こす。電離によって生じたイオンがきっかけとなって管内に放電が起き、放電によるパルスを計測することにより測定が行われる。
例えば、本発明のスクリーニング方法において、幹細胞に対する低線量放射線の照射は、例えば、当業者に公知の適当な方法で実施することが出来る。例えば、エックス線を用いる場合には、放射線発生源として、PANTAC-320S型X線発生装置(島津)等の当業者に公知の任意の市販の装置を用いて、適当な培地で培養されている幹細胞に適当な量の放射線を照射することが出来る。
本発明方法において、「低線量」とは、既に記載したような医療分野、特に医療診断において主に用いられる範囲を意味し、通常、10mGy以下、例えば、1mGy〜10mGy、特に、5mGy〜10mGy程度の範囲を意味する。
「PPP1CA」遺伝子はタンパク質ホスファターゼ1の触媒サブユニットであるαアイソフォーム(PPP1CA)をコードする(10)。又、BAD(Bcl−antagonistof cell death)はミトコンドリア外膜にあるBCL−2を阻害し、その結果シトクロムCの放出を促進してアポトーシスを誘導する機能を有する。又、BCL−XLもミトコンドリア外膜に存在し、シトクロムCの放出を抑制することによってしてアポトーシスを阻害する機能を有する。尚、PPP1CAはBAD及びBCL−XLと結合して、BCL−XLの抗アポトーシス活性を中和することによって、アポトーシスを誘導することが知られている(13)。
本発明方法において、上記遺伝子の発現の変動(増加、減少)は、例えば、該遺伝子のmRNA又はその蛋白質の発現量に基づき、当業者に公知の任意の方法で半定量的又は定量的に測定することが出来る。又、発現変動の影響が十分に現れ、信頼度の高い結果を得るには、低線量放射線被ばく後の数時間後、例えば、約1〜3時間以内、特に、本発明方法の特異性を十分に発揮するには、出来るだけ短い時間の経過後、例えば、1時間程度の後に遺伝子の発現量の測定を行うことが好ましい。
尚、上記各遺伝子の塩基は公知である。例えば、PPP1CA遺伝子(Carninci,P. and Hayashizaki,Y., “High-efficiency full-length cDNA cloning”, Meth. Enzymol. 303, 19-44 (1999); Carninci,P., Shibata,Y., Hayatsu,N., Sugahara,Y., Shibata,K., Itoh,M., Konno,H., Okazaki,Y., Muramatsu,M. and Hayashizaki,Y., “Normalization and subtraction of cap-trapper-selected cDNAs to prepare full-length cDNA libraries for rapid discovery of new genes”, Genome Res. 10 (10), 1617-1630 (2000))はNCBI RefSeq: NM_031868で登録されており、Bcl-xL(Bcl2l1)遺伝子(Gonzalez-Garcia M, Perez-Ballestero R, Ding L, Duan L, Boise LH, Thompson, CB, Nunez G., “bcl-XL is the major bcl-x mRNA form expressed during murine development and its product localizes to mitochondria”, Development 120, 3033-3042 (1994))はNCBI RefSeq: NM_009743、及び、Bad遺伝子(Yang E, Zha J, Jockel J, Boise LH, Thompson CB, Korsmeyer SJ. Bad, “a heterodimeric partner for Bcl-XL and Bcl-2, displaces Bax and promotes cell death”, Cell 80, 80285-80291(1995))はNCBI RefSeq: NM_007522で登録されている。
従って、該遺伝子の発現量は、このような公知の情報に基づき設計したプライマーを用いるHICEP法、逆転写PCR(RT−PCR)、リアルタイムRT−PCR、又は競合的PCR等の当業者に公知の任意の定量的方法で定量的に測定することが出来る。或いは、電気泳動後に染色等の適当な手段で可視化したcDNAを検出すること、又はノーザンブロット法によっても半定量的に測定することが可能である。一方、該遺伝子の蛋白質の発現は、例えば、その蛋白質に対する抗体を用いるウェスタンブロット法又は固相酵素免疫測定法(ELISA)で定量的に測定することが出来る。
ここでHiCEP法は、制限酵素DNA断片長多型(RFLP)とポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づき開発された遺伝子発現プロファイル法であり、PCR産物の電気泳動から得られる移動距離とピークのデータから、ある条件下における特定の細胞における遺伝子の発現パターン、公知及び未知遺伝子の発現の有無、それらの発現量等に関する情報から成る遺伝子発現プロファイルを得、それらに基づき、遺伝子発現頻度の解析及び各遺伝子の同定をする方法である。このHiCEP法では、擬陽性シグナルを2%以下にすることが可能であり、その結果、存在率の高い4塩基認識制限酵素を使用することにより、80%という非常に高いカバー率(全発現転写物の中で観察可能な転写物の割合)を達成することが出来、更に、1.2倍までの発現差を検出することも可能である。
HiCEP法の例として、例えば、遺伝子発現プロファイルを作製する方法であって、
(a)ポリ(A)RNAを鋳型として一本鎖cDNAを合成する工程であって、該一本鎖cDNAを基準として5'末端にタグ物質が付加された一本鎖cDNAを合成する工程、
(b)工程(a)で合成された一本鎖cDNAを鋳型として二本鎖cDNAを合成する工程であって、該二本鎖cDNAを基準として3'末端側にタグ物質が付加された二本鎖cDNAを得る工程、
(c)工程(b)で得られた二本鎖cDNAを第1の制限酵素Xで切断する工程、
(d)該タグ物質に高親和性を有する物質を用いて、工程(c)で得られた断片から該タグ物質が付加している断片を回収する工程、
(e)工程(d)で回収された断片の第1の制限酵素Xによる切断部位へ、該切断部位の配列に相補的な配列及びXプライマーに相補的な配列を含むXアダプターを結合させて、二本鎖cDNAを基準として5'末端側にXアダプターが結合している断片を得る工程、
(f)工程(e)で回収された断片を、該Xアダプターを切断しない第2の制限酵素Yで切断する工程、
(g)該タグ物質に高親和」性を有する物質を用いて、工程(f)で得られた断片から該タグ物質が結合している断片を取り除くことにより、二本鎖cDNAを基準として3'末端側に第2の制限酵素Yによる切断部位を含む断片を回収する工程、
(h)工程(g)で回収された断片の第2の制限酵素Yによる切断部位へ、該切断部位の配列に相補的な配列及びYプライマーに相補的な配列を含むYアダプターを結合させて、二本鎖cDNAを基準として3'末端側にYアダプターが結合している二本鎖配列の断片を得る工程、
(i)該Xアダプターの配列に相補的な配列を含むXプライマーであって、該Xプライマーを基準として3'末端に2塩基配列であるNlN2(Nl及びN2は同一又は異なっていてもよい、アデニン、チミン、グアニン及びシトシンからなる群より選ばれる塩基である)を含むXプライマーと、該Yアダプターの配列に相補的な配列を含むYプライマーであって、該Yプライマーを基準として3'末端に2塩基配列であるN3N4(N3及びN4は同一又は異なっていてもよい、アデニン、チミン、グアニン及びシトシンからなる群より選ばれる塩基である)を含むYプライマーとからなるプライマーセットを用いて、工程(h)で得られた二本鎖配列の断片を鋳型としてPCR反応を行う工程、及び、
(j)得られたPCR産物を電気泳動し、その移動距離及びピークを検出することにより遺伝子発現プロファイルを作製する工程、を含む方法である。
上記方法で、遺伝子プロファイル作成に際して、プライマーのミスアニーリングに起因する偽ピークの発生を減少させるためには、工程(i)において、Xプライマー及びYプライマーのそれぞれXアダプター及びYアダプターへのアニーリングを、プライマーのTmMAX+6℃〜TmMAX+14℃の温度で行うことが好ましい。又、特に断りのないかぎり、二本鎖cDNAのセンス鎖(鋳型となるポリ(A)RNAに相同な配列を有する鎖)の5'末端側を二本鎖cDNAの5'末端側とし、当該センス鎖の3'末端側を二本鎖cDNAの3'末端側とする。
「タグ物質」及び「タグ物質に高親和性を有する物質」とは、互いに高親和性をもって特異的に結合することが可能な結合対を構成する一方の物質を意味する。互いに高親和性をもって特異的に結合するこが可能な結合対であれば使用することが可能である。本発明に使用可能なタグ物質とタグ物質に高親和性を有する物質との組合せの例には、ビオチンとストレプトアビジン、ビオチンとアビジン、FITCとFITC抗体、DIGとアンタイDIG及びプロテインAとマウスIgG及びラテックス粒子等が含まれるが、これらに限られるものではない。タグ物質のDNA配列への付加は、当業者に公知の適当な条件により達成することが可能である。また、「タグ物質」と「タグ物質に高親和性を有する物質」との間の親和性に基づくDNA断片の回収(工程(d)及び(g))は、当業者に公知の適当な条件により達成することが可能である。
「制限酵素」とは、一般的に、制限エンドヌクレアーゼとも称される酵素であり、特定の配列において二本鎖DNAを加水分解し切断する酵素である。本発明においては、適切な断片を得るために2種類の制限酵素X及びYを組み合わせて使用する。本発明に使用可能な制限酵素は、発現された遺伝子であるmRNAから合成された二本鎖cDNAを、識別可能な長さを有する断片に切断することが可能な酵素が好ましい。また、得られた当該二本鎖のより多くを、好ましくはほとんど全ての二本鎖を切断するような酵素が好ましい。例えば、国際公開02/48352号パンフレットに記載されているような当業者に公知の6塩基認識酵素又は4塩基認識酵素を使用することが出来る。但し、既に記載したように、高いカバー率を達成する為には、例えば、MspI及びMseIのような4塩基認識酵素を組み合わせて使用することが好ましい。
「アダプター」は、PCR反応においてプライマーを結合させるために使用され、使用する制限酵素及びプライマーの構造に種類等に応じて適宜設計することが出来る。安定したPCR反応を行わせるためには、通常、プライマーの長さは30塩基程度である。
「Xプライマー」及び「Yプライマー」は、対象RNA配列と出来るだけ一致させないために、16塩基以上の長さを有することが好ましい。更に、例えば、「バイオラッド実験イラストレイテッド(3)新版 本当にふえるPCR」中山広樹 著、秀潤社、2002年、第2版、第4刷に記載されているような、PCRプライマーとして一般的に要求される条件を満たしている必要がある。また、各プライマーは当業者に公知の一般的なプライマー合成方法(Letsinger et al., Nucleic Acids Research, 20, 1879-1882, 1992; 特開平11−08018号公報)に従い調製することができる。
更に、PCR反応後の検出を容易にするために、これらプライマーの少なくともいずれかの末端に、当業者に公知の任意の蛍光物質等の標識物質が結合していることが好ましい。例えば、適当な蛍光物質として、6−カルボキシフルオレッセイン(FAM)、4,7,2’,4’,5’,7’−ヘキサクロロー6−カルボキシフルオレッセイン(HEX)、NED(アプライドシステムズジャパン社)及び6−カルボキシ−X−ローダミン(Rox)等を挙げることが出来る。
更に、HiCEP法の実施に際してのその他の条件及び使用する装置等は、国際公開02/48352号パンフレット及び国際公開2005/118791号パンフレットの記載を参照することが出来る。尚、得られた遺伝子発現プロファイルは、当業者に公知の解析ソフトウェア、例えば、GeneScanTM (アプライドバイオシステムズジャパン社)を使用して解析することが出来る。尚、上記の基本的特徴を有している限り、更なる技術的改良又は変更が加えられた方法であっても、本明細書中の「HiCEP法」に含まれるものである。
「幹細胞」とは、潜在的にどのような体細胞にも分化できる多分化能を有する細胞である。本発明の各種方法で使用される幹細胞の種類及び由来等に特に制限はないが、マウス、サル、ヒトなどの哺乳動物由来の胚性幹細胞(ES細胞:個体になり得る全分化能を有する細胞)、例えば、本明細書の実施例で使用されている、E14,MG1.19及びR1等のマウス胚性幹細胞を挙げることが出来る。特に、本発明のスクリーニング方法で使用する幹細胞としては、経済的及び効率的観点からは既に樹立されて入手容易な適当な幹細胞株を使用することが好ましい。これに対して、「体細胞」とは、多細胞生物における生殖細胞以外の全ての種類の細胞を意味する。
以上の各測定に使用する材料及び器具・装置などは当業者に容易に入手可能であり、各測定操作の手順・条件等は、使用する器具・装置に添付のマニュアルに従うか、又は、使用する細胞の種類等のその他条件に応じて適宜設定することが出来る。
本発明のスクリーニング方法は、低線量放射線被ばくした幹細胞においてPPP1CA,BAD及び/又はBCL−XL遺伝子の発現の増大が関与してアポトーシスが誘導されることを利用し、低線量放射線誘導性の細胞アポトーシスを阻害する物質をスクリーニングするものである。従って、スクリーニングの対象となる被検物質の幹細胞に対する影響は、それらが何等かの態様で互いに作用することが出来る状態を設けることによって観察することが可能であり、その具体的な方法に特に制限はない。例えば、被検物質と幹細胞を共培養すること等によって共存せしめ、そこに低線量放射線を照射する工程、又は幹細胞に低線量放射線を照射した後に、該被ばく細胞の培養培地に被検物質を添加すること等によって、該被ばく細胞に被検物質を接触させる工程などがある。従って、被検物質が低線量放射線誘導性の細胞アポトーシスを阻害する活性を有する場合には、低線量放射線被ばくした幹細胞においては上記遺伝子の発現の増大が抑制されることが予想される。
本発明の幹細胞における低線量被ばくの検出マーカーは、PPP1CA,BAD及び/又はBCL−XL遺伝子の発現産物からなり、これは当業者に公知の任意の形態、分子でありえる。例えば、該遺伝子の発現産物とは、該遺伝子のmRNA,cDNA,若しくは、それらの部分塩基配列を含む核酸分子、又は、該遺伝子がコードする蛋白質を含む。尚、これらの検出マーカーは、既に記載したような当業者に公知の方法で容易に測定することが出来る。例えば、実施例にあるように、HiCEP法で検出される検出マーカーとしては、PPP1CA遺伝子の部分塩基配列である配列番号1を含む核酸分子を挙げることが出来る。
以下、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の技術的範囲を何等限定するものではない。当業者であれば、本明細書の記載に基づき、本発明の技術的範囲を逸脱せずに、多くの変形及び修飾を実施することが可能である。
細胞とその培養法
E14細胞(ノックアウトマウス作出用に世界中中で最も広く使用されているES細胞株の一つ。エジンバラ大学のDr. M Hooper 研究室にて保管され、希望により分与可能)は、15% KSR (GIBCO), 6 mM L-glutamine, 100 μM 2-mercaptoethanol (2-ME) 及び500 unitsの白血球阻害因子(LIF, CHEMICON, Temecula, CA) を添加したKO-DMEM (GIBCO, Gaithersburg, MD) で培養した。MG1.19細胞は10% FCS, 4 mM L-glutamate, 非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、100 μM 2-ME 及び1,000 unitsの白血球阻害因子を添加したGMEM (GIBCO)で培養した。マウスpreB46−6細胞は10% FCS及び50 μM 2-ME添加のRPMI1640 (SIGMA, St Louis, MO) で維持した。MEF/3T3細胞はクローンテック社(Palo Alto, CA)から購入し、10% FCS及び 4 mM L-glutamate添加のDMEM培地で培養した。
尚、MG1.19細胞は理研・丹羽仁史先生より分与された(Niwa H, Miyazaki J and Smith AG, Quantitative expression of Oct-3/4 defines differentiation, dedifferentiation or self-renewal of ES cells. Nature Genetics 24, 372 - 376 (2000)参照)。又、マウスpreB46−6は国立感染症研究所・竹森利忠先生より分与された(Takemori T, Miyazoe I, Shirasawa T, Taniguchi M and Graf T, A temperature-sensitive mutant of Abelson murine leukemia virus confers inducibility of IgM expression to transformed lymphoid cells. EMBO J. 6, 951-956(1987)参照)。
低線量放射線照射
各艇線量放射線の照射(又は、偽照射)にはX線発生装置(200 kV, 20mA, Pantak HF-320;Shimazu, Kyoto, Japan)を使用した。線量はX線量計model C-110, AE-1321M, OYOGIKEN Co., Japan) を使用して測定した。
HiCEP解析
HiCEP法は既報告文献(7)に若干の修正を加え、総RNA量1.0 μgで2回ずつ実施した。即ち、SuperScriptIII First Strand Synthesis System (Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて、該製造者のプロトコールに従い、5.0μl 反応容量で一本鎖DNAを合成した。50 mM Biotin-d(T)18 (0.25μl), 10 mM dNTP(0.25μl)及び2μl RNA溶液を慎重に混合し、その後、65℃で5分間インキュベートした。直ちに、氷上で3分間冷やした。製造者マニュアルに記載されている緩衝混合液2.5μlを加えて十分に混合し、50℃で60分間維持し、その後、85℃で5分間維持した。これらの全ての操作は200μl試験管内で実施した。この一本鎖DNA合成後の反応工程は、上記文献(7)に記載のとおりに実施した。修正点としては、既報告にあるエタノール沈殿工程に代えて、磁気ビーズ技術(Dinabeads M-280 Streptavidin; Veritas, Oslo, Norway)を使用したことである。
定量的PCR
リアルタイムPCRは既報告文献(8)の記載に従い実施した。即ち、E14細胞から調製した全RNAをDnase(Invitrogen)で処理し、SuperScriptIII First Strand Synthesis System (Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて、これから一本鎖cDNAを合成した。反応にはオリゴd(T)18 プライマーを使用した。リアルタイムPCRは、FG, SYBER GREEN PCR MASTER MLX (Applied Biosysteems, Foster City, CA) を用いて行い、ABI PRISM 7700(Applied Biosysteems)で分析した。各試料の結果は、グリッセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)の発現レベルに対して標準化した。PCR条件は、95.0℃で10分間、95.0℃で15秒間を50サイクル、60.0℃で30秒間、及び、78.0℃で40秒間であった。
このリアルタイムPCRに使用した各プライマーの配列は以下のとおりである。
Ppp1ca: Sense, 5'- AACTACTGTGGAGAGTTTGA -3' (配列番号1)
Antisense, 5'- AGAAGGGCAGCACATGGAAG -3'(配列番号2)
Bad: Sense, 5'- GGGATGGAGGAGGAGCTTAG -3'(配列番号3)
Antisense, 5'- CCCACCAGGACTGGATAATG -3'(配列番号4)
Bcl-xL: Sense, 5'- GCGTGTCTGTATTTATGTGT -3'(配列番号5)
Antisense, 5'- GCACTTTCACCTTCACACAA -3'(配列番号6)
GAPDH: Sense, 5'- GAGGCCGGTGCTGAGTATGTCGT -3'(配列番号7)
Antisense, 5'- GGTGGTGCAGGATGCATTGCTG -3'(配列番号8)
ウェスタンブロット法
尚、ウェスタンブロット法は既報告文献(9)の記載に従い実施した。即ち、まず、試料を溶解緩衝液(10% グリセロール、5% ドデシル硫酸マトリウム、50 mM DTT、62.5 mM Tris-HCl, pH6.8)中で沸騰処理し、15% SDS-PAGE 上で電気泳動させ、その後、タンパク質をImmunoBlot PVDF 膜(BioRAD, Hercules, CA) に電気的に移動させた。膜を0.1 % Tween 20含有のTris 緩衝食塩水(TBST)で洗浄した。5%非脂肪ミルク含有TBSTで膜を1時間ブロック処理し、第一次抗体(抗PPP1CAウサギポリクローナル抗体、又は、抗カスパーゼ−3ウサギモノクローナル抗体:Cell Signaling, Beverly, MA)と共に、4℃で一晩インキュベートした。尚、第一次抗体は全て、3%ウシ血清アルブミン含有TBSTで1000倍に希釈して使用した。この第一次抗体による処理後、膜をTBSTで3回洗浄し、1000倍に希釈した、抗ラビットIgG−西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合体 (DAKO, Glostrup, Denmark) と反応させてPPP1CA及び抗カスパーゼ−3を検出するか、又は、1000倍に希釈した、抗マウスIgG−西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合体(DAKO, Glostrup, Denmark) と反応させてα-チューブリンを検出した。これら第二次抗体との反応は室温で1時間おこなった。その後、膜をTBSTで3回洗浄し、SuperSignal West Dura Extended duration substrate 試薬(PIERCE, Rockford, IL)を用いてシグナルを検出した。定量的測定はLightCapture(AE-6960, ATTO, Tokyo, Japan)を用いて実施した。
カスパーゼ活性のin situ アッセイ
E14細胞は放射線照射の2時間後に回収し、カスパーゼの活性型とのみ結合する蛍光カスパーゼ阻害剤(FITC-VAD-FMK: Promega, Madison, WI)と共に20分間インキュベートした。その後、細胞をPBSで洗浄して余分なプローブを除き、10% 緩衝ホルマリン溶液を用いて30分間固定した。この細胞をLumina Vision ソフトウェアを用いる蛍光顕微鏡(Mitani, Tokyo, Japan)で直接解析した。
TUNEL染色
TUNEL試験はIn Situ Cell Death Detection Kit (Roche Applied Science, Indianapolis,IN)を使用して製造者のプロトコールに従い実施した。この細胞を蛍光顕微鏡で直接解析した。尚、各試料ポイントについて、2,500個以上の細胞を調査した。
結果及び考察(1)
HiCEP法を用いることによって、マウスES細胞であるE14において検出される22,000のシグナルの中から、5, 10, 25,50,100, 250 及び500 mGyの低線量域の放射線照射の1時間後に発現が増加する唯一の断片(188bp:配列番号9)を見出し、この断片はPPP1CA遺伝子の塩基配列に由来するものであることを確認した。小文字で書かれた部分がHiCEP法で用いられる共通のアダプター配列であって、大文字部分が実際の遺伝子の配列である。
(配列番号9)
actcggttcatgacaCGGAGGCCGGCCCATCACTCCACCCCGCAATTCTGCCAAAGCCAAGAAATAGCCTCCATGTGCTGCCCTTCTGCCCCAGATCGTTTGTACAGAAATCATGCTGCCATGGGTCACACTGGCCTCTCAGGCCCACCCGTCACGGGGAACACACAGCGTTAcgcagtaggacgcct
HiCEP法を用いて、上記低線量域の放射線照射の1時間後に測定した、PPP1CA遺伝子、p21遺伝子(放射線誘導性遺伝子として知られている)、及びGadd45遺伝子(急性ガンマ線照射応答性)の相対発現強度を求めた。図1(A)に示されるように、5mGyの極低線量域においても、PPP1CA遺伝子の転写物(黒バー)が増加(約1.58倍)しているのに対して、p21遺伝子の転写物(白バー)は上記低線量域のいずれにおいて誘導されないことが判明した。Gadd45遺伝子についても同様であった。因みに、放射線照射の3時間後では、100mGyより高い領域ではp21遺伝子の発現が誘導され、これは以前に報告されている結果に一致した(12)。
又、5Gy及び10Gyの線領域の放射線照射の場合には、1時間又は3時間後においてもPPP1CA遺伝子の発現は見られなかった。更に、上記の低線量域におけるPPP1CA遺伝子の発現の誘導(増加)の程度は、照射1時間後のほうが照射3時間後よりも大きいものであり、このような応答が非常に迅速なものであることが分かった。これは、高線量放射線による誘導が照射の3時間後までは殆ど観察されないこと(20)と対照的である。
更に、ウェスタンブロット法を用いて、PPP1CA遺伝子産物及びα−チューブリンの発現量を測定したところ、5mGyの照射において、PPP1CA遺伝子産物の1.44倍の発現誘導が認められた。これに対して、このような低線量域ではα−チューブリンには発現誘導は起こらなかった(図1B)。
リアルタイムPCR(定量的PCR)を用いて測定したところ、5mGyの線量照射において、PPP1CA遺伝子産物の発現量が1.44に増加したことが示された。内部標準であるα−チューブリンの発現産物量には変化がなかった。以上の結果を図1(B)に示す。
結果及び考察(2)
更に、リアルタイムPCR(定量的PCR)を用いて、5mGy〜1000mGyの線量域の照射1時間後のPPP1CA,BAD、BCL−XL、及びp21各遺伝子の発現量を測定した。その結果、5mGyの低線量域において、PPP1CA遺伝子に加えて、BAD遺伝子及びBCL−XL遺伝子の発現も増加していることが確認された(図2)。以上の結果は、低線量の放射線を照射された幹細胞でアポトーシスが誘発されていることを示唆するものである。
結果及び考察(3)
そこで、まず、アポトーシスにおいて重要な役割を担うカスパーゼファミリーの一種であるカスパーゼ3(14)の活性型であるペプチド(17kDa)の発現をウェスタンブロット法により測定したところ、5mGy及び10mGyの低線量放射線への被ばくによって、それら活性型ペプチドが発現していることが観察された(図3A)。又、カスパーゼの活性型とのみ結合する蛍光カスパーゼ阻害剤(FITC-VAD-FMK)を用いるin situ アッセイにより測定したところ、同様に、カスパーゼ活性が、5mGy及び10mGyの低線量放射線への被ばくによって有意に増加することが確認された(図3B,C)。
結果及び考察(4)
更に、ゲノムDNAの断片化を検出するために、TUNEL(TdT-mediated dUTP nick-end labeling)アッセイ(染色)(15)により、低線量域照射を受けたES細胞である、マウスES細胞である、E14細胞、MG1.19細胞及びR1細胞について検査した。その結果、これら3種類のES細胞に共通して、5mGY及び10mGyの低線量放射線照射においてアポトーシスが観察された(図4、A)。このアポトーシス誘導は250mGyで顕著に低下し、500mGy以上の線量域で再び観察された(図4、A)。
尚、R1細胞はDivision of Molecular and Developmental Biology, Samuel Lumenfeld Research Institute, Mount Sinai Hospital, Toronto, ON, Canada.(http://www.mshri.on.ca/nagy/)から分与された(Nagy A, Rossant J, Nagy R, Abramow-Newerly W, Roder JC. Derivation of completely cell culture-derived mice from early-passage embryonic stem cells. Proc Natl Acad Sci U S A 1993;90:8424-8428参照)。
結果及び考察(5)
次に、このような低線量域における放射線照射によるアポトーシスの誘導が幹細胞に特異的か否かを検討すべく、マウスpreB(46−6)細胞及びマウス繊維芽細胞(MEF/3T3についても同様な実験を行った。その結果、5mGY〜10mGyの低線量域ではこれら細胞においてアポトーシスの誘導は観察されなかったが、5Gyではアポトーシスの誘導が見られた(図4、B)。これは、以前に報告された結果と一致する(16)。
以上の結果から、ES細胞に置いて観察されたアポトーシスは低線量域における放射線照射に特異的なものであることが判明した。尚、これまでに、腸管幹細胞において、このような低線量域放射線によるアポトーシスが報告されている(17)。
尚、本明細書中で括弧内の数字で引用した公知文献は以下の通りである。
1. Brenner DJ, Doll R, Goodhead DT, et al. Cancer risks attributable to low doses of ionizing radiation: assessing what we really know. Proc Natl Acad Sci U S A 2003;100:13761-13766.
2. Kawaura C, Aoyama T, Koyama S, et al. Organ and Effective Dose Evaluation in Diagnostic Radiology Based on in-Phantom Dose Measurements with Novel Photodiode-Dosemeters. Radiat Prot Dosimetry 2006;26:26.
3. Clarke R. Control of low-level radiation exposure: time for a change? J Radiol Prot 1999;19:107-115.
4. Rothkamm K, Lobrich M. Evidence for a lack of DNA double-strand break repair in human cells exposed to very low x-ray doses. Proc Natl Acad Sci U S A 2003;100:5057-5062.
5. Amundson SA, Lee RA, Koch-Paiz CA, et al. Differential responses of stress genes to low dose-rate gamma irradiation. Mol Cancer Res 2003;1:445-452.
6. Fujimori A, Okayasu R, Ishihara H, et al. Extremely low dose ionizing radiation up-regulates CXC chemokines in normal human fibroblasts. Cancer Res 2005;65:10159-10163.
7. Fukumura R, Takahashi H, Saito T, et al. A sensitive transcriptome analysis method that can detect unknown transcripts. Nucleic Acids Res 2003;31:e94.
8. Karsai A, Muller S, Platz S, Hauser MT. Evaluation of a homemade SYBR green I reaction mixture for real-time PCR quantification of gene expression. Biotechniques 2002;32:790-792, 794-796.
9. Takahashi H, Umeda N, Tsutsumi Y, et al. Mouse dexamethasone-induced RAS protein 1 gene is expressed in a circadian rhythmic manner in the suprachiasmatic nucleus. Brain Res Mol Brain Res 2003;110:1-6.
10. Garcia A, Cayla X, Guergnon J, et al. Serine/threonine protein phosphatases PP1 and PP2A are key players in apoptosis. Biochimie 2003;85:721-726.
11. Gupta M, Gupta SK, Balliet AG, et al. Hematopoietic cells from Gadd45a- and Gadd45b-deficient mice are sensitized to genotoxic-stress-induced apoptosis. Oncogene 2005;24:7170-7179.
12. Ding LH, Shingyoji M, Chen F, et al. Gene expression profiles of normal human fibroblasts after exposure to ionizing radiation: a comparative study of low and high doses. Radiat Res 2005;164:17-26.
13. Ayllon V, Cayla X, Garcia A, et al. The anti-apoptotic molecules Bcl-xL and Bcl-w target protein phosphatase 1alpha to Bad. Eur J Immunol 2002;32:1847-1855.
14. Woo M, Hakem A, Elia AJ, et al. In vivo evidence that caspase-3 is required for Fas-mediated apoptosis of hepatocytes. J Immunol 1999;163:4909-4916.
15. Griffin C, Waard H, Deans B, Thacker J. The involvement of key DNA repair pathways in the formation of chromosome rearrangements in embryonic stem cells. DNA Repair (Amst) 2005;4:1019-1027.
16. Voehringer DW, Hirschberg DL, Xiao J, et al. Gene microarray identification of redox and mitochondrial elements that control resistance or sensitivity to apoptosis. Proc Natl Acad Sci U S A 2000;97:2680-2685.
17. Potten CS. Radiation, the ideal cytotoxic agent for studying the cell biology of tissues such as the small intestine. Radiat Res 2004;161:123-136.
18. Amundson SA, Fornace AJ, Jr. Gene expression profiles for monitoring radiation exposure. Radiat Prot Dosimetry 2001;97:11-16.
19. Bucca G, Carruba G, Saetta A, et al. Gene expression profiling of human cancers. Ann N Y Acad Sci 2004;1028:28-37.
20. Sugioka R, Shimizu S, Funatsu T, et al. BH4-domain peptide from Bcl-xL exerts anti-apoptotic activity in vivo. Oncogene 2003;22:8432-8440.
本発明の方法又はバイオマーカーを使用することによって、生態の放射線に対する防御機能レベルの評価、防護服や遮断材等の放射線防護システムの評価を行うことが出来る。更に、職業被ばく又は検査被ばく等の被ばく線量を判定したり、被ばく線量限界を推定することが可能となる。
Aは、HiCEP法を用いて、低線量域(〜500mGy)の放射線照射の1時間後に測定した、PPP1CA遺伝子(黒バー)及びp21遺伝子(白バー)の相対発現強度(Y軸)の結果を示す。相対強度は0Gyにおける強度を「1」としてを求めた。Bは、PPP1CA遺伝子産物(タンパク質)をウェスタンブロット法を用いて測定した結果を示す。尚、比較としてα−チューブリンを内部標準として用いた。 リアルタイムPCR(定量的PCR)を用いた、5mGy〜1000mGyの線量域の照射1時間後の各遺伝子の発現量を示す(各線量値において、左側から順に、PPP1CA,BAD、BCL−XL、及びp21各遺伝子の発現量を示す)。尚、個別に調製した細胞を使用して4回の実験を繰り返し、同様の結果を得た。 ウェスタンブロット法によりカスパーゼ3の活性型であるペプチド(17kDa)の発現を測定した結果を示す(A)。4回の独立した実験を行った。又、カスパーゼの活性型とのみ結合する蛍光カスパーゼ阻害剤(FITC-VAD-FMK)を用いるin situ アッセイにより得られた蛍光顕微鏡写真(B)である。 0Gyにおけるカスパーゼ3の活性を「0」としたときの、蛍光の相対強度(X軸)を標準偏差(4回の独立実験)と共に示したものである(C)。 TUNEL(TdT-mediated dUTP nick-end labeling)アッセイによる、低線量域照射を受けたE14細胞(白バー)、R1細胞(黒バー)及びMG1.19(灰色バー)細胞におけるアポトーシスの誘導について測定結果を標準偏差(夫々、5回、7回、及び4回の独立実験)と共に示したものである。各線量照射における1回の実験に2,500個以上の細胞を使用した。同様な実験をマウスpreB(46−6)細胞(白バー)及びマウス繊維芽細胞(MEF/3T3)(黒バー)について行った結果を示す(B)。

Claims (8)

  1. 胚性幹細胞におけるPPP1CA,BAD及び/又はBCL−XL遺伝子の発現量の増加を測定することにより、該胚性幹細胞での低線量被ばくを判定又は検出する方法。
  2. 胚性幹細胞におけるPPP1CA,BAD及び/又はBCL−XL遺伝子の発現量の増加を測定することにより、低線量被ばくによる該胚性幹細胞のアポトーシスへの誘導を予測する方法。
  3. (1)被検物質との共存下で胚性幹細胞に低線量放射線を照射する工程、及び(2)該胚性幹細胞におけるPPP1CA,BAD及び/又はBCL−XL遺伝子の発現の変動を測定する工程を含む、低線量放射線誘導性の細胞アポトーシスを阻害する物質をスクリーニングする方法。
  4. (1)低線量放射線を照射された胚性幹細胞に被検物質を接触させる工程、及び(2)該胚性幹細胞におけるPPP1CA,BAD及び/又はBCL−XL遺伝子の発現の変動を測定する工程を含む、低線量放射線誘導性の細胞アポトーシスを阻害する物質をスクリーニングする方法。
  5. PPP1CA,BAD及び/又はBCL−XL遺伝子の発現量の変動を該遺伝子のmRNAの発現量に基づき測定することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. PPP1CA,BAD及び/又はBCL−XL遺伝子のmRNAの発現量をHiCEP法に基づき作製される遺伝子発現プロファイルから求めることを特徴とする、請求項5記載の方法。
  7. PPP1CA,BAD及び/又はBCL−XL遺伝子のmRNAの発現量をPCRで測定することを特徴とする、請求項5記載の方法。
  8. 胚性幹細胞がマウス胚性幹細胞である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
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