以下に、本発明にかかる実施の形態であるカプセル型医療装置用誘導システムについて、被検体内に経口にて導入され、被検体の胃や小腸や大腸などに蓄えた液体に浮かぶカプセル型内視鏡を被検体内導入装置として用いるカプセル医療装置システムを例に説明する。ただし、これに限定されず、例えば被検体の食道から肛門にかけて管腔内を移動する途中で撮像動作を実行することで被検体内部の体内画像を取得する単眼または複眼のカプセル型内視鏡など、種々の被検体内導入装置を用いることが可能である。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
(実施の形態1)
まず、実施の形態1について説明する。図1は、この発明の実施の形態1にかかるカプセル型医療装置用誘導システムの全体構成を示す模式図である。図1に示すように、この実施の形態1におけるカプセル型医療装置用誘導システム1は、被検体の口から飲み込まれることによって被検体内の体腔内に導入され外部装置と通信するカプセル型医療装置であるカプセル型内視鏡10と、被検体周囲に設けられ3次元の磁界を発生できる磁界発生部2と、カプセル型内視鏡10との間で無線通信を行ないカプセル型内視鏡10が撮像した画像を含む無線信号を受信するとともにカプセル型内視鏡10に対する操作信号を送信する送受信部3と、カプセル型医療装置用誘導システム1の各構成部位を制御する体外制御部4と、カプセル型内視鏡10によって撮像された画像を表示出力する表示部5と、カプセル型内視鏡10を磁気で誘導するための操作情報などカプセル型医療装置用誘導システム1における各種操作を指示する指示情報を体外制御部4に入力する入力部6と、カプセル型内視鏡10によって撮像された画像情報などを記憶する記憶部7と、磁界発生部2に関与する磁界を制御する磁界制御部8と、磁界制御部8の制御にしたがった電力を磁界発生部2に供給する電力供給部9とを備える。
なお、送受信部3は、カプセル型内視鏡10から送信された信号の受信電界強度をもとに、カプセル型内視鏡10の被検体内の位置および姿勢を検出する。もちろん、別途、カプセル型内視鏡10の位置および姿勢を検出する位置検出装置を備えるようにしてもよい。たとえば、カプセル型内視鏡10に磁界発生部あるいは磁界反射部を設け、磁界発生部2と同様にカプセル型内視鏡10の周囲を覆うよう複数の磁界センサを設け、この磁界センサの検出結果をもとにカプセル型内視鏡10の位置および姿勢を検出すればよい。
カプセル型内視鏡10は、被検体の体内画像を取得するカプセル型の医療装置であり、撮像機能および無線通信機能を内蔵する。カプセル型内視鏡10は、経口摂取等によって被検体の臓器内部に導入される。その後、被検体内部のカプセル型内視鏡10は、消化管内部を移動して、最終的に、被検体の外部に排出される。かかるカプセル型内視鏡10は、被検体の内部に導入されてから外部に排出されるまでの期間、被検体の体内画像を順次撮像し、得られた体内画像を外部の送受信部3に順次無線送信する。また、カプセル型内視鏡10は、永久磁石等の磁性体を内蔵する。かかるカプセル型内視鏡10は、被検体の臓器内部(例えば胃内部)に導入された液体中を漂い、外部の磁界発生部2によって磁気誘導される。
磁界発生部2は、被検体内部のカプセル型医療装置を磁気誘導するためのものである。磁界発生部2は、たとえば複数のコイル等を用いて実現され、電力供給部9によって供給された電力を用いて誘導用磁界を発生する。磁界発生部2は、この発生した誘導用磁界をカプセル型内視鏡10内部の磁性体に印加し、この誘導用磁界の作用によってカプセル型内視鏡10を磁気的に捕捉する。磁界発生部2は、かかる被検体内部のカプセル型内視鏡10に作用する誘導用磁界の磁界方向を変更することによって、被検体内部におけるカプセル型内視鏡10の3次元的な姿勢を制御する。
磁界発生部2は、いわゆる均一磁界のほか、均一勾配磁界を発生することが可能である。この均一勾配磁界は、略均一な磁気勾配を有し、磁界強度の分布が疎から密に傾く方向へカプセル型内視鏡10内の永久磁石を付勢する。磁界発生部2は、カプセル型内視鏡10を付勢したい方向に磁界強度の分布が疎から密に傾く均一勾配磁界を発生することによって、永久磁石を付勢しカプセル型内視鏡10を所望の方向へ移動させる。なお、磁界発生部2は、ピーク磁界を発生することもが可能である。このピーク磁界は、水平面に対して鉛直な方向に磁界強度のピークを持つものであり、この磁界強度のピーク位置に永久磁石を引き付けてカプセル型内視鏡10を拘束することが可能である。
送受信部3は、複数のアンテナを備え、これら複数のアンテナを介してカプセル型内視鏡10から被検体の体内画像を受信する。送受信部3は、これら複数のアンテナを介してカプセル型内視鏡10からの無線信号を順次受信する。送受信部3は、これら複数のアンテナの中から最も受信電界強度の高いアンテナを選択し、この選択したアンテナを介して受信したカプセル型内視鏡10からの無線信号に対して復調処理等を行う。これによって、送受信部3は、この無線信号からカプセル型内視鏡10による画像データ、すなわち被検体の体内画像データを抽出する。送受信部3は、この抽出した体内画像データを含む画像信号を体外制御部4に送信する。
体外制御部4は、磁界発生部2、表示部5、記憶部7および磁界制御部8の各動作を制御し、且つ、これら各構成部間における信号の入出力を制御する。体外制御部4は、送受信部3が順次受信した体内画像を順次取得する画像受信部41と、送受信部3が順次受信した体内画像をリアルタイムに表示部5に表示させる画像表示制御部42とを備える。また、体外制御部4は、送受信部3から取得した被検体の体内画像群を記憶するように記憶部7を制御する。
体外制御部4は、入力部6から入力された操作情報に応じてカプセル型内視鏡10を誘導するために磁界制御部8に磁界発生条件を指示する磁界制御指示部45と、磁界発生部2に発生させる均一勾配磁界の勾配の方向を切り替える磁界方向切替部46と、磁界発生部2が発生した均一勾配磁界の勾配の方向を含む発生条件を記憶する磁界勾配記憶部47とを備える。磁界制御指示部45は、入力部6によってカプセル型内視鏡10の操作情報を入力された場合、この入力された操作情報によって指定される磁気誘導方向および磁気誘導位置に応じた磁界の発生を磁界制御部8に指示する。
表示部5は、液晶ディスプレイ等の各種ディスプレイを用いて実現され、体外制御部4によって表示指示された各種情報を表示する。具体的には、表示部5は、体外制御部4における画像表示制御部42の制御に基づいて、例えば、カプセル型内視鏡10が撮像した被検体の体内画像群を表示する。また、表示部5は、かかる体内画像群の中から入力部6の入力操作によって選択またはマーキングされた体内画像の縮小画像、被検体の患者情報および検査情報等を表示する。
入力部6は、キーボードおよびマウス等の入力デバイスを用いて実現され、医師等の操作者による入力操作に応じて、体外制御部4に各種情報を入力する。入力部6によって体外制御部4に入力される各種情報として、例えば、体外制御部4に対して指示する指示情報、被検体の患者情報および検査情報等が挙げられる。なお、被検体の患者情報は、被検体を特定する特定情報であり、例えば、被検体の患者名、患者ID、生年月日、性別、年齢等である。また、被検体の検査情報は、被検体の消化管内部にカプセル型内視鏡10を導入して消化管内部を観察する検査を特定する特定情報であり、例えば、検査ID、検査日等である。また、入力部6は、上述した磁界発生部2によるカプセル型内視鏡10に磁気誘導を操作するための操作情報を入力する。
入力部6は、磁気誘導操作対象であるカプセル型内視鏡10の磁気誘導方向や磁気誘導位置等のカプセル型内視鏡10を磁気で誘導するための操作情報を体外制御部4に入力する操作入力部60を備える。操作入力部60は、ジョイスティック、各種ボタンおよび各種スイッチを備えた構成を有し、このジョイスティック等が操作者によって操作されることによって、操作情報を体外制御部4に入力する。
記憶部7は、フラッシュメモリまたはハードディスク等の書き換え可能に情報を保存する記憶メディアを用いて実現される。記憶部7は、体外制御部4が記憶指示した各種情報を記憶し、記憶した各種情報の中から体外制御部4が読み出し指示した情報を体外制御部4に送出する。なお、かかる記憶部7が記憶する各種情報として、例えば、カプセル型内視鏡10によって撮像された被検体の体内画像群の各画像データ、表示部5に表示された各体内画像の中から入力部6の入力操作によって選択された体内画像のデータ、被検体の患者情報等の入力部6による入力情報等が挙げられる。
磁界制御部8は、体外制御部4に指示された指示情報に基づいて磁界発生部2に対する電力供給部9の通電量を制御し、この電力供給部9の制御を通して、この操作情報に基づく磁気誘導方向および磁気誘導位置に応じたカプセル型内視鏡10の磁気誘導に必要な誘導用磁界を発生するように磁界発生部2を制御する。
電力供給部9は、体外制御部4および磁界制御部8の制御に基づいて、上述した誘導用磁界を発生させるために必要な電力(例えば交流電流)を磁界発生部2に供給する。この場合、電力供給部9は、磁界発生部2に含まれる複数のコイルの各々に対して必要な電力を適宜供給する。なお、上述した磁界発生部2による誘導用磁界の磁界方向および磁界強度は、かかる電力供給部9から磁界発生部2内の各コイルへの通電量によって制御される。
つぎに、カプセル型内視鏡10について説明する。図2は、図1に示すカプセル型内視鏡の一構成例を示す断面模式図である。図2に示すように、カプセル型内視鏡10は、被検体の臓器内部に導入し易い大きさに形成された外装であるカプセル型筐体12と、互いに異なる撮像方向の被写体の画像を撮像する撮像部11A,11Bとを備える。また、カプセル型内視鏡10は、撮像部11A,11Bによって撮像された各画像を外部に無線送信する無線通信部16と、カプセル型内視鏡10の各構成部を制御する制御部17と、カプセル型内視鏡10の各構成部に電力を供給する電源部18とを備える。さらに、カプセル型内視鏡10は、上述した磁界発生部2による磁気誘導を可能にするための永久磁石19を備える。
カプセル型筐体12は、被検体の臓器内部に導入可能な大きさに形成された外装ケースであり、筒状筐体12aの両側開口端をドーム形状筐体12b,12cによって塞いで実現される。ドーム形状筐体12b,12cは、可視光等の所定波長帯域の光に対して透明なドーム形状の光学部材である。筒状筐体12aは、可視光に対して略不透明な有色の筐体である。かかる筒状筐体12aおよびドーム形状筐体12b,12cによって形成されるカプセル型筐体12は、図2に示すように、撮像部11A,11B、無線通信部16、制御部17、電源部18および永久磁石19を液密に内包する。
撮像部11A,11Bは、互いに異なる撮像方向の画像を撮像する。具体的には、撮像部11Aは、LED等の照明部13Aと、集光レンズ等の光学系14Aと、CMOSイメージセンサまたはCCD等の撮像素子15Aとを有する。照明部13Aは、撮像素子15Aの撮像視野S1に白色光等の照明光を発光して、ドーム形状筐体12b越しに撮像視野S1内の被写体(例えば被検体内部における撮像視野S1側の臓器内壁)を照明する。光学系14Aは、この撮像視野S1からの反射光を撮像素子15Aの撮像面に集光して、撮像素子15Aの撮像面に撮像視野S1の被写体画像を結像する。撮像素子15Aは、この撮像視野S1からの反射光を撮像面を介して受光し、この受光した光信号を光電変換処理して、この撮像視野S1の被写体画像、すなわち被検体の体内画像を撮像する。撮像部11Bは、LED等の照明部13Bと、集光レンズ等の光学系14Bと、CMOSイメージセンサまたはCCD等の撮像素子15Bとを有する。照明部13Bは、撮像素子15Bの撮像視野S2に白色光等の照明光を発光して、ドーム形状筐体12c越しに撮像視野S2内の被写体(例えば被検体内部における撮像視野S2側の臓器内壁)を照明する。光学系14Bは、この撮像視野S2からの反射光を撮像素子15Bの撮像面に集光して、撮像素子15Bの撮像面に撮像視野S2の被写体画像を結像する。撮像素子15Bは、この撮像視野S2からの反射光を撮像面を介して受光し、この受光した光信号を光電変換処理して、この撮像視野S2の被写体画像、すなわち被検体体内画像を撮像する。
なお、カプセル型内視鏡10が図2に示すように長軸21a方向の前方および後方を撮像する2眼タイプのカプセル型医療装置である場合、かかる撮像部11A,11Bの各光軸は、カプセル型筐体12の長手方向の中心軸である長軸21aと略平行あるいは略一致する。また、かかる撮像部11A,11Bの撮像視野S1,S2の各方向、すなわち撮像部11A,11Bの各撮像方向は、互いに反対方向である。
無線通信部16は、アンテナ16aを備え、上述した撮像部11A,11Bによって撮像された各画像をアンテナ16aを介して外部に順次無線送信する。具体的には、無線通信部16は、撮像部11Aまたは撮像部11Bが撮像した被検体の体内画像の画像信号を制御部17から取得し、この取得した画像信号に対して変調処理等を行って、この画像信号を変調した無線信号を生成する。無線通信部16は、かかる無線信号をアンテナ16aを介して外部の送受信部3に送信する。
制御部17は、カプセル型内視鏡10の構成部である撮像部11A,11Bおよび無線通信部16の各動作を制御し、且つ、かかる各構成部間における信号の入出力を制御する。具体的には、制御部17は、照明部13Aが照明した撮像視野S1内の被写体の画像を撮像素子15Aに撮像させ、照明部13Bが照明した撮像視野S2内の被写体の画像を撮像素子15Bに撮像させる。また、制御部17は、画像信号を生成する信号処理機能を有する。制御部17は、撮像素子15Aから撮像視野S1の体内画像データを取得し、その都度、この体内画像データに対して所定の信号処理を行って、撮像視野S1の体内画像データを含む画像信号を生成する。これと同様に、制御部17は、撮像素子15Bから撮像視野S2の体内画像データを取得し、その都度、この体内画像データに対して所定の信号処理を行って、撮像視野S2の体内画像データを含む画像信号を生成する。制御部17は、かかる各画像信号を時系列に沿って外部に順次無線送信するように無線通信部16を制御する。
電源部18は、ボタン型電池等またはキャパシタ等の蓄電部であって、磁気スイッチ等のスイッチ部とを用いて実現される。電源部18は、外部から印加された磁界によって電源のオンオフ状態を切り替え、オン状態の場合に蓄電部の電力をカプセル型内視鏡10の各構成部(撮像部11A,11B、無線通信部16および制御部17)に適宜供給する。また、電源部18は、オフ状態の場合、かかるカプセル型内視鏡10の各構成部への電力供給を停止する。
永久磁石19は、上述した磁界発生部2によるカプセル型内視鏡10の磁気誘導を可能にするためのものである。永久磁石19は、上述した撮像部11A,11Bに対して相対的に固定された状態でカプセル型筐体12の内部に固定配置される。この場合、永久磁石19は、撮像素子15A,15Bの各撮像面の上下方向に対して相対的に固定された既知の方向に磁化する。
ここで、本実施の形態1では、カプセル型内視鏡10の誘導モードの一態様として、接触モードと離間モードとを対応づけて設定している。接触モードは、カプセル型内視鏡10を被検体内の液体の複数ある境界面のうち所望の境界面に押付けるように接触させるモードである。また、離間モードは、所望の境界面に接触していたカプセル型内視鏡10を所望の境界面から離すモードである。
たとえば、胃内部にカプセル型内視鏡10がある場合であって、胃内部の液体の上方向の境界面である液面を基準にカプセル型内視鏡10を磁気誘導する場合には、接触モードは、この液面にカプセル型内視鏡10を接触させた状態で保持する場合に対応し、離間モードは、液面からカプセル型内視鏡10を液面から離し下方の液中にカプセル型内視鏡10を誘導する場合に対応する。また、胃内部の液体の下方向の境界面である底部の胃壁を基準にカプセル型内視鏡10を磁気誘導する場合には、接触モードは、この胃壁にカプセル型内視鏡10を接触させた状態で保持する場合に対応し、離間モードは、カプセル型内視鏡10を胃壁から離し上方の液中にカプセル型内視鏡10を誘導する場合に対応する。これらの各モードに対応する磁気誘導は、磁気発生部2が均一勾配磁界を発生することによって実現される。そして、接触モードおよび離間モードにおいてそれぞれ発生する均一勾配磁界の勾配の方向は、カプセル型内視鏡10が胃内部の上方向あるいは下方向に位置するかによってそれぞれ切り替えられる。この接触モードまたは離間モードは、操作入力部60によって接触モードあるいは離間モードのいずれのモードを選択したかを示す選択情報が体外制御部4に入力されることによって実現する。
まず、操作入力部60の構成について説明する。図3は、図1に示す操作入力部60の構成を示すブロック図であり、図4は、図1に示す操作入力部60の一例を示すとともに操作入力部60によって操作可能なカプセル型医療装置の液面領域における磁気誘導を説明するための図である。図4(1)は、操作入力部60の正面図であり、図4(2)は、操作入力部60の左側面図であり、図4(3)は、操作入力部60の各構成部位の操作によって指示されるカプセル型内視鏡10の動作内容を示す図である。図3および図4(1)、(2)に示すように、操作入力部60は、離間モード選択部61、水平方向操作入力部62、磁界方向切替指示部63および勾配調整指示部64を有する。
離間モード選択部61は、接触モードあるいは離間モードのいずれかを選択する選択情報を体外制御部4に入力する。離間モード選択部61は、後述するジョイスティック62kの上部に設けられた離間モードボタン61sによって構成される。離間モードボタン61sは、図4(2)の矢印Y17のように押圧されることによって離間モードを選択する選択情報を体外制御部4に入力する。そして、離間モードボタン61sは、図4(2)の矢印Y18のように押圧を解除されることによって接触モードを選択する選択情報を体外制御部4に入力する。
水平方向操作入力部62は、磁界発生部2によるカプセル型内視鏡10の水平方向の磁気誘導に関する操作情報を体外制御部4に入力する。水平方向操作入力部62は、たとえば2つのジョイスティック62j,62kによって構成される。ジョイスティック62j,62kは、上下方向および左右方向に傾動操作可能であり、上下方向または左右方向に傾動操作されることによって、磁界発生部2によるカプセル型内視鏡10の磁気誘導を3次元的に操作するための操作情報を体外制御部4に入力する。
磁界方向切替指示部63は、胃内部の液体の上方向の境界面である液面を基準にカプセル型内視鏡10を磁気誘導するか、胃内部の液体の下方向の境界面である底部の胃壁を基準にカプセル型内視鏡10を磁気誘導するによって、接触モードおよび離間モードにおいてそれぞれ発生する均一勾配磁界の勾配方向の切り替えを指示する指示情報を体外制御部4に入力する。磁界方向切替部46は、磁界方向切替指示部63によって接触モードおよび離間モードにおいてそれぞれ発生する均一勾配磁界の勾配方向の切り替えを指示された場合、接触モードおよび離間モードにおいてそれぞれ発生させる均一勾配磁界の磁気勾配の方向をそれぞれ所定の方向に切り替える。
磁界方向切替指示部63は、上下モード切替スイッチ63sによって構成される。たとえば、胃内部の液体の上方向の境界面である液面あるいは上部の胃壁を基準にカプセル型内視鏡10を磁気誘導するモードが上モード、胃内部の液体の下方向の境界面である底部の胃壁を基準にカプセル型内視鏡10を磁気誘導する下モードが設定されている。上下モード切替スイッチ63sは、たとえば押圧されることによって上モードが選択された旨を示す表示を行なうとともに、接触モードおよび離間モードにおいてそれぞれ発生する均一勾配磁界の勾配方向を上モードに対応する方向にそれぞれ切り替えることを指示する指示情報を体外制御部4に入力する。また、上下モード切替スイッチ63sは、たとえば押圧を解除されることによって下モードが選択された旨を示す表示を行なうとともに、接触モードおよび離間モードにおいてそれぞれ発生する均一勾配磁界の勾配方向を下モードに対応する方向にそれぞれ切り替えることを指示する指示情報を体外制御部4に入力する。
勾配調整指示部64は、離間モードにおいて発生する均一勾配磁界の勾配の調整を指示する指示情報を体外制御部4に入力する。勾配調整指示部64は、勾配アップボタン64u、勾配ダウンボタン64dによって構成される。勾配アップボタン64uは、押圧されることによって離間モードの均一勾配磁界の勾配を1段階上げる旨の指示情報を体外制御部4に入力する。勾配ダウンボタン64dは、押圧されることによって離間モードの均一勾配磁界の勾配を1段階下げる旨の指示情報を体外制御部4に入力する。
なお、ジョイスティック62j,62kの傾動操作に対応するカプセル型内視鏡10の動作について説明する。図4(1)に示すように、ジョイスティック62jの矢印Y11jに示す上下方向の傾動方向は、図4(3)の矢印Y11のようにカプセル型内視鏡10の先端が鉛直軸20を通るように首を振るティルティング動作方向に対応する。操作入力部60から、ジョイスティック62jの矢印Y11jの傾動操作に対応する操作情報が体外制御部4に入力された場合、磁界制御指示部45は、この操作情報をもとに、ジョイスティック62jの傾動方向に対応させてカプセル型内視鏡10先端の絶対座標系上における誘導方向を演算し、ジョイスティック62jの傾動操作に対応させて誘導速度を演算する。そして、磁界制御指示部45は、磁界条件切替部46によって切り替えられたピーク磁界を印加磁界として選択し、演算した誘導方向に対応する向きと鉛直軸20との成す角を鉛直軸20とカプセル型内視鏡10の長軸21aとを含む鉛直面内で変化させている。
図4(1)に示すように、ジョイスティック62jの矢印Y12jに示す左右方向の傾動方向は、図4(3)の矢印Y12のようにカプセル型内視鏡10が鉛直軸20を中心として回転するローテーション動作方向に対応する。操作入力部60から、ジョイスティック62jの矢印Y12jの傾動操作に対応する操作情報が体外制御部4に入力された場合、磁界制御指示部45は、この操作情報をもとに、ジョイスティック62jの傾動方向に対応させてカプセル型内視鏡10先端の絶対座標系上における誘導方向を演算し、ジョイスティック62jの傾動操作に対応させて誘導速度を演算し、演算した誘導方向に対応する向きのピーク磁界を磁界発生部2に発生させるとともに、演算した誘導速度でこのピーク磁界の向きを鉛直軸20を中心に回転移動させている。
図4(1)に示すように、ジョイスティック62kの矢印Y13jに示す上下方向の傾動方向は、図4(3)の矢印Y13のようにカプセル型内視鏡10の長軸21aを水平面22に投影した方向に進むホリゾンタルバックワード動作方向あるいはホリゾンタルフォワード動作方向に対応する。操作入力部60から、ジョイスティック62kの矢印Y13jの傾動操作に対応する操作情報が体外制御部4に入力された場合、磁界制御指示部45は、この操作情報をもとに、ジョイスティック62kの傾動方向に対応させてカプセル型内視鏡10先端の絶対座標系上における誘導方向および誘導位置を演算し、ジョイスティック62kの傾動操作に対応させて誘導速度を演算し、演算した誘導方向に対応する向きのピーク磁界を磁界発生部2に発生させるとともに、演算した誘導速度でこのピーク磁界のピークを誘導位置に移動させている。
図4(1)に示すように、ジョイスティック62kの矢印Y14jに示す左右方向の傾動方向は、図4(3)の矢印Y14のようにカプセル型内視鏡10が水平面22を、長軸21aを水平面22に投影した方向と垂直に進むホリゾンタルライト動作方向あるいはホリゾンタルレフト動作方向に対応する。操作入力部60から、ジョイスティック62kの矢印Y14jの傾動操作に対応する操作情報が体外制御部4に入力された場合、磁界制御指示部45は、この操作情報をもとに、ジョイスティック62kの傾動方向に対応させてカプセル型内視鏡10先端の絶対座標系上における誘導方向および誘導位置を演算し、ジョイスティック62kの傾動操作に対応させて誘導速度を演算し、演算した誘導方向に対応する向きのピーク磁界を磁界発生部2に発生させるとともに、演算した誘導速度でこのピーク磁界のピークを誘導位置に移動させている。
また、ジョイスティック62kの背面には、アップボタン65Uおよびダウンボタン65Bが設けられている。図4(2)の矢印Y15jに示すようにアップボタン65Uが押圧された場合は、図4(3)に示す鉛直軸20に沿って矢印Y15のように上に進むアップ動作が指示される。また、図4(2)の矢印Y16jに示すように、ダウンボタン65Bが押圧された場合には、図4(3)に示す鉛直軸20に沿って矢印Y16のように下に進むダウン動作が指示される。操作入力部60から、アップボタン65Uまたはダウンボタン65Bの矢印Y15j,Y16jの押圧操作に対応する操作情報が体外制御部4に入力された場合、磁界制御指示部45は、この操作情報をもとに、いずれのボタンが押圧されたかに対応させて、カプセル型内視鏡10先端の絶対座標系上における動作方向を演算し、演算した動作方向に対応して鉛直軸20に沿って勾配を有する均一勾配磁界を磁界発生部2に発生させる。アップボタン65Uが押圧された場合、磁界発生部2は、鉛直軸20の上方向に向かって密となる勾配の均一勾配磁界を発生することによって、カプセル型内視鏡10の矢印Y15のように移動させる。ダウンボタン65Bが押圧された場合、磁界発生部2は、鉛直軸20の下方向に向かって密となる勾配の均一勾配磁界を発生することによって、カプセル型内視鏡10の矢印Y16のように移動させる。
次に、図5を参照して、操作入力部60の操作によってカプセル型内視鏡10がどのように移動するかを具体的に説明する。図5では、液体30が導入された胃の内部でカプセル型内視鏡10を誘導する場合を例に説明する。
まず、図5(1)を参照して、操作者の上下モード切替スイッチ63sの操作によって下モードが選択された場合について説明する。この場合は、操作入力部60から上モードの選択を指示する指示情報が入力された場合に対応する。下モードの場合は、液体30の境界面のうち底部分の胃壁31を基準にカプセル型内視鏡10を磁気誘導する。
したがって、下モードの場合には、接触モードは、底部分の胃壁31にカプセル型内視鏡10を押し付けて保持するモードに対応する。このため、磁界制御指示部45は、接触モードでは、磁界発生部2に、鉛直軸下方向の磁気引力を有する磁界を発生させる必要がある。このため、磁界方向切替部46は、接触モードにおける均一勾配磁界の勾配の方向を、鉛直軸下方向に切り替えるよう磁界制御指示部45に指示する。
また、下モードの場合には、離間モードは、底部分の胃壁31からカプセル型内視鏡10を上方向に離間させるモードに対応する。このため、磁界制御指示部45は、離間モードでは、磁界発生部2に、鉛直軸上方向の磁気引力を有する磁界を発生させる必要がある。このため、磁界方向切替部46は、離間モードにおける均一勾配磁界の勾配の方向を、鉛直軸上方向に切り替えるよう磁界制御指示部45に指示する。このように、下モードの場合、接触モードにおける均一勾配磁界の勾配の方向と、離間モードにおける均一勾配磁界の勾配の方向とは互いに逆方向となるように設定される。
したがって、下モードが選択された場合には、磁界制御指示部45は、底部分の位置Pu0にカプセル型内視鏡10を保持するために、まず、カプセル型内視鏡10を底部分の位置Pu0に押し付ける鉛直方向下向きの勾配を有する均一勾配磁界を磁界発生部2に発生させる。この結果、矢印Yu0に示すように、カプセル型内視鏡10は、基準となる底部分の胃壁31に位置Pu0において押し付けられるため、安定な静止状態を保持する。
そして、操作者によって離間モードボタン61sが押圧された場合には、磁界制御指示部45は、底部分の位置Pu0から上方にカプセル型内視鏡10を離すために、カプセル型内視鏡10を上方に移動させるための鉛直方向上向きの勾配を有する均一勾配磁界を磁界発生部2に発生させる。この結果、矢印Yu1に示すように、カプセル型内視鏡10は、胃壁31の位置Pu0から浮き上がり、たとえば位置Pu1まで離れる。この場合、磁界制御指示部45は、離間モード指示時に、離間モード切替前の接触モード時の磁界発生条件を記憶しておいてもよい。
次に、操作者によって離間モードボタン61sの押圧が解除された場合には、接触モードが選択された場合に対応するため、磁界制御指示部45は、離間モード選択前と同条件の鉛直方向下向きの勾配を有する均一勾配磁界を磁界発生部2に発生させて、矢印Yu2に示すように、カプセル型内視鏡10を、基準となる底部分の胃壁31の位置Pu0において押し付けて安定化させる。
また、操作者によって離間モードボタン61sが押圧されている場合に、ジョイスティック62kの傾動操作が行われ、水平方向の移動が指示された場合について説明する。この場合には、磁界制御指示部45は、磁界発生部2に、離間モードに対応する鉛直方向上向きの勾配を有する均一勾配磁界を発生させた状態で、水平方向の移動指示方向に対応する方向の磁気勾配を有する均一勾配磁界を発生させる。この結果、カプセル型内視鏡10は、矢印Yu3のように、位置Pu0から、位置Pu2を通って、位置Pu3のように上斜め方向にジャンプしながら液中を水平方向に移動する。
そして、図5(2)を参照して、操作者の上下モード切替スイッチ63sの操作によって下モードから上モードに切り替えられた場合について説明する。これは、操作入力部60から上モードの選択を指示する指示情報が入力された場合に対応する。この上モードの場合は、液体30の境界面のうち上方の胃壁31または液面を基準にカプセル型内視鏡10を磁気誘導する。
したがって、上モードの場合には、接触モードは、上方の胃壁31または液面にカプセル型内視鏡10を押し付けて保持するモードに対応する。このため、磁界制御指示部45は、接触モードでは、磁界発生部2に、鉛直軸上方向の磁気引力を有する磁界を発生させる必要がある。このため、磁界方向切替部46は、接触モードにおける均一勾配磁界の勾配の方向を、鉛直軸上方向に切り替えるよう磁界制御指示部45に指示する。
また、上モードの場合には、離間モードは、上方の胃壁31または液面からカプセル型内視鏡10を下方向に離間させるモードに対応する。このため、磁界制御指示部45は、離間モードでは、磁界発生部2に、鉛直軸下方向の磁気引力を有する磁界を発生させる必要がある。このため、磁界方向切替部46は、離間モードにおける均一勾配磁界の勾配の方向を、鉛直軸下方向に切り替えるよう磁界制御指示部45に指示する。
このように、上モードの場合も下モードと同様に、接触モードにおける均一勾配磁界の勾配の方向と、離間モードにおける均一勾配磁界の勾配の方向とは互いに逆方向である。そして、接触モードにおける均一勾配磁界の勾配の方向と、離間モードにおける均一勾配磁界の勾配の方向とは、上モードから下モードへの切り替えによってそれぞれ反転するように磁界方向切替部46によって切り替えられる。下モードから上モードへの切替は、カプセル型内視鏡10の磁気誘導の基準面を下側の胃壁31から上方の胃壁31または液面に切り替えることを意味している。すなわち、上下モード切替スイッチ63sは上モードから下モードへ切り替えられることによって、接触モードにおける均一勾配磁界の勾配の方向および離間モードにおける均一勾配磁界の勾配の方向の反転を指示しているといえる。
したがって、下モードから上モードにモードが選択された場合には、磁界制御指示部45は、胃壁31上部の位置Pt0にカプセル型内視鏡10を保持するために、まず、カプセル型内視鏡10を上部の位置Pt0に押し付ける鉛直方向上向きの勾配を有する均一勾配磁界を磁界発生部2に発生させる。この結果、矢印Yt0に示すように、カプセル型内視鏡10は、基準となる上方の胃壁31に位置Pt0において押し付けられるため、安定な静止状態を保持する。
そして、操作者によって離間モードボタン61sが押圧された場合には、磁界制御指示部45は、この上方の位置Pt0から下方にカプセル型内視鏡10を離すために、カプセル型内視鏡10を下方に移動させるための鉛直方向下向きの勾配を有する均一勾配磁界を磁界発生部2に発生させる。この結果、矢印Yt1に示すように、カプセル型内視鏡10は、胃壁31の位置Pt0から液体30内に沈みこみ、たとえば位置Pt1まで離れる。
次に、操作者によって離間モードボタン61sの押圧が解除された場合には、接触モードが選択された場合に対応するため、磁界制御指示部45は、鉛直方向上向きの勾配を有する均一勾配磁界を磁界発生部2に発生させて、矢印Yt2に示すように、カプセル型内視鏡10を、基準となる上方の胃壁31の位置Pt0において押し付けて安定化させる。
また、操作者によって離間モードボタン61sが押圧されている場合に、ジョイスティック62kの傾動操作が行われ、水平方向の移動が指示された場合について説明する。この場合には、磁界制御指示部45は、磁界発生部2に、離間モードに対応する鉛直方向下向きの勾配を有する均一勾配磁界を発生させた状態で、水平方向の移動指示方向に対応する方向の磁気勾配を有する均一勾配磁界を発生させる。この結果、カプセル型内視鏡10は、矢印Yt3のように、位置Pt0から、位置Pt2を通って、位置Pt3のように下斜め方向にジャンプしながら液中を水平方向に移動する。
さらに、操作者の上下モード切替スイッチ63sの操作によって上モードから下モードに切り替えられた場合には、すでに説明したように、液体の境界面のうち底部の胃壁31を基準にカプセル型内視鏡10を磁気誘導することとなる。このため、上モードにおける接触モードにおける均一勾配磁界の勾配の方向と、離間モードにおける均一勾配磁界の勾配の方向とそれぞれ反転するように磁界方向切替部46によって切り替えられて、各モードに対応させた方向の勾配で均一勾配磁界が磁界発生部2から発生される。
このように、操作者は、カプセル型内視鏡10を、液体の複数ある境界面のうちどの境界面を基準にカプセル型内視鏡10を磁気誘導させたいかで所望の境界面に対応するモードを上下モード切替スイッチ63sで切り替えるだけで、接触モードと離間モードとに対応する均一勾配磁界の勾配を自動的に所望の境界面に対応する方向に切り替えられるため、操作者自身が磁気勾配の切り替えを行なう必要はない。さらに、操作者は上下モード切替スイッチ63sで所望のモードに切り替えるだけで、自動的に所望の境界面にカプセル型内視鏡10を安定保持させることができるため、操作者自身がカプセル型内視鏡10の移動操作を行わずともよい。
また、操作者は、自身が選択した上モードまたは下モードにおいて、境界面にある撮像対象物をズームバックさせたい場合には、この離間モードボタン61sをズームバックさせたい時間だけただ押すだけでよい。さらに、離間モードボタン61sを押しながらジョイスティック62kを所望の方向に倒すだけで、ジャンプしながら液中を移動させることができる。このようなカプセル型内視鏡10の多様な動作を、操作者は、簡易な操作で指示することができる。
たとえば、図6に示すように、上方の胃内部を観察するために、直立姿勢で底部の胃壁31に沿ってカプセル型内視鏡10を誘導したい場合には、操作者は、下モードを選択した状態で離間モードボタン61sを押さずにジョイスティック62j,62kを操作すればよい。この結果、接触モードとなり、カプセル型内視鏡10は、底部の胃壁31に接触しながら指示された誘導方向に移動する。そして、位置Pu41において誘導方向にカプセル型内視鏡10の誘導の障害となる襞やポリープなどの突起物101を発見した場合には、観察を続けるためにカプセル型内視鏡10は突起物101を飛び越える必要がある。この場合、操作者は、離間モードボタン61sを押しながらジョイスティック62kを誘導方向側に倒す。この操作によって、カプセル型内視鏡10は、ジャンプしながら誘導方向に移動するため、矢印Yu43のように、突起物101を乗り越えた位置Pu42まで移動することができる。その後、操作者は、離間モードボタン61sから指を離す。この結果、接触モードとなり、離間モードボタン61sボタン押圧前と同条件の磁界が磁界発生部2から発生することから、離間モードボタン61s押圧前と同じ条件でカプセル型内視鏡10の誘導を継続することができる。
もちろん、下モードの場合に限らず、上モードを選択していた場合も同様である。たとえば、図6に示すように、操作者は、下方の胃内部を観察するために上方の胃壁31に沿ってカプセル型内視鏡10を誘導していた場合に、位置Pt41において突起物102を発見したときには、離間モードボタン61sを押しながらジョイスティック62kを誘導方向側に倒すだけでよい。この操作によって、カプセル型内視鏡10は、矢印Yt43のように、突起物102を飛び越えて位置Pt42まで移動する。その後、操作者は、離間モードボタン61sから指を離す。これにより、離間モードボタン61sボタン押圧前と同条件の磁界が発生することから、離間モードボタン61s押圧前と同じ条件でカプセル型内視鏡10の誘導を継続することができる。
したがって、本実施の形態1によれば、操作者自身が、被検体の体位を考慮にいれながらカプセル型内視鏡10が胃内部の上または下に位置するかを考えて、誘導方向に対応する方向の磁気引力が発生するように磁界発生条件を設定する必要はなく、上記した簡易な操作を行うだけでカプセル型内視鏡10の多様な動作を実現することができる。
また、操作者は、下モード選択時に突起物101を飛び越えた位置Pu42において、カプセル型内視鏡10をカプセル型内視鏡10の長軸21aを中心に旋回させたい場合には、離間モードボタン61sから指を離したまま、ジョイスティック62jを手前または奥側に倒してからジョイスティック62jを左右に傾動させる。この操作入力部60の動作によって、体外制御部4に、接触モードが指示された状態で、カプセル型内視鏡10の傾斜姿勢及び旋回動作が指示され、これらの各指示に対応する磁界が磁界発生部2から発生する。この結果、カプセル型内視鏡10は、図7に示すように、後端が底部の胃壁31に位置Pu42に押し付けられた状態を保持したまま、胃壁31から、角度θ(たとえばθ=45°)で傾斜した後に矢印Y51のように先端が360°旋回する。
この場合も、操作者は、簡易な操作を行うだけで、カプセル型内視鏡10を不安定化させずに、所望の胃壁31上の位置から最適なカメラアングルで胃内部の画像を取得することができる。もちろん、上モードの場合も同様であり、操作者は、上モード選択時に上部の位置Pt42において、カプセル型内視鏡10を長軸21a中心に旋回させたい場合には、離間モードボタン61sから指を離したまま、ジョイスティック62jを手前または奥側に倒してからジョイスティック62jを左右に傾動させる。この場合も、カプセル型内視鏡10は、後端が上部の胃壁31に位置Pt42に押し付けられた状態を保持したまま、胃壁31から、角度θ(たとえばθ=45°)で傾斜した後に矢印Y52のように先端が360°旋回する。
また、操作者は、離間モードにおいて、カプセル型内視鏡に対する力の変動によってカプセル型内視鏡の動きが不安定となってしまった場合には、この離間モードボタン61sから指を離してズームバックを解除すればよい。この結果、自動的にカプセル型内視鏡10境界面に戻り静止する。すなわち、操作者は、離間モードボタン61sから指を離すだけで、カプセル型内視鏡10をすぐに安定化させることができる。このため、カプセル型内視鏡10の動きが液中において不安定となった場合でもすぐに基準面に静止させて安定化させることができるため、操作者は、安定した体内観察を継続することができる。操作者は、多数ある複雑な磁界条件の中から所望の動作に対応する条件を設定することなく、安定状態と動作状態とを2値化的に切替えられるため、簡易な操作で液体内に存在するカプセル型内視鏡の安定した誘導を実現できる。
また、操作者は、離間モードボタン61sを押しながら、さらに勾配アップボタン64u、勾配ダウンボタン64dのいずれかを押圧することによって、離間モードにおいて印加される均一勾配磁界の勾配の大きさを調整することができる。すなわち、カプセル型内視鏡10を境界面から離すために印加される均一勾配磁界の勾配の大きさを、この均一勾配磁界を印加させながら調整することができる。磁気勾配の大きさは、磁気引力の大きさに比例する。このため、磁気勾配が大きさを調整することによって、離間モードにおいてカプセル型内視鏡10が境界面から離れる速度を調整することができる。
カプセル型内視鏡10を誘導する空間内に完全に均一な磁気勾配で勾配磁界を発生させることはできず、空間内の位置によって発生する磁界は異なってしまうため、カプセル型内視鏡10の位置によって鉛直方向の磁気勾配は変化してしまう。このような場合でも、操作者は、勾配アップボタン64u、勾配ダウンボタン64dを用いて最適な磁気勾配を指示することができる。したがって、操作者は、離間モードボタン61sを押した状態で、表示部5のカプセル型内視鏡10の体内画像を確認しながら勾配アップボタン64u、勾配ダウンボタン64dを押圧してカプセル型内視鏡10が境界面から離れる速度を調整することによって、最適の観察速度で体内画像を観察することができる。
たとえば、離間モードにおける印加される均一勾配磁界の勾配の初期条件は、比較的小さな勾配に設定されている。操作者は、表示部5のカプセル型内視鏡10の体内画像を確認しながら勾配アップボタン64uを押圧して、徐々にカプセル型内視鏡10の離間速度を調整することによって、低速でのカプセル型内視鏡10の誘導を実現できる。これによって、表示部5に表示される画像がゆっくり変化するため、操作者は、落ち着いて体内観察および誘導操作を行うことができ、観察性、操作性が向上する。
そして、磁界制御指示部45は、離間モードにおいて勾配調整指示部64から指示された離間モードにおける印加される均一勾配磁界の勾配の大きさを、磁界勾配記憶部47に記憶させる。そして、磁界制御指示部45は、勾配調整指示部64から指示があるたびに、勾配調整指示部64から指示された大きさの勾配となるように均一勾配磁界を磁界発生部2に発生させるとともに、磁界勾配記憶部47に記憶される離間モードの均一勾配磁界の勾配の大きさを新たに指示された勾配の大きさに更新する。そして、磁界制御指示部45は、離間モード選択部61の選択が離間モードから接触モードに変更され、再度離間モードとなった場合には磁界勾配記憶部47に記憶された大きさの磁気勾配となるように離間モードに対応する均一勾配磁界を磁界発生部2に発生させる。言い換えると、操作入力部60は、離間モードが選択された場合に、発生する磁界の磁気勾配の最適条件を指示する勾配指示部として、勾配アップボタン64uおよび勾配ダウンボタン64dを備える。磁界勾配記憶部47は、勾配指示部によって指示されたときに、離間モードが選択された場合に発生する磁界の磁気勾配を前記最適条件として記憶する。そして、磁界制御指示部45は、離間モードが選択された場合に、磁界勾配記憶部47に記憶された最適条件の磁気勾配を磁界発生部2に発生させる。
すなわち、操作者は、離間モードボタン61sを押した状態で勾配アップボタン64u、勾配ダウンボタン64dを押圧してカプセル型内視鏡10が境界面から離れる速度を一度調整した場合、一度離間モードボタン61sから指を離して境界面にカプセル型内視鏡10を戻し、さらに体内観察のために離間モードボタン61sを押した場合には、すでに調整した最適な離間速度でカプセル型内視鏡10を境界面から離しながら体内観察を行うことができる。すなわち、操作者は、カプセル型内視鏡10が境界面から離れる速度を一度調整すれば、離間モードボタン61sを押しただけで、最適な離間速度で体内観察を行うことができるため、離間モードボタン61sを押すたびにジョイスティックなどで鉛直方向の磁気勾配を微調整する必要がなく、操作性が向上する。
また、体外制御部4は、上モードの場合と下モードの場合で別々に離間モードにおける均一勾配磁界の勾配の大きさを記憶して、上モードまたは下モードが一度別のモードに切り替えられてから、再度元に戻された場合には、元の上モードまたは下モード時において記憶された勾配の大きさで離間モードの均一勾配磁界を磁気発生部2に発生させてもよい。この場合も、磁気勾配の調整処理を簡易化することができる。
なお、本実施の形態1においては、胃内部の液体の上方向の境界面である液面あるいは上部の胃壁を基準にカプセル型内視鏡10を磁気誘導する上モード、胃内部の液体の下方向の境界面である底部の胃壁を基準にカプセル型内視鏡10を磁気誘導する下モードを設定した場合を例に説明したが、もちろんこれに限らない。たとえば、胃内部の左右いずれかの胃壁を基準にカプセル型内視鏡10を磁気誘導するモードをさらに設定してもよい。このモードの場合も、たとえば図6に示すように、操作者は、左側の胃内部を観察するために右側の胃壁31に沿ってカプセル型内視鏡10を誘導していた場合に、位置Ps41において誘導方向に突起物103を発見したときには、離間モードボタン61sを押しながらジョイスティック62kを誘導方向側に倒すだけでよい。この操作によって、カプセル型内視鏡10は、矢印Ys43のように、突起物103を飛び越えて位置Ps42まで移動する。さらに、操作者は、突起物103を飛び越えた位置Ps42において、カプセル型内視鏡10を長軸21a中心に旋回させたい場合には、離間モードボタン61sから指を離したまま、ジョイスティック62jを手前または奥側に倒してからジョイスティック62jを左右に傾動させる。この結果、図7に示すように、カプセル型内視鏡10は、後端が右側の胃壁31の位置Ps42に押し付けられた状態を保持したまま、この胃壁31から、角度θ(たとえばθ=45°)で傾斜した後に矢印Y53のように先端が360°旋回する。
次に、カプセル型医療装置用誘導システム1のカプセル型内視鏡10の誘導処理について説明する。図8は、図1に示すカプセル型医療装置用誘導システム1のカプセル型内視鏡10の誘導処理の処理手順を示すフローチャートである。
図8に示すように、体外制御部4に、体内観察の開始を指示する指示情報が入力部6から入力された後(ステップS2)、磁界制御指示部45は、初期条件での磁界発生を設定し(ステップS4)、この初期条件で磁界制御部8に磁界を発生させる。たとえば、磁界制御指示部45は、磁界発生部2に、初期条件として、上モードの接触モードに対応する均一勾配磁界を発生させる。そして、画像受信部41は、送受信部3が順次受信した体内画像を順次取得する画像受信処理を開始し(ステップS6)、次いで、画像表示制御部42は、送受信部3が順次受信した体内画像を表示部5に表示させる画像表示処理を開始する(ステップS8)。
次に、磁界方向切替部46は、操作入力部60の磁界方向切替指示部63から上下モードの切替指示があるか否かを判断する(ステップS10)。磁界方向切替部46は、上下モードの切替指示があると判断した場合(ステップS10:Yes)、基準面となる境界面が上下に反転するため、接触モードにおける均一勾配磁界の勾配の方向と離間モードにおける均一勾配磁界の勾配の方向とのいずれの方向もそれぞれ反転するように磁界制御指示部45に指示する磁界方向反転処理を行う(ステップS12)。そして、磁界制御指示部45は、磁界方向切替部46の指示にしたがい、接触モードおよび離間モードの均一勾配磁界の勾配の各方向を反転させてから、接触モードにおける均一勾配磁界をカプセル型内視鏡10に印加する接触磁界印加処理を行う(ステップS14)。この結果、カプセル型内視鏡10は、新たに切り替えられた上モードまたは下モードに対応する基準面に押し付けられるように保持される。
これに対し、磁界方向切替部46が上下モードの切替指示がないと判断した場合(ステップS10:No)、基準面となる境界面はそのままであるため、磁界制御指示部45は、接触モードおよび離間モードの均一勾配磁界の勾配の各方向はそのままの状態で、接触モードにおける均一勾配磁界をカプセル型内視鏡10に印加する接触磁界印加処理を行う(ステップS14)。
そして、磁界制御指示部45は、離間モード選択部61による選択情報をもとに離間モードの開始指示があるか否かを判断する(ステップS16)。磁界制御指示部45は、離間モードの開始指示がないと判断した場合には(ステップS16:No)、ステップS14の接触磁界印加処理を継続し(ステップS14)、接触モードを維持する。これに対し、磁界制御指示部45は、離間モードの開始指示があると判断した場合には(ステップS16:Yes)、離間モードにおける均一勾配磁界をカプセル型内視鏡10に印加する離間磁界印加処理を行う(ステップS18)。これによって、カプセル型内視鏡10は基準面から離れて液中に移動する。
さらに、磁界制御指示部45は、勾配調整指示部64からの勾配調整指示情報をもとに勾配変更指示があるか否かを判断する(ステップS20)。磁界制御指示部45は、勾配変更指示があると判断した場合には(ステップS20:Yes)、離間モードにおける均一勾配磁界の勾配の大きさを勾配調整指示情報にしたがって変更し(ステップS22)、変更した大きさの勾配で離間モードの均一勾配磁界を印加する(ステップS24)。これによって、カプセル型内視鏡10が境界面から離れる速度が調整される。続いて、磁界制御指示部45は、磁界勾配記憶部47に記憶される離間モードの勾配の大きさを新たに変更を指示された大きさに更新する勾配更新処理を行う(ステップS26)。
そして、磁界制御指示部45は、勾配更新処理(ステップS26)後、または、勾配変更指示がないと判断した場合には(ステップS20:No)、水平方向操作入力部62の水平方向に関する操作情報をもとに、水平方向への移動指示があるか否かを判断する(ステップS28)。磁気制御指示部45は、水平方向への移動指示があると判断した場合(ステップS28:Yes)、水平方向操作入力部62からの操作情報で指示された水平方向の移動位置を演算し(ステップS30)、磁界発生部2に、この移動位置にカプセル型内視鏡10が移動するようにカプセル型内視鏡10に印加させる水平移動磁界印加処理を行う(ステップS32)。この結果、カプセル型内視鏡10は、操作入力部60による操作処理にしたがってジャンプしながら液中を水平方向に移動する。
次に、磁界制御指示部45は、離間モード選択部61による選択情報をもとに離間モードの停止指示があるか否かを判断する(ステップS34)。すなわち、磁界制御指示部45は、接触モードの開始指示があるか否かを判断する。磁界制御指示部45は、離間モードの停止指示があると判断した場合(ステップS34:Yes)、接触モードにおける均一勾配磁界をカプセル型内視鏡10に印加する接触磁界印加処理を行って(ステップS36)、カプセル型内視鏡10を基準面に戻す。一方、磁界制御指示部45は、離間モードの停止指示がないと判断した場合(ステップS34:No)、ステップS18に戻り、離間モードを継続する。
そして、磁界制御指示部45が離間モードの停止指示にしたがい接触磁界印加処理を(ステップS36)を行った後、体外制御部4は、入力部6から入力された指示情報をもとに、体内観察が終了したか否かを判断する(ステップS38)。体外制御部4は、体内観察が終了していないと判断した場合には(ステップS38:No)、体内観察を継続するため、ステップS10に戻り、上下モードの切替指示があるか否かを判断する。また、体外制御部4は、体内観察が終了したと判断した場合には(ステップS38:Yes)、画像受信部41による画像受信処理を終了し(ステップS40)、画像表示制御部42による画像表示処理を終了した後(ステップS42)、カプセル型内視鏡10が撮像した体内画像群を一つのフォルダにまとめて記憶部7内に保存する画像データ保存処理を行って(ステップS44)、体内観察を終了する。
次に、図8に示す離間磁界印加処理について説明する。図9は、図8に示す離間磁界印加処理の処理手順を示すフローチャートである。図9に示すように、離間磁界印加処理においては、磁界制御指示部45は、カプセル型内視鏡10が液面に位置するか否かを判断する(ステップS50)。操作者は、表示部5に表示されるカプセル型内視鏡10の撮像画面を確認しカプセル型内視鏡10が液面にあると判断した場合には、液面にあることを示す情報を入力する。磁界制御指示部45は、入力部6から液面にあることを示す情報が入力されることによって、カプセル型内視鏡10が液面に位置することを判断する。
そして、磁界制御指示部45は、カプセル型内視鏡10が液面に位置すると判断した場合(ステップS50:Yes)、磁界発生部2に、液面の表面張力に対抗可能である強度の高い磁界を一時的に発生させる表面張力対抗磁界発生処理を行なう(ステップS52)。液面にカプセル型内視鏡10が位置する場合には、表面張力のためカプセル型内視鏡10を液体内に沈めるには大きな磁力を必要としていた。この場合、操作者の手動で離間モードの均一勾配磁界の勾配を調整した場合、表面張力を排除できるまで勾配を大きくしなければならず、この結果、カプセル型内視鏡10は液面下に沈んだとたん、高速で落ちていってしまうため、表示部5の画像も高速で変化してしまい、操作者は体内観察を円滑に行なうことができない。そこで、離間磁界印加処理においては、液面にカプセル型内視鏡10が位置する場合に表面張力対抗磁界発生処理を行なって、カプセル型内視鏡10を表面張力に疎外されることなく円滑に液体内に移動させながら、操作者の所望の速度でのカプセル型内視鏡10の誘導を可能とする。
この表面対抗磁界発生処理では、磁界発生部2に、鉛直方向のうち下向きに一時的に強い磁界を発生させて図10の矢印M1のようにカプセル型内視鏡10を液面30sから液体30内にカプセル型内視鏡10を移動させる。また、磁界発生部2に、図11に示すようにカプセル型内視鏡10を高速でティルティング動作させる磁界M2を発生させて、カプセル型内視鏡10の姿勢を高速で変化させてもよい。この場合、このティルティング動作によって、液面30sから露出するカプセル型内視鏡10の側壁に液体がかけられ、表面張力の影響がなくなる。その後、磁界発生部2に、矢印Y41のように下方向にカプセル型内視鏡10を移動させる磁界を発生させることによって、カプセル型内視鏡10を液面30sから液中あるいは液底にカプセル型内視鏡10を移動させる。この方法の場合には、強度の低い磁界でも液面39sから液中あるいは液底へのカプセル型内視鏡10の誘導が可能になる。
また、磁界制御指示部45は、カプセル型内視鏡10が液面に位置しないと判断した場合(ステップS50:No)、表面張力対抗磁界発生処理(ステップS52)後、磁界発生部2に、離間モードにおける均一勾配磁界をカプセル型内視鏡10に印加させて(ステップS54)、離間磁界印加処理を終了する。なお、表面張力対抗磁界発生処理は、常に行う必要はなく、予め表面張力対抗磁界発生処理の実施が設定されている場合のみ行なってもよい。
このように、実施の形態1にかかるカプセル型医療装置用誘導システム1においては、図8および図9に示す各処理を行うことによって、液体内に存在するカプセル型内視鏡の安定した誘導を実現する。
なお、カプセル型内視鏡10として、カプセル型内視鏡10の浮力とカプセル型内視鏡10の重力とはほぼ釣り合った液内内を漂うものを例として説明したが、もちろんこれに限らない。
たとえば、図12に示すように、矢印Y2のように液体30を浮揚するカプセル型内視鏡210を用いることも可能である。このカプセル型内視鏡210は、カプセル型内視鏡210の浮力がカプセル型内視鏡210の重力よりも大きくなるようにカプセル型内視鏡210の各構成部の配置を調整することによって、液体30に対する比重を1よりも小さくしている。なお、40は、カプセル型内視鏡210の幾何学的中心を示し、50は、カプセル型内視鏡210の重心を示す。
次に、図13を参照して、このカプセル型内視鏡210がどのように移動するかを説明する。まず、図13(1)を参照して、下モードが選択された場合について説明する。前述したように、下モードの場合は、液体の境界面のうち底部分の胃壁31を基準にカプセル型内視鏡210を磁気誘導する。下モードの場合には、接触モードは、底部分の胃壁31にカプセル型内視鏡210を接触させるモードに対応する。このため、磁界方向切替部46は、下モードにおいては、接触モードにおける均一勾配磁界の勾配の方向を、鉛直軸下方向に切り替えるよう磁界制御指示部45に指示する。また、下モードの場合には、離間モードは、底部分の胃壁31からカプセル型内視鏡210を上方向に離間させるモードに対応する。カプセル型内視鏡210は、鉛直方向の勾配磁界が作用していない場合には、カプセル型内視鏡210の浮力によって上部の胃壁31または液面まで自然に浮上する。このため、離間モードでは、このカプセル型内視鏡210の浮上を利用して底部分の胃壁31からカプセル型内視鏡210を上方向に離間させればよいため、磁界制御指示部45は、磁界発生部2に接触モードで発生させた鉛直下方向の勾配磁界の発生を停止させればよい。また、カプセル型内視鏡210が浮上する速度を遅くするために、磁界制御指示部45は、磁界発生部2にカプセル型内視鏡210の浮力と重力と鉛直下方向の磁気引力との合力が上方向になる範囲で、鉛直上方向の磁気勾配を発生させるように制御してもよい。
したがって、下モードが選択された場合には、磁界制御指示部45は、底部分の位置Pu0にカプセル型内視鏡210を保持するために、まず、カプセル型内視鏡210を底部分の位置Pu0に押し付ける鉛直方向下向きの勾配を有する均一勾配磁界を磁界発生部2に発生させる。この結果、矢印Yu10に示すように、カプセル型内視鏡210は、基準となる底部分の胃壁31に位置Pu0において押し付けられるため、安定な静止状態を保持する。
そして、操作者によって離間モードボタン61sが押圧された場合には、磁界制御指示部45は、底部分の位置Pu0から上方にカプセル型内視鏡210を離すために、磁界発生部2に発生させていた鉛直方向下向きの勾配を有する均一勾配磁界を停止させる。この結果、矢印Yu11に示すように、カプセル型内視鏡210は、カプセル型内視鏡210の浮力によって、胃壁31の位置Pu0から浮き上がり、たとえば位置Pu1まで離れる。
次に、操作者によって離間モードボタン61sの押圧が解除され接触モードが選択された場合は、磁界制御指示部45は、鉛直方向下向きの勾配を有する均一勾配磁界を磁界発生部2に発生させて、矢印Yu12に示すように、カプセル型内視鏡210を、基準となる底部分の胃壁31の位置Pu0において押し付けて安定化させる。
また、操作者によって離間モードボタン61sが押圧されている場合に、ジョイスティック62kの傾動操作が行われ、水平方向の移動が指示された場合について説明する。この場合には、磁界制御指示部45は、磁界発生部2に、鉛直方向下向きの勾配を有する均一勾配磁界を停止させた状態で、水平方向の移動指示方向に対応する方向の磁気勾配を有する均一勾配磁界を発生させる。この結果、カプセル型内視鏡210は、矢印Yu13のように、位置Pu0から、位置Pu2を通って、位置Pu3のように上斜め方向にジャンプしながら液中を水平方向に移動する。
そして、図13(2)を参照して、操作者の上下モード切替スイッチ63sの操作によって下モードから上モードに切り替えられた場合について説明する。この上モードの場合は、液体30の境界面のうち上方の胃壁31または液面を基準にカプセル型内視鏡210を磁気誘導する。上モードの場合には、接触モードは、上方の胃壁31または液面にカプセル型内視鏡210を接触させて保持するモードに対応する。そこで、上モードの接触モードでは、このカプセル型内視鏡210の浮上を利用して上部の胃壁31または液面にカプセル型内視鏡210を接触させればよいため、磁界制御指示部45は、磁界発生部2に少なくとも鉛直下方向の勾配を有する均一勾配磁界を発生させないように制御すればよい。また、上モードの場合には、離間モードは、上方の胃壁31または液面からカプセル型内視鏡210を下方向に離間させるモードに対応するため、磁界制御指示部45は、カプセル型内視鏡10に対する場合と同様に、上モードの離間モードでは、磁界発生部2に、鉛直軸下方向の磁気引力を有する磁界を発生させる。このため、磁界方向切替部46は、上モードの離間モードにおける均一勾配磁界の勾配の方向を、鉛直軸下方向に切り替えるよう磁界制御指示部45に指示する。
したがって、下モードから上モードにモードが選択された場合には、磁界制御指示部45は、胃壁31上部の位置Pt0にカプセル型内視鏡210を保持するために、まず、磁界発生部2に、少なくとも鉛直方向下向きの勾配を有する均一勾配磁界を発生させないように制御する。この結果、矢印Yt10に示すように、カプセル型内視鏡210は、カプセル型内視鏡210の浮力によって、基準となる上方の胃壁31に位置Pt0まで浮上し接触するため、安定な静止状態を保持する。
そして、操作者によって離間モードボタン61sが押圧された場合には、磁界制御指示部45は、この上方の位置Pt0から下方にカプセル型内視鏡210を離すために、カプセル型内視鏡210を下方に移動させるための鉛直方向下向きの勾配を有する均一勾配磁界を磁界発生部2に発生させる。この結果、矢印Yt11に示すように、カプセル型内視鏡210は、胃壁31の位置Pt0から液体30内に沈み、たとえば位置Pt1まで離れる。
次に、操作者によって離間モードボタン61sの押圧が解除された場合には、接触モードが選択された場合に対応するため、磁界制御指示部45は、磁界発生部2に、鉛直方向下向きの勾配を有する均一勾配磁界の発生を停止させる。この結果、矢印Yt12に示すように、カプセル型内視鏡210は、カプセル型内視鏡210の浮力によって浮上し、基準となる上方の胃壁31の位置Pt0において接触して安定化する。
また、操作者によって離間モードボタン61sが押圧されている場合に、ジョイスティック62kの傾動操作が行われ、水平方向の移動が指示された場合について説明する。この場合には、磁界制御指示部45は、磁界発生部2に、離間モードに対応する鉛直方向下向きの勾配を有する均一勾配磁界を発生させた状態で、水平方向の移動指示方向に対応する方向の磁気勾配を有する均一勾配磁界を発生させる。この結果、カプセル型内視鏡210は、矢印Yt13のように、位置Pt0から、位置Pt2を通って、位置Pt3のように下斜め方向にジャンプしながら液中を水平方向に移動する。なお、磁界制御指示部45は、上モードにおける接触モードでは、磁界発生部2に、鉛直軸上方向の勾配を有する均一勾配磁界を発生させることによって、上部の胃壁31または液面にカプセル型内視鏡210を押し付けて、確実に胃壁31にカプセル型内視鏡210を接触させるようにしてもよい。
このように、カプセル型医療装置用誘導システム1は、液体を浮揚するカプセル型内視鏡210に対しても、上モードおよび下モードにおいても、接触モードおよび離間モードにおいて、鉛直軸方向の勾配を有する均一勾配磁界の発生を制御することによって、液体内に存在するカプセル型内視鏡の安定した誘導を実現することが可能である。
また、図14に示すように、矢印Y3のように液体30を沈下するカプセル型内視鏡310を用いることも可能である。このカプセル型内視鏡310は、カプセル型内視鏡310の重力がカプセル型内視鏡310の浮力よりも大きくなるようにカプセル型内視鏡310の各構成部の配置を調整することによって、液体30に対する比重を1よりも大きくしている。
次に、図15を参照して、このカプセル型内視鏡310がどのように移動するかを説明する。まず、図15(1)を参照して、下モードが選択された場合について説明する。下モードの場合は、液体の境界面のうち底部分の胃壁31を基準にカプセル型内視鏡310を磁気誘導する。下モードの場合には、接触モードは、底部分の胃壁31にカプセル型内視鏡310を接触させるモードに対応する。カプセル型内視鏡310は、鉛直方向の勾配磁界が作用していない場合には、カプセル型内視鏡310の重力によって底部の胃壁31まで自然に沈下する。そこで、下モードの接触モードでは、このカプセル型内視鏡310の沈下を利用して底部の胃壁31にカプセル型内視鏡310を接触させればよいため、磁界制御指示部45は、磁界発生部2に少なくとも鉛直上方向の勾配磁界を発生させないように制御すればよい。また、下モードの場合には、離間モードは、底部分の胃壁31からカプセル型内視鏡310を上方向に離間させるモードに対応するため、磁界制御指示部45は、カプセル型内視鏡310に対する場合と同様に、下モードの離間モードでは、磁界発生部2に、鉛直軸上方向の磁気引力を有する磁界を発生させる。このため、磁界方向切替部46は、下モードの離間モードにおける均一勾配磁界の勾配の方向を、鉛直軸上方向に切り替えるよう磁界制御指示部45に指示する。
したがって、下モードが選択された場合には、磁界制御指示部45は、底部分の位置Pu0にカプセル型内視鏡310を保持するために、まず、磁界発生部2に、少なくとも鉛直方向上向きの勾配を有する均一勾配磁界を発生させないように制御する。この結果、矢印Yu20に示すように、カプセル型内視鏡310は、カプセル型内視鏡310の重力によって、基準となる底部分の胃壁31に位置Pu0まで沈下し接触するため、安定な静止状態を保持する。
そして、操作者によって離間モードボタン61sが押圧された場合には、磁界制御指示部45は、底部分の位置Pu0から上方にカプセル型内視鏡310を離すために、カプセル型内視鏡310を上方に移動させるための鉛直方向上向きの勾配を有する均一勾配磁界を磁界発生部2に発生させる。この結果、矢印Yu21に示すように、カプセル型内視鏡310は、胃壁31の位置Pu0から浮き上がり、たとえば位置Pu1まで離れる。
次に、操作者によって離間モードボタン61sの押圧が解除され接触モードが選択された場合は、磁界制御指示部45は、磁界発生部2に、鉛直方向上向きの勾配を有する磁気勾配の発生を停止させる。この結果、矢印Yu22に示すように、カプセル型内視鏡310はカプセル型内視鏡310の重力によって沈下し、基準となる底部分の胃壁31の位置Pu0にて接触して安定化する。
また、操作者によって離間モードボタン61sが押圧されている場合に、ジョイスティック62kの傾動操作が行われ、水平方向の移動が指示された場合について説明する。この場合には、磁界制御指示部45は、磁界発生部2に、離間モードに対応する鉛直方向上向きの勾配を有する均一勾配磁界を発生させた状態で、水平方向の移動指示方向に対応する方向の磁気勾配を有する均一勾配磁界を発生させる。この結果、カプセル型内視鏡310は、矢印Yu23のように、位置Pu0から、位置Pu2を通って、位置Pu3のように上斜め方向にジャンプしながら液中を水平方向に移動する。なお、磁界制御指示部45は、下モードにおける接触モードでは、磁界発生部2に、鉛直軸下方向の勾配を有する均一勾配磁界を発生させることによって、底部の胃壁31にカプセル型内視鏡310を押し付けて、確実に胃壁31にカプセル型内視鏡310を接触させるようにしてもよい。
そして、図15(2)を参照して、操作者の上下モード切替スイッチ63sの操作によって下モードから上モードに切り替えられた場合について説明する。この上モードの場合は、液体30の境界面のうち上方の胃壁31または液面を基準にカプセル型内視鏡310を磁気誘導する。上モードの場合には、接触モードは、上方の胃壁31または液面にカプセル型内視鏡310を接触させて保持するモードに対応するため、磁界方向切替部46は、カプセル型内視鏡10に対する場合と同様に、上モードの接触モードにおいては、均一勾配磁界の勾配を鉛直軸上方向に切り替えるよう磁界制御指示部45に指示する。また、上モードの場合には、離間モードは、上方の胃壁31または液面からカプセル型内視鏡310を下方向に離間させるモードに対応する。上モードの離間モードでは、このカプセル型内視鏡310の沈下を利用して液体内にカプセル型内視鏡310を沈み込ませればよいため、磁界制御指示部45は、磁界発生部2に少なくとも鉛直上方向の勾配磁界を発生させないように制御すればよい。また、カプセル型内視鏡310が沈む速度を遅くするために、磁界制御指示部45は、磁界発生部2にカプセル型内視鏡310の浮力と重力と鉛直上方向の磁気引力との合力が下方向になる範囲で、鉛直上方向の磁気勾配を発生させるように制御してもよい。
したがって、下モードから上モードにモードが選択された場合には、磁界制御指示部45は、胃壁31上部の位置Pt0にカプセル型内視鏡310を保持するために、鉛直方向上向きの勾配を有する均一勾配磁界を磁界発生部2に発生させる。この結果、矢印Yt20に示すように、カプセル型内視鏡310は、基準となる上方の胃壁31に位置Pt0において押し付けられるため、安定な静止状態を保持する。
そして、操作者によって離間モードボタン61sが押圧された場合には、磁界制御指示部45は、磁界発生部2は、この上方の位置Pt0から下方にカプセル型内視鏡310を離すために少なくとも鉛直方向上向きの勾配を有する均一勾配磁界を発生させないように制御する。この結果、矢印Yt21に示すように、カプセル型内視鏡310は、カプセル型内視鏡310の重力によって、胃壁31の位置Pt0から液体30内に沈みこみ、たとえば位置Pt1まで離れる。
次に、操作者によって離間モードボタン61sの押圧が解除された場合には、接触モードが選択された場合に対応するため、磁界制御指示部45は、磁界発生部2に、鉛直方向上向きの勾配を有する均一勾配磁界を発生させて、矢印Yt22に示すように、カプセル型内視鏡310を、基準となる上方の胃壁31の位置Pt0に押し付けて安定化させる。
また、操作者によって離間モードボタン61sが押圧されている場合に、ジョイスティック62kの傾動操作が行われ、水平方向の移動が指示された場合について説明する。この場合には、磁界制御指示部45は、磁界発生部2に、鉛直方向上向きの勾配を有する均一勾配磁界を停止させた状態で、水平方向の移動指示方向に対応する方向の磁気勾配を有する均一勾配磁界を発生させる。この結果、カプセル型内視鏡310は、矢印Yt23のように、位置Pt0から、位置Pt2を通って、位置Pt3のように下斜め方向にジャンプしながら液中を水平方向に移動する。
このように、カプセル型医療装置用誘導システム1は、液体を浮揚するカプセル型内視鏡310に対しても、上モードおよび下モードにおいても、接触モードおよび離間モードにおいて、鉛直軸方向の勾配を有する均一勾配磁界の発生を制御することによって、液体30内に存在するカプセル型内視鏡の安定した誘導を実現することが可能である。
以上記載したように、カプセル型医療装置用誘導システム1は、カプセル型内視鏡10を被検体内の液体30の複数ある境界面のうち所望の境界面に接触させる接触モードと、カプセル型内視鏡10を所望の境界面から離す離間モードとを設定し、体外制御部4は、接触モードが選択された場合には、カプセル型内視鏡10,210,310の浮力、カプセル型内視鏡10,210,310の重力または磁気引力の液中における合力が所望の境界面側を向くように磁界発生部を制御し、離間モードが選択された場合にはカプセル型内視鏡10,210,310の浮力、カプセル型内視鏡10,210,310の重力または磁気引力の液中における合力が所望の境界面側に向かう方向以外の方向を向くように磁界発生部2を制御することによって、液体内に存在するカプセル型内視鏡10,210,310の安定した誘導を実現する。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2では、カプセル型内視鏡10の動作を検出する機能を加え、カプセル型内視鏡10の境界面からの離間動作をもとに、カプセル型内視鏡10の離間速度を所望の速度に自動的に設定する場合について説明する。
図16は、実施の形態2にかかるカプセル型医療装置用誘導システムの全体構成を示す模式図である。図16に示すように、実施の形態2にかかるカプセル型医療装置用誘導システム201は、図1に示す体外制御部4に代えて、体外制御部204を備え、図1に示す入力部6に代えて、入力部206を備える構成を有する。体外制御部204は、図1に示す体外制御部4と比較し、動作検出部243および勾配変更指示部248をさらに備える。
動作検出部243は、カプセル型内視鏡10の動作を検出する。動作検出部243は、カプセル型内視鏡10の体内での動作速度を検出する。動作検出部243は、カプセル型内視鏡10から送受信部3に送られるデータをもとにカプセル型内視鏡10の体内での動作速度を検出する。たとえば、動作検出部243は、カプセル型内視鏡10から送信された信号の受信電界強度を連続的に検出し、信号の受信電界強度の変化からカプセル型内視鏡10の動作速度を検出する。また、動作検出部243は、カプセル型内視鏡10が撮像した画像を解析し、カプセル型内視鏡10の動作速度を検出する。
勾配変更指示部248は、磁界制御指示部45に、離間モードにおいて磁界発生部2に発生させる鉛直方向の均一勾配磁界の勾配の大きさを段階的に変えるように指示する。そして、勾配変更指示部248は、動作検出部243によるカプセル型内視鏡10の動作検出結果をもとに均一勾配磁界のどの大きさの勾配で、離間モードにおいて基準となる境界面から離れる動作を始めたか否かを検出する。そして、勾配変更指示部248は、離間モードにおいて基準となる境界面から離れる動作を始めた勾配を離間モードにおける均一勾配磁界の最適勾配として磁界制御指示部45に指示する。磁界制御指示部45は、最適勾配として指示された勾配を離間モードの均一勾配磁界における磁気勾配の最適条件として設定し、該設定した最適条件の勾配で均一勾配磁界を磁界発生部2に発生させる。
すなわち、操作入力部260から離間モード開始を指示された場合、体外制御部204は、離間モードにおける均一勾配磁界の勾配を初期条件から段階的に上げながら、いずれの大きさの勾配でカプセル型内視鏡10が境界面から離れ始めるかを判断し、カプセル型内視鏡10が境界面から離れ始めた勾配を離間モードの均一勾配磁界の最適勾配として設定する。したがって、体外制御部204は、離間モードが設定された場合、カプセル型内視鏡10が境界面から離れ始める均一勾配磁界の勾配を自動的に設定する。この結果、操作者自身が画像を観察しながら勾配アップボタン64u、勾配ダウンボタン64dを操作して均一勾配磁界の勾配を調整する必要がない上に、常に最適な誘導速度でカプセル型内視鏡10を誘導できる。
そして、体外制御部204は、離間モードが設定された場合、カプセル型内視鏡10が境界面から離れ始める均一勾配磁界の勾配を自動的に設定することから、操作入力部260は、図17に示すように、図3に示す操作入力部60と比較し、勾配調整指示部64を省略した構成となる。
次に、図18を参照して、図16に示すカプセル型医療装置用誘導システム201のカプセル型内視鏡10の誘導処理について説明する。図18は、図16に示すカプセル型医療装置用誘導システム201のカプセル型内視鏡10の誘導処理の処理手順を示すフローチャートである。
図18に示すように、図8のステップS2〜ステップS8と同様に、体外制御部204に、体内観察の開始が指示された後(ステップS202)、磁界制御指示部45は、初期条件での磁界発生を設定し(ステップS204)、この初期条件で磁界制御部8に磁界を発生させ、画像受信部41は画像受信処理を開始し(ステップS206)、画像表示制御部42は、画像表示処理を開始する(ステップS208)。
そして、図8のステップS10と同様に、磁界方向切替部46は、上下モードの切替指示があるか否かを判断する(ステップS210)。磁界方向切替部46は、上下モードの切替指示があると判断した場合(ステップS210:Yes)、図8のステップS12と同様に磁界方向反転処理を行い(ステップS212)、磁界制御指示部45は、接触モードおよび離間モードの均一勾配磁界の勾配の各方向を反転させる。磁界方向切替部46は、上下モードの切替指示がないと判断した場合(ステップS210:No)、または、磁界方向反転処理(ステップS212)終了後、図8のステップS14と同様に、接触磁界印加処理を行う(ステップS214)。次に、磁界制御指示部45は、図8のステップS16と同様に、離間モードの開始指示があるか否かを判断する(ステップS216)。磁界制御指示部45は、離間モードの開始指示がないと判断した場合には(ステップS216:No)、ステップS214の接触磁界印加処理を継続し(ステップS214)、接触モードを維持する。これに対し、磁界制御指示部45は、離間モードの開始指示があると判断した場合には(ステップS216:Yes)、離間モードにおける均一勾配磁界をカプセル型内視鏡10に印加する離間磁界印加処理を行う(ステップS218)。この場合、磁界制御指示部45は、勾配変更指示部248の指示のもと、初期条件の勾配で離間モードにおける均一勾配磁界を磁界発生部2に発生させる。
そして、動作検出部243は、カプセル型内視鏡10の体内での動作速度を検出する動作検出処理を行ない(ステップS220)、検出した動作速度を勾配変更指示部248に出力する。この場合、動作検出部243は、離間モードにおいて、基準となる境界面からカプセル型内視鏡10が鉛直方向に離れる動作の動作速度を検出することとなる。勾配変更指示部248は、動作検出部243の検出結果をもとに、カプセル型内視鏡10が境界面から離れるように動き始めたか否かを判断する(ステップS222)。
勾配変更指示部248は、カプセル型内視鏡10が境界面から動き始めていないと判断した場合(ステップS222:No)、カプセル型内視鏡10に作用する磁気引力が足りないと判断し、カプセル型内視鏡10に作用する磁気引力を高めるため、離間モードにおける均一勾配磁界の勾配を1段階アップさせるように磁界制御指示部45に指示する(ステップS224)。そして、磁界制御指示部45は、離間モードにおける均一勾配磁界の勾配を1段階アップさせて、離間磁界印加処理を行う(ステップS218)。そして、動作検出部243による動作検出処理が行われ(ステップS220)、再度、勾配変更指示部248は、カプセル型内視鏡10が境界面から離れるように動き始めたか否かを判断する(ステップS222)。このように、勾配変更指示部248がカプセル型内視鏡10が境界面から離れるように動き始めると判断するまで、ステップS218〜ステップS224の処理が繰り返される。
そして、勾配変更指示部248は、カプセル型内視鏡10が境界面から動き始めたと判断した場合(ステップS222:Yes)、直前の離間磁界印加処理において磁界発生部2が発生した均一勾配磁界の勾配を、離間モードにおける均一勾配磁界の勾配であるとして、磁界勾配記憶部47に、離間モードの勾配の最適条件を更新する勾配更新処理を行う(ステップS226)。
そして、磁界制御指示部45は、図8のステップS28〜ステップS32と同様に、水平方向移動指示判断処理(ステップS228)、水平方向の移動位置演算処理(ステップS230)、水平移動磁界印加処理を行う(ステップS232)。さらに、磁界制御指示部45は、図8のステップS34と同様に、離間モード停止指示判断処理を行なう(ステップS234)。磁界制御指示部45は、離間モードの停止指示があると判断した場合(ステップS234:Yes)、接触モードにおける均一勾配磁界をカプセル型内視鏡10に印加する接触磁界印加処理を行って(ステップS236)、カプセル型内視鏡10を基準面に戻す。一方、磁界制御指示部45は、離間モードの停止指示がないと判断した場合(ステップS234:No)、ステップS218に戻り、離間モードを継続する。
そして、体外制御部204は、図8に示すステップS38と同様に、入力部206から入力された指示情報をもとに、体内観察が終了したか否かを判断する(ステップS238)。体外制御部204は、体内観察が終了していないと判断した場合には(ステップS238:No)、体内観察を継続するため、ステップS210に戻り、上下モードの切替指示があるか否かを判断する。また、体外制御部204は、体内観察が終了したと判断した場合には(ステップS238:Yes)、画像受信部41による画像受信処理を終了し(ステップS240)、画像表示制御部42による画像表示処理を終了した後(ステップS242)、画像データ保存処理を行って(ステップS244)、体内観察を終了する。
このように、実施の形態2にかかるカプセル型医療装置用誘導システム201においては、図18に示す各処理を行うことによって、離間モードにおいてカプセル型内視鏡10に印加する均一勾配磁界の勾配を自動的に調整するため、操作者による勾配調整の負担を軽減することが可能になる。
なお、本実施の形態2においては、カプセル型内視鏡10に加速度センサを持たせておき、動作検出部243は、このカプセル型内視鏡10の加速度センサによる加速度情報をもとに、カプセル型内視鏡10の動作速度を検出してもよい。
また、勾配変更指示部248は、ステップS222において、カプセル型内視鏡10が境界面から離れるように動き始めたか否かを判断するのではなく、離間速度が予め設定された動作速度となるかを判断してもよい。すなわち、予め設定された所望の速度でカプセル型内視鏡10が境界面から離間するように離間モードにおける均一勾配磁界の勾配を調整してもよい。この場合には、カプセル型内視鏡10が境界面から離れる速度が、予め操作者によって設定された所望の離間速度に自動的に設定されるため、操作者は最適な速度でカプセル型内視鏡10を誘導できることから、操作者による体内観察をさらに円滑化することができる。
また、実施の形態2にかかるカプセル型医療装置用誘導システムとして、カプセル型内視鏡10に磁界発生部あるいは磁界反射部を設け、磁界発生部2と同様にカプセル型内視鏡10の周囲を覆うよう複数の磁界センサを設け、動作検出部243は、この磁界センサの検出結果をもとにカプセル型内視鏡10の位置および姿勢を検出して、カプセル型内視鏡10の動作検出をおこなってもよい。
(実施の形態2の変形例)
次に、実施の形態2の変形例について説明する。図19は、実施の形態2の変形例にかかるカプセル型医療装置用誘導システムの全体構成を示す模式図である。図19に示すように、実施の形態2の変形例にかかるカプセル型医療装置用誘導システム301は、図16に示す体外制御部204に代えて、体外制御部304を備える。体外制御部304は、図16に示す体外制御部204と比較し、位置検出部344をさらに備える。そして、体外制御部304は、図16に示す磁界方向切替部46に代えて、磁界方向切替部346を備える。
位置検出部344は、カプセル型内視鏡10が臓器内部の上側または下側のいずれかに位置するかを検出する。たとえば、位置検出部344は、画像受信部41が受信したカプセル型内視鏡10による撮像画像から、画像内に液面あるいは臓器内壁に特有の画像パターンがあるか否かをもとに、カプセル型内視鏡10が臓器内部の上側あるいは下側に位置するかを検出する。
まず、図20を参照して、カプセル型内視鏡10が液面に位置する場合について説明する。図20(1)に示すように、カプセル型内視鏡10が液面領域に存在する場合には、液面30s上からカプセル型内視鏡10の先端が露出する。撮像部11A,11Bのいずれかの撮像視野は、このカプセル型内視鏡10先端から広がる。このため、図20(1)のようにカプセル型内視鏡10先端が液面30sから露出している場合には、図20(2)の画像G2のように、表面張力による液体30のカプセル型内視鏡10側面への這い登りと照明部13A,13Bからの照射光の反射によって、液面30sとの境界50rがリング状に表示される。このため、位置検出部344は、カプセル型内視鏡10によって撮像された画像の中に、リング状の画像パターンがあるか否かを判断し、リング状の画像パターンがある場合には、このカプセル型内視鏡10は液面30s、すなわち、胃内部の上側に存在すると判断する。
次に、図21を参照して、カプセル型内視鏡10が胃壁31に接触している場合について説明する。図21(1)に示すように、カプセル型内視鏡10が胃壁31に接触している場合には、胃壁31にカプセル型内視鏡10先端が押し付けられている。このため、図21(1)の場合には、図21(2)の画像G1のように、胃壁31とカプセル型内視鏡10先端部との接触部50tが円状に表示される。したがって、位置検出部344は、カプセル型内視鏡10によって撮像された画像の中に、円状の画像パターンがあるか否かを判断し、円状の画像パターンがある場合には、このカプセル型内視鏡10は胃壁31に接触していると判断する。そして、位置検出部344は、胃壁31に特有の画像パターンがあると判断した場合には、撮像部11A,11Bのうちのいずれの撮像部がこの画像を撮像したかを判断し、この画像撮像時におけるカプセル型内視鏡10の姿勢から、画像を撮像した撮像部が上下のいずれを向いていたかを判断することによって、このカプセル型内視鏡10が上部の胃壁31あるいは底部の胃壁に接触しているかを判断する。なお、位置検出部344は、カプセル型内視鏡10によって撮像された画像の中にリング状の画像パターンおよび円状の画像パターンのいずれもないと判断した場合には、このカプセル型内視鏡10は液中に漂っていると判断する。
磁界方向切替部346は、位置検出部344に検出されたカプセル型内視鏡10の臓器内部における位置をもとに上モードあるいは下モードのいずれの上下モードに対応するかを判断し、判断した上下モードに対応させて接触モードおよび離間モードにおいてそれぞれ発生させる均一勾配磁界の磁気勾配の方向をそれぞれ所定の方向に切り替える。なお、磁界方向切替部346は、位置検出部344がカプセル型内視鏡10が液中を漂っていると判断した場合には、上モードあるいは下モードのうちデフォルトのモードに対応させて接触モードおよび離間モードの均一勾配磁界の勾配の方向を切り替える。
すなわち、カプセル型医療装置用誘導システム301においては、カプセル型内視鏡10が上下モードのいずれのモードに対応する位置にあるかを検出し、カプセル型内視鏡10の位置に対応する上下モードを判断して接触モードおよび離間モードにおいてそれぞれ発生させる均一勾配磁界の磁気勾配の方向を自動的に設定している。このため、操作者が画像を観察してカプセル型内視鏡10の上部または底部の胃壁に接触しているか判断できず上下モードを設定できなかった場合であっても、カプセル型内視鏡10の位置に適した接触モードおよび離間モードの均一勾配磁界の勾配の方向が自動的に設定される。
次に、図22を参照して、図19に示すカプセル型医療装置用誘導システム301のカプセル型内視鏡10の誘導処理について説明する。図22は、図19に示すカプセル型医療装置用誘導システム301のカプセル型内視鏡10の誘導処理の処理手順を示すフローチャートである。
図22に示すように、図8のステップS2〜ステップS8と同様に、体外制御部304に、体内観察の開始が指示された後(ステップS302)、磁界制御指示部45は、初期条件での磁界発生を設定し(ステップS304)、この初期条件で磁界制御部8に磁界を発生させ、画像受信部41は画像受信処理を開始し(ステップS306)、画像表示制御部42は、画像表示処理を開始する(ステップS308)。
次いで、位置検出部344は、カプセル型内視鏡10が臓器内部の上側または下側のいずれかに位置するかを検出する位置検出処理を行ない(ステップS309)、検出結果を磁界方向切替部346に出力する。磁界方向切替部346は、位置検出部344に検出されたカプセル型内視鏡10の臓器内部における位置が上側から下側に、あるいは下側から上側に変更しているか否かを判断する(ステップS310)。
磁界方向切替部346は、カプセル型内視鏡10の臓器内部における位置が変更していると判断した場合(ステップS310:Yes)、変更したカプセル型内視鏡10の位置が上下モードのいずれのモードに対応するかを判断し、判断した上モードまたは下モードに対応させて磁界方向反転処理を行い(ステップS312)、磁界制御指示部45は、接触モードおよび離間モードの均一勾配磁界の勾配の各方向を反転させる。
一方、磁界方向切替部346は、カプセル型内視鏡10の臓器内部における位置が変更していないと判断した場合(ステップS310:No)、または、磁界方向反転処理(ステップS312)終了後、図8のステップS14と同様に、接触磁界印加処理を行う(ステップS314)。次に、磁界制御指示部45は、図8のステップS16と同様に、離間モードの開始指示があるか否かを判断する(ステップS316)。磁界制御指示部45は、離間モードの開始指示がないと判断した場合には(ステップS316:No)、ステップS314の接触磁界印加処理を継続し(ステップS314)、接触モードを維持する。これに対し、磁界制御指示部45は、離間モードの開始指示があると判断した場合には(ステップS316:Yes)、離間モードにおける均一勾配磁界をカプセル型内視鏡10に印加する離間磁界印加処理を行う(ステップS318)。
そして、図18のステップS220およびステップS222と同様に、動作検出部243は、動作検出処理を行い(ステップS320)、勾配変更指示部248は、動作検出部243の検出結果をもとに、カプセル型内視鏡10が境界面から離れるように動き始めたか否かを判断する(ステップS322)。勾配変更指示部248は、カプセル型内視鏡10が境界面から動き始めていないと判断した場合(ステップS322:No)、図18のステップS224と同様に、離間モードにおける均一勾配磁界の勾配を1段階アップさせるように磁界制御指示部45に指示する(ステップS324)、ステップS318に進む。勾配変更指示部248がカプセル型内視鏡10が境界面から離れるように動き始めると判断するまで、ステップS318〜ステップS324の処理が繰り返される。
そして、勾配変更指示部248は、カプセル型内視鏡10が境界面から動き始めたと判断した場合(ステップS322:Yes)、図18のステップS226と同様に、直前の離間磁界印加処理において磁界発生部2が発生した均一勾配磁界の勾配を、離間モードにおける均一勾配磁界の勾配であるとして更新する勾配更新処理を行う(ステップS326)。
そして、磁界制御指示部45は、図8のステップS28〜ステップS32と同様に、水平方向移動指示判断処理(ステップS328)、水平方向の移動位置演算処理(ステップS330)、水平移動磁界印加処理を行う(ステップS332)。さらに、磁界制御指示部45は、図8のステップS34と同様に、離間モード停止指示判断処理を行なう(ステップS334)。磁界制御指示部45は、離間モードの停止指示があると判断した場合(ステップS334:Yes)、接触モードにおける均一勾配磁界をカプセル型内視鏡10に印加する接触磁界印加処理を行って(ステップS336)、カプセル型内視鏡10を基準面に戻す。一方、磁界制御指示部45は、離間モードの停止指示がないと判断した場合(ステップS334:No)、ステップS318に戻り、離間モードを継続する。
そして、体外制御部304は、図8に示すステップS38と同様に、入力部306から入力された指示情報をもとに、体内観察が終了したか否かを判断する(ステップS338)。体外制御部304は、体内観察が終了していないと判断した場合には(ステップS338:No)、体内観察を継続するため、ステップS309に戻り、位置検出処理を行う。また、体外制御部304は、体内観察が終了したと判断した場合には(ステップS338:Yes)、画像受信部41による画像受信処理を終了し(ステップS340)、画像表示制御部42による画像表示処理を終了した後(ステップS342)、画像データ保存処理を行って(ステップS344)、体内観察を終了する。
このように、実施の形態2の変形例にかかるカプセル型医療装置用誘導システム301においては、図22に示す各処理を行うことによって、カプセル型内視鏡10の臓器内部における位置を検出しカプセル型内視鏡10の位置に応じて上モードまたは下モードを自動的に設定しているため、操作者によるカプセル型内視鏡10の操作負担を軽減することが可能になる。
なお、実施の形態1,2においては、撮像部を複数有するカプセル型内視鏡10を用いた場合を例に説明したが、もちろん、撮像部11Aのみを有する単眼のカプセル型内視鏡であってもよい。
また、実施の形態1,2においては、永久磁石19を用いたカプセル型内視鏡10を例に説明したが、もちろんこれに限らず、永久磁石19に代えて電磁石を備えたカプセル型内視鏡であってもよい。
なお、実施の形態1,2において、磁界制御指示部45は、磁界発生部2に均一勾配磁界を発生させて、カプセル型内視鏡10を液体の境界面に対して押し付けるもしくは離間する磁気引力をコントロールしているが、これに限らず、ピーク磁界を発生させて、カプセル型内視鏡10を液体の境界面に対して押し付けるもしくは離間する磁気引力をコントロールしても良い。
ピーク磁界は、水平方向にピークを有する磁界を発生し、カプセル型内視鏡10の水平方向の位置を拘束する一方、ピーク近傍で鉛直方向の磁気勾配を発生し、カプセル型内視鏡10を鉛直方向に誘導することができる。したがって、磁界制御指示部45は、磁界発生部2が発生するピーク磁界の鉛直方向の磁気勾配を制御することで、図8,図18,図22の、接触磁界印加処理S14,S36,S214,S236,S314,S336、離間磁界印加処理S18,S24,S54,S218,S318に対応する磁界をカプセル型内視鏡10に印加する。
また、磁界制御指示部45は、磁界発生部2が発生するピーク磁界の水平方向の位置を変化させることで、図8,図18,図22、水平移動磁界印加処理S32,S232,S332に対応する磁界をカプセル型内視鏡10に印加する。
これにより、カプセル型内視鏡10の水平方向の位置がピーク磁界によって拘束できるため、より安定した水中での誘導を実現でき、操作性が向上する。