JP5126546B2 - クランクシャフト製造方法 - Google Patents
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Description
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、請求可能発明と称する)の態様を例示し、例示された各態様について説明する。ここでは、各態様を、特許請求の範囲と同様に、項に区分すると共に各項に番号を付し、必要に応じて他の項の記載を引用する形式で記載する。これは、請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載、実施形態の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得る。
なお、以下の各項において、(1)−(3)項の各々が、請求項1−3の各々に相当する。
本項に記載のクランクシャフト製造方法によれば、コイニング工程では、成形過程、すなわち、各ジャーナル部がコイニング型の対向する一対のV字形に形成された各成形部間で型ずれ方向に対して垂直に加圧される過程で、各ジャーナル部が対応する各コイニング型のコイニング中心C3に向けて自動調心される。より具体的には、例えば、コイニング型を上型と下型とにより構成して、フローティング支持された各ジャーナル部を、上型のV字形の成形部と下型のV字形の成形部とでそれぞれ加圧した場合、各ジャーナル部の各被加圧部(コイニング面)に作用する加圧力が上下で対称になることから、各ジャーナル部の幾何学中心C1がコイニング型の中心C3に向けて自動調心される。その結果、各ジャーナル部の幾何学中心C1が各ジャーナル部の軸直角断面における各コイニング面を含む正方形(菱形)の中心C3に一致する。そして、基準穴加工工程では、各ジャーナル部のコイニング面が、チャック機構の対向する一対のV字形の各チャック部により把持される。これにより、各ジャーナル部の幾何学中心C1がチャック機構のチャック中心C2に一致する。言い換えると、各ジャーナル部のコイニング面を含む正方形が各チャック部のV字形状を含む正方形F2(菱形)に一致する。これにより、各ジャーナル部の幾何学中心C1と各チャック機構のチャック中心C2とが一致して、センタ穴を各ジャーナル部の幾何学中心C1に加工することができる。その結果、従来と比較して、クランクシャフト素地に設定する加工代を減少させることができるのに加えて回転バランスの修正量も減少させることができ、素材の重量が減少して材料費(製造コスト)の増大を抑制することができる。また、クランクシャフト素地をサイジングする場合と比較して、高価な設備(サイジング型)を必要としないため、設備コストを削減することができる。
本項に記載のクランクシャフト製造方法によれば、コイニング工程において、成形過程、すなわち、輪環形状の凸部がコイニング型の対向する一対のV字形に形成された各成形部間で型ずれ方向に対して垂直に加圧される過程で、各ジャーナル部の幾何学中心C1がコイニング型の中心C3に向けて自動調心される。
本項の態様では、輪環形状の凸部だけを成形(コイニング加工)してコイニング面を形成するので、(1)の態様、すなわち、ジャーナル部の外周面を成形(コイニング加工)してコイニング面を形成する場合と比較して、成形荷重(素材変形量)を大幅に減少させることができる。したがって、ジャーナル部の残留応力が極めて小さいため、熱処理による歪みが抑制される。これにより、クランクシャフト素地の機械加工代を削減してクランクシャフト素地の軽量化、ひいては、製造コストを削減することができる。また、成形荷重(素材変形量)が小さいことから、より小さい能力のコイニング装置で済み、設備コストを削減することができる。さらに、成形荷重(素材変形量)が小さいことから、コイニング工程におけるコイニング加工を冷間加工とすることが可能になる。したがって、コイニング工程を、機械加工工程に含めて基準穴加工工程の直前に設定することが可能になる。したがって、熱間鍛造工程を変更する必要がないので、鍛造型をそのまま使用することができ、本項のクランクシャフト製造方法を導入することによる設備投資を最小限に抑えることができる。
本項に記載のクランクシャフト製造方法によれば、コイニング工程において、成形過程、すなわち、各凸部(小突起)がコイニング型の対向する一対のV字形に形成された各成形部の各成形面により型ずれ方向に対して垂直に加圧される過程で、各ジャーナル部の幾何学中心C1がコイニング型の中心C3に向けて自動調心される。
本項の態様では、各凸部(小突起)だけを成形(コイニング加工)してコイニング面を形成するので、(2)の態様、すなわち、輪環形状の凸部を成形(コイニング加工)してコイニング面を形成する場合と比較して、成形荷重(素材変形量)をさらに減少させることができる。したがって、ジャーナル部の残留応力が必要最小限となり、熱処理による歪みがさらに抑制されて、クランクシャフト素地の精度を向上させることができる。
本発明の第1実施形態を添付した図を参照して説明する。なお、第1実施形態では、直列4気筒エンジンに組み込まれるクランクシャフトを製造する方法を説明するが、クランクシャフトは、これに限定することを目的とするものではない。
クランクシャフトの製造工程は、熱間鍛造工程と機械加工工程とを含む。図1に示されるように、熱間鍛造工程は、ビレットから所定長さの素材1を切り出す切断工程と、切り出された素材1を所定温度(例えば、1000〜1200℃)に加熱する加熱工程と、加熱された素材1を予備成形する予備成形工程と、予備成形された素材1をクランクシャフト形状に成形する成形工程(鍛造工程)と、成形された仕掛け品(成形品)をトリミングしてクランクシャフト素地2を取り出すトリミング工程と、このクランクシャフト素地2を熱処理および表面処理する後処理工程と、を含む。
まず、コイニング工程では、クランクシャフト素地2がコイニング装置8の支持機構によりフローティング支持される。この状態におけるクランクシャフト素地2は、図6に示されるように、各ジャーナル部4,5の型ずれ方向(図6における左右方向)が、各型9,10のストローク方向(図6における上下方向)に対して垂直な状態で支持される。なお、クランクシャフト素地2は、鍛造型の合わせ面に平行な軸断面で軸直角方向(図6における左右方向)へ型ずれしているが、型ずれは、当該クランクシャフト素地2の軸断面上に断層に相当する境界が形成されているのではなく、単に鍛造型の精度に起因するずれである。
第1実施形態によれば、各ジャーナル部4,5を、上型9と下型10とからなるコイニング型9,10の対向するV字形の各成形部9a,10aにより型ずれ方向に対して垂直に加圧して、各ジャーナル部4,5にコイニング面11〜14を形成するコイニング工程と、各ジャーナル部4,5のコイニング面11〜14を、チャック機構の対向するV字形の各チャック部6,7により把持して、クランクシャフト素地2に機械加工の基準となるセンタ穴を加工する基準穴加工工程と、を含む。
したがって、コイニング工程では、各ジャーナル部4,5が成形過程で自動調心されて、各ジャーナル部4,5の幾何学中心C1がコイニング型9,10の中心C3に一致される、すなわち、各ジャーナル部4,5の幾何学中心C1を、各ジャーナル部4,5の軸直角断面における各コイニング面11〜14を含む正方形(菱形)の中心C3に一致させることができる。そして、基準穴加工工程では、各ジャーナル部4,5のコイニング面11〜14が、チャック機構の対向する一対のV字形の各チャック部6,7により把持される。これにより、各ジャーナル部4,5の幾何学中心C1をチャック機構のチャック中心C2に一致させる、言い換えると、各ジャーナル部4,5のコイニング面11〜14を含む正方形を、各チャック部6,7のV字形状を含む正方形F2(菱形)に一致させることができる。
これにより、各ジャーナル部4,5の幾何学中心C1にセンタ穴を加工することができ、ひいては、各ジャーナル部4,5の幾何学中心C1と各チャック機構のチャック中心C2とを一致させることができるので、従来と比較して、クランクシャフト素地2に設定する加工代を減少させることができるのに加え、回転バランスの修正量も減少させることができることから、素材の重量が減少して材料費(製造コスト)の増大を抑制することができる。また、クランクシャフト素地2をサイジングする場合と比較して、高価な設備(サイジング型)を必要としないため、設備コストを削減することができる。
本発明の第2実施形態を説明する。なお、第2実施形態では、上述した第1実施形態と同一あるいは相当する構成には同一の名称および符号を付与し、重複する説明を省略する。
上述した第1実施形態では、各ジャーナル部4,5の外周面を成形(コイニング加工)して各コイニング面11〜14を形成するのに対して、第2実施形態では、図10〜11に示されるように、熱間鍛造工程に含まれる成形工程(鍛造工程)で、クランクシャフト素地2の各ジャーナル部4,5に周方向へ延びる輪環形状の凸部20を設けて、コイニング工程で、輪環形状の凸部20だけを成形(コイニング加工)してコイニング面11〜14を形成する。なお、各凸部20は、各ジャーナル部4,5の軸平面における断面が矩形に形成されている。
成形工程(図1参照)では、予備成形された素材1をクランクシャフト形状に成形してクランクシャフト素地2を得る。この成形工程において使用される鍛造型のキャビティには、各ジャーナル部4,5の各凸部20に対応する輪環形状の溝が設けられている。これにより、成形工程により得られたクランクシャフト素地2の各ジャーナル部4,5には、輪環形状の凸部20が形成される。
第2実施形態によれば、各ジャーナル部4,5に設けられた輪環形状の各凸部20だけを成形(コイニング加工)して各コイニング面11〜14を形成するので、上述した第1実施形態、すなわち、各ジャーナル部4,5の外周面を成形(コイニング加工)してコイニング面11〜14を形成する場合と比較して、成形荷重(素材変形量)を大幅に減少させることができる。
したがって、ジャーナル部の残留応力が極めて小さくできることから、熱処理による歪みを抑制することができる。これにより、クランクシャフト素地2の機械加工代を削減してクランクシャフト素地2の軽量化、ひいては、製造コストを削減することができる。また、成形荷重(素材変形量)が小さいことから、より小さい能力のコイニング装置で済み、設備コストを削減することができる。
第2実施形態では、上述した第1実施形態と比較して成形荷重(素材変形量)が小さいことから、コイニング工程におけるコイニング加工を冷間加工とすることが可能になる。この場合、コイニング工程を、機械加工工程に含めて基準穴加工工程の直前に設定することができる。したがって、熱間鍛造工程を変更する必要がないので、鍛造型をそのまま使用することができ、設備投資を最小限に抑えることができる。
本発明の第3実施形態を説明する。なお、第3実施形態では、上述した第1および第2実施形態と同一あるいは相当する構成には同一の名称および符号を付与し、重複する説明を省略する。
上述した第2実施形態では、熱間鍛造工程に含まれる成形工程(鍛造工程)で、クランクシャフト素地2の各ジャーナル部4,5に周方向へ延びる輪環形状の凸部20を設けて、コイニング工程で、輪環形状の各凸部20を各コイニング型により成形(コイニング加工)してコイニング面11〜14を形成するのに対して、第3実施形態では、図15および図16に示されるように、熱間鍛造工程に含まれる成形工程(鍛造工程)で、クランクシャフト素地2の各ジャーナル部4,5に、上型9の成形部9aのV字形を形成する各成形面31,32および下型10の成形部10aのV字形を形成する各成形面33,34に対向するように、言い換えると、各ジャーナル部4,5に、図15における角度位相が45°、135°、225°および315°の位置に、各凸部21〜24(小突起)を設けて、コイニング工程で、各凸部21〜24だけを成形(コイニング加工)してコイニング面11〜14を形成する。
成形工程(図1参照)では、予備成形された素材1をクランクシャフト形状に成形してクランクシャフト素地2を得る。この成形工程において使用される鍛造型のキャビティには、各ジャーナル部4,5の各凸部21〜24(小突起)に対応する各凹部が設けられている。これにより、成形工程により得られたクランクシャフト素地2の各ジャーナル部4,5には、各凸部21〜24(小突起)が、各ジャーナル部4,5の周方向へ等間隔(図15における角度位相が45°、135°、225°および315°の各位置)に設けられる。
第3実施形態によれば、各凸部21〜24(小突起)だけを成形(コイニング加工)して各コイニング面11〜14を形成するので、第2実施形態、すなわち、輪環形状の凸部20を成形(コイニング加工)してコイニング面11〜14を形成する場合と比較して、成形荷重(素材変形量)をさらに減少させることができる。したがって、各ジャーナル部4,5の残留応力が必要最小限となり、熱処理による歪みがさらに抑制されて、クランクシャフト素地2の精度を向上させることができる。これにより、クランクシャフト素地2の機械加工代を削減してクランクシャフト素地2のさらなる軽量化、ひいては、製造コストを削減することができる。また、成形荷重(素材変形量)が小さいことから、より小さい能力のコイニング装置で済み、設備コストを削減することができる。
第3実施形態では、第2実施形態同様、上述した第1実施形態と比較して成形荷重(素材変形量)が小さいことから、コイニング工程におけるコイニング加工を冷間加工とすることが可能になる。この場合、コイニング工程を、機械加工工程に含めて基準穴加工工程の直前に設定することができる。したがって、熱間鍛造工程を変更する必要がないので、鍛造型をそのまま使用することができ、設備投資を最小限に抑えることができる。
Claims (3)
- ジャーナル部が鍛造型の合わせ面に平行な軸断面で軸直角方向へ型ずれを生じたクランクシャフト素地が成形される鍛造工程を含むクランクシャフト製造方法であって、
前記ジャーナル部をコイニング型の対向する一対のV字形に形成された各成形部間で型ずれ方向に対して垂直に加圧して前記ジャーナル部に4つのコイニング面を形成するコイニング工程と、
前記ジャーナル部のコイニング面をチャック機構の対向する一対のV字形に形成された各チャック部間で把持して前記クランクシャフト素地に機械加工の基準としてのセンタ穴を加工する基準穴加工工程と、
を含み、
前記コイニング工程では、コイニング面が形成される過程で前記ジャーナル部が自動調心されて前記ジャーナル部の幾何学中心が、前記コイニング型のコイニング中心に一致して、
前記基準穴加工工程では、前記ジャーナル部の幾何学中心が、前記チャック機構のチャック中心に一致することを特徴とするクランクシャフト製造方法。 - 前記ジャーナル部に周方向へ延びる輪環形状の凸部を設けて、前記コイニング工程では、前記凸部を前記コイニング型の対向する一対のV字形に形成された各成形部間で型ずれ方向に対して垂直に加圧して前記凸部に前記4つのコイニング面を形成することを特徴とする請求項1に記載のクランクシャフト製造方法。
- 前記ジャーナル部に前記コイニング型の各成形面に対向する各凸部を設けて、前記コイニング工程では、各凸部を前記コイニング型の対向する一対のV字形に形成された各成形部間で型ずれ方向に対して垂直に加圧して各凸部に各コイニング面を形成することを特徴とする請求項1に記載のクランクシャフト製造方法。
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