JP5102415B2 - 白金配位化合物を用いる処置による、新形成物を有する患者の治療法 - Google Patents

白金配位化合物を用いる処置による、新形成物を有する患者の治療法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の背景】
癌治療に今日使用されている多くの抗新生物薬の事実上全てがきわめて重大で有害な副作用を有する。これは、癌治療が、急速に分裂している細胞の増殖を妨げる薬物によって通常なされるからである。そのような薬物は癌細胞の増殖を阻害することができるが、それらは生体内で急速に分裂する 正常細胞 の増殖をもほとんど常に阻害する。きわめて急速に分裂する正常組織には、骨髄(これは血球を産生する)、毛胞、および腸管上皮などが含まれる。事実上全ての抗新生物薬の有用性は、これら正常組織にそれらがもたらす傷害によって大きく限定される。
【0002】
本発明は、抗新生物性白金配位化合物(通常の化学療法剤)およびサイクリックGMP(cGMP)特異性ホスホジエステラーゼ(PDE)インヒビターの双方を用いて副作用を軽減するか抗新生物性白金配位化合物の治療効果を高める、新形成物の治療法に関する。現行の療法では、白金配位化合物は(例えば、シスプラチンおよびカルボプラチン)はある種の癌、とくに卵巣癌および睾丸癌の治療に通常は用いられる。
シスプラチン(シス-ジアミンジクロロ白金)は、シスに配位したアンモニア2分子および塩素2原子に囲まれて中心に白金原子を有する重金属錯体である。シスプラチンはまた、商品名のプラチノールでも知られている。
シスプラチンは、既に適切な手術や放射線療法を受けた患者において、他の化学療法剤と組合わせて転移性睾丸腫瘍および転移性卵巣腫瘍のための副次療法として通常は用いられる。シスプラチンはまた、手術や放射線療法に適さない変遷細胞膀胱癌の患者の治療に単一薬剤として用いられる。シスプラチンは、上皮悪性腫瘍、頭および頸部、食道および肺の癌の治療に用いられてきた。
【0003】
シスプラチンは、拡散によって細胞に進入するようである。シスプラチンの塩素原子は、水やスルフヒドリル試薬などの求核剤による化学置換の対象となる。活性化された薬剤は、核酸およびタンパク質と反応する。白金配位化合物は、DNAと反応することができ、鎖内および鎖間の双方の架橋を形成し、これはDNA複製およびRNA転写を阻害して、切断および誤コーディングを起こし得る。
シスプラチンからの白金はまた、種々のアルブミン、トランスフェリンおよびガンマグロブリンを含む血漿タンパク質に結合するようになるが、これは多くの細胞機能に支障をきたし得る。
シスプラチンの主要な投与量制限的毒性は、尿細管障害を伴なう蓄積性腎不全である。腎臓毒性は、繰り返しのシスプラチン治療によってより長期でより重症になる。電解質障害が、腎臓障害の二次的作用としてしばしば見られる。水分補給および利尿促進が腎臓毒性を軽減するために用いられるが、これらの処置が行われても腎臓障害がしばしば起きる。
【0004】
骨髄抑制はシスプラチン治療の別の投与量制限的毒性であるが、これは白血球および血小板レベルの減少で特徴づけられる。白血球は感染を防御する血球であり、血小板は正常な血液凝固に必要である。貧血は、シスプラチンによる治療のまた別の副作用である。
耳における毒性反応、すなわち聴器毒性は、シスプラチン治療の別の影響である。これは、耳鳴、すなわち耳内の鈴、ベル、口笛などの騒音、高周波音の聴覚障害、そして時には完全な聴覚障害として見られる。シスプラチン関連の聴器毒性が可逆性であるかどうかは不明である。
シスプラチンの他の副作用としては、吐き気や嘔吐などの胃腸管への作用があり、これはシスプラチンで治療を受けたほとんど全患者において起きる。アナフィラキシー様の反応は、薬剤投与後まもなく起きることがある。
シスプラチンは、白金配位化合物のファミリーの一つである。シス白金の誘導体は多数あって、カルボプラチンおよびオキサリプラチンがこれに含まれる。カルボプラチン(パラプラチン)は、シスプラチン同様、鎖間DNA架橋を生じさせると考えられる。これは現在、化学療法後に再発した卵巣癌の患者の治療に用いられる。臨床的に、カルボプラチンの腎臓毒性はシスプラチンよりも少なく、カルボプラチンによる投与量制限的毒性は骨髄抑制であって、これは主として血液中の循環血小板が減少する血小板減少症として表れる。
【0005】
本発明はまた、抗新生物性cGMP特異性ホスホジエステラーゼインヒビターの、哺乳類の前癌性および癌性病変の治療および予防に使用される白金配位化合物との組み合わせ使用をもたらす方法に関する。
新規の作用機序が公に発表されると、競争者らは、二次標的に作用し得る化合物(例えば、COX標的を攻撃するスリンダク)を有する競争者でさえも、彼らの化合物が全体または部分的に同一新規機序で作用すると医療界に示唆することによって、開発者のおかげで利益を得ることができる。そのような行為によるそのような競争者への利益は、薬品開発事業に携わる当業者にはきわめて明白である。
【0006】
【発明の概要】
本発明は、白金配位化合物(例えばシスプラチン)およびサイクリックGMP特異性ホスホジエステラーゼ (PDE) インヒビターの双方での患者治療に関与する癌治療の改善された方法に関する。本発明に有用な特異的PDE インヒビターは、後記するPDE5 および PDE2型の双方を阻害する化合物である。ここに開示する新規型の PDE2 は、Liuらによって共係属中 米国 特許出願シリアル No. 09/173,375「A Novel Cyclic GMP-Specific Phosphodiesterase And Methods For Using Same In Pharmaceutical Screening For Identifying Compounds For Inhibition Of Neoplastic Lesions(新規サイクリック GMP特異性ホスホジエステラーゼおよび新生物病変の阻害のための化合物同定のための薬物スクリーニングにおけるその使用方法)」に詳細に記載されている。(一般的PDE の背景に関しては、Beavo, J. A. (1995) Cyclic nucleotide phsphodiesterases: functional implications of multiple isoforms (サイクリックヌクレオチドホスホジエステラーゼ:複数イソフォームの機能的関与)Physiological Reviews 75:725-747; ウェブサイト <http://weber.u.washington.edu/〜pde/pde.html> (1998年11月) を参照されたい。)
【0007】
本発明において、cGMP特異性 PDE インヒビターは、抗新生物性白金配位化合物と二つのやり方で組み合わせて用いることができる。第一の方法は低投薬量を用いる方法で、シスプラチン誘導体の治療効果を維持して副作用を軽減しながら、その従来推奨投与量の範囲を減らすものである。第二の方法はより高い投与量を用いる方法で、シスプラチン誘導体の従来推奨投与量の範囲を採用して、その副作用を増強せずにその活性を改善するものである。
それぞれの方法で、シスプラチン誘導体は適切なcGMP特異性ホスホジエステラーゼインヒビターと同時にまたはそれに続いて投与される。
低投与量による方法では、シスプラチン誘導体は約75 mg/m2 以下の薬量で投与される。高投与量による方法では、シスプラチン誘導体は約75 ないし 100 mg/m2の薬量で投与される。
本発明はまた、癌および前癌性病変の治療のためのcGMP特異性PDE インヒビターのシスプラチン誘導体との組み合わせ使用を記載した記述物 を合わせて提供する包装された薬剤組成物に関する。
【0008】
【好ましい実施態様の詳細な説明】
以下により詳細に検討するように、cGMP特異性PDEの阻害は、新生物細胞においてアポトーシスを誘発し得る。シスプラチン誘導体は、新形成物、とくに卵巣癌および精巣癌の治療に現在用いられる。これら二つのタイプの療法を組み合わせることによって、いずれも個々では生じ得ない効果を生み出すことができる。
【0009】
I. 総論
上記説明したように、本発明は、ここに記述する系路によってシスプラチン誘導体と協同して作用する特定クラスの抗新生物性cGMP PDE インヒビターの使用をもたらす方法である。この方法は、ここに記載する一つ以上の特性を有するそのようなインヒビターを含む薬剤組成物を得ること、医師および患者にこれら特性に関して情報提供すること、該薬剤組成物を医師および治療を要する患者に提供すること、そして該薬剤組成物をシスプラチン治療と合わせて患者に与えることを含む。本発明はまた、シスプラチン誘導体を含む薬剤組成物を得ること、該薬剤組成物を医師および治療を要する患者に提供すること、そして該薬剤組成物を抗新生物cGMP PDEインヒビターと合わせて患者に与えることを含む。
「医師および患者に情報提供する」という表現で我々の意味するところは、全範囲の直接的または間接的医療教育的活動であって、それによって薬剤は(基本的には)医師に、それによって患者に売られる。単なる例であるが、例えば、製造者が要求される(以下に記述するタイプの)規定された研究を実施して、彼の化合物がここに記述される特性を有するかどうかを確認して、次いで、これら研究の結果を一つ以上の出版物に公表すること、または、そのような情報を薬剤に付する包装挿入物に含めることなどがあげられる。あるいはまた、製薬会社がそのような規定された研究を第三者によってなされるように支援または開始することができ、そして、そのような第三者の研究結果が公表される。
【0010】
次いで、これら報告は製薬会社によって医療教育および販売活動において使用される。例えば、公表報告物のコピーは会社またはその代行者によって集会またはオフィスで医師に直接配布され、薬剤がその使用の正当性を保証する特性を確かに有することを医師に納得させることができる。あるいはまた、これら報告物は会社またはその代行者によって直接または間接的にインターネットで発表することができる。また、会社は継続的医療教育担体を準備(または既に準備されたものを利用)して、そのようなデータを医師に提供するイベントを組織する。これらおよび同様の活動努力は、医師、そして患者への情報提供のために製薬会社によって用いられ、それによって、そのような薬剤の処方者および使用者は、製造者によって販売される薬剤がここに記述される特性の一つ以上を有することを理解するに至る。
【0011】
「包装薬剤」という表現で我々の意味するものは、薬剤(抗新生物cGMP PDEインヒビターまたはシスプラチン誘導体のいずれかで患者に投与されるように調剤されたもの)を、瓶またはブリスター包装(これは次いで他の瓶やブリスター包装とともに箱に入れても入れなくてもよい)、IV(点滴用)袋、エアゾル吸入器、注射器、軟膏用チューブなどに包装したものである。「記述物」とは、ここに記載の特性の一つ以上を有することを特徴とする該化合物の記述、および本発明の教示による使用法を通常は含むものである。一つの、しかしそれには制限されないタイプの記述物としては包装挿入物があるが、パンフレットなどの他のタイプもある。記述物としてはまた(しかし、これには限定されないが)、電子形式のものも含まれる。
包装物のそのような記述物は、容器の外側に付したり(取り外し可、ないしは他のやり方で)、または容器自体の内側(例えば、錠剤の場合は錠剤を入れた瓶の内部に)に供することができる。あるいはまた、瓶詰め薬剤が輸送容器(例えば、箱)中に複数個の瓶で包装される場合は、記述物の一つ以上のコピーを外箱内に配置することができる。瓶詰め薬剤が個々の箱に入れられる場合は、記述物は箱の内側または箱の上に配置することができる。
【0012】
II. 新規のcGMP特異性ホスホジエステラーゼおよび 新生物細胞からのPDE2
A. 総論
本発明に含まれる系路の一局面は、環境によって、新規構造を示すPDE2 および従来のものの阻害である。 PDE5の阻害に加えて、アポトーシス誘発性PDE5阻害剤はこの PDE2様酵素を阻害し、アポトーシスを誘導しないPDE5 阻害剤がこのはPDE2様酵素を阻害することは見出されていない。
B. 新規 PDE 構造物の分離
ここに記述する系路の一局面において、分離された cGMP特異性ホスホジエステラーゼ(PDE2の新規構造物と思われる)は、American Tissue Type Collection (Rockville、Maryland、U.S.A)から入手可能な一般にSW480と称されるヒト癌腫細胞系から最初に調製された。SW480 は、中程度に分化した上皮腺癌に由来するヒト結腸癌細胞系である。以下に述べるように、同様の構造物はまた、乳房(すなわち、HTB-26 細胞系)および前立腺(すなわち、LNCAP 細胞系)の新形成物から分離されている。
【0013】
「分離された」という表現で我々の意味するところは(当業者に理解されるように)、新生物細胞からの分離だけではなく、組換法(例えば細胞または他の非ヒト宿主ベクター細胞系中で発現される)によって作出されることも含む。 しかし、我々は現在、ヒト新生物細胞系から分離された標的タンパク質は、それが新生物細胞中の天然の構造物の一つと同一、さもなければより近い構成(例えば構造または構造的特徴)を有すると考えることから、ヒト新生物細胞系からの分離が好ましいと考える。この構造は、インビボで標的細胞を阻害するであろう抗新生物化合物の選択において助けとなる。
【0014】
新規PDE活性は、SW480結腸癌細胞系において最初に見出された。SW480から新規ホスホジエステラーゼを分離するために、約4億個のSW480 細胞をコンフルエントになるまで増殖させて、150 cm2 の組織培養皿から掻きとって、10 mLの冷PBSで2回洗浄後に、遠心分離によってペレットとした。細胞を均質化用緩衝液(20 mL TMPI-EDTA-トリトン pH 7.4: 20 mM トリス-HOAc、5 mM MgAc2、0.1 mM EDTA、0.8% トリトン-100、10μM ベンズアミジン、10μM TLCK、2000 U/mL アプロチニン、2 μM ロイペプチン、2 μM ペプスタチン A)に再懸濁させて、ポリトロン・ティッシュマイザー(tissumizer)を用いて氷浴上で均質化処理した(3回、 20秒/パルス)。均質化物を、ベックマンL8超遠心機で 105,000 g 、4℃で60 分間遠心分離して、上清をTMPI-EDTA (60 mL) で希釈して、TMPI-EDTA 緩衝液で予め平衡にしておいた10-mL DEAEトリスアクリル M カラムに供した。そのカラムを60 mL の TM-EDTAで洗浄して、TM-EDTA 中のNaOAC (0-0.5 M) の120 mL直線勾配を用いて、流速0.95 mL/秒、1.4 mL/フラクションで、PDE 活性を溶出した。80フラクションを集めて、直ちに(すなわち、数分内)cGMP 加水分解についてアッセイした。図1は、カラムの溶出プロフィールを示すが、cGMP PDE活性の二つの最初のピークAおよびBが見られ、これらはそれぞれNaOAC の40-50 mM および70-80 mMで溶出された。以下に説明するように、ピークAはPDE5であり、一方のピークBは新規のcGMP特異性ホスホジエステラーゼ活性である。
【0015】
各フラクションのサイクリックヌクレオチドPDE活性を、以下にさらに記述するように、Thompsonら(Thompson W.J., et al., Adv. Cyclonucreotide Res. 10: 69-92, 1979)の改変二ステップ放射線同位元素法を用いて決定した。反応は トリス-HCl (40mM、pH 8.0)、 MgCl2 (5mM)、2-メルカプトエタノール(4 mM)、ウシ血清アルブミン (30 μg)、cGMP (0.25μμM-5μM) 、さらにコンスタント・トリチウム化基質 (200,000 cpm)を含む 400 μl 中で行った。 インキュベーション時間は15% 以下の加水分解となるように調整した。混合物を30℃でインキュベートした後、45秒間煮沸して反応を止めた。次いで、混合物を冷却して、ヘビ毒(50μg)を加えて、混合物を30℃で10分間インキュベートした。MeOH (1 mL) を加えて反応を止め、混合物を陰イオン交換カラム (Dowex 1-X8、0.25 mL 樹脂)に移した。溶離液に再び1mL のMeOHを加えて、樹脂に供し、6 mL のシンチレーション液を添加した後、トリチウム活性をBeckman LS 6500を用いて1分間測定した。
【0016】
ピークA および B のcGMP 加水分解活性をさらに分画するために、オリジナルの80フラクションの15 から 30 までをDEAEトリスアクリル M カラムに再び供して、TM-EDTA中のNaOAC (0-0.5 M)の直線勾配を用いて溶出した。フラクションを、再び直ちにcGMP 加水分解について(上記の方法で0.2、 2、5μM 基質を用いて)アッセイした。その結果をグラフにして図2に示す。図2に示したピークBでは、ピークAと比較した場合、cGMP の基質濃度増加を上げると活性がめざましく促進されることが注目される。この知見はPDE2で見られるものと一致するが、図2で特徴付けられる酵素がcGMP特異性(下記を参照)であるという事実はそれが文献で報告された典型PDE 2と比べると新規の構造を有することを示唆している。ピークA活性は、高親和性触媒部位の明らかな基質飽和を示す。
【0017】
C. SW480からの典型PDE2 の分離
酵素が典型PDE2活性(すなわちcGMP特異性ではないがcGMP作用性)を有するようにピークBを SW480から分離できる、二つの方法が見出された。第一の方法では、SW480を、150 cm2 の組織培養フラスコの代わりに850 cm2 のコーニングローラーボトル中で増殖させた。SW480 を、200 mL のRPMI 1640、2 mM グルタミンおよび25 mM HEPESを含む各ローラーボトル中で0.5 rpmで 回転して増殖させた。細胞を次の方法で集めた。
PBS 培地を37℃まで少なくとも15分間加温した。200 mL の5% FBS/RPMI 1640 完全培地を調製して、5 mL のグルタミンを加えた。5 mL の抗生物質/抗真菌物質をさらに加えた。
【0018】
70 mL の PBS 溶液を10 mL の 4X パンクレアチンに加えた。 混合物を室温に保持した。培地を除去して、フラスコを底が覆われているのを確認しながら4 mL の PBSでフラスコをリンスした。ピペットを用いて全溶液を除去した。4 mL の 希釈パンクレアチンをフラスコに加えて、その底を覆うようにフラスコをさっと振った。フラスコを37℃で 8-10 分間インキュベートした。インキュベーションの後、フラスコを倒立顕微鏡下で速やかに調べて、全細胞が円くなったのを確認した。フラスコの側面を注意しながら数回叩いて、細胞の剥離を容易にした。10 mL の冷完全培地をフラスコに加えて、パンクレアチンタンパク分解を止めた。溶液を底を旋回させるように動かして、細胞を集めた。培地を25 mLピペットを用いて除去して、細胞を氷上の50 mL 遠沈管に移した。遠沈管を臨床用遠心分離機で1000 rpm 、4℃で5 分間回転させて、細胞をペレットとして得た。上清を注ぎ出して、各ペレットを液体窒素上で15 秒間凍結させた。集めた細胞は -70℃のフリーザー中に保存することができる。
【0019】
集めたSW480細胞からのPDEを、FPLC 法を用いて分離した。ファルマシアAKTA FPLC を用いて、18 mL DEAE トリスアクリルM カラム上でのサンプル供給および溶出を制御した。約6億個のSW480細胞をプロフィールに用いた。 細胞を均質化用緩衝液 (20 mL TMPI-EDTA-トリトン pH 7.4: 20 mM トリス-HOAc、5 mM MgAc2、 0.1 mM EDTA、0.8% トリトン-100、10μM ベンズアミジン、10μM TLCK、2000 U/mL アプロチニン、2 μM ロイペプチン、2 μM ペプスタチンA)に再懸濁させた後、サンプルを手動で均質化した。FPLC 緩衝液A は、8 mM TRIS-酢酸塩、 5 mM Mg 酢酸塩、0.1 mM EDTA、pH 7.5 を用い、緩衝液 B は、8 mM TRIS-酢酸塩、5 mM Mg 酢酸塩、0.1 mM EDTA、1 M Na 酢酸塩、pH 7.5を用いた。上清を1 mL/分の速度でカラムに供し、次いで、60 mL の緩衝液 A で1 mL/分で洗浄した。勾配は、 0-15% 緩衝液 B 60 mLから15-50% 緩衝液 B 60 mLおよび50-100% 緩衝液 B 16 mLで行った。勾配の間、1.5 mLずつのフラクションを集めた。
得られたプロフィール(図26)は、上記で得られた新規 PDE 活性のプロフィール(例えば、図1を参照)と同様であった。ただし、このようにして得られたピーク B は、5 μM cGMP によって2-3倍活性化され得る0.25 μM基質でcAMP 加水分解活性を示した。
【0020】
SW480 からの典型PDE2の分離に使用される第二の方法は、上記した非-FPLC DEAE カラム法 (セクションIIBを参照)を用いるものであるが、緩衝液は30% エチレングリコール、10 mM TLCK および 3.6 mM β-メルカプトエタノールを含むように改変された。これら試薬の緩衝液への添加によって溶出プロフィール(図 25を参照) に低から高への酢酸ナトリウムの移動が生じ、ピークA は40 から150 mMに、ピークB は75から 280 mM に、そしてピークC は 200 から500 mM Na 酢酸塩濃度に、それぞれ移動した(図 25を参照)。 図25のピークB を、2 μM cAMP 基質を用いてアッセイした結果、5 μM cGMPによる2倍の活性化が示された (図 26を参照)。 選択的 PDE2 インヒビター EHNA は、ピークBにおける2 μM cGMP PDE 活性を IC50 1.6 μM で阻害し、ピークBにおける 2.0 μM cAMP PDE 活性を3.8 μMの IC50で阻害した(さらに、10 μM ロリプラムの添加で2.5 μMの IC50で阻害した)。
【0021】
D. PDE ピークA のcGMP特異性および新規ピーク B 活性
セクションIIB からのDEAE カラムからの各フラクションもまた、Ca++またはCa++-CaM および/または EGTAの存在下または非存在下でのcGMP加水分解活性 (0.25μM cGMP)、および5μM cGMPの存在下または非存在下でのcAMP (0.25μM cAMP)加水分解活性についてアッセイした。PDEピークAおよびピークB(フラクション5-22、図1を参照)のいずれもcAMP を有意に加水分解せず、これによっていずれもPDEの典型cAMP-加水分解 ファミリー(すなわち PDE 1、2、3)の活性を有しないことが確立された。
Ca++ (カルモジュリンを含むあるいは含まない) は、ピークA または B のいずれのcAMP またはcGMP加水分解活性のいずれをも活性化せず、cGMP はcAMP 加水分解を活性化も阻害もしなかった。このような結果は、ピークA および B は cGMP特異性 PDE 活性を構成するが、典型すなわち既知のPDE1、PDE2、PDE3 または PDE4 活性は構成しないことを証明する。
新規のPDE ピークBに関して、以下に検討するように、サイクリックGMPは酵素の cGMP 加水分解活性を活性化したが、いずれのcAMP 加水分解活性も活性化しなかった(上記 セクション IICからのピークBと対照的)。これによって、新規 PDE ピーク B、すなわち本発明の新規ホスホジエステラーゼは、cGMP-刺激 cAMP 加水分解 (「cGS」)ではなく、公知のPDE2はcGMP および cAMPの双方を加水分解することから典型すなわち既知PDE2 ファミリー活性にも属しない。
【0022】
E. ピーク A は典型PDE5であるが、新規ピークBすなわち新cGMP特異性 PDEはそうではない
PDEイソフォームを特徴付けするために、動力学的挙動および基質優先性を評価しなければならない。
ピークAは、典型的な「PDE5」特性を示した。例えば、cGMPについての酵素のKm は1.07 μMで、Vmax は0.16 nmol/分/mgであった。加えて、以下に検討するように、ザプリナスト(IC50=1.37μM) および E4021 (IC50=3 nM) およびシルデナフィルがピークAの活性を阻害した。さらに、ザプリナストはピークAのcGMP 加水分解活性について阻害を示し、これは文献に報告された結果と一致した。
セクションIIBからのPDE ピーク B は、PDE ピーク A と比較してかなり異なる動力学的性質を示した。例えば、ピークAの イーディー・ホフステー- プロットにおいて、サイクリック GMP 加水分解は基質濃度の増加につれて負の勾配となる単一直線を示し、これはミカエリス・メンテンの動力学的挙動を示すものである。しかし、ピークBは、cAMPの非存在下で cGMP加水分解について新規の性質を示す。すなわち、イーディー・ホフステー- プロットすると cGMP 基質増加とともに減少勾配 (見かけの Km = 8.4)、次いで増加勾配 (Km < 1)が得られる (図3を参照)。したがって、これはcGMPについてのピークBのマイクロモル以下の親和性を確立する(すなわちKm < 1で)。
【0023】
濃度増加するcGMP基質の存在下での増加したcGMP 加水分解活性は、cGMP基質存在下での動力学的研究(すなわち図3)および正の協同的動力学的挙動と一致した。これは、cAMP 加水分解を除外し、この新酵素が既に同定されたPDE5であることを考慮から外すための第二のDEAE 分離後に、PDE ピーク B の存在下でcGMP 濃度0.25 μM、2 μM および5 μM を比較することによって見出された。図2で示されるように、より高濃度のcGMP は、PDE ピークB で不均衡により著しいcGMP加水分解を誘起した。
これらの観察結果は、ピークB酵素に結合しているcGMPが酵素内に構造変化を起こさせることを示唆する。これによって新生物細胞からの天然酵素の使用の有利性が確認されるが、本発明は上記に記載の特性を有する天然型の酵素には限定されない。
【0024】
F. ピークAと比較したPDE ピーク Bのザプリナスト-およびシルデナフィル-非感受性、および他の PDEインヒビターに及ぼすそれらの影響
異なる PDE インヒビターを、0.01 から 100 μM の12の薬剤濃度および0.25 μM 3H-cGMPの基質濃度を用いて調べた。IC50 値を、可変勾配、プリズム 2.01 (GraphPad)を用いるS字曲線適合を用いて算出した。結果を表1に示す。化合物E4021およびザプリナストはピークA(高親和性で)を阻害したが、ピークB(セクションIIB)の新規PDE 活性に対して算出された IC50 値は有意に増加する (>50 倍)。これによって、ピークAはPDE5であることが確認される。これらデータはさらに、本発明の新規PDE 活性が、全ての実用目的で、ザプリナスト非感受性およびE4021非感受性であることを示す。
【0025】
【表1】
ピークAおよびセクションIA ピークBに対する、PDE インヒビターの比較
(cGMP 加水分解)
Figure 0005102415
【0026】
対照的に、硫化スリンダクおよび化合物Eは、ピークAおよびBホスホジエステラーゼの双方を同じ効力で拮抗的に阻害した(PDE ピーク Aの IC50=0.38 μM、PDE ピークB のIC50=0.37 μM)。
新形成物の治療およびそのような治療のための有用な化合物の選択のための有意性が、ピークAおよびBの双方が硫化スリンダクおよび化合物Eに感受性であるのに対してピークB(いずれの型でも)がザプリナスト非感受性であるという事実に見出される。我々は、ザプリナスト、E4021およびシルデナフィルを試験して、これらがアポトーシスを誘発するか、新生物細胞の増殖を阻害するかを確認した。同じ試験を化合物Eについて行った。以下に説明するように、ザプリナストはそれ自体では有意なアポトーシス誘発性や増殖阻害的性質を有しないが、硫酸スリンダクおよび化合物Eは、全くその逆である。すなわち、ある化合物のPDE ピーク AおよびB の双方に対する阻害能は、新生物細胞中でのそのアポトーシス誘発能と相関し、一方、化合物(例えば、ザプリナスト)がPDEピークAへの特異性のみを有する場合はその化合物はそれだけではアポトーシスを誘発しないであろう。
【0027】
G. cGMP依存性プロテインキナーゼ Gとのインキュベーションに対する、新規 PDE ピークB の非感受性
PDE ピーク A と新規ピーク B (セクション IIB)とのさらなる違いが、種々の濃度のcGMP-依存性プロテインキナーゼG (これは典型PDE5を燐酸化する)の存在下でのそれぞれの cGMP加水分解活性に見られた。詳細には、 セクションIIBからのピークA およびピーク B フラクションを、種々の濃度のプロテインキナーゼG とともに30℃で30 分間インキュベートした。燐酸化を試みた後で、両ピークのサイクリック GMP 加水分解 をアッセイした。 既に公開された PDE5に関する情報と一致して、ピーク Aはプロテインキナーゼ G インキュベーションに応答してcGMP 加水分解活性の増加を示し、これはピーク A が燐酸化されたことを示した。しかし、ピーク B は変わらなかった (すなわち燐酸化 されず、cGMP-依存性 プロテインキナーゼ G との インキュベーションに非感受性だった) 。これらの データは、ピーク A が公知のPDE5 ファミリーと一致するイソフォーム であることおよび セクション IIBからのピーク Bが 新規 cGMP特異性 PDE 活性であることと一致する。
【0028】
H. 前立腺癌および乳癌細胞系における新規 ピーク B
新規 ピーク B はまた、二つの他の 新生物細胞系、すなわち乳癌 細胞系の HTB-26および 前立腺癌細胞系のLnCAPから、SW480からのその分離に用いた上記のものと同様の方法で分離される。プロトコールは種々の点で変更された。異なる細胞系の比較ができるようなより高い再現性を得るために、ファルマシア AKTA FPLC を用いて、18 mL DEAE トリスアクリルM カラム上でのサンプル供給および溶出を制御した。 SW840 を同じ方法で複数回処理して、ピーク Bのレファランスを得た。2-4億個のSW480細胞 をプロフィールに用いた。7千万個のLnCAP細胞 を プロフィール (図 22 および 23を参照)に用い、別の 実験 では3.2千万個のHTB-26細胞 をプロフィール(図 20 および 21を参照)に用いた。細胞 を均質化用緩衝液に再懸濁させた後、サンプルを手動で均質化した。FPLC 緩衝液A は、8 mM TRIS-酢酸塩、 5 mM Mg 酢酸塩, 0.1 mM EDTA、pH 7.5 を用い、緩衝液 B は、8 mM TRIS-酢酸塩、5 mM Mg 酢酸塩、0.1 mM EDTA、1 M Na 酢酸塩、pH 7.5を用いた。上清を1 mL/分の速度でカラムに供し、次いで、60 mL の緩衝液 A で1 mL/分で洗浄した。
【0029】
勾配は、 0-15% 緩衝液 B 60 mLから15-50% 緩衝液 B 60 mLおよび50-100% 緩衝液 B 16 mLで行った。勾配の間、1.5 mLずつのフラクションを集めた。cGMP PDE活性のピークは400 mM Na 酢酸塩でフラクション65 付近で溶出された(図20-23を参照)。この活性は0.25 μM cGMP で測定された(cGMPに関してマイクロモル以下の親和性を示す)。PDE4特異性薬剤であるロリプラムは、cAMP PDE 活性のほとんどを阻害し(すなわち cAMP 活性はPDE4によった)、これはピーク Bの cGMP 活性がcAMPに優先して cGMPに特異性であったことを示す。三つのピーク B (SW480、HTB-26、および LnCAPからの) のいずれもカルシウム/カルモジュリンとの反応を示さず、全ては100 nM E4021、ザプリナストのような特異的 PDE5特異性 インヒビター、に抵抗性であった(図 20 および22を参照)。ピーク Bはまた、基質を 0.25 μM から5μM cGMPに増加したときに活性の劇的な増加を示した (正の協同的動力学を示唆する) (図 21 および 23を参照)。また、三つのピークは、エキシスリンドおよび以下の化合物 Iによるものと同様な阻害を示す。
【0030】
III. プロテインキナーゼ G および β-カテニンの関与 概論
一連の 実験行って、エキシスリンドのような抗新生物cGMP特異性 PDE インヒビター が、腺腫性ポリープ症コリ遺伝子(「APC 遺伝子」)欠損あるいはβ-カテニンをコードする遺伝子の欠損のいずれかを含む新生物細胞中のcGMP依存性 プロテインキナーゼ G (「PKG」) に及ぼす影響は、あるとすれば、何であるかが確認された。 以下に説明するように、そのようなインヒビターは、そのような新生物細胞中でPKG 活性の増加を起こす。その活性増加は、どちらかの欠損を含む細胞中のPKG の活性化の増加だけでなく、APC欠損を含む細胞のPKG 発現の増加にもよる。加えて、いずれかの欠損を有する新生物細胞からのPKG が免疫沈降するとき、それはβ-カテニンと共に沈殿する。
β-カテニンは、 APC 腫瘍抑制遺伝子中の突然変異を含む新形成物を有する患者でそれが高レベルであることが研究者によって見出されたことから、種々の異なる癌と関係づけられてきた。出生時にこの遺伝子に突然変異を有するヒトでは、結腸の内壁に何千という小腫瘍ができることがしばしばある。それが正しく機能する場合は、APC 遺伝子 は、β-カテニンと結合してそれを制御すると考えられている正常APC タンパク質をコードする。したがって、APC 遺伝子 欠損または β-カテニン欠損のいずれかを含む新生物細胞中のPKG がβ-カテニンと結合しているという発見は、癌につながる重要な細胞性系路の一つにおいてPKG を確かに強く関係づける。加えて、cGMP特異性 阻害と SAAND (selective apoptotic anti-neoplastic drugs、選択的アポトーシス性抗新生物薬物として知られている新しいクラスの抗新生物剤) による治療時のPKG 増加との関係は、cGMP をそのような細胞における PKG/ β-カテニン/APC 欠損と結びつける。
【0031】
後者の結びつきは、APC 欠損 または β-カテニン 欠損を含む新生物細胞がSAANDに暴露された場合に β-カテニン自体が減少するという観察によってさらに支持される。 この β-カテニンの減少はPKG自体が引き金となる。 PKG はβ-カテニンを燐酸化するが、これは本発明に関係する別の新規観察である。β-カテニンの燐酸化によって、β-カテニンはユビキチン-プロテアゾーム系によって分解されるようになる。
このPKGによるβ-カテニンの燐酸化 は、それによってAPCおよびβ-カテニンの突然変異の影響が妨げられることから新生物細胞において重要である。 突然変異したAPC タンパク質 は、突然変異 APC タンパク質と結合したβ-カテニンの結合に影響し、この結合の変化は GSK-3bキナーゼによるβ-カテニンの燐酸化を妨げると今まで考えられてきた。突然変異 β-カテニンの場合、PKG 活性の増加もまた、突然変異 β-カテニンの 燐酸化をもたらす。新形成物中の PKG 活性 は cGMP-PDE阻害とともに、いずれかのタイプの 突然変異を含む新生物細胞においてβ-カテニンの燐酸化をもたらす (その分解に導く) 。
要約すれば、これらの結果は、さらなる SAAND 候補 化合物の確認のための新たな薬剤スクリーニング法をもたらすだけでなく、新形成物への治療的アプローチにおけるcGMP特異性 PDE 阻害の役割を支持する。この観察はまた、上記に説明したように、APC 欠損性および非欠損性の両新形成物を治療し得ることから、予想外に広範囲の 新形成物 をSAANDが阻害できることを説明し得る。
【0032】
IV. PDE を用いての薬剤組成物のスクリーニング
A. 概論
本発明の新規 PDE および PDE2 は、PDE5とともにあるいはそれなしで、新形成物の治療または予防に使用が可能で、かつ重大な副作用で特徴づけられない化合物を確認するのに有用である。
癌および前癌は、異常な細胞増殖を伴なう疾患と考えられる。細胞増殖には、多くの異なる要因が関わる。一つの要因は、いかに速く細胞が増えるかであり、一つはいかに速く細胞が死ぬかということが関わる。細胞は、環境的刺激のタイプによって壊死またはアポトーシスのいずれかによって死ぬ。細胞分化もまた、腫瘍増殖動力学に影響する別の要因である。細胞増殖の多くの要因のどれが化合物によって影響されるかを見出すことは、薬物療法のための適切な標的の発見に重要である。この技術に基づくスクリーニングアッセイは他の試験と組み合わせて、増殖阻害および親アポトーシス活性を有する 化合物 を選択することができる。
【0033】
本発明は、いくつかの重要な発見の成果である。第一に本発明者らは、望ましい腫瘍細胞増殖インヒビターはアポトーシスによる癌細胞の若死を誘発することを発見した (Piazza, G.A., et al., Cancer Research, 55(14), 3110-16, 1995)。 第二に、本発明者の何人かは、実質的なCOX阻害なしでアポトーシスを選択的に誘発する化合物はまた、PDE5を阻害することを予期せずに発見した。とくに、そして先導的科学研究結果に反して、新生物病変治療のための望ましい化合物 が PDE5(EC 3.1.4.17)を阻害する。PDE5 は、ホスホジエステラーゼの少なくとも10の 遺伝子ファミリーの一つである。PDEの他のファミリーがcAMPを選択的に分解/加水分解してcGMP を分解/加水分解しないかcGMP および cAMP の双方を非選択的に分解するのに対して、PDE5 および本発明の 新規 PDE はサイクリックGMPを選択的に分解してcAMPを分解しないという固有な特性を有する。好ましくは、新形成物の治療に用いられる望ましい化合物 は、非選択的またはcAMP 分解 ホスホジエステラーゼ 型を実質的に阻害しない。
【0034】
B. COX スクリーニング
本発明の好ましい実施態様は、任意の化合物のシクロオキシゲナーゼ活性の測定および化合物の cGMP特異性 PDE 阻害活性 の測定を含む。試験化合物は直接的あるいは間接的な新生物病変治療能に関して評価され、それは新生物病変治療に有用な既知化合物の活性と比較してなされる。胃炎症を起こさずに新生物病変治療に有効であることが公知の標準化合物 は、5フルオロ-2-メチル-1-(p-メチルスルホニルベンジリデン)-3-インデニル酢酸 (「エキシスリンド」)である。比較目的のための他の有用な化合物 としては、COXを阻害することが公知の、例えば、インドメタシンおよびスリンダクの硫化物代謝物である5フルオロ-2-メチル-1-(p-メチルスルフィニルベンジリデン)-3-インデニル酢酸 (「硫化スリンダク」)があげられる。 比較目的のための他の有用な 化合物 としては、 cGMP特異性 PDEを阻害することが知られているもの、例えば1-(3-クロロアニリノ)-4-フェニフタラジン(「MY5445」)があげられる。
【0035】
ここで用いる用語「前癌性病変」には、形成異常を含む異常な新生物性の組織変化で代表される症候群を含む。その例としては、結腸、乳房、前立腺または肺の組織における形成異常性増殖、または皮膚悪性黒色腫の前兆である形成異常性母斑症候群などの状態があげられる。例としてはまた、形成異常性母斑症候群に加えて、ポリープ症症候群、結腸ポリープ、子宮頸部の前癌性病変 (すなわち、子宮頸部形成異常)、食道、肺、前立腺形成異常、前立腺内部新形成物、乳房および/または皮膚および関連の状態 (例えば化学線角皮症)などが含まれ、これらの病変は臨床的な確認の有無を問わない。
ここで用いる用語「癌腫」または「癌」は、癌性である病変を意味する。例としては、 悪性黒色腫、乳癌、 前立腺癌 および結腸癌が含まれる。ここで用いる「新形成物」および「新生物」とは、癌性および前癌性病変の双方を意味する。ここで用いる略語は、PGはプロスタグランジン、PS はプロスタグランジンシンテターゼ、PGE2 はプロスタグランジンE2、PDE は ホスホジエステラーゼ、COX はシクロオキシゲナーゼ、はサイクリック ヌクレオチド、 RIAは ラジオイムノアッセイをそれぞれ意味する。
【0036】
化合物によるCOX 阻害は、二つの方法のいずれかで測定できる。一つの方法は、スクリ―ニングされる化合物への曝露の後で、未処理HL-60 細胞によるPGE2 分泌を測定する。もう一つの方法では、化合物の存在下で精製 シクロオキシゲナーゼ(COX) の活性を測定する。両方法ともに文献に既述のプロトコールに関わるが、以下に述べるプロトコールが好ましい。
PGE2を測定することによって、化合物 はそれらがプロスタグランジンE2 (「PGE2」)の産生を阻害するどうかを決定して評価される。測定には、PGE2のための酵素イムノアッセイ (EIA) キット、例えば、Amersham(Arlington Heights、 IL、 U.S.A.) からの市販のものを使用する。適切な細胞 は大量のPGを産生するもので、例えばHL-60 細胞があげられる。HL-60 細胞 は、DMSOを用いて成熟顆粒球に分化させたヒト前骨髄球 である(Collins, S.J., Ruscetti, F.W., Gallagher, R.E. and Gallo, R.C., "Normal Functional Characteristics of Cultured Human Promyelocytic Leukemia Cells (HL60) After Induction of Differentiation By Dimethylsulfoxide", J. Exp. Med., 149:969974, 1979を参照)。これら分化細胞 は、カルシウムイオノフォアA23187で刺激後にPGE2 を産生する (Kargman, S., Prasit, P. and Evans, J.F., "Translocation of HL60 Cell 5Lipoxygenase", J. Biol. Chem., 266: 23745-23752, 1991を参照)。HL-60 細胞 は ATCC (ATシスプラチンCL240)から入手可能である。これら細胞は、20%熱不活化胎児ウシ血清、50 U/mL ペニシリンおよび 50 μg/mL ストレプトマイシンを添加した RPMI 1640 培地中で 5% CO2 雰囲気下で37℃増殖できる。骨髄分化を誘発するために、 細胞を1.3% DMSO に 9 日間曝露して、次いで、洗浄してから、3x106 細胞/mLの濃度でダルベッコの燐酸塩緩衝生理的食塩水に再懸濁させる。
【0037】
分化させたHL-60 細胞 (3x106 細胞/mL) を、所望の濃度で試験した化合物の存在下で37℃15分間培養する。次いで、細胞を A23187 (5x10-6 M) で15分間刺激する。 外部培地に分泌された PGE2 を上記のようにして測定する。
上記のように、化合物のCOX 阻害を評価する第二の方法は、試験化合物の存在下でCOX 活性を測定するものである。二つの異なる型のシクロオキシゲナーゼ (COX-I および COX-2) がプロスタグランジン合成を調節することが文献で報告されている。COX-2 は誘導型のCOX を表し、COX-I は構成型を表す。COX-I 活性 は、Mitchell ら ("Selectivity of Nonsteroidal Anti-inflammatory Drugs as Inhibitors of Constitutive and Inducible Cyclooxygenase," Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 90:11693-11697, 1993;これはここに参考文献として添付する) の方法で、Boopathy & Balasubramanian(Purification And Characterization Of Sheep Platelet Cyclooxygenase" Biochem. J., 239:371-377, 1988;これはここに参考文献として添付する)に記載の方法で雄ヒツジ精嚢から精製されたCOX-I を用いて測定することができる。COX-2 活性 は、Mitchell ら(1993、上記)に記載の方法でヒツジ胎盤から精製した COX-2 を用いて測定することができる。
【0038】
薬剤のシクロオキシゲナーゼ阻害活性は、当業者に公知の方法で測定できる。例えば、Boopathy & Balasubramanian(1988、上記)の記載による方法では、プロスタグランジン H シンターゼ1 (Cayman Chemical、Nucleotide Arbor、Michigan) を、100 μM アラキドン酸 (Sigma Chemical Co.)、コファクター(例えば, 1.0 mM グルタチオン、1.0 mM ヒドロキノン、0.625 μM ヘモグロビンおよび 1.25 mM CaCl2 の100mM トリス-HCl溶液、pH 7.4) および被験薬剤とともに37℃で20 分間インキュベートする。インキュベーションの後、トリクロロ酢酸で反応を終結させることができる。チオバルビツール酸およびマロンアルデヒドを加えて反応を止めた後で、酵素活性を分光光度計で530 nmで測定することができる。
明らかに、そのより大きいPDE5/新規 PDE/PDE2 阻害 活性に比して、より低いCOX-I またはCOX-2 阻害 活性を示す化合物 が望ましい化合物であり得る。
COX 阻害の量は、試験化合物の存在下または非存在下でのシクロオキシゲナーゼの活性を比較することによって決定される。約100μM濃度での残りの(すなわち、約 25%以下)またはゼロのCOX 阻害活性 は、化合物の新形成物治療への有用性をさらに評価すべきであることを示すものである。
【0039】
C. ホスホジエステラーゼ 阻害活性を測定する
化合物は、上記のようにして分離された酵素または組換による酵素のいずれかを用いて、あるいはPDE5とともに新規 PDE および/または PDE2を用いて、本発明の新規 ホスホジエステラーゼ の活性に及ぼす阻害的影響に関してスクリーニングできる。あるいはまた、全細胞のサイクリック ヌクレオチドレベルを RIA によって測定して、未処理およびザプリナスト処理細胞と比較する。
ホスホジエステラーゼ活性 は、PDE 酵素の基質として放射線活性3H サイクリック GMP (cGMP)(サイクリック 3',5'-グアノシン一燐酸)を用いる方法などの、当業者に公知の方法を用いて測定することができる。 (Thompson, W.J., Teraski, W.L., Epstein, P.M., Strada, S.J., Advances in Cyclic Nuclotide Research, 10:69-92, 1979、これは参考文献としてここに添付される)。簡略に述べると、 明確にされた 3H-cGMP特異性活性の溶液(0.2μM、100,000 cpm、40 mM トリス-HCl (pH 8.0)、5 mM MgCl2 および1 mg/mL BSAを含む) を全量 400μlで被験薬剤と混合する。混合物を本発明の分離されたPDE とともに30℃で10 分間インキュベートする。反応は、例えば、反応混合物を75 秒間煮沸することによって終結させる。氷上で冷却後、100 μl の 0.5 mg/mL ヘビ毒 (O. Hannah ヘビ毒、シグマ社から入手可能) を加えて、 30℃で10 分間インキュベートする。次いで、この反応を、例えば1 mL の100% メタノールなどのアルコールを加えることによって終結させる。アッセイ用サンプルを1 mL Dowex 1-X8 カラムに供して、1 mL の100% メタノールで洗浄する。カラムからの流下液および洗浄液の放射能活性をあわせて、シンチレーションカウンターで測定する。ホスホジエステラーゼの程度を、薬剤処理した反応物中の放射能量を計算し、対照サンプル (試験化合物の代わりに薬剤溶媒を有する反応混合物) と比較して決定する。
【0040】
あるいはまた、望ましい化合物の本発明のホスホジエステラーゼを阻害する能力は、スクリーニングされる化合物に曝露された新生物細胞中のcGMP の増加によってもたらされる。PDE 活性量は、処理細胞の抽出物中のサイクリックGMPの量をラジオイムノアッセイ(RIA) を用いてアッセイすることによって測定することができる。 この方法において、HT-29 またはSW-480 細胞はプレート上で、コンフルエントになるまで増殖される。上記したように、SW-480は PDE5 および本発明の PDE の双方を含むので、PDE 活性をこのようにして評価すると、合わさったcGMP加水分解活性が同時にアッセイされる。次いで、試験化合物を、約200 μM から約 200 pMの化合物濃度で細胞培養物とともに培養する。約24 ないし 48時間後、培養培地を細胞から除去して、細胞を可溶化する。反応を 0.2N HCl/50% MeOHを用いて止める。タンパク質アッセイのためにサンプルを除去する。サイクリックGMPを、細胞の酸/アルコール抽出物からDowexカラムなどの陰イオン交換クロマトグラフィーを用いて精製する。cGMP を乾燥して、トリエチルアミン中の無水酢酸を用いるなどの公知の方法 (Steiner, A.L., Parker, C.W., Kipnis, D.M., J. Biol. Chem., 247(4):1106-13, 1971;これはここに参考文献として添付する)によってアセチル化する。アセチル化された cGMP を、ラジオイムノアッセイ法(Harper, J., Brooker, G., Advances in Nucleotide Research, 10:1-33, 1979;これはここに参考文献として添付する) を用いて定量する。誘導体化サイクリックGMPのヨード化したリガンド (チロシンメチルエステル) を、抗血清および適切な緩衝液の存在下で標準物質または未知物質とともにインキュベートする。抗血清は、サイクリックヌクレオチド-ヘプテン特異的技法を用いて産生することができる。抗血清は、スクシニル-cGMP-アルブミン抱合体を注射したヒツジからのものを、1/20,000に希釈する。 標準曲線からの用量内挿法 および誤差分析を既述のようにして適用する (Seibert, A.F., Thompson, W.J., Taylor, A., Wilbourn, W.H., Barnard, J. and Haynes, J., J. Applied Physiol., 72:389-395, 1992;これはここに参考文献として添付する)。
【0041】
加えて、培養培地を酸性にして、凍結(-70℃) して、これもcGMP および cAMPに関して分析することができる。
望ましい化合物によってもたらされる新生物細胞中のcGMP含量増加の観察に加えて、cAMP 含量の減少もまた観察されている。とくに望ましい化合物 (すなわち、アポトーシスを新生物細胞で選択的に誘発するが、正常細胞では実質的に誘発しないもの) は、結果的に数分内にcGMP 含量が増加する一初期反応として、cGMP特異性 PDE 阻害と一致する時間経過をたどることが観察されている。従属的に、望ましい抗新生物化合物による新生物細胞の処理は、cAMP含量の減少を24時間内にもたらす。 薬物作用の細胞内標的はさらに研究されているが、最近のデータは、cGMP含量の初期増加およびcAMP含量の続いての低下は望ましい化合物に曝露された新生物細胞におけるアポトーシスに先行するという概念を支持している。
【0042】
cGMPの絶対値のみ、cGMP特異性ホスホジエステラーゼ阻害のみ、またはcGMP加水分解レベルのみの測定よりも、二つのサイクリックヌクレオチドの比の変化は、試験化合物の望ましいcGMP特異性ホスホジエステラーゼ阻害活性 の評価のためのより正確なツールとなり得る。抗新生物化合物で処理されていない新生物細胞において、 cGMP 含量/cAMP 含量の比は、0.03-0.05 の範囲 (すなわち 300-500 fmol/mg タンパク質 cGMP 含量割る 6000-8000 fmol/mg タンパク質 cAMP 含量)である。望ましい抗新生物化合物への曝露後、サイクリックGMP の初期増加およびサイクリックAMPの後期減少の結果として、この比は数倍に増加する(好ましくは、少なくとも約3倍の増加)。
具体的には、とくに望ましい化合物は、処理した新生物細胞におけるcGMPを約500 fmol/mg タンパク質を超えるレベルまでcGMP含量を初期増加させることが観察されている。 加えて、とくに望ましい化合物は、処理した新生物細胞におけるcAMPを約4000 fmol/mgタンパク質以下のレベルまでcAMP含量を後期減少させる。
【0043】
サイクリックAMPの含量を測定するために、上記の cGMPに関して用いたものと同様のラジオイムノアッセイ技法を用いる。基本的には、サイクリックヌクレオチドを、陰イオン交換クロマトグラフィーを用いて細胞の酸/アルコール抽出物から精製し、乾燥し、公表された方法でアセチル化して、ラジオイムノアッセイ法を用いて定量する。誘導化サイクリックAMP およびサイクリック GMPのヨード化したリガンドを、特異的抗血清および適切な緩衝液の存在下で標準物質または未知物質とともにインキュベートする。
サイクリックヌクレオチド含量の確認を、未処理細胞におけるサイクリックヌクレオチドの代謝回転または蓄積を測定することによって得ることができる。未処理細胞cAMPを測定するために、公知の方法(Whalin, M.E., Garrett Jr., R.L., Thompson, W.J., and Strada, S.J. "Correlation of cell-free brain cyclic nucleotide phosphodiesterase activities to cyclic AMP decay in intact brain slices", Sec. Mess. and Phos. Protein Research, 12:311-325, 1989;これはここに参考文献として添付する)に従って3H-アデニン前標識を用いる。この方法は標識されたATP のサイクリックAMPへの流れを測定し、特定のプロトコールによって、未処理細胞アデニレートサイクラーゼまたはサイクリックヌクレオチドホスホジエステラーゼ活性を評価することができる。サイクリックGMP 蓄積は、未処理細胞前標識では低すぎて公表された方法 (Reynolds, P.E., S.J. Strada and W.J. Thompson, "Cyclic GMP Accumulation In Pulmonary Microvascular Endothelial Cells Measured By Intact Cell Prelabeling," Life Sci., 60:909-918, 1997;これはここに参考文献として添付する)では調べられなかった。
【0044】
化合物のPDE阻害活性効果はまた、組織サンプルからも測定することができる。ヒトからの組織バイオプシーまたは麻酔動物からの組織を、試験化合物に曝露した対象から集める。簡略に説明すると、組織サンプルを500 μl の 6% TCA中で均質化する。均質化物の既知量を、タンパク質分析のために除去する。残りの均質化物を氷上で20分間保持して、タンパク質を沈殿させる。次いで、均質化物を15,000g 、4℃で30分間遠心分離する。上清を回収して、ペレットを回収する。上清を、ジエチルエーテルで飽和した4倍量の水で4回洗浄する。上部エーテル層を各洗浄間で除去する。水性エーテル抽出物をスピードバク(Speed-Vac)中で乾燥させる。いったん乾燥したら、サンプルは将来の使用のために冷凍するか、直ちに使用することができる。乾燥した抽出物を500 μl のアッセイ緩衝液に溶解する。cGMP特異性阻害の程度は、サイクリックヌクレオチドの量を上記のRIA法を用いてアッセイすることによって測定される。
阻害の程度は、化合物の存在および非存在下における新規PDE (または PDE2)の活性を比較することによって測定される。新規 PDE 活性(または PDE2) の阻害は、化合物が新形成物の治療に有用であることを示す。評価基準のエキシスリンドよりも大きく、好ましくは10μMまたはそれ以下の濃度で 50% よりも大きい、有意な阻害活性は、化合物を抗新生物的性質に関してさらに評価されるべきであることを示す。新規PDE阻害の IC50 値は、使用可能性をさらに考慮すべき化合物では50μM 以下であることが好ましい。
【0045】
D. 化合物が腫瘍細胞増殖を低減するかどうかを決定する
別の実施態様において、本発明の方法は、化合物が腫瘍細胞の増殖を低減するかどうかをさらに決定することを要件とする。試験される組織によって種々の細胞系がサンプル中で使用できる。例えば、これら細胞系には、SW-480 結腸腺癌腫、 HT-29 結腸腺癌腫、A-427 肺腺癌腫 、 MCF-7 乳腺癌腫および UACC-375 黒色腫系および DU145 前立腺癌腫がある。これら細胞系を用いて得られた細胞毒性データは、新生物病変への阻害効果を示す。これら細胞系は特徴がよくわかっており、米国国立癌研究所(United States National Cancer Institute)によって新抗癌剤に関するスクリーニングプログラムで使用される。
【0046】
化合物の腫瘍細胞増殖阻害能は、ATCCから得られるHT-29ヒト結腸癌腫細胞系を用いて測定できる。HT-29 細胞は、適切な結腸腫瘍細胞カルチャーモデルとして既に特徴づけられている (Fogh, J., and Trempe, G. In: Human Tumor Cells in Vitro, J. Fogh (eds.), Plenum Press, New York, pp. 115-159, 1975)。HT-29 細胞は、5% ウシ胎児血清(Gemini Bioproducts, Inc.、Carlsbad、CA)、2 mm グルタミンおよび1% 抗生物質-抗真菌物質を添加した RPMI 培地中で95% 空気および 5% CO2 の加湿雰囲気下で37℃で保持する。簡単に説明すれば、HT-29 細胞を500 細胞/ウェルの密度で96穴マイクロタイタープレートにプレートして、化合物添加に先だって24時間37℃で培養する。各細胞数カウントは、6回繰り返して行う。培養6日後、冷トリクロロ酢酸を最終濃度10%になるように加えて細胞を固定して、タンパク質レベルをスルホロダミンB (SRB) 比色タンパク質染色アッセイを用いて既述のようにして測定する(Skehan, P., Storeng, R., Scudiero, D., Monks, A., McMahon, J., Vistica, D., Warren, J.T., Bokesch, H., Kenney, S., and Boyd, M.R., "New Colorimetric Assay For Anticancer-Drug Screening," J. Natl. Cancer Inst. 82: 1107-1112, 1990;これはここに参考文献として添付する)。
【0047】
SRB アッセイに加えて、多数の他の方法が増殖阻害の測定に使用でき、SRB アッセイに代えることができる。これらの方法には、トリパンブルー染色後の生細胞の計数、BrdU または放射能標識したチミジンを用いてのDNA 合成能のある細胞の標識、生細胞のニュートラルレッド染色または生細胞のMTT染色が含まれる。100μM またはそれ以下の濃度での約50% を超える有意な腫瘍細胞増殖阻害は、化合物が新生物病変の治療に有用であることをさらに示す。好ましくは、IC50 値を比較目的のために決定して、使用する。この値は、対照と比較して 50% の腫瘍細胞の増殖の阻害に必要な薬剤の濃度である。新生物病変の治療のための使用可能性をさらに考慮すべき化合物としては、IC50 値は100μM 以下であるのが好ましい。
【0048】
E. 化合物がアポトーシスを誘発するかどうかを決定する
第二の別の実施態様では、本発明のスクリーニング法はさらに、化合物が腫瘍細胞の培養物中でアポトーシスを誘発するかどうかの決定を要件とする。
細胞死の二つの異なる型が形態学的および生化学的基準で記述できる。すなわち、壊死とアポトーシスである。壊死は、原形質膜の透過性増加を伴ない、細胞は膨張して、原形質膜が数分内に破れる。アポトーシスは、膜の小気(水)胞、細胞質の凝縮および内生性エンドヌクレオチドの活性化によって特徴づけられる。
アポトーシスは、正常な組織代謝回転中ならびに器官および肢の胎児期発達中に自然に起きる。アポトーシスはまた、 細胞傷害性T-リンパ球およびナチュラルキラー細胞によって、電離放射線によって、およびある種の化学療法薬剤によって誘発される。アポトーシスの不適切な調節は、癌、AIDS、アルツハイマー病などの多くの病理状態において重要な役割を果たすと考えられる。化合物は、上記の条件で保持された腫瘍細胞の培養物を用いてアポトーシスの誘発に関してスクリーニングすることができる。試験化合物による細胞処理には、コンフルエント前または後の培養物のいずれか、および2ないし7日間の種々の濃度での処理が含まれる。アポトーシス細胞は、培養物の付着したまたは「浮遊」画分の双方 において測定される。両画分を、上清を除去して、付着した細胞をトリプシン処理して、両調製物を合わせた後で遠心分離洗浄 (10 分間、 2000 rpm)することによって集める。アポトーシスの有意量を得るためにスリンダクおよび関連化合物によって腫瘍細胞培養物を処理するプロトコールは、文献中に記載がある (Piazza, G.A., et al., Cancer Research, 55:3110-16, 1995 を参照。これはここに参考文献として添付する)。新規要点としては、付着細胞と浮遊細胞の双方を用いること、最適処理時間およびアポトーシス観察のための用量範囲の確認ならびに最適細胞培養条件の確認が含まれる。
【0049】
化合物での処理の後、培養物はアポトーシスおよび壊死に関して、アクリジンオレンジおよび臭化エチジウムで標識してから、蛍光顕微鏡によってアッセイされる。アポトーシス細胞数の測定法は Duke & Cohenによって既述されたものである("Morphological And Biochemical Assays Of Apoptosis," Current Protocols In Immunology, Coligan et al., eds., 3.17.1-3.17.16 (1992);これはここに参考文献として添付する)。
例えば、浮遊および付着細胞は、トリプシン処理によって集められ、PBSによって3回洗浄される。得られる細胞を遠心分離できる。次いで、ペレットを、培地ならびにアクリジンオレンジおよび臭化エチジウムを含む染料混合物 のPBS溶液中に再懸濁させて、ゆっくりと混合させることができる。次いで、混合物を 顕微鏡スライドに載せて、アポトーシスの形態学的特徴を調べることができる。
アポトーシスはまた、試験化合物で処理された細胞のDNA 断片化の増加を測定することによって定量できる。細胞質ヒストン結合-DNA断片 (モノ-およびオリゴヌクレオソーム) の定量的インビトロ測定のための市販の光度測定 EIA が使用可能である (Cell Death Detection ELISAokys、 カタログ番号 1,774,425, ベーリンガー・マンハイム社)。このベーリンガー・マンハイムアッセイは、それぞれDNA およびヒストンに対するマウスモノクローナル抗体を用いるサンドイッチ酵素イムノアッセイ原理に基づく。これによって、細胞溶解物の細胞質画分におけるモノ-およびオリゴ-ヌクレオソームの特異的測定ができる。
【0050】
製造者によると、アポトーシスは次のような方式で測定される。サンプル(細胞溶解物)を、ストレプトアビジン被覆マイクロタイタープレート (「MTP」)に供する。次に、抗-ヒストン-ビオチンおよび抗-DNA ペルオキシダーゼ抱合体の混合物を加えて、2時間インキュベートする。インキュベーションの間、抗ヒストン抗体がヌクレオソームのヒストン画分に結合して、同時に、イムノ複合体をストレプトアビジン被覆MTP にそのビオチン化を介して固定する。加えて、抗-DNA ペルオキシダーゼ抗体がヌクレオソームの DNA画 分と反応する。未結合抗体を洗浄によって除去した後、ヌクレオソーム量をイムノ複合体中に保持されたペルオキシダーゼによって定量する。ペルオキシダーゼは、ABTS7 (2,2'-アジド-[3-エチルベンズチアゾリン-スルホナート]) を基質として用いる光度測定によって測定する。
例えば、SW480 結腸腺癌細胞を 96-穴 MTP にウェル当たり10,000 細胞の密度でプレートする。次いで、細胞を試験化合物で処理して、37℃で48 時間培養する。培養後、MTPを遠心分離して上清を除去する。次いで、各ウェル中の細胞ペレットを溶解用緩衝液中に30 分間再懸濁する。次いで溶解物を遠心分離して、上清区分(すなわち、細胞質画分) をストレプトアビジン被覆したMTPに移す。MTP中の溶解ペレット(すなわち、高分子量の未断片化DNAを含む細胞核)を振らないように留意する。次いで、サンプルを分析する。
【0051】
アポトーシス性応答の指標である刺激倍率(fold stimulation )(FS = ODmax/ODveh)を、任意の濃度で試験した各化合物に関して決定する。EC50 値もまた、一連の濃度の試験化合物を評価することによって決定できる。
アポトーシスの統計的に有意な増加 (すなわち、100μM の濃度で2倍刺激を超える) は、化合物が新生物病変の治療に有用であることをさらに示す。新生物病変の治療のための使用可能性がさらに考慮される化合物のアポトーシス性活性の EC50 値は、100μM 未満であることが好ましい。ここでEC50 は、担体(賦形剤)処理に対してアポトーシスの 50% 低減を起こす濃度と定義される。
【0052】
F. 乳腺器官培養モデル試験
上記方法で確認された試験化合物を、乳腺器官培養系における前新生物性病変の発生を阻害するそれらの能力によって抗新生物活性を試験することができる。このマウス乳腺器官培養技術は、あるNSAID (nonsteroidal anti-inflammatory drug, 非ステロイド抗炎症剤)、レチノイド、タモキシフェン、セレニウム、およびある天然製品などの公知の抗新生物剤の効果を調べるために他の研究者によって使用されて成功しており、本発明のスクリーニング法の確認に有用である。
例えば、インビトロで腺がホルモンに反応するように、雌BALB/cマウスをエストラジオールおよびプロゲステロンの組み合わせを用いて毎日処理することができる。 動物を殺して、胸部乳腺を無菌的に切り出して、インスリン、プロラクチン、ヒドロコーチゾンおよびアルドステロンを添加した増殖培地中で10日間培養する。培地にDMBA (7,12-ジメチルベンズ (a)アントラセン) を加えて、前悪性病変の形成を誘導する。次いで、完全に発達した腺から、プロラクチン、ヒドロコーチゾンおよびアルドステロンが奪われ、その結果、腺の退化が見られるが、前悪性病変はない。
【0053】
試験化合物をDMSOに溶解して、培養期間中培養培地に加える。培養期間が終了したら、腺を10% ホルマリンで固定して明礬カルミンで染色して、スライドグラスに載せる。乳腺病変形成の出現率は、乳腺病変を有する腺と病変なしの腺の比で表す。試験化合物処理した腺の乳腺病変の出現率を未処理腺のそれと比較する。乳腺病変によって占められる領域範囲を、腺の像を計数化パッド上に映し出すことによって定量することができる。パッド上の腺で覆われた領域をトレースして、これを領域100% とみなす。それぞれの非退行構造によって覆われた領域もまた計数化パッド上で輪郭をとって、コンピュータで定量する。
【0054】
実験結果
多くの化合物を種々のプロトコールで調べて、新形成物の治療における使用可能性に関してスクリーニングした。それら諸試験の結果を以下に報告する。試験化合物は、以下では次に対応する文字コードによって表示する。
A - rac-トレオ-(E)-1-(N,N'-ジエチルアミノエタンチオ)-1-(ブタン-1',4'-オリド)-[3',4':1,2]-6-フルオロ-2-メチル-3-(p-メチルスルホニルベンジリデン)-インダン;
B - (Z)-5-フルオロ-2-メチル-1-(3,4,5-トリメトキシベンジリデン)-3-酢酸;
C - (Z)-5-フルオロ-2-メチル-1-(p-クロロベンジリデン)-3-酢酸;
D - rac-(E)-1-(ブタン-1',4'-オリド)-[3',4':1,2]-6-フルオロ-2-メチル-3-(p-メチルスルホニルベンジリデン)-1S-インダニル-N-アセチルシステイン;
E - (Z)-5-フルオロ-2-メチル-1-(3,4,5-トリメトキシベンジリデン)-3-インデニルアセトアミド, N-ベンジル;
F - (Z)-5-フルオロ-2-メチル-1-(p-メチルスルホニルベンジリデン)-3-インデニルアセトアミド, N,N'-ジシクロヘキシル;
G - ribo-(E)-1-トリアゾロ-[2',3':1'',3'']-1-(ブタン-1',4'-オリド)-[3',4':1,2]-6-フルオロ-2-メチル-3-(p-メチルスルホニルベンジリデン)-インダン;および
H - rac-(E)-1-(ブタン-1',4'-オリド)-[3',4':1,2]-6-フルオロ-2-メチル-3-(p-メチルスルホニルベンジリデン)-1S-インダニル-グルタチオン)。
【0055】
実施例 1 - COX 阻害アッセイ
参照化合物および試験化合物の COX 阻害活性を、上記のCOX アッセイのためのプロトコールに従って分析した。図4は、種々の濃度の硫化スリンダクまたはエキシスリンドのいずれかのシクロオキシゲナーゼ(タイプ1)活性に及ぼす影響を示す。シクロオキシゲナーゼ活性は、上記の方法で雄ヒツジ精嚢から精製したシクロオキシゲナーゼを用いて決定した(Mitchell ら、前出)。IC50 値は、エキシスリンドが10,000 μM以上であったのに対して、硫化スリンダクは約1.76 μMと算出された。これらのデータは、硫化スリンダクはCOX-I インヒビターであり、エキシスリンドはそうではないことを示す。同様のデータはCOX-2 イソ酵素に関して得られた(Thompson, et al., Journal of the National Cancer Institute, 87: 1259-1260, 1995)。
図5は、試験化合物B および Eの COX阻害に及ぼす影響を示す。COX活性は、図4に示した化合物と同様にして決定した。データは、試験化合物Bおよび E のいずれもCOX-Iを有意に阻害しないことを示す。
【0056】
【表2】
一連の化合物に関するシクロオキシゲナーゼ阻害活性
参照化合物 100 μMにおける % 阻害
インドメタシン 95
MY5445 94
硫化スリンダク 97
エキシスリンド <25
試験化合物 100 μM における% 阻害
A <25
B <25
C 87
D <25
E <25
上記プロトコールに従って、化合物 A から E を上記表2に報告されたCOX阻害活性に関して評価した。化合物Cは COX を100μMの薬量で25% 以上阻害することが見出され、したがって、これはさらなるスクリーンに選択しない。
【0057】
実施例 2 - cGMP PDE 阻害アッセイ
参照化合物および試験化合物の cGMP PDE 阻害活性を上記のアッセイのためのプロトコールに従って分析した。図6は、既述の方法 (W. J. Thompsonら、前出)で得た、種々の濃度の硫化スリンダクおよびエキシスリンドの、ヒト結腸HT-29培養腫瘍細胞から精製されたPDE4 または cGMP活性のいずれかに及ぼす影響を示す。硫化スリンダクのIC50 値は、PDE4の阻害では41 μMで、cGMP PDE の阻害では17 μMだった。エキシスリンドの IC50 値は、PDE4の阻害では181 μMで、cGMP PDE の阻害では 56 μMだった。これらのデータは、硫化スリンダクおよびスリンダクの双方がホスホジエステラーゼ活性を阻害することを示す。 両化合物は、cGMP PDE イソ酵素型への選択性が PDE4 イソフォームに優先することを示す。
【0058】
図7は、上記のアッセイに従って培養したHT-29 細胞中で決定された、cGMP またはcAMP 産生のいずれかに及ぼす硫化スリンダクの影響を示す。HT-29細胞を硫化スリンダクで 30 分間処理して、cGMP またはcAMP を従来のラジオイムノアッセイ法によって測定した。示されたように、硫化スリンダクは、 EC50 値が 7.3 μM でcGMP のレベルを50%以上増加した(図7A) 。既知のPDE4インヒビターであるロリプラムはcAMPを増加したが、 cAMPのレベルは処理によって影響されなかった(図7B)。データは、PDE4に比較して、cGMP PDE阻害の薬理学的重要性を示す。
図8は、試験化合物 Bの表示薬量の、ホスホジエステラーゼのイソ酵素cGMP PDE または PDE4のいずれか に及ぼす影響を示す。算出されたIC50値は、cGMP PDE に関しては18 μMで、PDE4 に関しては 58 μM であった。
図9は、試験化合物 Eの表示薬量の、PDE4またはcGMP PDEのいずれか に及ぼす影響を示す。算出されたIC50値は、cGMP PDE に関しては0.08 μMで、PDE4 に関しては 25μM以上 であった。
【0059】
【表3】
一連の化合物のcGMP PDE 阻害活性
参照化合物 10μMでの% 阻害
インドメタシン 34
MY5445 86
硫化スリンダク 97
エキシスリンド 39
試験化合物 10μMでの% 阻害
A <25
B <25
C <25
D 36
E 75
【0060】
表3の上記化合物を、上記プロトコールに記述のようにしてPDE 阻害活性に関して評価した。COXを阻害しなかった化合物のうちで、 化合物E のみが10μMで50% 以上の阻害を起こしたことが見出された。図 8に見られるように、化合物B は20 μMの薬量で50%以上の阻害を示した。したがって、単一投薬試験において用いられる薬量レベルによって、僅かにより高い投薬量で活性であったかも知れないある化合物がいくつか選別される。薬量は、主観的であって、あるレベルで活性化合物が見出される後で減らして、より有力な化合物をさらに確認し得る。
【0061】
実施例 3 アポトーシスアッセイ
参照化合物および試験化合物の新規 PDE阻害活性を上記のアッセイのためのプロトコールに従って分析した。これらプロトコールに従って、図10は、硫化スリンダクおよびエキシスリンドの、アポトーシス性および壊死性細胞死に及ぼす影響を示す。HT-29細胞を、硫化スリンダクまたはエキシスリンドの示された薬量で6日間処理した。アポトーシス性および壊死性細胞死は、以前に測定された (Duke and Cohen, In: Current Protocols in Immunology, 3.17.1 - 3.17.16, New York, John Wiley and Sons, 1992)。データは、硫化スリンダクおよびエキシスリンドの双方が壊死を誘導することなくアポトーシス性細胞死を起こし得ることを示す。全データは、同一実験から集められた。
【0062】
図11 は、硫化スリンダクおよびエキシスリンドの、腫瘍増殖阻害およびDNA断片化によって決定されるアポトーシス誘発に及ぼす影響を示す。上図 (11A)は、エキシスリンドによる増殖阻害 (シロヌキ符号、左軸) およびDNA 断片化 (ツブシ符号、右軸) を示す。下図 (11B)は、硫化スリンダクによる増殖阻害 (シロヌキ符号) およびDNA 断片化 (ツブシ符号) を示す。増殖阻害は、6日間の処理後にSRBアッセイによって決定された。DNA断片化は、 48時間の処理後に決定された。全データは、同一実験から集められた。
図12 は、化合物 Eのアポトーシスを誘発する性質を示す。HT-29 結腸腺癌腫細胞を表示濃度の化合物 Eを用いて48 時間処理して、アポトーシスをDNA 断片化アッセイによって決定した。算出したEC50 値は、0.05 μMであった。
図13は、化合物 Bのアポトーシスを誘発する性質を示す。HT-29 結腸腺癌腫細胞を表示濃度の化合物 Bを用いて48 時間処理して、アポトーシスをDNA 断片化アッセイによって決定した。算出したEC50 値は、約175 μMであった。
【0063】
【表4】
一連の化合物の、アポトーシスを誘発する活性
参照化合物 100 μMにおける誘発倍率
インドメサチン <2.0
MY5445 4.7
硫化スリンダク 7.9
エキシスリンド <2.0
E4021 <2.0
ザプリナスト <2.0
シルデナフィル <2.0
EHNA <2.0
参照化合物 100 μMにおける誘発倍率
A <2.0
B 3.4
C 5.6
D <2.0
E 4.6
【0064】
前記の倍誘発プロトコールに従って、化合物 A からE をアポトーシス誘発活性に関して試験して、上記の表4の結果を得た。化合物 B、C および E は、100μMの薬量で2.0 倍以上の、有意のアポトーシス誘発活性を示した。これら三つの化合物のうち、この薬量ではB およびE のみが COX を阻害しなかったが、cGMP特異性PDEを阻害した。
一連のホスホジエステラーゼインヒビターのアポトーシス誘発活性を決定した。データを下記の表5 に示す。HT-29 細胞を6日間、種々のホスホジエステラーゼインヒビターを用いて処理した。アポトーシスおよび壊死を、アクリジンオレンジおよび臭化エチジウム標識して上記のアッセイに従って形態学的に決定した。データは、新規cGMP特異性PDE は、HT-29細胞のアポトーシスを誘発する化合物のスクリーニングに有用であることを示す。
【0065】
【表5】
Figure 0005102415
【0066】
実施例 4 増殖阻害アッセイ
参照化合物および試験化合物の PDE5阻害活性を、上記のアッセイのためのプロトコールに従って分析した。図14は、種々の濃度の硫化スリンダクおよびエキシスリンドの、HT-29細胞の増殖に及ぼす影響を示す。HT-29細胞を、エキシスリンド(三角)または硫化スリンダク(四角)の種々の表示薬量で6日間処理した。細胞数をスルホロダミンアッセイによって既述されたようにして測定した (Piazza et al., Cancer Research, 55: 3110-3116, 1995)。IC50 値は、硫化スリンダクに関して約45 μM で、エキシスリンドに関して 200 μM であった。データは、硫化スリンダクおよびエキシスリンドの双方が、腫瘍細胞増殖阻害能を有することを示す。
【0067】
図15は、硫化スリンダクの、増殖阻害およびアポトーシス誘発活性を示す。担体、0.1% DMSO (シロヌキ符号)または硫化スリンダク120 μM (ツブシ符号)のいずれかで処理したHT-29細胞に関する時間経過実験を示す。増殖阻害 (15A 上) は、トリパンブルー染色後の生細胞計数によって測定した。アポトーシス (15B 上) は、既述されているようにアクリジンオレンジおよび臭化エチジウムで染色した後の形態学的決定によって測定した (Duke and Cohen, in: Current Protocols in Immunology, 3.17.1 - 3.17.16, New York, John Wiley and Sons, 1992)。データは、硫化スリンダクは腫瘍細胞増殖の阻害能を有し、かつ、その効果はアポトーシスの増加を伴なうことを示す。全データは同一の実験から集められた。
図16は、試験化合物Eの増殖阻害活性を示す。HT-29 結腸腺癌腫細胞を表示濃度の化合物Eで6日間処理して、細胞数をSRBアッセイによって決定した。算出された IC50 値 は 0.04 μMであった。
【0068】
【表6】
一連の化合物の、増殖阻害活性
参照化合物 100μMでの % 阻害
インドメタシン 75
MY5445 88
硫化スリンダク 88
エキシスリンド <50
E4021 <50
シルデナフィル <50
ザプリナスト <50
試験化合物 100μM での%阻害
A 68
B 77
C 80
D 78
E 62
【0069】
上記のスクリーニングプロトコールのセクションに従って、化合物A からEを増殖阻害活性に関して試験して、上の表6の結果を得た。 全試験化合物は、100μM単一薬量試験を超えて活性を示した。
一連のホスホジエステラーゼインヒビターに関して増殖阻害活性を決定した。データを下の表7 に示す。 HT-29 細胞を種々のホスホジエステラーゼインヒビターを用いて6日間処理した。細胞増殖を上記のSRB アッセイによって決定した。上記データと合わせて下のデータは、新規PDEのインヒビターが腫瘍細胞増殖阻害に効果的であったことを示す。
【0070】
【表7】
Figure 0005102415
【0071】
種々の型の新形成物に対するこのスクリーニング法の有効性を示すために、化合物を多数の細胞系について試験した。硫化スリンダクおよびエキシスリンドの、種々の細胞系に及ぼす影響を決定した。データを下の表8に示す。IC50 値をSRB アッセイによって決定した。データは、広範囲の新形成物に対するこれら化合物の広範囲の有効性を、相対する薬量範囲での有効性とともに示す。したがって、本発明によって確認および選択された化合物は、多数の型の新形成物の治療に有用であるとされよう。
【0072】
【表8】
種々の細胞系の増殖阻害データ
Figure 0005102415
* Schmid ら(Proc. AACR Vol 39, p. 195 (1998))に記載されたニュートラルレッドアッセイによって決定した。
【0073】
実施例 5 乳腺器官培養モデルにおける活性
図17 は、スリンダク代謝物による乳腺器官培養における前悪性病変の阻害を示す。乳腺器官培養実験は、既述のようにして行った (Mehta and Moon, Cancer Research, 46: 5832-5835, 1986)。結果は、スリンダクおよびエキシスリンドは前悪性病変の形成を効果的に阻害するが、硫化スリンダクは非活性であったことを示す。データは、シクロオキシゲナーゼ阻害は必ずしも所望の化合物の抗新生物的性質のためではないという仮説を支持する。
【0074】
分析
新形成物の治療のための化合物を選択するために、本発明は、種々のプロトコールからの試験化合物の実験データを比較するための理論的根拠を提供する。本発明の枠内で、試験化合物はヒト新形成物の治療のための使用可能性に従ってランク付けすることができる。望ましい効果を有するこれら化合物を、さらなる試験および続いてのヒト使用のために選択することができる。
種々の試験化合物の 質的データおよびいくつかのプロトコールを下の表9に示す。データは、エキシスリンド、化合物B および化合物 E は適切な活性を有して四つのアッセイのスクリーニングをパスすることを示す。すなわち、COX阻害の欠如、有効な cGMP特異性 PDE 阻害の存在、増殖阻害およびアポトーシス誘発である。これら化合物の乳腺器官培養における活性は、本発明の有効性を実証する。スクリーニングプロトコールの量的評価は、化合物E を最良とランク付けし、次いで化合物B 、そしてエキシスリンドがそれに続く。
【0075】
【表9】
種々の化合物の活性プロフィール
Figure 0005102415
コード: 最大活性および効果の試験に関与する一連の実験の評価に基づく化合物の活性。
- 非活性
+ 僅かに活性
+ + 中位に活性
+ + + 強く活性
+ + + + 高度に活性
【0076】
また、PKG活性のための新規アッセイも開示され、これは本発明のスクリーニング法において使用されるが、他の目的のためのPKG 活性のアッセイにおいてもより一般的な有用性を有する (例えば、正常細胞機能におけるPKGの役割の研究)。説明目的のために、化合物が新形成物治療に潜在的に有用であるかどうかを確定する薬物評価においてPKG 活性がいかに有用であるかを記述する前に、PKGアッセイを最初に説明することは有用である。
【0077】
新規 PKG アッセイ
本発明の新規 PKG アッセイは、各配列がそれぞれ少なくとも cGMP-結合(cGB) ドメインおよびホスホジエステラーゼ タイプ5 (「PDE5」)の燐酸化部位を含む、固相複数アミノ酸配列への結合に関与する。その配列は公知で、下記の文献に記述がある。 好ましくは、結合されたPDE5配列は、後記するようにPDE5の触媒的ドメインを含まない。PDE5配列を固相に結合させる一つの方法は、これら配列をPDE5配列とアミノ酸結合対の一方との融合タンパク質として発現して、アミノ酸結合対のもう一方を固相 (例えばビーズ)に化学的に連結する方法である。使用できる一つに結合対は、グルタチオン S-トランスフェラーゼ (「GST」) とグルタチオン (「GSH」)があり、GST は上記したようにPDE5配列との融合タンパク質として発現され、GSHは固相に共有結合する。 このようにして、 PDE5配列/GST 融合タンパク質を、下記するように、融合タンパク質を含む溶液を固相上に単に通すだけで固相に結合させることができる。
【0078】
RT-PCR 法を、ウシPDE5A cDNA配列(McAllister-Lucas L. M. et al, J. Biol. Chem. 268, 22863-22873, 1993)からデザインされた順向および逆向プライマーを用いてPDE5のcGBドメインを得るため、およびPDE 1-10 ファミリー間の選択のために用いる。全RNAのための 5'-3', Inc. キットを、続いてのmRNAのオリゴ (dT) カラム精製を、 HT-29細胞とともに用いる。 順向プライマー (GAA-TTC-TGT-TAG-AAA-AGC-CAC-CAG-AGA-AAT-G、203-227) および逆向プライマー (CTC-GAG-CTC-TCT-TG腫瘍C-TTC-CTC-TGC-TG、1664-1686) を用いて、ヒトPDE5A (203-1686 bp、cGB-PDE5)の燐酸化部位ならびに低親和性および高親和性双方のcGMP結合部位をコードする1484 bp断片を合成する。合成された cGB-PDE5 ヌクレオチド断片は、ウシ PDE5A と97% 類似する494 個のアミノ酸をコードする。次いで、これをtac プロモーターならびに EcoRI および XhoI 切断部位を有するpGEX-5X-3 グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST) 融合ベクター (ファルマシア・バイオテク社製 )中にクローニングする。次いで、融合ベクターを E. coli BL21 (DE3) 細菌 (インビトロゲン社製)にトランスフェクトさせる。トランスフェクトされた BL21 細菌を対数期まで増殖させてから、IPTGを誘導物質として加える。誘導を20℃で 24 時間で行う。細菌を回収して、溶解する。可溶性細胞溶解物をGSH 抱合させたセファロース4B (GSHセファロース4B)とともにインキュベートする。
【0079】
GST-cGB-PDE5融合タンパク質はGSH-セファロースビーズに結合することができるが、他のタンパク質はビーズから過剰の 冷PBSで洗浄除去される。
発現されたGST-cGB-PDE5 融合タンパク質は、 7.5% SDS-PAGE ゲル上で 85 Kdタンパク質として見られる。これは、その cGMP結合およびプロテインキナーゼ G および Aによる燐酸化によって特徴づけられる。これは、二つのcGMP 結合部位を有し、Kd は1.6±0.2 μMで、これは天然ウシPDE5のKd=1.3 μM に近い。GSH 抱合セファロースビーズ上のGST-cGB-PDE5は、インビトロでcGMP依存性プロテインキナーゼおよびcAMP依存性プロテインキナーゼ Aによって燐酸化することができる。BPDEtide燐酸化のKm が68μMであるのに対し、PKGによる GST-cGB-PDE5燐酸化Km は2.7μM で、Vmaxは2.8 μMである。PKGによる燐酸化は、 分子燐酸塩が GST-cGB-PDE5 タンパク質中に一対一で取り込まれたことを示す。
【0080】
上記のPDE5結合固相を用いてPKGを含むと思われる液体サンプルをアッセイするために、サンプルおよび固相を32P-γ-ATPを含む燐酸化緩衝液とともに混合する。溶液を30℃で30分間インキュベートして、PKGが存在するとすれば、PKG によるPDE5配列の燐酸化を起こさせる。次いで、固相を溶液から分離して(例えば、遠心分離や濾過によって) 、燐酸塩緩衝生理的食塩水 (「PBS」) で洗浄して、残存する溶液をすべて除去し、未反応の32P-γ-ATPをすべて除去する。
次いで、固相を直接に試験して (例えば、液体シンチレーションカウンターによって) 、32P が取り込まれたかどうかを確認することができる。32Pが取り込まれたとすれば、PKG は PDE5を燐酸化するので、それはサンプルが PKG を含んでいたことを示す。PDE5 が融合タンパク質を介して結合していれば、上記したように、PDE5-含有融合タンパク質を固相からSDS 緩衝液で溶出することができ、溶離液を32P 取り込みに関してアッセイすることができる。これは、溶離液を処理して(例えば、ゲル分離によって) 種々のタンパク質を互いに分離して融合タンパク質画分を32P 取り込みについてアッセイできるようにすることができるので、他のタンパク質が存在する可能性がある場合にとくに有利である。燐酸化された融合タンパク質は、固相から SDS 緩衝液を用いて溶出することができ、さらに電気泳動によって分析分解することができる。ゲル分離を行う場合、タンパク質を染色してタンパク質の位置を確認することができ、PKG による融合タンパク質のPDE5部分の32P燐酸化をゲルのX-線フィルムへの曝露によって測定することができる。32P が X-線フィルム上で見られる場合は、それはオリジナルのサンプルがPKGを含んでいて、それが固相から溶出された融合タンパク質のPDE5 部分を燐酸化したことを示す。
【0081】
好ましくはアッセイにおいて、PKGを阻害することなくプロテインキナーゼA (「PKA」) を特異的に有効に阻害するプロテインキナーゼインヒビター (「PKI」) の過剰量(例えば 100 倍) を、アッセイ緩衝液に加えるべきである。PKAを阻害することは、それがPKG 基質(例えば、PDE5)の燐酸化に貢献する可能性があることから、望ましい。PKIを加えることによって、PKA による燐酸化へのいずれの貢献も除外されるであろうし、検出される燐酸化はいずれもPKG のみに起因するという可能性がきわめて高い。
【0082】
本発明のアッセイのためのキットをつくることができ、このキットは別々の容器に以下の予めパッケージされた試薬を含む。
1. 細胞溶解緩衝液: 50 mM トリス-HCl、 1% NP-40、150 mM NaCl、1 mM EDTA、1mM Na3VO4、1 mM NaF、500μM IBMX、プロテイナーゼインヒビター
2. プロテインキナーゼ G 固相基質: 組換えGST-cGB-PDE5 結合セファロース4B (50% スラーリー)
3. 2x 燐酸化緩衝液: 32P-γ-ATP (3000 mCi/mmol、 5〜10 μCi/アッセイ)、10 mM KH2PO4、10 mM K2HPO4、200 μM ATP、5 mM MgCl2
4. PKA プロテインキナーゼ I インヒビター
その中で上記反応を行わせる使い捨て容器などもキットに含むことができる。
上記から、分析技術分野に精通した者は、記述されたアッセイ形態をなお他の形態に適用する多様な方式手段を容易に想像できよう。要約すれば、少なくとも一部のPDE5 (またはPKGによって選択的に燐酸化され得る他のタンパク質のいずれでも)を用いることによって、PKGの存在および相対量(対照と比較して) を、標識された燐酸化剤を用いて燐酸化可能なタンパク質の燐酸化を評価することによって、確認され得る。
【0083】
SAAND は、新生物細胞中の PKG 活性を増加させる
上記の PKGアッセイを用いて次の実験を行い、SAAND で処理した新生物細胞中のPKG 発現の増加またはcGMPレベルの上昇のいずれか (または双方)によってSAANDがPKG 活性を増加させることを確立した。
試験手順
二つの異なるタイプのPDE インヒビターを、新生物細胞における PKGに及ぼすそれらの影響に関して評価した。SAANDであるエキシスリンドを、それが抗新生物性であることから評価した。また、非SAANDの 典型PDE5 インヒビターである E4021を評価して、PKG 上昇が単に典型PDE5阻害によるものか、あるいはPKG上昇がPDE5および米国特許出願 No. 09/173,375 (Liu ら、1998年10月15日出願)に開示された新規PDE のSAAND阻害の親アポトーシス性効果に関わったのかを確認した。
APC突然変異を含む新形成物に及ぼすcGMP特異性PDE阻害の影響を試験するために、SW480 結腸癌細胞を用いた。SW 480 は APC突然変異を含むことが知られている。RPMI 5%血清中の約5百万個のSW480細胞を それぞれ8枚のプレートに加える。
2 枚- 10cm プレート --- 30 μL DMSO 担体対照 (薬物を含まない)、
3 枚- 10cm プレート ---200 μM、 400 μM、600 μM エキシスリンド、および
3 枚- 10cm プレート --- 0.1 μM、 1 μM および 10 μMのE4021
【0084】
これらプレートを37℃で 5% CO2インキュベーター中で48時間培養する。
液体培地をプレートから吸い出す (細胞はそれ自体でプレートに付着する)。付着した細胞を各プレート中で冷PBSで洗浄して、200 μL 細胞溶解緩衝液 (すなわち、 50 mM トリス-HCl、1% NP-40、150 mM NaCl、1 mM EDTA、1mM Na3VO4、1 mM NaF、500μM IBMX およびプロテイナーゼインヒビター) をそれぞれのプレートに加える。 細胞溶解緩衝液の添加後すぐに、溶解した細胞を各プレートからこすり落として集める。各シャーレからの細胞溶解物をミクロフュージ管に移して、ミクロフュージ管を4℃で15分間インキュベートするが、その間、ミクロフュージ管を緩やかに揺り動かしながら細胞を完全に溶解する。 溶解完了後、ミクロフュージ管を全速(14,000 r.p.m.) で15 分間遠心分離する。各ミクロフュージ管からの上清を新たなミクロフュージ管に移す。
【0085】
次いで、タンパク質アッセイを各ミクロフュージ管の内容に関して行う。というのは、薬物が細胞増殖を阻害すれば、総タンパク質量は薬物処理サンプル中よりも対照中の方が多いからである。明らかに、薬物が作用しない場合は、薬物処理サンプル中の総タンパク質は対照と実質的に同じでなければならない。上記の場合、対照およびE-4021ミクロフュージ管は希釈して高薬量エキシスリンド処理サンプルに標準化しなければならなかった (エキシスリンドのより低い薬量群は最高薬量エキシスリンドサンプルに標準化しなければならなかった)。このように、タンパク質アッセイの後、種々のサンプルの総タンパク質濃度を標準化(例えば、希釈によって)しなければならない。
各薬物濃度および対照に関して、以下に詳述するように、cGMPを添加するもの、cGMP添加しないものの、二つのPKGアッセイを行う。これら二つの異なるPKGアッセイを行う理由は、 cGMPが特異的に PKGを活性化するからである。本発明の新規 PKGアッセイを用いてPKG活性をアッセイする場合、PKG 活性の増加が細胞中の増加したcGMPによるものか(これは cGMP特異性PDE阻害 によって起き得る)、またはPKG 活性レベルがPKG タンパク質の増加した発現によるものかを確認することはできない。同一サンプルで添加cGMP を含むものと含まないものの双方のPKG 活性を測定することによって、PKG 活性増加が(あるとすれば)、増加したPKG発現によるかどうかを確認できる。このように、抗新生物薬物がPKG 活性を対照と比較して上げる場合、薬物誘発された増加が増加したPKGタンパク質 発現(活性化と対比して)によるものかを、次のような場合に確立できる。すなわち、 (1) 添加cGMP を有する薬物処理されたサンプルが添加cGMP を有する対照サンプルと比較してより大きいPKG活性を示す場合、および (2) 添加cGMP を有しない薬物処理されたサンプルが対照と比較してより大きいPKG 活性を示す場合である。
【0086】
cGMP添加および無添加の平行サンプルを調製した後、50 μL の各細胞溶解物を上記のPDE5/GST 固相基質スラーリー20 μL に加える。評価される各対照または薬物細胞溶解物サンプルについて、10 μCi 32P-γ-ATP 溶液を含む燐酸化緩衝液(200μM ATP、 4.5 mM MgCl、5 mM KH2PO4、5 mM K2HPO4) を各混合物に加えることによって反応を開始する。得られる混合物を30℃で30 分間インキュベートする。次いで、混合物を遠心分離して固相を分離して、上清を捨てる。各管中の固相を 700 μL の冷PBSで洗浄する。固相に、Laemmli サンプル緩衝液 (Bio-Rad) (30 μL) を加える。混合物を5分間煮沸して、7.5% SDS-PAGE上に載せる。ゲルを150 V 1時間泳動させる。得られるバンドをクマシーブルーで染色して、あるとすれば85 Kd GST-PDE5 融合タンパク質バンドを可視化する。ゲルを乾燥させて、そのゲルをX線フィルム上に供する。PDE5が燐酸化されている場合は、フィルムには対応する黒ずんだバンドが表れる。各バンドの黒ずみは、燐酸化の程度に関係する。
【0087】
図 18A および 18Bで示すように、SAANDエキシスリンドは、cGMP添加およびcGMP 無添加のサンプルの双方で、余分cGMPを含むおよび含まない対照サンプルと比べて、薬量依存的にPKG 活性を増加させる。これは、各薬物処理されたサンプルの85 Kdバンドがより濃く現れることで明白になる。加えて、エキシスリンドで処理されたSW480サンプルは、添加cGMPとともに担体で処理したサンプルと比較して、アッセイにおいてcGMP 添加でより大きいPKG燐酸化活性を示す。このように、 薬物処理したサンプル中のPKG活性は、SAANDがcGMP特異性 PDE 活性を阻害するときの細胞性cGMP の増加によるPKGの活性化のみによるのではなく、APC 突然変異を有する新形成物におけるPKG活性の増加はまた、増加したPKG 発現にもよる。
また、E4021-処理された SW480サンプルは対照と比較してPKG 活性化を示さなかった (図 18A および18Bを参照) という事実は、APC 突然変異を含む新形成物においてSAANDによって起きたPKG活性増加は単に典型PDE5の阻害によるものではないことを示す。
PKG 活性化を評価するための分析技術として、上記のX線フィルム曝露の代わりに、SDS PAGEからの85 Kdバンドをゲルからバンドを切り出すことによって燐酸化の程度に関して評価できるが、切り出したバンド中に取り込まれた32P は、32P ウィンドウにおいてシンチレーション(ベータ)カウンターによってカウントすることができる。
【0088】
β-カテニン突然変異を含む新形成物に及ぼす cGMP特異性 PDE 阻害の影響を試験するために、HCT116 結腸癌細胞を用いた。HCT116は、β-カテニン突然変異を含むことが知られているがまた、APC突然変異を含まないことが知られている。上記のSW480の方法に用いたのと同じ方法を用いて、HCT116細胞を増殖した。この実験では、エキシスリンドと対照のみを用いた。エキシスリンド処理した細胞は対応する対照よりも広範囲に燐酸化されたPKGを生じ、これはAPC 突然変異に無関係な薬物処理細胞においてPKG 活性化が起きたことを示している。
したがって、本発明の目的のために、「β-カテニン」 はそのタンパク質の野生型および/または突然変異型を意味する。
【0089】
SW 480 において増加した PKG 発現および減少したβ - カテニンの、ウエスタンブロットによる確認
上記で示したように、SAANDはPKG 発現の増加およびcGMPレベルの上昇をもたらし、その両方とも、SAAND処理した新生物細胞において PKG 活性の増加をもたらす。このPKG タンパク質発現の増加は、下記のように、相対定量的ウエスタンブロットによってさらに確認された。
前記のようにしてエキシスリンドで処理したSW480 細胞を、氷冷PBSで1回リンスすることによってミクロフュージ管から集める。細胞を修飾RIPA 緩衝液によって 15 分間攪拌しながら溶解する。細胞溶解物を低温室で遠心分離する。遠心分離後ただちに、上清を新鮮なミクロフュージ管に移す。BioRad DC タンパク質アッセイ(Temecula、CA) を行って、サンプル中のタンパク質濃度を測定する。上記のように、サンプルをタンパク質濃度に関して標準化する。
【0090】
各サンプルの50 mg を 10% SDS ゲルに載せる。SDS-PAGE を行い、次いでタンパク質をニトロセルロース膜に移す。ブロットしたニトロセルロース膜を、新鮮調製した5% 無脂粉乳を含むTBST 中で室温で1時間攪拌しながらブロックする。
ヤギ抗-PKGプライマリー抗体を推奨される濃度までTBST/5% 無脂粉乳中で希釈する。ニトロセルロース膜をプライマリー抗体溶液中に入れて、室温で攪拌しながら1時間インキュベートする。ニトロセルロース膜をTBSTでそれぞれ10分間3回洗浄する。ニトロセルロース膜を、二次ペルオキシダーゼ(POD)抱合したウサギ抗-ヤギ抗体を含む溶液中で室温で1時間攪拌しながらインキュベートする。ニトロセルロース膜を、TBSTでそれぞれ10分間3回洗浄する。検出は、ベーリンガー・マンハイム BM ブルー POD基質を用いて行う。
図 19にグラフで示したように、エキシスリンドはβ-カテニンの減少と PKGの増加をもたらすが、データはウエスタンブロットによって得られた。 SW480 細胞をエキシスリンドまたは担体 (0.1% DMSO)で48時間処理した。 各細胞溶解物の上清50 μg を、10% SDS-ゲルに載せて、ニトロセルロース膜にブロットして、膜をウサギ-抗-β-カテニン抗体およびウサギ抗-PKG抗体を用いてプローブした。
【0091】
SAAND は新生物細胞においてβ - カテニンレベルを下げる
この観察は、SW480細胞を200、 400 あるいは 600 μM のエキシスリンドまたは担体 (0.1% DMSO)とともに培養することによってなされた。細胞を処理48時間後に集めて、イムノブロッティングのために処理する。イムノ反応性タンパク質をウエスタンブロットによって検出することができる。ウエスタンブロット分析は、β-カテニンの発現がエキシスリンド処理した細胞では対照に比べて50 %減少したことを示した。これらの結果は、β-カテニンがSAAND処理によって低減することを示す。PKG活性がそのような処理で増加することを確立する上記の結果および、β-カテニンがPKGによって燐酸化されることを確立する以下の結果を合わせて、これらの結果は新生物細胞におけるβ-カテニンの減少はPKGの活性化によって開始されることを示す。したがって、新形成物におけるPKG活性を、抗新生物剤としての化合物を選択するためのスクリーニングツールとして使用することは有用である。
【0092】
PKG によるβ - カテニンの燐酸化
インビトロで、 PKG はβ-カテニンを燐酸化する。これを確立した実験は、「β-カテニン免疫沈降」の項に記述した方法でSW480細胞(いかなる薬物でも処理されないもの)からβ-カテニン含有 複合体を免疫沈降させることに関与する。免疫沈降した複合体は、まだ固相(すなわち、ビーズ)上にとらわれた状態で、これを32P-γ-ATP および純 PKG (100 単位)と混合する。PKG添加しない対応する対照を調製する。
タンパク質を固相からSDS緩衝液を用いて放出させて、タンパク質を含む混合物を7.5% SDS-PAGE ゲル上で泳動させる。混合物のゲル上の泳動によって過剰のゲル32P-γ-ATPが混合物から除去される。したがって、93Kd β-カテニンバンド中に検出される32P-γ-ATP は全てβ-カテニンの燐酸化によるものである。添加PKGなしの対照と比較してPKG添加して処理された93 Kd β-カテニンバンド中に検出される 32P-γ-ATPの増加はいずれも、PKG 添加して処理されたバンドにおけるβ-カテニンの燐酸化によるものである。
本発明者らが得た結果では、微細な事実上検出不能な燐酸化を示した対照と比較して、PKGで処理したバンドでは燐酸化の顕著な増加があった。この結果は、β-カテニンがPKGによって燐酸化され得ることを示す。
【0093】
PKG による、突然変異 β - カテニンの燐酸化
直前のセクションに記したのと同じ実験をHCT116細胞を用いて行った。この細胞は、APC突然変異は含まないがβ-カテニン突然変異を含む。これら実験結果もまた、突然変異β-カテニンがPKGによって燐酸化されることを示す。
したがって、本発明の目的のために、β-カテニンの燐酸化は、野生型および/またはそのタンパク質の突然変異型の燐酸化を指すものである。
【0094】
β - カテニンは PKG とともに沈殿する
SW480 および HCT116 細胞溶解物双方の上清を、ウエスタンブロット実験において上記したのと同じ方法で調製する。細胞溶解物を、500 mgの細胞溶解物当たり150 ml のプロテイン A セファロースビーズスラーリー (50%) を加えて、管シェーカー上で4℃ で 10 分間インキュベートすることによって予め清澄にする。プロテインA ビーズを、14,000 x g 、 4℃ で10 分間遠心分離して除去する。上清を新たな遠心分離管に移す。10 mg のウサギポリクローナル抗-β-カテニン抗体 (Upstate Biotechnology、 Lake Placid、New York) を500 mg の細胞溶解物に加える。 細胞溶解物/抗体混合物を緩やかに 2 時間、 4℃で管シェーカー上で混合する。150 ml プロテインA セファロースビーズスラーリー(75 ml 詰めビーズ) を加えて、混合物を管シェーカー上で一晩4℃緩やかに揺り動かすことによって、免疫複合体が得られる。セファロースビーズを律動的遠心分離によって集める(ミクロ遠心分離機で14,000 rpm、5秒間)。上清画分をすてて、ビーズを800 ml の氷冷 PBS 緩衝液を用いて3回洗浄する。セファロースビーズを150 ml の2 x サンプル緩衝液中に再懸濁させて、緩やかに混合する。セファロースビーズを5 分間煮沸して、免疫複合体をビーズから解離させる。ビーズを遠心分離で集めて、SDS-PAGE を上清について行う。
【0095】
ウエスタンブロットを上清について行い、次いで、膜をウサギ抗-β-カテニン抗体で精査(プローブ)する。次いで、膜を TBST で3 回それぞれ10 分間洗浄して、過剰の抗-β-カテニン抗体を除去する。セイヨウワサビペルオキシダーゼに抱合したヤギ抗ウサギ抗体を加えて、次いで、室温で1時間インキュベートする。こうすることによって、HRPO 基質とともにβ-カテニンの存在を目で見ることができる。この実験では、β-カテニンの存在を明確に可視化できた。
同じ膜上のPKGを検出するために、抗-β-カテニン抗体抱合体 をまず、膜から2 % SDS および 100 μM 2β-メルカプトエタノールを含む 62 mM トリス-HCl 緩衝液 (pH 7.6) を用いて 55℃ 水槽中で 0.5 時間かけて剥がす。次いで、この剥離膜を、5% 無脂粉乳を含むTBSTを用いて1時間室温で膜を揺り動かしながらブロックする。次いで、ブロックされた剥離膜をウサギポリクローナル-PKG 抗体(Calbiochem、LaJolla、CA)を用いて精査するが、これはHRPOに抱合されたヤギ抗 ウサギ二次抗体を用いて検出される。ブロット膜上の PKGの存在をHRPO基質を用いて可視化する。この実験において、実際に PKGg可視化された。膜状のタンパク質のみが 細胞上清中でβ-カテニンと免疫沈降したものであるとすると、この結果はPKGが細胞上清におけるβ-カテニンを含むタンパク質複合体と物理的に連結されたということを明確に確立する。
同じウエスタンブロット膜をまた、抗-GSK3-β 抗体を用いて剥ぎ取った後で精査して、これもまたβ-カテニンと共沈殿したかどうかを確認した。その実験で、我々はまた、膜上に GSK3-βを検出し、これは GSK3-βが GSK3-βとPKGとで沈殿したことを示し、 三つのタンパク質が同一複合体の部分である得ることを示唆する。GSK3-β および β-カテニンが正常細胞において APC 複合体の部分を形成することから、これはPKGが同一複合体の部分であり得ること、およびその複合体の部分としてβ-カテニンの燐酸化に関与し得ることを示唆する。
【0096】
cGMP PDE インヒビターを含む抗新生物薬剤組成物
その作用機序がcGMP 阻害に関わることが見出される以前におよびそれが本発明の選択規準を満足することが知られる以前に、これもまた発明された一薬剤は、(Z)-5-フルオロ-2-メチル-(4-ピリジリデン)-3-(N-ベンジル)インデニルアセトアミド塩酸塩 (化合物 I)である。これはインビトロおよびインビボ評価で、広範囲の新形成物に対する活性を有する抗新生物剤として示されてきた。これはまた、動物研究およびヒトにおける単一漸増用量研究において安全である。
以下に示すデータから当業者には明らかであるように、化合物I は、従来の化学療法剤または抗新生物性NSAIDの寛容 (そして多くの場合、毒性) 投与量をはるかに超える薬量で動物に安全に与え得る。例えば、ラットでの急性毒性研究において、2000 mg/kg およびそれ以下の量の化合物 Iの単一経口投与(担体: 0.5% カルボキシルメチルセルロース) の結果、観察できる毒性の徴候は見られなかった。4000 mg/kgでは、体重増加がやや低減された。単一投与1000 mg/kg の腹腔内投与の結果、体重増加が低減され、この群の動物のいくらかで剖検時に腸間膜癒着が見られた。
【0097】
イヌにおいて、カプセルに入れた化合物I の1000 mg/kg 投与の結果、雄イヌ2匹と雌イヌ2匹の単一群への毒性の兆候は認められなかった。化合物 I カプセルの性質上、この投与は少なくとも13 カプセルを各動物に使用しなければならなかったが、これは動物にストレスなしで与え得る最大数と判断された。したがって、これらのイヌにはその後に7回連続で1000 mg/kg/日を投与した。いずれの投与時期にも、薬物関連の影響の明白な徴候は観察されなかった。
このように、単一投与では化合物 I に急性毒性はない。これらの研究結果に基づいて、化合物I の経口LD50 は、イヌにおいて1000 mg/kg 以上、ラットにおいて 4000 mg/kg 以上、そして腹腔内 LD50 はラットで1000 mg/kg 以上であると考えられた。
【0098】
ラットにおける7日間用量範囲評定実験を、化合物 I を0、50、500 または2000 mg/kg/日の薬量で投与して評価した。その結果、50 mg/kg/日では観察できる毒性徴候は何ら見られなかった。500 mg/kg/日では、処置に関連する影響は雌ラットにおける絶対的および相対的肝臓重量の増加に限定された。2000 mg/kg/日では、影響としては、雄ラットにおける呼吸困難および/または異常な呼吸音、体重増加のおよび摂食量の低減、および雌ラットにおける肝臓重量増加などがあげられた。血液学的または血液化学的変化、顕微鏡的病理変化のいずれも、どの投与量レベルでも見られなかった。
ラットにおける28-日実験もまた、0、 50、500 および 2000 mg/kg/日の投与量で行った。化合物Iに起因する異常な臨床的所見は見られず、体重変化、検眼鏡検査、血液学的および血液化学的諸数値および尿分析検査で目立った所見はなかった。剖検では肉眼的組織変化は見られなかった。臓器重量データでは、2000 mg/kg/日の投与で統計学的に有意な肝臓重量の増加および2000 mg/kg/日投与群で統計学的に有意な甲状腺重量の増加が明らかになった。より低い投与量での僅かな増加は、統計学的に有意ではなかった。組織の組織病理学的評価は、濾胞細胞肥大の痕跡の存在、甲状腺における有糸分裂形状数増加(細胞増殖の可能性を示唆する)および肝臓における軽度の中心小葉性肥大を示した。500 mg/kg/日投与の1雌動物で甲状腺における有糸分劣形状の増加が見られたが、これらの諸変化は一般に2000 mg/kg/日投与の動物の少数に限られた。肝臓における所見は、ミクロソーム酵素の極めて軽い刺激を示し得るもので、それによって甲状腺ホルモンの代謝が増加し、その結果として甲状腺が刺激された。このように、これらの影響は従来の化学療法剤またはNSAIDの同様の投与量から予期されるものに比べると、極めて微細であることが当業者には理解されよう。
【0099】
化合物 Iの安全性プロフィールをさらに確立するために、前立腺腫瘍細胞系の化合物I誘発アポトーシスが、正常組織由来の前立腺上皮細胞に及ぼすその影響と同様のものであるかどうかを評価するための実験を行った。アンドロゲン感受性前立腺腫瘍細胞系であるLNCaP (ATCC (Rockville、 MD)から入手) を、標準条件下で5%ウシ胎児血清および 2 mM グルタミンを含むRPMI 160 培地を用いて増殖させた。正常前立腺由来のプライマリー前立腺上皮細胞培養物 (PrEC) (Clonetics Inc. (San Diego、CA)からのもの) を、そのような培養物の増殖に最適化した無血清培地(Clonetics Inc) を用いる以外は腫瘍細胞系と同じ条件下で増殖させた。実験のために、LNCaP または PrEC 細胞を、96穴プレートに ウェル当たり10,000 細胞の密度で蒔いた。24 時間後、細胞を担体 (0.1% DMSO) または DMSO に溶解した50 μM の細胞 I (遊離塩基) のいずれかで処理した。種々の薬物処理時間 (4、 24、 48、72または 99 時間) の後、細胞を溶解して、アポトーシス細胞死の指標としてのヒストン連結DNAの測定のために処理した (Piazza et al., Cancer Research 57: 2452-2459, 1997を参照)。
図27は、50 μM の化合物I(遊離塩基) 処理の後のLNCaP 細胞培養物中のヒストン連結断片化DNAの量の時間依存性増加を示す。断片化 DNA の有意な増加が処理後24 時間で検出され、誘発は連続処理の4日まで維持された。これと対比して、化合物 I (50 μM) による PrEC (「正常」 前立腺) 細胞の処理は、処理4日までDNA 断片化に影響しなかった。これらの結果は、正常細胞と対比して、新生物細胞におけるアポトーシスの選択的誘発を示す。これは、急速増殖する正常細胞と新生物細胞において、同じようにアポトーシスまたは壊死を誘発する従来の化学療法剤と極めて対照的である。
【0100】
追加インヒビターの識別
新生物剤として治療効果を有し得る追加の cGMP特異性 PDE 阻害細胞の構造的な識別に関して、当業者にはここに開示する多くの有用なモデル化合物が(参考文献として添付したそれら類似体を含めて) 提供されるが、これは同一構造を有するが化学的には異なる追加化合物のコンピュータモデル作成のためのベースとして用いることができる。例えば、Molecular Simulations Inc.から販売されているWebLabTM ViewerProTM などのソフトウェアは、分子視覚化および化学情報伝達能を含む。そのようなソフトウェアには、既知活性化合物を3D視覚化して、スケッチまたはインポートされた化学構造の正確性を確認するなどの機能性を含む。加えて、ソフトウェアはユーザー定義の特性に基づいて構造を重ね合わせることを可能にし、ユーザーは距離、角度または二面角を測定することができる。
この状況において、他の活性化合物の構造が上記に開示されたので、そのようなソフトウェアを用いてクラスター分析ならびに 2D および3D 類似検索手法を適用して、潜在的な新追加化合物を識別して、次いでそれらを本発明の選択規準に従ってスクリーニングおよび選択することが誰にでもできる。これらソフトウェア法は、類似しているまたは同様の性質を有している化合物は同様の活性を有する確率が高いという原理に基づくもので、それは本発明の選択規準を用いて確認することができる。
【0101】
同様に、そのような追加化合物がコンピュータモデルの場合、多数のそのような化合物およびその異型体は、製薬産業分野における通常技能者によって常用される公知の組合わせ化学技術を用いて合成することができる。組合わせ化学事業の数少ない臨時雇用(for-hire)サービスは、例えばNew Chemical Entities, Inc. (Bothell Washington)、Protogene Laboratories, inc. (Palo Alto、California)、Axys, Inc. (South San Francisco、California)、Nanosyn, Inc. (Tucson、Arizona)、Trega, Inc. (San Diego、California)およびRBI, Inc. (Natick、Mass.)で提供される。他に多数の臨時雇用会社がある。 多数の大手製薬会社はより優れた、そうでなければ同等の社内能力を有している。手短に言えば、当業者はスクリーニングのための多数の化合物を容易に製造でき、それからここに開示した化合物の特性を有する新形成物治療に有望な化合物を選択することができる。
加えて、組合わせ技術を用いて通常つくられた化合物の商業的に知られたライブラリーが多数ある。そのような化合物はまず、上記に説明したようなソフトウェアを用いてここに開示したタイプの活性化合物と構造的に類似しているかどうかを評価確認することができる。そのような構造的に類似の化合物を識別した後、化合物を本発明の方法によって容易にスクリーニングし、抗新生物cGMP PDE インヒビターを得ることができる。
【0102】
本発明の規準を用いてスクリーニングしてから選択され得る化合物の識別をさらに助けるために、選択された抗新生物化合物のPDE5タンパク質への結合を知ることは有利である。 以下に説明する方法によって、本発明の選択規準を満足する好ましく望ましい化合物は、PDE5のcGMP 触媒領域に結合することが見出された。
これを確立するために、触媒ドメインを含まないPDE5配列が用いられた。そのような配列を産生するための一方法は、その配列を融合タンパク質、好ましくはグルタチオンS-トランスフェラーゼ (「GST」)との融合タンパク質として発現するものである。GST-cGB-PDE5融合タンパク質の産生は、新規 PKG アッセイと題した上記セクションに記述の方法によって行った。
目的化合物のcGMP 結合アッセイ (Francis S. H. et al, J. Biol. Chem. 255, 620-626, 1980) は 5 mM 燐酸ナトリウム緩衝液 (pH=6.8)、1 mM EDTA、0.25 mg/mL BSA、H3-cGMP (2μM、NEN) および GST-cGB-PDE5 融合タンパク質 (30 μg /アッセイ) を含む全量100 μL 中で行う。各被験化合物を3H-cGMP 基質と同時に加えて、混合物を22℃で1時間インキュベートする。 次いで、混合物をフィルター膜としてGF/Bを備えたブランデルMB-24 細胞ハーベスターに 移して、次いで、各10 mL の 冷5 mM カルシウム緩衝液 (pH 6.8)で2回洗浄する。次いで、膜を切り出してシンチレーション用バイアルに移してから、各バイアルに 1 mL の H2O および6 mL のReady SafeTM 液体シンチレーションカクテルを加える。バイアルをベックマン LS 6500シンチレーションカウンター上で計数する。
【0103】
計算のために、結合タンパク質を 5 分間煮沸することによってブランクサンプルを調製する。結合カウントは非煮沸タンパク質と比較すると < 1% である。フィルター膜または他のデブリによる消滅もまた、測定修正される。
PDE5 インヒビターである、硫化物、エキシスリンド、化合物B、化合物E、E4021 およびザプリナスト、およびサイクリックヌクレオチド類似体であるcAMP、サイクリック IMP、8-ブロモ-cGMP、サイクリック UMP、サイクリック CMP、8-ブロモ-cAMP、2'-O-ブチル-cGMP および2'-O-ブチル-cAMP を選択して、これらがGST-cGB-PDE5 タンパク質のcGMP 結合部位に拮抗的に結合できるかどうかを試験する。結果を図 24に示した。cGMPは、GST-cGB-PDE5 タンパク質に特異的に結合する。サイクリック AMP、cUMP、cCMP、8-ブロモ-cAMP、2'-O-ブチル-cAMP および2'-O-ブチル-cGMP はcGMPと結合において拮抗しなかった。高濃度(100 μM)のサイクリック IMP および 8-ブロモ-cGMPは、部分的にcGMP (2 μM) 結合と拮抗することができる。PDE5 インヒビターはいずれも、GST-cGB-PDE5の結合においてcGMPと拮抗を示さなかった。したがって、これらはPDE5 の cGMP 結合部位に結合しない。
【0104】
しかし、化合物E は確かに(cGMPと)拮抗的に PDE 5 (すなわちピークA)に結合する。 (化合物 E はまた、(cGMPと)拮抗的にPDE ピーク Bと結合する。)化合物 E がPDE5のcGMP結合部位に結合しないということであれば、化合物E と cGMPの間にともかく拮抗的結合があるという事実は、 化合物 E のような望ましい化合物はPDE5上のcGMP 触媒部位に結合することを意味し、これは、当業者(従来の拮抗的結合実験に関して)によって容易に得ることができる情報であるが、当業者の他の化合物モデル作成をさらに容易にする。したがって、ここに提示する望ましい化合物の化学構造および cGMP 結合部位情報を用いて、当業者は治療剤として使用するための他の化合物をモデル作成、識別および選択 (本発明の選択規準を用いて) することができる。
【0105】
シスプラチン誘導体とPDE インヒビターとの組合わせ治療
本発明の方法は、新形成物を有する患者の抗新生物性白金配位化合物およびcGMP特異性 PDE インヒビターの双方を用いる治療に関する。抗新生物性白金配位化合物またはシスプラチン誘導体は多数ある。これに関して、ここでこの二つの用語は互いに交換可能に用いられる。種々の抗新生物性白金配位化合物(例えば、シスプラチンおよびカルボプラチン) をここで開示する。他の抗新生物性白金配位化合物は米国特許第 4,996,337、4,946,954、5,091,521、5,434,256、5,527,905および5,633,243号に開示されており、これら全てはここに参考文献として添付される。そのような構成物は、ここで用いる用語での「抗新生物性白金配位化合物」の非制限的例を集合的に開示する。
本発明は、新形成物を有する患者の治療のために組合わせ療法を用いることに関与する。この薬剤の組合わせ、すなわちシスプラチン誘導体およびcGMP特性PDEインヒビターを用いて患者を治療することによって、いずれかの一方の薬剤のみでは見られないような治療結果が達成される。上記説明したように、エキシスリンドは、本発明の実施においてシスプラチン誘導体とともに組合わせて使用すべき適切なcGMP特異的 PDEインヒビターの一例である。 エキシスリンドはPDE5 および新規 cGMP-PDEの双方を阻害し、エキシスリンドによる新生物細胞の治療の結果は増殖阻害およびアポトーシスとして見られる。(表 9を参照)。
【0106】
インビトロの結果
エキシスリンドおよび抗新生物性白金配位化合物であるカルボプラチンを一緒に試験して、腫瘍細胞系の増殖に及ぼすそれらの組合わせた影響を決定した。組合わせの腫瘍細胞増殖阻害能力を、カルボプラチンの薬量を1 μM から100 μMの種々の量に変えて存在させて、エキシスリンド (FGN-1) の薬量25 μM - 400 μM中でHT-29細胞を増殖させることによって試験した(図 28 32を参照) 。標準 SRB アッセイ (セクション IV.Dを参照) を行って薬剤の細胞増殖に及ぼす影響を決定した。
データは、エキシスリンドおよびカルボプラチンの双方で処理した後の細胞増殖の阻害に関する結果を示す。例えば、図28は、25 μMエキシスリンドおよび種々の薬量のカルボプラチン中で増殖させたHT-29細胞に及ぼす影響を示す。 FGN-1 (エキシスリンド) のみを用いた増殖阻害の割合を、影づけしない最初の左方棒グラフに、FGN-1のみと標識して示す。1 μM カルボプラチンと組合わせた25 μM FGN-1中で増殖した細胞への影響を、 次の右方棒グラフに、1と標識して示す。図28に示されるように、カルボプラチンをエキシスリンドなどのcGMP特異性 PDEインヒビターと組合わせた増殖阻害効果は、いずれの単独使用の効果よりも大きい。この組合わせの効果利益は、エキシスリンド薬量が 25 μM から 100 μM (図 28 32) でカルボプラチン濃度が 10μMまたはそれ以下で最も顕著である。
【0107】
投薬量
本発明の方法は、新形成物を有する患者を治療するための組合わせ療法に関わる。そのような組合わせ療法は、有害な副作用を増強することなく患者への利益を増大する。例えば、エキシスリンドは、本発明においてシスプラチン誘導体と組合わせて用い得る一つのcGMP特異性PDEインヒビターである。
エキシスリンドは、その推奨投与量300 - 400 mg/日の投与では何ら重大な副作用を起こさない。推奨治療量レベルを超えた投与がなされた場合、エキシスリンドによる処置は肝臓酵素レベルの上昇をもたらし得る。この影響は可逆的であって、エキシスリンドの投与量を従来の推奨量レベルに戻すか治療中断すると、肝臓酵素は正常レベルに戻る。一方、シスプラチン誘導体の最も重大な副作用は腎不全と骨髄抑制である。 二つの薬剤の副作用が重複しないことから、エキシスリンドのようなPDEインヒビターは、シスプラチン誘導体の有害な副作用を強めることなくシスプラチン誘導体と組合わせて使用することができる。
【0108】
cGMP特異性 PDE インヒビターおよびシスプラチン誘導体は、少なくとも二つの異なるやり方で組合わせて使用することができる。 第一の方法は、その有益な治療効果を維持し、その副作用を弱めながら、シスプラチン誘導体の従来の推奨投与量範囲を低減するものである。 第二の方法は、活性は増強するがその副作用は増加させずに、シスプラチン誘導体を従来の推奨投与量範囲で用いるものである。これらの方法ではいずれも、患者にはPDEインヒビターとシスプラチン誘導体の両薬剤を同時にまたは順次に投与する。
シスプラチン誘導体の推奨投与量は、治療対象の癌のタイプおよびシスプラチン誘導体が他の化学療法剤と組合わせて使用されるかどうかによって異なる。本発明の実施において、cGMP特異性PDEインヒビターは、シスプラチン誘導体単独または化学療法剤のグループを用いる癌治療の追加成分として用いられる。
【0109】
転移性卵巣腫瘍の治療に関しては、通常のシスプラチンの投与量は、シクロホスホアミド(シトトキサン)と組合わせて使用される場合、75 ないし 100 mg/m2を4週間毎に1回投与する。卵巣腫瘍のためにシスプラチンと組合わせて用いられる他の化学療法剤には、パクリタクセル、シクロホスホアミド、またはドクソルビシンが含まれる。転移性卵巣腫瘍の治療のための単一薬剤としては、シスプラチンは通常100 mg/m2を4週間毎に1回投与する。
進行した膀胱癌では、シスプラチンは単一投与薬剤として、推奨投与量の50ないし70 mg/m2を3ないし4週間毎に1回投与する。
転移性睾丸腫瘍の治療には、他の薬剤と組合わせた場合、推奨シスプラチン投与量20 mg/m2 を5日間毎日投与する。
卵巣癌治療に用いるカルボプラチンの通常投与量は360 mg/m2 で、これを28日毎に1回投与する。
【0110】
本発明の実施において、上記の治療法および他の可能な組合わせのために、適切なcGMP特異性 PDEインヒビターを治療の追加成分として加える。cGMP特異性 PDEインヒビターおよび抗新生物性白金配位化合物は、インヒビターの血中レベルが増殖阻害に関するインヒビターのIC50 値に近くなるように組合わせて用いる。エキシスリンドの場合は、約 200 ないし 400 mg/日の薬量を1日2ないし4回で投与することが推奨される。
本発明の一実施態様で低投与量を用いる方法では、シスプラチンを従来の推奨投与量よりも低い20、50または75 mg/m2(上記適応症に関して)の薬量で、それぞれcGMP特異性 PDEインヒビターと組合わせて投与する。同様にカルボプラチンに関して、360 mg/m2 以下の薬量をcGMP特異性 PDEインヒビターと組合わせて、本発明の低投与量の方法を実施する。したがって、治療法の組合わせによって、副作用を軽減しながら抗新生物性白金配位化合物治療の効果利益が維持できる。
【0111】
第二の実施態様では、シスプラチンの薬量を従来の推奨投与量範囲(治療される癌のタイプによって、例えば、1日20 mg/m2 または50ないし 70 mg/m2 を3ないし4週間に1回、または75ないし 100 mg/m2 を4週間に1回)に維持して、cGMP特異性 PDEインヒビターと組合わせて投与する。同様にカルボプラチンに関して、最新の推奨投与量(約360 mg/m2 を28日毎に1回投与)をcGMP特異性 PDEインヒビターと組合わせて維持することができる。この場合、組合わせは、その有害な副作用を増強することなく抗新生物性白金配位化合物の治療効果を上げる。
上記方法のそれぞれで、抗新生物性白金配位化合物およびcGMP特異性PDEインヒビターは、同時にまたは連続して順次に投与することができる。
【0112】
調剤製法
本発明の方法論によって選択された化合物は、用語「薬剤組成物」の通常に意味から十分に理解されるような薬剤組成物に調製することができる。すなわち、化合物 (例えば、上記の固形物など) および患者に投与するための薬学的に許容され得る担体を含んでなる組成物であるが、経口投与のための固体または液体形状、 IV または IP 投与のための液体形状、局所投与のための軟膏形状、または直腸もしくは局所投与のための座剤に調製することができる。経口投与のための担体が最も好ましい。
当業者に周知のように、経口投与用の薬剤組成物中の薬学的に許容され得る担体には、カプセル、錠剤、丸剤、粉末、トローチおよび顆粒などが含まれる。そのような固体剤型では、担体はショ糖、乳糖または澱粉などの少なくとも一つの不活性希釈剤 を含んでなることができる。そのような担体はまた、通常実施されるように、希釈剤以外の追加物質、例えばステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤などを含み得る。カプセル、錠剤、トローチおよび丸剤の場合は、担体はまた、緩衝剤を含み得る。錠剤、丸剤および顆粒などの担体は、錠剤、丸剤および顆粒の表面に腸溶性剤皮を用いて調製することができる。 あるいはまた、腸溶性剤皮で覆った化合物を錠剤、丸剤または顆粒、および患者への投与用の錠剤、丸剤または顆粒の内部に押し込むことができる。好ましい腸溶性剤皮には、セラックまたはEudraget S などの結腸のpH で溶解または分解するものが含まれる。
【0113】
薬剤組成物中の薬学的に許容され得る担体には経口投与用の液体剤型が含まれ、例えば、薬学的に許容され得る乳剤、溶液、懸濁液、シロップ、および水などの当分野で通常使用される不活性希釈剤を含むエリキシル剤があげられる。そのような不活性希釈剤の他に、組成物はまた、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤などの補助剤および甘味剤、風味剤および芳香剤を含むことができる。
IV または IP投与用の薬剤組成物中の薬学的に許容され得る担体は、通常の薬剤用生理食塩水を含む。
局所投与用の薬剤組成物中の薬学的に許容され得る担体は、DMSO、アルコールまたはプロピレングリコールなど、パッチ(貼付吸収薬)または他の液体保持物質とともに用いて薬剤を皮膚上の所定位置に保持して薬物が乾燥しないようにするものなどを含む。
直腸投与用の薬剤組成物中の薬学的に許容され得る担体は、好ましくは座剤で、これは本発明の化合物に加えて、ココアバターまたは座剤ワックスまたはゲルなどの賦形剤を含み得る。
【0114】
薬学的に許容され得る担体および本発明の化合物は、患者への投与のための単位調剤型で薬剤組成物に調製することができる。単位調剤中の活性成分(すなわち、本発明によって選択された化合物)の投薬量レベルをいろいろ変化させて、所望の投与方法(すなわち、経口や直腸投与)によって新形成物排除活性を達成するに有効な活性成分量を得ることができる。したがって、選択された投薬量レベルは投与される活性化合物の性質(例えば、容易に確認され得る IC50など)、投与経路、所望の治療持続期間および他の因子によって異なる。必要であれば、単位投薬量を、活性化合物の1日必要量を一つの調剤にするか複数調剤に分けて投与する(例えば、一日2-4回)ことができる。
IV 投与に関しては、投与用の最初の投薬量は、インビトロ新生物細胞増殖阻害IC50と同様の血漿濃度が得られるような薬量を基にして確定することができる。平均成人男子は約4リットルの血漿を有することから、本発明によって選択された活性化合物の最初の投薬量は0.5-600 mgの範囲にあり得る。
【0115】
包装
上記したように、本発明の薬剤組成物は、 適応症、使用法などを含む適当な印刷物(例えば包装挿入物)とともに好ましくは容器 (例えば、箱もしくは瓶またはその両方) に包装される。この新規系路と薬剤との関連を引き出すために、当業者は必ずしも系路のそれぞれ全ての局面について熟知する必要はない。例えば、そのうち当業者はこれら化合物の特性を理解するに至るであろうから、必携書またはその阻害の後続的影響に言及することなく該化合物が抗新生物PDE5 インヒビターであることを知らせるだけで十分と考えられる。当業者は、ここに開示された系路が種々の化合物それぞれに関わることを容易に認識するに至り、結局、薬剤組成物と関連するこれら化合物のいずれか一つに言及することで、化合物がこの系路を介して作用することを医師および/または患者に知らせて、患者を説いてその化合物を使用させるのに十分であると考えられる。
【0116】
医師および患者に有用であることに加えて、薬剤組成物がこの系路を介して作用する活性成分を有するという事実は、該薬剤組成物の規定承認を得るのに有用であり得る。上記説明したように、米国食品医薬品局における規定承認 には、二つの問いが関わる。すなわち、薬剤が有効であるかどうかということとそれが安全であるかどうか(少なくとも、薬剤がもたらし得る臨床的有益性と比較検討して)ということである。上記の結果が示すように、ここに開示した新規系路を介しての作用によって、薬剤組成物が有効であることを示し得る。一薬剤がこの系路を介して有効であることを規定当局がいったん理解すれば、次の薬剤はその効用に関して問われるものが少ないであろう。
【0117】
この臨床的に安全な系路を介しての作用で新形成物を阻害するということでもたらされる規定上の利点は、少なからず重要である。抗新生物剤の開発では、薬剤は新形成物に有効であるが安全性の点で規定承認を拒絶されるというのが過去の歴史である。加えて、規定当局が安全性を理由として用途の限定を推奨するか抗新生物剤の適応症を狭めるというのが通例で、これは薬剤の広範な使用を制限する。ここに開示した系路を介して作用する上記のような化合物の安全性プロフィールを以ってすれば、薬剤が有効であれば、その安全性プロフィールからは非承認や、承認されたとして用途制限の議論に至るとは考えにくい。したがって、そのような薬剤組成物の承認のための書類 (例えば、安全性および有効性の包括的要約ならびに規定関連分野で周知の最終研究報告およびロックされた関連データベース) をまとめて提出するとき、ここに記述したプロフィールに適合する抗新生物薬剤に関する規定承認を得るに際して、適合しない抗新生物剤と対比して、確実な規定上の利点がある。したがって、本発明の別の局面は、抗新生物薬剤組成物の承認性を向上させるプロセスであり、それには上記特性を有する化合物の開発、その薬剤組成物への調製、そして当業者に公知の必要な臨床研究を実施した後のその組成物の規定承認申請が含まれる。
明らかに、上記の教示のもとで、本発明の修飾および変更が多数可能である。したがって、ここに付された特許請求の範囲内で、本発明はここに具体的に記述されたものとは別のやり方で実施し得ることが理解さるべきである。
【図面の簡単な説明】
【図1】SW480新生物細胞から得られたcGMP ホスホジエステラーゼのcGMP活性のグラフであって、DEAEトリスアクリルM カラムからの溶離液からアッセイされたものである。
【図2】SW480新生物細胞から得られた再載されたcGMP ホスホジエステラーゼのcGMP活性のグラフであって、DEAEトリスアクリルM カラムからの溶離液からアッセイされたものである。
【図3】本発明の新規PDEの動力学的挙動のグラフである。
【図4】スリンダクの硫化物誘導体およびスリンダクのスルホン誘導体(別名エキシスリンド)の、精製シクロオキシゲナーゼ活性に及ぼす影響を示すグラフである。
【図5】試験化合物BおよびEの、COX 阻害に及ぼす影響を示すグラフである。
【図6】硫化スリンダクおよびエキシスリンドの、培養腫瘍細胞から精製されたPDE4 および PDE5に及ぼす阻害的影響を示すグラフである。
【図7A】 硫化スリンダクの、HT-29細胞におけるサイクリックヌクレオチドレベルに及ぼす影響を示すグラフである。
【図7B】硫化スリンダクの、HT-29細胞におけるサイクリックヌクレオチドレベルに及ぼす影響を示すグラフである。
【図8】化合物Bのホスホジエステラーゼ阻害活性を示すグラフである。
【図9】化合物Eのホスホジエステラーゼ阻害活性を示すグラフである。
【図10A】硫化スリンダクの、HT-29細胞のアポトーシスおよび壊死に及ぼす影響を示すグラフである。
【図10B】エキシスリンドの、HT-29細胞のアポトーシスおよび壊死に及ぼす影響を示すグラフである。
【図11A】エキシスリンドの、HT-29細胞増殖阻害およびDNA断片化によって決定されるアポトーシス誘発に及ぼす影響を示すグラフである。
【図11B】硫化スリンダクの、HT-29細胞増殖阻害およびDNA断片化によって決定されるアポトーシス誘発に及ぼす影響を示すグラフである。
【図12】化合物Eのアポトーシス誘発的性質を示すグラフである。
【図13】化合物Bのアポトーシス誘発的性質を示すグラフである。
【図14】硫化スリンダクおよびエキシスリンドの、腫瘍細胞増殖に及ぼす影響を示すグラフである。
【図15A】硫化スリンダクおよび対照(DMSO)の、増殖阻害活性を示すグラフである。
【図15B】硫化スリンダクおよび対照(DMSO)の、アポトーシス誘発活性を示すグラフである。
【図16】化合物Eの増殖阻害活性を示すグラフである。
【図17】スリンダク代謝物による、マウス乳腺器官培養における前悪性新生物性病変の阻害を示すグラフである。
【図18A】添加cGMPの存在しない薬物処理細胞溶解物からの SW480細胞溶解物のSDSタンパク質ゲルであって、細胞はカルチャー中でDMSO (0.03%、列1および2)、エキシスリンド (200、400 および 600μM; 列 3、 4、5) および E4021 (0.1、1 および 10μM、列 6、7、8)で48時間処理されたものである。
【図18B】添加cGMPの存在下の薬物処理細胞溶解物からの SW480細胞溶解物のSDS(X線フィルム曝露)ゲルPKGアッセイであって、細胞はカルチャー中でDMSO (0.03%、列1および2)、エキシスリンド (200、400 および600μM; 列 3、4、5) および E4021 (0.1、1 および 10μM、列 6、7、8)で48時間処理されたものである。
【図19】対照と比較した新生物細胞におけるβ-カテニンおよび PKG レベルに及ぼすエキシスリンドの影響のウエスタンブロット実験の結果の棒グラフである。
【図20】HTB-26新生物細胞から得られたcGMPホスホジエステラーゼのcGMP 活性のグラフであって、DEAEトリスアクリルM カラムからの溶離液からアッセイされたものである。
【図21】HTB-26新生物細胞から得られたcGMPホスホジエステラーゼのcGMP 活性のグラフであって、低および高基質濃度を用いたDEAEトリスアクリルM カラムからの溶離液からアッセイされたものである。
【図22】LnCAP新生物細胞から得られたcGMPホスホジエステラーゼのcGMP 活性のグラフであって、DEAEトリスアクリルM カラムからの溶離液からアッセイされたものである。
【図23】LnCAP新生物細胞から得られたcGMPホスホジエステラーゼのcGMP 活性のグラフであって、低および高基質濃度を用いたDEAEトリスアクリルM カラムからの溶離液からアッセイされたものである。
【図24】サイクリックヌクレオチド類似体および選択されたPDE5インヒビターに関するPDE5の非触媒性cGMP結合部位の特異性結合を示す、棒グラフである。
【図25】SW480新生物細胞から得られたcGMPホスホジエステラーゼのcGMP 活性のグラフであって、緩衝液中エチレングリコールを用いたDEAEトリスアクリルM カラムからの溶離液からアッセイされたものである。
【図26】ローラーボトル中で増殖したSW480新生物細胞から得られたcGMPホスホジエステラーゼのcGMP 活性のグラフであって、DEAEトリスアクリルM カラムからの溶離液からアッセイされたものである。
【図27A】50 μMの化合物Iで処理した後のLNCaP細胞培養物におけるヒストン結合断片化DNA量の、時間依存性増加を示すグラフである。
【図27B】処置4日目までDNA断片化に影響しなかった化合物I (50μM) による、PrEC 前立腺細胞の処理経過を示すグラフである。
【図28】エキシスリンド25 μMでの、腫瘍細胞増殖に及ぼすカルボプラチンおよびエキシスリンド(FGN-1)の影響を示すグラフである。
【図29】エキシスリンド50μMでの、腫瘍細胞増殖に及ぼすカルボプラチンおよびエキシスリンド(FGN-1)の影響を示すグラフである。
【図30】エキシスリンド100 μMでの、腫瘍細胞増殖に及ぼすカルボプラチンおよびエキシスリンド(FGN-1)の影響を示すグラフである。
【図31】エキシスリンド200 μMでの、腫瘍細胞増殖に及ぼすカルボプラチンおよびエキシスリンド(FGN-1)の影響を示すグラフである。
【図32】エキシスリンド400 μMでの、腫瘍細胞増殖に及ぼすカルボプラチンおよびエキシスリンド(FGN-1)の影響を示すグラフである。

Claims (8)

  1. 患者における新生物病変の治療のための薬剤組成物であって、カルボプラチンおよびシスプラチンから選択されるシスプラチン誘導体並びにエキシスリンドを含んでなる組成物。
  2. 患者における新生物病変の増殖阻害のための、請求項1記載の組成物。
  3. 患者における新生物病変の増殖阻害のための、エキシスリンドと同時にまたは順次に投与する薬剤の製造における、カルボプラチンおよびシスプラチンから選択されるシスプラチン誘導体の使用。
  4. シスプラチン誘導体が20 mg/m2以下の薬量での投与のためである請求項3に記載の使用。
  5. シスプラチン誘導体が20 mg/m2ないし100 mg/m2の薬量での投与のためである請求項3に記載の使用。
  6. 患者に同時または順次投与して新生物病変を治療するための、カルボプラチンおよびシスプラチンから選択されるシスプラチン誘導体並びにエキシスリンドを含んでなるキット。
  7. 新形成物の治療のための包装された薬剤組成物であって、
    (a) 薬学的に許容され得る担体、並びにカルボプラチンおよびシスプラチンから選択されるシスプラチン誘導体を含む薬剤組成物、
    (b) 該組成物を説明し、エキシスリンドとの使用法を提供する、文書、および
    (c) 該薬剤組成物および該文書を保持するための包装材
    を含んでなる包装された薬剤組成物。
  8. 新形成物の治療のための包装された薬剤組成物であって、
    (a) 薬学的に許容され得る担体およびエキシスリンドを含む薬剤組成物、
    (b) 該組成物を説明し、カルボプラチンおよびシスプラチンから選択されるシスプラチン誘導体との使用法を提供する、文書、
    および
    (c) 該薬剤組成物および該文書を保持するための包装材
    を含んでなる包装された薬剤組成物。
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