本発明は、移行ポリペプチドによって結合された、細胞標的因子およびエルシニア(Yersinia)外側タンパク質を含むキメラタンパク質に関する。本発明は、さらに、そのようなキメラタンパク質の製造および使用に関する。
腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーのサイトカインは、生物学的制御について独自の観点を提供する。これらのサイトカインおよびそれらの受容体は、ほとんど全ての細胞で発現され、様々な、部分的に対照的な、広範囲の細胞活動を誘発する(Wallachら、1999、Locksleyら、2001、およびWallachら、2000)。それらは、免疫防御のすべての局面、並びに特定の発生過程を実質的に制御する助けになっている。これらの活動はすべて、異なる受容体に共有される、明らかに少数の一組のシグナル伝達タンパク質よって媒介される(Wallachら、1999)。
サイトカインは、通常、防御を強化する役割を果たす。しかし、過剰に作用すると、それらは、病原体が引起す損傷に匹敵し得る多大な損傷を引起し得る。実際に、サイトカインの不当な効果は、多くの疾患において、主要な病原性原因を構成する。
TNFファミリーのサイトカインは、先天性型および適合性型の両方の種々の免疫防御機序を広範囲に制御する。TNF、Fasリガンド、CD40リガンドおよびその他などのサイトカインのいくつかの過剰な機能は、種々の疾患の病状に関与してきた。特に、広範な疾患、たとえば、マラリアおよび敗血症のような感染性疾患、リューマチ性関節炎、炎症性大腸炎および乾癬のような自己免疫疾患、および所定の型の癌におけるTNFの病理学上の主要な役割については、幅広い証拠がある。実際に、抗TNF抗体または可溶性TNF受容体などの薬剤によってTNF作用を遮断することは、このような状況で療法を提供することが発見されている(Beutler、1999、Kolliasら、1999およびReimold、2003)。リューマチ性関節炎やクローン病のようなある種の病理学的状況では、かなり多くの割合の患者が、抗TNF療法に順調に応答する。しかし、これらの薬剤に、かなり不十分な応答を示すこれらの疾患の患者もいて、治療法について別のアプローチを見出す必要が生じている(Andreakosら、2002)。
サイトカイン生産細胞による分泌後、可溶性タンパク質として単に作用する多くの他のサイトカインと異なり、TNFファミリーのリガンドは、細胞結合II型膜透過タンパク質(可溶性の分泌タンパク質として製造されるリンホトキシンの例外を伴って)として生産される。それらは、この形態でそれらの効果を発揮することができ、リガンド生産細胞に隣接して位置する細胞にのみ影響を及ぼす(ジャクスタクリン制御)。それらのほとんどは、また減らされ(are also shed)、循環する可溶性分子を形成する。それらの可溶性リガンド、たとえば、TNFの一部は、可溶性サイトカインとして作用する能力があり、パラクリン制御因子(リガンド生産細胞に比較的密着して位置する細胞に影響を及ぼす)およびエンドクリン制御因子(遠く離れた細胞に影響を及ぼす)として作用する。TNFファミリーのある種のリガンド、たとえばFasリガンドは、それらのシェド形態においては有効に作用せず、その形態では、細胞結合形態に対する拮抗剤としてさえ役割を果たし得る(Wallachら、1999およびLocksleyら、2001)。
それらを産生する細胞の表面上のTNFファミリーのリガンドの発生は、これらのリガンド産生細胞の特異的な標的化のための強力な手段を提供する。このような手段は、リガンドが病理学的役割を果たす状況においてリガンド産生細胞の選択的死滅を可能にできる。
いくつかの態様において、サイトカインを産生する細胞の破壊は、単なるサイトカイン分子の機能の直接的遮断より、このサイトカインの病理学上の効果に対してよりよい防御を提供することになり得る。サイトカイン生産細胞の破壊は、サイトカインのさらなる合成を防ぎ、従って、すでに合成されたサイトカイン分子の効果をただ遮断することによって得られる保護よりも、いっそう耐久性のある保護を提供し得る。
あるサイトカインを産生する細胞は、しばしば、特定の型の免疫応答を引出す役割を共に果たすいくつかの他のサイトカインを同時に製造する。周知の例は、固有の群のサイトカインを産生するTh1−およびTh2−型Tリンパ球であり、各々は、異なる型の免疫防御を引出す役割を果たす(Jankovicら、2001)。従って、サイトカイン産生細胞の破壊は、その特定のサイトカイン合成の阻止に加えて、病理学的効果におけるその特定のサイトカインを支援するいくつかの他のサイトカイン合成の阻止につながる。
循環するサイトカインを遮断することが、全身に影響する一方で、サイトカイン生産細胞を死滅させること、またはサイトカイン生産を弱体化させることは、これらの細胞が存在する体内における特定の部位に限定することができ、従って、他の部位でのサイトカインの利益効果を維持しつつ、その特定の部位でのサイトカイン有毒効果の破棄を可能にし得る。
クローン病における抗TNF療法効果の研究は、TNF生産細胞を死滅させることが、ある種の病理学的状況では、実際に、ただTNFを遮断することによって得られるよりも有効な治療法を提供しうることを示唆する。この疾患における抗TNF抗体の治療的効果は、抗体によるTNF生産細胞の死の早期の初期導入に関連することが分かった(Lugeringら、2001、Van Deventer、2001およびVan den Brandeら、2003)。
TNF−αは、活性化単球細胞、マクロファージおよびCD8+T細胞によって発現される。これらの細胞は、それらの細胞分解経路における主要成分として、膜固定TNF−αを示す。以下の疾患において、活性化マクロファージが、それらの病理学に関与することが推測されている:敗血性ショック、リューマチ性関節炎、強直性脊椎炎および乾癬性関節炎(SinghおよびSuruchi、2004)、乾癬(Asadullahら、2002)、筋萎縮性側索硬化症(Ghezziら、1998)、インシュリン依存性糖尿病(Kagiら、1999)、移植片対宿主疾患(Hongoら、2004)および鎌状赤血球貧血(Belcherら、2000年)。以下の疾患において、活性化CD8+T細胞が、それらの病理学に関与することが推測されている:全身性紅斑性狼瘡(Pachecoら、2002)、反応性関節炎および他の自己免疫疾患(Mittler、2004)。しばしば、活性化CD8+Tは、特定の臓器に対して有害である。たとえば、肝臓炎症中に起こる集約的肝細胞アポトーシスは、肝臓への活性化CD8+T細胞の浸透に続いて誘発される。
細胞表面構成要素に結合する標的分子に連結した細胞毒素より構成されるキメラ分子は、強力な細胞キラー剤としての役割を果たし得る。細胞型特異的表面構成要素を認識する標的部分の選択が、インビボで特定の細胞の選択的破壊のためにこのような細胞傷害性キメラを使用することを可能にし得る。たとえば、シュードモナス(Pseudomonas)外毒素(PE)またはジフテリア毒素(DT)に融合した癌特異的エピトープに対する抗体より構成されるキメラ融合タンパク質は、癌細胞を特異的に標的として、死滅させることができる。このような抗癌効果は、毒素が、その受容体が特定の腫瘍において優勢である、IL−2、IL−4またはIL−13のようなホルモンまたはリガンドと融合しているキメラを用いて得ることもできた。同様に、細胞毒素含有キメラは、病原体に苦しめられた細胞に標的とされるように設計された。たとえば、HIV感染細胞は、シュードモナス外毒素に結合した、gp120の保存的CD4結合部位またはCD4に対する、抗−gp120抗体より構成される免疫毒素を使用して選択的に破壊することができる(BrinkmannおよびPastan、1995、PastanおよびKreitman、1998およびPastan、2003)。
細胞毒素を標的とする可能な一種の薬剤またはTNFファミリーのリガンドを発現する細胞に対する他の調節剤は、これらのリガンドに対する抗体である。実際に、CD40リガンドに対する抗体は、CD40リガンド生産細胞に対する毒素を標的にするために適用されてきた(EP1005372)。
米国仮出願番号第60/582,827号は、シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas eruginosa)外毒素移行およびADPリボース化ドメイン(PE38またはPE I−II)に結合したp55TNF受容体(TBP−1)の細胞外部分を含むキメラタンパク質(TBP−PE38)を開示する。TBP−PE38が、表面TNFを過剰発現する上皮細胞と結合し、このような細胞における細胞毒性を誘発することが示された。
多様な細菌毒素は、細胞表面上で受容体と特異的に結合し、受容体媒介型エンドサイトーシスを介して内在化する。一般に、受容体媒介型エンドサイトーシスは、細胞外タンパク質(たとえば、受容体)および小型粒子(たとえば、リガンド)の選択的取り込みを可能にする(Molecular cell biology、Darnell LodishおよびBaltimore)。特に、原形質膜上における受容体に対する粒子の結合の後、受容体−リガンド複合体は、クラスリン被覆ピット内に内在化され、摘み取られ、クラスリン被覆小胞となる。その後、クラスリン被覆物はトリスケリオンに脱重合化し、エンドソームと称される、非被覆小胞を生じる。エンドソームは、約5.0の内部pHによって特徴づけられるCURL(受容体とリガンドを分離する区分(compartment uncoupling receptor and ligands))と称される分離小胞と融合する。低いpHは、粒子を受容体から解離させる。受容体に富んだ領域は、萌芽して、受容体を再循環して原形質膜に戻す別個の小胞を形成する。
受容体媒介型エンドサイトーシスによって内在化されるタンパク質は、種々の巡り合わせを受ける。たとえば、それらのタンパク質は、リソソームに移動され、破壊され、最小限に加工され、細胞中に残り得るか、または別の場合には、エンドサイトーシスされた物質は、細胞膜を完全に通過し、内在化されるかまたは反対側で原形質膜から分泌される。
シュードモナス内毒素A(PE)は、α2−マクログロブリン受容体/低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質を介して結合し、細胞に入る。内在化に続いて、PEは、フリン様プロテアーゼによってエンドソーム中でタンパク質分解によって加工され、38kDa活性フラグメント(PE−38)へと分解され、そのようなフラグメントが細胞質ゾルに移行し、そのADPが伸長因子2をリボース化してタンパク質合成阻害を引起す。
PEのタンパク質分解処理(エンドソーム中で、またはフリン様プロテアーゼにより、小胞体中で行われる)および細胞質ゾルへのPE−38の移行は共に、有効な細胞毒性に必須である。PEのドメインI(図1)は、細胞結合活性を含み、ドメインIIは移行活性を含み、ドメインIIIは、ADPリボシル化活性を含む。これらのドメインの各々は、独立して再折り畳みされうる構造単位から構成される。移行ドメイン(PEII)は、6つの連続a−へリックス(A−F)を含む。タンパク質の一次構造に基づいた欠失地図作製研究は、AおよびBへリックスを包含するアミノ末端セグメントが、PE移行に必要とされることを示す(Siegallら、1989)。カルボキシル末端では、Eへリックス内のいくつかの残基が重要であり、一方他の残渣およびFへリックス全体は、移行活性の見掛け損失なしに欠失され得ることが分かった。さらに、最後のαへリックス(F)の欠失は、PEの移行活性および細胞毒性の両方を増強した(Taupiacら、1999)。
PE I−IIなどのPE外毒素の部分はbarnaseという細菌酵素をエンドソームから真核細胞の細胞質へ移行できるという証拠はあるが(Priorら、1996)、異種タンパク質に隣接されたドメインIIの移行活性は報告も証明もなされていない。
シュードモナス外毒素およびジフテリア毒素は強力な細胞傷害性薬剤である。シュードモナス外毒素およびジフテリア毒素は、多種多様な細胞における細胞性代謝全体に影響を及ぼすタンパク質の合成を阻害する。対して、他の種類の細菌毒素は特定の代謝経路を制御することが知られている。たとえば、6つのエルシニア外側タンパク質(Yop)毒素は各自、特定のシグナル伝達経路を調節する。
ペスト菌(Yersinia pestis)は、腺ペストの原因物質である。ペスト菌は、3つのヒト流行病:ユスティニアヌスペスト(Justinian plague)(6〜8世紀)、黒死病および近代ペストの原因である。エルシニア エンテロコリティカ(Yersinia enterocolitica)およびエルシニア シュードツベルクローシス(Yersinia pseudotuberculosis)は、食品媒介病原体であり、胃腸炎を引き起こす。エルシニアの病原性は、哺乳類宿主の免疫防御に打ち勝つその能力に起因する。
エルシニアの外側タンパク質P(YopP)は、Y.エンテロコリティカにより産生される毒素である。YopPは、マウスにおける全身性感染の確立に必須であり、TNF−αの産生を阻害し、感染したマクロファージにおいてアポトーシスを誘発する(Cornelis, Nature2001)。YopPの細胞質ゾル送達は、細菌性二重膜エンベロープおよび宿主細胞膜を横切った移行を伴い、宿主細胞との接触時に活性化される、活性化タンパク質分泌機械設備(III型タンパク質分泌システム)により誘発される。このようなタンパク質分泌機械設備は、YopPの細胞質ゾルへの送達に絶対に必要とされる。
YopPは、BID/カスパーゼ8経路の活性化および抗アポトーシス因子の放出の抑制によるか、またはNF−κBの阻害を伴う少し「直接的」な経路を通して、のいずれかの2つの経路の1つを通してアポトーシスを活性化すると考えられる。YopPは、IKKによるNF−κB阻害剤のリン酸化を妨げ、それによりNF−κBの核への移動を阻害する。YopPはまた、上流MAPKキナーゼ(MEKs)を阻害することにより、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)シグナル伝達経路の阻害を引き起こす。YopPのこれらの阻害作用の結果として、cAMP−応答エレメント結合タンパク質(CREB)および活性化転写調節因子(ATF)−1などの転写アクチベーター、ならびにNF−κBは、接着分子およびTNF−αなどの前−炎症性サイトカインの合成に関与する遺伝子の転写を刺激することが出来ない(Orthら、1999、Orth、2002およびPalmerら、1999)。
YopPは、プロテアーゼ、たぶん脱−SUMO化ファミリーのプロテアーゼであると思われる(SUMOは「低分子ユビキチン−関連変更分子(small ubiquitin-related modifier)」である。)。YopPの推定二次構造は、アデノウイルス(AVP)のシステインプロテアーゼのものと類似している。触媒トライアッドにおける突然変異(YopPのHis109、Glu128およびCys172)により、YopPはMARKまたはNF−kB経路のいずれかを阻害することができなくなる。
本発明は、エンドソームから標的細胞の細胞質ゾルへのキメラタンパク質またはそのフラグメントの移行を可能にするポリペプチドによって結合された、細胞特異的標的因子のアミノ酸配列およびエルシニア外側タンパク質(Yop)のアミノ酸配列を含むキメラタンパク質に関する。
本発明の1つの実施態様において、キメラタンパク質の細胞特異的標的因子は、標的細胞の表面に発現されるリガンドの受容体の細胞外部分である。たとえば、TNF結合タンパク質1(TBP−1)またはTNF結合タンパク質2(TBP−2)のようなTNF/NGFリガンドの受容体の細胞外部分である。
本発明の別の実施態様において、本発明のキメラタンパク質におけるYopは、YopP、またはアルギニン−143残基で突然変異したYopP血清群O:3、O:9またはO:8などの減少したアポトーシス活性を有するか、またはアポトーシス活性を有さないYopPである。
本発明の別の実施態様において、本発明のキメラタンパク質の移行を可能にするポリペプチドは、最後のα−へリックスドメイン(F)に欠損のある移行ドメインもしくは図3でシュードモナス・アエルギノーサ外毒素のアミノ酸配列に相当する、本明細書においてPEIItrと称される移行ドメイン(配列番号:3)のようなシュードモナス外毒素移行ドメインまたはそのフラグメントを含む。
本発明のさらに別の実施態様において、本発明のキメラタンパク質は、1つまたは2つのフリン切断部位を含む。さらに詳細には、PE外毒素の切断部位ような1つのフリン切断部位が、移行可能な前記ポリペプチドのN末端に配置され、一方、ジフテリア毒素の切断部位(たとえば、RVRR)のような他のフリン切断部位は、前記Yopタンパク質のN末端に配置される。
さらに別の実施態様において、本発明のキメラタンパク質は、本明細書においてTBP−YopPと称される、TBP−1、シュードモナス・アエルギノーサ外毒素PEIItrの移行ドメインフラグメント、フリン切断部位DTおよびYopP、またはそのムテイン、変異体、融合タンパク質、機能性誘導体、フラグメントもしくは塩より構成される。
本発明の1つの態様において、本発明のキメラタンパク質の細胞標的は、マクロファージまたは単球細胞のようなリンパ球様細胞である。
本発明別の態様において、本発明のキメラタンパク質の細胞標的は、上皮細胞である。
別の実施態様において、本発明は、前記キメラタンパク質をコードするDNA配列を提供し、さらに、そのDNA配列は、真核細胞における分泌のためのシグナルペプチドをコードしうる。
さらに別の実施態様において、本発明は、前記DNA配列を含む発現ベクターを提供し、そのDNAは任意に、EF−1αプロモーターのような、NF−kBから独立する活性を示すプロモーターに機能的に連結する。
さらに別の実施態様において、本発明は、前記発現ベクターを包含するHeLa、CHO、HEK293、酵母および昆虫細胞などの原核または真核細胞のような宿主細胞を提供する。
本発明の1つの態様において、前記宿主細胞を培養し、産生された前記キメラタンパク質を単離することを含む前記キメラタンパク質を製造する方法が提供される。
本発明の別の態様において、前記キメラタンパク質および薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物が提供される。
別の態様において、本発明は、TNFのようなTNF/NGF受容体のリガンドの活性が、疾患の発症または経過に関与している疾患治療のための医薬品の製造における前記キメラタンパク質の使用を提供する。該疾患の例として、マラリア、敗血症、リューマチ性関節炎、乾癬、炎症性大腸疾患、および癌が挙げられる。
1つの実施態様において、本発明は、活性化マクロファージまたは単球細胞が、発症または経過に関与する疾患の治療のための医薬品の製造における前記キメラタンパク質の使用に関する。該疾患の例として、敗血症性ショック、リューマチ性関節炎、強直性脊椎炎、乾癬、筋萎縮性側索硬化症、インシュリン依存性糖尿病、移植片対宿主疾患、および鎌型赤血球貧血があげられる。
別の実施態様において、本発明は、疾患治療のための医薬品の製造における前記キメラタンパク質の使用に関し、NF−kB活性が、好ましくは、該疾患におけるNF−kB活性が標準経路を介してNIKにより誘発される際に、該疾患の発症または経過において関与する。
1つの態様において、本発明は、TNFのようなTNF/NGF受容体のリガンドが、発症または経過に関与している疾患の治療方法であって、治療上有効量の前記キメラタンパク質を、必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。
1つの実施態様において、本発明は、活性化マクロファージまたは単球細胞が、発症または経過に関与している疾患の治療方法であって、治療上有効量の前記キメラタンパク質を、必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。
別の実施態様において、本発明は、NF−kB活性化が、発症または経過に関与しており、おそらくNF−kB活性化が、標準経路を介してNIKによって誘発される疾患の治療方法であって、治療上有効量の前記キメラタンパク質を、必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。
さらに別の実施態様において、本発明は、単球細胞やマクロファージ細胞などの標的細胞における細胞表面上のTNFなどのリガンドの異常な発現を減少させる方法であって、該標的細胞をキメラタンパク質に暴露することを含み、該キメラタンパク質が、標的細胞の細胞質ゾルにエンドソームから、該キメラタンパク質またはそのフラグメントの移行を可能にするポリペプチド(PEIItrなど)によって結合される、標的細胞の表面上に発現されるリガンドの受容体の細胞外部分およびYopを含む方法を提供する。
別の実施態様において、細胞は、インビトロで前記キメラタンパク質に暴露される。
さらに別の実施態様において、細胞は、インビトロで前記キメラタンパク質に暴露される。
本発明は、細胞特異的標的因子のアミノ酸配列、およびエンドソームから標的細胞の細胞質ゾルへのキメラタンパク質またはそのフラグメントの移行を可能にするポリペプチドに結合されたエルシニア外側タンパク質(Yop)のアミノ酸配列を含むキメラタンパク質に関する。
本発明によれば、細胞特異的標的因子は、特定の細胞に存在する特異的細胞表面構成要素に結合する能力のある任意の因子であり得る。たとえば、可能な標的因子は、特異的細胞表面構成要素に結合する抗体、ホルモン、サイトカイン、および好ましくはTNF/NGFファミリーの受容体のような標的細胞の表面上に発現されるリガンド用受容体の細胞外部分である。受容体の可溶型の自然発生が、TNFの2つの受容体、CD27、CD30、Fasおよびその他を含むTNF/NGFファミリーのほとんど全ての構成要素について説明されている。本発明の1つの実施態様において、キメラタンパク質は、自然発生か、または人工的可溶型TNF/NGFファミリーの受容体のいずれかを包含する。TNF/NGFファミリーのいずれかの特定の受容体の全細胞外ドメイン、またはそのフラグメント、ムテイン、融合タンパク質または他の機能性誘導体を使用できる。本発明の1つの実施態様において、キメラタンパク質は、TNF受容体の細胞外部分;TNF結合タンパク質1(TBP−1)を包含する。本発明の別の実施態様において、キメラタンパク質は、TBP−2を包含する。
本発明によるキメラタンパク質は、YopE、YopM、好ましくはYopP、さらに好ましくは、Yop血清群O:8より低いアポトーシス活性を示すことが示されたアルギニン−143で突然変異したYopP血清群O:3、O:9およびO:8のような、アポトーシス活性が減少したか、またはアポトーシス活性がないYopPのようなエルシニア外側タンパク質を包含する(Ruckdeschelら、2001)。
本発明によれば、移行を可能にするポリペプチドは、細胞質ゾルへのタンパク質のアクセスを可能にする能力のある任意のポリペプチドを含む。移行を可能にするこのようなポリペプチドは、細菌毒素、たとえば、ボツリナム毒素、アントラックス毒素、ジフテリア毒素、リシン毒素、および好ましくはシュードモナス外毒素に由来し得る。本発明の1つの実施態様において、最後のa−へリックスドメインを欠くシュードモナス・アエルギノーサ外毒素のポリペプチド(図2におけるDNA配列、配列番号:2、図3におけるおよびアミノ酸配列、配列番号:3参照)(PEIItr)が移行のために使用される。
本発明のキメラタンパク質は、1つまたはそれ以上のフリン切断部位を含み得る。本発明の1つの実施態様において、2つの異なるフリン切断部位は、キメラタンパク質中に存在し、特に、一方は、移行ポリペプチドのN末端に配置され、もう一方は、YopのN末端に配置され、それらはシュードモナス・アエルギノーサ外毒素、およびジフテリア毒素起源由来である。
本発明の1つの実施態様において、TBP−1、シュードモナス・アエルギノーサ外毒素の移行ドメインフラグメントPEIItr、フリン切断部位DTおよびYopPより構成されるキメラタンパク質が開発される(TBP−YopPと名付けられた)。
本発明は、TNFを結合し、かつNF−kB活性を阻害し、および/または細胞におけるTNF放出を阻害する能力のある、TBP−YopP、またはそのムテイン、変異体、融合タンパク質、機能性誘導体、フラグメントもしくは塩を提供する。
本発明によるキメラタンパク質は、マクロファージおよび単球細胞などのリンパ球様細胞において、および上皮細胞において結合、貫通および作用することが分かった。TBP−YopPは、単球細胞の特徴を示す活性化細胞株(THPI)において、結合し、細胞毒性を誘発することが分かった。TBP−YopPの細胞毒性活性は、THPI細胞の表面TNFを通して特異的に誘発されることが分かった。対照的に、シュードモナス外毒素の移行および触媒ドメイン(PE38)に融合したTBPより構成される別のキメラタンパク質であるTBP−PE38(2004年6月28日に出願された米国仮出願番号第60/582827号で開示された)は、活性化THPI細胞の細胞毒性を引き起さなかった。TBP−PE38は、表面TNFを過剰発現するように遺伝子操作された上皮細胞株であるHeLaM9細胞に対して細胞毒性がある一方で、TBP−YopPは、これらの細胞に対して細胞毒性がないことが分かった。
本発明によるキメラタンパク質は、所定のリガンドが細胞の表面で過剰に発現される特定の細胞で作用する能力があり、そのようなリガンドがより低いレベル、または正常なレベルを発現するように該細胞を「育成する」能力がある。たとえば、本発明の1つの実施態様において、TBP−YopPは、活性化一次マクロファージに対して、細胞毒性を誘発せず、TNF分泌を阻害するという、望ましく特異的効果を有する。
本明細書において使用される場合、用語「ムテイン」は、タンパク質の天然に存在する成分の1つまたはそれ以上のアミノ酸残基が、元のタンパク質と比較して、得られる産物の活性を大きく変化させることなく、様々のアミノ酸残基によって置換されるか、または欠失されるか、または1つまたはそれ以上のアミノ酸残基を、タンパク質の元の配列に加えられるタンパク質の類似体を意味する。これらのムテインは、既知の合成により、および/または部位指定突然変異発生技術、またはそれらに適切な他のあらゆる既知技術によって製造される。
本発明によるムテインとしては、ストリンジェントな条件化で、本発明によるタンパク質をコードするDNAまたはRNAにハイブリダイズするDNAまたはRNAのような核酸によってコードされるタンパク質が挙げられる。用語「ストリンジェントな条件」は、当業者が、従来的に「ストリンジェント」と称す、ハイブリダイゼーションおよびそれ続く洗浄条件を意味する。Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、前記、Interscience, N.Y.,§§6.3および6.4(1987、1992)、およびSambrookら(Sambrook, J. C.、Fritsch, E. F.およびManiatis, T.(1989)、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY)。
限定されないが、ストリンジェントな条件の例としては、たとえば、2×SSCおよび0.5%SDSで5分間、2×SSCおよび0.1%SDSで15分間において、試験下のハイブリッドの算定Tmより12〜20℃低い洗浄条件;0.1×SSCおよび0.5%SDS、37℃で30〜60分間および、その後、0.1×SSCおよび0.5%SDS、68℃で30−60分間の洗浄条件が挙げられる。当業者らは、ストリンジェントな条件が、DNA配列、オリゴヌクレオチドプローブ(10〜40塩基など)または混合オリゴヌクレオチドプローブの長さにもよることを理解している。混合プローブを使用する場合、SSCの代わりにテトラメチルアンモニウムクロリド(TMAC)を使用することが好ましい。Ausubel、前記参照。
このようないずれかのムテインは、TBP−YopPと実質的に同様であるか、または勝る活性を示すように、TBP−YopPのアミノ酸配列を十分に複写したアミノ酸配列を有する。たとえば、TBP−YopPの1つの特徴的活性は、特定の細胞に浸透し、細胞毒性を引起し、および/またはTNF放出および/またはMARKのシグナル伝達を阻害する能力である。細胞毒性、TNF分泌、およびp38リン酸化を測定するためのアッセイは、以下の実施例で示される。ムテインが、活性化THPI細胞において実質的な細胞毒性活性を有し、および/または活性化一次マクロファージ細胞においてTNF放出を阻害し、および/またはHeLaM9細胞においてpP38リン酸化を阻害する能力がある限り、TBP−YopPと実質的に同様の活性を示すとみなされ得る。したがって、いかなる所定のムテインが、以下の実施例でTBP−YopPについて示されるように、日常的な実験の手段によって、本発明のキメラタンパク質と少なくとも実質的に同じ活性を示すかどうかが決定され得る。
好ましい実施態様において、いかなるこのようなムテインは、TBP−YopPのアミノ酸配列と少なくとも40%同一性または相同性を有する。さらに好ましくは、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または最も好ましくは、少なくとも90%の同一性または相同性を示す。
同一性は、配列を比較することによって決定される2つまたはそれ以上のポリペプチド配列または2つまたはそれ以上のポリヌクレオチド配列間の関係を反映する。一般に、同一性は、比較されるべき配列の長さに渡って、それぞれ、2つのポリヌクレオチドまたは2つのポリペプチド配列の正確なヌクレオチド対ヌクレオチドまたはアミノ酸対アミノ酸一致のことを言う。
正確な一致のない配列については、「同一性率(percent identity)」を決定し得る。一般的に、比較すべき2つの配列を、その配列間の最大相関を得るために、並べる。これには、アライメントの程度を増強するために、1つまたは両方の配列いずれかでの、「ギャップ」の挿入が含まれる。同一性率は、同一、または非常に類似の長さの配列に対してとりわけ好適である、比較している配列のそれぞれの全配列にわたり(グローバルアライメントと呼ばれる)、または等しくない長さの配列により好適である、より短い、定義された長さにわたって(ローカルアライメントと呼ばれる)、決定してよい。
2つまたはそれ以上の配列の同一性および相同性を比較するための方法が、本発明分野でよく知られている。したがって、たとえば、Wisconsin Sequence Analysis Package,バージョン9.1(Devereux Jら、1984、Nucleic Acids Res. 1984 Jan 11;12(1 Pt 1):387-95)にて使用可能なプログラム、たとえばプログラムBESTFITおよびGAPを、2つのポリヌクレオチド間の%同一性、および2つのポリペプチド配列間の%同一性および%相同性を決定するために使用してよい。BESTFITは、SmithおよびWaterman(J Theor Biol.1981 Jul 21;91(2):379-80およびJ Mol Biol.1981 Mar 25;147(1)195-7.1981)の「ローカル相同性」アルゴリズムを使用し、2つの配列間の類似性の最適な単独領域を見つける。配列間の同一性および/または類似性を決定するための他のプログラムもまた、本技術分野で公知であり、たとえば、プログラムのBLASTファミリー(www.ncbi.nlm.nih.govにて、NCBIのホームページを介してアクセス可能、Altschul D Sら,1990 J Mol Biol.1990 Oct 5;215(3)403-10,Proc Natl Acad Sci USA.1990 Jul;87(14):5509-13, Altschul S Fら,Nucleic Acids Res.1997 Sep 1;25(17):3389-402)およびFASTA(Pearson W R,Methods Enzymol.1990;183:63-98.Pearson J Mol Biol.1998 Feb 13;276(1):71-84)がある。
従って、本発明によって使用することができるムテインTBP−YopP、またはそれをコードする核酸としては、本明細書において示される教示および指針に基づいて、過度の実験なしに、当業者が日常的に得ることができる置換ペプチドまたはポリヌクレオチドとして実質的に対応する配列の有限の組が挙げられる。
本発明によるムテインについての好ましい変化は、「保存的」置換として知られている置換である。TBP−YopPの保存的アミノ酸置換としては、その群のメンバー間の置換が、分子の生物学的機能を保存する、十分に類似の生理化学的特性を有する基内の同義アミノ酸が含まれ得る(Grantham Science.1974 Sep 6;185(4154):862−4)。アミノ酸の挿入および欠損がまた、それらの機能を変化することなく、好ましくは挿入または欠損が、数個のアミノ酸、たとえば30以下、好ましくは10以下にのみ関与し、機能的配座に対して必須であるアミノ酸、たとえばシステイン残基を除去または置換せず、前記で定義した配列で実施してよい。そのような欠損および/または挿入によって産生されるタンパク質およびムテインが、本発明の範囲内である。
本発明に使用するためのTBP−YopPのムテインを得るために使用されうるタンパク質におけるアミノ酸置換の生成の例は、Markらに対する米国特許第4,959,314号、第4,588,585号および第4,737,462号;Kothsらに対する第5,116,943号、Namenらに対する第4,965,195号;Chongらに対する第4,879,111号;およびLeeらに対する第5,017,691号で示されるもの、および米国特許番号第4,904,584号(Shawら)で示されるリシン置換タンパク質などのあらゆる既知方法段階を含む。
本明細書で使用するところの「機能的誘導体(functional derivatives)」は、残基上の側鎖として存在するか、本技術分野で公知の方法によって、N−またはC−末端基への添加物である官能基から調製し、薬理学的許容性を維持する限り、すなわちTBP−YopPの活性の活性と実質的に同様のタンパク質の活性を破壊しない限り、本発明に含まれる、TBP−YopPの誘導体、およびそれらのムテインをカバーしている。
これらの誘導体には、たとえば、抗原部位をマスクし、体液中のTBP−YopPの滞留を延長しうるポリエチレングリコール側鎖が含まれる。他の誘導体には、カルボキシル基の脂肪族エステル、アンモニアまたは一級または二級アミンとの反応によるカルボキシル基のアミド、アシル部位と形成したアミノ酸残基の遊離アミノ基のN−アシル誘導体(たとえばアルカノイルまたはカルボン酸アロイル基)、またはアシル部位と形成される遊離ヒドロキシル基のO−アシル誘導体(たとえばセリルまたはスレオニル基のもの)が含まれる。
本発明による「活性分画」は、たとえば、TBP−YopPのフラグメントでありうる。用語フラグメントは、TBP−YopPの所望の生物学的活性を保持する短いペプチドである分子の任意の一部(subset)に該当する。フラグメントは、TNP−YopPのいずれかの末端からアミノ酸を除去し、活性化THPI細胞におけるその細胞分解特性および/または活性化一次マクロファージ細胞におけるTNF放出の阻害効果および/またはHeLaM9細胞におけるpP38リン酸化の阻害について結果物フラグメントを試験することによって、十分に作製され得る。ポリペプチドのN末端またはC末端のいずれかから、一度に1つのアミノ酸を除去するためのプロテアーゼが知られており、そのようにして決定された望む生物学的活性を保持するフラグメントが、従来の実験のみによって生じる。
TBP−YopP、ムテインおよびその融合タンパク質の活性分画として、本発明は、さらに、前記分画がTBP−YopPに実質的に類似の活性を示すという条件で、タンパク質分子単独、またはそれに連結した結合分子または残基を伴ったポリペプチド鎖のあらゆるフラグメントまたは前駆体、たとえば、糖またはリン酸残基、またはそれら自身によるタンパク質分子または糖残基の凝集体を網羅する。
本明細書において、用語「塩」は、TBP−YopPのカルボキシル基の塩、およびアミノ基の酸付加塩の両方を意味する。カルボキシル基の塩は、当技術分野で知られた手段によって形成され得、無機塩、たとえばナトリウム、カルシウム、アンモニウム、第二鉄または亜鉛塩などを含み得、たとえば、トリエタノールアミン、アルギニン、またはリシン、ピペリジン、プロカイン等のようなアミンで形成されたものとして有機塩基を用いた塩が挙げられる。酸付加塩としては、たとえば、塩酸または硫酸のようなたとえば、鉱酸との塩、およびたとえば、酢酸またはオキザロ酸のような有機酸との塩が挙げられる。もちろん、このような塩はいずれも、TBP−YopPの生物学上の活性を保持するに違いない。
「機能性誘導体」は、あらゆる従来の方法により、変化がTBP−YopPを作製するアミノ酸の配列で導入されたTBP−YopPから作製される多量体も包含する。これらの変化は、TBP−YopP分子の伸長または切断、またはTBP−YopPの1つまたはそれより多くのアミノ酸の欠失または置換を含みうる。前記変化の内で、キメラタンパク質の特性に影響を及ぼしうるものはないことが分かった。
移行を可能にするポリペプチドに、そしてYopに細胞特異的標的因子を結合させる手段は様々である。1つの実施態様では、組換え手段によって、細胞特異的標的因子を、移行を可能にするポリペプチドに、そしてYopに融合させる。当業者に知られている任意のクローニング手段によって、2つのタンパク質およびポリペプチドをコードする遺伝子を、cDNAとして、またはゲノム形態で単離できる。タンパク質およびポリペプチドも、化学的に連結させ得る。この化学的連結は、ピアス・ケミカル・カンパニー(Pierce Chemical Company)から入手可能なもの、ロックフォードI11(たとえば、BS3(ビス[スルホスクシニミジル]スベレート)のような二官能性リンカー分子を使用することによって行われうる。
組換え手段による細胞特異的標的因子、移行を可能にするポリペプチド、およびYopのあいだの融合は、直接的でありうるか、または任意の種類のリンカー、たとえばアミノ酸、ペプチドまたはポリペプチド、スルフィドリル基、ポリマーなどでありうる連結分子および/またはスペーサーを通してでありうる。連結分子は、キメラの局在化または内在化により崩壊されうる分子でありうる。
組換えDNA方法論を使用して本発明のキメラタンパク質を産生させることは、一般に、キメラタンパク質をコードするDNA配列を作り出すこと、特定のプロモーターの制御下で、通常、発現ベクター中に存在する発現カセットに該DNAを入れること、宿主でタンパク質を発現させること、発現タンパク質を単離すること、必要に応じて、タンパク質を変性させることを含む。
本発明は、本発明のキメラタンパク質をコードするDNA配列、および該DNAを包含する発現ベクターを提供する。本発明によるDNAは、さらに、真核細胞で製造されるキメラタンパク質の分泌のためのシグナルペプチドをコードしうる。真核細胞における製造のための好ましい発現ベクターは、NF−kB、たとえばEF−1αプロモーターに独立である活性を示すプロモーターに機能的に連結された本発明のキメラタンパク質をコードするDNAを包含する。
さらに、本発明は、本発明のキメラタンパク質をコードするDNAを含む発現ベクターを包含する宿主細胞に関する。宿主細胞の例は、HeLa、CHO、293T、酵母、昆虫細胞のような真核細胞、および大腸菌のような原核細胞である。好ましくは、宿主細胞は、HeLaM9(下記の実施例参照)のようなYopの細胞死滅効果に耐性がある。
本発明によると、本発明の培養宿主を包含し、製造されたキメラタンパク質を単離するものである本発明によるキメラタンパク質を製造する方法の提供がある。
いったん発現されると、本発明の組換えキメラタンパク質を、当業界の標準手段によって精製でき、たとえば精製は、硫酸アンモニウム沈降、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などの段階を含みうる。
発現および精製の後、キメラは、構成要素ポリペプチドの生来のコンフォメーションと実質的に異なるコンフォメーションを保有しうる。この場合には、ポリペプチドを変性させ、還元し、その後ポリペプチドに、好ましいコンフォメーションに再折り畳みさせることが必要でありうる。
変性は、組換えタンパク質を含有する粗材料を、カオトロピック剤(たとえば、尿素<またはグアニジンHCl)、還元剤および高pHの組合せに暴露することによって達成される。これらの条件は、通常、封入体でタンパク質の可溶化および変性を引起す。結局、タンパク質の透明液体を得る。この段階で、タンパク質は、二次または三次構造なしで完全に開放される。次の段階は、タンパク質の折り畳みを可能にするpH、還元剤およびカオトロピック剤濃度の極端な条件を緩和することである。その生来の三次構造に折畳むタンパク質の能力を、その一次構造によって指示する。従って、混沌および還元剤濃度を低下させ、pHを減らすことは、通常十分である。しかし、しばしば、条件の微細調節を必要とする。
本発明は、本発明のキメラタンパク質を包含する医薬組成物に関する。本発明の1つの実施態様では、キメラタンパク質は、TBP−YopP、またはそのムテイン、変異体、融合タンパク質、機能性誘導体、フラグメントもしくは塩である。
本発明の医薬組成物は、非経口投与、すなわち、皮下、筋肉内、または静脈内に特に有用である。非経口のための組成物は、一般に、抗体の溶液、または許容しうる担体、好ましくは水性担体中に溶解されたそのカクテルを包含する。多様な水性担体、たとえば水、緩衝液、0.4%生理食塩水などを使用しうる。
本発明の単回または多回投与は、患者によって要求され、寛容な場合に、投与量および頻度によって投与されうる。これらの処方におけるキメラ分子の濃度は、治療上の効果を得るために十分な量の分子を、体内に送出するように設計される。自己免疫疾患の場合には、組成物は、自己免疫疾患の経過および重度に影響を及ぼし、患者の症状を改善するのに十分である多量のキメラを送出するように設計されて、その疾患の減少または緩和にいたる。有効量は、投与の経路、治療されるべき疾患、および患者の症状による。
本発明のキメラタンパク質の種々の用途の中で、特定のヒト細胞によって引起される疾患または症状の治療または予防が挙げられる。たとえば、所定のリガンドが過剰に発現される特定の細胞。キメラタンパク質は、低レベルまたは正常レベルのリガンドを発現する細胞を死滅させるか、または「育成する」ために投与されうる。
1つの実施態様において、本発明は、TNF/NGF受容体のリガンドの活性が、疾患の病理発生または経過に関与する疾患の治療のための医薬品の製造で、本発明のキメラタンパク質、好ましくはTBP−YopP、またはそのムテイン、変異体、融合タンパク質、機能性誘導体、またはフラグメントの使用を提供する。
別の実施態様において、キメラタンパク質は、TNFが、敗血症ショック、移植片対宿主疾患(GVHD)、マラリア、感染性肝炎、結核のような急性疾患、並びに癌関連悪液質、慢性GVHD、リューマチ様関節炎、小児性糖尿病、炎症性大腸疾患、および乾癬のような慢性疾患のような病原性の役割を果たす疾患の治療のために使用される。別の好ましい用途は、キメラタンパク質が結合するリガンドを発現する悪性細胞によって引起される癌の治療のためのである。キメラタンパク質は、たとえば、移植の前の骨髄からの有害細胞の排除で、インビボでも使用されうる。
さらに別の実施態様において、キメラタンパク質は、活性化リンパ様細胞が、病気発生に、または疾患、たとえば敗血症ショック、リューマチ様関節炎、強直性脊椎炎、乾癬、筋萎縮性側索硬化症、インシュリン依存性糖尿病、移植片対宿主疾患、および鎌状赤血球貧血の経過に関与している疾患の治療のために使用される。
さらに別の実施態様において、キメラタンパク質は、NF−kB活性化が、疾患の発症または経過に関与している、好ましくは、NF−κBを、正規の経路を介して誘発する疾患治療のために使用される。
ここで、本発明を記述して、例示によって提供される、本発明を限定することを意図しない、以下の実施例によって、本発明がより容易に理解できるものとなる。
実施例1. p55TNF受容体(TBP−1)の細胞外部分、シュードモナス外毒素IIの切断移行ドメイン(PEIItr)、ジフテリア毒素フリン切断部位(DT)、およびエルシニアYopPタンパク質を含むキメラ遺伝子の構築(本明細書においてTBP−YopPと称す)。
図1Aに図解で示されるとおり、キメラTBP−YopP遺伝子(配列番号:1、図1C)を製造するために、可溶性型p55TNF受容体をコードするDNAフラグメント、最後の(F)α−へリックスを欠くシュードモナス外毒素IIの切断移行ドメイン(それぞれ、図2、配列番号:2および図3、配列番号:3のDNAおよびアミノ酸配列)、および毒素YopPに融合されたジフテリア毒素フリン切断部位の各々を製造し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅させ、ライゲーションした。
可溶性型p55TNF受容体のアミノ酸配列(TNFRSF1A、ジーンバンクID M75866)は、ヒト尿から単離された可溶型受容体の主要な種のもの(TBP−1)に対応し(米国特許第5,811,261号)、それは、受容体の細胞外ドメインのAsp41からAsn201までを示す(スイス−プロット取得番号:P19438)。テンプレートとして全長TNFRI(プラスミドpc55)(Nopharら、1990に記載されるプラスミドpc55)および以下のプライマー:
フォアワードプライマー:
を使用して、PCR(1)増幅(ベーリンガー・マンハイム(Boehringer Mannheim)から得た高誠実Taqポリメラーゼを使用)によって、可溶型p55TNF受容体、TBP−1を単離した。
このプライマーは、NdeI制限部位(キメラ遺伝子を発現ベクターに挿入するために後に必要とされる)、続いてTBP−1の5’末端を重複する20ヌクレオチド(コーディング配列をイタリック体にする)を有する。
このプライマーは、TBP−1の相補3’末端を重複する22ヌクレオチド、続いてHindIII制限部位をコードするヌクレオチド(TBP DNAを、PEIItrをコードするDNAに連結するために後に必要とされる)を有する。
シュードモナス・アエルギノーサ外毒素A型遺伝子(受託番号K01397、NCBIジーンバンク)の残基278から384までに対応するポリペプチド配列、PEIItrをコードするDNA配列(配列番号:2)は、テンプレートとしてシュードモナス・アエルギノーサの血清群61のゲノムDNA(Leitner G. Kimron Veterinary Institute、イスラエル)、および以下のプライマー類:
フォアワードプライマー:
を使用したPCR増幅によって単離した。
このプライマーは、HindIII制限部位をコードするヌクレオチド(PEIItrを、前記増幅したTBP−1 DNAに連結するために後に必要とされる)、続いてリンカー配列をコードする14ヌクレオチド、ccggaggtcccgag、および続いて外毒素A(受託番号K01397)のヌクレオチド1577−1603に対応するPEドメインIIの5’末端を重複する27ヌクレオチドを有する。
リバースプライマー:
このプライマーは、SmaI制限部位、および384の前にあり、384アミノ酸残基を含むPEの残基をコードするDNAに相補的なヌクレオチド1894−1874を有する。それは、PEのアミノ酸384の前にあり、それを含むアミノ酸残基をコードする相補的ヌクレオチド(gtcgttgccggtgccctgccg)、停止コドンおよびSmaI(cccggg)およびEcoRI(gaattc)制限部位(下記で単離されるDT−YopP DNAフラグメントにライゲートするために後に必要とされる)を包含する。PEIItrフラグメント(PCR2産物)を、DT−YopP(PCR3産物、下記参照)にライゲーションする前に、pET−ベクターのHindIII/EcoRI部位に挿入した。
ジフテリア毒素(DT)−フリン切断部位(RVRR)をコードするDNAで、その5’末端にライゲートされたYopPをコードするDNAを作製するために、三番目(PCR3)を行った。PCR3については、エルシニア・エンテロコリティカ血清群O:8のYopPエフェクター残基1−864をコードするDNAをテンプレート(TrEMBL、受託番号Q93KQ5)として使用し、以下のプライマー:
フォアワードプライマー:
を使用した。
このプライマーは、SmaIのヌクレオチド配列(TBP−1−PEIItrにライゲートするために後に必要とされる)、続いてDTフリン切断部位(RVRR)をコードする12ヌクレオチド、およびYopP遺伝子の5’末端を重複する31ヌクレオチドを包含する。
このプライマーは、YopP遺伝子の3’末端を重複する30相補的ヌクレオチド、およびEcoRIの制限部位(TBP−1−PEIItrにライゲートするために後に必要とされる)を包含する。
PEIItr−DT−YopPフラグメントを得るために、前記増幅DT−YopP(PCR3産物)DNAフラグメントを、SmaIおよびEcoRIで消化させ、続いて適合性末端を通してPEIItrにライゲートさせた。
NdeI/EcoRI部位に挟まれたキメラTBP−PEIItr−DT−YopPフラグメントを得るために、TBP−1(PCR1産物)を、PETIItr−DT−YopPを含有するpET基本のベクターのNdeI/HindIII部位に挿入した。キメラTBP−PEIItr−DT−YopP遺伝子をコードするベクターpTBP−YopPを、E.coli株(DH5α)中に形質転換し、増幅し、当技術分野において既知の方法により精製した。
実施例2. 真核細胞におけるTBP−YopPのNF−κB阻害活性の評価
YopPは、炎症の発生における中心であることが知られる転写因子であるNF−κBを阻害する。以下の実験は、キメラTBP−YopPタンパク質が、真核細胞におけるNF−κB阻害活性を保持するかどうかを、細菌性封入体におけるタンパク質の製造および可溶化タンパク質の再折り畳みの前に試験するために行った。
最初に、真核細胞におけるYopPの発現用の適切なプロモーターを探すために、Yopを単独で含むベクターを用いて実験を行った。この目的のために、YopP DNAを、2つの異なる真核生物のベクターpcDNA3−HisAおよびpEF6−v5−HisA(インビトロゲン)に挿入した。pcDNA3−HisAおよびpEF6−v5−HisAは、それぞれ異なるプロモーター、CMVおよびEF−1αを有する。これらのベクターは、タグ付タンパク質の製造を可能にする。タグ付YopPタンパク質を得るために、YopPの停止コドンを、PCRによって突然変異させて、バリンをコードさせた。YopPをタグ付きにすることにより、タグ特異的抗体を使用することによってウエスタンブロット分析で発現したYopPの検出を可能にする。
YopPおよびGFPは、CMVプロモーターの制御下で、His−T7−YopPをコードするpcDNA3基本のベクターと、レポーター遺伝子His−T7−GFPの両方を同時トランスフェクトさせることによって293細胞で発現された。平行して、YopP−v5およびレポーター遺伝子β−ガラクトシダーゼ−v5は、EF1−αプロモーターの制御下で、YopP−v5をコードするpEF6基本のベクターと、レポーター遺伝子β−ガラクトシダーゼ−v5の両方を同時トランスフェクトさせることによって293細胞で発現された。
図4のBで示されるとおり、CMVプロモーターによって制御されるHis−T7−YopPの発現は、弱すぎて、検出用の抗−T7抗体を使用したウエスタンブロット分析によって見ることができなかった。CMVプロモーターは、3つの強力なNF−κB結合部位を含有する(図4のC)。従って、おそらく、CMVプロモーターによって制御されるタンパク質の発現は、NF−κBの強力な阻害剤、YopPによって阻害された。
図4のBで観察された結果はまた、トランスフェクション反応におけるYopPプラスミド濃度を1から5μgまで増大させると、同様にCMVプロモーターの阻害によってもっともおそらく引起されるGFP−発現の減少という結果になった。
対照的に、YopPは、EF−1αプロモーター下で発現された場合に容易に検出された(図4のA)。さらに、YopPは、EF−1αプロモーター下で発現されたレポーター遺伝子β−ガラストシダーゼの発現を阻害しなかった(図4のA)。
CMVプロモーターとは異なり、EF−1αプロモーターの活性は、NF−κB活性から独立している(図4のC)ので、YopPおよびキメラTBP−YopPは、EF−1αプロモーターの制御下で効率よく発現された。
EF−1αプロモーターの制御下で発現されたYopPが、真核細胞中でNF−κB活性を阻害するかどうかを調べるために、以下の実験を行った。YopPのNF−κB阻害活性を調べるために、293細胞を、YopPをコードするpEF6−v5−HisAまたは空のpEF6−v5−HisAベクターと、NF−κB誘発性tat−プロモーター下でルシフェラーゼをコードするベクターとで同時トランスフェクトし、トランスフェクションの48時間後に、細胞をTNFで処理してNF−κB活性化を誘発するか、または未処理細胞のままとし、細胞を溶解し、ルシフェラーゼ発現(活性)を測定した。
NF−κB活性化を誘発するために、トランスフェクションの48時間後、293細胞を、6時間、50ng/mlの組換えヒトTNF−αで処理した。TNF−αによる誘発後、細胞を、3回、PBSで洗浄し、トリトン/グリシルグリシン溶解緩衝液(1%トリトンX−100、25mM グリシルグリシン、pH7.8、15mM MgSO4、4mM EGTA、1mM DTT)中で、氷上で溶解し、溶解物を、アッセイ緩衝液(25mM グリシルグリシン、pH7.8、15mM MgSO4、4mM EGTA、1mM DTT、15mM K3PO4、pH7.8(またはNa2HPO4))で4回希釈した。ルシフェラーゼ活性を測定するために、2mM ATPおよび200μM ルシフェラーゼを添加した。
図5のAに示されるとおり、ベクター(pEF6−v5−HisA)単独でトランスフェクトされた細胞のTNF−α処理(およびNF−κB活性化)は、非処理細胞に比較して、6,000以上のルシフェラーゼ単位の増大を示した。空のベクターの代わりに、YopPをコードするベクター(0.1または5μg)を使用した場合に、ルシフェラーゼ活性の阻害(およびNF−κB活性の阻害)が観察された。
代わりに、NF−κB活性化は、NIK(スイス−プロット一次受託番号Q99558、名称:細胞分裂で活性化されるタンパク質キナーゼキナーゼキナーゼ14、同義語:NF−カッパ ベータ−誘発性キナーゼ)を過剰発現させることによって誘発することができる。YopPのNF−κB阻害作用を、NIKの過剰発現によって媒介されるNF−κB活性化でも評価した。図5のBは、NIKをコードする発現ベクター(pNIK)で細胞をトランスフェクトすると、トランスフェクトの48時間後にNF−κB活性化を誘発したこと、pNIKと、YopPをコードするベクターとの同時トランスフェクトが、NF−κB活性化を防止することを示す。
NIK媒介NF−κB活性化のYopP阻害が、NF−κB活性化の代替経路の阻害を介して引起されるという可能性を探索した。この目的のために、代替経路によるNF−κB活性化に特異的である代謝変化を、YopPの存在下で、または非存在下で誘発されるNF−κB活性化に続いて測定した。たとえば、異所性の添加YopPの存在下、または不在下におけるNIK媒介NF−κB活性化に続いて、p100の分解およびp52の見掛けにおける変化をモニターした。図5のCにおける結果は、p52およびp100のレベルが、YopPの存在下で影響されなかったことを示す。従って、YopPによるNIK媒介NF−κB活性化の阻害は、正規の経路の阻害のみを介して引起されるようである。
前記結果に基づいて、EF−1αプロモーターを、真核細胞におけるキメラTBP−YopPの発現を制御するために選択した。pEF6−v5−HisAベクターのBamHI/EcoRIクローニング部位に、NdeI−EcoRIに隣接したTBP−YopP挿入物をライゲートするために、挿入物およびベクターのNdeIおよびBamHI突出部位を、それぞれ、ライゲーションの前に充填した。ライゲーション後、生じたプラスミドは、TBP−YopP/pEF6と名付けられた。
TBP−YopPのNF−κB阻害活性を調べるために、293細胞を、空のベクター、TBP−YopP/pEF6またはpYopP−v5−Hisのいずれかと、NF−κB誘発性tat−プロモーター下でルシフェラーゼをコードするレポーターベクターとを同時トランスフェクトした。NF−κB活性化を誘発するために、トランスフェクトした48時間後、細胞を、6時間、50ng/ml組換えヒトTNF−αで処理した。TNF−αによる誘発後、細胞を、PBSで三回洗浄し、トリトン/グリシルグリシン溶解緩衝液(1%トリトンX−100、25mM グリシルグリシン、pH7.8、15mM MgSO4、4mM EGTA、1mM DTT)中で氷上で溶解し、溶解物を、アッセイ緩衝液(25mM グリシルグリシン、pH7.8、15mM MgSO4、4mM EGTA、1mM DTT、15mM K3PO4、pH7.8(またはNa2HPO4))で4回希釈した。ルシフェラーゼ活性を測定するために、2mM ATPおよび200μM ルシフェラーゼを添加した。
ベクター単独でトランスフェクトされ、TNF−αで処理された細胞の溶解液が、非処理細胞の溶解液と比較して、80,000以上のルシフェラーゼ単位の増大(すなわち、NF−κB活性化)を示した。空のベクターの代わりに、YopP単独またはTBP−YopPキメラのいずれかをコードするベクターを使用した場合、ルシフェラーゼ発現の阻害(すなわち、NF−κB活性化の阻害)が観察された(図6のA)。抗−v5および抗−TBP−1抗体を用いた、TBP−YopP/pEF6でトランスフェクトされた細胞由来の溶解液のウエスタンブロット分析により、全長キメラTBP−YopPが、約63kDaの見掛け分子量で真核細胞の細胞質で発現されることを示した(図6のB)。プラスミドから発現されることによって、キメラタンパク質が、フリンおよびフリン様タンパク質が作用するオルガネラであるゴルジまたはエンドソームに入らなかったので、キメラタンパク質は、フリンまたはフリン様プロテアーゼによって切断されなかった。
得られた結果は、いったん真核細胞中に入ると、キメラTBP−YopPタンパク質が、YopP単独と同じくらい有効にNF−κB活性を阻害する能力があることを示す。
実施例3. 細菌細胞におけるTBP−YopPの産生
TBP−YopPが、真核細胞で活性であること(先行の実施例参照)が立証された後、キメラタンパク質は、以下のとおり細菌細胞中で産生された。
コンピテントBL−21/pLysS(DE3)細胞を、TBP−YopPを含有するベクター(pTBP−YopP、実施例1参照)で形質転換し、アンピシリンを含有する2YT寒天プレートに播種し、30℃で、一晩(約16時間)インキュベートした。細胞形質転換体を、寒天プレートから収集し、プレート当たり5mlの2YT中に懸濁させた。収集した細菌細胞を、3リットルの2YT中で、200μg/mlカルベニシリンと共に培養し、細胞培養物のO.D.600が、0.6になるまで30℃でインキュベートした。その後、細胞を20℃に移し、組換えタンパク質発現の誘発のために、1mM イソプロピルβ−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)で処理した。IPTG添加の45分後、200μg/mlリファンピシン(DMSO中に100mg/mlの保存溶液)を、その細胞に添加した。細胞培養物を、5時間、20℃で成長させ、遠心分離(6000rpm、10分、4℃)により収集し、得られた細胞ペレットは、−70℃で凍結保存した。
細胞溶解物を調製するために、凍結細胞ペレットを、氷上で解凍させ、100mlの緩衝液A[カルシウムおよびマグネシウムなしのリン酸緩衝生理食塩水(「PBS w/o」)、50mMのEDTA、5mgのMgSO4、4錠の完全プロテアーゼカクテル(ロッシュ)、30mg/lのDNAエースI(シグマ))]に再懸濁させた。細胞凝集塊を破壊するために、細菌懸濁液を、氷上で超音波処理した。以下の方法により、全細菌溶解を得た。3×35mlの細胞を、5000プサイでフレンチプレスにかけ、その後、15000プサイで二回プレスにかけた。その後、溶解細胞を、SS−34ローターを採用する、ソルバル遠心機で50分間、4℃、15,000rpmで遠心分離(27,000×g)にかけた。ペレットを、20mM EDTAおよび3%トリトンX−100を含有する40mlの「PBS w/o」に再懸濁し、氷上で超音波処理して、封入体を再懸濁した。溶解細胞から放出される封入体を、50分間、4℃、27,000×gで、超遠心分離により沈澱させた。封入体を、さらに二回、20mM EDTAおよびトリトンを含有する40mlのPBSで洗浄し、トリトンの不在下で、20mM EDTAを含有する40mlのPBSで三回洗浄した。
組換えタンパク質のほとんどを含有する封入体(SDS−PAGEによって判定されるように、図7のA)を、8M 尿素を含み、pH12〜12.8に滴定された5mM 2−メルカプトエタノールを含有する変性溶液に溶解した。使用された変性溶液の量は、封入体の湿重量の443倍に等しかった。封入体の全溶解を促進するために、溶液を激しく渦回転させ、氷上で超音波処理した。
タンパク質を、pH9.5で、50mM ホウ酸緩衝液で10倍希釈して再生させ、穏やかに攪拌(200rpm)しながら、4℃で18〜20時間インキュベーションにかけた。
2.5リットルの再折り畳みタンパク質を、限外濾過機PM30(アミコン)を介して超遠心分離により15倍濃縮し、濃縮タンパク質の最終体積を、約170mlとした。ブラッドフォード試薬(Bradford reagent)(シグマ)によって、再折り畳み粗タンパク質のタンパク質濃度を、約100μg/mlであると概算した。TBP−YopP融合タンパク質を、約10%の再折り畳み粗タンパク質(SDS−PAGEにおけるタンパク質バンドの密度測定器により概算されるとおり)であると概算した。したがって、3リットルの細菌培養物から、約1.7mgのキメラTBP−YopPタンパク質を得るか、または500mg封入体から、17mgの全粗タンパク質を得て、その1%付近のもの(約170ng)が、活性キメラTBP−YopPタンパク質であった(下記の実施例4参照)。
得られた結果は、細菌性封入体で産生されるキメラTBP−YopPは、再折り畳みでき、63Kdaの正確なサイズを示したことを示す(図7)。
実施例4. TNFに対するキメラTBP−YopPタンパク質の結合
細菌細胞で産生されるタンパク質(実施例3参照)である再折り畳みTBP−YopPが、TNF結合活性を保持するかどうかを評価するために、以下の実験を行った。
TNF被覆プレートを使用して、TNFに対するTBP−YopPの結合を評価した。TNFに対するTBP−YopPの結合を、TNFに対する非キメラ組換えヒトTBP−1(CHO起源のHPLC精製)と、TNFに対するシュードモナス・エルギノーサ外毒素の移行および触媒ドメインに融合されたTBP−1を含む別のキメラタンパク質であるTBP−PE38(2004年6月28日に出願された仮米国出願第60/582827号で開示される)の結合と比較した(図8)。
4℃で、16時間、0.02%NaN3を含有する0.1MのNa2CO3(pH9.6)中の2mg/ml精製TNFの溶液でプレートをインキュベートすることによって、96ウエルのマイクロタイタープレートを、TNFで被覆した。インキュベーション後、ウエルをPBSで洗浄して、さらに、3%BSA、0.02%NaN3を含有する0.2ml/ウエルPBS(遮断溶液)と共に、37℃で、3時間インキュベートした。図8のAで示される量のタンパク質を含有する、TBP−YopP、TBP−1またはTBP−PE38の50μlサンプルを、ウエル(三重に)当たりに塗布し、そのプレートを、37℃で、1時間インキュベートした。必要であれば、サンプルを遮断溶液で希釈した。1時間のインキュベーションに続いて、プレートを、遮断溶液で三回洗浄した。遮断溶液で1:1000に希釈した50μlのウサギ抗−TBP−1抗体を、ウエルに添加し、37℃で、1時間、または4℃で一晩インキュベートし、遮断溶液で三回洗浄した。50μlの二次抗体、1:1000に希釈された抗−ウサギ−HRPを、ウエルに添加し、37℃で1時間インキュベートし、遮断溶液で三回洗い流した。0.01%H2O2を含有する100μlの新しく調整した溶液ABTSを添加し、37℃で30分間インキュベートした。TBPまたはキメラTBPの存在を、405nmで測定された緑色強度の見掛けにより検出した。
図8で要約されるTNF結合アッセイで、HPLC精製TBP−1のTNF結合活性を、100%(図8のB)とすると、TNF−αに対する粗再折り畳みTBP−YopPの結合許容量は、約0.5〜1%であることが分かった(図8のB)。再折り畳みTBP−YopPが、封入体の全タンパク質のわずか5〜10%であることを考慮して(先行の実施例および図7参照)、我々は、タンパク質の少なくとも10%が適切に再折り畳みされていると結論付けた。したがって、TBP−YopP再折り畳みの効率が、10%に近いTBP−PE38の再折り畳みの効率(2004年6月28日に出願された米国仮出願番号第60/582827号)に類似であると分かった。主要な差は、再折り畳みTBP−PE38が、封入体中の粗タンパク質の30%以上を表すことであった。
得られた結果は、細菌中で産生されるキメラTBP−YopPが、正確に再折畳まれ、TNFを結合する能力があることを示す。
実施例5. インサイチューでの再折り畳みTBP−YopPの活性
エルシニアの感染中に、YopPを細胞に注入する。いったん細胞の内側に入ると、YopPは、TNF−α放出を抑制すること、および感染マクロファージにおけるアポトーシスを誘発することが知られている(Cornelis G.R. Nature、2001)。以下の実験は、3つの異なる細胞:LPS活性化ヒト単球THPI細胞株、表面TNF−αを過剰発現するヒト上皮HeLa M9細胞株、およびマウスLPS−活性化一次マクロファージ中でシュードモナス・アエルギノーサ外毒素の移行および触媒ドメインに融合したTBP−1を包含する別のキメラタンパク質TBP−PE38(2004年6月28日に出願された米国仮出願番号第60/582827号)との比較で、TBP−YopPの細胞毒性を調べるように設計された。特異性を試験するために、非キメラヒト組換えTBP−1を、TNF結合について競合するいくつかのウエルにキメラタンパク質の直前に適用した。
マクロファージ様細胞株に対するキメラタンパク質の細胞毒性を調べるために、THPI細胞(実施例7)を、16時間、インシュリン 1mkg/ml、トランスフェリン 1μg/ml、亜セレン酸Na 1ng/ml、ピルビン酸Na、非必須アミノ酸、PMA50〜100ng/mlのグルタミン、を含有するFcs不含RPMI中の96ウェルプレート中でウエル当たり密度200,000細胞で播種した(マクロファージ様表現型およびLPS受容体の露出を誘発するために)。その後、1〜1.5時間、濃度1μg/mlでLPS E.coli(0111−B4)を、10μg/mlの濃度でGM6001(細胞表面からTNF陰り(shading)を防止するメタロプロテイナーゼ阻害剤)と一緒に添加した。得られたPMA−LPS−GM6001処理THPI細胞は、大量の表面TNFを有するマクロファージ細胞の表現型の特徴を示す。これらのマクロファージ様細胞株を、約20時間、種々の濃度の再折り畳みTBP−YopPまたはTBP−PE38とインキュベートし、生存を評価するためにニュートラルレッドで染色した。表示した場合、組換えヒトTBP−1を、細胞表面TNFと競合する再折り畳みキメラタンパク質の直前に添加した。図9のAで示されるとおり、TBP−YopPは、25および50μg/mlの濃度で、活性化THPI細胞の50〜70%の細胞死を引起す。活性TBP−YopPが、粗再折り畳みタンパク質のわずか1%付近を構成すること(図8のB)を考慮に入れると、我々は、TBP−YopPの有効濃度が、0.25μg/ml程度の低さであると評価した。TBP−1は、100倍過剰で使用した場合、TBP−YopPの毒性から細胞を完全に保護することが分かり、TBP−YopPの細胞毒性効果が、活性化THPI細胞の表面TNFを通して特異的に誘発されることを示した。
対照的に、他のキメラタンパク質TBP−PE38が、活性化THPI細胞の細胞死を引起さないことが分かった(図9B)。
得られた結果は、TBP−YopPが、活性化単球様細胞株の表面に特異的に結合し、細胞に浸透し、細胞死を引起すことを示す。
TBP−YopP細胞毒性の細胞特異性を試験するために、膜結合TNFを過剰発現する遺伝子操作された上皮細胞株であるHeLa M9においてTBP−YopPの細胞毒性効果を評価した(実施例7)。
HeLa M9細胞を、10%Fcsを有するRPMI中の96ウェルプレート中のウエル当たり密度100,000細胞で播種した。接着後、それぞれ、所定の濃度の再折り畳みキメラタンパク質TBP−YopPまたはTBP−PE38を、ウエルに添加し、約20時間インキュベートした。表示した場合、組換えヒトTBP−1を、細胞表面におけるTNFに対する結合に競合するため、再折り畳みキメラタンパク質の直前に添加した。20時間のインキュベーションに続いて、細胞を、細胞生存を評価するためにニュートラルレッドで染色した。
図10で示される結果は、TBP−YopPが、THPI細胞の約75%細胞死を引起すことが示された濃度である25μg/ml程度の高さの濃度で、上皮HeLaM9細胞に対する細胞毒性はなかったことを示す(図9のA)。
対照的に、TBP−PE38は、0.6μg/mlの濃度で、HeLaM9細胞において90%以上の細胞死を引起した。このTBP−PE38の濃度では、THPI単球細胞株において細胞毒性効果を示さなかった(図9のB)。TBP−1は、TBP−PE38の細胞毒性効果を防止し、TNF結合によるTBP−PE38作用の特異性を示す。TBP−PE38のバッチの一つは、非常に活性があり、0.06μg/ml程度に低い濃度で細胞毒性があり、HeLaM9細胞の65%近くまで死滅させた。
全体において、これらのデータは、いったん細胞の内側に入ると、TBP−YopPは、マクロファージ様細胞株に対して細胞毒性であるが、上皮HeLaM9細胞に対しては毒性がないことを示す。TBP−YopPが、HeLaM9細胞に対して細胞毒性ではないが、飢餓の後の血清活性化により引起されるp38リン酸化のTBP−YopP阻害により立証されるとおり(実施例6および図10参照)、それは、表面TNFに結合し、HeLa M9細胞に浸透することを示す実験上の証拠を得た(下記の実施例6参照)。
再折り畳みTBP−YopPの活性は、LPS活性化一次マクロファージでも試験した。一次マクロファージの作製のために、雌マウスC57BL/6に、1.5ml滅菌ブリューワーのチオグリコレートブロス(ジフコ(Difco))を、4日間、腹腔内(i.p.)で注入した。腹腔滲出液(>85%マクロファージ)を、4日目に収穫し、遠心分離によりPBSで洗浄し、10%加熱不活化Fcsを含むRPMI中に1×100,000マクロファージ/ウエルで、96ウェル平底プレートに播種した。細胞を18時間接着させた。暖かい培地で洗浄することによって、非接着細胞を除去した。
マクロファージ活性化を誘発するために、5μg/mlのGM6001(カルバイオケム)の存在下で、マクロファージ単層を、図12に示される濃度(1μgおよび10μg)のLPS(E.coli LPS 011:B4)を用いて1時間処理した。誘発後、細胞を、再折り畳みTBP−YopPまたはTBP−PE38の存在下、または非存在下で、さらに2時間インキュベートした。次に、細胞培養用の培地へのTNF−αの分泌を可能にするためGM6001なしで、同じ濃度のLPSを用いて、培地をRPMI+10%HFcsに交換した。一晩インキュベートしたマクロファージの細胞培養培地を収集し、TNF−αを、バイオアッセイによって測定した。細胞単層を、ニュートラルレッドで染色して、細胞生存を測定した。
図12で要約された、得られた結果は、キメラタンパク質TBP−YopPまたはTBP−PE38のいずれも、活性化一次マクロファージに細胞毒性でなかったことを示す。
YopPが、TNF分泌を阻害することが知られているので、TBP−YopPの存在下、または非存在下でインキュベートされたLPS−活性化一次マクロファージの成長培地中に分泌されるTNFのレベルを評価した(図13)。活性化一次マクロファージの培地を収集して、新鮮な培地で2倍、4倍および8倍(それぞれ、0.5、0.25、0.125)に希釈し、ウエル当たり密度1×105細胞(96ウェルプレート上に)で播種されたTNF感受性細胞(L929)の単層に塗布した。10μg/mlシクロヘキシミドの存在下で、バイオアッセイを行った。L929細胞(ネズミ結合組織クローンL929 ATCC番号CCL−1)を、活性化マクロファージの調整培地でインキュベートし、20時間インキュベートした。L929細胞毒性のレベルは、活性化一次マクロファージの調整培地中に存在するTNFの濃度に比例している。
図13で示されるとおり、チオグリコレート処理腹腔マクロファージは、ある程度のTNF−αを産生した。たとえば、チオグリコレート処理済腹腔マクロファージの2または4倍希釈培地は、40%以上のTNF感受性L929細胞の死を引起した。しかし、LPSによる別のマクロファージ活性化は、TNF分泌を増大した。たとえば、細胞死は、活性化マクロファージの8倍希釈された調整培地にさらされたときに60%以上高かった(図13のA、B)。TBP−PE38の存在下の活性化一次マクロファージの調整培地は、TBP−PE38の非存在下における活性化マクロファージの調整培地と等しくL929について毒性であることが分かった(図13のB)。この結果は、TBP−PE38が、一次活性化マクロファージにおけるTNF分泌を阻害しないことを示す。対照的に、TBP−YopPの存在下で活性化されたマクロファージの調整培地は、TBP−YopPの非存在下で活性化されたマクロファージの調整培地に比較して、比較的毒性が低い。たとえば、TBP−YopPの存在下で活性化されたマクロファージの調整培地を、8倍希釈(図131Aで0.125)すると、TNFの量は、低すぎてL929細胞に毒性でなかった。4倍または2倍希釈のような低希釈は、なお、L929細胞の60〜70%を死滅させるのに十分なTNFを含有した。TBP−YopPと組合わせたTBP−1とのマクロファージのインキュベーションは、TNF製造におけるTBP−YopPの阻害影響を防止した(図13B、0.125)。この場合には、細胞死は、約60%であり、すなわち、同じレベルの細胞死が、TBP−YopPの非存在下における活性化マクロファージの調整培地を使用して観察された。
これらの結果は、TBP−YopPまたはTBP−PE38のいずれも、活性化一次マクロファージの死を引起さないが、しかしTBP−PE38とは異なり、TBP−YopPは、活性化一次マクロファージにおけるTNF分泌を阻害する能力があることを示す。
従って、TBP−YopPは、活性化マクロファージにおいて、このような細胞を死滅させることなく、マクロファージ細胞中におけるTNF−α産生を減少させるという治療目的のために利用することができる、望ましく、特定の効果を有する。
実施例6. HeLa M9細胞におけるp38のリン酸化におけるTBP−YopPの阻害効果
YopPタンパク質は、MARKおよびNF−κB経路を阻害することが知られている。前述の実施例で、TBP−YopPが、HeLaM9細胞に対して細胞変性効果を有さないことが示された。HeLa M9細胞におけるTBP−YopPのなんらかの効果があるかどうかを調査するために、MAPKカスケードのシグナル伝達の指標であるp38のリン酸化を調べた。
HeLa M9(ウエル当たり200,000細胞)を、96ウェルプレートに播種し、インシュリン(1mkg/ml)、トランスフェリン(1μg/ml)、亜セレン酸Na(1ng/ml)、ピルビン酸Na、非必須アミノ酸グルタミンを含有するFcs不含RPMI中で16〜18時間飢餓状態にさせた。その後、10μlの体積中に1μgの組換えTBP−YopPを、細胞上に塗布し、細胞表面上でTNFと相互作用させ、1時間、細胞を浸透させた。対照として、10μlの溶媒(50mMホウ酸塩/NaOH緩衝液、pH8.5)を細胞に添加した。その後、図11のAで示されるとおり、全ての細胞についてのTBP−YopPとのインキュベーションの総時間が2時間となるよう、TBP−YopPの存在下で、60から5分までの異なる時間の時間間隔で、10%加熱不活化Fcs(HFcs)によって、細胞を活性化させた。続いて、細胞を、ホスファターゼ阻害剤NaVa(1mM)およびNaF(10mM)、およびプロテアーゼ阻害剤PMSF(1mM)、および完全(ロシュ)の存在下で、50μlのリン酸緩衝液(50mM NaH2PO4、300mM NaCl、1%トリトン(pH8.0))中で氷上で溶解させた。細胞溶解物を、リン酸化p38(pP38)に特異的なポリクローナル抗体(セル・シグナリング(Cell Signalling))を用いて検出されるウエスタンブロット分析にかけた。同じブロットを、負荷されたタンパク質の正規化のために抗IKK−α(モノクローナル抗−IKK−α、サンタ・クルーズ)で再調査した。
図11のBおよびCは、細胞が図11のAに例示されるとおり処理されたか、またはTBP−YopPの代わりに、溶媒(ホウ酸塩緩衝液)が、TBP−YopPの存在下、または非存在下でp38リン酸化を比較するために使用された2つの実験の結果を示す。
2つの実験の結果(図11のBおよびC)において、HFcs活性化の5分後に、HeLaM9でのp38のリン酸化が観察された。リン酸化は、最初の10分で増大し、HFcs活性化の30および60分後に徐々に減少した。TBP−YopPが、HFcs活性化の少なくとも30分後までに、HeLa M9細胞におけるp38のリン酸化を阻害することが分かった。
この実験で得られた結果は、TBP−YopPが、上皮細胞HeLa M9細胞にとって細胞毒性でないが、MAPKシグナル伝達カスケードでのTBP−YopP阻害作用により明示されるとおり、明らかにHeLaM9細胞に浸透することを示す。
実施例7. その表面にTNFを発現する細胞
2つの細胞株を、TBP−YopPの効果を調査するために使用した。(a)ヒト急性単球性白血病THPI細胞(ドイツ国コレクション・オブ・マイクロオーガニズムス・アンド・セル・カルチャーから入手)。これらの細胞の単球細胞分化は、ホルボールミリステートアセテート(PMA)で誘発しうる。これらの細胞を、10%Fcs、2mM L−グルタミン、1mM ピルビン酸Na、1% 非必須アミノ酸、9mg/mlインシュリン、100mg/mlペニシリンおよび100mg/mlストレプトマイシンが補充されたRPMI 1640培地中で、0.3〜1×106/mlの細胞密度範囲で培養する。細胞表面TNF発現を増強するために、PMAで活性化された(16〜20時間、100ng/ml)これらの細胞を、試験の前に2時間、LPS(1.5時間、1mkg/ml)で、10mcg/mlメタロプロテアーゼ阻害剤GM6001(カルバイオケム)で処理した。
(b)HeLa−M9細胞、位置+2でアルギニン、位置+3でセリンを、スレオニンに置換するヒトTNF突然変異体cDNAを、SV40プロモーターの制御下で、構造上発現する上皮HeLa頸部癌株のクローン。これらの突然変異は、26kDa TNFの約10倍の切断速度の減少を引起す。細胞を、10% Fcs、2mM L−グルタミン、100mg/ml ペニシリン、100mg/ml ストレプトマイシン、および50mg/ml ゲンタマイシンを補充されたRPMI 1640培地で培養する。
TNF−αの削減(shedding)を防止するメタロプロテアーゼGM6001(10μg/ml(カルバイオケム))の阻害剤の存在下で、FACSによって、THPI細胞の細胞表面におけるTNF発現を評価した。5×105細胞のサンプルを、16時間、インシュリン(1mkg/ml)、トランスフェリン(1μg/ml)、亜セレン酸Na(1ng/ml)、ピルビン酸Na、非必須アミノ酸グルタミンをPMA50〜100ng/mlと共に含有するFcs不含RPMI中でインキュベートした。その後、2時間、LPSE.coli 0111−B4を濃度1μ/mlで、GM6001(10μg/ml)と一緒に添加した。細胞表面におけるTNF発現のFACS分析のために、細胞を、4Cで、2mg/ml BSA、0.1% アジ化ナトリウムを含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で洗浄し、FITC−抗−ヒトTNF抗体と共にインキュベートした。FACScan(ベクトン.ディキンソン、マウンテン・ビュー、CA)によって分析を行った。少なくとも30%の細胞が、それらの表面上にTNF−αを発現することが分かった。
実施例8. 内在化アッセイ
TNF−α発現細胞(HeLaM9またはその他)を、0.1mg/mlのBSAを含有する培地中で、37℃で、[125I]−接合体(1mcg/ml)で標識した。その後、細胞をトリプシン処理し、氷冷PBSで洗浄し、PBS中の0.3%プロナーゼに再懸濁し、ジブチルフタレートによる遠心分離の前に2℃で40分間放置した。エンドサイトーシス効率は、取込みの30分後に、細胞結合[125I]−接合体のプロナーゼ耐性率として表される(Taupiac M-Pら、A1、1999から改修された)。
実施例9. SDS−PAGEおよび免疫ブロッティング
遠心分離によって収集された細胞を、Laemmli緩衝液に溶解する。サンプルを、0.1%SDS、10%アクリルアミドスラブゲルへの適用の前に5分間煮沸する。クーマシーブルーによって、または銀染色によって、ゲルを染色することができる。
免疫ブロッティングのため、電気泳動後にサンプルを、ニトロセルロース紙に移し、続いて毒素に対する抗体、または可溶型TNF受容体に対する抗体と反応させ、その後HRPに連結した二次抗体(毒素に対して−ヤギ抗ウサギ抗体、可溶性TNF受容体に対して−ヤギ抗マウス抗体)と反応させ、染色する。可溶性TNF受容体に対する既知モノクローナル抗体を、記述されるとおり使用する(Engelmannら、1990およびBigdaら、1994)。
実施例10. 関節炎の自発的発症に対するマウスモデルにおける融合タンパク質の治療活性
ヒトTNFトランスジーンの発現の翻訳制御を供する3’非コーディング領域が、β−グロビン遺伝子のものと共に発現される、ヒトTNFトランスジーンを発現するトランスジェニックマウス(Kefferら、1991)を使用した。生後2週間で、マウスに、種々の用量の試験タンパク質(融合タンパク質、および、対照として、毒素のタンパク質、および融合タンパク質に組込まれた可溶性TNF受容体のタンパク質)を腹腔内で注射し、その後、9週間の期間、週に1回再度注射した。関節の直径を測定することによって経時的にマウスの後足足首関節の腫れを評価した。関節構造に関与する病変/変化:関節皮膜、関節空間、滑膜、アキレス腱、および肋軟骨下の骨を、組織学的に評価する。
実施例11. 抗原誘発性関節炎に対するマウスモデルにおける融合タンパク質の治療活性
ルイスラットを、後足側面で、完全フロイントアジュバント中の0.5mgメチル化ウシ血清アルブミン(mBSA)で免疫化させる。21日後(0日目)、動物に、両方の後足膝関節で、発熱物質不含の生理食塩水中の50μgのmBSAを注射する。ラットに、関節内的に、その日、および続く2日に(0、1、2日目)、両方の膝関節中に試験タンパク質(融合タンパク質、および、対照として、毒素のタンパク質、および融合タンパク質に組込まれた可溶性TNF受容体のタンパク質)を注射する。処置に比例して0〜6日目に、膝関節幅を毎日測定する。6日目に収集された関節の組織病理学上の試験を行う。膝関節構造に関与する病変/変化:関節皮膜、関節空間、滑膜、アキレス腱、および肋軟骨下の骨を、評価する。
実施例12. 抗原誘発関節炎に対するマウスモデルにおける融合タンパク質の治療活性
雄のDBA/1マウス(8〜12週齢)を、尾の根元での皮内注射によってFCA中に乳化した100μgのII型コラーゲン(ジフコ、デトロイト、MI)で免疫化する。免疫化の時間から開始して、マウスに、臨床上の関節炎の発生まで、腹腔内に、週2回、PBS中の試験タンパク質(融合タンパク質、および、対照として、毒素のタンパク質、および融合タンパク質に組込まれた可溶性TNF受容体のタンパク質)を注射する。免疫化の15日後から、マウスを、2つの臨床パラメーター:脚の腫れおよび臨床上のスコアを使用して、疾患の発生について、10日間、毎日試験する。第一に冒された後足の厚みを、カリパスを用いて測定することによって、脚の腫れを評価する。
実施例13. 大腸炎に対するマウスモデルにおける融合タンパク質の治療活性
Harlan UKで購入されたIL−10ノックアウトマウスを、相互交配して、IL10遺伝子欠失についての同型接合のマウスを発生させ、それらの尾部DNAで行われるPCRによって同型接合についてスクリーニングする。4週齢で開始して、20週齢まで、マウスに、腹腔内で、週に三回、試験タンパク質(融合タンパク質、および、対照として、毒素のタンパク質、および融合タンパク質に組込まれた可溶性TNF受容体のタンパク質)を注射する。腸の臨床スコア、組織学的分析、および糞便中の炎症性サイトカインの含有量を、(Scheininら、2003)に記載されているとおりに評価した。
実施例14. 可溶型p75TNF受容体の接合体の発現のためのプラスミドの構築
接合体に組込まれる可溶型p75TNF受容体の配列(TNFRSF1B、ジーンバンクID M32315)は、該受容体の細胞外ドメインの全配列(Leu1からAsp235まで)に対応する。この配列は、実施例1に記述されるとおり、毒素の配列に融合され、pETベクターに挿入される。
TBP−YopPキメラタンパク質(A)、およびシュードモナス外毒素(PE)(B)の略図を示す。TBP−1は、TNF結合タンパク質I;PEIItrは、シュードモナス外毒素の切断ドメインII;DTは、ジフテリア毒素フリン切断部位;YopPは、エルシニア外側タンパク質である。Cは、TBP−YopPキメラタンパク質をコードするDNA配列(配列番号:1)を示す。
シュードモナス外毒素の切断ドメインIIをコードするフラグメントPEIItrのDNA配列(配列番号:2)を示す。
PEIItrのアミノ酸配列(配列番号:3)を示す。
YopPおよび受容体遺伝子をコードするベクターを宿すHEK293細胞(ヒト胚性腎臓細胞、ATCC番号CRL−1573)でのYopPの組換え発現を示し、両方の遺伝子は、EF1−α(A)またはCMV(B)プロモーターによって制御される。両方ともv5にタグ付けされ、EF1−αプロモーター(ベクターpEF6では、インビトロゲン)によって制御されるYopPまたはβ−ガラクトシダーゼ(bGal)をコードするベクターを、293細胞に同時トランスフェクトした(A)。トランスフェクションの48時間後、細胞を溶解させ、検出用の抗v5を使用してウエスタンブロット分析にかけた。1、2.5および5μgのYopP−v5/EF6、および0.1μgのβ−Gal/EF6プラスミドをトランスフェクションのために使用した。両方ともHis−T7にタグ付けされ、CMVプロモーター(ベクターpcDNA3−HisAで、インビトロゲン)によって制御されるYopPまたは緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするベクターを、293細胞に同時トランスフェクトした(B)。トランスフェクションの48時間後、細胞を溶解させ、検出用の抗T7を使用してウエスタンブロット分析にかけた。1、2.5および5μgのHis−YopP/pcDNA3−HisA、および0.1μgのHis−GFP/pcDNA3−HisAプラスミドをトランスフェクションのために使用した。Cは、EF−1αおよびCMVプロモーターの主要転写因子結合部位の略図を示す。活性化NF−κBの非存在下で抑制されうるCMVプロモーターから得られるYopPの発現が、検出可能な濃度以下にあること(B)が観察されたが、しかし増大量のYopP発現ベクターは、CMVプロモーターから得られるGFPの発現を阻害するので、YopPのNF−κB阻害活性が観察される。NF−κB活性に独立であるEF−1αプロモーターは、YopPの発現用のCMVプロモーターよりさらに適切であり、このプロモーターからのレポーター遺伝子の発現は、YopPによって影響されない(A)。真核細胞を用いた全ての別の実験では、YopPまたはその融合誘導体は、EF−1αプロモーターの制御下で発現される。
293細胞中でのNF−κB活性化のYopP媒介阻害を示す。Aは、293細胞中でのTNF媒介NF−κB活性化のYopP阻害を示す。NF−κB活性化を誘発するために、NF−κB誘発性tatプロモーターによって制御されるルシフェラーゼレポーター遺伝子を有する293細胞を、TNFで処理した。NF−κB活性化は、異所性YopPの存在下で達成された。Bは、293細胞中でのNIK媒介NF−κB活性化のYopP阻害を示す。NF−κB誘発性tatプロモーターによって制御されるルシフェラーゼレポーター遺伝子を有する293細胞を、NIKでトランスフェクトして、異所性YopPの存在下でNF−κB活性化を誘発した。NF−κBが、TNFを用いた細胞の処理によるか、またはNIK過剰発現によって誘発される場合、ルシフェラーゼ発現が増大した。YopPの存在下で、NF−κBの誘発は、活性化のために使用される因子に独立して阻害された。Cは、(左から右へ)NIKのみをコードするベクターでトランスフェクトした細胞の溶解物、NIKおよびYopPをコードするベクターで同時トランスフェクトされた細胞の溶解物、または空のベクターでトランスフェクトされた細胞の溶解物を示し、それらを、ウエスタンブロット分析にかけ、無傷のp100またはp52代謝産物を、抗−p52抗体で検出した。Cは、YopPが、代替経路を介して、NIK媒介NF−κB活性化を阻害しないことを示す。
真核細胞におけるTBP−YopPの発現および活性を示す。Aは、TBP−YopPを一過性で発現する真核細胞におけるTNF誘発NF−κB活性化の阻害を示す。TNF−媒介NF−κB活性化を阻害するTBP−YopPの能力を、NF−κB依存性プロモーター(tatプロモーター)によって制御されるルシフェラーゼ発現レポーターベクターでトランスフェクトされた293細胞で調査した。レポータープラスミドに加えて、293細胞を、TBP−YopPをコードする発現ベクター、YopPをコードする発現ベクターまたは空のベクター(pEF6A)のいずれかで同時トランスフェクトした。結果は、キメラTBP−YopPおよびYopPの両方が、NF−κBおよびルシフェラーゼの発現を等しく阻害することを示す。Bは、真核細胞で発現されるTBP−YopPを示す。293細胞を、TBP−YopPをコードする発現ベクター、YopPをコードする発現ベクターまたは空のベクターでトランスフェクトした。トランスフェクションに続いて、細胞を溶解させ、25μlの溶解液(または約100ngのタンパク質)を、SDS−PAGEの各レーンに載せた。レーン2、3および4、5および6、7(左から右へ)は、それぞれ、ベクターのみ(pEF6A−ベクター)、TBP−YopPをコードするベクター、およびYopPをコードするベクターでトランスフェクトされた細胞の二重サンプルを示す。SDS−PAGEに溶解したタンパク質を、ウエスタンブロット分析にかけ、組換えタンパク質の検出を、v5およびヒトTBP−1に特異的な抗体を用いて行った。Bは、TBP−YopPおよびYopPが、それぞれ、およそ63kDaおよび37.2kDaの見掛けの分子量で移動することを示す。
細菌性E.coli細胞で発現されるTBP−YopPを示す。E.coli細胞を、TBP−YopPをコードするpET−5発現ベクター、またはTBP−1および触媒ドメインと移行ドメインとを含むシュードモナス外毒素のフラグメントを含む別のキメラタンパク質(TBP−PE38、2004年6月28日に提出された米国仮出願第60/582827号で開示された)をコードするpET−5ベクターでトランスフェクトした。トランスフェクションおよびイソプロピルβ−D−チオ−ガラクトピラノシド(IPTG)誘発に続いて、pTBP−YopPを有するE.coliを溶解させ、溶解物を可溶性タンパク質と不溶性封入体(IB)に分画した。8M尿素に溶解した封入体のサンプル、または全(非分画)溶解物を、レーン当たり30μgの濃度でSDS−PAGEにかけ、分離した。ゲル中のタンパク質を、クーマシーブルーで染色した。異なるバッチのTBP−Yopは、AおよびBに示される。Cは、Bと同じ溶解物であるが、ウエスタンブロットにかけ(レーン当たり1μgタンパク質をかけた)、キメラタンパク質の検出のためにポリクローナルウサギ抗−TBP−1を使用して分析した。その図は、キメラTBP−YopPが、封入体中に見られ、SDS−PAGE上で、およそ63kDaの見掛けの分子量で移動することを示す。矢印は、TBP−YopPに対応する位置を示す。全−全E.coli溶解物。IB−封入体、MW−分子量基準。
細菌細胞で産生されるTBP−YopPのTNF結合活性を示す。Aは、非キメラHPLC−精製TBP−1の活性と比較した、粗再折り畳みTBP−YopPおよびTBP−PE38のTNF結合活性を示す。TNFに対するTBP−YopP、TBP−PE38またはTBP−1タンパク質の結合を、TNF被覆プレートを使用して評価した。所定量の再折り畳みキメラタンパク質またはTBP−1を、TNF被覆プレートに載せ、プレートへの結合を、抗TBP−1抗体によって検出した。たとえば、500ngの粗再折り畳みTBP−YopPは、20ngのTBP−PE38または5ngのTBP−1に近い程度の活性である。Bは、TNF結合活性を示す粗再折り畳みキメラタンパク質の百分率(%)を示す。たとえば、100%TNF結合としてTBP−1の活性を使用した場合、際折りたたみTBP−YopPおよびTBP−PE38の0.7%および25%が、それぞれ、TNF結合活性を示すことが分かった。
活性化単球様細胞におけるTBP−キメラタンパク質の細胞毒性を示す。単球様細胞(THPI)の特徴を示す活性化細胞株で評価された再折り畳みTBP−YopP(A)およびTBP−PE38(B)の細胞毒性効果を、競合するTBP−1の存在下、または非存在下で評価した。試験されたTBP−YopPおよびTBP−PE38の特定の濃度は、TBP−PE38がTBP−YopPより約36倍高いTNF結合活性を示すことを考慮に入れる(図8のB参照)。TBP−YopPのみが、活性化THPI細胞に対し細胞毒性効果を示すこと、またそのような細胞毒性効果はTBP−1との競合によって阻害されたので、特異的であることが分かった。競合相手TBP−1は、キメラタンパク質の直前に100倍過剰で使用した。TBP−PE38(1)および(2)は、再折り畳みTBP−PE38の2つの異なるバッチである。
上皮細胞におけるTBP−キメラタンパク質の細胞毒性を示す。TBP−YopP(A)またはTBP−PE38(B)の細胞毒性効果を、競合するTBP−1の存在下または非存在下で、過剰発現表面TNFに遺伝子操作された細胞株(Pocsikら、1995)である上皮HeLaM9細胞のモデルで評価した。試験されたTBP−YopPおよびTBP−PE38の特定の濃度は、TBP−PE38が、TBP−YopPより約36倍高いTNF結合活性を示すことを考慮に入れる(図8のB参照)。TBP−PE38のみが、上皮細胞株に対し細胞毒性効果を示すこと、およびそのような細胞毒性効果は、TBP−1との競合によって阻害されるので特異的であることが分かった。TBP−PE38(1)および(2)は、再折り畳みTBP−PE38の2つの異なるバッチである。
10%加熱不活化仔ウシ血清(HFcs)を用いた飢餓HeLAM9細胞の活性化によって誘導されるp38リン酸化のTBP−YopP−媒介阻害を示す。Aは、実験の略図を示す。HeLaM9細胞を、17−18時間飢餓状態にさせた。その後、再折り畳みTBP−YopPを、2時間、10μg/mlの濃度で添加し、その細胞を溶解させた。10%HFcsを、様々な時点、図式で矢印によって示されるとおり、細胞溶解の5、10、30および60分前に添加した。TBP−YopPの存在下、または非存在下での活性化後、細胞を溶解させ、細胞溶解物を、リン酸化p38(pP38)の検出用のpP38特異的ポリクロナール抗体を使用したウエスタンブロット分析にかけた。ゲル中の負荷タンパク質を正規化させるために、抗IKK−αを用いて同じブロットを検出した。BおよびCは、Aで示したとおり細胞を処理したか、またはTBP−YopPを溶媒(ホウ酸塩緩衝液)に置き換えた2つの実験の結果を示す。P38リン酸化は、血清添加により増大すること、およびそのような血清媒介pP38リン酸化は、TBP−YopPの存在下で減少されることが示された。−は、未処理飢餓細胞、そして5’、10’、30’および60’は、それぞれ、10%HFesにより5分、10分、30分および60分間の細胞の活性化を示す。
活性化一次マクロファージ細胞でのTBPキメラタンパク質の効果を示す。TBP−YopP(A)またはTBP−PE38(B)の指示濃度の細胞毒性効果は、競合するTBP−1の存在下または非存在下で、活性化一次マクロファージ細胞において評価した。組換えヒトTBP−1を、キメラタンパク質の直前で、100倍過剰で添加した。所定の濃度で、E.coli LPS0111−B4で処理することによって、一次マクロファージを活性化させた。試験されたTBP−YopPおよびTBP−PE38の特定の濃度は、TBP−PE38が、TBP−YopPより約36倍高いTNF結合活性を示すことを考慮に入れる(図8のB参照)。キメラタンパク質はいずれも、活性一次マクロファージに対して細胞毒性効果を示さないことが分かった。
活性化一次マクロファージによるTNF分泌に対するTBP−YopPおよびTBP−PE38の効果を示す。実施例5で示されるとおり、実験を行った。キメラタンパク質の存在下または非存在下で、LPS−活性化一次マクロファージの培養培地中に分泌されるTNFを、TNF感受性細胞株L929(マウス結合組織クローンL929、ATCC番号CCL−1)を使用してバイオアッセイでモニターした。培養培地を収集し、新鮮な培養培地を用いて二倍、四倍および八倍に希釈し、L929細胞に塗布し、その細胞のTNF依存性の死をモニターした。活性化マクロファージによるTNF分泌が、TBP−YopPによって阻害されるが、TBP−PE38によっては阻害されないことが分かった(B)。