JP5099641B2 - 飛跡認識装置および飛跡認識方法 - Google Patents

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Description

本発明は、複数の画像から軌跡を検出する装置と方法に関する。特に本発明は、荷電素粒子の飛跡を検出するための装置と方法に関する。
従来、宇宙線や原子核反応の荷電素粒子の飛跡を記録し、その特性を解析研究するための手段のひとつとして原子核乾板が利用されてきた。原子核乾板は、通常、ガラス板あるいはプラスチックフィルムなどの透明支持体の片面あるいは両面に数十から数百μmの厚さにハロゲン化銀感材を高密度で塗布したものである。
この原子核乾板では、荷電粒子がハロゲン化銀感材中のハロゲン化銀結晶内を通過するときに、電離作用によって結晶内に電子が発生し、その電子によって潜像が形成される。電子線やα線などの荷電粒子では、その飛跡に沿って潜像が形成される。一方γ線やX線では、その飛跡に沿って直接潜像が形成されるのではなく、光電効果やコンプトン効果などにより生じた電子の飛跡上に潜像が形成される。
原子核乾板に形成された潜像は、現像処理によって黒化銀として可視化される。可視化された黒化銀粒子を光学顕微鏡で観察することによって、荷電粒子の飛跡を捕捉し、その種類や性質を識別することが可能となる。原子核乾板を用いることで、π中間子や、ミュー粒子、τ粒子、チャーム粒子などの飛跡を直接的に捕捉することができる。
非特許文献1や非特許文献2に開示されているように、本願の発明者らは、原子核乾板を用いた荷電粒子の飛跡の検出を高速に行う技術についての研究を重ねている。この技術の概要について説明する。
図11は原子核乾板を用いて飛跡を認識する技術の原理を示している。図11の(a)に示すように、原子核乾板の感材層Eには、荷電素粒子の飛跡Tが黒化銀粒子として記録されている。この感材層Eについて、図11の(b)に示すように、異なる深さの焦点で複数の断層画像L1、L2、L3を取得する。これらの断層画像L1、L2、L3には、飛跡Tを可視化した黒化銀粒子の像P1、P2、P3が観測される。これらの黒化銀粒子の像P1、P2、P3は、感材層Eに対する飛跡Tの角度に応じて、断層画像L1、L2、L3において異なる位置で観測される。例えば感材層Eに対して垂直に入射した荷電粒子の飛跡であれば、何れの断層画像L1、L2、L3においても黒化銀粒子の像P1、P2、P3は同じ位置で観測される。これとは異なり、感材層Eに対して斜めに入射した荷電粒子の飛跡であれば、図11の(b)に示すように、黒化銀粒子の像P1、P2、P3は、それぞれの断層画像L1、L2、L3において、飛跡の角度に応じてシフトした位置で観測される。
そこで、図11の(c)に示すように、各断層画像L1、L2、L3の位置を互いにシフトさせた状態で、重ね合わせ処理を行う。この重ね合わせ処理が飛跡の角度に応じた適切なシフト量で行われていれば、重ね合わせた後の画像にも黒化銀粒子の像が明確に観測される。飛跡の角度とシフト量が対応していなければ、重ね合わせ処理によって黒化銀粒子の像は除去される。このような重ね合わせ処理を、認識したい飛跡の角度毎に行っていくことで、感材層E内に形成された飛跡の位置と角度を特定することができる。
上記の処理を、原子核乾板の感材層全体に亘って行うことによって、感材層に形成された飛跡の位置と角度を自動的に特定することが可能となる。このように自動化された処理によって飛跡の位置と角度を特定することで、極めて短時間で飛跡を認識することができる。
中野敏行、「三次元素粒子飛跡の並列画像処理―原子核乾板によるニュートリノ研究―」、日本物理学会誌、社団法人日本物理学会、2001年、第56巻、第6号、p.411―418 丹羽公雄、「放射線計測における写真乾板」、日本写真学会誌、日本写真学会、2004年、第67巻、第6号、p.561―568
上記した従来の技術は更なる改善の余地を残している。断層画像を取り込む際には黒化銀粒子を識別可能な程度の分解能が必要となる。また、汎用の撮像素子を用いる場合には、1つの撮像素子で1度に取り込むことができる視野の範囲が限られている。このため、原子核乾板の感材層全体に亘って飛跡を認識するためには、上記した一連の処理を膨大な回数で繰り返し行う必要があり、処理に長時間を要している。特に、従来の技術では、断層画像を取り込むための処理に長時間を要しており、これが飛跡を認識するための処理が長期化する原因となっている。断層画像の取り込みをより高速に行うことができれば、より短時間で飛跡を認識することが可能となる。
本発明は上記の課題を解決する。本発明は感材層内に形成された飛跡を短時間で認識することが可能な技術を提供する。
本発明は感材層内に形成された荷電粒子の飛跡を認識する装置として具現化される。その飛跡認識装置は、焦点面の深さを変えながら感材層を連続的に撮像して、複数の断層画像を取得する撮像手段と、複数の断層画像を飛跡の角度に応じたシフト量でシフトさせながら重ね合わせて、飛跡の存在を示す指標の分布を取得する指標算出手段と、飛跡の角度毎の飛跡の存在を示す指標の分布に基づいて、感材層における飛跡の位置と角度を特定する特定手段と、撮像面に沿った方向の感材層と撮像手段の相対的な位置関係を調整する位置調整手段を備えている。その飛跡認識装置では、撮像手段が、撮像面に沿って配置された複数の撮像素子を備えている。その飛跡認識装置では、隣接する撮像素子の視野の間の間隔が、撮像素子の視野の幅よりも小さくなるように配置されている。その飛跡認識装置では、撮像手段が複数の断層画像を取得した後に、位置調整手段が、新たな視野が直前に撮像した視野の間の領域を含むように、感材層と撮像手段の相対的な位置関係を調整する。
上記の飛跡認識装置では、撮像手段が撮像面に沿って配置された複数の撮像素子を備えており、これらの撮像素子によって一度に広範な範囲を撮像する。その後、位置調整手段によって、感材層と撮像手段の相対的な位置関係を調整し、直前に撮像した視野の間の領域を含む新たな視野で、再び撮像を行う。隣接する撮像素子の視野の間の間隔は、1つの撮像素子の視野の幅よりも小さくなるように配置されているから、このような構成とすることによって、感材層の広範な範囲を短時間で網羅的に撮像することができる。断層画像の取り込みに要する時間を大幅に短縮することができる。
また、上記の飛跡認識装置では、隣接する撮像素子の視野の間の間隔が、撮像素子の視野の幅よりも小さくなるように配置されている。このため、位置調整手段によって感材層と撮像手段の位置関係を変更する前に取得された断層画像と、位置調整手段によって感材層と撮像手段の位置関係を変更した後に取得された断層画像は、端部において重複部分が存在する。このような重複部分を設けることによって、指標算出手段が1つの視野についての複数の断層画像をシフトさせながら重ね合わせ処理を行う際に、異なる視野における断層画像を用いることなく、飛跡の存在を示す指標の分布を取得することができる。計算資源を有効に活用することができる。
上記の軌跡認識装置では、前記飛跡の存在を示す指標が、複数の断層画像にわたる輝度の累積値であることが好ましい。
上記の軌跡認識装置では、累積加算処理によって飛跡の存在を示す指標を算出することができる。累積加算処理は少ない計算負荷で高速に演算を行うことが可能であるから、飛跡の認識に要する時間をさらに短縮することができる。
上記の軌跡認識装置では、前記指標算出手段が、飛跡の角度毎に別個に複数設けられており、前記複数の指標算出手段が互いに並行して処理を実行することが好ましい。
上記の軌跡認識装置によれば、飛跡の角度毎の指標算出処理を並列に行うことによって、飛跡の認識に要する時間をさらに短縮することができる。
上記の軌跡認識装置では、前記指標算出手段が、輝度の累積値の分布を記憶する記憶手段と、記憶手段から輝度の累積値を読み出して、断層画像における輝度を読み出した輝度の累積値に加算して、新たな累積値を記憶手段に書き込む複数の加算手段を備えており、前記複数の加算手段が、輝度の累積値が分布する範囲を分割した複数のグループと対応付けられており、前記複数の加算手段が互いに並行して処理を実行することが好ましい。
上記の飛跡認識装置によれば、ある飛跡の角度についての1つの視野における指標算出処理を、複数の加算手段が並列に行うことによって、飛跡の認識に要する時間をさらに短縮することができる。
本発明は方法の発明として具現化することもできる。すなわち、本発明の方法は、感材層内に形成された荷電粒子の飛跡を認識する方法である。その方法は、撮像手段を用いて、焦点面の深さを変えながら感材層を連続的に撮像して、複数の断層画像を取得する撮像工程と、複数の断層画像を飛跡の角度に応じたシフト量でシフトさせながら重ね合わせて、飛跡の存在を示す指標の分布を取得する指標算出工程と、飛跡の角度毎の飛跡の存在を示す指標の分布に基づいて、感材層における飛跡の位置と角度を特定する特定工程と、撮像面に沿った方向の感材層と撮像手段の相対的な位置関係を調整する位置調整工程を備えている。その方法においては、撮像手段が、撮像面に沿って配置された複数の撮像素子を備えている。その方法においては、隣接する撮像素子の視野の間の間隔が、撮像素子の視野の幅よりも小さくなるように配置されている。その方法においては、位置調整工程において、新たな視野が直前に撮像した視野の間の領域を含むように、感材層と撮像手段の相対的な位置関係を調整する。
本発明の飛跡認識装置によれば、感材層内に形成された飛跡を短時間で認識することができる。
以下に説明する実施例の主要な特徴を以下に列記する。
(特徴1) 断層画像は、パック化データに変換されてから、累積加算処理がなされる。
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。図1は本実施例の飛跡認識装置100の構成を模式的に示している。飛跡認識装置100は、画像取り込み部102と、画像前処理部104と、並列認識部106と、制御部108を備えている。飛跡認識装置100は、画像取り込み部102において原子核乾板Nの断層画像を連続的に取得し、画像前処理部104において断層画像の前処理を行って、並列認識部106において荷電素粒子の飛跡Tを認識する。制御部108は、画像取り込み部102、画像前処理部104、並列認識部106が同期して動作するように、それぞれの動作を制御する。
図2は本実施例の飛跡認識装置100が扱う原子核乾板Nの構造を模式的に示している。原子核乾板Nは、200ミクロンのプラスチック製のフィルムベースBの両面に、50ミクロンのハロゲン化銀の感材層Eが塗布されている。原子核乾板Nを荷電素粒子が通過すると、感材層E内での電離作用によって発生した電子により、感材層E内に荷電素粒子の飛跡Tに沿った潜像が形成される。潜像の形成された原子核乾板Nを現像処理することで、荷電素粒子の飛跡Tは2μm程度の粒子径を有する黒化銀として可視化される。本実施例の飛跡認識装置100は、現像処理が施された原子核乾板Nから、荷電素粒子の飛跡Tを自動認識する。
図3に示すように、画像取り込み部102は、原子核乾板Nを載置するステージ302と、ステージ302上の原子核乾板Nを撮影するカメラ304を備えている。ステージ302は、原子核乾板NをX方向及びY方向で移動させて位置を調整するマイクロステップモータ306を備えている。カメラ304は、撮像装置308と、対物レンズ310と、対物レンズ310をXYZ方向に駆動するピエゾアクチュエータ312を備えている。
図4を参照しながら、画像取り込み部102による断層画像の取り込みについて説明する。画像取り込み部102では、対物レンズ310をZ方向に往復移動させながら、撮像装置308において連続的に撮像を行う。本実施例では、対物レンズ310を150HzでZ方向に往復移動させながら、毎秒3000回の撮像を行う。これによって、対物レンズ310の焦点面が感材層Eの深さ方向に変化し、異なる深さにおける感材層Eの断層画像を連続的に撮像することができる。本実施例では、対物レンズ310がZ方向に1往復する毎に、感材層Eの16層分の断層画像が撮像される。
撮像装置308の撮像面には、複数の撮像素子が縦横のマトリックス状に配置されている。それぞれの撮像素子は、感材層Eにおける150ミクロン×120ミクロンの視野を、512×504ピクセルの解像度で読み取る。撮像装置308では、隣接する撮像素子の間の間隔は、個々の撮像素子の幅よりも狭くなるように設定されている。図5は撮像装置308の撮像素子が感材層Eを撮像する際の視野502a、502b、502c、502d、・・・の配置を示している。
カメラ304では、ピエゾアクチュエータ312によって対物レンズ310を駆動して、XY面内で視野502a、502b、502c、502d、・・・の位置をずらしながら撮像を行う。視野502aを例にとって説明すると、まず対物レンズ310をZ方向に往復移動させて、視野502aについて16層分の断層画像を撮像する。その後、対物レンズ310をY方向に駆動して、視野504aに移動させた後、視野504aについて16層分の断層画像を撮像する。その後、対物レンズ310をX方向に駆動して、視野506aに移動させた後、視野506aについて16層分の断層画像を撮像する。その後、対物レンズ310をY方向に駆動して、視野508aに移動させた後、視野508aについて16層分の断層画像を撮像する。ここでは視野502aについて説明したが、他の視野502b、502c、502d、・・・についても同様である。このようにピエゾアクチュエータ312による対物レンズ310の駆動を行いながら断層画像を撮像することで、感材層Eの全体について網羅的に断層画像を取得することができる。図5に示すように、隣接する視野(502aと504a、502aと508a、508aと502bなど)で撮像される画像は、互いに重複部分が含まれている。
対物レンズ310の駆動によって視野502a、504a、506a、508a、・・・についての16層分の断層画像がそれぞれ撮像されると、ステージ302のマイクロステップモータ306によって原子核乾板Nを移動させて、異なる視野について再び上述した断層画像の取り込みを行う。これを繰り返し行うことで、原子核乾板Nの全体について、16層分の断層画像を取り込むことができる。
撮像装置308のそれぞれの撮像素子が撮像した画像は、撮像装置308に内蔵されたFlashADCによって1ピクセルあたり8ビットのデジタル信号に変換されて、図1の画像前処理部104へ送信される。
図6に示すように、画像前処理部104は、デジタルFIR(有限インパルス応答)フィルタ602と、3×3フィルタ604と、パック処理部606と、データバッファ608を備えている。
デジタルFIRフィルタ602は、同一の画像データ内での移動平均処理を行って、画像取り込み部102から送られた断層画像から低周波成分を実時間で除去する。これによって、照明の写りこみや表面の汚れに起因する輝度むらを除去して、飛跡の認識をより容易なものとする。
3×3フィルタ604は、断層画像における銀粒子の見かけの大きさを大きくするために、画像に写りこんでいる銀粒子の拡大処理を行う。具体的には、断層画像データにおいて隣接する9ピクセルでの輝度の最大値をそのピクセルにおける輝度の値とする。銀粒子が写りこんでいるピクセルは高輝度となっているから、このような処理を行うことで銀粒子の見かけ上の大きさを拡大することができる。このような拡大処理を行うことで、飛跡の認識を確実に行うことが可能となり、飛跡角度アクセプタンスが向上する。
3×3フィルタ604で拡大処理された断層画像データは、パック処理部606でパック化される。3×3フィルタ604による拡大処理によって、銀粒子の大きさは典型的に4×4程度のピクセルにまたがっている。そこでパック処理部606では、図7に示すように、X方向に連続して隣接する4ピクセルそれぞれの輝度の値I、I、I、Iと、それらのピクセル群の先頭の位置を示す座標X,Yを関連付けたデータ形式に変換する。このようなデータ形式を採用することで、1つのデータで連続したピクセルを扱うことが可能となり、後述する並列認識部106における処理が容易なものとなる。また、全てのピクセルについての輝度を備える断層画像データから、銀粒子として認識されるピクセルの座標と輝度を備えるパック化データに変換することで、扱うデータ量が圧縮されて、処理が高速化される。
図6に示すように、パック処理部606から出力されたパック化データは、データバッファ608に一旦保存される。データバッファ608は2バンクを有しており、両者が並列に使用される。すなわち、パック処理部606からのパック化データを一方のバンクに書き込んでいる間に、他方のバンクからパック化データを並列認識部106に送り出す。このようにデータバッファ608の2つのバンクを並列に使用することで、処理の高速化が図られている。
図8に示すように、並列認識部106は、認識の対象とする飛跡角度毎に設けられた複数の認識ユニット802a、802b、・・・802pを備えている。本実施例では、16個の認識ユニット802a、802b、・・・802pが存在する。画像前処理部104のデータバッファ608から送信されるパック化データは、それぞれの認識ユニット802a、802b、・・・802pに同時に受信される。それぞれの認識ユニット802a、802b、・・・802pは、互いに独立して並列に動作可能である。それぞれの認識ユニット802a、802b、・・・802pは、自己に割り当てられた飛跡角度に応じて、後述する累積加算処理を行う。
各認識ユニット802a、802b、・・・802pは、加算部804a、804b、・・・、804pと、記憶部806a、806b、・・・、806pを備えている。記憶部806a、806b、・・・、806pはSRAMから構成されており、視野における座標毎の輝度の累積値を記憶する。加算部804a、804b、・・・、804pはFPGAから構成されており、パック化データの座標値に、飛跡角度に応じたシフト量を加算してアドレスを特定し、記憶部806a、806b、・・・、806pのアドレスに記憶されている輝度の累積値に、パック化データの輝度を加算する。加算部804a、804b、・・・、804pは加算した輝度を記憶部806a、806b、・・・、806pに上書きする。
従来の技術では、認識ユニット802a、802b、・・・802pにおける上記の処理において、視野の端部近傍における累積加算処理を行うために、隣接する視野についての断層画像が必要となる場合があった。このように視野をまたいだ処理を行う場合、隣接する視野についてのパック化データが送信されてくるまで、現在の視野についての累積加算処理を中断しなければならず、必ずしも計算資源を有効に活用しているとは言えなかった。しかしながら、本実施例では、現在の視野と隣接する視野に重複部分が存在するように断層画像を取り込んでいるため、隣接する視野についてのパック化データが送信されてくるのを待つことなく、現在の視野についての累積加算処理を完了することができる。これによって、計算資源を有効に活用することができる。
図9は認識ユニット802aの詳細を示している。他の認識ユニット802b、802c、・・・、802pも、認識ユニット802aと同様の構成を備えているので、ここでは認識ユニット802aについてのみ詳細に説明する。
図9に示すように、認識ユニット802aの加算部804aは、複数の加算器904a1、904a2、・・・、904a16と、データバッファ608からのパック化データを加算器904a1、904a2、・・・、904a16の何れかに振り分けるセレクタ902aを備えている。それぞれの加算器904a1、904a2、・・・、904a16は、互いに独立して並列に動作可能である。
図10に示すように、本実施例では、1つの視野を複数のグループに分割しており、グループに対応した加算器904a1、904a2、・・・、904a16によって累積加算処理が行われる。本実施例では、1つの視野におけるX方向に沿ったライン毎に、グループG1、G2、・・・、G16に周期的に分割されている。そして、グループG1に属するパック化データについては、加算器904a1が累積加算処理を行い、グループG2に属するパック化データについては、加算器904a2が累積加算処理を行い、・・・、グループG16に属するパック化データについては、加算器904a16が累積加算処理を行う。このようなグループ化をすることによって、複数の加算器904a1、904a2、・・・、904a16から記憶部806aの同じアドレスへアクセスが衝突してしまうことがなく、処理の遅延を招くことなく並列処理を行うことができる。また、本実施例では、パック化データに含まれる4つのピクセルが全て同じグループに含まるようにグループ化している。例えば図10に示すパック化データP1の4つのピクセルは、全て同一のグループG1に含まれる。従って、1つのパック化データに含まれる輝度のデータを1つの加算器が全て処理を行うため、1つの加算器が1つのパック化データについて累積加算処理をしている間に、他の加算器が次のパック化データについての累積加算処理を行うことができる。パック化データの送信速度を向上することができる。
図8の出力部808は、1つの視野について全ての認識ユニット802a、802b、・・・、802pが上記の累積加算処理を完了すると、各認識ユニット802a、802b、・・・、802pの記憶部806a、806b、・・・、806pに記憶されている輝度の累積値から、所定のしきい値を超えるものを検索する。輝度の累積値が所定のしきい値を超えるものが抽出されると、出力部808は、その輝度の累積値と、その座標と、その飛跡角度を関連付けて出力する。
飛跡認識装置100の利用者は、出力部808から出力されるデータから、原子核乾板Nにおける飛跡の位置と角度を取得することができる。
本実施例の飛跡認識装置100によれば、原子核乾板Nの感材層Eの広範な範囲について、16層分の断層画像を短時間で網羅的に取り込むことができる。従来の技術に比べて、断層画像の取り込みに要する時間を大幅に短縮することができる。
本実施例の飛跡認識装置100では、隣接する撮像素子の視野(502aと504a、502aと508a、508aと502bなど)の間の間隔が、撮像素子の視野502aの幅よりも小さくなるように配置されている。このため、ピエゾアクチュエータ312によって対物レンズ310を駆動する前の視野502aについて取得される断層画像と、ピエゾアクチュエータ312によって対物レンズ310を駆動させた後の視野504aについて取得される断層画像には、端部において重複部分が存在している。このような重複部分が存在することによって、並列認識部106において累積加算処理を行う際に、視野504aについての断層画像が取得されるのを待つことなく、視野502aについての断層画像のみから飛跡の認識を行うことができる。計算資源を有効に活用することができる。
なお上記の実施例では、荷電素粒子の飛跡を記録する感材層として原子核乳剤を用いる場合について説明したが、本願の発明はこれ以外の感材層を用いる場合にも有効である。例えば、PADC(ポリアリル・ジグリコール・カーボネート)を感材層として用いる場合には、荷電素粒子が通過したPADCの感材層をエッチング処理し、形成されるエッチピットについての断層画像を取り込むことによって、荷電素粒子の飛跡を認識することができる。
上記の実施例では、複数の断層画像にわたる輝度の累積加算値を、飛跡の存在を示す指標として用いている。これ以外にも、例えば複数の断層画像にわたる輝度の乗算値を飛跡の存在を示す指標として用いてもよい。あるいは、各断層画像における輝度を2値化処理しておいて、複数の断層画像にわたる論理和または論理積を飛跡の存在を示す指標として用いてもよい。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
図1は実施例の飛跡認識装置100の機能ブロック図である。 図2は原子核乾板Nの構成を模式的に示す図である。 図3は実施例の画像取り込み部102の構成を模式的に示す図である。 図4は実施例の画像取り込み部102における断層画像の取り込みの様子を示す図である。 図5は実施例の画像取り込み部102における視野の配置を示す図である。 図6は実施例の画像前処理部104の機能ブロック図である。 図7は実施例のパック化データの構造を示す図である。 図8は実施例の並列認識部106の機能ブロック図である。 図9は実施例の認識ユニット802aの機能ブロック図である。 図10は実施例における視野のグループ化の様子を示す図である。 図11は飛跡認識処理の原理を示す図である。
符号の説明
100 飛跡認識装置
102 画像取り込み部
104 画像前処理部
106 並列認識部
108 制御部
302 ステージ
304 カメラ
306 マイクロステップモータ
308 撮像装置
310 対物レンズ
312 ピエゾアクチュエータ
502a、502b、502c、502d、504a、506a、508a 視野
602 デジタルFIRフィルタ
604 3×3フィルタ
606 パック処理部
608 データバッファ
802a、802b、・・・、802p 認識ユニット
804a、804b、・・・、804p 加算部
806a、806b、・・・、806p 記憶部
808 出力部
902a セレクタ
904a1、904a2、・・・、904a16 加算器

Claims (5)

  1. 感材層内に形成された荷電粒子の飛跡を認識する装置であって、
    焦点面の深さを変えながら感材層を連続的に撮像して、複数の断層画像を取得する撮像手段と、
    複数の断層画像を飛跡の角度に応じたシフト量でシフトさせながら重ね合わせて、飛跡の存在を示す指標の分布を取得する指標算出手段と、
    飛跡の角度毎の飛跡の存在を示す指標の分布に基づいて、感材層における飛跡の位置と角度を特定する特定手段と、
    撮像面に沿った方向の感材層と撮像手段の相対的な位置関係を調整する位置調整手段を備えており、
    撮像手段が、撮像面に沿って配置された複数の撮像素子を備えており、
    隣接する撮像素子の視野の間の間隔が、撮像素子の視野の幅よりも小さくなるように配置されており、
    撮像手段が複数の断層画像を取得した後に、位置調整手段が、新たな視野が直前に撮像した視野の間の領域を含むように、感材層と撮像手段の相対的な位置関係を調整する飛跡認識装置。
  2. 前記飛跡の存在を示す指標が、複数の断層画像にわたる輝度の累積値である請求項1の飛跡認識装置。
  3. 前記指標算出手段が、飛跡の角度毎に別個に複数設けられており、
    前記複数の指標算出手段が互いに並行して処理を実行する請求項2の飛跡認識装置。
  4. 前記指標算出手段が、輝度の累積値の分布を記憶する記憶手段と、記憶手段から輝度の累積値を読み出して、断層画像における輝度を読み出した輝度の累積値に加算して、新たな累積値を記憶手段に書き込む複数の加算手段を備えており、
    前記複数の加算手段が、輝度の累積値が分布する範囲を分割した複数のグループと対応付けられており、
    前記複数の加算手段が互いに並行して処理を実行する請求項3の飛跡認識装置。
  5. 感材層内に形成された荷電粒子の飛跡を認識する方法であって、
    撮像手段を用いて、焦点面の深さを変えながら感材層を連続的に撮像して、複数の断層画像を取得する撮像工程と、
    複数の断層画像を飛跡の角度に応じたシフト量でシフトさせながら重ね合わせて、飛跡の存在を示す指標の分布を取得する指標算出工程と、
    飛跡の角度毎の飛跡の存在を示す指標の分布に基づいて、感材層における飛跡の位置と角度を特定する特定工程と、
    撮像面に沿った方向の感材層と撮像手段の相対的な位置関係を調整する位置調整工程を備えており、
    撮像手段が、撮像面に沿って配置された複数の撮像素子を備えており、
    隣接する撮像素子の視野の間の間隔が、撮像素子の視野の幅よりも小さくなるように配置されており、
    位置調整工程において、新たな視野が直前に撮像した視野の間の領域を含むように、感材層と撮像手段の相対的な位置関係を調整する飛跡認識方法。
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