JP5099703B2 - 荷電粒子線装置 - Google Patents

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本発明は、潤滑剤の分解反応を抑制することにより潤滑剤の枯渇を防止し、駆動部の安定性と信頼性の高い半導体ウェハの検査装置である走査電子顕微鏡等の荷電粒子線装置に関する。
半導体デバイスでは、レジストを塗布し、露光、現像を行った後や、作製したレジストパターンをマスクとした下地材料の加工、レジスト除去および洗浄を行った後に、CD−SEM(Critical Dimension−Scanning Electron Microscope)などによって、パターン幅等を検査することにより、プロセスの評価を行うことが行われている。具体的には、CD−SEMに代表される走査電子顕微鏡によって、半導体ウェハ等の試料上に形成されたパターンが適正に形成されているか否かを判断するため、試料ステージによって試料を移動させ、所望のパターンに電子ビームが照射されるように、試料を移動させることが行われている。試料ステージは、少なくとも電子ビームの光軸に垂直な方向(X−Y方向)に移動可能なように構成され、真空引きされた試料室内に配置される。特にCD−SEMは、検査時間の短縮のために試料ステージは高速で移動し、また目的の検査位置で精確に停止するため摺動部は高い荷重によって制御されるという特徴を有する。
これら試料ステージや駆動機構等の摺動部には一般に潤滑剤が塗布されている。潤滑材としてフッ素系の潤滑剤を塗布することにより、潤滑性を高める技術が特開2004−259448号公報(特許文献1)に開示されている。また電子顕微鏡においては、試料の検査を行わないときに、試料ステージに用いられているグリースから発生する有機ガスを50℃〜60℃で加熱処理することによって取り除くことが特開平5−135725号公報(特許文献2)に説明されている。
特開2004−259448号公報 特開平5−135725号公報
昨今、CD−SEMによる半導体ウェハの検査頻度の増加に伴い、摺動部の潤滑剤が枯渇する事例が増加傾向にあることが判明した。潤滑剤が枯渇すると駆動部の摺動抵抗が増加し、例えば高速な駆動や正しい位置での精確な停止ができなくなる可能性がある。また例えば、摺動抵抗の増加によりパーティクルが発生し、装置内に飛散することにより検体である半導体ウェハを汚染する可能性があり、その結果として歩留損失の増大や、或いは経時的に絶縁性能が低下することによる信頼性不良の発生を招く可能性がある。また例えば、さらに摺動抵抗が増加すると駆動用のモーターへの負荷が増加し、焼け付きによる破損を発生する可能性がある。
発明者らによる詳細な検討の結果、潤滑剤の枯渇の原因の1つは、摺動中に進行する潤滑剤の分解反応であることが明らかとなった。すなわち、分解反応が進行することにより徐々に分子量が低下し、すなわち揮発性が増加し、それが揮発することによって潤滑剤が枯渇するというものである。特に走査電子顕微鏡では、昨今の測定頻度の増加に伴って摺動量が増加しており、この潤滑剤の枯渇が著しいことが明らかとなった。
本発明は、潤滑剤の分解反応を抑制することにより潤滑剤の枯渇を防止し、駆動部の安定性と信頼性の高い半導体ウェハの検査装置である走査電子顕微鏡等の荷電粒子線装置を提供することを目的とするものである。
真空室で形成された試料室内にて移動する移動部材の摺動部分に潤滑剤を塗布した半導体ウェハの製造・検査装置において、当該潤滑剤として、分解反応の起きにくいものを採用する。具体的には、適切な物質を潤滑剤に添加することで、潤滑剤の分解反応を抑制することが出来る。
摺動材料表面には、摺動によって摺動材料が磨耗することで新生面が現れる。新生面の形成直後は、新生面の原子は高い反応活性を持っており、いずれは真空中にわずかに存在する酸素や水などと反応して安定化して活性を失うが、一部は潤滑剤と接触して潤滑剤の分解反応を引き起こす。ところが、潤滑剤に適切な物質を添加することで摺動材料表面の反応活性を抑制することができ、潤滑剤の分解反応を抑制できることが、発明者らの検討により明らかとなった。さらに潤滑剤の分解反応を抑制するには、2通りの方法があることが発明者らの検討により明らかとなった。加工成型直後の摺動材料に潤滑剤を塗布し、摺動を開始すると、一定時間が経過するまでは潤滑剤の分解反応は進行しない。潤滑剤の分解反応が開始するまでの累積摺動時間をインダクション時間Tiと呼ぶことにすると、潤滑剤の分解反応を抑制する1つ目の方法は、インダクション時間Tiを長くすることである。ここでいう長いとは、望ましくは当該摺動機構を使用する装置のメンテナンス期間以上であることを意味し、さらに望ましくは当該装置の寿命以上であることを意味する。具体的には、潤滑剤の押圧下における分解反応が開始するまでの累積摺動時間であるインダクション時間Tiを140時間以上に長くすることにある。
またインダクション時間Tiが経過した後に進行する潤滑剤の分解反応について詳細に検討した結果、摺動部にかかる荷重が一定値以下では分解反応が進行しないことが明らかとなった。分解反応が進行しない上限の荷重を臨界荷重と呼ぶことにすると、潤滑剤の分解反応を抑制する2つ目の方法は臨界荷重を大きくすることである。ここでいう大きいとは、望ましくは当該装置の運転条件においてかかる荷重以上であることを意味する。具体的には、潤滑剤の分解反応を抑制する臨界面圧Pcを0.5GPa以上にすることである。
さらに、かかる2つの方法を実現するために、上記摺動部に塗布する潤滑剤を基油と添加剤とから構成し、上記基油は多アルキル置換シクロペンタン誘導体(Multiple Alkylated Cyclopentane:MAC)、またはフォスフォニウム誘導体からなるカチオンとリン酸誘導体からなるアニオンとによって構成されるイオン液体(トリ−n−ブチルメチルフォスフォニウムとジメチルリン酸とからなるイオン液体(TBMP−DMP:Tri−n−Butyl Methyl Phosphonium−Dimethylphospate))、のいずれかであり、添加する物質(上記添加剤)としては、次のいずれかの物質が適していることが、発明者らの検討によって明らかとなった。
(化学物質1)トリクレジルフォスフェート若しくはその誘導体(TCP:Tricresyl Phosphate)
(化学物質2)ジ3級ドデシルジスルフィド(TDS:di−tert−dodecyl disulfide)
(化学物質3)ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC:Molybdenum Dithocarbamate)
(化学物質4)フォスフォニウム誘導体からなるカチオンとリン酸誘導体からなるアニオンとによって構成されるイオン液体(トリ−n−ブチルメチルフォスフォニウムとジメチルリン酸とからなるイオン液体(TBMP−DMP:Tri−n−Butyl Methyl Phosphonium−Dimethylphospate))
なお、インダクション時間Tiを140時間以上で、臨界面圧Pcを0.5GPa以上にするために、潤滑剤をMACの基油と添加剤とによって構成し、MACの基油に対する化学物質1(TCP)の添加剤の添加量としては0.1〜10重量%、MACの基油に対する化学物質2(TDS)の添加剤の添加量としては1.5〜10重量%、MACの基油に対する化学物質3(MoDTC)の添加剤の添加量としては0.5〜5重量%、MACの基油に対する化学物質4(TBMP−DMP)の添加剤の添加量としては5〜20重量%、が好適であると推考される。
また、インダクション時間Tiを140時間以上で、臨界面圧Pcを0.5GPa以上にするために、潤滑剤を構成する基油及び添加剤を同じTBMP−DMPで構成する(潤滑剤をTBMP−DMPで構成する)ことも可能である。この場合、添加剤としてのTBMP−DMPは存在しないことになる。
本発明によれば、潤滑剤の分解反応を抑制することが可能となり、その結果、潤滑剤の枯渇を抑制することが可能となり、装置動作の安定化、高信頼化を図ることができる。
また、本発明によれば、装置メンテナンスに要する時間とコストを低減できる。
本発明に係る半導体ウェハ等の試料を計測、或いは検査を行う荷電粒子線装置である走査型電子顕微鏡には、電子ビームを所望の位置に照射するために、試料を移動させる試料ステージが設けられている。以下に示す本発明に係る実施の形態では、この試料ステージに代表される移動部材の摺動部分に、本発明による分解反応を抑制した潤滑剤を塗布することで、潤滑剤の枯渇を抑制しつつ、移動部材の摺動部の高い潤滑性を維持する場合について説明する。
なお、以下に説明する実施の形態では、電子ビームを半導体デバイス上に走査することによって、試料から放出される電子(二次電子、及び/又は反射電子)を検出し、当該検出された電子に基づいて、半導体デバイス上の測定、検査を行う走査型電子顕微鏡について、説明するが、これに限られることはなく、他の荷電粒子線装置への適用も可能である。またさらには、試料搬送機構のような駆動機構を有するが荷電粒子線を用いない装置への適用も可能である。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の一実施の形態を示す、走査型電子顕微鏡の概略を説明するための図である。装置は、鏡筒1と、鏡筒1に取り付けられた荷電粒子線源2と、試料を装置外部から導入するロードロック室9と、試料を検査する試料室12と、これらを駆動する、図示しない制御部から、概略なっている。
図示しない制御装置から命令を受けた試料搬送制御装置(図示せず)は、搬送用ロボット8を、ウェハカセット6から任意のウェハ7が、ロードロック室9の所定の位置に移動するように制御する。試料交換室制御装置(図示せず)は、ロードロック室9へのウェハ7の出入りに連動して、ゲートバルブ10、11が開閉するような制御を行う。更に、図示しない制御装置は、試料交換室9内を真空排気する真空ポンプ(図示せず)を制御し、ゲートバルブ11が開くときには、試料室12と同等の真空を、試料交換室9内に形成する。試料交換室9に入ったウェハ7は、ゲートバルブ11を介して、試料室12に送られ、ステージ13上に固定される。
荷電粒子線源2から引き出された電子ビーム25は、コンデンサレンズ(図示せず)、対物レンズ23によって集束され、試料ステージ13上に配置されたウェハ7に照射される。電子ビーム25は、図示しない制御部から信号を受けた偏向器24によりウェハ7上を、一次元的、或いは二次元的に走査される。
図2(a)(b)は、試料ステージ13の詳細を説明するための上面図及び側面図である。試料ステージ13は、Yベース28上に配置されている。試料ステージ13は、図示しない駆動機構によって、Yレール29上をY方向に移動する。Yベース28は、図示しない駆動機構によって回転されるボールねじ31の回転によって、Xベース33上に形成されたXレール32上をX方向に移動する。本実施の形態における試料ステージ13は、試料上の複数点の測定、検査、或いは全体検査を行うために、試料上の任意の位置が、電子ビームの軌道下に位置づけられるように設計されている。
より具体的には、電子ビーム光軸(電子ビームを偏向しないときの電子ビームの軌道)に垂直な方向(X−Y方向)へ、試料ステージ13を移動できるような移動機構が設けられている。なお、本実施の形態では試料ステージ13をX−Y方向に移動するステージの場合について説明するが、これに限られることはなく、例えば試料ステージを傾斜或いは回転させるようなステージの摺動部に、以下に説明する潤滑剤を適用することも可能である。
本実施の形態の試料ステージ機構の摺動部(2つの部材が相対的に滑って移動する際に、当該2つの部材間における接触部分)には、その間の潤滑性を高めるために、潤滑剤が塗布されている。その潤滑剤の一実施例として、多アルキル置換シクロペンタン誘導体(Multiple Alkylated Cyclopentane:以下MACと略す)系の潤滑剤がある。本潤滑剤は液体でありながら蒸気圧が低いことから、走査型電子顕微鏡のステージ等、真空環境下で動作する機構部品の潤滑剤として好適である。
このようなMAC系の潤滑剤は、潤滑性を高めるのに優れた特性を持つ半面、分解反応によって低分子成分が生じることにより、潤滑剤の枯渇が発生することが判ってきた。本実施の形態では、分解反応性を抑制するために、前記した(化学物質1)〜(化学物質4)を含む物質を添加した潤滑剤を、試料ステージ等の移動機構の摺動部に塗布することを提案する。ここでは図3(a)(b)に示すような、固定されたボールと回転するディスクを用いて、潤滑剤の分解反応を評価した結果について示す。なお、図3(b)は図3(a)に示すA部拡大図である。図3(a)(b)において、ボール41はディスク42と接触しており、ディスク表面には潤滑剤が塗布されている。ボール41は、図示しない支持体により支持されており、該支持体によってディスクに対する荷重Wが伝達される。ディスク42は、図示しない回転機構により回転し、その結果摺動部分は幅dからなる一定の円周状の軌跡43を描く。
図4は、摺動機構の動作によって、潤滑剤を添加剤なしでMACの基油で構成した場合において潤滑剤が分解反応を起こすことを示すグラフであり、摺動時間と最も代表的な分解反応生成物である水素の発生量の関係を示している。真空中において、図3(a)に示すような一定速度(例えば摺動速度:0.02cm/s)で回転するディスク42に対して一定荷重(例えば8N)でボール41を接触させた、実際のステージ機構を模した装置を製作し、分解反応生成物の発生量を4重極型質量分析計により測定した。ボールの直径は6.35mmであり、ディスク上の接触する軌道の直径は24mmである。摺動開始から5時間程度までは水素の発生が減少する。これは摺動部品表面に吸着した物質の脱離によるものであることが、発明者らの検討によって明らかになっている。その後10時間程度までは水素の検出量が少ないが、そののち再び検出されるようになる。この水素発生の増加こそ、潤滑剤の分解反応によるものである(詳細は後程図5を用いて説明する)。この、潤滑剤の分解反応が開始する時間がインダクション時間Tiであり、インダクション時間Tiの長い潤滑剤を選択することが望ましいことは言うまでもない。
一方、潤滑剤の分解反応が開始する時間であるインダクション時間Tiの下限値は、潤滑剤が分解することによる重量減少が、摺動部品の機能上問題となる量に達する時間によって定まる。発明者らが、潤滑に必要な最小量の潤滑剤を塗布された図3に示すような機構部品に対して、摺動機能上問題となる潤滑剤の重量減少量を5%として(潤滑剤が分解することによる重量減少量が5%になると摺動部品の摺動機能が極端に低下する。)、潤滑剤の重量減少が5%に達するまでの累積摺動時間Tlimを検討した結果、Tlimはインダクション時間Tiの約5倍に相当することが明らかとなった。
すなわち、潤滑剤の重量減少が5%に達するまでの累積摺動時間Tlim=(Ti×5)が、当該装置のメンテナンス間隔における機構部品の累積摺動時間以上であればよく、より望ましくは装置寿命までの期間の、機構部品の累積摺動時間以上であればよい。装置のメンテナンス間隔を1年、装置稼働時間率を80%、装置稼動中のステージ動作時間比率を10%とすると、装置のメンテナンス間隔におけるステージの累積動作時間は700時間となる。従って、(Ti×5)≧700時間となり、潤滑剤の分解反応が開始する時間であるインダクション時間Tiの下限値は140時間(装置のメンテナンス間隔が1年に相当する)と求まる。
図5は、上記インダクション時間Tiが経過した後の、摺動に伴う分解反応によるガス発生を示したグラフである。摺動の開始とともに、分解反応性生物である水素、メタン、エチレン、プロパン由来の検出信号強度が増加し、摺動の停止とともに検出信号強度が初期の値に戻っていることから、ここに示したガス成分は摺動によって発生したものであることは明らかである。
図5のグラフからベースラインを差し引いて積分した値は、発生したガスの量に対応する。この値を、異なる摺動荷重および摺動速度に対して求めたものが、図6である。さらに、横軸を荷重の3乗根としてプロットしたものが図7である。ここで、同じ摺動速度での点を結ぶと直線となり、またその横軸の切片は摺動速度によらず同じ値となっている。この結果は次のように理解することができる。
図3(b)には、摺動の軌跡43を拡大して模式的に示した。ボールの直径をR、荷重Wとすると、ボールはその弾性率Eにより変形し、接触部は点ではなく軌跡幅dの円となる。このとき、接触部の軌跡幅dは次に示す(1)式で与えられる。
Figure 0005099703
ボール41がディスク42に対して速度vで摺動するとき、時間tの間にボールとディスクが接触する面積Sは、次に示す(2)式で与えられる。
Figure 0005099703
上記(1)式及び(2)式により、次に示す(3)式を得る。
Figure 0005099703
即ち、摺動によってボール41とディスク42が接触する面積Sは、摺動速度が一定であれば荷重の3乗根に比例する。
図7において、同じ摺動速度の点を結ぶと横軸に対する切片が正の値となる。このことは、荷重がある値以下では、接触していても分解反応が起こらないことを意味する。分解反応がおこる最低荷重を臨界荷重Wcと定義すると、図7の横軸の切片はWc1/3であり、このように種々の摺動速度と荷重における分解反応生成物である水素の発生量を測定することで、接触していても分解反応が起こらない臨界荷重Wcを求めることができる。そして、潤滑剤として臨界荷重Wcが大きいほうが望ましいことは言うまでもない。
ここで求められた臨界荷重Wcは、本実施例で用いた形状および寸法のボール41とディスク42の摺動にのみ適用できる値である。一般的な摺動部分に適用するためには、Wcを接触面積(πd/4)で除して求められる臨界面圧Pcを用いればよい。
さらに、本発明の特徴とする上記摺動部に塗布する潤滑剤を多アルキル置換シクロペンタン誘導体(Multiple Alkylated Cyclopentane:MAC)からなる基油に対して種々の添加剤を加え、上記潤滑剤の分解反応が開始する時間であるインダクション時間Tiと上記潤滑剤の分解反応を抑制する臨界面圧Pcを測定すると、添加剤の物質によって両者は大きく異なることが、発明者らの検討で明らかとなった。図8にその結果を示す。既に述べたように、インダクション時間Tiおよび臨界荷重Wcはいずれも大きいほど望ましく、従って臨界面圧Pcも大きいほど望ましい。図8を参照すると、(5)トリクレジルフォスフェート(TCP:Tricresyl Phosphate)を1重量%添加したMAC、(6)トリクレジルフォスフェート(TCP:Tricresyl Phosphate)を0.1重量%添加したMAC、(4)3級ジドデシルジスルフィド(TDS:di−tert−dodecyl disulfide)を2重量%添加したMAC、(9)ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC:Molybdenum Dithocarbamate)を1重量%添加したMAC、(11)トリ−n−ブチルメチルフォスフォニウムとジメチルリン酸とからなるイオン液体(TBMP−DMP:Tri−n−Butyl Methyl Phosphonium−Dimethylphospate)を10重量%添加したMACにおいて、比較例である無添加のMACと比較してインダクション時間Tiと臨界面圧Pcの顕著な増加が見られた。
ところで、潤滑剤の分解反応が開始されるインダクション時間Tiは、水素の発生量を4重極質量分析計で測定し、水素の発生が減少してから再び増加する点(例えばプロットされた点を直線51、52によって近似し、近似された直線51、52の交点)を求めることによって摺動時間、即ちインダクション時間を算出することが可能となる。図4は、本発明の比較例である潤滑剤として添加剤なしのMACを示すものであるため、摺動時間、即ちインダクション時間Tiとしては約10時間となる。
また本発明の比較例である、(2)2,2’−チオジエチルビス[3−(3,5−ジ3級ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオン酸](TDP:2,2’−thiodiethyl bis[3−(3,5)−di−tert−butyl−4−hydroxyphenyl]propionate)を1重量%添加したMAC、(3)TDSを1重量%添加したMAC、(7)フタルイミドを0.1重量%を添加したMAC、(8)トリアジンを1重量%添加したMACでは、臨界面圧が0.5GPa以上、インダクション時間が140時間以上を満たすことはできなかった。
しかしながら、本発明の実施例である、(4)(5)(6)(9)(11)の潤滑剤の場合は、臨界面圧が0.5GPa以上、インダクション時間が140時間以上を満たすことは明らかとなった。なお、(6)の潤滑剤の場合は、臨界面圧は0.5GPaを超えたが、インダクション時間Tiについては140時間を達成できた。
また、本発明の実施例である、(10)潤滑剤の基油及び添加剤を同じTBMP−DMPで構成した場合(この場合、添加剤としてのTBMP−DMPは存在しないことになる。)においても、臨界面圧が0.5GPa以上、インダクション時間が140時間以上を満たすことは明らかとなった。
さらに、図8に掲げた潤滑剤を、走査電子顕微鏡の試料ステージの摺動部に塗布し、そのステージを連続的に摺動動作させて摩擦係数の経時変化を測定することで、長期動作試験を行った。比較例である、(1)無添加のMACを用いた場合には、累積動作時間が500時間(インダクション時間100時間に相当する)で摩擦係数の上昇が見られたが、本発明の実施例である、(5)トリクレジルフォスフェート(TCP、添加量1重量%)を添加したMAC、(4)3級ジドデシルジスルフィド(TDS、添加量1重量%)を添加したMAC、(9)ジチオカルバミン酸モリブデンを添加したMAC(添加量1重量%)、(10)トリnブチルメチルフォスフォニウムとジメチルリン酸からなるイオン液体(TBMP−DMP)および(11)TBMP−DMPを添加したMAC(添加濃度10重量%)、のいずれを用いた場合も、1000時間(インダクション時間200時間に相当する)の間摩擦係数の上昇が見られなかった。
以上、本実施の形態の説明では試料ステージの摺動部に、上述の潤滑剤を塗布することについて説明したが、これに限られることはなく、例えば、試料交換室内のガイドレール、クランクアーム、或いはゲートバルブの摺動部のような真空室内の摺動部に、上記潤滑剤を塗布するようにしても良い。
また、本実施の形態の説明では真空室内の摺動部と半導体ウェハが近接している走査型電子顕微鏡の場合について説明したが、摺動部を有する他の設備、例えばウェハを搭載するボートを上下させる機構を有する酸化装置、拡散装置、CVD装置などでも同様の効果が得られる。
本発明によれば、走査電子顕微鏡等の荷電粒子線装置の真空室内の摺動部に塗布する潤滑剤として適用することが可能である。
本発明に係る荷電粒子線装置である走査電子顕微鏡の概略構成を示す図である。 本発明に係る荷電粒子線装置の真空室内に設けられた摺動部の一実施の形態である試料ステージの概略構成を説明するための図であり、(a)はその上面図、(b)はその側面図である。 本発明に係る潤滑剤の分解反応評価に用いた、摺動しているボールとディスクを模式的に示す図であり、(a)はその斜視図、(b)は(a)に示すA部拡大図である。 本発明の比較例である、潤滑剤が添加剤なしのMACで形成された場合における摺動時間と4重極型質量分析計により測定される分解反応生成物である水素の発生量との関係を示す図である。 本発明に係る摺動に伴う潤滑剤の分解反応を示す図である。 本発明に係る摺動荷重および摺動速度を変えたとき得られる潤滑剤の分解反応生成物である水素の発生量を示す図である。 本発明に係る摺動荷重および摺動速度を変えたとき得られる摺動荷重の3乗根に対する潤滑剤の分解反応生成物の発生量を示す図である。 本発明の実施例である種々の潤滑剤を用いて測定されるインダクション時間と臨界荷重とをマッピングして示した図である。
符号の説明
1…鏡筒、2…荷電粒子線源、6…ウェハカセット、7…ウェハ、8…搬送用ロボット、9…ロードロック室、10…ゲートバルブ、11…ゲートバルブ、12…試料室、13…ステージ、23…対物レンズ、24…偏向器、25…荷電粒子線、28…Yベース、29…Yレール、31…ボールねじ、32…Xレール、33…Xベース、41…ボール、42…ディスク、43…軌跡。

Claims (1)

  1. 荷電粒子線が照射された試料から放出される荷電粒子を検出する検出器と、前記荷電粒
    子線が照射される試料を包囲する真空室とを備えた荷電粒子線装置において、
    前記真空室内に配置される摺動部材の摺動部には潤滑剤が塗布されており、
    前記潤滑剤は基油と添加剤とから構成され、
    前記基油は多アルキル置換シクロペンタン誘導体、またはリン酸誘導体からなるアニオ
    ンとフォスフォニウム誘導体からなるカチオンによって構成されるイオン液体、のいずれ
    かで形成され、
    前記添加剤はトリクレジルフォスフェート若しくはその誘導体、またはジ3級ドデシル
    ジスルフィド、またはジチオカルバミン酸モリブデン、またはリン酸誘導体からなるアニ
    オンとフォスフォニウム誘導体からなるカチオンとによって構成されるイオン液体、のい
    ずれかで形成されることを特徴とする荷電粒子線装置。
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