JP5119987B2 - ハイブリッド車およびその制御方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ハイブリッド車およびその制御方法に関する。
従来、この種のハイブリッド車としては、エンジンと、エンジンの出力軸と車軸に連結された駆動軸とにキャリアとリングギヤとが接続されたプラネタリギヤと、プラネタリギヤのサンギヤに取り付けられたモータMG1と、駆動軸に動力を出力するよう取り付けられたモータMG2とを備える車両において、パーキングロックされた状態でエンジンを始動するときには、エンジンをクランキングするようモータMG1を駆動すると共にエンジンのクランキングに伴ってプラネタリギヤを介して駆動軸に作用するトルクをキャンセルするトルクとクランキング時のエンジンのトルク脈動により駆動軸に生じるトルク脈動より若干大きなトルクとの和のトルクが駆動軸に作用するようモータMG2を駆動するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この車両では、上述のようにモータMG2を駆動することにより、パーキングロック機構のパーキングギヤとパーキングロックポールがエンジンのクランキングの際のトルク脈動により振動するのを抑制し、その当たり音が生じるのを防止している。
特開2003−247438号公報
上述のハイブリッド車では、シフトポジションが車両を後進させる後進用ポジション(Rポジション)にあるときにエンジンを始動するときには、予期しない車両の前進を抑制するためにエンジンのクランキングの際のトルク脈動に伴って当たり音を防止するためのトルク(押し当てトルク)については車両を後進させる方向に作用させるのが好ましい。一方、エンジンのクランキングに伴ってプラネタリギヤを介して駆動軸に作用するトルクは、車両を後進させる方向のトルクとなるため、このトルクをキャンセルするトルク(キャンセルトルク)は車両を前進させる方向のトルクとなる。押し当てトルクとキャンセルトルクは符号が逆となるため、キャンセルトルクが変動すると、押し当てトルクとキャンセルトルクとの和のトルク、即ちモータMG2から出力するトルクは正のトルクになったり負のトルクになったりする。このとき、モータMG2がリダクションギヤなどを介して駆動軸に取り付けられているときにはリダクションギヤの歯の当たり音が生じてしまう。こうした当たり音を防止するために、押し当てトルクを過大なものとしたり過小なものとすることも考えられるが、その場合、駆動軸のトルクが値0を挟んで変動することによりデファレンシャルギヤの歯の当たり音が生じたり、押し当てトルクにより予期しない車両の移動が生じる場合がある。
本発明のハイブリッド車およびその制御方法は、内燃機関の始動時のギヤの当たり音を抑制することを主目的とする。
本発明のハイブリッド車およびその制御方法は、少なくとも上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
本発明のハイブリッド車は、
内燃機関と、
車輪に第1のギヤ機構を介して連結された駆動軸に接続されると共に該駆動軸とは独立に回転可能に且つ前記内燃機関をクランキングするトルクを出力するときには前記駆動軸に車両を後進させるトルクを出力するよう前記内燃機関の出力軸に接続され、電力と動力の入出力を伴って前記駆動軸と前記出力軸とに動力を入出力する電力動力入出力手段と、
前記駆動軸に第2のギヤ機構を介して接続された電動機と、
前記電力動力入出力手段および前記電動機と電力のやりとりを行なう蓄電手段と、
運転者のブレーキ操作に基づくブレーキ力を検出するブレーキ力検出手段と、
シフトポジションが車両を後進させる後進用ポジションとされた状態で前記内燃機関を始動する際に前記検出されたブレーキ力が所定ブレーキ力以上のときには、前記内燃機関がクランキングされて始動されるよう前記電力動力入出力手段と前記内燃機関とを制御すると共に車両を後進させる方向の押し当てトルクと前記内燃機関をクランキングする際に前記電力動力入出力手段から前記駆動軸に出力されるトルクをキャンセルするためのキャンセルトルクと車両を後進させる方向の加算トルクとの和のトルクを前記駆動軸に出力するよう前記電動機を制御する制御手段と、
を備えることを要旨とする。
この本発明のハイブリッド車では、シフトポジションが車両を後進させる後進用ポジションとされた状態で内燃機関を始動する際に運転者のブレーキ操作に基づくブレーキ力が所定ブレーキ力以上のときには、内燃機関がクランキングされて始動されるよう電力動力入出力手段と内燃機関とを制御すると共に車両を後進させる方向の押し当てトルクと内燃機関をクランキングする際に電力動力入出力手段から駆動軸に出力されるトルクをキャンセルするためのキャンセルトルクと車両を後進させる方向の加算トルクとの和のトルクを駆動軸に出力するよう電動機を制御する。押し当てトルクとキャンセルトルクは向きが逆となるが、押し当てトルクとキャンセルトルクとの和のトルクに加算トルクを加えることにより、電動機から出力するトルクは常に車両を後進させる方向のトルクとなる。この結果、内燃機関を始動する際に第2のギヤ機構で当たり音が生じるのを抑制することができる。もとより、押し当てトルクにより内燃機関を始動する際に第1のギヤ機構で当たり音が生じるのを抑制することができる。
こうした本発明のハイブリッド車において、前記所定ブレーキ力は、前記押し当てトルクと前記加算トルクとマージンとしてのマージントルクとの和のトルクが前記駆動軸に作用したときに停車状態を保持することができるブレーキ力として設定されてなるものとすることもできる。こうすれば、内燃機関の始動時に車両が予期せずに移動するのを防止することができる。
また、本発明のハイブリッド車において、前記加算トルクは、前記キャンセルトルクに値0以上値1以下のゲインを乗じて大きさが計算されてなるものとすることもできる。こうすれば、加算トルクをキャンセルトルクに応じた大きさとすることができ、必要以上に大きなトルクとするのを抑制することができる。
さらに、本発明のハイブリッド車において、前記制御手段は、シフトポジションが車両を後進させる後進用ポジションとされた状態で前記内燃機関を始動する際に前記検出されたブレーキ力が前記所定ブレーキ力より小さい第1のブレーキ力以上で前記所定ブレーキ力未満のときには、前記内燃機関をクランキングするよう前記電力動力入出力手段を制御すると共に前記押し当てトルクと前記キャンセルトルクとの和のトルクを前記駆動軸に出力するよう前記電動機を制御する手段であるものとすることもできる。この場合、第2のギヤ機構の当たり音が生じる場合があるものの、予期しない車両の移動をより確実に抑止することができる。この態様の本発明のハイブリッド車において、前記制御手段は、シフトポジションが車両を後進させる後進用ポジションとされた状態で前記内燃機関を始動する際に前記検出されたブレーキ力が前記第1のブレーキ力未満のときには、前記内燃機関をクランキングするよう前記電力動力入出力手段を制御すると共に前記キャンセルトルクを前記駆動軸に出力するよう前記電動機を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、押し当てトルクによる予期しない車両の移動をより確実に抑止することができる。これらの場合、前記第1のブレーキ力は、前記押し当てトルクと前記加算トルクに値1未満の正の所定値を乗じて得られるトルクとの和のトルクが前記駆動軸に作用したときに停車状態を保持することができるブレーキ力として設定されてなるものとすることもできる。
加えて、本発明のハイブリッド車において、前記電力動力入出力手段は、動力を入出力する発電機と、前記駆動軸と前記出力軸と前記発電機の回転軸の3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、を備える手段であるものとすることもできるし、前記第1のギヤ機構はデファレンシャルギヤであり、前記第2のギヤ機構はリダクションギヤである、ものとすることもできる。
本発明のハイブリッド車の制御方法は、
内燃機関と、車輪に第1のギヤ機構を介して連結された駆動軸に接続されると共に該駆動軸とは独立に回転可能に且つ前記内燃機関をクランキングするトルクを出力するときには前記駆動軸に車両を後進させるトルクを出力するよう前記内燃機関の出力軸に接続され、電力と動力の入出力を伴って前記駆動軸と前記出力軸とに動力を入出力する電力動力入出力手段と、前記駆動軸に第2のギヤ機構を介して接続された電動機と、前記電力動力入出力手段および前記電動機と電力のやりとりを行なう蓄電手段と、を備えるハイブリッド車の制御方法であって、
シフトポジションが車両を後進させる後進用ポジションとされた状態で前記内燃機関を始動する際に運転者のブレーキ操作に基づくブレーキ力が所定ブレーキ力以上のときには、前記内燃機関がクランキングされて始動されるよう前記電力動力入出力手段と前記内燃機関とを制御すると共に車両を後進させる方向の押し当てトルクと前記内燃機関をクランキングする際に前記電力動力入出力手段から前記駆動軸に出力されるトルクをキャンセルする方向のキャンセルトルクと車両を後進させる方向の加算トルクとの和のトルクを前記駆動軸に出力するよう前記電動機を制御する、
ことを特徴とする。
この本発明のハイブリッド車の制御方法では、シフトポジションが車両を後進させる後進用ポジションとされた状態で内燃機関を始動する際に運転者のブレーキ操作に基づくブレーキ力が所定ブレーキ力以上のときには、内燃機関がクランキングされて始動されるよう電力動力入出力手段と内燃機関とを制御すると共に車両を後進させる方向の押し当てトルクと内燃機関をクランキングする際に電力動力入出力手段から駆動軸に出力されるトルクをキャンセルするためのキャンセルトルクと車両を後進させる方向の加算トルクとの和のトルクを駆動軸に出力するよう電動機を制御する。押し当てトルクとキャンセルトルクは向きが逆となるが、押し当てトルクとキャンセルトルクとの和のトルクに加算トルクを加えることにより、電動機から出力するトルクは常に車両を後進させる方向のトルクとなる。この結果、内燃機関を始動する際に第2のギヤ機構で当たり音が生じるのを抑制することができる。もとより、押し当てトルクにより内燃機関を始動する際に第1のギヤ機構で当たり音が生じるのを抑制することができる。
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、駆動輪63a,63bや図示しない従動輪のブレーキを制御するためのブレーキアクチュエータ92と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
エンジン22は、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関であり、エンジン22の運転状態を検出する各種センサから信号を入力するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御などの運転制御を受けている。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、エンジンECU24は、クランクシャフト26に取り付けられた図示しないクランクポジションセンサからの信号に基づいてクランクシャフト26の回転数、即ちエンジン22の回転数Neも演算している。
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエ
ンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ62を介して、最終的には車両の駆動輪63a,63bに出力される。
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とをシステムメインリレー56を介して接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、平滑コンデンサ55によりその電圧が平滑された状態で、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からの信号に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2も演算している。
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)を演算したり、演算した残容量(SOC)と電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算している。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の残容量(SOC)に基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。
ブレーキアクチュエータ92は、ブレーキペダル85の踏み込みに応じて生じるブレーキマスターシリンダ90の圧力(ブレーキ圧)と車速とにより車両に作用させる制動力におけるブレーキの分担分に応じた制動トルクが駆動輪63a,63bや図示しない従動輪に作用するようブレーキホイールシリンダ96a〜96dの油圧を調整したり、ブレーキペダル85の踏み込みに無関係に、駆動輪63a,63bや従動輪に制動トルクが作用するようブレーキホイールシリンダ96a〜96dの油圧を調整したりすることができるように構成されている。ブレーキアクチュエータ92は、ブレーキ用電子制御ユニット(以
下、ブレーキECUという)94により制御されている。ブレーキECU94は、駆動輪63a,63bや従動輪に取り付けられた図示しない車輪速センサからの各車輪速,図示しない操舵角センサからの操舵角などの信号を入力して、運転者がブレーキペダル85を踏み込んだときに駆動輪63a,63bや従動輪のいずれかがロックによりスリップするのを防止するアンチロックブレーキシステム機能(ABS)や運転者がアクセルペダル83を踏み込んだときに駆動輪63a,63bのいずれかが空転によりスリップするのを防止するトラクションコントロール(TRC),車両が旋回走行しているときに姿勢を保持する姿勢保持制御(VSC)なども行なう。ブレーキECU94は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってブレーキアクチュエータ92を駆動制御したり、各車輪速に関する信号や必要に応じてブレーキアクチュエータ92の状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、平滑コンデンサ55の端子間に設置された電圧センサ55aからの端子間電圧Vcやイグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速V,ブレーキマスターシリンダ90に取り付けられてその圧力(ブレーキ圧)を検出するブレーキ圧センサ91からのブレーキ圧PBなどが入力ポートを介して入力されている。また、ハイブリッド用電子制御ユニット70からは、システムメインリレー56への駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。なお、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52,ブレーキECU94と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52,ブレーキECU94と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
また、実施例のハイブリッド自動車20では、シフトレバー81のシフトポジションSPとして、駐車時に用いる駐車ポジション(Pポジション)、後進走行用のリバースポジション(Rポジション)、中立のニュートラルポジション(Nポジション)、前進走行用の通常のドライブポジション(Dポジション)、アクセルオフ時にDポジションより大きな制動力を作用させるブレーキポジション(Bポジション)などが用意されている。
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
次に、実施例のハイブリッド自動車20の動作、特にシフトレバー81をリバースポジション(Rポジション)としているときにエンジン22を始動する際の動作について説明する。図2はハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される後進シフト時始動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、シフトレバー81をリバースポジション(Rポジション)として停車している最中にエンジン22を始動するときに実行される。
後進シフト時始動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、ブレーキ圧センサ91からのブレーキ圧PBを入力し(ステップS100)、入力したブレーキ圧PBが閾値Pref1以上であるか否かを判定する(ステップS110)。ブレーキアクチュエータ92は、前述したように、ブレーキペダル85の踏み込みに応じて生じるブレーキマスターシリンダ90の圧力(ブレーキ圧)と車速とにより車両に作用させる制動力におけるブレーキの分担分に応じた制動トルクが駆動輪63a,63bや図示しない従動輪に作用するようブレーキホイールシリンダ96a〜96dの油圧を調整するから、停車時では、ブレーキホイールシリンダ96a〜96dの油圧はブレーキ圧PBに応じたものとなる。従って、停車時では、ブレーキ圧PBは、油圧ブレーキによって車両に作用するブレーキ力となる。ここで、閾値Pref1は、トルクTsetを押し当てトルクTpushとしてモータMG2から出力しても停車を保持することができるブレーキ力を油圧ブレーキから出力できる程度のブレーキ圧として設定されるものである。閾値Pref1については更に後述する。
ブレーキ圧PBが閾値Pref1以上のときには、トルクTsetをモータMG2から出力しても停車を保持することができると判断し、大きさがトルクTsetで車両を後進させる方向に作用する負の値としたトルク(−Tset)を押し当てトルクTpushに設定すると共に(ステップS120)、モータMG2から出力されるトルクが徐々に押し当てトルクTpushに至るようレート処理を用いてモータMG2から押し当てトルクTpushを出力する処理を実行する(ステップS130)。ここで、トルクTsetは、エンジン22をモータMG1によりクランキングする際に動力分配統合機構30を介して駆動軸としてのリングギヤ軸32aに作用するトルクの最大値より若干大きなトルクがリングギヤ軸32aに作用するものとして設定されている。したがって、大きさがトルクTsetの押し当てトルクTpushをモータMG2から出力することにより、基本的には、モータMG1によりエンジン22をクランキングしても、リングギヤ軸32aに作用するトルクの符号は変化しない。ここで、押し当てトルクTpushとして車両を後進させる方向に作用するトルクを設定するのは、シフトレバー81がリバースポジションとされているため、押し当てトルクTpushにより予期しない車両の移動が生じたとしても、その方向を後進方向とするためである。
次に、エンジン始動時のトルクマップとエンジン22の始動開始からの経過時間tとに基づいて得られるトルクTstartをモータMG1のトルク指令Tm1*として設定する(ステップS150)。エンジン22の始動時にモータMG1のトルク指令Tm1*に設定するトルクマップの一例をブレーキ圧PBが後述する閾値Pref2以上のときのエンジン22の回転数Ne,モータMG2のトルク指令Tm2*,リングギヤ軸32aに作用するトルクTrの変化の様子の一例と共に図3に示す。実施例のトルクマップは、エンジン22の始動指示がなされてモータMG2から押し当てトルクTpushを出力する処理が終了した直後の時間t12からレート処理を用いて比較的大きなトルクをトルク指令Tm1*に設定してエンジン22の回転数Neを迅速に増加させる。エンジン22の回転数Neが共振回転数帯を通過したか共振回転数帯を通過するのに必要な時間以降の時間t13にエンジン22を安定して回転数Nref以上でモータリングすることができるトルクをトルク指令Tm1*に設定し、電力消費や駆動軸としてのリングギヤ軸32aにおける反力を小さくする。そして、エンジン22の回転数Neが回転数Nrefに至った時間t14からレート処理を用いてトルク指令Tm1*を値0とする。ここで、回転数Nrefは、エンジン22の燃料噴射制御や点火制御を開始する回転数である。
続いて、ブレーキ圧PBを閾値Pref2と比較し(ステップS160)、ブレーキ圧PBが閾値Pref2以上のときには、モータMG1のトルク指令Tm1*にゲインkを乗じて動力分配統合機構30のギヤ比ρと減速ギヤ35のギヤ比Grで除して符号を反転した値を次式(1)により計算して加算トルクTaddとして設定すると共に(ステップS170)、押し当てトルクTpushとモータMG1のトルク指令Tm1*を動力分配統合機構30のギヤ比ρと減速ギヤ35のギヤ比Grで除した値と加算トルクTaddとの和を式(2)により計算してモータMG2のトルク指令Tm2*として設定し(ステップS190)、設定したトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信し(ステップS200)、エンジン22の回転数Neが回転数Nref以上となるまで(ステップS210,S220)、ステップS150〜S220の処理を繰り返すためにステップS150に戻る。ここで、閾値Pref2は、式(1)によって計算した加算トルクTaddを押し当てトルクTpushに加えてモータMG2から出力したときにリングギヤ軸32aに作用するトルクより若干大きなトルクがリングギヤ軸32aに作用しても停車を保持することができる程度のブレーキ圧として設定されるものである。モータMG1のトルク指令Tm1*を動力分配統合機構30のギヤ比ρで除した値は、モータMG1からトルク指令Tm1*のトルクを出力したときにリングギヤ軸32aに作用するトルクを打ち消すトルクであり、これを減速ギヤ35のギヤ比Grで除して得られる式(2)の右辺第2項のトルクは減速ギヤ35を介してモータMG1からトルク指令Tm1*のトルクを出力したときにリングギヤ軸32aに作用するトルクを打ち消すためにモータMG2から出力すべきトルク(キャンセルトルク)となる。また、モータMG1のトルク指令Tm1*を動力分配統合機構30のギヤ比ρで除した値にゲインkを乗じて符号を反転させた加算トルクTaddは、モータMG1から出力するトルクに対して押し当てトルクTpushを増加させるトルクとなり、キャンセルトルクの符号を反転させてゲインkを乗じたものとなる。シフトレバー81をリバースポジションとしてエンジン22を始動するときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図にモータMG1,MG2から出力するトルクを示したものの一例を図4に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリア34の回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したリングギヤ32の回転数Nrを示す。R軸に作用する3つの矢印は、押し当てトルクTpushに減速ギヤ35のギヤ比Grを乗じたトルク(Gr・Tpush)、キャンセルトルクに減速ギヤ35のギヤ比Grを乗じたトルク(Tm1*/ρ)、加算トルクTaddに減速ギヤ35のギヤ比Grを乗じたトルク(Gr・Tadd)である。モータMG2のトルク指令Tm2*は、式(2)に示すように、これらの和のトルクを減速ギヤ35のギヤ比Grで除したものとなる。また、ゲインkは、0〜1の範囲で適宜設定されるものであり、例えば0.3や0.5,0.7などを用いることができる。なお、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、モータMG1,MG2がトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動するようインバータ41,42のスイッチング素子をスイッチング制御する。
Tadd=−k・Tm1*/(ρ・Gr) (1)
Tm2*=Tpush+Tm1*/(ρ・Gr)+Tadd (2)
ステップS150〜S220までの処理を繰り返し実行しているうちにエンジン22の回転数Neが回転数Nref以上に至ると、燃料噴射制御や点火制御を開始するための制御信号をエンジンECU24に送信して燃料噴射制御や点火制御を開始し(ステップS230)、完爆するのを待ち(ステップS240)、押し当てトルクTpushに値0が設定されていないときには(ステップS250)、モータMG2から出力されるトルクが徐々に値0に至るようレート処理を用いて押し当てトルクTpushを解除する処理を実行して(ステップS260)、本ルーチンを終了する。
以上がブレーキ圧PBが閾値Pref2以上のときの処理となる。この処理を図3を用いて時間変化にそって説明すると、エンジン22の始動指示がなされた時間t11からレート処理を用いてモータMG2から押し当てトルクTpushを出力する処理が実行され、これに伴って駆動軸としてのリングギヤ軸32aに押し当てトルクTpushに減速ギヤ35のギヤ比Grを乗じたトルクが作用する。このとき、油圧ブレーキにより運転者のブレーキペダル85の踏み込みによる閾値Pref2以上のブレーキ圧PBに基づくブレーキ力が作用しているから車両は停車状態を保持する。モータMG2から押し当てトルクTpushを出力する処理が終了した時間t12からトルクマップに基づいてモータMG1のトルク指令Tm1*を設定してモータMG1を駆動し、このトルク指令Tm1*に基づいて設定された加算トルクTaddとキャンセルトルクと押し当てトルクTpushとの和の値をモータMG2のトルク指令Tm2*として設定してモータMG2を駆動する。このとき、モータMG1をトルク指令Tm1*で駆動することにより作用するトルクはキャンセルトルクによりキャンセルされるから、リングギヤ軸32aには、押し当てトルクTpushと加算トルクTaddとの和のトルクに減速ギヤ35のギヤ比Grを乗じたトルクが作用することになるが、このトルクは閾値Pref2に相当するブレーキ力未満であるから、車両は停車状態を保持する。そして、エンジン22が完爆した時間t15からはモータMG2からの押し当てトルクTpushの出力を解除する処理が実行されて一連の処理は終了する。図3から解るように、ブレーキ圧PBが閾値Pref2以上のときにエンジン22を始動するときには、リングギヤ軸32aには常に負のトルクが作用しているため、エンジン22の始動時におけるトルク脈動によってもリングギヤ軸32aに作用するトルクはその符号を反転することはない。このため、リングギヤ軸32aに作用するトルクが正負に反転することによってデファレンシャルギヤ62の歯が当たるのを抑制することができる。即ち、デファレンシャルギヤ62から歯の当たり音が生じるのを抑制することができる。また、モータMG2からも常に負のトルクを出力しているから、エンジン22の始動時におけるトルク脈動によっても減速ギヤ35の歯が当たるのを抑制することができる。即ち、減速ギヤ35から歯の当たり音が生じるのを抑制することができる。
ブレーキ圧PBは閾値Pref1以上であるが閾値Pref2未満のときには、ステップS160で否定的な判定がなされ、加算トルクTaddに値0が設定され(ステップS180)、上述した式(2)によりモータMG2のトルク指令Tm2*が設定されて(ステップS190)、エンジン22のクランキングが行なわれる。エンジン22の始動時のトルクマップの一例とブレーキ圧PBが閾値Pref1以上で閾値Pref2未満のときのエンジン22の回転数Ne,モータMG2のトルク指令Tm2*,リングギヤ軸32aに作用するトルクTrの変化の様子の一例とを図5に示し、ブレーキ圧PBが閾値Pref1以上で閾値Pref2未満のときにエンジン22を始動するときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図にモータMG1,MG2から出力するトルクを示したものの一例を図6に示す。図示するように、ブレーキ圧PBが閾値Pref2以上のときと同様に、エンジン22の始動指示がなされた時間t11からレート処理によりモータMG2から押し当てトルクTpushを出力する処理が実行される。このとき、油圧ブレーキにより運転者のブレーキペダル85の踏み込みによる閾値Pref1以上のブレーキ圧PBに基づくブレーキ力が作用しているから車両は停車状態を保持する。モータMG2から押し当てトルクTpushを出力する処理が終了した時間t12からは、トルクマップに基づいてモータMG1のトルク指令Tm1*を設定してモータMG1を駆動し、キャンセルトルクと押し当てトルクTpushとの和の値をモータMG2のトルク指令Tm2*として設定してモータMG2を駆動する。このとき、モータMG1をトルク指令Tm1*で駆動することにより作用するトルクはキャンセルトルクによりキャンセルされるから、リングギヤ軸32aには、押し当てトルクTpushに減速ギヤ35のギヤ比Grを乗じたトルクが作用することになるが、このトルクは閾値Pref1に相当するブレーキ力未満であるから、車両は停車状態を保持する。一方、モータMG2のトルク指令Tm2*は、モータMG1のトルク指令Tm1*が大きいときにはキャンセルトルクも大きくなるため、値0に近づくときがあり、エンジン22のトルク脈動による振動などにより減速ギヤ35の歯が当たる場合が生じる。そして、エンジン22が完爆した時間t15からはモータMG2からの押し当てトルクTpushの出力を解除する処理が実行されて一連の処理は終了する。図5から解るように、ブレーキ圧PBが閾値Pref1以上で閾値Pref2未満のときにエンジン22を始動するときには、リングギヤ軸32aには常に負のトルクが作用しているため、ブレーキ圧PBが閾値Pref2以上のときと同様に、リングギヤ軸32aに作用するトルクが正負に反転することによってデファレンシャルギヤ62の歯が当たるのを抑制すること、即ちデファレンシャルギヤ62から歯が当たり音が生じるのを抑制するができる。しかし、モータMG2のトルク指令Tm2*は値0近傍となる場合があるから、エンジン22の始動時におけるトルク脈動によって減速ギヤ35の歯が当たる場合が生じ、減速ギヤ35から歯の当たり音が生じてしまうことがある。
ブレーキ圧PBが閾値Pref1未満のときには、ステップS110で否定的な判定がなされ、値0を押し当てトルクTpushに設定し(ステップS140)、モータMG2から押し当てトルクTpushを出力する処理を行なうことなく、値0を加算トルクTaddに設定し(ステップS180)、キャンセルトルクを減速ギヤ35のギヤ比Grで除した値をモータMG2のトルク指令Tm2*に設定してエンジン22のクランキングが行なわれる。エンジン22の始動時のトルクマップの一例とブレーキ圧PBが閾値Pref1未満のときのエンジン22の回転数Ne,モータMG2のトルク指令Tm2*,リングギヤ軸32aに作用するトルクTrの変化の様子の一例とを図7に示し、ブレーキ圧PBが閾値Pref1未満のときにエンジン22を始動するときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図にモータMG1,MG2から出力するトルクを示したものの一例を図8に示す。ブレーキ圧PBが閾値Pref1未満では、モータMG2からトルクTsetの押し当てトルクTpushの出力を行なわず、モータMG2からはキャンセルトルクを出力するだけであるから、駆動軸としてのリングギヤ軸32aに作用するトルクは基本的には値0となる。このため、車両は停車状態を保持することができるが、エンジン22を始動する際のトルク脈動によりデファレンシャルギヤ62の歯が当たり、歯の当たり音が生じる場合がある。一方、モータMG2は常に正のトルクを出力するから、エンジン22を始動する際のトルク脈動による減速ギヤ35の歯の当たりを抑制することができ、減速ギヤ35の歯の当たり音が生じるのを抑制することができる。
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、ブレーキ圧PBが閾値Pref2以上のときには、モータMG2から大きさがトルクTsetで車両を後進させる方向の押し当てトルクTpushを出力すると共にモータMG1によるエンジン22のクランキングが開始された以降は押し当てトルクTpushとモータMG1によるエンジン22のクランキングによりリングギヤ軸32aに作用するトルクをキャンセルするためのキャンセルトルクとキャンセルトルクにゲインkを乗じ符号を反転して得られる加算トルクTaddとの和のトルクをモータMG2から出力することにより、シフトレバー81がリバースポジションとされた状態でエンジン22を始動するときにデファレンシャルギヤ62や減速ギヤ35で歯の当たり音が生じるのを抑制することができる。もとより、車両の停車を保持することができる。また、ブレーキ圧PBが閾値Pref1以上で閾値Pref2未満のときには、モータMG2から大きさがトルクTsetで車両を後進させる方向の押し当てトルクTpushを出力すると共にモータMG1によるエンジン22のクランキングが開始された以降は押し当てトルクTpushとキャンセルトルクとの和のトルクをモータMG2から出力することにより、シフトレバー81がリバースポジションとされた状態でエンジン22を始動するときに、減速ギヤ35の歯の当たり音が生じる場合があるものの、デファレンシャルギヤ62で歯の当たり音が生じるのを抑制することができる。もとより、車両の停車を保持することができる。さらに、ブレーキ圧PBが閾値Pref1未満のときには、モータMG2から大きさがトルクTsetで車両を後進させる方向の押し当てトルクTpushの出力を行なうことなくモータMG2からキャンセルトルクだけを出力することにより、車両を停車を保持することができる。
実施例のハイブリッド自動車20では、ブレーキ圧PBが閾値Pref1以上で閾値Pref2未満のときには、モータMG2から大きさがトルクTsetで車両を後進させる方向の押し当てトルクTpushを出力すると共にモータMG1によるエンジン22のクランキングが開始された以降は押し当てトルクTpushとキャンセルトルクとの和のトルクをモータMG2から出力するものとしたが、ブレーキ圧PBが閾値Pref1未満のときと同様に、モータMG2から押し当てトルクTpushの出力を行なうことなく、モータMG2からキャンセルトルクだけを出力するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の動力を動力分配統合機構30を介して駆動輪63a,63bに接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図9の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、エンジン22のクランクシャフト26に接続されたインナーロータ232と駆動輪63a,63bに動力を出力する駆動軸に接続されたアウターロータ234とを有し、エンジン22の動力の一部を駆動軸に伝達すると共に残余の動力を電力に変換する対ロータ電動機230を備えるものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、駆動軸としてのリングギヤ軸32aに減速ギヤ35を介してモータMG2を取り付けるものとしたが、減速ギヤ35に代えて変速機を介してモータMG2を取り付けるものとしてもよい。
また、こうしたハイブリッド自動車に適用するものに限定されるものではなく、自動車以外のハイブリッド車の形態としてもよく、こうしたハイブリッド車の制御方法の形態としてもよい。
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、動力分配統合機構30とモータMG1とが「電力動力入出力手段」に相当し、モータMG2が「電動機」に相当し、バッテリ50が「蓄電手段」に相当し、ブレーキ圧センサ91が「ブレーキ力検出手段」に相当する。そして、シフトレバー81がリバースポジションとされた状態でエンジン22を始動するときにブレーキ圧PBが閾値Pref2以上のときには、モータMG2から大きさがトルクTsetで車両を後進させる方向の押し当てトルクTpushを出力し、モータMG1によりエンジン22がクランキングされて始動するようモータMG1のトルク指令Tm1*を設定すると共に押し当てトルクTpushとモータMG1によるエンジン22のクランキングによりリングギヤ軸32aに作用するトルクをキャンセルするためのキャンセルトルクとキャンセルトルクにゲインkを乗じ符号を反転して得られる加算トルクTaddとの和のトルクをモータMG2のトルク指令Tm2*として設定して設定したトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信したりエンジン22の回転数Neが回転数Nref以上に至ったときに燃料噴射制御や点火制御を開始する制御信号をエンジンECU24に送信する図2の後進シフト時始動制御ルーチンを実行するハイブリッド用電子制御ユニット70と、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信してモータMG1,MG2を制御するモータECU40と、制御信号を受信してエンジン22の燃料噴射制御や点火制御を開始するエンジンECU24とが「制御手段」に相当する。なお、デファレンシャルギヤ62が「第1のギヤ機構」に相当し、減速ギヤ35が「第2のギヤ機構」に相当する。また、モータMG1が「発電機」に相当し、動力分配統合機構30が「3軸式動力入出力手段」に相当する。
ここで、「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関に限定されるものではなく、水素エンジンなど如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「電力動力入出力手段」としては、動力分配統合機構30とモータMG1とを組み合わせたものや対ロータ電動機230に限定されるされるものではなく、車輪に第1のギヤ機構を介して連結された駆動軸に接続されると共に駆動軸とは独立に回転可能に且つ内燃機関をクランキングするトルクを出力するときには駆動軸に車両を後進させるトルクを出力するよう内燃機関の出力軸に接続され、電力と動力の入出力を伴って駆動軸と出力軸とに動力を入出力するものであれば如何なるものとしても構わない。「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、駆動軸に動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「蓄電手段」としては、二次電池としてのバッテリ50に限定されるものではなく、キャパシタなど、電力動力入出力手段と電力のやりとりが可能であれば如何なるものとしても構わない。「ブレーキ力検出手段」としては、ブレーキ圧センサ91に限定されるものではなく、ブレーキペダル85の踏み込み量であるブレーキペダルポジションBPを検出するブレーキペダルポジションセンサ86を用いるものとしたりするなど、運転者のブレーキ操作に基づくブレーキ力を検出するものであれば如何なるものとしても構わない。「制御手段」としては、ハイブリッド用電子制御ユニット70とエンジンECU24とモータECU40とからなる組み合わせに限定されるものではなく単一の電子制御ユニットにより構成されるなどとしてもよい。また、「制御手段」としては、シフトレバー81がリバースポジションとされた状態でエンジン22を始動するときにブレーキ圧PBが閾値Pref2以上のときには、モータMG2から大きさがトルクTsetで車両を後進させる方向の押し当てトルクTpushを出力し、モータMG1によりエンジン22がクランキングされて始動するようモータMG1とエンジン22とを制御すると共に押し当てトルクTpushとモータMG1によるエンジン22のクランキングによりリングギヤ軸32aに作用するトルクをキャンセルするためのキャンセルトルクとキャンセルトルクにゲインkを乗じ符号を反転して得られる加算トルクTaddとの和のトルクがモータMG2から出力されるようモータMG2を制御するものに限定されるものではなく、シフトポジションが車両を後進させる後進用ポジションとされた状態で内燃機関を始動する際にブレーキ力が所定ブレーキ力以上のときには、内燃機関がクランキングされて始動されるよう電力動力入出力手段と内燃機関とを制御すると共に車両を後進させる方向の押し当てトルクと内燃機関をクランキングする際に電力動力入出力手段から駆動軸に出力されるトルクをキャンセルするためのキャンセルトルクと車両を後進させる方向の加算トルクとの和のトルクを駆動軸に出力するよう電動機を制御するものであれば如何なるものとしても構わない。「第1のギヤ機構」としては、デファレンシャルギヤ62に限定されるものではなく、変速機など、ギヤによる接続機構であれば如何なるものとしても構わない。「第2のギヤ機構」としては、減速ギヤ35に限定されるものではなく、変速機など、ギヤによる接続機構であれば如何なるものとしても構わない。「発電機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG1に限定されるものではなく、誘導電動機など、動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの発電機としても構わない。「3軸式動力入出力手段」としては、上述の動力分配統合機構30に限定されるものではなく、ダブルピニオン式の遊星歯車機構を用いるものや複数の遊星歯車機構を組み合わせて4以上の軸に接続されるものやデファレンシャルギヤのように遊星歯車とは異なる作動作用を有するものなど、駆動軸と出力軸と発電機の回転軸との3軸に接続され3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力するものであれば如何なるものとしても構わない。
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
本発明は、ハイブリッド車の製造産業などに利用可能である。
本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。 ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される後進シフト時始動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。 エンジン22の始動時のトルクマップの一例をブレーキ圧PBが閾値Pref2以上のときのエンジン22の回転数Ne,モータMG2のトルク指令Tm2*,リングギヤ軸32aに作用するトルクTrの変化の様子の一例と共に示す説明図である。 ブレーキ圧PBが閾値Pref2以上のときにエンジン22を始動するときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図にモータMG1,MG2から出力するトルクを示したものの一例を示す説明図である。 エンジン22の始動時のトルクマップの一例をブレーキ圧PBが閾値Pref1以上で閾値Pref2未満のときのエンジン22の回転数Ne,モータMG2のトルク指令Tm2*,リングギヤ軸32aに作用するトルクTrの変化の様子の一例と共に示す説明図である。 ブレーキ圧PBが閾値Pref1以上で閾値Pref2未満のときにエンジン22を始動するときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図にモータMG1,MG2から出力するトルクを示したものの一例を示す説明図である。 エンジン22の始動時のトルクマップの一例をブレーキ圧PBが閾値Pref1未満のときのエンジン22の回転数Ne,モータMG2のトルク指令Tm2*,リングギヤ軸32aに作用するトルクTrの変化の様子の一例と共に示す説明図である。 ブレーキ圧PBが閾値Pref1未満のときにエンジン22を始動するときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図にモータMG1,MG2から出力するトルクを示したものの一例を示す説明図である。 変形例のハイブリッド自動車220の構成の概略を示す構成図である。
符号の説明
20,220 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、55 平滑コンデンサ、55a 電圧センサ、56 システムメインリレー、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、90 ブレーキマスターシリンダ、92 ブレーキアクチュエータ、94 ブレーキ用電子制御ユニット(ブレーキECU)、96a〜96d ブレーキホイールシリンダ、230 対ロータ電動機、232 インナーロータ、234 アウターロータ、MG1,MG2 モータ。

Claims (8)

  1. 内燃機関と、
    車輪に第1のギヤ機構を介して連結された駆動軸に接続されると共に該駆動軸とは独立に回転可能に且つ前記内燃機関をクランキングするトルクを出力するときには前記駆動軸に車両を後進させるトルクを出力するよう前記内燃機関の出力軸に接続され、電力と動力の入出力を伴って前記駆動軸と前記出力軸とに動力を入出力する電力動力入出力手段と、
    前記駆動軸に第2のギヤ機構を介して接続された電動機と、
    前記電力動力入出力手段および前記電動機と電力のやりとりを行なう蓄電手段と、
    運転者のブレーキ操作に基づくブレーキ力を検出するブレーキ力検出手段と、
    シフトポジションが車両を後進させる後進用ポジションとされた状態で前記内燃機関を始動する際に前記検出されたブレーキ力が所定ブレーキ力以上のときには、前記内燃機関がクランキングされて始動されるよう前記電力動力入出力手段と前記内燃機関とを制御すると共に車両を後進させる方向の押し当てトルクと前記内燃機関をクランキングする際に前記電力動力入出力手段から前記駆動軸に出力されるトルクをキャンセルするためのキャンセルトルクと車両を後進させる方向の加算トルクとの和のトルクを前記駆動軸に出力するよう前記電動機を制御する制御手段と、
    を備え
    前記加算トルクは、前記キャンセルトルクに値0以上値1以下のゲインを乗じて大きさが計算されてなる、
    ハイブリッド車。
  2. 前記所定ブレーキ力は、前記押し当てトルクと前記加算トルクとマージンとしてのマージントルクとの和のトルクが前記駆動軸に作用したときに停車状態を保持することができるブレーキ力として設定されてなる請求項1記載のハイブリッド車。
  3. 前記制御手段は、シフトポジションが車両を後進させる後進用ポジションとされた状態で前記内燃機関を始動する際に前記検出されたブレーキ力が前記所定ブレーキ力より小さい第1のブレーキ力以上で前記所定ブレーキ力未満のときには、前記内燃機関をクランキングするよう前記電力動力入出力手段を制御すると共に前記押し当てトルクと前記キャンセルトルクとの和のトルクを前記駆動軸に出力するよう前記電動機を制御する手段である請求項1または2記載のハイブリッド車。
  4. 前記制御手段は、シフトポジションが車両を後進させる後進用ポジションとされた状態で前記内燃機関を始動する際に前記検出されたブレーキ力が前記第1のブレーキ力未満のときには、前記内燃機関をクランキングするよう前記電力動力入出力手段を制御すると共に前記キャンセルトルクを前記駆動軸に出力するよう前記電動機を制御する手段である請求項3記載のハイブリッド車。
  5. 前記第1のブレーキ力は、前記押し当てトルクと前記加算トルクに値1未満の正の所定値を乗じて得られるトルクとの和のトルクが前記駆動軸に作用したときに停車状態を保持することができるブレーキ力として設定されてなる請求項3または4記載のハイブリッド車。
  6. 前記電力動力入出力手段は、動力を入出力する発電機と、前記駆動軸と前記出力軸と前記発電機の回転軸の3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、を備える手段である請求項1ないし5いずれか1つの請求項に記載のハイブリッド車。
  7. 請求項1ないし6のいずれか1つの請求項に記載のハイブリッド車であって、
    前記第1のギヤ機構は、デファレンシャルギヤであり、
    前記第2のギヤ機構は、リダクションギヤである、
    ハイブリッド車。
  8. 内燃機関と、車輪に第1のギヤ機構を介して連結された駆動軸に接続されると共に該駆動軸とは独立に回転可能に且つ前記内燃機関をクランキングするトルクを出力するときには前記駆動軸に車両を後進させるトルクを出力するよう前記内燃機関の出力軸に接続され、電力と動力の入出力を伴って前記駆動軸と前記出力軸とに動力を入出力する電力動力入出力手段と、前記駆動軸に第2のギヤ機構を介して接続された電動機と、前記電力動力入出力手段および前記電動機と電力のやりとりを行なう蓄電手段と、を備えるハイブリッド車の制御方法であって、
    シフトポジションが車両を後進させる後進用ポジションとされた状態で前記内燃機関を始動する際に運転者のブレーキ操作に基づくブレーキ力が所定ブレーキ力以上のときには、前記内燃機関がクランキングされて始動されるよう前記電力動力入出力手段と前記内燃機関とを制御すると共に車両を後進させる方向の押し当てトルクと前記内燃機関をクランキングする際に前記電力動力入出力手段から前記駆動軸に出力されるトルクをキャンセルするためのキャンセルトルクと車両を後進させる方向の加算トルクとして前記キャンセルトルクに値0以上値1以下のゲインを乗じて大きさが計算されるトルクとの和のトルクを前記駆動軸に出力するよう前記電動機を制御する、
    ことを特徴とするハイブリッド車の制御方法。
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