JP5098094B2 - 眼鏡レンズの設計方法及び眼鏡レンズ又はレンズデータの選択方法 - Google Patents
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Description
眼鏡レンズの設計は通常シミュレーション工程とその評価工程により行われている。シミュレーション工程ではコンピュータシミュレーションによって眼球モデルとレンズ形状をコンピュータにて構築し、レンズを通った光束を評価し、その評価結果を目標値に近づけるようにレンズ形状を最適化していく。シミュレーション工程で設計された設計値に基づいて実際に評価対象レンズを作製し、評価工程において光学的測定や形状確認、モニター装用評価を行う。そして、評価工程での結果を再びシミュレーション工程の目標値にフィードバックすることで設計の改良を進めていく。眼鏡レンズの設計方法と評価について開示された先行技術としてその一例を特許文献2及び3として挙げる。
例えば、同じレンズ設計で同じようなフィッティング条件であり、従ってコンピュータによるシミュレーションで差が無いという共通した条件の複数のユーザーが存在する場合において、あるユーザーにはそれらの条件で設計した眼鏡レンズについてなんら問題がないにもかかわらず、他のユーザーでは慣れることができないという事例が生じる事がある。
このような事例はレンズの特性単独の問題ではなく、ユーザー特性とのミスマッチに因る所が大きく、例えば歪みが気になり易いと言うユーザーの場合非球面レンズではレンズカーブが浅いことが装用の違和感につながり易い。また、同じく歪みが気になり易いというユーザーであり累進レンズで収差の少ない明視領域の視野を広く取ったいわゆるハードタイプの設計である場合装用の違和感を訴えることが特徴であり、ぼけが気になり易いと言うユーザーの場合ハードタイプの逆のソフトタイプの設計で装用の違和感を訴えることが特徴である。
このようなユーザー特性の差は、例えば乗り物酔いをしやすい人としにくい人がいることと似ており、同じ刺激であってもその個人個人がどのように感じるかが重要になって来る。上記の慣れやすさ以外にも、同じレンズ設計であってもどの程度好ましく感じているかは個人によって区区であり、そのため、ユーザー個人個人の感じ方がレンズ設計にとって重要な要素であるべきである。
しかし、従来では、問診やそれまで掛けていたレンズ種類の情報から判断したり、仮枠とテストレンズを用いたトライアルにより主観的にレンズ選択をするのが主であり、ユーザー個人個人の感じ方については必ずしもレンズ設計に十分取り入れられていなかった。
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、ユーザー個人個人の感じ方を客観的に評価して、レンズ設計に反映することのできる眼鏡レンズの設計方法及び眼鏡レンズ又はレンズデータの選択方法を提供することにある。
また請求項3の発明では請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、前記第1又は第2の視覚コンテンツの少なくともいずれか一方を測定する際には前記第1又は第2の視覚コンテンツよりも感性に与える刺激が小さいベース視覚コンテンツを併せて測定し、それらの差分を測定値とすることをその要旨とする。
また請求項4の発明では請求項1〜3のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記所定の生体情報とは脳波であることをその要旨とする。
また請求項5の発明では請求項1〜3のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記所定の生体情報とは脳血液中の酸素化ヘモグロビン量、脱酸素化ヘモグロビン量及びヘモグロビン量総量から選択される少なくとも1つであることをその要旨とする。
また請求項7の発明では請求項1〜5のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記眼鏡レンズとは非球面レンズであることをその要旨とする。
また請求項8の発明では請求項1〜7のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記装用被験者は眼鏡レンズ購買希望者であり、前記生体情報の測定は眼鏡レンズ小売店又は眼科にて実施されることをその要旨とする。
また請求項9の発明では請求項1〜8のいずれかに記載の発明の構成に加え、眼鏡レンズ小売店または眼科にて測定された生体情報に対し前記固有評価値算出工程を実行し、得られた評価値を通信を介してレンズ加工場所に送信し、レンズ加工場所にて前記レンズ面形状決定工程を実行することをその要旨とする。
また請求項10の発明では請求項9に記載の発明の構成に加え、眼鏡レンズ小売店または眼科にて測定された生体情報は、通信を介してレンズ加工場所に送信され、レンズ加工場所にて前記レンズ面形状決定工程を実行することをその要旨とする。
また請求項12の発明では、文字、図、画像あるいは映像等の視覚を通じて感性に刺激を与える第1の視覚コンテンツを装用被験者に目視させるとともに、その目視に伴って当該装用被験者の所定の生体情報を測定し、測定結果を刺激を感じない場合に基底状態を示すことが可能な感性反応値として獲得し、前記感性反応値に基づいて前記第1の視覚コンテンツにおける所定の指標に関する評価尺度の基準評価値を算出する基準評価値算出工程と、前記第1の視覚コンテンツよりも感性に与える刺激の小さな第2の視覚コンテンツを装用被験者に目視させるとともに、その目視に伴って当該装用被験者の所定の生体情報を測定し、測定結果を刺激を感じない場合に基底状態を示すことが可能な前記感性反応値として獲得し、前記感性反応値に基づいて前記第2の視覚コンテンツにおける所定の指標に関する評価尺度の比較評価値を算出する比較評価値算出工程と、前記基準評価値算出工程で算出した前記基準評価値が所定の大きさ以上の値に達しているかどうかを判定する第1の判定工程と、前記第1の判定工程において前記基準評価値が所定の大きさ以上の値に達していると判定した場合に、前記第2の視覚コンテンツが所定の指標に関して刺激を感じない基底状態を含む所定の許容範囲内の前記感性反応値であるかどうかを前記比較評価値に基づいて判定する第2の判定工程とを有し、前記第2の判定工程において許容範囲内の評価値ではないと判断した場合には前記第2の視覚コンテンツよりも感性に与える刺激の小さな視覚コンテンツを新たな前記第2の視覚コンテンツとして前記比較評価値算出工程を実行させ、一方、前記比較評価値が所定の許容範囲内の評価値であると判断した場合には、予め用意された前記所定の指標の評価尺度に関する評価値との対応が明確で、かつそれぞれ異なるレンズ面形状の複数のレンズ又はレンズデータから前記比較評価値に基づいて装用被験者に好適なレンズ面形状のレンズ又はレンズデータを選択するようにしたことをその要旨とする。
また請求項14の発明では請求項11〜13のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記第1又は第2の視覚コンテンツの少なくともいずれか一方を測定する際には前記第1又は第2の視覚コンテンツよりも感性に与える刺激が小さいベース視覚コンテンツを併せて測定し、それらの差分を測定値とすることをその要旨とする。
また請求項15の発明では請求項11〜14のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記所定の生体情報とは脳波であることをその要旨とする。
また請求項16の発明では請求項11〜14のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記所定の生体情報とは脳血液中の酸素化ヘモグロビン量、脱酸素化ヘモグロビン量及びヘモグロビン量総量から選択される少なくとも1つであることをその要旨とする。
また請求項18の発明では請求項11〜16のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記眼鏡レンズとは非球面レンズであることをその要旨とする。
また請求項19の発明では請求項11〜18のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記被験者は眼鏡レンズ購買希望者であり、前記生体情報の測定は眼鏡レンズ小売店又は眼科にて実施されることをその要旨とする。
また請求項20の発明では請求項10〜19のいずれかに記載の発明の構成に加え、眼鏡レンズ小売店または眼科にて測定された生体情報に対し前記基準評価値算出工程及び固有評価値算出工程を実行されることをその要旨とする。
また請求項21の発明では請求項20に記載の発明の構成に加え、眼鏡レンズ小売店または眼科にて測定された生体情報は、通信を介してレンズ加工場所に送信されることをその要旨とする。
第1の視覚コンテンツは文字、図、画像あるいは映像等の視覚を通じて感性に刺激を与えるコンテンツである。視覚コンテンツは文字、図、画像あるいは映像等であって、二次元的なものでも三次元的なものでもよい。また、錯視による刺激を与える場合においてそれが固定的な静止した画像等であっても、その画像が動いて感じる錯視を与えてもよい。
複数の被験者の人数としては、多ければ多いほど好ましいが、あまり多くても大変であるため、同一とみなせる被験者群に対して少なくても20〜30人程度測定することが好ましい。同一とみなせる被験者群とは、例えば、プラス度数とマイナス度数で装用者の刺激に対する傾向が異なると思われる場合においては、プラス度数の装用者群とマイナス度数の被験者群と言う具合である。この被験者群は、年齢に応じて分けても良いし、眼鏡レンズの仕様シーンによって分けるなどしても良い。
また、第1の視覚コンテンツを測定する際には第1の視覚コンテンツよりも感性に与える刺激が小さいベース視覚コンテンツを併せて測定し、それらの差分を測定値とすることが好ましい。これによって測定者の刺激を与えていない状態の平常の状態の測定値をキャンセルできるため、より正確な測定値を得ることができるからである。また、測定は繰り返し行って平均を取ることが好ましい。
所定の指標について評価尺度を設定する手法としては、例えば主成分分析や独立成分分析や学習アルゴリズム等を用いることができる。予め予定した指標に応じた評価尺度を設定しても、自動的に求められる評価尺度を選択するようにしてもよい。また簡易的に計算する場合には、第1の視覚コンテンツを測定した結果と第1の視覚コンテンツよりも感性に与える刺激が小さいベース視覚コンテンツを測定した結果の差分から、第1の視覚コンテンツを刺激として与える場合の測定結果の方向性を算出し評価尺度を求めるなどすることも可能である。
第1又は第2の視覚コンテンツを測定する際には第1又は第2の視覚コンテンツよりも感性に与える刺激が小さいベース視覚コンテンツを併せて測定し、それらの差分を測定値とすることが好ましい。これによって測定者の刺激を与えていない状態の平常の状態の測定値をキャンセルできるため、より正確な測定値を得ることができるからである。また、測定は繰り返し行って平均を取ることが好ましい。
次いで、固有感性値算出工程において、前記基準評価値に対して装用被験者の前記固有評価値を比較することにより固有感性値として算出する。つまり、第1の視覚コンテンツにおける所定の指標において客観的に当該装用被験者が基準評価値と比較してどのくらいに感じるのかの比率を固有感性値として数値化する。
また、ベース設計は基準評価値に対応させた設計とすることが計算の簡略化の上から好ましい。これはベース設計のレンズが当該指標で好適となる人の生体情報を測定した場合の測定値が基準評価値になることを意味する。
レンズ選択工程において用意された異なるレンズ面形状のレンズあるいはレンズデータから、固有感性値に基づいて装用被験者に好適なレンズ面形状のレンズあるいはレンズデータを選択する。これらレンズは予め所定の指標の評価尺度に関する評価値との対応が明確なレンズである。「レンズあるいはレンズデータ」としたのは複数種類のレンズを前もって多数作製してストックしておいてもよく、所望に応じてその固有感性値に応じたレンズデータを選択しそのデータに基づいて新たに作製するようにしてもよいという意味である。
好適なレンズ面形状とは、指標によって異なり、例えば「ゆれ」や「ぼけ」については以下のようにすることが好ましい。
(i)「ゆれに対する慣れやすさ」の評価で「慣れにくい評価」であった場合
累進レンズであれば、基本累進面を収差分散型にし、レンズカーブを深く設定することが好ましい。これにより通常に比べてレンズのゆれを減少させることが出来る。
非球面レンズであれば、レンズカーブ(レンズ表面の球面近似カーブ)を深く設定し、非球面の量をそのレンズカーブの通常条件よりも相対的にやや多めに設定することが好ましい。これにより通常に比べてレンズのゆれを減少させることが出来る。
(ii)「ゆれに対する慣れやすさ」の評価で「慣れやすい評価」であった場合
累進レンズであれば、基本累進面をベース設計、若しくは、ベース設計よりも収差集中型に設定する。レンズカーブは(i)に比べて浅めに設定することが好ましい。これにより、通常に比べてレンズを薄型に出来、累進レンズの明視域を広く取ることができる。
非球面レンズであれば、レンズカーブを浅く設定し、非球面の量をそのレンズカーブの通常条件で設定することが好ましい。これにより、通常に比べてレンズを薄型に出来る。
(iii)「ボケに対する慣れやすさ」の評価で「慣れやすい評価」であった場合
累進レンズであれば基本累進面は収差分散型にすることが好ましい。これにより通常よりもゆがみの少ないレンズと出来る。
非球面レンズであれば、非球面の量を相対的にやや多めに設定し、非点収差(非点隔差)の改善を重視した設計にすることが好ましい。これにより一般にレンズをやや薄型に出来、レンズ周辺部の乱視の収差誤差を減少させることが出来る。
(iv)「ボケに対する慣れやすさ」の評価で「慣れにくい評価」であった場合
累進レンズであれば、基本累進面は収差集中型にすることが好ましい。これにより、累進レンズの明視域を広く取ることができる。
非球面レンズであれば、像面湾曲の改善を重視した非球面量の設計にすることが好ましい。これによりレンズ周辺まで度数の誤差の少ない設計とすることが出来る。
例えば、ある非球面レンズの装用者においてぼけに対する感覚について基準評価値との対比で固有感性値が低く、「ぼけに対して一般よりも慣れにくい」という評価になった場合にはぼけについての順列化したいくつかのレンズからより「ぼけ」に対して一般よりも慣れにくい人に好適なレンズ(あるいはレンズデータ)を採用する。具体的には例えば「ぼけ」については上記のように像面湾曲と非点収差(隔差)の微調整によって、像面湾曲(と非点収差)の少しずつ特性の異なるレンズ(あるいはレンズデータ)を前もって用意し、固有感性値に応じて好適なものを採用する。
つまり、所定の指標について影響を与えることができるレンズ面形状の要素を徐々に変化させて複数のレンズ(あるいはレンズデータ)を設計し、当該装用者の固有感性値に応じて選択するわけである。
次いで、比較評価値算出工程において、第1の視覚コンテンツよりも感性に与える刺激の小さな第2の視覚コンテンツを装用被験者に目視させ、上記と同様に感性反応値を得、所定の指標に関する評価尺度の比較評価値を算出する。
そして、次の第1の判定工程で基準評価値が所定の大きさ以上の値に達しているかどうかを判定する。
基準評価値が所定の大きさ以上であれば次の第2の判定工程において、第2の視覚コンテンツが所定の指標に関して刺激を感じない基底状態を含む所定の許容範囲内の感性反応値であるかどうかを前記比較評価値に基づいて判定する。この工程は、ある大きさの刺激では所定の指標に関して大きく反応してしまうが、刺激が小さくなることで反応が小さくなって感性に与える影響が問題ないレベルに達しているかどうかを判定する工程である。
この判定は第2の視覚コンテンツによる刺激では装用被験者が感性がその刺激に影響を受けないこと望ましいわけであり、もし影響を受けているという判定が出た場合には、感性に与える刺激の小さな視覚コンテンツを新たな前記第2の視覚コンテンツとして比較評価値算出工程を繰り返す。
一方、第2の視覚コンテンツによる刺激では装用被験者の感性が影響を受けない(あるいは許容できる)のであれば、その時の比較評価値に基づいて装用被験者に好適なレンズ面形状のレンズあるいはレンズデータを選択する。これらレンズは予め所定の指標の評価尺度に関する評価値との対応が明確なレンズである。「レンズあるいはレンズデータ」としたのは複数種類のレンズを前もって多数作製してストックしておいてもよく、所望に応じてその比較評価値に基づいてレンズデータを選択しそのデータに基づいて新たに作製するようにしてもよいという意味である。
また、第1又は第2の視覚コンテンツを測定する際には第1又は第2の視覚コンテンツよりも感性に与える刺激が小さいベース視覚コンテンツを併せて測定し、それらの差分を測定値とすることが好ましい。これによって測定者の刺激を与えていない状態の平常の状態の測定値をキャンセルできるため、より正確な測定値を得ることができるからである。また、測定は繰り返し行って平均を取ることが好ましい。
また、眼鏡レンズ小売店または眼科にて測定された生体情報は、通信を介してレンズ加工場所に送信され、レンズ加工場所にて前記レンズ面形状決定工程を行うことが好ましい。ここに「通信」とは端末コンピュータを使った通信ネットワーク(VAN(付加価値通信網)、インターネット、WAN(Wide Area Network)等)でのデータ送信や、測定結果を記載したシートをファクシミリで送信するような場合も広く含む概念である。「レンズ加工場所」とは例えばレンズ加工工房やレンズメーカーを言う。
また、眼鏡レンズ小売店または眼科にて測定された生体情報に対し固有評価値算出工程を実行し、得られた固有評価値を通信を介してレンズ加工場所に送信し、レンズ加工場所にて前記レンズ面決定工程を実行することが好ましい。
このように眼鏡レンズ購買希望者の生体情報またはその評価値のデータを通信を介してレンズ加工場所に送信し前記レンズ面決定工程によりレンズ面形状を決定し、そのレンズ面形状のレンズを作製することで、該眼鏡レンズ購買希望者に適した眼鏡レンズを製造し、該眼鏡レンズ購買希望者に対して提供することが可能になる。
(実施例1)
1.指標について
本実施例1では指標となる感性を「ゆれに対する慣れやすさ」とし、図1のようなサンプルチャート1を用いて刺激を与えるようにした。本実施例1ではゆれを感じる状態をもって刺激とした。サンプルチャート1は注視点2とその周りにランダムに配置されたドット3から構成されており、注視点2を中心に一方向に回転させることで錯視によるゆれる感覚を起こさせるものとする。
全く注視点2の周りのドットを回転させない状態をゆれに対する刺激ゼロの状態として、ある回転速度である時間回転させることで所定の大きさのゆれに対する刺激を与えるものとする。回転速度や回転時間の設定については、予め多数の測定結果により条件と刺激強さの関係を求めておいた結果を用いるものとする。
尚、このゆれを与える視覚コンテンツとは、特にサンプルチャート1に限定されるものではなく、船に乗って波に揺られているような映像を用いても良いし、静止画でありながら動きを感じさせる「動く錯視」を用いるなどしても良い。
本実施例1では評価値算出のソースとして脳波を利用した。他の生体情報を使用することも可能である。本実施例1に使用する脳波測定装置は、図2に示すような電気的構成である。脳波検出頭部電極11は、例えば医療用に用いられている周知の装置であり、本実施例では図3に示した国際10−20電極位置に従った10電極とグラウンド電極G、および基準電極を備える。脳波検出頭部電極11は被験者の頭部に装着して脳波を検出する。増幅器12は、頭部電極11で検出された脳波を増幅し内蔵されたフィルター回路によってノイズを低減するためのものである。この測定された脳波は、解析コンピュータ13に出力される。解析コンピュータ13はCPU(中央処理装置)14や記憶装置15及びその周辺装置によって構成されている。CPU14は脳波測定データを演算処理し各種評価値を算出するとともに固有感性値を算出する。記憶装置15にはCPU14の動作を制御するためのプログラム、複数のプログラムに共通して適用できる機能を管理するOA処理プログラム(例えば、日本語入力機能や印刷機能等)等の基本プログラムが格納されている。更に、脳波測定データを取り込むプログラム、脳波測定データを演算処理するプログラム等が格納されている。CPU14には入力装置16(マウス、キーボード等)、及びモニター17が接続されている。
図4に基づいて脳波測定装置を使用した評価手法について説明する。
まず初めに、被験者に脳波検出頭部電極11を装着する。そして、被験者にサンプルチャート1をベース刺激の状態とターゲット刺激の2つの状態として目視させ、ターゲット刺激の条件を変更しながら予め決められた回数の測定を繰り返し、そのデータをもとに基準評価値を算出する
ベース刺激では回転させないサンプルチャート1(図1)注視点2を目視させる。ターゲット刺激ではランダムドット3を所定の回転速度で回転させながら注視点2を目視させる。また本実施例1では、ターゲット刺激としてゆれる感覚を与えながら測定しているが、一定時間指標を注視させた後で測定を開始し、ゆれの感じ方の回復過程を測定するなどしてもよい。測定は予め定めた回数(本実施例1では5回)を繰り返し実施する。測定時間は10〜120秒程度が好ましく、本実施例1では60秒とする。本実施例1のサンプルチャート1では、ランダムドット3の回転速度を変更したり、回転させる時間を変更することで、ターゲット刺激を段階的に設定できる。そして、ベース刺激に加えて刺激量「大」、刺激量「中」、刺激量「小」のターゲット刺激をランダムな順番で与え脳波測定を行う。
ターゲット刺激条件3種類×測定回数5回×2(ベース刺激分)の計30のデータ群が1人の被験者から得られる。基準評価値の設定においては、このデータ群を所定の人数取得する。被験者数は多ければ多いほど望ましいが、本実施例1では30人とした。次に、各人に得られたデータ群について高速フーリエ変換を行いθ波、α波、β波のパワースペクトルを算出し、パワースペクトルデータ群を主成分分析を行い、ターゲット刺激に関連のある主成分ベクトルMを算出し、刺激量「大」、刺激量「中」、刺激量「小」の場合の主成分係数の平均をそれぞれ求め、更に、この計算結果を刺激量「大」の時=1.0、ベース刺激の状態=0となるように正規化し、その正規化結果をそれぞれのターゲット刺激の評価値とする。本実施例1では、この計算の結果、刺激量「大」=1.0、刺激量「中」=0.6、刺激量「小」=0.4と求まった。これらの評価値から、刺激量「中」と刺激量「小」の間のターゲット刺激を、例えば評価値0.5となる刺激を新たな刺激量「中」の刺激と設定しこれを基準評価値と設定する。このときのターゲット刺激は標準的な人で評価値0.5となることが期待されるものであるが、どの評価値を基準評価値に設定するかは任意である。
尚、高速フーリエ変換、パワースペクトルの算出、主成分分析については公知であり詳細は省略する。また、脳波データの計算方法は1例であり手法については多くの方法が知られているため限定されるものではない。
本実施例1では次のような2種類の評価値を求めた。
(1)多人数の集合(すなわち、標準的な人)に対して、「中」のターゲット刺激量を与えた時、結果として期待される基準評価値
(2)ある装用者Aについて(1)と同じ条件の刺激を与えた時の固有評価値
尚、多人数に対する基準評価値はこの実施例では測定したが、汎用的な評価値として一回獲得できれば同じ指標(ここでは「ゆれ」)については流用できるため、都度測定する必要はない。
次に、上記各評価値に基づいて装用者Aの固有感性値を算出する。
これは、基準評価値に対する固有評価値の比率であり、標準的な人のターゲット刺激(本実施例1では「ゆれ」)の感じ方に対して装用者Aのターゲット刺激の感じ方がどの程度離れているかを示し、正の値であればターゲット刺激に標準よりも慣れられやすく、負の値であればターゲット刺激に標準よりも慣れられにくいことを示す。本実施例1では基準評価値0.5に対して装用者Aは固有評価値0.2、固有感性値(0.5−0.2)/0.5=0.6という算出結果となった。ここで、装用者Aと同様に固有評価値と固有感性値を算出した装用者Bと装用者Cを想定する。そしてその結果として、装用者Bについては固有評価値0.8、固有感性値−0.6、装用者Cについては固有評価値0.5、固有感性値0.0を得たものとする。この場合において装用者Aは「中」の刺激程度のゆれならば気になりにくい装用者であり、装用者Bは「中」の刺激のゆれでも気になり易い装用者であり、装用者Cは「中」の刺激に対して一般的なゆれの感じ具合であると解釈できる。
次に、評価値及び固有感性値に基づいて装用者の固有感性値に適した設計の作成方法の一例を示す。実施例1では、装用者が累進レンズを必要とされているものとし、ベース設計が図5(a)に示した収差分布性能である場合である。すなわち、最も標準的な人にベース設計図5(a)が好ましいとし、その場合に固有感性値に応じて被験者に合わせた設計とする例である。
例えば、固有感性値0.0の装用者Cの場合、ゆれに対する感じ方は一般的なレベルと同一と判断できるため、設計の変更は無く図5(a)のベース設計が好ましい。また、装用者Aは固有感性値0.6であり、一般的なレベル(0.0)よりもゆれを感じにくい。図5(a)の設計に対して予めターゲット刺激に対応して用意しておいた形状変化ベクトルTvを、例えば(0.5−0.2)/0.5×100=60%加え図5(c)のようにした設計が好ましい。このようにすることで、図5(a)の状態よりもより広い明視域をとでき、ゆれが問題になりにくい装用者Aには好適である。また、装用者Bでは、固有感性値が−0.6であるため、ゆれが気になりやすい装用者である。そのため、予め用意してある形状変化ベクトルTvを例えば、(0.5−0.8)/0.5×100=−60%、すなわち60%逆方向に加え、図5(b)のようにした設計が好ましい。
尚、ここで、評価値が正になる場合には形状変化ベクトルTv、負になる場合には形状変化ベクトルSvなどのように基本設計からのずれ方に応じて形状変化ベクトルを変更するなどしても良い。
更に、基本累進面の変更と合わせて、レンズカーブの変更も行うことが好ましい。これは、レンズカーブが深くなるとレンズが厚くなる一方で、ゆれ・歪みが少なくなるため、ゆれが感じやすくなるとレンズカーブを大きくし、ゆれが感じにくくなるとレンズカーブを小さくするようにするという設計思想である。例えば、装用者A〜装用者CがS−4.00D程度の度数である場合、装用者Cは基本設計条件である表面の近似球面カーブを例えば2.0カーブし、装用者Aはゆれを感じにくいため、若干カーブを浅くした1.5カーブとし、装用者Bはゆれを感じやすいため3.5カーブなどとする等である。
(1)装用者個人個人の感じ方を脳波を測定することで客観的に指標としてのゆれに対する慣れやすさが数値として測定でき、その結果この指標に対する装用者の最適なレンズを提供することが可能となる。
(2)基本設計に固有感性値に応じた形状変化ベクトルを与えて新たなレンズ面を設計するようにしたことで、容易にかつ感性値に応じた最適な設計をオーダーメイド的に実現することができる。
実施例2では被験者は遠点の目標に対してピントにあう十分な調節力のある者とし、ある被験者Dのぼけに対する慣れやすさを客観的に測定した結果を非球面レンズ設計に反映した。
1.指標について
本実施例2では指標となる感性を「ぼけに対する慣れやすさ」とし、図7のようなランドルト環からなる注視点18の方向を一定時間ごとにランダムに切り替えた注視点を被験者から離間した位置に配置し、図8のように被験者の眼球の直前に被験者のレンズ度数に所定のプラスの度数を加えたトライアルレンズ19を配置し、被験者の遠点距離Lを注視点18と装用者の間の距離に設定することで、被験者にぼけを与えるようにした。遠点距離Lよりも遠方においては像のぼけを感じることになる。このぼけを感じる刺激の強さは、装用者と指標との距離に対して、遠点距離をどの程度に設定するか、すなわち、ベース条件のレンズ度数に対してどれだけのプラスの度数を設計するかによって調節することができる。所定の像のぼけを与えた状態をもってターゲット刺激とし、ぼけを感じないベース刺激としては、トライアルフレームに装用者の度数そのまま、若しくは、装用者の度数に若干プラス度数を付加して遠点距離が指標上に来るようにすることで実現する。
指標とする画像としては、ランドルト環以外に風景の画像などでも良く特に限定はしないが、眼球運動による測定ノイズを防ぐため注視点を設けるか、注視点を表示した後指標画像を表示することが好ましい。
本実施例2でも実施例1と同じ脳波測定装置を使用する。
3.脳波の測定〜評価値の算出
本実施例2でも基準評価値の求め方は、実施例1と同様である。ターゲット刺激として被験者のレンズ度数に付加するプラス度数を、例えば、刺激量「大」の場合はS+3.00D、刺激量「中」の場合はS+1.75D、刺激量「小」の場合はS+0.50Dとし、図4に倣って脳波を測定する。
測定はまず初めに、被験者に脳波検出頭部電極11を装着する。そして、被験者に注視点18をトライアルレンズを通して目視させ、閉眼安静測定30秒に続いてターゲット刺激及びベース刺激の両方の測定を連続的に繰り返して行う。繰り返し回数は本実施例2では4回とした。その後、測定したデータをパワースペクトルに変換し、その結果を主成分分析などすることで主成分ベクトルM2と基準評価値を求めることができる。実施例1と同様の計算であるため詳細は省略するが、この測定により、新たな刺激量「中」として、S+1.00Dが基準評価値を与えるターゲット刺激として求まり、その時の基準評価値が0.5となった。
本実施例2では次のような2種類の評価値を求めた。
(1)多人数の集合(すなわち、標準的な人)に対して、「中」のターゲット刺激量を与えた時、結果として期待される基準評価値
(2)ある装用者Dについて(1)と同じ条件で算出した固有評価値
次に、上記各評価値に基づいて装用者Dの固有感性値を算出する。固有感性値の算出方法も実施例1と同じであり、被験者Dの固有評価値0.9と基準評価値0.5から固有感性値0.8と求まる。
これらの値が装用者Dの標準的な人との相対的なぼけに対する慣れ易さの評価値である。ここで、装用者Dと同様に固有評価値と標本評価値を算出した装用者Eを想定する。そしてその結果として、装用者Eについては固有感性値−0.5を得たものとする。本実施例2においては、評価値(基準評価値)0の場合が標準的、評価値が正の場合にはぼけに対する慣れ易さが低く、評価値が負の場合にはぼけに対して慣れ易いことを示す。すなわち、装用者Dは比較的ぼけが気になり易いタイプであり、装用者Eはぼけが余り気にならない装用者と解釈できる。
実施例2では、装用者が非球面レンズを必要とされている例である。装用者D及びEのレンズ度数が例えばS−4.00Dであった時、装用者Dは比較的ぼけが気になり易いため、レンズ周辺部まで像面湾曲が比較的良く補正された図9(a)のような設計とすると好ましい。一方で、装用者Eは、あまりぼけは気にならないタイプであるため、図9(b)のようにレンズ周辺部に像面湾曲を発生させながら非点収差(非点隔差)を低減した設計とすると好ましい。本実施例2では前もって少しずつ像面湾曲と非点収差の特性が異なる多数のレンズ(あるいはレンズデータ)が用意されており、固有感性値に応じて最適な特性のレンズ(あるいはレンズデータ)を選択する。つまり、図9(a)の設計はレンズ度数がS−4.00Dで固有感性値0.8の場合に用意されているレンズのレンズデータであり、図9(b)の設計はレンズ度数がS−4.00Dで固有感性値−0.5の場合に用意されているレンズのレンズデータである。
また、実施例1と同様に形状変化ベクトルを評価値0(主成分値0)の時のレンズ形状に加えることでも設計可能である。また、設計の目標値を評価値に基づいて変更しても良い。
実施例1と同様評価値及び固有感性値の採取は例えば眼鏡レンズ小売店や眼科にて実施するようにしてもよい。
このように構成することで、実施例2では、装用者個人個人の感じ方を脳波を測定することで客観的に指標としてのぼけに対する慣れやすさが数値として測定でき、その結果この指標に対する装用者の最適なレンズを提供することが可能となる。
実施例3では実施例1及び2が評価値算出のソースとして脳波を利用したのに対して脳血液中の酸素化ヘモグロビン量の測定値を利用したものである。
1.指標について
本実施例3では実施例2と同様指標となる感性を「ぼけに対する慣れやすさ」とした。指標は、図7のランドルト環の方向をランダムに切り替えた注視点18を使用し、実施例2と同様にトライアルレンズを配置し、遠点を指標よりも大きく手前にして注視点18がぼける状態にしている。更に、実施例3ではランドルト環の方向(切れ目)について指定した方向(例えば左など)が表示された場合にボタンを押すという感性にストレスを与える課題を行わせる。ボタンを押す課題を与えた場合、被験者がより集中して指標を見ることになり、ターゲット刺激条件でぼけて見えていることがより測定結果に表れやすくなる。ターゲット刺激とベース刺激の定義とそれらの設定の仕方は実施例2と同様である。
尚、実施例2と同じ視覚コンテンツを使用することも可能である。
本実施例3では近赤外分光装置により、脳内の活性化部位における血液中の酸素化ヘモグロビン量を測定するものである。脳の特定部位が活性化することでその部位への血流量が増加しヘモグロビン量総量が増加する。また、脳の特定部位が活性化すると活性化部位において酸素化ヘモグロビンの量が増加し、脱酸素化ヘモグロビンの量が減少する。そのため、その生理現象を利用して被験者の脳内の活性化部位における血液中の酸素化ヘモグロビン量を測定することでレンズの評価をするものである。
本実施例3における近赤外分光装置は図10のような電気的構成である。
図11に示すように、プローブ21は投光部となるLED光源22と受光部となるフォトセンサ23を備えている。生体内部に向ってLED光源22から近赤外光を照射し、生体内部を透過し散乱して減衰した光をフォトセンサ23で検出する。本実施例2では図12に示すように横方向に4つ、縦方向に2つのプローブ21が取り付けられたカフ24を使用して人の前頭前野をカバーするように装着して測定するものとする。前頭前野は脳において記憶や感情や行動の制御に関わる精神活動を司る部分である。そのため、レンズを通した見え方の違いが酸素化ヘモグロビンの量の増減という形で脳内に反映される場所となる。
プローブ21で測定された近赤外光は、解析コンピュータ25に出力される。解析コンピュータ25はCPU(中央処理装置)26や記憶装置27及びその周辺装置によって構成されている。更に、解析コンピュータ25は入力装置28、モニター29等を備えている。これらの説明は実施例1の解析コンピュータ13に準じるため、詳しい説明は省略する。
次に図13に基づいて近赤外分光装置を使用した評価手法について説明する。
まず、図12に示すように被験者(装用者F)にプローブ21の取り付けられたカフ24を脳内に向ってLED光源22から近赤外光が照射されるように装着する。
次に被験者に注視点18をトライアルレンズ(S+3.00D)を通して目視させ、ターゲット刺激及びベース刺激の両方についてそれぞれ閉眼安静時測定(30秒程度)と評価タスク測定(30秒)を連続的に繰り返して行い、脳血液中の酸素化ヘモグロビン量、脱酸素化ヘモグロビン量、ヘモグロビン総量を測定した。繰り返し回数は本実施例3では4回とし、その平均を取った。
その後、それぞれについて、ターゲット刺激とベース刺激の差分を求め、最もレンズ性能を示していた一対のプローブの測定結果が図14であった。図14はターゲット刺激を与えた時の酸素化ヘモグロビン量とベース刺激を与えた時の酸素化ヘモグロビン量の差分を時間軸を横にとってグラフ化したものであり感性反応値に相当する。このグラフからは刺激のない0秒状態が0付近を指し示しているが、ターゲット刺激を与え始めるとそのストレス量の増加とともに酸素化ヘモグロビン差分値は大きくなり、30秒終了とともに急激に小さくなっている。これによって、装用者Fにおいては、ターゲット刺激を与えることにより、酸素化ヘモグロビン量とヘモグロビン総量が増加しているため、所定の評価値に達していると判断でき、ターゲット刺激と測定結果が相関していることが分かる。
装用者Fの測定結果においては、例えば、最大の酸素化ヘモグロビン差分量を評価尺度として採用し、Sfベクトルは0.12の「ぼけ」という指標において大きさを持つ1次元のベクトルと定義でき、Sf=(0.12)とおける。
尚、本実施例3では説明を容易にするため、一対のプローブ間の測定結果を示しているが、実際には、複数のプローブ間の測定結果を用いるため、n個の各プローブ間の酸素化ヘモグロビン差分量をS1,S2,S3・・・Snとすると、Sfベクトル=(S1,S2,S3,・・・,Sn)と評価尺度ベクトルを定義できる。
次いで、装用者Fについて同様の近赤外分光装置を使用した血液中の酸素化ヘモグロビンの測定を異なる条件で実施した。
ここで、装用者Fの評価値は、S+3.00Dを与えたターゲット刺激では評価値0.12、S+1.00Dを与えた場合では0.10と、S+0.50Dを与えた場合では0.02と求まった。まず、S+3.00Dで測定した後、S+1.00Dを与えた場合では評価値は小さくなっているものの依然として評価値は高い、つまり刺激を感じている状態である。そのため改めてS+0.50Dで測定したところ、0.02の評価値を得ることができた。この評価値は0に近く許容判定内と判断でき、装用者Fが感じるぼけに対する感性は影響がないといえる。尚、本実施例3ではベースラインの測定結果より許容判定の閾値を0.03と設定している。
そこで、装用者Fに対して好ましい非球面レンズを設計する場合、レンズ周辺部における像面湾曲を最大0.50Dとした図15のような設計を好ましいと求めることが可能である。
この計算方法は様々な方法が可能であるが、図15の設計は上記実施例2で使用した図9(a)及び図9(b)のレンズ面形状の間あるといえるため、例えば、図9(a)のサグを出発形状とし、図9(a)の形状と図9(b)の形状の差分を形状変化ベクトルFv(Fv1, Fv2, Fv3・・・・, Fsn)として、出発形状である図9(a)に設計目標(本実施例3の場合ではレンズ周辺部において像面湾曲0.50D)を達成するまで形状変化ベクトルの大きさを変えて加えることで設計することができる。
あるいは、実施例2と同様に前もって用意された少しずつ像面湾曲と非点収差の特性が異なる多数のレンズ(あるいはレンズデータ)から像面湾曲が0.50D以内のものを選択するようにしてもよい。
このように構成することで、実施例3では、装用者個人個人の感じ方を脳波を測定することで客観的に指標としてのぼけに対する慣れやすさが数値として測定でき、その結果この指標に対する装用者の最適なレンズを提供することが可能となる。
・本実施例では、生体情報として脳波又は脳血液中の酸素化ヘモグロビン量を用いたが、例えば、脳波と瞬目など複数の生体情報について測定し、それに重み付けをして上記実施例と同様にデータ処理することにより設計にフィードバックする要素とすることも含む。
・本実施例1及び2では、生体情報として脳波を用いたが、例えば、脳血液中の酸素化ヘモグロビン量や脳波と瞬目など複数の生体情報について生体情報として使用することも可能である。
・実施例に挙げた測定の時間は一例であって、適宜変更可能である。また、測定の繰り返し回数も適宜変更可能である。
・ターゲット刺激とベース刺激の平均値を取るための繰り返し回数は適宜変更可能である。
・実施例3においては酸素化ヘモグロビン量を生体情報として用いたが、同時に測定される脱酸素化ヘモグロビン量または全体のヘモグロビン量(総量)を用いることも可能である。脱酸素化ヘモグロビン量は酸素化ヘモグロビン量が増加することで相対的に減少するため、近赤外分光装置によって測定した値として脱酸素化ヘモグロビン量の代わりに脱酸素化ヘモグロビン量を使用することも可能となる。また、脳血液中のヘモグロビン量総量自体が上記のような評価タスク測定の際の環境で増減するため、そのヘモグロビン量総量を近赤外分光装置によって測定し、条件によって異なるヘモグロビン量総量に基づいて評価値を算出して使用することも可能である。
・実施例3においては酸素化ヘモグロビン量を生体情報として用いたが、酸素化ヘモグロビン量と同時に測定される脱酸素化ヘモグロビン量または全体のヘモグロビン量(総量)の2つ以上を生体情報として採用し、例えば、酸素化ヘモグロビン量に対する脱酸素化ヘモグロビン量の割合や、ヘモグロビン量総量に対する脱酸素化ヘモグロビン量の割合の変化などに基づいて評価値を算出して使用することも可能である。
・実施例1について、累進屈折力レンズ以外の例えば非球面レンズで実行することも可能である。また、逆に実施例2及び3で非球面レンズ以外のレンズ、例え場累進屈折力レンで実行することも可能である。
・実施例3において評価値はその他、タスク内における積分値や最大値と使用する等、所定のパラメータを使用することが可能である。
・その他、本発明の趣旨を逸脱しない態様で実施することは自由である。
(1)文字、図、画像あるいは映像等の視覚を通じて感性に刺激を与える第1の視覚コンテンツを装用被験者に目視させるとともに、その目視に伴って当該装用被験者の所定の生体情報を測定し、測定結果を刺激を感じない場合に基底状態を示すことが可能な感性反応値として獲得し、前記感性反応値に基づいて前記第1の視覚コンテンツにおける所定の指標に関する評価尺度の基準評価値を算出する基準評価値算出工程と、
前記第1の視覚コンテンツよりも感性に与える刺激の小さな第2の視覚コンテンツを装用被験者に目視させるとともに、その目視に伴って当該装用被験者の所定の生体情報を測定し、測定結果を刺激を感じない場合に基底状態を示すことが可能な前記感性反応値として獲得し、前記感性反応値に基づいて前記第2の視覚コンテンツにおける所定の指標に関する評価尺度の比較評価値を算出する比較評価値算出工程と、
前記基準評価値と前記比較評価値とを比較して前記比較評価値が少なくとも前記基準評価値よりも大きくないことを判定する第1の判定工程と、
前記第1の判定工程において、前記比較評価値が少なくとも前記基準評価値よりも大きくないと判定した場合に、前記第2の視覚コンテンツが所定の指標に関して刺激を感じない基底状態を含む所定の許容範囲内の前記感性反応値であるかどうかを前記比較評価値に基づいて判定する第2の判定工程とを有し、
前記第2の判定工程において許容範囲内の評価値ではないと判断した場合には前記第2の視覚コンテンツよりも感性に与える刺激の小さな視覚コンテンツを新たな前記第2の視覚コンテンツとして前記比較評価値算出工程を実行させ、一方、前記比較評価値が所定の許容範囲内の評価値であると判断した場合には、予め用意された前記所定の指標の評価尺度に関する評価値との対応が明確で、かつそれぞれ異なるレンズ面形状の複数のレンズ又はレンズデータから前記比較評価値に基づいて装用被験者に好適なレンズ面形状のレンズ又はレンズデータを選択するようにした。
これは実施例3に対応する構成である。
Claims (21)
- 文字、図、画像あるいは映像等の視覚を通じて感性に刺激を与える第1の視覚コンテンツを複数の被験者に目視させるとともに、その目視に伴って各人の所定の生体情報を測定し、得られた複数の測定値に基づいて前記第1の視覚コンテンツにおける所定の指標に関する評価尺度の基準評価値を算出する基準評価値算出工程と、
前記第1の視覚コンテンツ又は前記第1の視覚コンテンツとは異なるものの上記基準評価値算出工程における基準評価値と対応が得られている第2の視覚コンテンツを被験者(以下、装用被験者とする)に目視させるとともに、その目視に伴って装用被験者の所定の生体情報を測定し、その測定値に基づいて前記第1の視覚コンテンツにおける前記所定の指標に関する評価尺度の装用被験者の固有評価値を算出する固有評価値算出工程と、
前記基準評価値と前記固有評価値とから算出される固有感性値を算出する固有感性値算出工程と、
予め前記基準評価値との対応関係を設定してあるベース設計に対して、前記固有感性値算出工程で得られた前記固有感性値に基づいた形状補正を与え装用被験者における前記所定の指標に関する好適な眼鏡レンズのレンズ面形状を決定するレンズ面形状決定工程とからなる眼鏡レンズの設計方法。 - 前記ベース設計は前記基準評価値に対応させた設計であることを特徴とする請求項1に記載の眼鏡レンズの設計方法。
- 前記第1又は第2の視覚コンテンツの少なくともいずれか一方を測定する際には前記第1又は第2の視覚コンテンツよりも感性に与える刺激が小さいベース視覚コンテンツを併せて測定し、それらの差分を測定値とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の眼鏡レンズの設計方法。
- 前記所定の生体情報とは脳波であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の眼鏡レンズの設計方法。
- 前記所定の生体情報とは脳血液中の酸素化ヘモグロビン量、脱酸素化ヘモグロビン量及びヘモグロビン量総量から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の眼鏡レンズの設計方法。
- 前記眼鏡レンズとは累進屈折力レンズであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の眼鏡レンズの設計方法。
- 前記眼鏡レンズとは非球面レンズであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の眼鏡レンズの設計方法。
- 前記装用被験者は眼鏡レンズ購買希望者であり、前記生体情報の測定は眼鏡レンズ小売店又は眼科にて実施されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の眼鏡レンズの設計方法。
- 眼鏡レンズ小売店または眼科にて測定された生体情報に対し前記固有評価値算出工程を実行し、得られた評価値を通信を介してレンズ加工場所に送信し、レンズ加工場所にて前記レンズ面形状決定工程を実行することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の眼鏡レンズの製造方法。
- 眼鏡レンズ小売店または眼科にて測定された生体情報は、通信を介してレンズ加工場所に送信され、レンズ加工場所にて前記レンズ面形状決定工程を実行することを特徴とする請求項9に記載の眼鏡レンズの製造方法。
- 文字、図、画像あるいは映像等の視覚を通じて感性に刺激を与える第1の視覚コンテンツを複数の被験者に目視させるとともに、その目視に伴って各人の所定の生体情報を測定し、得られた複数の測定値に基づいて前記第1の視覚コンテンツにおける所定の指標に関する評価尺度の基準評価値を算出する基準評価値算出工程と、
前記第1の視覚コンテンツ又は前記第1の視覚コンテンツとは異なるものの上記基準評価値算出工程における基準評価値と対応が得られている第2の視覚コンテンツを装用者となる装用被験者に目視させるとともに、その目視に伴って装用被験者の所定の生体情報を測定し、その測定値に基づいて前記第1の視覚コンテンツにおける前記所定の指標に関する評価尺度の装用被験者の固有評価値を算出する固有評価値算出工程と、
前記基準評価値と前記固有評価値とから算出される固有感性値を算出する固有感性値算出工程と、
予め前記基準評価値との対応が明確で、かつそれぞれ異なるレンズ面形状の複数のレンズ又はレンズデータを用意し、前記固有感性値算出工程で得られた前記固有感性値に基づいて装用被験者に好適なレンズ面形状のレンズ又はレンズデータを選択するレンズ選択工程とからなる眼鏡レンズ又はレンズデータの選択方法。 - 文字、図、画像あるいは映像等の視覚を通じて感性に刺激を与える第1の視覚コンテンツを装用被験者に目視させるとともに、その目視に伴って当該装用被験者の所定の生体情報を測定し、測定結果を刺激を感じない場合に基底状態を示すことが可能な感性反応値として獲得し、前記感性反応値に基づいて前記第1の視覚コンテンツにおける所定の指標に関する評価尺度の基準評価値を算出する基準評価値算出工程と、
前記第1の視覚コンテンツよりも感性に与える刺激の小さな第2の視覚コンテンツを装用被験者に目視させるとともに、その目視に伴って当該装用被験者の所定の生体情報を測定し、測定結果を刺激を感じない場合に基底状態を示すことが可能な前記感性反応値として獲得し、前記感性反応値に基づいて前記第2の視覚コンテンツにおける所定の指標に関する評価尺度の比較評価値を算出する比較評価値算出工程と、
前記基準評価値算出工程で算出した前記基準評価値が所定の大きさ以上の値に達しているかどうかを判定する第1の判定工程と、
前記第1の判定工程において前記基準評価値が所定の大きさ以上の値に達していると判定した場合に、前記第2の視覚コンテンツが所定の指標に関して刺激を感じない基底状態を含む所定の許容範囲内の前記感性反応値であるかどうかを前記比較評価値に基づいて判定する第2の判定工程とを有し、
前記第2の判定工程において許容範囲内の評価値ではないと判断した場合には前記第2の視覚コンテンツよりも感性に与える刺激の小さな視覚コンテンツを新たな前記第2の視覚コンテンツとして前記比較評価値算出工程を実行させ、
一方、前記比較評価値が所定の許容範囲内の評価値であると判断した場合には、予め用意された前記所定の指標の評価尺度に関する評価値との対応が明確で、かつそれぞれ異なるレンズ面形状の複数のレンズ又はレンズデータから前記比較評価値に基づいて装用被験者に好適なレンズ面形状のレンズ又はレンズデータを選択するようにした眼鏡レンズ又はレンズデータの選択方法。 - 前記所定の指標とはぼけに対する慣れやすさであって、視覚コンテンツの刺激差を与える手段として度数の異なるレンズを差し替えて使用することを特徴とする請求項12に記載の眼鏡レンズ又はレンズデータの選択方法。
- 前記第1又は第2の視覚コンテンツの少なくともいずれか一方を測定する際には前記第1又は第2の視覚コンテンツよりも感性に与える刺激が小さいベース視覚コンテンツを併せて測定し、それらの差分を測定値とすることを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の眼鏡レンズ又はレンズデータの選択方法。
- 前記所定の生体情報とは脳波であることを特徴とする請求項11〜14のいずれかに記載の眼鏡レンズ又はレンズデータの選択方法。
- 前記所定の生体情報とは脳血液中の酸素化ヘモグロビン量、脱酸素化ヘモグロビン量及びヘモグロビン量総量から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項11〜14のいずれかに記載の眼鏡レンズ又はレンズデータの選択方法。
- 前記眼鏡レンズとは累進屈折力レンズであることを特徴とする請求項11〜16のいずれかに記載の眼鏡レンズ又はレンズデータの選択方法。
- 前記眼鏡レンズとは非球面レンズであることを特徴とする請求項11〜16のいずれかに記載の眼鏡レンズの設計方法。
- 前記被験者は眼鏡レンズ購買希望者であり、前記生体情報の測定は眼鏡レンズ小売店又は眼科にて実施されることを特徴とする請求項11〜18のいずれかに記載の眼鏡レンズ又はレンズデータの選択方法。
- 眼鏡レンズ小売店または眼科にて測定された生体情報に対し前記基準評価値算出工程及び固有評価値算出工程を実行されることを特徴とする請求項11〜19のいずれかに記載の眼鏡レンズ又はレンズデータの選択方法。
- 眼鏡レンズ小売店または眼科にて測定された生体情報は、通信を介してレンズ加工場所に送信されることを特徴とする請求項20に記載の眼鏡レンズ又はレンズデータの選択方法。
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