しかしながら、上記シール材は、所望の箇所へ注入困難な場合がある。例えば、ケーブルが単に通過している敷設状況のマンホールや洞道等では、ケーブルは相当の引っ張り力で敷設されている。ここで3個より形のケーブルの場合は、防水装置近くのケーブル相互の隣接を引き離し、ケーブルのより合わせ中心のスペースにシール材を注入しなければならない。このようなシール材の注入作業は、分断されたケーブルの端部どうしを接続する直線接続部等を設ける機会がない限り、極めて困難である。より太径のケーブルなら困難性はさらに増す。また、上記シール材は、例えば洞道に敷設されているケーブルに対しては何ら対策を講じておらず、マンホールの管路口での止水のみを頼みとしている。よって、上記のようなシール材の注入作業は、可能な状況と、不可能に近い状況とが混在し、平均的な止水処理が施せない。ケーブルは、シール材の注入をしなかった通過敷設のマンホール等の浸水や洞道における部分的な浸水などによって導水し得る。これを契機に、ケーブルは、より合わせ中心のスペースを介して水の伝いもれ(毛細管現象)が起き、長距離に亘って導水する可能性がある。このような導水は、長期間繰り返され、ケーブルの絶縁部材に水トリー劣化を招く。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ケーブルの状況に影響することなく、簡便でより平均的な止水処理を施し得るケーブル導水制御方法、導水制御部材及びケーブル用補助工具を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するため、複数個より合わせ形の構造を有するケーブルにおいて、より合わせ中心のスペースによる連続する導水路をより安価に簡便に分断する技術を見出し、以下のような発明を完成するに至った。
(1) 所定の敷設場所に複数個より合わせ形のケーブルを敷設する工程と、前記ケーブルのより合わせ中心のスペースを導水路に見立て、該導水路を分断するため止水スポットを決定する工程と、前記止水スポットとして決定した前記ケーブルのより合わせ中心のスペース部分に、前記ケーブル相互の接近力で固定され得る、前記ケーブルに沿う導水を抑制し且つ前記ケーブル外への導水を促す導水制御部材を設ける工程と、を備えることを特徴とするケーブル導水制御方法。
(1)の発明によれば、ケーブルのより合わせ中心の相互隣接スペースが導水路になることを懸念し、導水路を分断すべく、止水スポットを決める。止水スポットは、複数設定してよく、特に、浸水の恐れがある敷設箇所のケーブル部分を重視して決定すればよい。導水制御部材は、止水スポットとして決定したケーブルのより合わせ中心のスペース部分に設けられ、より合わせられて伸長する故のケーブル相互の接近力で固定され得る。これにより、ケーブルの相互隣接スペースは、通常なら連続するところを分断された状態になる。従って、ケーブルは、導水制御部材により、連続するケーブルのより合わせ中心において任意の箇所で導水を抑制することができる。しかも、導水制御部材は、ケーブルに沿う導水を抑制し且つケーブル外への導水を促すように構成される。導水制御部材は、ケーブルの導水による被害が懸念される箇所に応じて任意に設けることができる。このため、ケーブルの状況に影響することなく、簡便でより平均的な止水処理を施し得るケーブル導水制御方法が提供できる。
(2) (1)に記載のケーブル導水制御方法において、前記導水制御部材を設ける工程は、前記ケーブルを敷設する工程の後で行うことを特徴とするケーブル導水制御方法。
(2)の発明によれば、(1)の発明に加えて、導水制御部材の配設は、ケーブルを敷設した後で行うことにより、ケーブルの敷設環境を確認したうえで要所に無駄なく導水制御部材を設けることができる。このため、ケーブルの状況に影響することなく、簡便でより平均的な止水処理を施し得るケーブル導水制御方法が提供できる。
(3) (1)または(2)に記載のケーブル導水制御方法において、前記導水制御部材を設ける工程は、前記ケーブルを敷設する工程の前または途中で行うことを特徴とするケーブル導水制御方法。
(3)の発明によれば、(1)または(2)の発明に加えて、導水制御部材の配設は、ケーブルを敷設する前または敷設する途中で行うことにより、敷設完了してからでは導水制御部材の配設が不可能な箇所に導水制御部材を設けることができる。例えば、標準形態において等距離間隔で導水制御部材を配設するなど、より平均的な止水処理を施したケーブルの敷設環境を構築することができる。このため、ケーブルの状況に影響することなく、簡便でより平均的な止水処理を施し得るケーブル導水制御方法が提供できる。
(4) 弾性を有する芯材と、前記芯材の周囲に設けられた繊維部材と、を備え、複数のケーブルのより合わせ中心のスペース部分に前記芯材が前記繊維部材を伴って設けられ、前記ケーブルに沿う導水を抑制し、前記繊維部材を介して前記導水により溜まった水分を蒸発させることを特徴とする導水制御部材。
(4)の発明によれば、芯材が弾性を有しているので、複数のケーブルのより合わせ中心のスペース部分に嵌め込まれるように容易に固定し得る導水制御部材を提供することができる。すなわち、周囲に繊維部材の設けられた弾性を有する芯材は、より合わせられて伸長する故のケーブル相互の接近力と芯材の弾力とが反発し合い固定される。また、繊維部材は、ケーブルに沿う導水を抑制すると共に水分を蒸発させる作用を有する。このため、ケーブルの状況に影響することなく、簡便でより平均的な止水処理を施し得る導水制御部材が提供できる。
(5) (4)に記載の導水制御部材において、前記繊維部材の一端は、前記複数のケーブルのより合わせ中心の部分から外部に導出されていることを特徴とする導水制御部材。
(5)の発明によれば、(4)の発明に加えて、繊維部材の一端がケーブルのより合わせ中心の部分から外部に導出されるようにしたので、ケーブルに沿う導水は繊維部材へ置換され、より早く外部へと排出(または蒸発)され得る。このため、ケーブルの状況に影響することなく、簡便でより平均的な止水処理を施し得る導水制御部材が提供できる。
(6) 複数のケーブルをより合わせた複数個より合わせ形ケーブルに用いられるケーブル用補助工具であって、前記複数のケーブルのより合わせ中心に向かうように前記複数のケーブルの個々の間に押し当てられるケーブル接触部材をそれぞれ有するガイド機構と、前記ガイド機構が固定され、前記複数個より合わせ形ケーブルを囲むための基材と、前記基材に設けられ、前記ガイド機構により前記ケーブル接触部材それぞれを前記複数のケーブルの個々の間に押し当てた状態で前記基材を回動させるための回動支持部材と、を具備し、前記回動支持部材を起点として前記基材を所定の方向に回動させることにより前記複数個より合わせ形ケーブルの前記複数のケーブルの相互の離間距離を変えることを特徴とするケーブル用補助工具。
(6)の発明によれば、複数のケーブルの個々の間に押し当てられるケーブル接触部材を設け、ケーブル接触部材を押し当てた状態で固定されたガイド機構を基材ごと所定方向に回動させるようにする。これにより、複数個より合わせ形ケーブルは、そのケーブル相互の離間距離を大きくすることができる。敷設されている複数個より合わせ形ケーブルでは、人の手だけでより合わせ中心に止水処理を施せるだけの隙間を作るのは非常に困難である。上記のように、ケーブル接触部材をそれぞれ有するガイド機構、回動支持部材を伴う基材を利用すれば、ケーブルのより合わせ中心に止水処理を施せるだけの隙間が比較的容易に、迅速に作り得る。このため、ケーブルの状況に影響することなく、簡便でより平均的な止水処理を施し得るケーブル用補助工具が提供できる。
(7) (6)に記載のケーブル用補助工具において、前記ケーブル接触部材は、前記ケーブルの伸長に沿う方向に垂直な断面について、前記ケーブル接触部材につながる他の前記ガイド機構の部分よりも幅広の形を有することを特徴とするケーブル用補助工具。
(7)の発明によれば、(6)の発明に加えて、ケーブル接触部材の形を、ケーブルの伸長に沿う方向に垂直な断面でみる場合にガイド機構のどの部分よりも幅広にすることによって、ケーブル接触部材がケーブルの個々の間に押し当てられ、より合わせ中心に到達したときケーブルを開く方向に導き易い。これにより、基材ごと所定方向(ケーブルのより合わせ回転方向と逆の方向)に回動させ容易にケーブル相互の離間距離を大きくすることができ、止水処理も容易に施され得る。このため、ケーブルの状況に影響することなく、簡便でより平均的な止水処理を施し得るケーブル用補助工具が提供できる。
(8) (6)または(7)に記載のケーブル用補助工具において、前記基材は、前記複数個より合わせ形ケーブルを囲む第1状態と、第1状態から外れた第2状態とに変更し得る着脱機構及び変形機構を有することを特徴とするケーブル用補助工具。
(8)の発明によれば、(6)または(7)の発明に加えて、基材は、着脱機構及び変形機構を有することにより、複数個より合わせ形ケーブルを囲み、ケーブル接触部材を各ケーブル間に押し当てるための第1状態と、それ以外の複数個より合わせ形ケーブルを囲まない、第1形態から外れた第2状態とに変更可能である。これにより、長距離でもって伸長している複数個より合わせ形ケーブルの任意の箇所において基材のセッティングや取り外しが可能である。このため、ケーブルの状況に影響することなく、簡便でより平均的な止水処理を施し得るケーブル用補助工具が提供できる。
(9) (6)から(8)のいずれかに記載のケーブル用補助工具において、前記各ガイド機構は、前記ケーブル接触部材と前記基材との間の長さを調節し得る調節手段を有することを特徴とするケーブル用補助工具。
(9)の発明によれば、(6)から(8)いずれかの発明に加えて、ガイド機構は調節手段(例えば、ねじ込み式など)を有することにより、ケーブル接触部材と前記基材との間の長さを変えることができる。これにより、ある程度複数個より合わせ形ケーブルの多様な種別に対応可能で、汎用性が高まる。このため、ケーブルの状況に影響することなく、簡便でより平均的な止水処理を施し得るケーブル用補助工具が提供できる。
本発明のケーブル導水制御方法によれば、複数個より合わせ形のケーブルの敷設において、ケーブルのより合わせ中心のスペースによる導水路を導水制御部材により分断し得る。導水制御部材は、ケーブルに沿う導水を抑制し且つケーブル外への導水を促すように、ケーブルの導水による被害が懸念される箇所に応じて任意に設けることができる。本発明の導水制御部材によれば、芯材の弾性により、複数のケーブルのより合わせ中心のスペース部分に嵌め込まれるように容易に固定し得る。また、芯材周囲の繊維部材により、ケーブルに沿う導水を抑制すると共に水分を蒸発させる作用を有する。本発明のケーブル用補助工具によれば、より合わせの複数のケーブルの個々の間に押し当てられるケーブル接触部材を設け、ケーブル接触部材を押し当てた状態で固定されたガイド機構を基材ごと所定方向(ケーブルのより合わせ回転方向と逆の方向)に回動させる。これにより、ケーブルのより合わせ中心に止水処理を施せるだけの隙間が比較的容易に、迅速に作り得る。このため、ケーブルの状況に影響することなく、簡便でより平均的な止水処理を施し得るケーブル導水制御方法、導水制御部材及びケーブル用補助工具を提供することができる。
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明する。本発明は以下の実施形態により発明が限定されるものではない。また、以下の実施形態においては、本発明を説明するための構成要件上で、当業者が容易に想定できる構成要素も含まれている。
図1は、本発明の第1実施形態に係るケーブル導水制御方法の要部を示す構成図である。図2は、図1で用いられる3個より合わせ形の構造を有するケーブルの正面の断面図であり、図3は、図2のケーブルに第1実施形態に係る導水制御対策を施した正面の断面図である。
図1において、ケーブル100a、100b、100cの3個より合わせ形の構造を有するケーブル100は、地中(または地下)を利用して敷設されており、ケーブル専用管路や、洞道(例えば下水道管渠内の洞道)などを管路として利用している。ケーブル100は、例えばゴム製のシール部材でなる防水装置11を介してマンホール(または洞道)内に引き込まれ連続して配される。このケーブル100のより合わせ中心には必然的にスペース110が形成される(図2参照)。このように、3個より合わせ形の構造を有するケーブル100は、複数個より合わせ形のケーブルの一例である。
図2を参照すると、3個より合わせ形のケーブル100に関して、個々のケーブル100a、100b、100cの構造は共通で例えば次のように構成されている。導体101は、同心円状に順次被覆された内部半導体層102、絶縁体103、外部半導体層104、遮蔽銅テープ105及び絶縁シース106により保護されている。これら各ケーブル100a、100b、100cでなるケーブル100のより合わせ中心にはスペース110が存在する。
ケーブル100の敷設環境の一部領域で浸水等が起こると、上記ケーブル100のより合わせ中心のスペース110は導水路となる。ケーブル100をマンホールや洞道に引き込む際、図1中に示すような防水装置20を設けない場合があり、さらには、防水装置20を設けていても、上記スペース110へのシール材の注入が実施されていないことも多々ある。すなわち、ケーブル100は、シール材の注入をしなかった通過敷設のマンホール等の浸水や洞道における部分的な浸水などによって、より合わせ中心のスペース110を導水路として水の伝いもれ(毛細管現象)を起こし、長距離に亘ってケーブル100の絶縁部材に水トリー劣化を招く懸念がある。そこで、ケーブル100のより合わせ中心のスペース110の導水路と見立てて、この導水路を分断すべく、止水スポットを決定する。止水スポットは、複数設定してよく、特に、浸水の恐れがある敷設箇所のケーブル部分を重視して決定すればよい。この止水スポットとして決定したケーブル100のより合わせ中心のスペース110の部分に、栓塞材120を設ける(図1、図3参照)。このように、栓塞材120は、ケーブルに沿う導水を抑制し且つケーブル外への導水を促す導水制御部材の一例である。
図1、図3の例において、栓塞材120は、ケーブル100における各ケーブル100a、100b、100c相互の接近力で固定され得る大きさ(径)の芯材121を有する。ケーブル100は、栓塞材120を設けた箇所だけ、各ケーブル100a、100b、100c相互の僅かな隙間G1を有する。これにより、導水路の分断に寄与する。芯材121の周囲には水分を停留、蒸発させ得るリボン122を有する。リボン122は、ケーブル100のより合わせ中心のスペース110から中空に垂れ下がるように導出されている。このように、リボン122は、芯材の周囲に設けられた繊維部材の一例である。これにより、栓塞材120は、ケーブル100に沿う導水を抑制し且つケーブル100外への導水を促す。栓塞材120を設ける間隔D1は、止水スポットを決定するうえで予め一定に決めていてもよいし、敷設環境によって数mから数kmの範囲で変えることもできる。
図4(a)〜(c)は、それぞれ図1に示す第1実施形態に係るケーブル導水制御方法の要部を示す工程図である。図4(a)において、3個より合わせ形の構造を有するケーブル100を敷設する(処理S41)。その後、実際の敷設環境を鑑み、止水スポットを決定する(処理S42)。そして、決定した止水スポットに対応するケーブル100のより合わせ中心の部分に栓塞材120を配設する(処理S43)。このような工程においては、ケーブルの敷設環境を確認したうえで要所に無駄なく栓塞材120を設けることができる。なお、このような工程において、人力だけではケーブルのより合わせ中心へ栓塞材120を配設することが困難な場合がある。その場合、より合わせ形ケーブル100は、後述するケーブル用補助工具などを利用することにより、ケーブルのより合わせ中心へ栓塞材120を配設し得るだけの隙間を一時的に作るとよい。
その他、図4(b)の方法においては、3個より合わせ形の構造を有するケーブル100を敷設する前の準備段階において予め止水スポットを決定する(処理S44)。例えば、ある等間隔に止水スポットを定めておく。そして、決定した止水スポットに対応するケーブル100のより合わせ中心の部分に栓塞材120を配設する(処理S45)。このような工程によれば、敷設完了してからでは栓塞材120の配設が不可能な箇所に栓塞材120を設けることができる。これにより、より平均的な止水処理を施したケーブルの敷設環境を構築することができる。なお、処理S45の後、敷設環境の実際から、特定の箇所に関して不要(または強化が必要)であるという判断に応じて栓塞材120を取り除く(またはさらに付加する)処理を行うようにしてもよい。
その他、図4(c)の方法においては、3個より合わせ形の構造を有するケーブル100を敷設している途中において、状況に応じて敷設環境を予測し、止水スポットを決定する(処理S47)。そして、決定した止水スポットに対応するケーブル100のより合わせ中心の部分に栓塞材120を配設する(処理S48)。このような工程においても、上述の図4(b)の方法と同様に、敷設完了してからでは栓塞材120の配設が不可能な箇所に栓塞材120を設けることができる。これにより、より平均的な止水処理を施したケーブルの敷設環境を構築することができる。なお、処理S48の後、敷設環境の実際から、特定の箇所に関して不要(または強化が必要)であるという判断に応じて栓塞材120を取り除く(またはさらに付加する)処理を行うようにしてもよい。
上記実施形態の方法によれば、ケーブル100(100a、100b、100c)のより合わせ中心の相互隣接スペース110が導水路になることを懸念し、導水路を分断すべく、止水スポットを決める。止水スポットは、複数設定してよく、特に、浸水の恐れがある敷設箇所のケーブル部分を重視して決定すればよい。栓塞材120は、止水スポットとして決定したケーブル100のより合わせ中心のスペース部分に設けられ、より合わせられて伸長する故のケーブル100a、100b、100cの相互の接近力で固定され得る。これにより、ケーブル100a、100b、100cの相互隣接スペース110は、通常なら連続するところを分断された状態になる。従って、ケーブル100は、栓塞材120により、連続するケーブルのより合わせ中心において任意の箇所で導水を抑制することができる。しかも、栓塞材120は、ケーブル100に沿う導水を抑制し且つケーブル外への導水を促すように構成される。栓塞材120は、ケーブル100の導水による被害が懸念される箇所に応じて任意に設けることができる。このため、ケーブル100の状況に影響することなく、簡便でより平均的な止水処理を施し得るケーブル導水制御方法が提供できる。
なお、上記実施形態の方法において、栓塞材120のリボン122は、ケーブル100のより合わせ中心のスペース110から中空に垂れ下がるように導出されている形態を示したが、これに限らず、リボン122は、ケーブル100のより合わせ中心のスペース110から中空に垂れ下がるほど導出されていないことも考えられる。しかしながら、栓塞材120のリボン122が、ケーブル100のより合わせ中心のスペース110から中空に垂れ下がるように導出されている場合、栓塞材120を設けた箇所の目印となり、後々確認し易いという利点がある。また、垂れ下がったリボン122を引っ張ることにより、比較的容易に栓塞材120を移動させたり、取り除いたりすることも可能である。
図5は、本発明の第2実施形態に係る栓塞材の要部を示す構成図であり、(a)は、側面図、(b)は、(a)のB−B線に沿う断面図である。栓塞材120は、弾性を有する円柱状の芯材121の周囲に水分を停留、蒸発させ得る絶縁性のリボン122を有する。リボン122は、芯材121の周囲から離れ、芯材121の下方に垂れ下がる。より詳細には、1枚のリボン122が中央付近で芯材121を包み、芯材121を離れる左右のリボン122の形は対称であって、双方接着され芯材121の下方に垂れ下がった部分は三角形である。芯材121は、例えば、適度な弾性を有するゴム製または合成樹脂製であり、リボン122は、例えば、ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、アラミド繊維等の合成繊維を含む。芯材121の長さL1は、手に取ったとき扱い易い10〜20cmの範囲から選ばれる所定の長さが好ましい。また、直径φ1は、取り扱うケーブル100の相互隣接スペース110(図2参照)よりも大きい断面積となるような所定の値を有する。また、リボン122の垂れ下がりの長さL2は、栓塞材120をケーブル100に配設した際に中空に垂れ下がるくらいの長さ、例えば15〜25cmの範囲から選ばれる所定の長さが好ましい(図3参照)。また、リボン122の厚さT1は、ここではリボン2枚分の厚さであるが、リボンをさらに重ねてもよく、その場合、芯材121の直径φ1を超えないようにすることが好ましい。
上記実施形態の構成によれば、リボン122の芯材121は弾性を有しているので、複数のケーブルのより合わせ中心のスペース部分に嵌め込まれるように容易に固定し得る栓塞材120を提供することができる。すなわち、周囲にリボン122の設けられた弾性を有する芯材121は、より合わせられて伸長する故のケーブル相互の接近力と芯材121の弾力とが反発し合い固定される。また、リボン122は、ケーブルに沿う導水を抑制すると共に水分を蒸発させる作用を有する。さらに、リボン122の少なくとも一端(本実施形態の例では両端)がケーブルのより合わせ中心の部分から外部に導出されるようにすれば(図3参照)、ケーブル100に沿う導水はリボン122へ置換され、より早く外部へと排出(または蒸発)され得る。また、ケーブルのより合わせ中心の部分から外部に導出されるリボン122の形が三角形で中空に垂れ下がっている状態となっていることにより、ケーブル100に沿う導水がいっそう早く外部へと排出(または蒸発)され得る。このため、ケーブルの状況に影響することなく、簡便でより平均的な止水処理を施し得る栓塞材が提供できる。
図6及び図7は、それぞれ本発明の第3実施形態に係るケーブル用補助工具の要部を示す平面図及び側面図である。ケーブル用補助工具200は、破線で示すような、連続している3個より合わせ形ケーブル100(100a、100b、100c)の止水処理に用いられるものである。ケーブル用補助工具200は、ケーブル接触棒301a、301b、301cの自在取り付けがなされたねじ込み式シャフト302a、302b、302cと、可変リング基材40とを有する。ねじ込み式シャフト302a、302b、302cは、それぞれ2本ずつ、対応するケーブル接触棒301a、301b、301cに回転自在に付いている。ケーブル接触棒301a、301b、301cは、ねじ込み式シャフト302a、302b、302cの可変リング基材40内への長さの調節により、ケーブル100のより合わせ中心に向かって、ケーブル100a、100b、100cの個々の間に押し当てられるように構成されている。すなわち、ねじ込み式シャフト302a、302b、302cは、ケーブル接触棒301a、301b、301cと反対の端部に設けられたリングヘッド303a、303b、303cそれぞれを回して可変リング基材40内における長さを調節することができる。
可変リング基材40は、クランプ部材401とヒンジ402、403を備え、3個より合わせ形ケーブル100を囲み、ケーブル接触棒301a、301b、301cを各ケーブル100a、100b、100cの個々の間に押し当てるための第1状態と、それ以外のケーブル100を囲まない、第1形態から外れた第2状態とに変更可能である。トルクレンチセット用ボックス50は、可変リング基材40の所定部に設けられている。トルクレンチセット用ボックス50は、レンチボス501を有し、トルクレンチをセットすることができる。
可変リング基材40は、アルミニウム合金等からなる金属製である。あるいは、可変リング基材40は、軽量化対策として、要所を強化した骨組みのみを金属製とし、骨組み回りを樹脂成形部材とした構成でもよい。可変リング基材40は、例えば、ねじ込み式シャフト302a、302b、302c周辺のねじを切っている部分や、クランプ部材401付近の留める部分、ヒンジ402、403付近の大きく動く周辺、トルクレンチセット用ボックス50付近の大きな力のかかる部分などの要所は金属使用量を多くした骨組みを作製し、その他の部分を硬い樹脂系の成形部材で形作る構成としてもよい。
可変リング基材40は、トルクレンチをセットすることにより、ケーブル接触棒301a、301b、301cそれぞれをケーブル100a、100b、100cの個々の間に押し当てた状態で、回動され得る。すなわち、トルクレンチセット用ボックス50におけるレンチボス501を起点として可変リング基材40を所定の方向に回動させることにより、3個より合わせ形ケーブル100は、各ケーブル100a、100b、100cの相互の離間距離を広げることができる。
可変リング基材40のサイズD2は、ケーブル100のサイズにより設定される。可変リング基材40のサイズD2は、例えば、一つのケーブル100aの径の4倍から5倍とする。これにより、ケーブル用補助工具は、ある程度の汎用性が得られる。各ケーブル接触棒301a、301b、301cの長さL3は、可変リング基材40の幅W2より1.5倍程度大きい。各ケーブル接触棒301a、301b、301cは円柱形状であり、ケーブル100の伸長に沿う方向に垂直な断面について、このケーブル接触棒(301a、301b、301c)につながるねじ込み式シャフト302a、302b、302cなどの他のガイド機構の部分よりも幅広の形(径Q)を有する。トルクレンチセット用ボックス50のサイズH1、W1、レンチボス501のサイズD5は、トルクレンチがセットされ、容易に力が加えられるような適当な大きさを要する。トルクレンチを用いる理由は、ケーブル100に過剰な力をかけないようにするためであるが、作業者が取り扱ううえで支障なければ通常のレンチを用いるようにしてもよい。
このように、ケーブル接触棒301a、301b、301cの付いたねじ込み式シャフト302a、302b、302cは、ケーブルのより合わせ中心に向かうように複数のケーブルの個々の間に押し当てられるケーブル接触部材をそれぞれ有するガイド機構の一例である。このガイド機構におけるケーブル接触棒301a、301b、301cは、上記複数のケーブルの個々の間に押し当てられるケーブル接触部材の一例である。さらに、このガイド機構におけるねじ込み式シャフト302a、302b、302cは、ケーブル接触部材と基材との間の長さを調節し得る調節手段の一例である。また、可変リング基材40は、ガイド機構が固定され、複数個より合わせ形ケーブルを囲むための基材の一例である。また、クランプ部材401及びヒンジ402、403は、基材において、複数個より合わせ形ケーブルを囲む第1状態と、第1状態から外れた第2状態とに変更し得る着脱機構及び変形機構の一例である。また、レンチボス501付きのトルクレンチセット用ボックス50は、基材を回動させるための回動支持部材の一例である。
図8、図9は、図6や図7を参照して説明したケーブル用補助工具の使用方法の要部を順に示す平面図である。まず、図8に示すように、ケーブル100のより合わせ中心の部分において所望の止水スポットが定まると、ケーブル用補助工具200が準備される。可変リング基材40は、破線のごとく外された開放状態から、連続している3個より合わせ形ケーブル100(100a、100b、100c)を取り囲むように組み上げられ、クランプ部材401により円環状態を安定化させる。このとき、ねじ込み式シャフト302a、302b、302cは、リングヘッド303a、303b、303cを回し、ケーブル接触棒301a、301b、301cをケーブル100a、100b、100cの個々の間にあてがうように調節する。その後、さらに、リングヘッド303a、303b、303cを回し、ケーブル接触棒301a、301b、301cをケーブル100a、100b、100cの個々の間に押し当て、ケーブル100のより合わせ中心に向かうようにする。各ケーブル接触棒301a、301b、301cが各ケーブル100a、100b、100c個々の接触領域間に押し入れられることにより、ねじ込み式シャフト302a、302b、302cになるべく触れずに各ケーブル100をより合わせ中心から離間させる準備が整う。
次に、図9に示すように、トルクレンチセット用ボックス50におけるレンチボス501に、トルクレンチ60をセットする。その後、トルクレンチ60により、可変リング基材40を矢印A1の方向に回動させる。すなわち、ケーブル100のより合わせ方向とは逆の回転により、ケーブル100のより合わせを解く要領である。これにより、3個より合わせ形ケーブル100の各ケーブル100a、100b、100cの相互の離間距離を広げることができる。その後、各ケーブル100a、100b、100cの相互の隙間いずれかより、図1、図3または図5に示すような、栓塞材120を挿入し、ケーブル100のより合わせ中心の所望の止水スポットに栓塞材120を設ける。
図1、図3または図5に示すような、栓塞材120を挿入し、ケーブル100のより合わせ中心の所望の止水スポットに栓塞材120を設けた後、矢印A1の方向に回動させていた可変リング基材40を元の図8の状態に戻す。これにより、ケーブル100は、より戻される。しかし、ケーブル100のより合わせは、止水スポットに栓塞材120が設けられている部分で、図3に示すような隙間G1(栓塞材は設けた直後なので変形度合いは小さく、隙間G1はより大きい)ができる状態となる。これにより、ケーブル用補助工具200は、図8の状態に戻したとき、ケーブル接触棒301a、301b、301cにおけるケーブル100への押圧力をほとんどなくした状態となり得る。従って、可変リング基材40は、リングヘッド303a、303b、303cを回してねじ込み式シャフト302a、302b、302cを後退させることなく、容易に取り外しが可能である。
上記のような実施形態の構成及び方法によれば、可変リング基材40は、複数のケーブルの個々の接触部位に押し当てるケーブル接触棒301a、301b、301c及びねじ込み式シャフト302a、302b、302cなどのガイド機構を設ける。可変リング基材40は、ケーブル100を囲み、各ケーブル100a、100b、100cのより合わせ接触領域にケーブル接触棒301a、301b、301cを押し当てた状態とする。その後、可変リング基材40は、トルクレンチ60を利用して所定方向(ケーブルのより合わせ方向とは逆方向)に回動させられる。これにより、複数個より合わせ形ケーブル100は、そのケーブル相互の離間距離を大きくすることができる。
敷設されている複数個より合わせ形ケーブル100では、太径になるほど、人の手だけでより合わせ中心に止水処理を施せるだけの隙間を作るのは非常に困難である。上記のようなケーブル用補助工具200を利用すれば、ケーブル100のより合わせ中心に止水処理を施せるだけの隙間が比較的容易に、迅速に作り得る。このため、ケーブルの状況に影響することなく、簡便でより平均的な止水処理を施し得るケーブル用補助工具が提供できる。
なお、ケーブル用補助工具200におけるケーブル接触棒301a、301b、301cは、ケーブルの伸長に沿う方向に垂直な断面でみる場合の形について、ガイド機構のどの部分よりも幅広の形にしておく。上述の実施形態においては、ケーブル接触棒301a、301b、301cは円柱形状としたが、これに限らない。ケーブル接触棒301a、301b、301cは、円柱形状に代えて、楕円柱形状、三角形やひし形の隅を丸めた形を底面とする柱形状、刃先を十分に丸めたブレード形状など様々な形状が考えられる。これにより、ケーブル100は、ねじ込み式シャフト302a、302b、302cとなるべく接触することなく、ケーブル接触棒301a、301b、301cとの最小限の接触領域でもって、より合わせ中心から互いに離間し得る。このようにすれば、ケーブル100を損傷させる可能性は極めて低いといえる。ケーブル100へのダメージをさらになくすることを望むならば、ケーブル接触棒301a、301b、301cに関し、長さをより大きくするか、形状を工夫することである。すなわち、ケーブル接触棒301a、301b、301cの部分は、各種の形状を用意しておき、ねじ込み式シャフト302a、302b、302cへの交換が可能となっていればなおよい。このようなケーブル用補助工具を構成すれば、ある程度、多様な種別のより合わせ形ケーブルに対応可能で、汎用性が高められる。このため、ケーブルの状況に影響することなく、簡便でより平均的な止水処理を施し得るケーブル用補助工具が提供できる。
さらに、可変リング基材40は、クランプ部材401及びヒンジ402、403などの着脱機構及び変形機構を有することにより、複数個より合わせ形ケーブルを囲み、ケーブル接触棒を各ケーブル接触部位に押し当てるための第1状態と、それ以外の複数個より合わせ形ケーブルを囲まない、第1形態から外れた第2状態とに変更可能である。これにより、長距離でもって伸長している複数個より合わせ形ケーブルの任意の箇所において、可変リング基材40のセッティングや取り外しが可能である。このため、ケーブルの状況に影響することなく、簡便でより平均的な止水処理を施し得るケーブル用補助工具が提供できる。
さらに、ケーブル接触棒(301a、301b、301c)につながるねじ込み式シャフト302a、302b、302cなどのように、ガイド機構は調節手段(例えば、ねじ込み式など)を有することにより、ケーブル接触棒301a、301b、301cと可変リング基材40との間の長さを変えることができる。これにより、ある程度、複数個より合わせ形ケーブルの多様な種別に対応可能で、汎用性が高まる。このため、ケーブルの状況に影響することなく、簡便でより平均的な止水処理を施し得るケーブル用補助工具が提供できる。
以上、各実施形態において説明したように、本発明によれば、複数個より合わせ形のケーブルの敷設において、ケーブルのより合わせ中心のスペースによる導水路を栓塞材などの導水制御部材により分断し得る。栓塞材などの導水制御部材は、ケーブルに沿う導水を抑制し且つケーブル外への導水を促すように、ケーブルの導水による被害が懸念される箇所に応じて任意に設けることができる。本発明の栓塞材などの導水制御部材によれば、芯材の弾性により、複数のケーブルのより合わせ中心のスペース部分に嵌め込まれるように容易に固定し得る。また、芯材周囲の繊維部材により、ケーブルに沿う導水を抑制すると共に水分を蒸発させる作用を有する。本発明のケーブル用補助工具によれば、より合わせの複数のケーブルの個々の間(または個々の接触部位)に押し当てられるケーブル接触部材を設け、ケーブル接触部材を押し当てた状態で固定されたガイド機構を基材ごと所定方向に回動させるので、ケーブルのより合わせ中心に止水処理を施せるだけの隙間が比較的容易に、迅速に作り得る。このため、ケーブルの状況に影響することなく、簡便でより平均的な止水処理を施し得るケーブル導水制御方法、導水制御部材及びケーブル用補助工具を提供することができる。