JP4029614B2 - 親水性長繊維不織布、複合化不織布及びそれらを用いた吸収性物品 - Google Patents

親水性長繊維不織布、複合化不織布及びそれらを用いた吸収性物品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙おむつ、生理用品等の衛生材料の表面材に適した親水性長繊維不織布に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に紙おむつや生理用品等の衛生材料は、表面材、吸収体、及び外装材とから構成されている。表面材は直接肌に触れる部分に用いられ、透水性が付与された不織布が使用されている。このため、表面材には、肌触りが良好なこと、皮膚刺激がないこと等の性能だけでなく、実用上及び衛生面から尿や体液等の吸収体への吸収速度が速いこと、表面材を通過して吸収体に吸収された尿や体液等の逆戻り量が少ないこと等の性能が必要であり、それらの性能を向上させることが極めて重要な課題となっている。
【0003】
紙おむつや生理用品等の衛生材料の表面材として、ポリオレフィン系樹脂あるいはポリエステル系樹脂等の疎水性の熱可塑性樹脂からなる繊維を用いた不織布が広く利用されている。これらの不織布もまた疎水性となることから、水、尿、体液等を透過させにくい特性を有する。そのため、表面材として用いる場合には、尿、体液等の透過性を付与することが必要であり、不織布には、界面活性剤等で親水化処理を施すことが行われている。
【0004】
従来から衛生材料の表面材に用いられる不織布としては、カード法にてポリオレフィン系あるいはポリエステル系の短繊維を集積し、熱処理等で接着したカード不織布が主に用いられてきた。一般にカード不織布に親水化処理を施す方法としては、カード不織布の原料である短繊維の製造時の紡糸工程あるいは延伸工程で、繊維に界面活性剤等の親水化油剤を付着させることにより親水性が付与されている。よって、カード不織布は、構成する繊維1本1本に親水化処理が施されているので、不織布の親水性は均一であり、また安定した性能を示す。しかし、近年、短繊維を原料としたカード不織布から、コスト面を重視し、より生産性が高い、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布等の長繊維不織布に表面材を変更する検討がなされている。
【0005】
スパンボンド不織布は、一般に紡糸工程においてロール引取やエアサッカー引取による細繊度化の後、ネットコンベア上に集積されたウェブをエンボス型熱圧着機により長繊維ウェブの相互間を熱接着することにより製造されている。また、メルトブロー不織布は、溶融樹脂を高温高圧の熱風によりネットコンベア上にブローすることで細繊度化し、ネットコンベア上に集積されることにより製造される。このように、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布等の長繊維不織布は、連続した生産ライン(インライン)で不織布化が行われるため、短繊維を用いたカード不織布に比べて生産性が高く、また、スパンボンド不織布は、長繊維で構成されるため不織布強度が高くなるといった優れた物性を有している。なお、これらの不織布の親水化処理は、一般的に、不織布化後にインライン、あるいは、生産ラインとは別の設備(アウトライン)で行われている。
【0006】
不織布の親水化処理法としては、親水化油剤中に不織布を含浸するディッピング方式、親水化油剤を不織布に噴霧するスプレー方式、親水化油剤をグラビアロールにて塗布するグラビア方式が広く用いられている。しかし、いずれの方式においても不織布化後に親水化処理が施されるため、不織布を構成する繊維1本1本に均一に親水化油剤を塗工することは困難であり、また不織布内部まで親水化油剤が浸透せず、不織布の厚み方向に親水化油剤濃度の不均衡を生じ易い。また、界面活性剤等を水で希釈し、所定濃度に調整して親水化処理を行うが、ポリオレフィン系の不織布等は元々疎水性不織布であるため、水で希釈された親水化油剤と不織布との親和性が弱く、特に高速での親水化処理では不織布表面に塗布ムラが生じ易く、前記親水化油剤が付着せず部分的に撥水となる箇所が発生し易い。したがって、親水化油剤が均一に付着した、均一な親水性能を有する親水性不織布が望まれている。
【0007】
また、疎水性樹脂を用いた熱可塑性繊維に親水化処理を施す方法として、紡糸段階で疎水性樹脂と親水化剤とを溶融ブレンドする方法がある。しかし、この方法で、充分に親水性のある繊維を得るためには、親水化剤等の混合率を高くしなければならず、その結果、紡糸工程において安定生産性に欠け、また、得られた繊維を用いて不織布を形成しても、繊維間の接着を親水化剤が阻害するため、強度が低下するといった問題点がある。
【0008】
この対策として、特開2000−239963号公報には、親水化剤を混練した合成繊維を用いた不織布にプラズマ処理を施して親水性不織布を製造する方法が提案されている。この方法では、親水化剤添加とプラズマ処理を併用することにより良好な親水性不織布が得られるが、特殊な装置が必要であり、また処理速度やコストの点で非経済的である。
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、撥水性のスパンボンド不織布やメルトブロー不織布等の長繊維不織布に親水化油剤を均一に付着し、その表面及び内部の親水性能のばらつきを改善し、良好な親水性と透水性を有する親水性長繊維不織布、複合化不織布及びそれを用いた吸収性物品を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記従来技術の課題を解決するために鋭意研究を行った。その結果、以下の条件を満たすときに長繊維不織布の表面及び内部の親水性能を均一化でき、更に透水性に優れた長繊維不織布が得られることを見出し、その知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
(1)熱可塑性繊維からなる長繊維不織布であって、前記長繊維不織布を構成する熱可塑性繊維には親水化剤が繊維重量に対し、0.05〜5.0重量%含有され、かつ親水化油剤が長繊維不織布重量に対し、0.1〜2.0重量%付着された長繊維不織布であり、下記式より算出される、水抽出濃度(Aw)が、付着した親水化油剤濃度より大きいことを特徴とする親水性長繊維不織布。
Aw(重量%)=(W −W )/W
ここで、水抽出濃度(Aw)は、JIS L 1096−1990に準拠し、不織布を秤量し(W )、温度40±2℃の純水で、30分処理して抽出した後、この不織布を漏斗上に取り出し、50±2℃の温水で充分洗浄した後、105±2℃の恒温乾燥機中で1.5時間乾燥し、その後、不織布の絶乾質量W を秤量して、上記式により算出される。
(2)熱可塑性繊維が、融点差の異なる少なくとも2成分の熱可塑性樹脂からなる複合繊維である前記(1)項記載の親水性長繊維不織布。
(3)熱可塑性繊維が、ポリオレフィン系繊維またはポリエステル系繊維である前記(1)項または前記(2)項記載の親水性長繊維不織布。
(4)親水性長繊維不織布が、スパンボンド法により得られた長繊維不織布である前記(1)〜(3)のいずれか1項記載の親水性長繊維不織布。
(5)前記(1)〜(4)のいずれか1項記載の親水性長繊維不織布と、前記親水性長繊維不織布以外の不織布、フィルム、パルプシート、編物、及び織物から選ばれた少なくとも1種の物品を積層した複合化不織布。
)前記(1)〜(4)のいずれか1項記載の親水性長繊維不織布を用いた吸収性物品。
)前記(5)項記載の複合化不織布を用いた吸収性物品。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
本発明に用いられる長繊維不織布は、特定量の親水化剤が添加された熱可塑性繊維からなるスパンボンド不織布やメルトブロー不織布であれば、どのようなものでも使用可能である。なかでも、ポリオレフィン系、ポリエステル系の熱可塑性樹脂を用いた熱可塑性繊維は疎水性であることから、親水化剤を練り込みにより添加し、更に親水化油剤の付着を行い、添加と付着を併用することで親水性の効果が顕著に現れる。本発明で用いられる熱可塑性繊維としては、汎用のポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維が好ましい。
【0013】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレンとプロピレン以外のαオレフィンとの二元または三元共重合体等のポリオレフィン系樹脂や、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸とを共重合した低融点ポリエステル等のポリエステル系樹脂、更には上記熱可塑性樹脂の混合物等が使用できる。なお、本発明においてプロピレンとプロピレン以外のαオレフィンとの二元共重合体、プロピレンとプロピレン以外のαオレフィンとの三元共重合体、ポリプロピレンを称してプロピレン系樹脂という場合もある。
【0014】
本発明の親水性長繊維不織布を構成する熱可塑性繊維の構造は、親水化剤を混練していれば単一繊維であっても、2成分以上の熱可塑性樹脂との複合繊維であってもよい。また、本発明の親水性長繊維不織布は、原料の熱可塑性樹脂が異なる単一繊維同士の混繊や、単一繊維と複合繊維との混繊から構成されていてもよい。複合繊維の複合構造は、鞘芯型、並列型、海島型等のいずれも使用でき、なかでも低融点樹脂を鞘成分とし、高融点成分を芯成分とする鞘芯型複合繊維は良好な熱接着性を有し、熱接着状態が安定しているため特に好ましく利用できる。この他、異形断面構造、分割型構造、中空型構造を有する複合繊維も使用できる。また、本発明で用いられる複合繊維は、通常は2成分の熱可塑性樹脂の組み合わせからなるが、必要に応じて多成分の熱可塑性樹脂の組み合わせとしてもよい。
【0015】
本発明に用いられる熱可塑性繊維が複合繊維である場合(以下、低融点樹脂/高融点樹脂で表す)は、例えば、高密度ポリエチレン/ポリプロピレン、直鎖状低密度ポリエチレン/ポリプロピレン、低密度ポリエチレン/ポリプロピレン、プロピレンとプロピレン以外のαオレフィンとの二元共重合体または三元共重合体/ポリプロピレン、高密度ポリエチレン/プロピレンとプロピレン以外のαオレフィンとの二元共重合体または三元共重合体、直鎖状低密度ポリエチレン/プロピレンとプロピレン以外のαオレフィンとの二元共重合体または三元共重合体、低密度ポリエチレン/プロピレンとプロピレン以外のαオレフィンとの二元共重合体または三元共重合体、直鎖状低密度ポリエチレン/高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン/高密度ポリエチレン、ポリプロピレン/ポリエステル、プロピレンとプロピレン以外のαオレフィンとの二元共重合体または三元共重合体/ポリエステル、高密度ポリエチレン/ポリエステル、直鎖状低密度ポリエチレン/ポリエステル、低密度ポリエチレン/ポリエステル、低融点ポリエステル/ポリエステル等を一例として挙げることができる。
【0016】
本発明に用いられる熱可塑性繊維には、本発明の効果を妨げない範囲で、安定剤、難燃剤、抗菌剤、着色剤、滑剤等が添加されていてもよい。
【0017】
熱可塑性繊維に添加される親水化剤は特に制限はなく、従来公知の界面活性剤等の親水化剤を用いることができる。ポリオレフィン系樹脂に添加される親水化剤には、特に限定はないが、例えば、グリセライド、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル及びスルホン酸金属塩化合物等が挙げられる。また、例えば、ポリエステル系樹脂に添加される親水化剤には、特に限定はないが、ポリオキシエチレングリコール、ポリエチレングリコール及びポリアルキレンアミン系骨格にポリアルキレンオキサイド鎖を有する基が結合した化合物等が挙げられる。
【0018】
熱可塑性繊維中の親水化剤の添加量は、使用する親水化剤の種類によって異なるが、紡糸の安定性が低下せず、また長繊維不織布に加工した場合に不織布の破断強度が低下しない範囲であれば制限はない。親水化剤の添加量は、繊維重量に対して0.05〜5.0重量%であり、好ましくは0.1〜2.0重量%である。添加量がこの範囲を下回って低い場合には、親水化油剤と併用しても充分な親水性が発現せず、また、添加量がこの範囲を大幅に越えて高い場合には、安定した紡糸が難しくなる。なお、熱可塑性繊維が鞘芯型複合繊維である場合は、親水化剤を鞘成分(低融点樹脂)のみに添加すればよく、このときの親水化剤の添加量は、繊維重量に対して0.05〜5.0重量%であれば利用でき、好ましくは繊維重量に対して0.05〜1重量%である。また、本発明では、親水化剤を添加した熱可塑性繊維から構成される長繊維不織布に親水化油剤を付着することで、はじめて均一で良好な親水性が発現できる。長繊維不織布の表面及び内部における親水性能のばらつきを改善できれば、親水化剤を添加した時点での繊維自体が必ずしも明瞭な親水性を有する必要はない。
【0019】
親水化剤を添加させる方法には特に制限はなく、従来公知の添加方法を用いることが出来る。例えば、パウダーやペレット状の親水化剤を繊維原料の熱可塑性樹脂に添加する方法や、親水化剤と熱可塑性樹脂を溶融混合したマスターバッチを繊維原料の熱可塑性樹脂に添加する方法が挙げられる。さらに、親水化剤を直接添加する場合やマスターバッチを製造する際に、親水化剤が繊維原料の熱可塑性樹脂中で均一に分散するように分散剤を添加してもよい。
【0020】
本発明では、スパンボンド法またはメルトブロー法等により紡糸を行い、得られた熱可塑性繊維からなるウェブを長繊維不織布として利用できる。不織布化の方法としては、エンボスロール等により部分的に熱接着させる点熱圧着法、熱風により熱接着させるスルーエアー法、水流により繊維同士を交絡させるウォーターニードル法、針により繊維同士を交絡させるニードルパンチ法等が例示できる。スパンボンド法やメルトブロー法は、原料繊維の製造、ウェブ化及び不織布の製造がインラインで行え、生産性に優れている。また、スパンボンド法による不織布とメルトブロー法による不織布が積層された長繊維不織布も利用できる。積層方法としてはオフラインで貼り合わす方法以外に、各製法の紡糸設備を組合せインラインでウェブを積層し、前述した不織布化方法により積層長繊維不織布とする方法も挙げられる。積層形態としては、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布の2層タイプやスパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布の3層タイプ等が挙げられる。
【0021】
スパンボンド法では、一般に紡糸工程においてロール引取りやエアサッカー引取りによる細繊度化の後、ネットコンベア上に堆積したウェブをエンボス型熱接着機に搬送し、加熱されたエンボスロール(凹凸ロール)とフラットロール(平滑ロール)の間を通すことにより、長繊維相互間を点熱接着させ、連続した生産ライン(インライン)で熱可塑性樹脂から長繊維不織布を製造できる。このため、短繊維を用いた不織布の製造に比べ、生産性が非常に高い。また、不織布が長繊維で構成されているため、短繊維で構成された不織布と比較して、同じ不織布加工条件で不織布を製造した場合には、不織布強度が高くなる等、優れた物性を有している。
【0022】
メルトブロー法では、一般に溶融樹脂を高温高圧の熱風によりネットコンベア上にブローし、ネットコンベア上に集積することでウェブが製造できる。このウェブをそのまま長繊維不織布として利用してもよいが、スパンボンド法と同様に連続した生産ライン(インライン)で、エンボス型熱接着機等により更に点熱接着を行った長繊維不織布として利用してもよい。このため、短繊維を用いた不織布の製造に比べ、生産性が非常に高い。
【0023】
本発明の親水性長繊維不織布において、使用可能な熱可塑性繊維の繊度は、特に限定されるものではなく、バッテリーセパレーターの様に非常に細い繊度が要求されるものから、土木用途に求められる太繊度のものまで、広い繊度要求に対応可能である。一例をあげると、バッテリーセパレーター等では2dtex以下の繊度が好ましく、土木一般用途では1〜300dtex程度が好ましく、紙おむつや生理用品等の衛生材料として用いる場合では、肌触り感の点で0.1〜10dtexが好ましく、0.2〜6dtexがより好ましい。なお、衛生材料として、スパンボンド不織布とメルトブロー不織布による積層長繊維不織布を用いる場合、メルトブロー不織布の繊度が0.1dtex以下でも、その目付が低く、親水性能に影響を及ぼさなければ問題なく使用できる。
【0024】
本発明の親水性長繊維不織布における目付の範囲は、特に限定されないが、均一な目付の不織布の製造や、後工程の親水化油剤の塗布工程での均一付着を考慮すれば、3〜300g/m2が利用でき、なかでも、5〜100g/m2が好ましく用いられる。これらのうち、得られる親水性長繊維不織布の風合や柔軟性を考慮すれば5〜50g/m2が好ましい。特に衛生材料では、風合を重視されるために5〜30g/m2が好ましい。
【0025】
本発明の親水性長繊維不織布は、親水化剤を含有した熱可塑性繊維から構成される長繊維不織布に親水化油剤を付着することにより得られる。親水化剤を含有していない熱可塑性繊維(疎水性繊維)を不織布化した後に得られる不織布に親水化油剤を付着した場合、不織布を構成する1本1本の繊維に親水化油剤を均一に塗布・塗工することが困難であり、長繊維不織布の表面のみ親水化処理され、長繊維不織布の内部まで親水化油剤が行き渡らず、長繊維不織布の厚み方向に親水化油剤濃度の斑が生じ易い。また、長繊維不織布に親水化処理を行う場合には、生産性(コスト)が重視されるため、処理速度が高速で行われる場合が多い。このとき、疎水性の長繊維不織布は、水で希釈した親水化油剤との親和性が弱いため、親水処理速度が高速になればなるほど、不織布表面では親水化油剤をはじき易く、不織布表面に親水化油剤の付着ムラが生じ、部分的に撥水箇所が発生してしまう不具合があった。このため、疎水性の熱可塑性繊維からなるスパンボンド不織布やメルトブロー不織布に後加工で親水化処理を行う場合には、直接、熱可塑性繊維に親水化油剤を付着するよりも、熱可塑性繊維中に予め親水化剤を添加して、不織布と親水化油剤の親和性を上げることにより、繊維と親水化油剤の接触角を小さくできるので、長繊維不織布への親水化油剤の拡散を著しく向上できる。その結果、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布等の長繊維不織布に対する親水化油剤の付着ムラがなくなり、均一性の高い、良好な親水性不織布を得ることができる。
【0026】
本発明で用いる親水化油剤の種類としては、特に限定する必要はなく、用途に適したものを選択すればよい。好適に用いられる親水化油剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、ポリオキシアルキレンリン酸エステル塩、アルキルスルホネート塩、ポリオキシアルキレンアルキル硫酸エステル塩、ポリアルキレングリコール高級脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン多価アルコール高級脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノ高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アルカノールアマイドを挙げることができ、これらは単独で用いても、また、混合して用いてもよい。一般に親水化油剤を不織布に付着した後、水に対する表面張力を低くできる親水化油剤が、再湿潤性が大きく好ましい。特に熱可塑性繊維に添加する親水化剤に対する親和性を考えると、添加する親水化剤と同一系の親水化油剤が好ましい。
【0027】
本発明の親水性長繊維不織布において、親水化油剤の付着量は長繊維不織布重量に対して、0.1〜2.0重量%であり、0.2〜2.0重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜1.0重量%である。紙おむつや生理用品等の衛生材料の表面材に不織布を用いたとき、親水化油剤の付着量が上記範囲を下回って低い場合には、親水化剤の添加との併用であっても、尿や体液の透過性が不充分であり、また、付着量が上記範囲を越えて大幅に高い場合には、肌や尿や体液の逆戻り量が多くなり、さらりとした触感が悪くなる傾向にある。更に、高付着量では肌への刺激が強くなったり、肌荒れが生じ易くなるため、吸収性物品としては適さないことがある。
【0028】
本発明において、長繊維不織布に親水化油剤を付着する方法としては、グラビア法、フレキソ法、ゲートロール法等のロールコーティング法、スプレーコーティング法、ディッピング法、発泡法等が挙げられるが、長繊維不織布への付着ができるものであれば特に限定されない。また、付着後の長繊維不織布の乾燥方法としては、熱風及び赤外線により乾燥させる非接触型の乾燥方法、熱ロール等の加熱体に接触させて乾燥させる接触型の乾燥方法等が例示でき、これらのいずれを用いてもよい。
【0029】
本発明の親水性長繊維不織布に含有する親水化剤及び付着された親水化油剤は、水及び溶剤による抽出により定量することができる。ここでは、不織布重量に対する水及び溶剤で抽出した不織布に含有(付着)する親水化剤及び親水化油剤の重量%をそれぞれ水抽出濃度(Aw)、溶剤抽出濃度(As)と呼び、実際に得られた不織布から求めることができる。
本発明の親水性長繊維不織布は、熱可塑性繊維に添加された親水化剤のうち、繊維表面に存在する親水化剤が、不織布と親水化油剤との親和性を向上させ、不織布に均一な親水性を与える。言い換えると、親水化剤が繊維表面に必要量存在しなければ、本発明の親水性が均一な親水性長繊維不織布を得ることは難しい。したがって、水抽出濃度(Aw)は、付着された親水化油剤の濃度と繊維表面に存在する親水化剤からの濃度との合算値となり、Awの範囲は、付着した親水化油剤濃度より大きくなり、また、付着した親水化油剤濃度と繊維中に含まれる親水化剤濃度の合算値よりも小さな値となる。具体的な数値を挙げると、0.1<Aw<7.0、好ましくは、0.5<Aw<3.0である。
一方、溶剤抽出濃度(As)は、上記の水による抽出で繊維表面の親水化油剤及び親水化剤を取り除いた後の不織布を用い、溶剤を用いて繊維中に含まれる親水化剤を抽出する。つまり、Asは、繊維表面にブリードアウトせずに繊維中に残留する親水化剤の残留濃度を示している。また、繊維中の親水化剤は、その全てが繊維表面にブリードアウトしてくるわけではないため、Asは繊維中に親水化剤が含有されていることの指標となる。したがって、Asの範囲は、全ての親水化剤が繊維表面にブリードアウトしてしまったときの親水化剤の残留濃度(=0)よりも大きくなり、また、親水化剤が全く繊維表面に存在しないときの親水化剤の残留濃度よりも小さな値となる。具体的な数値を挙げると、0<As<5.0、好ましくは0<As<2.0である。よって、不織布がAw、Asの両方の条件を満たすとき、不織布の表面及び内部の親水性能が均一で、更に透水性に優れた親水性長繊維不織布が得られる。
【0030】
本発明の親水性長繊維不織布は、その効果を妨げない範囲で、他の不織布、フィルム、パルプシート、編物、織物等を積層し、複合化不織布とすることができる。他の不織布、フィルム、パルプシート、編物、織物等は、単独で積層させてもよく、また複数組み合わせて積層させてもよい。更に、その素材に制約はなく、種々のものが利用できるが、基となる親水性長繊維不織布と接着可能な素材からなる、もしくは接着可能な素材を含むことが好ましい。
【0031】
積層の方法としては、スパンボンド法、エアレイド法、カード法等の各種製造方法で得られた熱融着性複合繊維ウェブ上に、他の不織布、フィルム、パルプシート、編物、織物等の物品中から選択した物品を積層させ、接着する方法や、本発明の親水性長繊維不織布と、他の不織布、フィルム、パルプシート、編物、織物の物品中から選択した物品を積層させ、接着する方法等がある。積層時の接着方法としては、ホットメルト接着剤を用いる方法や点熱圧着加工等があり、これら接着の方法は、積層させる素材の種類や用途等によって適した方法が選ばれる。
【0032】
本発明の親水性長繊維不織布及び複合化不織布は、親水性を要求される吸収性物品の素材として利用することが可能である。特に乳幼児用や大人用の使い捨てオムツ、ナプキン、吸汗パット、皮脂除去用シート材、お手拭き等の衛生材料として好ましく利用できる。
【0033】
更に、本発明の親水性長繊維不織布及び複合化不織布は、ワイパーの素材としても好ましく利用できる。一例を挙げると、家庭用使い捨て雑巾、眼鏡拭き、床拭き材、畳拭き材等がある。
【0034】
本発明の親水性長繊維不織布及び複合化不織布は、上記の用途以外に、べたがけシート、防草シート、果実保護袋、保温シート等の農業資材や、エアフィルター、油吸着材、建設資材、土木資材等の産業資材、外科用ガウンやマスク・帽子等のメディカル用品の素材としても利用可能である。
【0035】
更に、本発明の親水性長繊維不織布及び複合化不織布は、多くの他資材、例えばネット、布帛、土木シート、金属、木材、ガラス、プラスチック成形体、陶磁器、紙、毛等と組み合わせて使用することができる。
【0036】
【実施例】
以下、実施例、比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
(親水化剤及び親水化油剤の定量)
得られた長繊維不織布に含有する親水化剤及び親水化油剤の定量法について以下の方法を記載する(JIS L 1096−1990に準ずる)。
(1)水抽出濃度(Aw)の定量
▲1▼不織布を正確に秤量し(W1)、温度40±2℃の純水で、30分処理して抽出する。
▲2▼この不織布を漏斗上に取り出し、50±2℃の温水で充分洗浄した後、105±2℃の恒温乾燥機中で1.5時間乾燥し、その後、不織布の絶乾質量W2を秤量する。
▲3▼水抽出濃度(Aw)を以下の式より算出する。
Aw(重量%)=(W1−W2)/W2
なお、繊維表面は、塗布による親水化油剤の付着ならびにブリードアウト等により親水化剤が析出しているため、Awは、親水化剤の量と親水化油剤の量の合算値となる。
(2)溶剤抽出濃度(As)の定量
▲1▼(1)の不織布(絶乾質量W2)を、ソックスレー抽出器に入れる。
▲2▼ソックスレー抽出器附属のフラスコに石油エーテルを入れ、2時間抽出する。
▲3▼秤量しておいた蒸発皿に、フラスコ内容物を移し、蒸発皿を水浴上に載せ、溶剤を揮発させた後、105±2℃の恒温乾燥器中に1.5時間放置し、デシケータ中で冷却し、石油エーテルによる抽出物の絶乾質量W3を秤量する。
▲4▼引き続き、ソックスレー抽出器附属のフラスコに不織布とアルコール/ベンゼン混合液(1/2容積比)を入れて、6時間抽出し、▲3▼と同様の操作を行い、アルコール/ベンゼン混合液による抽出物の絶乾質量W4を秤量する。
▲5▼更に不織布を純水で40〜45℃、1時間浸漬処理を2回繰り返して抽出し、抽出液を蒸発皿に移し、蒸発皿を水浴上に載せ、水分を蒸発させた後、105±2℃の恒温乾燥器中に1.5時間放置し、デシケータ中で冷却し、水による抽出物の絶乾質量W5を秤量する。
▲6▼ここで前記のW3、W4、W5には、樹脂中に含まれるオリゴマーも抽出されているため、除去する必要がある。各蒸発皿中の抽出残留物に冷四塩化炭素を入れ、溶解させ、可溶分と不溶分(オリゴマー)とに分ける。
▲7▼可溶分の四塩化炭素を蒸発皿に移し、溶媒を揮発させ、105±2℃の恒温乾燥器中に1.5時間放置し、デシケータ中で冷却し、四塩化炭素による抽出物の絶乾質量W6を秤量する。
▲8▼溶剤抽出濃度(As)を以下の式より算出する。
As(重量%)=(W3+W4+W5)/(W2−(W3+W4+W5)+W6
【0038】
(透水性)
不織布の任意1箇所から15×15cmのサイズの試験片を切り出し、この試験片を濾紙の上に置き、人工尿を20箇所に一滴ずつ20滴滴下した時に2秒以内に吸い込まれた個数を測定して、下記式にて透水率を算出した(1滴は約0.1ml)。
透水率(%)=(吸い込まれた個数/20)×100
【0039】
(付着の均一性)
不織布の任意1箇所から長さ15cm×幅100cmのサイズの試験片を切り出し、この試験片を濾紙の上に置き、人工尿を幅方向5cm間隔に1滴ずつ19箇所に滴下した時に2秒以内に吸い込まれた個数を測定した。
【0040】
(吸収速度)
EDANA−ERT §150.3リキッドストライクスルータイム法に準じて、試験溶液として人工尿(72mN/m、20℃)を用いて、測定液量5mlとして不織布の吸収速度(sec)を測定した。
【0041】
(目付)
不織布の任意5箇所から20cm×20cmのサイズの試験片を切り出した後、各試験片の重量を電子天秤にて測定して、その平均値を1m2当りの重量に換算して目付とした(g/m2)。
【0042】
(引張試験)
不織布の任意3箇所から不織布の縦方向(MD)と横方向(CD)のそれぞれに対して、幅2.5cm×長さ20cmのサイズの試験片を切り出し、この試験片を用いて、テンシロン型引張試験機で、把握長10cm、引張速度10cm/minの条件でMD、CDの各方向3回試験を行い、得られた強伸度曲線から最大の引張強度(N/2.5cm)、最大の引張強度時の引張伸度(%)を測定し、それぞれの平均値を求めた。
【0043】
(逆戻り量)
不織布の任意3箇所から10cm×10cmのサイズの試験片を切り出し、この試験片を、表面材を取り外した市販の紙おむつの上に置き、人工尿50mlを不織布にかけて、予め秤量しておいた15cm×15cmサイズの濾紙10枚をすばやく不織布の上に重ね、これに2kgの荷重を掛け、2分間放置した後、濾紙の重量増加を測定し、これ逆戻り量(g)とした。
【0044】
(皮膚刺激性)
不織布の任意1箇所から直径2cmの円形に試験片を切り出し、これを成人の上腕部内側にパッチテスト用絆創膏で貼付し、モニター10人による24時間後の肌荒れ状態を観察した。評価は、以下の3段階で行なった。
○:モニター9人以上に肌荒れがない。
△:モニター5〜8人に肌荒れがない。
×:モニター6〜10人に肌荒れが見られた。
【0045】
(紡糸性評価)
紡糸中、1時間に糸切れする回数を測定し、次の三段階で評価した。
○:0回
△:1〜3回
×:4回以上
【0046】
親水化剤としては、三洋化成株式会社製のアニオン系界面活性剤である商品名「ケミスット3033」を30重量%混練したペレット(以下マスターバッチという場合もある)を作製し、これをバージンペレットと溶融混合して所定の濃度に調整し、以下の実施例、比較例で用いた。また、親水化油剤としては三洋化成株式会社製のカチオン系界面活性剤である商品名「サンスタットKT−305C」をイオン交換水により希釈して溶液濃度が1.0重量%となるように調整し、以下の実施例、比較例で用いた。
【0047】
実施例1
スパンボンド法により長繊維不織布を製造した。この基本装置系として、孔径0.4mmの鞘芯型複合紡糸口金を含む紡糸装置、高速気流牽引装置、ネットコンベアー型ウェブ捕集装置、開繊装置を使用した。また、点熱圧着工程の装置として、加熱されたエンボスロールとフラットロールからなる、エンボスロール型熱圧着機を使用した。
鞘芯型複合繊維の鞘成分の熱可塑性樹脂として融点が122℃、メルトフローレートが20g/10min(190℃、21.18N)の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用い、これに親水化剤を含有したマスターバッチを繊維重量に対して0.5重量%添加して用いた。また、芯成分の熱可塑性樹脂として融点が161℃、MFRが42g/min(230℃、21.18N)のポリプロピレン(PP)を用いて、鞘芯比50/50(重量比)の割合で紡糸した。紡出された溶融繊維を冷却しつつ、高速気流牽引装置で牽引し、繊度2.2dtexの熱融着性複合繊維である鞘芯型複合長繊維を得た。次いでこれをネットコンベアー型ウェブ捕集装置上に電気的に開繊させながら吹き付けて、鞘芯型複合長繊維ウェブを成形した。
この鞘芯型複合長繊維ウェブをエンボス面積率が16%、エンボス形状が菱形のエンボスロールと、表面が鏡面のフラットロールとからなるエンボスロール型熱圧着機を用いて、線圧が60N/mm、エンボスロール及びフラットロール温度が130℃の条件下で点熱圧着処理を行い、前記点熱圧着部の熱融着性複合繊維同士が熱融着した目付23g/m2のスパンボンド不織布を得た。次に、スプレー法により、このスパンボンド不織布に親水化油剤を前記不織布重量に対して0.5重量%となるように付着して、親水性長繊維不織布を作製した。このときのウェブ移動速度(ライン速度)は300m/minとした。この親水性長繊維不織布の物性値と評価結果を表1に示す。
【0048】
参考例2
親水化剤の添加量を繊維重量に対して、0.05重量%とした以外は、実施例1に準拠して親水性長繊維不織布を製造した。この親水性長繊維不織布の物性値と評価結果を表1に示す。
【0049】
実施例3
親水化剤の添加量を繊維重量に対して、5.0重量%とした以外は、実施例1に準拠して親水性長繊維不織布を製造した。この親水性長繊維不織布の物性値と評価結果を表1に示す。
【0050】
実施例4
鞘成分の熱可塑性樹脂として融点が131℃、メルトフローレートが35g/10min(190℃、21.18N)の高密度ポリエチレン(HDPE)を用い、親水化油剤を0.2重量%付着した以外は、実施例1に準拠して親水性長繊維不織布を製造した。この親水性長繊維不織布の物性値と評価結果を表1に示す。
【0051】
参考例5
鞘成分の熱可塑性樹脂として融点が131℃、メルトフローレートが35g/10min(190℃、21.18N)の高密度ポリエチレン(HDPE)を用い、親水化油剤を2.0重量%付着した以外は、実施例1に準拠して親水性長繊維不織布を製造した。この親水性長繊維不織布の物性値と評価結果を表1に示す。
【0052】
参考例6
スパンボンド法とメルトブロー法により長繊維不織布を製造した。この基本装置系として、孔径0.4mmのスパンボンド用単一成分紡糸口金を含む紡糸装置と高速気流牽引装置、及び、開繊装置の組合せが2基、この間に孔径0.3mmの孔が一列に並んだメルトブロー用単一成分紡糸口金を含む紡糸装置が1基、合計3基の紡糸設備がネットコンベアー型ウェブ捕集装置上に流れ方向に並んだ装置を使用した。また、点熱圧着工程の装置として、加熱されたエンボスロールとフラットロールとからなる、エンボスロール型熱圧着機を使用した。スパンボンド用には、熱可塑性樹脂として融点が161℃、メルトフローレートが42g/10min(230℃、21.18N)のポリプロピレン(PP)を用い、メルトブロー用には、熱可塑性樹脂として融点が160℃、メルトフローレートが102g/10min(230℃、21.18N)のポリプロピレン(PP)を用い、それぞれに親水化剤を含有したマスターバッチを用いて親水化剤の繊維重量に対する添加量(純分)を0.5重量%として紡糸した。スパンボンド法では、紡出された溶融繊維を冷却しつつ、高速気流牽引装置で牽引し、電気的に開繊して、繊度2.2dtexのポリプロピレン長繊維を得た。メルトブロー法では口金から吐出した樹脂を高速の熱風で吹き飛ばすことで平均繊維径3μmのポリプロピレン長繊維を得た。順次、これら長繊維をネットコンベアー型ウェブ捕集装置上に捕集して、スパンボンドウェブ/メルトブローウェブ/スパンボンドウェブを3層積層したポリプロピレン長繊維ウェブを成形した。
このポリプロピレン長繊維ウェブをエンボス面積率が16%、エンボス形状が菱形のエンボスロールと、フラットロールとからなるエンボスロール型熱圧着機を用いて、線圧が60N/mm、エンボスロール及びフラットロール温度が140℃の条件下で点熱圧着処理を行い、前記点熱圧着部のポリプロピレン繊維同士が熱融着した目付23g/mの積層長繊維不織布を得た。このうち、スパンボンド不織布は目付9g/mが2層、メルトブロー不織布は目付5g/mである。次に、スプレー法によりこの積層長繊維不織布に親水化油剤を前記不織布重量に対して、0.5重量%となるように付着して親水性積層長繊維不織布を作製した。このときのウェブ移動速度(ライン速度)は300m/minとした。この親水性積層長繊維不織布の物性値と評価結果を表1に示す。
【0053】
参考例7
実施例1と同じスパンボンド法不織布製造装置を用いてスパンボンド不織布を製造した。鞘成分の熱可塑性樹脂として融点が131℃、メルトフローレートが35g/10min(190℃、21.18N)の高密度ポリエチレン(HDPE)と親水化剤を含有したマスターバッチを用いて親水化剤の繊維重量に対する添加量(純分)を0.33重量%とし、芯成分に融点が254℃、固有粘度(IV値、フェノール:テトラクロルエタン=1:1の混溶媒中、20℃で測定)が0.72のポリエチレンテレフタレート(PET)を用いて、鞘芯比50/50(重量比)の割合で紡糸した。紡出された溶融繊維を冷却しつつ、高速気流牽引装置で牽引し、繊度2.2dtexの熱融着性複合繊維である鞘芯型複合長繊維を得た。次いでこれをネットコンベアー型ウェブ捕集装置上に電気的に開繊させながら吹き付けて、鞘芯型複合長繊維ウェブを成形した。
この鞘芯型複合長繊維ウェブをエンボス面積率が16%、エンボス形状が菱形のエンボスロールと、表面が鏡面のフラットロールとからなるエンボスロール型熱圧着機を用いて、線圧が60N/mm、エンボスロール及びフラットロール温度が130℃の条件下で点熱圧着処理を行い、前記点熱圧着部の熱融着性複合繊維同士が熱融着した目付23g/mのスパンボンド不織布を得た。スプレー法によりこのスパンボンド不織布に親水化油剤を前記不織布重量に対して、0.5重量%となるように付着して親水性長繊維不織布を作製した。このときのウェブ移動速度(ライン速度)は300m/minとした。この親水性長繊維不織布の物性値と評価結果を表1に示す。
【0054】
比較例1
熱可塑性繊維中に親水化剤を添加しない以外は、実施例1に準拠してスパンボンド不織布を製造した。この不織布の物性値と評価結果を表2に示す。表2より、親水化油剤の付着のみの場合は、均一性に欠けることが分かる。
【0055】
比較例2
長繊維不織布に親水化油剤を付着させない以外は、実施例1に準拠してスパンボンド不織布を製造した。この不織布の物性値と評価結果を表2に示す。表2より、親水化剤の添加のみの場合は、透水性が悪く、スパンボンド不織布自体に親水性がないことが分かる。
【0056】
比較例3
親水化剤の添加量を繊維重量に対して10重量%とし、親水化油剤を付着させない以外は、実施例1に準拠してスパンボンド不織布を製造した。このスパンボンド不織布の物性値と評価結果を表2に示す。表2より、親水化油剤の付着がなく、親水化剤の添加量が本発明の範囲より高い場合であれば、良好な親水性能が得られるが、紡糸安定性に欠け、不織布強度が低下していることが分かる。
【0057】
比較例4
親水化剤の添加量を繊維重量に対して5.0重量%とし、親水化油剤をスパンボンド不織布重量に対して0.05重量%付着した以外は、実施例1に準拠してスパンボンド不織布を製造した。この不織布の物性値と評価結果を表2に示す。表2より、親水化剤の添加量が本発明の範囲内であっても、親水化油剤の付着量が本発明の範囲より大幅に低い場合、所々に撥水部分が残り、親水性に乏しくなることが分かる。
【0058】
比較例5
親水化剤の添加量を繊維重量に対して1.0重量%とし、親水化油剤をスパンボンド不織布に対して3.0重量%付着した以外は、実施例1に準拠してスパンボンド不織布を製造した。この不織布の物性値と評価結果を表2に示す。表2より、親水化剤の添加量が本発明の範囲内であっても、親水化油剤の付着量が本発明の範囲より高い場合には、良好な親水性は示すが、人工尿の逆戻り量が多く、皮膚刺激性が高くなることが分かる。
【0059】
実施例8
実施例1の親水性長繊維不織布と、融点118℃、厚さ35μmの直鎖状低密度ポリエチレン製フィルムとを積層させ、エンボス面積率が8%、エンボス形状が菱形のエンボスロールと、フラットロールとからなるエンボスロール型熱圧着機を用いて、線圧が60N/mm、エンボスロール及びフラットロール温度が115℃の条件下で点熱圧着処理を行い、複合化不織布を得た。使い捨てのベビー用エプロンとしてこの複合化不織布を用いた。なお、フィルム側を衣服側に用いた。この結果、親水性長繊維不織布側では飲みこぼしたジュースやお茶、食べ物の汁等をしっかり吸収し、かつフィルムで衣服への汚れ布着を防ぎ、市販の使い捨てのベビー用エプロンと比較して、同等か、それ以上の性能となり、好適に用いられることが分かった。
【0060】
実施例9〜11
市販の紙オムツから表面材を取り除き、実施例9では実施例1で得た親水性長繊維不織布を、実施例10では実施例2で得た親水性長繊維不織布を、実施例11では実施例3で得た親水性長繊維不織布を取り付けた。これらの紙おむつと、元の紙おむつとを比較したところ、同等か、それ以上の親水性が観察された。
よって、本発明の親水性長繊維不織布及び複合化不織布は、紙おむつ等の吸収性物品に好適に使用することができることが分かった。
【0061】
本発明の親水性長繊維不織布及び複合化不織布は、実施例、比較例により示されるような優れた特徴を有するので、紙おむつや生理用品等の衛生材料に好適である。また、医療用材料、建築用、家庭用、被服材料用、その他多くの用途に使用することができる。
他の資材例えば布帛、フィルム、金属ネット、建設資材、土木資材、農業資材等、多くの資材と組み合わせて使用することも可能である。
【0062】
【表1】
Figure 0004029614
【0063】
【表2】
Figure 0004029614
【0064】
【発明の効果】
本発明の親水性長繊維不織布は、撥水性のスパンボンド不織布やメルトブロー不織布等の長繊維不織布の表面及び内部に親水化油剤が均一に付着し、かつ、前記長繊維不織布を構成する熱可塑性繊維中に親水化剤を含有しているので、良好な透水性と親水性を有している。このことから、本発明の親水性長繊維不織布を吸収性物品等の表面材として用いた場合には、尿や体液等の吸収体への吸収速度が速く、一旦、吸収体に吸収された尿や体液等の逆戻り量が少ないので、紙おむつ、生理用品等の衛生材料の表面材として好適に使用できる。

Claims (7)

  1. 熱可塑性繊維からなる長繊維不織布であって、前記長繊維不織布を構成する熱可塑性繊維には親水化剤が繊維重量に対し、0.05〜5.0重量%含有され、かつ親水化油剤が長繊維不織布重量に対し、0.1〜2.0重量%付着された長繊維不織布であり、下記式より算出される、水抽出濃度(Aw)が、付着した親水化油剤濃度より大きいことを特徴とする親水性長繊維不織布。
    Aw(重量%)=(W −W )/W
    ここで、水抽出濃度(Aw)は、JIS L 1096−1990に準拠し、不織布を秤量し(W )、温度40±2℃の純水で、30分処理して抽出した後、この不織布を漏斗上に取り出し、50±2℃の温水で充分洗浄した後、105±2℃の恒温乾燥機中で1.5時間乾燥し、その後、不織布の絶乾質量W を秤量して、上記式により算出される。
  2. 熱可塑性繊維が、融点差の異なる少なくとも2成分の熱可塑性樹脂からなる複合繊維である請求項1記載の親水性長繊維不織布。
  3. 熱可塑性繊維が、ポリオレフィン系繊維またはポリエステル系繊維である請求項1または請求項2記載の親水性長繊維不織布。
  4. 親水性長繊維不織布が、スパンボンド法により得られた長繊維不織布である請求項1〜3のいずれか1項記載の親水性長繊維不織布。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項記載の親水性長繊維不織布と、前記親水性長繊維不織布以外の不織布、フィルム、パルプシート、編物、及び織物から選ばれた少なくとも1種の物品を積層した複合化不織布。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項記載の親水性長繊維不織布を用いた吸収性物品。
  7. 請求項5記載の複合化不織布を用いた吸収性物品。
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