JP5096602B1 - 耐変色性に優れた耐久親水性繊維及びそれで構成されている繊維成形体ならびに吸収性物品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含み、繊維処理剤が付着している繊維であって、該繊維処理剤が有効成分基準で下記成分(A)を25質量%以上、成分(B)を5質量%以上及び成分(C)を5質量%以上含んでおり、該繊維処理剤が、繊維質量に対して0.1〜1.0質量%付着している繊維による。成分(A):炭素数が8〜22の炭化水素基を有する硫酸エステル塩;成分(B):炭素数が12〜20の炭化水素基を有するスルホコハク酸ジエステル塩;成分(C):炭素数が4〜18の炭化水素基を有する燐酸エステル塩。上記繊維を主体として構成されている繊維成形体、及び上記繊維成形体を用いて得られる吸収性物品。
【選択図】なし
Description
一方、従来から熱接着性繊維には、ラジカル発生による劣化防止を目的としてジブチルヒドロキシトルエンなどの酸化防止剤が添加・含有されており、日光の当たる場所や蛍光灯直下等に長期間保管しておくと変色を起こしやすく、製品品位を損なうといったトラブルが度々発生している。
そこで、繊維表面に付着させる繊維処理剤にヒドロキシカルボン酸を加えることで耐変色性を改善する提案がある(例えば特許文献1)。また、繊維処理剤にアルキル燐酸アンモニウムを用いることで繊維製造時や保管中に発生する黄変現象を防止しようとする提案がある(例えば特許文献2)。
一方、繊維の親水性を高め且つ不織布製造時に錆を発生させないために高級アルコール硫酸塩とアルキルホスフェート金属塩とを繊維へ付着させる提案(例えば特許文献3)や、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩及びポリオキシエチレンアルキル燐酸塩を繊維処理剤の成分とする提案(例えば特許文献4)がある。
従って、優れた耐変色性と耐久親水性とを兼ね備えた繊維への強い要望がある。
ここで、吸液性とは、パルプシートなどの吸収層の上に、不織布といった繊維成形体を配置した状態で、該不織布などの側から尿や経血などの液体を接触(滴下など)させた場合に、液体を速やかに吸収層へ移行させる能力のことをさす。この吸液性は、透液性や通液性などとも呼ばれている。また、ここで耐久親水性とは、繰り返しの吸液性を意味する。
このような問題に鑑み、本発明の課題は、耐変色性が極めて優れており、かつ高い耐久親水性を持った繊維及びそのような繊維で構成された繊維成形体、例えば不織布を提供し、さらにそのような繊維又は繊維成形体を用いた吸収性物品を提供することである。
従って本発明は、以下の構成を有する。
[1] 少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含み、繊維処理剤が付着している繊維であって、該繊維処理剤が有効成分基準で下記成分(A)を25質量%以上、成分(B)を5質量%以上及び成分(C)を5質量%以上含んでおり、該繊維処理剤が、繊維質量に対して0.1〜1.0質量%付着している繊維。
成分(A):炭素数が8〜22の炭化水素基を有する硫酸エステル塩
成分(B):炭素数が12〜20の炭化水素基を有するスルホコハク酸ジエステル塩
成分(C):炭素数が4〜18の炭化水素基を有する燐酸エステル塩
[2] 上記の繊維処理剤における有効成分基準での成分(A)の構成比率(質量%)と成分(C)の構成比率(質量%)とが、下記式を満たす[1]に記載の繊維。
成分(A)の構成比率≧成分(C)の構成比率
[3] [1]または[2]に記載の繊維を主体として構成されている繊維成形体。
[4] 不織布である[3]に記載の繊維成形体。
[5] [3]または[4]に記載の繊維成形体を用いて得られる吸収性物品。
本発明によれば特に、従来高い耐久親水性を得ることが極めて難しかった、プロピレンを主成分とした熱可塑性樹脂が繊維表面の少なくとも一部に露出している繊維(複合繊維を含む)、例えば複合繊維の例として鞘/芯構造がエチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体/ポリプロピレンのような複合繊維と、上記の繊維処理剤とを組み合わせることで、従来にはない高い耐久親水性を得ると同時に極めて優れた耐変色性を併せ持つという、予期せぬ優れた効果を奏するものとなる。
本発明によれば、耐変色性及び耐久親水性を好ましく兼ね備えた繊維、繊維成形体及び吸収性物品を提供できる。
本発明の繊維は、少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含み、繊維処理剤が付着している繊維であって、該繊維処理剤が有効成分基準で下記成分(A)を25質量%以上、成分(B)を5質量%以上及び成分(C)を5質量%以上含んでおり、該繊維処理剤が、繊維質量に対して0.1〜1.0質量%付着している繊維である。
成分(A):炭素数が8〜22の炭化水素基を有する硫酸エステル塩
成分(B):炭素数が12〜20の炭化水素基を有するスルホコハク酸ジエステル塩
成分(C):炭素数が4〜18の炭化水素基を有する燐酸エステル塩
ここで、有効成分とは繊維処理剤全体から水分を除いた成分のことである。また、有効成分基準とは、繊維処理剤全体から水分を除いた成分の総質量を基準とする意味である。
成分(A)は単独の化合物または2種類以上の化合物の混合物であってよい。成分(A)として、例えばオクチル硫酸塩、ラウリル硫酸塩、ステアリル硫酸塩、ヘベニル硫酸塩などが挙げられる。
成分(A)として、また、該炭化水素基へ酸素原子を介してポリオキシアルキレン基が付加しているアルキレンオキサイド付加物の硫酸エステル塩を使用することができる。このような硫酸エステル塩は、例えば炭素数が8〜22の炭化水素基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテルを硫酸化することで製造することができる。そのような化合物の例として、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキニルエーテル硫酸エステル塩などが挙げられる。具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシプロピレンラウリルエーテル硫酸エステル塩などが例示できる。アルキレンオキサイド付加モル数は特に限定されないが、一般的に2〜10である。
該炭化水素基の炭素数は、繊維へ耐久親水性を付与する観点から12〜18が好ましい。また、耐変色性の点から該炭化水素基は不飽和体が好ましく、成分(A)として特にオレイル硫酸塩が好ましい。
成分(A)の硫酸エステル塩を構成するカチオンは特に限定されないが、水溶性の観点から金属カチオンが好ましく、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオンなどのアルカリ金属イオンが挙げられる。中でも硫酸基との相性の観点からナトリウムイオンが特に好ましい。
繊維へ耐久親水性を付与する観点から該炭化水素基の炭素数が12〜18であることが好ましく、特にジトリデシルスルホサクシネートが好ましい。
成分(B)のスルホコハク酸ジエステル塩を構成するカチオンとして、特に限定されないが、水溶性の観点から金属カチオンが好ましく、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオンなどのアルカリ金属イオンが挙げられる。中でもスルホン基との相性の観点からナトリウムイオンが特に好ましい。
成分(C)として単独の化合物または2種類以上の化合物の混合物を使用することができる。成分(C)の例として、ヘキシル燐酸塩、オクチル燐酸塩、ラウリル燐酸塩、ステアリル燐酸塩などが挙げられる。
成分(C)として、該炭化水素基へ酸素原子を介してポリオキシアルキレン基が付加しているアルキレンオキサイド付加物の燐酸エステル塩を使用することができる。例えば炭素数が8〜22の炭化水素基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテルを燐酸化することで製造することができる。そのような化合物の例として、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル燐酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル燐酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキニルエーテル燐酸エステル塩などが挙げられる。具体的には、ポリオキシエチレンオクチルエーテル燐酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル燐酸エステル塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテル燐酸エステル塩、ポリオキシプロピレンラウリルエーテル燐酸エステル塩などが例示できる。アルキレンオキサイド付加モル数は一般的に2〜10である。
該炭化水素基は、繊維へ帯電防止性を付与する観点から炭素数8〜16が好ましく、特にオクチル燐酸塩が好ましい。
成分(C)の燐酸エステル塩を構成するカチオンとしては特に限定されないが、水溶性の観点から金属カチオンが好ましく、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオンなどのアルカリ金属イオンが挙げられる。中でも、燐酸基と相性のよいカリウムイオンが特に好ましい。
本発明の繊維成形体、例えば不織布においても、上記繊維処理剤がその有効成分として0.1〜1.0質量%付着していることが好ましい。
成分(A)の構成比率≧成分(C)の構成比率
本発明の繊維成形体、例えば不織布は、上記繊維処理剤を付着させた繊維を用いて適当な工程により加工し製造することができ、あるいは、繊維から適当な工程により加工して得た繊維成形体へ、上記繊維処理剤を付着させることで製造することができる。例えば不織布といった繊維成形体に繊維処理剤を付着させる場合は、全体に均一に付着させることはもちろん、必要に応じて任意の部分に付着させることができ、また、付着させる部分ごとの付着量に差をつけてもよい。
繊維あるいは繊維成形体への繊維処理剤の付着量の調整は、オイリングロールなどのロールで付着させる場合は、ロールの回転数などによって行うことができ、噴霧法によって付着させる場合は、その噴霧量などによって行うことができる。
繊維へ付着した繊維処理剤の量を定量的に確認する方法として、溶媒による抽出法がある。付着量を確認したい繊維処理剤が可溶な溶剤、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノールなどに一定量の繊維や繊維成形体を浸漬した後、溶剤のみを熱などで揮発させ、その残量を計量することで単位質量当たりの繊維処理剤の付着量を確認することができる。具体的には、迅速法、ソックスレー法が挙げられる。
本発明の繊維に付着させる繊維処理剤には、本発明の効果を妨げない範囲で、各種添加剤を配合することができる。このような添加剤の例として乳化剤、防腐剤、防錆剤、pH調整剤、消泡剤などが挙げられる。
本発明の繊維または繊維成形体を用いた繊維製品としては、おむつ、ナプキン、失禁パット等の吸収性物品、ガウン、術衣等の医療衛生材、壁用シート、障子紙、床材等の室内内装材、カバークロス、清掃用ワイパー、生ゴミ用カバー等の生活関連材、使い捨てトイレ、トイレ用カバー等のトイレタリー製品、ペットシート、ペット用おむつ、ペット用タオル等のペット用品、ワイピング材、フィルター、クッション材、油吸着材、インクタンク用吸着材等の産業資材、一般医療材、寝装材、介護用品などが挙げられる。本発明の繊維または繊維成形体は、さまざまな繊維製品への用途に利用が可能である。
本発明の繊維製品として、特に吸収性物品が挙げられる。
<実施例1〜8及び比較例1〜7>
(熱可塑性樹脂)
繊維を構成する熱可塑性樹脂として以下の樹脂を用いた。
樹脂1:密度0.96g/cm3、MFR(190℃ 荷重21.18N)が16g/10min、融点が130℃である高密度ポリエチレン(略記号PE)
樹脂2:MFR(230℃ 荷重21.18N)が11g/10min、融点が162℃であるポリプロピレン(略記号PP−1)
樹脂3:MFR(230℃ 荷重21.18N)が16g/10min、融点が162℃であるポリプロピレン(略記号PP−2)
樹脂4:MFR(230℃ 荷重21.18N)が16g/10min、融点が131℃であるエチレン含有量4.0重量%、1−ブテン含有量2.65重量%のエチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体(略記号co−PP)
JIS K 7210に準拠し、メルトマスフローレートの測定を行った。ここで、MIは、附属書A表1の条件D(試験温度190℃、荷重2.16kg)に準拠し、MFRは、条件M(試験温度230℃、荷重2.16kg)に準拠して測定した。
表1〜2に示す熱可塑性樹脂を、同心鞘芯型の断面になる紡糸口金を用いて、所定の押出温度にて溶融紡糸し、繊維断面が体積比で50/50の同心鞘芯型の未延伸繊維を得た。その際、表1〜2に示す繊維処理剤をオイリングロールで、未延伸繊維に付着させた。得られた未延伸繊維を、90℃の熱ロールにて延伸し、クリンパーにて捲縮を付与することで、延伸繊維とした。その後、熱風循環型乾燥機にて延伸繊維を乾燥し、カッターにて51mmにカットして2.2dtexの短繊維とし、これを試料繊維として用いた。
各例で使用した繊維処理剤の組成を表1〜2に示す。この組成の単位は質量%で、繊維処理剤中の有効成分の全量で100質量%とする。
試料繊維をローラーカード試験機((有)大和機工製)にて繊維ウェブとして、繊維ウェブから2gを取り出し迅速残脂抽出装置(東海計器(株)製「R−II型」)を用いて測定した。抽出溶媒としてメタノール25mlを用いた。
以下の式で付着量を算出した。
処理剤の付着量(質量%)=抽出量(g)÷2×100
上記工程で得られた試料繊維をローラーカード試験機((有)大和機工製)にてカードウェブとし、このウェブをニードルパンチプレス機にて目付が約200±20g/m2の不織布とした。同サンプルを縦8cm×横8cmにカットし、石油ストーブ火源の上部80cmに設置した(雰囲気温度は100±5℃)。燃焼ガスに3時間暴露した後、試料を取り出した。色差計(スガ試験(株)製「Model SM−4」)にて試験前後の試験サンプルの表面のYI(Yellow Index)の数値を測定し、その差であるΔYIを算出し、下記3段階にて評価した。
良い A > B > C 悪い
ΔYIが6未満であれば耐変色性に優れるとして‘A’とした。
ΔYIが6以上8未満であれば‘B’とした。
ΔYIが8以上であれば変色性が高いといえることから‘C’とした。
上記工程で得られた試料繊維をローラーカード試験機((有)大和機工製)にてカードウェブとし、このウェブをサクションドライヤーで、表1〜2記載の温度のスルーエアー加工(略号としてTA)にて熱接着させ、目付が約23±2g/m2の不織布を得た。
上記工程で得られた不織布を縦10cm×横10cmでカットし、ティッシュに包まれた吸収体の上に設置し、人工尿を2mlピペットにて1滴ずつ10ヶ所に滴下し、不織布表面上より吸収された数より下記式より吸収率を算出した。
吸収率(%)=(吸収された数(個)/10)×100
その後、50mlの人工尿にて不織布を洗い流し、充分に乾燥後、先ほど滴下した位置に滴下し再度吸収率を測定した。吸収率が0%になるまで繰り返し実施し、下記3段階にて判定し、耐久親水性を評価した。
良い A > B > C 悪い
3回目の吸収率が0%を超えるものは吸収性に優れるとして‘A’とした。
2回目の吸収率が0%を超えて3回目の吸収率が0%では‘B’とした。
2回目の吸収率が0%のものは吸収性に劣るとして‘C’とした。
なお、本評価で用いた人工尿は下記成分比にて調製されたものを使用した。
尿素 ・・・2.00質量%
塩化ナトリウム ・・・0.80質量%
硫酸マグネシウム・・・0.08質量%
塩化カルシウム ・・・0.03質量%
イオン交換水 ・・・97.09質量%
更に、本発明の繊維から得られる不織布などの繊維成形体は、高い耐久親水性を有しかつ、耐変色性に極めて優れており、おむつ、ナプキン、失禁パット等の吸収性物品、ガウン、術衣等の医療衛生材、壁用シート、障子紙、床材等の室内内装材、カバークロス、清掃用ワイパー、生ゴミ用カバー等の生活関連材、使い捨てトイレ、トイレ用カバー等のトイレタリー製品、ペットシート、ペット用おむつ、ペット用タオル等のペット用品、ワイピング材、フィルター、クッション材、油吸着材、インクタンク用吸着材等の産業資材、一般医療材、寝装材、介護用品など様々な繊維製品への用途に有利に利用することができる。
Claims (5)
- 少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含み、繊維処理剤が付着している繊維であって、該繊維処理剤が有効成分基準で下記成分(A)を25質量%以上、成分(B)を5質量%以上及び成分(C)を5質量%以上含んでおり、該繊維処理剤が、繊維質量に対して0.1〜1.0質量%付着している繊維。
成分(A):炭素数が8〜22の炭化水素基を有する硫酸エステル塩
成分(B):炭素数が12〜20の炭化水素基を有するスルホコハク酸ジエステル塩
成分(C):炭素数が4〜18の炭化水素基を有する燐酸エステル塩 - 繊維処理剤における有効成分基準での成分(A)の構成比率(質量%)と成分(C)の構成比率(質量%)とが下記式を満たす、請求項1に記載の繊維。
成分(A)の構成比率≧成分(C)の構成比率 - 請求項1または2に記載の繊維を主体として構成されている繊維成形体。
- 不織布である請求項3に記載の繊維成形体。
- 請求項3または4に記載の繊維成形体を用いて得られる吸収性物品。
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