JP5121014B2 - 動的架橋組成物 - Google Patents
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Description
動的架橋組成物の成形体は、耐磨耗性、耐傷付き性、耐熱性および軟化剤のブリード抑制等が求められる。
また、特許文献2には、熱可塑性樹脂、およびビニル芳香族化合物の含有量が50質量%を超えた水添共重合体を加硫剤の存在下に動的に架橋してなる動架橋水添組成物が開示されている。
さらに、特許文献3には、オレフィン系樹脂、スチレン系共重合ゴム、軟化剤およびフェノール樹脂架橋剤を含有する混合物を動的架橋して得られる熱可塑性エラストマー組成物が開示され、スチレン系共重合ゴムとして、ビニル芳香族炭化水素の重合体ブロックおよび共役ジエンのエラストマー性重合体ブロックからなるブロック共重合体であって、水素添加して得られる水添ブロック共重合体が開示されている。
[1]
(A)ビニル芳香族単量体単位を含有する共重合体および(B)熱可塑性樹脂を、(C)架橋剤の存在下に、動的に架橋してなる動的架橋組成物であって、
前記(A)が、−70℃以上−5℃以下の範囲に1つ以上のtanδピーク1と、0℃以上50℃以下の範囲に1つ以上のtanδピーク2と、を有する動的架橋組成物。
[2]
前記(A)の25℃のtanδ値が0.10以上である、前記[1]に記載の動的架橋組成物。
[3]
前記(A)が、以下の(a)および2種類以上の(b)ブロックを含有する、
(a)ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック、
(b)アルキレン単位とビニル芳香族単量体単位を主体とする共重合体ブロック、または共役ジエン単位とビニル芳香族単量体単位を主体とする水添共重合体ブロック、
前記[1]または[2]に記載の動的架橋組成物。
[4]
前記(A)が、以下の(a)から(c)の各ブロックを1つ以上含有する、
(a)ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック、
(b)アルキレン単位とビニル芳香族単量体単位を主体とする共重合体ブロック、または共役ジエン単位とビニル芳香族単量体単位を主体とする水添共重合体ブロック、
(c)アルキレン単位を主体とする重合体ブロック、または共役ジエン単位を主体とする水添重合体ブロック、
前記[1]〜[3]のいずれかに記載の動的架橋組成物。
[5]
前記(A)が、
(a)ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック10〜50質量%、
(b2)共役ジエン単位とビニル芳香族単量体単位を主体とする水添共重合体ブロック25〜80質量%、
(c2)共役ジエン単位を主体とする水添重合体ブロック10〜70質量%、
を含有する、前記[1]、[2]または[4]のいずれかに記載の動的架橋組成物。
[6]
前記(b2)中のビニル芳香族単量体単位が、10〜90質量%である水添共重合体ブロックである、前記[5]に記載の動的架橋組成物。
[7]
前記(A)が、(A)中の全共役ジエン単位の75mol%以上が水素添加された重合体である、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の動的架橋組成物。
[8]
前記(A)の両末端に、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックを有する、前記[1]〜[7]のいずれかに記載の動的架橋組成物。
[9]
前記(B)が、プロピレン系樹脂である、前記[1]〜[8]のいずれかに記載の動的架橋組成物。
[10]
前記(C)が、有機過酸化物系架橋剤である、前記[1]〜[9]のいずれかに記載の動的架橋組成物。
[11]
前記(A)を10〜70質量%、前記(B)を5〜60重量%、前記(C)を0.1〜30質量%含有する、前記[1]〜[10]のいずれかに記載の動的架橋組成物。
[12]
前記(A)、前記(B)および(D)軟化剤を、前記(C)の存在下に動的に架橋してなる、前記[1]〜[11]のいずれかに記載の動的架橋組成物。
[13]
前記[1]〜[12]のいずれかに記載の動的架橋組成物を成形することにより得られる成形品。
本実施の形態の動的架橋組成物は、(A)ビニル芳香族単量体単位を含有する共重合体および(B)熱可塑性樹脂を、(C)架橋剤の存在下に、動的に架橋してなる動的架橋組成物である。
そして、(A)ビニル芳香族単量体単位を含有する共重合体(以下、単に「(A)」と記載する場合がある。)は、動的架橋組成物における柔軟性、耐摩耗性、耐傷付き性、および軟化剤のブリード抑制の点で、また(B)熱可塑性樹脂との相溶性の点で、粘弾性測定試験において、−70℃以上−5℃以下の範囲に1つ以上のtanδピーク1と、耐磨耗性、耐傷付き性の点で0℃以上50℃以下の範囲に1つ以上のtanδピーク2と、を有することが必須である。
−65℃以上−15℃以下の範囲に1つ以上のtanδピーク1と、5℃以上45℃以下の範囲に1つ以上のtanδピーク2と、を有することがより好ましく、−60℃以上−25℃の範囲に1つ以上のtanδピーク1と、10℃以上40℃以下の範囲に1つ以上のtanδピーク2と、を有することがさらに好ましい。
また、動的架橋組成物のより高い耐磨耗性のため、25℃のtanδ値が0.10以上であることが好ましい。25℃のtanδ値が0.15以上であることがより好ましく、25℃のtanδ値が0.25以上であることがさらに好ましい。
本実施の形態において、ピーク温度におけるtanδ値としては、0.1以上であることが好ましい。
(a)ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック
(b)アルキレン単位とビニル芳香族単量体単位を主体とする共重合体ブロック、または共役ジエン単位とビニル芳香族単量体単位を主体とする水添共重合体ブロック
(a)ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック
(b)アルキレン単位とビニル芳香族単量体単位を主体とする共重合体ブロック、または共役ジエン単位とビニル芳香族単量体単位を主体とする水添共重合体ブロック
(c)アルキレン単位を主体とする重合体ブロック、または共役ジエン単位を主体とする水添重合体ブロック
本実施の形態において、「主体とする」とは、共重合体中、単量体単位を60質量%以上含有することを意味する。単量体単位を80質量%以上含有することが好ましく、90質量%以上含有することがより好ましく、95質量%以上含有することがさらに好ましい。
アニオン重合のブロック共重合体の製造方法としては、公知の方法でよく、例えば特公昭36−19286号公報、特公昭43−17979号公報、特公昭46−32415号公報、特公昭49−36957号公報、特公昭48−2423号公報、特公昭48−4106号公報、特公昭56−28925号公報、特開昭59−166518号公報、特開昭60−186577号公報等に記載された方法が挙げられる。
c−(b−a)n、c−(a−b)n、c−(a−b−a)n、c−(b−a−b)n、a−c−(b−a)n、a−c−(a−b)n、a−c−(b−a)n−b[(a−b−c)n]m−X、[(a−(b−c)n]m−X、[(a−b)n−c]m−X、[(a−b−a)n−c]m−X、[(b−a−b)n−c]m−X、[(c−b−a)n]m−X、[c−(b−a)n]m−X、[c−(a−b−a)n]m−X、または[c−(b−a−b)n]m−Xからなる群から選択される少なくとも一つの構造が挙げられる。
上式において、aは、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック、bは、アルキレン単位とビニル芳香族単量体単位を主体とする共重合体ブロック、または共役ジエン単位とビニル芳香族単量体単位を主体とする水添共重合体ブロック、cは、アルキレン単位を主体とする重合体ブロック、または共役ジエン単位を主体とする水添重合体ブロックである。各ブロックの境界や最端部は必ずしも明瞭に区別される必要はない。
各重合体ブロック中のビニル芳香族単量体単位の分布は、前記ビニル芳香族化合物含有量の範囲ならば限定されず、均一に分布していても、テーパー状、階段状、凸状、あるいは凹状に分布していてもよい。また、重合体ブロック中に、結晶部が存在していてもよい。
各共重合体ブロック中には、ビニル芳香族化合物含有量の異なるセグメントが複数個共存していてもよい。
mおよびnは、1以上の整数を示し、1〜5の整数であることが好ましい。
各ブロック中の共役ジエン単位のビニル単位の分布は特に限定されないが、分布があってもよい。ビニル単位の分布は、重合中にビニル化剤を添加する、重合中の温度を変化させる等が挙げられる。また、共役ジエン単位の水素添加率には分布があってもよい。水素添加率の分布は、ビニル単位の分布を変更する、あるいは、イソプレンとブタジエンを共重合した後に、以下に記載する触媒を用いて水素添加し、イソプレン単位とブタジエン単位の水素添加速度の差を利用する方法等により制御することができる。
耐熱性の点で、(A)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックを2個以上含有することが好ましい。より好ましくは、(A)の両末端に、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックを有することが好ましく、上記一般式におけるa−c−(b−a)nの構造が挙げられる。
(A)中の(b)アルキレン単位とビニル芳香族単量体単位を主体とする共重合体ブロック、または共役ジエン単位とビニル芳香族単量体単位を主体とする水添共重合体ブロックに含まれるビニル芳香族単量体単位の含有量は、耐磨耗性の点で、10〜90質量%であることが好ましく、30〜85質量%であることがより好ましい。45〜80質量%であることがさらに好ましく、55〜75質量%であることがよりさらに好ましい。
ビニル結合量とは、水添前の共役ジエンの1,2−結合、3,4−結合及び1,4−結合の結合様式で組み込まれているうち、1,2−結合及び3,4−結合で組み込まれているものの割合とする。
逐次重合の場合は、分子量分布(=重量平均分子量/数平均分子量)は小さい方がよく、1.2以下が好ましい。
重量平均分子量は、実施例に記載した条件でゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求めた値である。
本実施の形態において、(B)熱可塑性樹脂(以下、単に「(B)」と記載する場合がある。)とは、特に限定はされないが、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)等の芳香族系樹脂、6・6ナイロン、6ナイロン等のポリアミド、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリ塩化ビニル系樹脂等を挙げることができる。これらは、一種または二種以上を使用してもよい。
(B)としては、経済性や、樹脂組成物の相容性の点で、ポリプロピレン、プロピレンを含むブロック共重合体またはランダム共重合体などのプロピレン系樹脂が好ましい。
本実施の形態において、(C)架橋剤(以下、単に「(C)」と記載する場合がある。)は、例えば、有機過酸化物、硫黄系化合物、フェノール樹脂系化合物、キノイド系化合物、ビスマレイミド系化合物、イソシアネート系化合物、チウラム系化合物、モルホリンジスルフィド、ヒドロシリコーン系化合物等を挙げることができる。
耐磨耗性、耐傷付き性、耐熱性および軟化剤のブリード抑制の点で、有機過酸化物系架橋剤が好ましい。
これらはステアリン酸、オレイン酸、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛等の架橋助剤、共架橋剤、加硫促進剤等を併用することができる。
(A)が官能化されている場合は、(C)に、それぞれの官能基と反応して架橋結合を形成する反応性基を有する化合物を用いることができる。それら反応性基を有する化合物の架橋剤としては、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる2個以上、特に3個以上の官能基を有する架橋剤が好ましい。また電子線、放射線等による架橋法も使用可能である。
本実施の形態において、(D)軟化剤(以下、単に「(D)」と記載する場合がある。)として、鉱物油系軟化剤または合成樹脂系軟化剤のいずれも使用することができる。鉱物油系軟化剤は、一般に、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素およびパラフィン系炭化水素の混合物であって、パラフィン系炭化水素の炭素原子数が全炭素原子中の50%以上を占めるものがパラフィン系オイルと呼ばれ、ナフテン系炭化水素の炭素原子が30〜45%のものがナフテン系オイルと呼ばれ、また、芳香族系炭化水素の炭素原子が35%以上のものが芳香族系オイルと呼ばれている。(D)として、好適に用いられるゴム用軟化剤はパラフィン系オイルである。
パラフィン系オイルとしては、40℃における動粘度が20〜800cst(センチストークス)、好ましくは50〜600cstであり、流動度が0〜−40℃、好ましくは0〜−30℃であり、引火点(COC法)が200〜400℃、好ましくは250〜350℃であるものが用いられる。
合成樹脂系軟化剤としては、例えば、ポリブテン、低分子量ポリブタジエン等を挙げることができる。
本実施の形態の動的架橋組成物において、耐磨耗性、耐傷付き性、耐熱性および軟化剤のブリード抑制、柔軟性、流動性の点から、(A)、(B)、(C)及び(D)の含有量としては、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90重量%以上がさらに好ましい。
また、動的架橋組成物には、耐熱性、柔軟性、軟化剤のブリード抑制あるいは機械物性の点で、−70℃以上−5℃以下の範囲にtanδピークを有し、0℃以上50℃以下の範囲にtanδピークを有さない水添スチレン系エラストマーを添加するのが好ましい。
表面改質剤として、シリコーンオイルを添加することが好ましい。
充填剤としては、具体的には、炭酸カルシウム、タルク、クレー、珪酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
好ましい製法は、二軸押出機中で、少なくとも(A)と(B)を溶融混合した時点で、(C)を添加し、分散させながら反応させて動的架橋させる方法である。
(C)や(D)は、多段階に分けて添加してもよい。また、(C)を添加後に、(D)の一部または全量を添加してもよい。
(D)の一部または全量を、予め(A)に添加したものを用い、上記の方法で動的架橋することも好ましい。
動的架橋組成物の引張強度は、高い方が良く、10MPaより大きいことが好ましい。12MPa以上がより好ましく、14MPa以上がさらに好ましい。
動的架橋組成物の圧縮永久歪みは、小さい方が好ましく、60%以下が好ましい。55%以下がより好ましく、50%以下がさらに好ましい。
成形品の例としては、シート、フィルム、チューブや、不織布や繊維状の成形品、合成皮革等が挙げられる。
なお、本実施の形態において用いられる評価法および測定法は以下のとおりである。
I−1)スチレン含有量、共役ジエンのビニル結合量、共役ジエンに基づく二重結合の水素添加率
ポリマー中のスチレン単位、ブタジエンの1,4−結合単位および1,2−結合単位、エチレン単位あるいはブチレン単位量は、核磁気共鳴スペクトル解析(NMR)により下記の条件で測定した。
測定機器:JNM−LA400(JEOL製)
溶媒:重水素化クロロホルム
測定サンプル:ポリマーを水素添加する前後の抜き取り品
サンプル濃度:50mg/ml
観測周波数:400MHz
化学シフト基準:TMS(テトラメチルシラン)
パルスディレイ:2.904秒
スキャン回数:64回
パルス幅:45°
測定温度:26℃
I. M. Kolthoff, et al., J. Polym. Sci., 1946, Vol.1, p.429に記載の四酸化オスミウム酸法で測定した。
測定サンプル:ポリマーを水素添加する前の抜き取り品
ポリマー分解用溶液:オスミウム酸0.1gを第3級ブタノ−ル125mlに溶解した溶液
(A)の重量平均分子量および分子量分布は、下記の条件でゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。分子量分布は、得られた重量平均分子量と数平均分子量の比を取って求めた。
測定装置:LC−10(島津製作所製)
カラム:TSKgelGMHXL(4.6mmID×30cm)、2本
溶媒:テトラヒドロフラン
検量線用サンプル:市販(東ソー株式会社製)の標準ポリスチレン、10点測定
試料を、幅10mm、長さ35mmのサイズにカットし、装置ARES(ティーエイインスツルメントー株式会社製、商品名)の捻りタイプのジオメトリーに、試料をセットし、実効測定長さは25mm、ひずみ0.5%、周波数1Hz、−70℃から50℃まで、昇温速度3℃/分で求めた。tanδピーク温度は、RSI Orchestrator(ティーエイインスツルメントー株式会社製、商品名)の自動測定より検出されるピークから求めた値である。
II−1)硬度
JIS K6253に従い、デュロメータタイプAで10秒後の値を測定した。
JIS K6251に従い、3号ダンベル、クロスヘッドスピード500mm/分で測定した。
BS903に従い、23℃で測定した。
学振磨耗試験器(テスター産業株式会社製、AB-301型)を用い、成形シート表面(皮シボ加工面/シボ深さ約90μm)を、摩擦布カナキン3号綿布、荷重500gで摩擦後、シボ深さを測定し、下記式1によりシボ深さ残存率を計算により求めて、以下の基準で判定した。シボ深さは東京精密社製の表面粗さ計E-35Aで測定した。
シボ深さ残存率=(摩擦後のシボ深さ)/(摩擦前のシボ深さ)×100 (式1)
◎;摩擦回数20,000回後に、シボ深さ残存率が75%以上
○;摩擦回数20,000回後に、シボ深さ残存率が75%未満50%以上
△;摩擦回数20,000回後に、シボ深さ残存率が50%未満25%以上
×;摩擦回数20,000回後に、シボ深さ残存率が25%未満
上記II−4)の学振磨耗試験後のシート表面を指で触り粘着感(べとつき)の有無を確認し、以下の基準で判定した。
○;摩擦終了後、べとつき無し
×;摩擦終了後、べとつき有り
2mm厚のプレスシートを作成し、シート表面を指で触り粘着感(べとつき)の有無を確認し、以下の基準で判定した。
○;シート表面が、べとつき無し
×;シート表面が、べとつき有り
JIS K6262に準拠し、圧縮永久歪み試験を行った。測定条件は、温度100℃、22時間である。
(A)の水添反応に用いた水添触媒は下記の方法で調製した。
窒素置換した反応容器に乾燥、精製したシクロヘキサン1リットルを仕込み、ビスシクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100ミリモルを添加し、十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム200ミリモルを含むn−ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させた。
<ポリマー1:スチレン−ブタジエン−スチレン・ブタジエン−スチレンの水添物(a−c−b−a)>
内容積が10Lの攪拌装置およびジャケット付き槽型反応器を洗浄、乾燥、窒素置換してバッチ重合を行った。はじめに、スチレン15質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。次いでn−ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.06質量部とN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(以下「TMEDA」と記載する。)をn−ブチルリチウム1モルに対して0.7モル添加し、70℃で30分間重合した。その後ブタジエン20質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて70℃で30分間重合した。次にブタジエン15質量部とスチレン35質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて70℃で1時間重合した。最後にスチレン15質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて70℃で30分間重合した。得られたポリマーは、スチレン含有量65質量%、ポリスチレンブロック(a)含有量30質量%、ポリブタジエン単独ブロック(c)部のビニル結合量48モル%、ブタジエンとスチレンの共重合体ブロック(b)部のビニル結合量21モル%、ポリマー全体の重量平均分子量17.7万、分子量分布1.10であった。
次に、得られたポリマーに、上記水添触媒をポリマー100質量部当たりチタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。その後メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100質量部に対して0.3質量部添加した。得られた水添ブロック共重合体(ポリマー1)のブタジエンの水添率は99%であった。
ポリマー1と同様にして、ポリマー2を作成した。スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入後、n−ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.05質量部とTMEDAをn−ブチルリチウム1モルに対して0.7モル添加し、70℃で30分間重合した。その後、ブタジエン25質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で30分間重合した。次にブタジエン15質量部とスチレン40質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で1時間重合した。最後にスチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で30分間重合した。得られたポリマーは、スチレン含有量60質量%、ポリスチレンブロック(a)含有量20質量%、ポリブタジエン単独ブロック(c)部のビニル結合量43モル%、ブタジエンとスチレンの共重合体ブロック(b)(b)部のビニル結合量18モル%、ポリマー全体の重量平均分子量22.2万、分子量分布1.11であった。
次に、得られたポリマーをポリマー1と同様の方法で水添反応を行い、水添ブロック共重合体(ポリマー2)を得た。得られた水添ブロック共重合体(ポリマー2)のブタジエンの水添率は99%であった。
上記で得られたポリマー2にパラフィンオイル(PW−90:出光興産社製)をポリマー100質量部に対して50質量部添加した。
内容積が10Lの攪拌装置およびジャケット付き槽型反応器を2基使用し、洗浄、乾燥、窒素置換して連続重合を行った。1基目の反応器の底部から、ブタジエンを含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を3.3kg/hrの供給速度で、スチレンを含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を4.8kg/hrの供給速度で、またn−ブチルリチウムを含むシクロヘキサン溶液を、全モノマー100質量部に対して0.077質量部になるような供給速度で、さらに、TMEDAを含むシクロヘキサン溶液をn−ブチルリチウム1モルに対して0.44モルになるような供給速度でそれぞれ供給し、90℃で連続重合した。重合反応器における平均滞留時間は、約45分であり、ブタジエンの転化率はほぼ100%、スチレンの転化率は99%であった。
1基目から出たポリマー溶液を、2基目の反応器の底部から供給し、また同時に、スチレンを含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を1.9kg/hrの供給速度で、2基目の底部に供給し、90℃で連続重合した。2基目出口でのスチレンの転化率は98%であった。
連続重合で得られたポリマーは、スチレン含有量67質量%、ポリスチレンブロック(a)含有量20質量%、ブタジエンとスチレンの共重合体ブロック(b)部のビニル結合量16モル%、ポリマー全体の重量平均分子量20万、分子量分布1.9であった。
次に、得られたポリマーをポリマー1と同様の方法で水添反応を行い、水添ブロック共重合体(ポリマー4)を得た。得られた水添ブロック共重合体(ポリマー4)のブタジエンの水添率は99%であった。
ポリマー1と同様にポリマーを作成した。スチレン15質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入後、n−ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.05質量部とTMEDAをn−ブチルリチウム1モルに対して0.55モル添加し、70℃で30分間重合した。その後、ブタジエン70質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で1時間重合した。最後に、スチレン15質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で30分間重合した。得られたポリマーは、スチレン含有量30質量%、ポリスチレンブロック(a)含有量30質量%、ポリブタジエン単独ブロック(c)部のビニル結合量38モル%、ポリマー全体の分子量32.1万、ポリスチレンブロックの重量平均分子量3.2万、分子量分布1.03であった。
次に、得られたポリマーをポリマー1と同様の方法で水添反応を行い、水添ブロック共重合体(ポリマー5)を得た。得られた水添ブロック共重合体(ポリマー5)のブタジエンの水添率99%であった。
熱可塑性樹脂:ポリプロピレン樹脂(PP)、PC630A(サンアロマー製)、MFR(230℃、2.16kg);7.5g/分。
<成分(C)>
架橋剤:パーブチルP−40(日本油脂社製)
架橋助剤:TAIC WH−60:トリアリルイソシアヌレート60%担持(日本化成社製)
<成分(D)>
ゴム用軟化剤:パラフィンオイル、PW−90(出光興産社製)
<成分(E)>
シリコーンオイル:SH200 5000cs(東レダウコーニング社製)
(ポリマー1)、ポリプロピレン樹脂(PC630A)、パーブチルP−40、TAIC、パラフィンオイル(PW−90)、シリコーンオイル(SH200)を、表2に示す割合(質量部)で予備混合した後、ラボプラストミル[東洋精機(株)製]に供給してシリンダー温度200℃、スクリュウ回転数100rpmで溶融混練して、動的架橋組成物をそれぞれ製造した。得られた組成物を200℃で圧縮成形して2mm厚のシートを作成し、物性測定片を得た。各試験片の物性を測定し、その結果を表2に示した。
(ポリマー2)を用い、実施例1と同様に動的架橋組成物を製造した。得られた動的架橋組成物を用いて成形シートを作成し、物性を測定した。その結果を表2に示した。
(ポリマー3)を用い、実施例1と同様に動的架橋組成物を得、成形シートを作成し、物性を測定した。その結果を表2に示した。
(ポリマー3)および(ポリマー5)を用い、実施例1と同様に動的架橋組成物を得、成形シートを作成し、物性を測定した。その結果を表2に示した。
(ポリマー4)を用い、実施例1と同様に動的架橋組成物を得、成形シートを作成し、物性を測定した。その結果を表2に示した。
(ポリマー5)を用い、実施例1と同様に動的架橋組成物を得、成形シートを作成し、物性を測定した。その結果を表2に示した。
一方、−70℃以上−5℃以下の範囲に1つ以上のtanδピーク1を有さないポリマー4を用いて動的に架橋された、比較例1の動的架橋組成物は圧縮永久歪みが劣り、オイルブリードが見られた。
また、0℃以上50℃以下の範囲に1つ以上のtanδピーク2を有さないポリマー5を用いて動的に架橋された、比較例2の動的架橋組成物は、耐磨耗性の劣る結果であった。
本発明の動的架橋組成物は、自動車部品、家電部品、電線被覆材、医療部品、雑貨、履物等の材料として利用することができる。
Claims (13)
- (A)ビニル芳香族単量体単位を含有する共重合体および(B)オレフィン系樹脂を、(C)架橋剤の存在下に、動的に架橋してなる動的架橋組成物であって、
前記(A)が、−70℃以上−5℃以下の範囲に1つ以上のtanδピーク1と、0℃以上50℃以下の範囲に1つ以上のtanδピーク2と、を有する動的架橋組成物。 - 前記(A)の25℃のtanδ値が0.10以上である、請求項1に記載の動的架橋組成物。
- 前記(A)が、以下の(a)および2種類以上の(b)ブロックを含有する、
(a)ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック、
(b)アルキレン単位とビニル芳香族単量体単位を主体とする共重合体ブロック、または共役ジエン単位とビニル芳香族単量体単位を主体とする水添共重合体ブロック、
請求項1または2に記載の動的架橋組成物。 - 前記(A)が、以下の(a)から(c)の各ブロックを1つ以上含有する、
(a)ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック、
(b)アルキレン単位とビニル芳香族単量体単位を主体とする共重合体ブロック、または共役ジエン単位とビニル芳香族単量体単位を主体とする水添共重合体ブロック、
(c)アルキレン単位を主体とする重合体ブロック、または共役ジエン単位を主体とする水添重合体ブロック、
請求項1または2に記載の動的架橋組成物。 - 前記(A)が、
(a)ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック10〜50質量%、
(b2)共役ジエン単位とビニル芳香族単量体単位を主体とする水添共重合体ブロック25〜80質量%、
(c2)共役ジエン単位を主体とする水添重合体ブロック10〜65質量%、
を含有する、請求項1、2または4のいずれか一項に記載の動的架橋組成物。 - 前記(b2)中のビニル芳香族単量体単位が、10〜90質量%である水添共重合体ブロックである、請求項5に記載の動的架橋組成物。
- 前記(A)が、(A)中の全共役ジエン単位の75mol%以上が水素添加された重合体である、請求項3〜6のいずれか一項に記載の動的架橋組成物。
- 前記(A)の両末端に、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックを有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の動的架橋組成物。
- 前記(B)が、プロピレン系樹脂である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の動的架橋組成物。
- 前記(C)が、有機過酸化物系架橋剤である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の動的架橋組成物。
- 前記(A)を10〜70質量%、前記(B)を5〜60重量%、前記(C)を0.1〜30質量%含有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の動的架橋組成物。
- 前記(A)、前記(B)および(D)軟化剤を、前記(C)の存在下に動的に架橋してなる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の動的架橋組成物。
- 請求項1〜12のいずれか一項に記載の動的架橋組成物を成形することにより得られる成形品。
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