JP5112493B2 - 車両の乗員保護装置 - Google Patents
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Description
さらに、カーテンエアバッグ展開には乗員とサイド窓に空間が必要で、近接した状態での展開は乗員を窓外へ押し出す可能性がある。このような状況でのカーテンエアバッグ展開は危険性(加害性)があり、展開禁止処理が望ましい。そこで、車両が小さいロール角速度でゆっくりと横転する場合などで乗員がドアガラスに近接して、カーテンエアバッグが乗員頭部に干渉するときにカーテンエアバッグの展開を禁止する保護装置がある。
例えば、ロール角速度ωの絶対値|ω|が小さいとき、カーテンエアバッグの非展開を判断する装置があり(例えば、特許文献1参照)、乗員頭部と車体側部内面との距離が閾値Dmin未満であるとき、カーテンエアバッグの非展開を判断する装置がある(例えば、特許文献2参照)。
さらに、乗員頭部と車体側部内面との距離を測定して判断する乗員保護装置にあっては、新たに赤外線センサやテレビカメラ等を設ける必要があるとともに、測定値に乗員の体形、服飾品等による誤差が生じる問題点があった。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による車両の乗員保護装置を示すブロック図である。
図1において、車両の乗員保護装置は、車両の前後方向軸周りに作用する回転角速度をロール角速度ωとして検出するロール角速度センサ1と、ロール角速度センサ1からのロール角速度ωを積分して車両のロール角θvを求めるロール角演算部2と、車両のロール角速度ωとロール角θvに基づきω−θマップを用いて車両のロールオーバを判定するロールオーバ判定手段としてのω−θマップ判定部3と、ロール角速度センサ1からのロール角速度ωに基づいてカーテンエアバッグ等の展開の動作・非動作判定を行う動作・非動作判定手段としての展開禁止判定部4と、ω−θマップ判定部3の出力と展開禁止判定部4の出力の論理積をとるAND回路5と、AND回路5の出力に基づいてカーテンエアバッグ等の頭部保護エアバッグの展開の信号指令を発生する頭部保護エアバッグ展開部6とを備える。
図2において、横転臨界ロール角θvcのとき車両7の重心GCは、ロール中心となるタイヤ8の鉛直線上に位置する。車両7のロール角θvが横転臨界ロール角θvcを越えると車両7の重力の影響により角速度ゼロでも横転に至る。
図3において、車両7のロール角速度ωとロール角θvの軌跡が横転限界曲線を超えて車両横転領域となることでロールオーバに至ると判断した際に、車両7のロール角速度ωの情報から乗員頭部9が既に重力の影響でサイドウインドウ10に近接している状態(A)と判断したときエアバッグ(図示せず)の展開を禁止して、エアバッグによる乗員への加害や窓外への押し出しを回避する。
一方、ロールオーバに至ると判断した際に乗員頭部9とサイドウインドウ10の間にエアバッグの安全展開空間が確保できる状態(B)と判断したときはエアバッグ展開を許可する。
図4において、「エンバンクメント」は車両7の横転の種類の一つであり、車両7が走行路11を逸脱し、傾斜面12に進入後に急激なステアリング操作などにより発生する横転である。
傾斜面12の角度が横転臨界ロール角θvc(図2)より小さい場合、車両7が傾斜面12に進入しただけでは横転することはなく(Bの状態)、また、適切なステアリング操作の場合、車両7は横転に至ることなく傾斜面12より復帰することができ(Cの状態)、一方、車両7の横転は路面状況、車速と共に、急激なステアリング操作により発生する(Aの状態)。
図5において、展開禁止判定部4−1は、高周波通過フィルタ(High Pass Filter)処理部13と比較部14とを備え、ロール角速度センサ1で検出された車両のロール角速度ωに高周波通過フィルタ処理部13により信号処理された出力の絶対値|ω<HPF>|が閾値ωt以下の領域であるときAND回路5を介して頭部保護エアバッグ展開部6に展開禁止信号を出力する。ここで、<HPF>は、高周波通過フィルタを意味しており、ωはHPF処理前の角速度を、ω<HPF>はHPF処理後の角速度をそれぞれ表している。
これにより、緩やかなロール角速度ωで横転した場合でも車両横倒しとなる直前に増大するロール角速度ωによる展開を回避できる。
エンバンクメント」と呼ばれる横転(ロールオーバ)形態は、図4に示すように平坦路11を走行していた車両7が傾斜面12に逸脱して発生する。その過程は、(i)車両7が傾斜面12に進入したときに車両7が傾斜[ロール角速度ωが発生]、(ii)傾斜面12の走行[ロール角速度ωは小さい]、(iii)ステアリング操作による横転[ロール角速度ωが発生]、となるためにロール角速度ωに2つのピークが現れる(図6の実線)。
図7において、車両のロール角速度ω(図中の実線A)と高周波通過フィルタ処理部13通過後のロール角速度ω<HPF>(図中の破線A’)を示している。高周波通過フィルタ処理部13での処理によりロール角速度ωの2つ目のピーク値が低くなり、その絶対値|ω<HPF>|が閾値ωt以下の領域であるとき、展開禁止判定条件を満足し、展開禁止信号を出力する。従って、車両が横転に至ると判断された場合でも、乗員頭部9の位置がサイドウインドウ10に近接していると判断し、保護装置の展開は禁止される。
この高周波通過フィルタ処理部13には、例えば、0.5〜5Hz、望ましくは1〜2Hz程度の高周波通過フィルタが有効である。
図8は、この発明の実施の形態2による車両の乗員保護装置を示すブロック図である。図8において、図5と対応する部分には同一符号を付し、その詳細説明を省略する。
図8において、展開禁止判定部4−2は、車両のロール角速度ωの絶対値|ω|が閾値ωH以下のとき積分演算を行う閾値積分部15と、この閾値積分部15の出力として得られる車両のロール角の絶対値と閾値θvsを比較する比較器16とを備え、車両のロール角の絶対値が閾値θvs以上である場合にAND回路5を介して頭部保護エアバッグ展開部6に頭部保護用エアバッグの展開を禁止する禁止判定信号を出力する。その他の構成は、図5の場合と同様である。
通常、車両のロール角θvは、ロール角速度ωを積分処理することにより算出される。本実施の形態における展開禁止判定部4−2では、ロール角速度ωの絶対値|ω|が閾値ωH以下であるときのみを積分処理することでロール角速度ωが小さい緩やかな横転での車両傾斜量を閾値積分部15により算出している。|ω|≦ωHでは、車両の傾斜に比べ乗員頭部が重力により傾斜する効果が大きいため、|ω|≦ωHでの閾値積分量の絶対値が閾値θvsを超えた場合に、乗員頭部位置がサイドウインドウに近接していると判断し保護装置の展開を禁止する。
なお、図9では、積分を行なうロール角速度ωの上限値ωHを設ける処理方式である。通常、積分処理(∫ωdt)では、ロール角速度ωを全域積分するため常に変化する挙動(ロール角θvのグラフ上側実線)となる。一方、ロール角速度ωの値が所定範囲[ωL≦|ω|≦ωH]のとき[図中ハッチング部]のみを積分する場合、
∫ωdt |ω|≦ωH][正確には、ωL≦|ω|≦ωH]
となり、ロール角速度ωが所定範囲の場合だけ変化する(ロール角θvのグラフ下側実線)。このときのロール角θvの値が閾値θvsを超えた時点で展開禁止信号が出力する。全域積分した場合にも閾値θvsを超えるが、この時点では横転に至る危険性はほとんどないか、もしくは予測できないタイミングであるため、将来エアバッグ展開が必要な形態をも禁止してしまう惧れがある。図9における、太い矢印は、ω−θマップ判定部3で展開信号が出力されるタイミングを表している。
図10は、この発明の実施の形態3による車両の乗員保護装置を示すブロック図である。図10において、図5と対応する部分には同一符号を付し、その詳細説明を省略する。
本実施の形態では、実施の形態1と同様に、ロール角速度センサ1、ロール角演算部2、ω−θマップ判定部3、AND回路5および頭部保護エアバッグ展開部6の他に、車両の横方向に作用する加速度を横方向加速度Gyとして検出する横方向加速度センサ17と、車両の横方向加速度Gyの絶対値処理出力|Gy|が閾値Gys1以下の場合に頭部保護用エアバッグの展開を禁止する禁止判定信号を出力する展開禁止判定部4−3とを備え、展開禁止判定部4−3は、横方向加速度センサ17で検出された横方向加速度Gyの絶対値を処理する絶対値処理部18と、この絶対値処理部18で処理された出力|Gy|と所定の閾値Gys1を比較する比較部19とを有する。その他の構成は、図5の場合と同様である。
一般に車両の横転現象は、路面凹凸や摩擦によるトリップ後に発生する。このとき、横方向加速度Gyが通常走行時よりは大きな値が発生する。しかし、緩やかな横転時には大きな横方向加速度Gyを伴わない(初期段階で発生することはあるが、ロールオーバ判定時には小さい)状態であるため、横方向加速度Gyによる横転状況を判断し、エアバッグの展開を禁止判定が可能となる。
図11は、この発明の実施の形態4による車両の乗員保護装置を示すブロック図である。図11において、図5と対応する部分には同一符号を付し、その詳細説明を省略する。
本実施の形態では、実施の形態1と同様に、ロール角速度センサ1、ロール角演算部2、ω−θマップ判定部3、AND回路5および頭部保護エアバッグ展開部6の他に、車両の横方向に作用する加速度を横方向加速度Gyとして検出する横方向加速度センサ17と、ロール角演算部2の出力に基づいて横方向加速度Gyの補正を行うためのGy補正演算部20と、横方向加速度センサ17の出力とGy補正演算部20の出力に基づいて頭部保護用エアバッグの展開禁止の判定を行う展開禁止判定部4−4とを備え、展開禁止判定部4−4は、横方向加速度センサ17で検出された横方向加速度GyおよびGy補正演算部20の出力ΔGyの絶対値|Gy−ΔGy|を処理する絶対値処理部21と、この絶対値処理部21で処理された絶対値|Gy−ΔGy|と所定の閾値Gys2を比較する比較部22とを有する。その他の構成は、図5の場合と同様である。
エアバッグ展開が必要な横転時には、比較的大きな横方向加速度Gyを伴うため、横方向加速度Gyの絶対値を用いてエアバッグ展開の禁止判定が可能となる。しかし、車両が傾斜面を走行している場合、もしくは緩やかに横転している際には、横方向加速度センサ17は重力の影響を受ける。
従って、本実施の形態では、この重力効果を補正した横方向加速度Gy−ΔGyを用いることで、より横転に至る状況であるかを判断して正確なエアバッグ展開禁止判定が可能となる。
Claims (2)
- ロール角速度センサと、ロールオーバ判定手段とを備えたエアバッグの展開を行う車両用の乗員保護装置において、
更に横方向加速度センサと、
車両のロール角θv、ロール角速度ω、または横方向加速度Gyの何れかの履歴に基づいて保護対象の位置を推定して保護装置の動作・非動作の判定を行う動作・非動作判定手段とを備え、
上記動作・非動作判定手段は、上記車両のロール角速度ωが閾値ωH以下であるときのロール角積分量の絶対値|θv|が閾値θvs以上である場合に上記エアバッグの展開を禁止判定することを特徴とする車両の乗員保護装置。 - ロール角速度センサと、ロールオーバ判定手段とを備えたエアバッグの展開を行う車両用の乗員保護装置において、
更に横方向加速度センサと、
車両のロール角θv、ロール角速度ω、または横方向加速度Gyの何れかの履歴に基づいて保護対象の位置を推定して保護装置の動作・非動作の判定を行う動作・非動作判定手段とを備え、
上記動作・非動作判定手段は、上記車両の横方向加速度Gyより車両傾斜による重力効果分を補正した値の絶対値|Gy|が閾値Gys2以下である場合に上記エアバッグの展開を禁止判定することを特徴とする車両の乗員保護装置。
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