JP5103635B2 - 析出金属板の剥離装置および剥離方法 - Google Patents

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本発明は、電解槽から析出された例えば純銅板のような析出金属板の剥離装置および剥離方法に関する。
例えば、ISA法と称される銅の電解精錬では、ステンレス板のカソードを用いて、電解槽内の硫酸銅溶液中で粗銅のアノードからステンレス板からなるカソードに直流電流を流すことで、アノード中の銅分を溶解してカソードに移行し、カソード板の両面に純銅を析出させることによって行われている(例えば、特許文献1)。
図7は、従来使用されているステンレス板のカソード2を示したものである。
このカソード2では、析出すべき純銅板の除去を容易にするために、板状部2aの下端面にV字状の溝4を形成するとともに、板状部分2aの上縁部と両側縁部とに、それぞれプラスチックなどの絶縁材料からなる帯板6を配置し、この帯板6により板状部2aの上縁部及び両側縁部に純銅が析出しないようにしている。
このようなステンレス板のカソード2は、粗銅からなるアノードまたは単なる電極としてのアノードとともに電解液で満たされた電解槽内に交互に配され、電流が流されることにより、カソード2の表面に純銅が析出される。そして、カソード2は、ある重量になった時点で電解槽から引き上げられ、図8に示したように、両面に析出された純銅板(以下、単に銅板という)8、8がスクレーパなどの剥ぎ取り機10により剥ぎ取られている。
この剥ぎ取り機10としては、先端側がテーパ状に形成された板状の楔部材10を例示することができる。このような楔部材10は、シャフトまたはアームに支持され、かつカソード2の板状部2aに対して上下動可能に配置される。
このような一対の楔部材10が、板状部2aと銅板8との上部における隙間に差し込まれて下方に移動されると、平板状の銅板8、8が図8に示したように両側に拡開される。
特表2002−531697号
ところで、このような従来の方法では、電解条件などによっては、両側に略水平状態に倒された一対の銅板8、8であっても、図9に示したように2枚に分離されず、未だ1枚に合体している場合がある。このような場合には、一対の銅板8,8をグリップ12、12で把持して元の直立姿勢にまで戻すとともに、再度、水平方向に傾倒させ、必要に応じてこのような動作を繰り返すことにより銅板8の接続部分に疲労破壊を生じさせ、その後、グリップ12を矢印で示したように略水平方向に引っ張ることにより、銅板8,8の分離を促すようにしていた。
しかしながら、このような剥離装置では、銅板同士を分離するための構造が複雑になるとともに、処理能力の小さな装置に同様の剥離装置を適用した場合には、コスト高になるという問題があった。
本発明は、このような実情に鑑み、2枚の銅板が略水平状態に展開された通常の動作では2枚に分離されず未だ一枚に合体されている場合であっても、その銅板を安易な構造で確実に2枚に分離することができる析出金属板の剥離装置および剥離方法を提供することを目的としている。
上記目的を達成するための本発明に係る析出金属板の剥離装置は、
電解槽内においてカソード電極の両面に析出された2枚一対の析出金属板をカソード電極から剥ぎ取るための析出金属板の剥離装置であって、
前記カソード電極の上方側に、上下動可能で水平方向に延びる楔部材と、上下動可能で前記楔部材よりも大径の補助押圧部材とを設置するとともに、
前記カソード電極と前記析出金属板との間に形成された隙間から前記楔部材を差し込んで当該楔部材を下方向に移動させ、さらに前記補助押圧部材を前記隙間に差し込んで下方向に移動させ、
これら楔部材と補助押圧部材との移動により、前記2枚の析出金属板を前記カソード電極から剥ぎ取るようにしたことを特徴としている。
このような剥離装置によれば、一対の析出金属板を楔部材のみならず補助押圧部材によりカソード電極から引き離すようにしているので、析出金属板を確実に剥離して、かつ2枚の析出金属板を互いに分離することができる。しかも、その構造は容易である。
ここで、本発明では、前記カソード電極の下方側に、寝かせた姿勢から立てた姿勢、あるいは立てた姿勢から寝かせた姿勢に繰り返し傾倒自在なフラッパーを設置するとともに、
前記2枚一対の析出金属板の接続部分が分離されない場合に、前記フラッパーを立てた姿勢あるいは寝かせた姿勢に繰り返して傾倒させることにより、前記析出金属板の接続部分を離反させることが好ましい。
このような構造であれば、析出金属板の接続部分に金属疲労を生じさせ、これにより析出金属板を2つに分離することができる。
また、本発明に係る析出金属板の剥離方法は、
電解槽内においてカソード電極の両面に析出された2枚一対の析出金属板をカソード電極から剥ぎ取るための析出金属板の剥離方法であって、
前記カソード電極と析出金属板との上部会合部に隙間を形成する隙間形成工程と、
前記隙間形成工程で得られた隙間に楔部材を上方から差し込んで前記析出金属板の下方側をV字状に拡開させる金属板拡開工程と、
前記金属板拡開工程で得られた隙間に補助押圧部材を差し込んでV字隙間の拡開動作に伴って前記析出金属板を略水平状態に横転させる金属板展開工程と、
前記金属板展開工程後に、前記析出金属板を寝かせた姿勢から立てた姿勢、あるいは立てた姿勢から寝かせた姿勢への傾倒動作を繰り返して前記2枚一対の析出金属板を分離する金属板屈曲工程と、を有することを特徴としている。
このような方法で析出金属板を剥離すれば、仮に2枚の析出金属板が接続されているとしても、その接続を容易に切断することができる。
また、本発明に係る剥離方法では、前記金属板屈曲工程は、前記カソード電極の下方側に配置されたフラッパーの傾倒動作により行われることが好ましい。
このような方法であれば、析出金属板を、フラッパーを介して自動的に横転させることができる。
ここで、前記金属板屈曲工程は、前記楔部材と前記補助押圧部材とが前記カソード電極より上方に退避された状態で行われることが好ましい。
このようにすれば、楔部材および補助押圧部材が析出金属板の揺動範囲から外れるので析出金属板の揺動の邪魔になることはない。
本発明に係る析出金属板の剥離装置および剥離方法によれば、2枚の析出金属板をカソードから剥離し、かつ確実に1枚ずつに分離することができる。
さらに、水平状態に倒された姿勢の析出金属板を両側に引っ張るための構造が不要であるので、その構造はコンパクトである。
以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1は本発明の一実施例による析出金属板(銅板)の剥離装置に採用されたカソード20を示したもので、図2は、カソード20の両面に析出された銅板28を剥がすときの作用を示す概略側断面図である。
カソード20では、ハンガーと称される水平方向の支持部材22に、ステンレス製で矩形状の板状部20aが鉛直方向に垂下した姿勢で取り付けられている。また、板状部20aの下端面には、V字状の溝24が形成され、この溝24が形成されることにより、両側に析出される銅板28、28が後述する方法で剥がされる場合に、容易に剥離できるように構成されている。
一方、カソード20の板状部分20aにおける両側縁部(端面を含む)には、それぞれ絶縁材料からなる帯板26が配置され、この帯板26により両側縁部への純銅の析出が防止されている。なお、図1では、カソード20の片面のみを示しているが、反対側の面も同様の構成を有している。
このようなカソード20から図2に示した銅板28、28を剥ぎ取るための剥離装置30は、図3に示したように、大型鋼板などからなる設備機械に搭載されている。
本発明の剥離装置30では、図2に示した楔部材38が、銅板28の上方側から下方側に向かって移動することにより銅板28の下方側をV字状に拡開させる金属板拡開工程と、この金属板拡開工程で得られた上部の隙間に補助押圧部材40の下端が差し込まれて下動させることにより、銅板28を略水平状態に展開させる金属板展開工程と、金属板展開工程で略水平状態に展開された2枚の銅板28が未だ1枚に接続されている場合に、これを分離するため、銅板28を寝かせた姿勢から立てた姿勢、あるいは立てた姿勢から寝かせた姿勢への傾倒動作を繰り返して行う金属板屈曲工程とが、この順で行われるための構成が具備されている。
すなわち、図3に示したように、大型鋼板からなる一対の支柱34の上部には、カソード20のハンガーを支持するためのV字状の載置部32がそれぞれ設置され、この載置部32に、銅板が析出されたカソード20の両端部が支持される。
本実施例による剥離装置30は、カソード20に対し表裏両面に対称形に構成されている。すなわち、銅板28を確実に剥ぎ取るために、図3に示した一対の楔部材38の他に、図4に示した一対の補助押圧部材40と、図5に示した一対のフラッパー50とを備えている。
そして、楔部材38による金属板拡開工程ととともに、補助押圧部材40による金属板展開工程が実施され、さらにフラッパー50による金属板屈曲工程が実施されることになる。
図2に示したように、上記楔部材38と補助押圧部材40とは、カソード20に対して上下動可能に設置されるが、フラッパー50は、図5(A),(B)あるいは図6に示したように、カソード20に対して立てた姿勢あるいは寝かせた姿勢のいずれかになるように傾倒自在(展開自在)に設置されている。
このような構成からなる剥離装置30では、楔部材38による金属板拡開工程を実施する前に、カソード20の板状部20aに対して略直角な方向から交互に力が加えられ、これにより板状部20aと銅板28との間に若干の隙間が板状部20aの上部に確保される。これにより、楔部材38の入口用の隙間が形成される。
上記楔部材38は、図3の状態では、銅板28の高さ方向の略中間付近にその先端部38aが位置しているが、実際の動作時には、図3の位置より上方に移動した位置が初期位置とされ、その先端部38aが銅板28側に向けられて、銅板28と板状部20aとの間の上部の隙間に挿入される。また、楔部材38の先端部38aの角度調整は、シャフト39の回動動作により行われる。
一方、この楔部材38の下方向への移動に追随する補助押圧部材40は、楔部材38による剥ぎ取りを一層確実にするためのもので、図2に示したように、楔部材38より基端側が厚く形成されている。この補助押圧部材40の形状としては、図4に示したように基端部側の厚さが厚い断面くちばし状の棒状部材などを例示することができるが、この形状に限定されずローラなどから構成しても良い。
補助押圧部材40は、楔部材38が下方に移動された後、若干、遅れながらも楔部材38と同様に下方に案内される。これにより、図2に示したように、楔部材38の先端部38aで、銅板28を両側に開いた後、後方側を補助押圧部材40により、さらに大きく離反させることができる。そして、補助押圧部材40は、銅板28を大きく開きながら下方に移動し、下端最終付近に近づいたときには、既に移動を停止している楔部材38を追い抜いて、補助押圧部材40のみが銅板28を押圧し、この銅板28を台座33に押し当てる。これにより、銅板28が略水平状態に展開される。
さらに、本実施例では、図5(A)、(B)に示したように、上記フラッパー50が、銅板28の背面側に具備されている。
フラッパー50は、回動軸52、52を支点として両側に回動自在(傾倒自在)に支持されたもので、枠状の一対のフレーム板54から構成されている。また、フレーム板54の先端部には、押え板56が具備されている。
このようなフラッパー50は、図5(A)、(B)に示したように、立て起こしたり、あるいは立てた姿勢から寝かせたりする傾倒動作を繰り返して行うことができる。このフラッパー50の移動に伴って、未だ分離されていない銅板28、28を寝かせた姿勢から立った姿勢、あるいは立った姿勢から寝かせた姿勢にすることが可能になる。なお、図5(A)では、フラッパー50の一方のフレーム板54が立てた姿勢、他方のフレーム板54が寝かせた姿勢で図示されているが、実際には同じ姿勢で動作するものである。
本実施例による剥離装置30は上記のように構成されているが、以下に作用について説明する。
先ず、電解槽内で両側に銅板28が析出されたカソード20は、クレーンなどにより、支持部材22の両端部が図3に示した設備機械の載置部32,32間にセットされる。この状態では、銅板28とカソード20の板状部20aとの間には、未だ隙間が形成されていない。この状態から、先ずカソード20と直角な水平方向から銅板28に力を加えることにより、銅板28を撓らせ、これにより、銅板28と板状部20aとの間に隙間を形成する。このように水平方向から力を加えて銅板28と板状部20aとの間に若干の隙間を形成する構造は公知であり、アームなどにより当て板を水平方向に往復移動する構造である。
一方、載置部32にカソード20が搭載された初期状態において、楔部材38と補助押圧部材40とは上方に位置しており、その位置で待機している。また、フラッパー50は、図6に示したように両側に展開した状態に位置している。
この状態から先ず、楔部材38の先端部38aが銅板28と板状部20aとの隙間に案内される。そして、先端側が緩やかに下方に案内される。すると、銅板28が次第に剥がされていく。さらに、本実施例では、このような楔部材38の移動に対して追随するように、補助押圧部材40が下方に案内される。
この補助押圧部材40が下方に案内されることにより、銅板28と板状部20aとの間隙は図2に示したように、次第に大きくされ、これにより銅板28が板状部20aから確実に離反される。そして、銅板28が図6に示したように、略水平状態に近い程度にまで両側に展開されるときには、補助押圧部材40が楔部材38を追い抜いて、この補助押圧部材40のみで銅板28を押圧する。
ここで、これら両側の銅板28が展開された状態においても未だ接続されている場合には、楔部材38と補助押圧部材40を初期位置に戻すとともにフラッパー50を作動させる。このフラッパー50が作動されると、両側のフレーム板54が銅板28、28の背面側を下方から上方に、すなわち立て起こすように押圧し、銅板28を寝かせた姿勢から立った姿勢に変換する。このように銅板28が立った姿勢に戻されたら、再び楔部材38と補助押圧部材40を作動させ、銅板28を下方に展開させる。なお、この2回目の動作は補助押圧部材40のみで行っても良い。そして、銅板28、28が水平方向に寝かせた姿勢にされたら、再度フラッパー50を起動させることにより銅板28を立て起こす。このようなフラッパー50の傾倒動作を繰り返して行うことにより、金属疲労を生じさせ2枚の銅板28、28を確実に分離することができる。
なお、楔部材38と補助押圧部材40の動作だけで2枚の銅板28を分離できた場合には、フラッパー50の開閉動作を略することができる。
このようにして2枚の銅板28を確実にカソード20から離反させるとともに、銅板28の下端部を確実に分離することができる。
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されない。例えば、析出金属は銅板に限定されず、亜鉛などであっても良好に適用することができる。
また、カソードとしてのステンレス板は、図1に示したステンレス板20に限定されず、従来から使用されている図7のステンレス板2を適用しても良く、何ら限定されるものではない。
図1は本発明の一実施例で採用されたカソードの斜視図である。 図2は図1に示したカソードから析出金属である銅板を楔部材と補助押圧部材により剥がし取るときの作用を示す概略側断面図である。 図3は本発明の一実施例による剥離装置の概略斜視図で、この斜視図では、一部が省略されて図示されている。 図4は本発明の一実施例による剥離装置で採用された補助押圧部材の概略斜視図である。 図5(A)は本発明の一実施例による剥離装置で採用されたフラッパーの概略斜視図、図5(B)は図5(A)のフラッパーの作用を示す概略側断面図である。 図6は、同じくフラッパーの作用を示す概略側断面図である。 図7は従来のカソードの一例を示す斜視図である。 図8は従来の剥離装置で銅板を剥ぎ取るときの概略側断面図である。 図9は従来の剥離装置で銅板が剥離されなかった場合の概略側断面図である。
符号の説明
20 カソード
20a 板状部
22 支持部材
24 溝
28 銅板
30 剥離装置
38 楔部材
38a 先端部
40 補助押圧部材
50 フラッパー

Claims (5)

  1. 電解槽内においてカソード電極の両面に析出された2枚一対の析出金属板をカソード電極から剥ぎ取るための析出金属板の剥離装置であって、
    前記カソード電極の上方側に、上下動可能で水平方向に延びる楔部材と、上下動可能で前記楔部材よりも大径の補助押圧部材とを設置するとともに、
    前記カソード電極と前記析出金属板との間に形成された隙間から前記楔部材を差し込んで当該楔部材を下方向に移動させ、さらに前記補助押圧部材を前記隙間に差し込んで下方向に移動させ、
    これら楔部材と補助押圧部材との移動により、前記2枚の析出金属板を前記カソード電極から剥ぎ取るようにしたことを特徴とする析出金属板の剥離装置。
  2. 前記カソード電極の下方側に、寝かせた姿勢から立てた姿勢、あるいは立てた姿勢から寝かせた姿勢に繰り返し傾倒自在なフラッパーを設置するとともに、
    前記2枚一対の析出金属板の接続部分が分離されない場合に、前記フラッパーを立てた姿勢あるいは寝かせた姿勢に繰り返して傾倒させることにより、前記析出金属板の接続部分を離反させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の析出金属板の剥離装置。
  3. 電解槽内においてカソード電極の両面に析出された2枚一対の析出金属板をカソード電極から剥ぎ取るための析出金属板の剥離方法であって、
    前記カソード電極と析出金属板との上部会合部に隙間を形成する隙間形成工程と、
    前記隙間形成工程で得られた隙間に楔部材を上方から差し込んで前記析出金属板の下方側をV字状に拡開させる金属板拡開工程と、
    前記金属板拡開工程で得られた隙間に補助押圧部材を差し込んでV字隙間の拡開動作に伴って前記析出金属板を略水平状態に横転させる金属板展開工程と、
    前記金属板展開工程後に、前記析出金属板を寝かせた姿勢から立てた姿勢、あるいは立てた姿勢から寝かせた姿勢への傾倒動作を繰り返して前記2枚一対の析出金属板を分離する金属板屈曲工程と、を有することを特徴とする析出金属板の剥離方法。
  4. 前記金属板屈曲工程は、前記カソード電極の下方側に配置されたフラッパーの傾倒動作により行われることを特徴とする請求項3に記載の析出金属板の剥離方法。
  5. 前記金属板屈曲工程は、前記楔部材と前記補助押圧部材とが前記カソード電極より上方に退避された状態で行われることを特徴とする請求項3に記載の析出金属板の剥離方法。
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