JP5102557B2 - サファイア基板の分断方法 - Google Patents
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上述した特許文献3によれば、例えば基板の主面をR面とし、A面に垂直な方向を先に分断し、次いで、A面に平行な方向に分断することとする。そして、レーザを照射してR面基板の成分を加熱・昇華させることにより溝(基板厚みの20%〜50%の深さが好適)を形成し、さらに形成した溝の底部を加熱して蓄熱させることにより基板の裏面との間で熱勾配を発生させ、このときの熱応力によって分断が行われるようにしている。
すなわち、上記文献によれば、基板を昇華温度より高く加熱して昇華させるレーザアブレーション加工の技術を用いて基板厚さの半分程度の溝加工を行い、加工の余熱で生じる熱応力で分断するものである。
このように、良好な分断面を得るための面方位、および、分断方向の優先順位についての分断条件を決定した上で、この条件下で、高速に分断できる分断方法を検討することにより、本発明の分断方法を完成するに至ったものである。
第一方向に分断加工を行う場合、まず、サファイア基板表面に、スクライブラインを形成する。このスクライブラインは、後工程で基板の厚さ方向に第一方向クラックを進展させるための誘導ラインとなるものであり、表面近傍に形成する。
続いて、第一方向と直交する第二方向に沿ってスクライブラインを形成する。このスクライブラインは、後工程で基板の厚さ方向に第二方向クラックを進展させるための誘導ラインとなるものであり、表面近傍に形成する。
続いて、形成された第二方向のスクライブラインに沿って、レーザ照射による加熱および加熱後の冷却を短時間のうちに行う。このとき、サファイア基板の深さ方向に熱勾配が生じることにより熱応力が発生し、第二方向に形成したスクライブラインを起点として深さ方向にクラックが進展した第二方向クラックが形成される。このときの第二方向クラックは、好ましくは裏面に達するように深く形成する。具体的には、例えば加熱温度は融点以下に維持しつつできるだけ高くし、その後の冷却温度をできるだけ低くして温度差を大きくする。これにより熱応力を大きくしてクラックが進展しやすくする。
このとき、第二方向クラックが裏面に達するか否かに関わらず、第一方向クラックと第二方向クラックとが交差するクロスカット部分では、2度目の加熱と2度目の冷却が行われることとなり、このクロスカット部分では第二方向のクラック進展のみならず、第一方向のクラック進展も生じるので、クロスカット部分については、第一方向では2回のクラック進展によって、第一方向クラックが裏面まで達することとなり、さらにクロスカット部分が起点となって裏面まで到達した第一方向クラックが第一方向に沿って広がっていくことで、第一方向を確実に分断させることができる。
そして、第二方向クラックについては、上述したようにクラックが裏面に達するようにして、第一方向と同時に第二方向も分断されるのが好ましいが、第二方向クラックのクラック進展が足りず、完全な分断ができていない場合でも、第二方向クラックは、第二方向クラック進展工程の結果、深いクラックが形成されているので、例えば通常のブレーク工程で簡単に分断することができる。
例えばダイシングでは、1本の分断の加工速度が2mm/秒程度であったものが、同じ対象をスクライブしたり、クラック進展させたりするときにそれぞれ50mm〜300mm/秒程度で処理できるようになり、たとえスクライブ工程とクラック進展工程との2つの工程を実行する必要があるとしても、分断に要する時間を大幅に改善させることができる。また、レーザアブレーション加工によって分断する場合(特許文献3)に比べても、分断時間を短縮することができ、しかも昇華にともなう不要物の飛散がほとんどないので、歩留まりも向上させることができる。
さらに、第一方向クラック進展工程の直後には第一方向クラックは基板を完全には分断しておらず、基板がばらばらに分離されていないため、第二方向のスクライブ等に必要な基板位置決めや移動が容易になる。その一方で、第二方向クラック進展工程の処理のときに、第一方向クラックが裏面まで進展し第一方向に沿って完全に分断され、場合によっては第二方向クラックについても同時に進展して基板分断することができるので、その後の分断工程を簡略にすることができる。
上記発明において、第二方向クラック進展工程の結果、第二方向クラックが前記サファイア基板の裏面に到達せず、第二方向に沿って分断されていない場合に、前記第二方向クラック進展工程に次いで、(3)既に分断された第一方向クラックに沿ってレーザ照射による加熱および加熱後の冷却を行い、第二方向クラックが進展して裏面まで到達することにより第二方向に沿って分断するようにしてもよい。
クロスカット部分(分断された第一方向クラックと第二方向クラックとのクロスカット部分)については、第二方向について2回のクラック進展によって、第二方向クラックが裏面まで達することとなり、さらにクロスカット部分が起点となって裏面まで到達した第二方向クラックが第二方向に沿って広がっていき、第二方向に確実に分断させることができる。なお、第一方向ではなく第二方向クラックに沿ってレーザ照射による加熱および加熱後の冷却の走査を行うことも可能であるが、第二方向クラックが複数本平行に並んでいるときはその本数に応じて各第二方向クラックを1本ずつ走査する必要が生じるので、第一方向クラックに沿って走査するのが好ましい。これにより1回の走査で一括して分断することができるようになる。
スクライブラインはサファイア基板の表面近傍に浅く形成するだけでよいので、これらのスクライブ方法を用いてスクライブラインを形成することができる。
カッターホイールによるスクライブの場合は機械的なスクライブであるため、どうしても磨耗が発生するが、スクライブは基板の表面近傍だけであり、ダイシングに比べると磨耗量が少なくてよい。また、レーザアブレーションの場合は基板の一部が昇華され飛散することになるが、スクライブラインの形成のため、基板表面近傍に浅くスクライブラインを形成するだけであるので、短時間で済み、アブレーションによる飛散量についても問題にならないほど少なくすることができる。
ここで、他の脆性材料基板とは、ガラス、石英、シリコン等が含まれる。一般に、貼合わせ基板は、サファイア単板に対する分断に比べるとさらに困難であったが、上記手順で分断加工することにより、サファイアの貼合わせ基板についても分断が可能になる。
図1は本発明の分断加工に用いられるサファイア基板Sであり、図1(a)は平面図、図1(b)はA−A’断面図である。このサファイア基板Sは円形基板であり、一部にオリフラFが形成されている。基板の厚さは特に限定されないが、2mm以下で用いられており、0.2mm〜1.2mmで使用されるものが多く、0.4mm〜0.9mmのものが特によく使用されている。
すなわち、スクライブ方向(分断方向)はc軸に垂直な方向と、c軸に平行な方向との2方向とに定められ、そのうちc軸に垂直な方向を平行な方向に優先して切り出し、c軸に平行な方向をそれより後に切り出すようにする。そのため、図2に示すように、サファイア基板Sを、縦方向に6本([1]−1〜[1]−6)、横方向に5本([2]−1〜[2]−5)、この順でスクライブ等を行う。
次に、本発明を用いてサファイア基板Sを分断するときに使用する分断装置の一例について説明する。図4はサファイア基板分断装置の一例を示す概略構成図である。
水平な架台1上に平行に配置された一対のガイドレール3,4に沿って、図4の紙面前後方向(以下Y方向という)に往復移動するスライドテーブル2が設けられている。両ガイドレール3,4の間に、スクリューネジ5がY方向に沿って配置され、このスクリューネジ5に、前記スライドテーブル2に固定されたステー6が螺合されており、スクリューネジ5をモーター(図示外)によって正、逆転することにより、スライドテーブル2がガイドレール3,4に沿ってY方向に往復移動するように形成されている。
また、後述するように、機械的にスクライブラインを形成する方法として用いられる。
カッターホイール18の圧接によるスクライブでは、50mm〜300mm/秒程度のスクライブ速度でカッターホイール18を走査する。
レーザスクライブでは、基板Sの融点より低い温度でレーザビームのビームスポットを走査するとともに、加熱直後を冷媒噴射により急冷することにより、熱応力によりスクライブラインを形成する。なお、レーザスクライブの場合は、例えば、カッターホイール18により基板端に予め初期亀裂(トリガ)を設けておく必要がある。
レーザアブレーション加工によるスクライブでは、基板Sの昇華温度より高い温度で加熱するようにしながらビームスポットを走査しスクライブラインを形成する。レーザスクライブ、レーザアブレーションのいずれの場合も、50mm/秒〜300mm/秒程度のスクライブ速度で走査する。レーザアブレーション加工は、深く加工するほど加工速度は遅くなるが、ここでは、表面近傍を浅くスクライブすればよいので、この程度の加工速度でスクライブ加工を行うことができる。
この第一方向のスクライブ工程により、基板Sの厚さの5%〜30%程度の深さのスクライブラインが形成できればよい。
なお、サファイア基板Sの端部近傍を走査するレーザ出力が大きすぎると、分断不良の原因となる場合があるので、基板Sの端部を走査するときのレーザ出力を基板Sの中央を走査するときのレーザ出力より少し小さく(中央部分を走査するときの75%〜95%出力)すればよい。
第一方向に沿って複数本の分断を行う場合は、1本目について、スクライブライン(1a)の形成および第一方向クラック(1b)の進展を終えると、スライドテーブル2をY方向に移動して同様の処理を繰り返す(図6(c))。
第二方向スクライブ工程のスクライブ方法は、第一方向スクライブ工程で説明した3つの方法(カッターホイールによるスクライブ、レーザスクライブ、レーザアブレーション)のいずれかで行う。第一方向スクライブ工程と同じ方法でもよいし、異なる方法でもよい。異なる方法のときは、例えば、第一方向スクライブ工程をレーザスクライブで行い、第二方向スクライブ工程をカッターホイールによるスクライブで行うようにしてもよい。また、第一方向と第二方向とのスクライブ方法を同じにする場合、スクライブ条件(走査速度等)は同じであっても異なっていてもよい。
なお、スクライブ速度については、第一方向スクライブ工程と同じく50mm/秒〜300mm/秒程度が適当である。また、スクライブラインの深さは第一方向と同じく基板Sの厚さの5%〜30%程度でよい。
また、第二方向は、経験的に第一方向よりも少しスクライブラインが進展しやすい傾向があるので、第一方向よりもレーザ出力を少し抑えてもよい。例えば第一方向の75%〜95%出力で照射するようにしてもよい。
第二方向のクラック進展は、可能であれば、進展する第二方向クラックが一挙に裏面まで到達し、その結果、第二方向に沿って完全に分断されるのが望ましい。基板Sの厚さが十分に厚いときのように一挙に分断させることが困難な場合は、第二方向クラックをできるだけ深く進展させておき、後工程で分断するようにする。
その結果、基板Sは、第一方向と第二方向とに沿って同時に分断されるときは、一挙に格子状に分断されることになる(図6(f))。また、第一方向は完全に分断され、第二方向についてはクラックが深く進展するだけで分断まで至らないときは、基板S’が短冊状に切り出される(図6(f’))。前者の場合は分断加工を終了し、後者の場合は、さらに次の工程に進む(S106)。
第2方向クラックと分断済み第一方向クラックとが交差するクロスカット部分(既に切り出されているので実際には端面となっている)では、2度目の加熱と2度目の冷却が行われることとなり、このクロスカット部分の近傍では、第二方向についてクラック進展が生じる。すなわちクロスカット部分では、2回のクラック進展工程によって第二方向のクラックが深く進展して裏面まで達することとなり、局所的に完全に分断される。さらに局所的に完全分断された部分が起点となって、第二方向に沿って完全に分断されたクラックが広がるようになる。その結果、第二方向の完全な分断が促進されることとなる(図6(h))。このように第二方向に分断する際に、第二方向ではなく第一方向に走査することにより、1回の走査で、1つの短冊状の基板S’内にある複数本の第二方向クラックの分断を同時に行うことができる。
基板主面の面方位がR面である円板状のサファイア基板(直径約15cm、厚さ0.7mm)について、表1に示す各条件で、(1a)刃先スクライブによる第一方向スクライブ工程、(1b)レーザ照射・冷却による第一方向クラック進展工程、(2a)刃先スクライブによる第二方向スクライブ工程、(2b)レーザ照射・冷却による第二方向クラック進展工程を実行した。(1a)及び(2a)の刃先スクライブには、三星ダイヤモンド工業株式会社製高浸透刃先(Penett(登録商標))を使用した。
これまでサファイア基板Sの分断加工について説明したが、サファイア基板が他の脆性材料基板(ガラス基板、シリコン基板等)と貼り合わされている場合も、本発明を適用できる。その場合は、例えば、先にサファイア基板を分断し、その後でガラス基板等他の脆性材料基板を分断すればよい。その際、サファイア基板の分断については、単板の場合と同様の手順で分断する。その後、他の脆性材料基板それぞれに適した通常の分断方法を用いて分断すればよい。例えばガラス基板が貼り合わされているときは通常のスクライブ方法(カッターホイールによるスクライブ、レーザスクライブ)により分断することができる。
7 台座
12 回転テーブル
13 レーザ発信器
16 冷却ノズル
18 カッターホイール
S サファイア基板
F オリフラ
T c軸投影線
Claims (4)
- 基板主面の面方位がR面であるサファイア基板を、主面内で互いに直交する第一方向と第二方向との2方向に分断する方法であって、
(1a) 前記サファイア基板のc軸をR面上に投影した投影線(T)に垂直な方向を第一方向に選択して、前記第一方向に沿ってスクライブラインを形成する第一方向スクライブ工程と、
(1b) 形成された第一方向のスクライブラインに沿ってレーザ照射による加熱および加熱後の冷却を行い、第一方向のスクライブラインを前記サファイア基板の厚さ方向に進展させた第一方向クラックを形成する第一方向クラック進展工程と、
(2a) 第一方向と直交する第二方向に沿ってスクライブラインを形成する第二方向スクライブ工程と、
(2b) 形成された第二方向のスクライブラインに沿ってレーザ照射による加熱および加熱後の冷却を行い、第二方向のスクライブラインを前記サファイア基板の厚さ方向に進展させた第二方向クラックを前記基板の裏面または裏面近傍まで到達するように形成する第二方向クラック進展工程とからなり、
第一方向クラック進展工程で形成される第一方向クラックは前記サファイア基板の裏面に達しないようにしておき、第二方向クラック進展工程のときに、先に形成された第一クラックが進展して裏面まで到達させることにより第一方向に沿って分断、または、第一方向と第二方向とに沿って同時に分断されることを特徴とするサファイア基板の分断方法。 - 前記第二方向クラック進展工程の結果、第二方向クラックが前記サファイア基板の裏面に到達せず、第二方向に沿って分断されていない場合に、前記第二方向クラック進展工程に次いで、
(3) 既に分断された第一方向クラックに沿ってレーザ照射による加熱および加熱後の冷却を行い、第二方向クラックが進展して裏面まで到達することにより第二方向に沿って分断する請求項1に記載のサファイア基板の分断方法。 - 第一方向スクライブ工程、第二方向スクライブ工程は、それぞれカッターホイールによるスクライブ、または、レーザ加熱および加熱後の冷却によるレーザスクライブ、または、前記サファイア基板の昇華温度以上の温度で加熱するレーザアブレーションによるスクライブのいずれかにより行われる請求項1または請求項2のいずれかに記載のサファイア基板の分断方法。
- 前記サファイア基板は他の脆性材料基板との貼合せ基板である請求項1〜請求項3のいずれかに記載のサファイア基板の分断方法。
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