JP5095088B2 - リチウム一次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、非水電解液を用いたリチウム一次電池に関し、詳しくは、リチウム一次電池の正極に活物質として用いられる酸化マンガンの物性の最適化に関する。この最適化は、リチウム一次電池において、特に高温での保存特性と、電気特性と、信頼性とを改善するものであり、リチウム一次電池の汎用性を向上させるものである。
使用環境温度が人の生活域をベースとした−20℃〜60℃程度である機器には、従来からリチウム一次電池が広く用いられている。しかし、近年、電池を用いた機器の応用範囲は拡大しており、それに伴い機器の使用温度範囲も拡大する傾向にある。例えば車載用機器においては、使用環境温度を最大125℃と想定した場合にも一定期間は機能を保つことができ、同時に−40℃程度の低温でも動作する一次電池が要望されつつある。
ところがリチウム一次電池の正極には、酸化マンガンが含まれるため、その触媒作用により、高温領域では非水電解液が分解し、電池内圧が上昇する場合がある。電池内圧が上昇すると、コイン形電池では、電池内の部品同士の接触が損なわれることにより、内部抵抗が増大する。また、リードによる集電構造を有する円筒形電池でも、電池内圧の上昇が原因で、漏液などが発生し、電池特性が低下する可能性がある。特に100℃以上の温度環境に電池が晒されると、電池内で発生するガス量が多くなり、電池が大きく膨れることがある。それに伴って、電池内の部品同士の接触も大きく損なわれ、内部抵抗の増大や、漏液、破損の可能性が大きくなる。
また、高温環境下では、正極からのマンガン溶解が促進され、溶解したマンガンが負極上で析出して高抵抗被膜を形成し、電池の内部抵抗が増大する可能性がある。特に、リチウム一次電池を高温環境下で長期にわたって使用すると、酸化マンガンからのマンガン溶解が促進され、負極表面に析出する高抵抗被膜も強固になる。高抵抗被膜は、リチウム一次電池の電気特性を大きく低下させ、特に、低温における大電流放電特性やパルス放電特性の低下は顕著となる。
一方、リチウム二次電池の分野では、正極活物質として用いられるスピネル型のリチウムマンガン酸化物の比表面積を小さくすることで、リチウムマンガン酸化物と電解液との反応場を限定し、電解液の分解やマンガン溶解を抑制する提案がなされている(特許文献1、2および3)。同様に、一次電池の分野でも、二酸化マンガンの比表面積を低減することにより、ある程度は電解液の分解やマンガン溶解を抑制することが可能であると考えられる。
しかし、従来の一次電池に用いられている酸化マンガンは、β型の電解二酸化マンガンなどを350℃〜430℃で熱処理して得られるγ型酸化マンガン、もしくはγ型酸化マンガンとβ型酸化マンガンとの混晶(以下、γ−β型酸化マンガン)からなる(特許文献4)。γ−β型酸化マンガンは、電解条件や焼成条件を変更しても、比表面積が5m/g程度までしか低減できない。従って、比表面積の低減による電解液の分解やマンガン溶解の抑制には限界がある。また、酸化マンガンの比表面積を低減した場合、反応場が限定されるため、低温特性(特に低温放電特性)が低下するというデメリットがあり、このデメリットはガス発生等の抑制とはトレードオフの関係にある。
なお、リチウム二次電池の分野では、スピネル型のリチウムマンガン酸化物のマンガン元素の一部をマグネシウム、アルミニウム、鉄、カルシウム、クロムなどの他元素で置換することにより、リチウムマンガン酸化物の構造を強化し、電解液へのマンガン溶解を抑制する提案がなされている(特許文献5)。
また、リチウム二次電池の分野では、正極活物質としてスピネル型リチウムマンガン酸化物とλ型酸化マンガンとの中間的な結晶構造を有するマンガン酸化物を用いることにより、正極活物質の結晶構造の崩壊を抑制することが提案されている。このようなマンガン酸化物は、スピネル型リチウムマンガン酸化物に含まれているリチウムの一部を酸処理により取り除くことで調製されている(特許文献6、7)。
さらに、100℃以上といった高温領域ではなく、従来の温度領域を対象としたものではあるが、負極にリチウム合金を用いることで、負極表面に抵抗成分となる被膜が形成されるのを抑制し、一次電池の内部抵抗を低減し、信頼性を向上させることが提案されている(特許文献8)。
特開平10−321227号公報 特開2002−117896号公報 特開2003−346805号公報 特開昭57−4064号公報 特開2000−327332号公報 特開平11−329424号公報 米国特許第4312930号明細書 特公平7−63016号公報
上述のように、一次電池においては、正極で電解液の分解やマンガン溶解を抑制するために酸化マンガンの比表面積を低減しようとしても、比表面積は5m/g程度までしか低減できず、その効果には限界がある。また、酸化マンガンの比表面積を低減した場合、反応場が限定されるため、低温特性が低下するというデメリットもある。また、内部抵抗を低減するために負極にリチウム合金を用いた場合、負極表面での被膜形成は抑制できるが、被膜形成の原因となる電解液の分解によるガス発生や、正極活物質からのマンガン元素などの溶解を抑制することはできない。
そこで、本発明は、正極に活物質として用いられる酸化マンガンの物性を最適化することにより、低温特性を損なうことなく、リチウム一次電池におけるガス発生やマンガン溶解を抑制し、これによって特に高温での保存特性と電気特性を改善することを目的とする。また、負極の活物質を好適化することにより、リチウム一次電池の信頼性を更に向上させることを目的とする。
本発明は、混晶(mixed crystal)状態の酸化マンガンを含む正極、リチウムおよびリチウム合金よりなる群から選択される少なくとも1種を含む負極、およびリチウムイオン伝導性の非水電解液を具備し、混晶状態の酸化マンガンが、少なくともλ型酸化マンガン(λ型の結晶構造を有する酸化マンガン)とβ型酸化マンガン(β型の結晶構造を有する酸化マンガン)とを含み、β型酸化マンガンの結晶化度が、300〜500、好ましくは350〜450であるリチウム一次電池に関する。
混晶状態の酸化マンガンの比表面積は、0.5〜4m/gが好適であり、1.5〜3.5m/gがさらに好適である。
混晶状態の酸化マンガンは、初期状態において、リチウムを含んでもよいが、酸化マンガンにおけるリチウム含有量は、1.5wt%以下が好ましく、1.0wt%以下が更に好ましい。なお、初期状態とは、活物質として製造直後の混晶状態の酸化マンガン、製造直後の電池内に収容された未放電の酸化マンガン、または製造後に特性安定領域まで若干量放電処理した電池内に収容された酸化マンガンの状態をいう。
混晶状態の酸化マンガンは、マンガン元素が部分的に他元素で置換されていることが望ましい。また、他元素としては、マグネシウムを用いることが特に好ましい。一次電池としての放電容量の確保と、電解液へのマンガン溶解の抑制による長期信頼性の向上のためには、混晶状態の酸化マンガンにおいて、他元素の含有量は1wt%以下であることが望ましい。
本発明に係る混晶状態の酸化マンガンは、λ型酸化マンガンを、例えば100℃〜300℃で、例えば1〜6時間焼成すれば得ることができる。
λ型酸化マンガンは、例えばスピネル型リチウムマンガン酸化物(マンガン酸リチウム)を硫酸溶液と接触させてリチウムを除去し、その後、洗浄および乾燥することで得られる。ここで、スピネル型リチウムマンガン酸化物は、マンガン元素の一部がMgなどの他元素で置換されていることが望ましい。次いで、乾燥後のλ型酸化マンガンを、例えば100℃〜300℃で焼成すると、λ型酸化マンガンの一部がβ型酸化マンガンに変換されて、混晶状態の酸化マンガンが得られる。なお、λ型酸化マンガンは、スピネル型酸化マンガンともいう。
負極に活物質として含まれるリチウム合金は、少なくともアルミニウムを含むことが好ましい。また、リチウム合金におけるアルミニウムの含有量は、0.2wt%〜15wt%であることが好ましい。
リチウム合金は、電池外で合成してもよく、電池内で合成してもよい。電池外で合金を合成する場合、リチウムとリチウム以外の元素とを予め合金化し、得られた合金を負極に含ませて電池を作製する。電池内で合金を合成する場合、例えば、リチウム(またはリチウム以外の金属)を負極に含ませるとともに、負極の正極との対向表面にリチウム以外の元素からなる金属箔(またはリチウム箔)を圧着して電池を作製する。そして、電池組立中もしくは組立後に電池内で合金化を進行させる。
本発明のリチウム一次電池は、上述の混晶状態の酸化マンガンと、リチウムおよび/またはリチウム合金を含む負極と、リチウムイオン伝導性の非水電解液とを用いて作製される。
本発明によれば、リチウム一次電池において、低温特性を損なうことなくガス発生や正極からのマンガン溶解を抑制し、さらに、負極表面での抵抗の増大を抑制できるため、高温での保存特性と信頼性を顕著に改善することができる。
また、本発明によれば、ガス発生や正極からのマンガン溶解そのものが少なくなることから、高温だけではなく、通常の温度域における電池の信頼性も向上するため、長期信頼性を必要とする機器に好適なリチウム一次電池が得られる。
すなわち従来のリチウム一次電池は、通常60℃程度が使用環境温度の上限であり、また比較的短期間に使用を終了する用途に適していたが、本発明のリチウム一次電池は、汎用性が高く、−40℃〜125℃で使用され、もしくは従来よりも長期間にわたって機器を駆動する用途に適している。
さらに、本発明によれば、負極表面における高抵抗被膜の析出を抑制できることに加え、β型酸化マンガンの結晶化度が300〜500になるように制御されているため、リチウム一次電池の電気特性、特に大電流放電特性やパルス放電特性を顕著に改善することができる。
本発明のリチウム一次電池は、混晶状態の酸化マンガンを含む正極、リチウムおよびリチウム合金よりなる群から選択される少なくとも1種を含む負極、およびリチウムイオン伝導性の非水電解液を具備する。好ましい混晶状態の酸化マンガンは、主としてλ型酸化マンガンからなり、少量のβ型酸化マンガンを含んでいる。
大電流放電特性やパルス放電特性を維持する観点から、β型酸化マンガンの結晶化度は300〜500、好ましくは350〜450であることが要求される。保存特性を向上させ、マンガン溶解を抑制する観点からは、β型結晶をほとんど含まないλ型酸化マンガンを用いることも可能である。しかし、β型結晶を適度に含む混晶状態のλ型酸化マンガンを用いることにより、λ型結晶とβ型結晶との境界(粒界)が新たなリチウムの移動経路として機能し、反応性を向上させるものと考えられる。例えば、λ型酸化マンガンに熱処理を施すことにより、λ型酸化マンガンの一部をβ型酸化マンガンに変換するとともに、β型酸化マンガンの結晶化度を300〜500に制御することができる。
結晶化度は、結晶状態を評価する目安である。熱処理によりλ型酸化マンガン内に部分的に生成するβ型酸化マンガンの結晶状態は、結晶化度により知ることができる。β型酸化マンガンの結晶化度が500を超えると、リチウムが酸化マンガンの格子中に侵入しにくくなったり、放電に利用できる酸化マンガン量が少なくなって放電特性が低下したりする。また、β型酸化マンガンの結晶化度が、300未満では、結晶格子の大きさや状態が不均一なため、酸化マンガン表面および内部に、リチウムイオンが移動しやすい領域と移動しにくい領域とが共存してしまい、全体的に放電特性が低下する。
β型酸化マンガンの結晶化度が300〜500である場合、酸化マンガンの格子中へのリチウムイオンの侵入性(表面反応性)、酸化マンガン内部におけるリチウムイオンの拡散性、リチウムイオンの酸化マンガン格子中での安定性などのバランスが最適化され、従来よりも良好な電気特性、特に良好な大電流放電特性やパルス放電特性が達成される。
本発明において、結晶化度は、混晶状態の酸化マンガンのX線回折像に含まれるβ型酸化マンガンの(110)面に帰属されるピークにより決定される。結晶化度は、前記ピークの高さ(強度)を、その半値幅で割った値として定義される。
従来の電解二酸化マンガンは、その比表面積を5m/g程度まで低減するのが限界であるが、本発明に係る混晶状態の酸化マンガンは、その比表面積を4m/g以下にまで低減することができる。比表面積を小さくすることで、酸化マンガンと電解液の反応場が限定され、電解液の分解やマンガンの溶解が抑制される。
また、上記のような比表面積の低減は、酸化マンガンの結晶構造の変化に伴うものであるため、従来構造のまま比表面積のみを低減した場合とは異なり、反応場が限定されるというデメリットが小さい。λ型結晶とβ型結晶とを含む適度な混晶状態の酸化マンガンには、λ型結晶とβ型結晶との境界からなる新たなリチウムイオンの移動経路が存在するためである。
混晶状態の酸化マンガンの比表面積は、0.5〜4m/gが好適であり、1.5〜3.5m/gが更に好適である。比表面積が0.5m/g未満では、電解液と酸化マンガンとが接触する放電反応場が不十分になり、大電流での連続放電や低温でのパルス放電で特性が低下する場合がある。その反面、比表面積が4m/gを超えると、酸化マンガンによる電解液の分解反応を抑制する効果が小さくなり、ガス発生を十分に抑制できない場合がある。特に高温環境での特性劣化が大きくなる傾向がある。
さらに、γ−β型酸化マンガンやγ型酸化マンガンなどと比較すると、λ型結晶をベースとする酸化マンガンは、構造が比較的安定であり、このような構造安定化も電解液へのマンガン溶解量の減少に寄与する。そのため、電解液に溶解したマンガンが負極上に析出して高抵抗被膜を形成する可能性が小さくなり、一次電池の信頼性が向上する。
混晶状態の酸化マンガンは、初期状態において、リチウムを含んでもよいが、リチウム含有量は1.5wt%以下が好適であり、1wt%以下が更に好適である。初期状態のリチウム含有量が1.5wt%を超える場合、放電中の電池電圧(以下、放電維持電圧)が、通常の安定した放電カーブを描かず、2段のカーブを描くことになる。その結果、3V級の電圧を有する電池において、2V程度の放電終止電圧を設定する場合に、放電容量が大きく損なわれる。
酸化マンガンが、あらかじめ格子中に一定量以上のリチウムを安定に含んでいる場合、予め含まれているリチウムが、放電により後から侵入してくるリチウムの反応サイトに影響を及ぼす。そのため、通常の安定した放電カーブが描かれないものと考えられる。また、予備放電と呼ばれる若干の放電処理により、電気化学的にリチウムを1.5wt%より多く含ませた場合には、単純に、その分の放電容量が減少する。よって、二次電池用の活物質として用いられているスピネル型リチウムマンガン酸化物は、λ型酸化マンガンとほぼ同じ構造を有するが、一次電池の活物質としては容量が大幅に不足し、有用でない。
混晶状態の酸化マンガンは、マンガン元素が部分的に他元素で置換されていることが望ましい。他元素としては、Mg、Al、Fe、Ca、Cr、Ti、V、Co、Ni、Cu、Znなどを用いることができる。理由は明らかではないが、マグネシウムを用いることが、マンガン溶解を抑制し、放電特性を向上させる上で最も効果的である。ただし、放電を1回だけ行う一次電池の場合には、充放電の繰り返しを前提とする二次電池の場合とは事情が異なっている。従って、他元素の導入量の最適値も、リチウム二次電池の分野におけるリチウムマンガン酸化物のマンガン元素の置換量と同様に考えることはできない。
放電によりリチウムを受け入れるだけの一次電池の正極活物質においては、他元素の含有量が1wt%以下であることが望ましい。他元素の含有量が1wt%を超えると、酸化マンガンが予めリチウムを含む場合と同様の理由で、酸化マンガンへのリチウムの侵入による安定した放電反応が阻害され、電池容量が大きく損なわれる。よって、一次電池としての放電容量の確保と、電解液へのマンガン溶解の抑制による長期信頼性の向上のためには、他元素の含有量は1wt%以下であることが望ましい。
本発明に係るλ型酸化マンガンとβ型酸化マンガンとを含む混晶状態の酸化マンガンは、例えば、λ型酸化マンガンを100℃〜300℃で焼成すれば得ることができる。焼成は、例えば1〜6時間程度(好ましくは2〜4時間程度)、酸素欠乏が生じないように大気を供給しながら行うことが望ましい。
λ型酸化マンガンは、どのような方法で入手してもよいが、例えばスピネル型リチウムマンガン酸化物を硫酸溶液と接触させて、スピネル型リチウムマンガン酸化物からリチウムを除くことで、λ型酸化マンガンを得ることができる。洗浄により硫酸を除き、乾燥後に得られたλ型酸化マンガンを100℃〜300℃で焼成すれば、λ型酸化マンガンの一部をβ型酸化マンガンに変換することができる。酸化マンガン中のリチウム含有量は、スピネル型リチウムマンガン酸化物を硫酸溶液と接触させる時間により、任意に制御可能である。
また、マンガン元素が部分的に他元素で置換されたλ型酸化マンガンは、マンガン元素が部分的に他元素で置換されたスピネル型リチウムマンガン酸化物を硫酸溶液と接触させてリチウムを除くことで得ることができる。
マンガン元素が部分的に他元素で置換されたスピネル型リチウムマンガン酸化物は、二酸化マンガンと、Mg、Alなどの他元素の水酸化物と、炭酸リチウムとを混合して700〜900℃で焼成することで得ることができる(特開2000−327332号公報)
リチウム一次電池の負極には、リチウムおよびリチウム合金よりなる群から選択される少なくとも1種が用いられる。リチウムやリチウム合金は単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。好ましいリチウム合金としては、リチウム−アルミニウム合金(Li−Al合金)などが挙げられる。リチウム合金はどの様に作成しても構わないが、放電容量の確保と内部抵抗を安定化させる観点から、リチウム以外の金属元素の含有量は、0.2wt%〜15wt%が望ましい。
リチウムイオン伝導性の非水電解液としては、非水溶媒およびこれに溶解するリチウム
塩からなるものが用いられる。非水溶媒としては、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル
、環状エーテル、鎖状エーテル、ラクトン類などを単独で、もしくは複数種を組み合わせ
て用いることができる。また、リチウム塩としては、LiClO、LiCSO
、LiN(CFSO、LiBF、LiPFなどを単独で、もしくは複数種を
組み合わせて用いることができる。
(i)λ型酸化マンガンおよびβ型酸化マンガンからなる混晶状態の酸化マンガンの調製
まず、所定の割合で二酸化マンガンと水酸化リチウムと炭酸リチウムとを混合し、これを800℃で焼成することで、スピネル型リチウムマンガン酸化物を調製した。
得られたスピネル型リチウムマンガン酸化物を硫酸溶液に浸漬することにより、リチウムマンガン酸化物からリチウムを除去し、その後、洗浄および乾燥する処理を施して、リチウム含有量が1.5wt%のλ型酸化マンガンを調製した。
得られたλ型酸化マンガンを、200℃で2時間、空気中で熱処理し、平均粒径が15μm、比表面積が2.0m/g、β型酸化マンガンの結晶化度が400の混晶状態の酸化マンガンを得た。リチウム含有量およびマンガン含有量は熱処理の前後で変化しなかった。
二酸化マンガンの結晶化度、リチウム含有量、平均粒径および比表面積は、それぞれ以下の要領で測定もしくは決定した。
[結晶化度]
結晶化度は、X線回折(XRD)装置(フィリップス社製のX’Pert)を用いて混晶状態の酸化マンガンの回折像を測定し、β型酸化マンガンの(110)面に帰属されるピークの高さ(強度)を、その半値幅で割った値とした。
[リチウム含有量]
リチウム含有量は、試料を塩酸に溶解し、得られた溶液に対して、高周波プラズマ発光分析(ICP)を実施して定量した。分析装置には、(株)島津製作所製の「ICPS−1000III」を用いた。
[平均粒径]
(株)堀場製作所製のレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置「LA−910」を用いて、粒子のメディアン径(D50)を測定した。
[比表面積]
比表面積は、(株)島津製作所製(マイクロメリテックス社製)の「ASAP2010」を用い、吸着ガスに窒素を用いて、BET比表面積分析法(多点法)により測定した。
(ii)正極の作製
得られた混晶状態の酸化マンガン100重量部に対し、導電材としてケッチェンブラックを5重量部と、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を5重量部添加し、十分に混合して正極合剤を得た。この正極合剤を、直径20mm、厚み3.0mmのディスク状に成形した後、200℃で乾燥し、正極とした。
(iii)負極の作製
厚み1.0mmの金属リチウムからなるフープを直径20mmのディスク状に打抜き、これを負極として用いた。
(iv)リチウム一次電池の作製
図1に示すような直径24.5mm、厚み5.0mmのコイン型のリチウム一次電池(CR2450)を作製し、電池A1とした。電池A1は以下の要領で組み立てた。まず、正極12を電池ケース11の中央に載置し、その上にポリプロピレン製の不織布からなるセパレータ13を被せた。次に、非水電解液(図示せず)を電池ケース11内に注液した。非水電解液には、プロピレンカーボネートと1,2−ジメトキシエタンとの体積比1:1の混合溶媒に、過塩素酸リチウムを1モル/Lの濃度で溶解したものを用いた。その後、内面に負極14が圧接され、周囲にガスケット15が配された封口板16で、電池ケース11の開口を塞いだ。
また、比較例として現行のリチウム一次電池に用いられているβ型の結晶構造を有する酸化マンガン(β型酸化マンガン)を用いたこと以外は、電池A1と同様に電池A2を作製した。ここで用いたβ型酸化マンガンは、リチウム含有量が0wt%であり、マグネシウムの含有量が0%であり、平均粒径が15μm、比表面積が6.1m/gであった。
上記のβ型酸化マンガンを320℃で熱処理して、γ−β型の結晶構造を有する酸化マンガン(γ−β型酸化マンガン)(平均粒径15μm、比表面積6.0m/g)を得た。これを用いたこと以外は、電池A1と同様に電池A3を作製した。
上記のβ型酸化マンガンを420℃で熱処理して、γ型の結晶構造を有する酸化マンガン(γ型酸化マンガン)(平均粒径15μm、比表面積5.8m/g)を得た。これを用いたこと以外は、電池A1と同様に電池A4を作製した。
スピネル型のリチウムマンガン酸化物(リチウム含有量4wt%、平均粒径15μm、比表面積2.1m/g)を用いたこと以外は、電池A1と同様に電池A5を作製した。
(評価)
発明の効果を検証するために、以下の評価を行った。結果を表1に記す。
[容量確認試験]
各電池について、1kΩ定抵抗放電を実施し、電池電圧が2.5Vに達するまでの放電容量を確認した。
[高温保存試験]
各電池を、125℃環境下に100時間保存し、電池内で発生したガス量の目安として保存前後の電池厚みを測定し、その差を「保存後膨れ量」として算出した。
また、保存前後の電池の内部抵抗値(IR)を1kHzの交流法で測定し、その差を「IR変化量」として算出した。
[マンガン溶解量確認試験]
所定の酸化マンガンまたはリチウムマンガン酸化物2gを上述の非水電解液5cmに浸漬し、85℃環境下で10日間保存し、電解液中に溶出したマンガン量を測定した。
[パルス放電試験]
各電池を、−40℃環境に3時間以上放置し、電池温度が−40℃になった後に、8mAで0.5秒間放電した後に2分間休止するパターンを繰り返す間欠放電を50時間実施した。その間における電池の最低電圧(パルス電圧)を測定した。
Figure 0005095088
表1が示すように、本発明の実施例の電池A1は、放電容量が最も大きく、保存後膨れ量やIR変化量が最も小さく、またマンガン溶解量が最も少なく、最低のパルス電圧が最も高かった。すなわち諸特性の間にトレードオフの関係が見られず、全ての特性において最適値が得られた。
それに対して、比較例の電池A2〜A4は、放電容量が小さい上に、保存後膨れ量やIR変化量が大きく、高温保存による劣化の程度が大きかった。加えて、電池A2〜A4は、マンガン溶解量が多いことから、長期間にわたって使用した場合には、溶解したマンガンが負極上で析出し、高抵抗被膜を形成する可能性が高い。このような結果は、実施例の電池A1の酸化マンガンは比表面積2.0m/gと極めて小さいのに対して、比較例の電池A2〜A4の二酸化マンガンは比表面積を5m/gより小さくできないことに関連している。
比較例の電池A5は、高温保存による劣化の程度が小さく、マンガン溶解量も少なかったが、放電容量が他の電池の半分程度しか得られなかった。また、電池A5のパルス電圧は、5種の電池中、最低であった。これは、スピネル型のリチウムマンガン酸化物は予め相当数のリチウムを結晶格子の中に含んでおり、放電反応により新たに格子中に入ることのできるリチウム数が制限されるため、理論容量そのものが少ないことに関連する。
λ型酸化マンガンの熱処理を50℃で2時間実施したこと以外、電池A1に用いた酸化マンガンと同様にして、平均粒径が15μm、比表面積が2.0m/g、β型酸化マンガンの結晶化度が100の混晶状態の酸化マンガンを得た。これを用いたこと以外は、電池A1と同様に電池B1を作製した。
λ型酸化マンガンの熱処理を75℃で2時間実施したこと以外、電池A1に用いた酸化マンガンの調製と同様にして、平均粒径が15μm、比表面積が2.0m/g、β型酸化マンガンの結晶化度が200の混晶状態の酸化マンガンを得た。これを用いたこと以外は、電池A1と同様に電池B2を作製した。
λ型酸化マンガンの熱処理を100℃で2時間実施したこと以外、電池A1に用いた酸化マンガンの調製と同様にして、平均粒径が15μm、比表面積が2.0m/g、β型酸化マンガンの結晶化度が300の混晶状態の酸化マンガンを得た。これを用いたこと以外は、電池A1と同様に電池B3を作製した。
電池A1に用いた酸化マンガンと同様の、平均粒径が15μm、比表面積が2.0m/g、β型酸化マンガンの結晶化度が400の混晶状態の酸化マンガンを用いて、電池A1と同様の電池B4を作製した。
λ型酸化マンガンの熱処理を300℃で2時間実施したこと以外、電池A1に用いた酸化マンガンの調製と同様にして、平均粒径が15μm、比表面積が2.0m/g、β型酸化マンガンの結晶化度が500の混晶状態の酸化マンガンを得た。これを用いたこと以外は、電池A1と同様に電池B5を作製した。
λ型酸化マンガンの熱処理を400℃で2時間実施したこと以外、電池A1に用いた酸化マンガンの調製と同様にして、平均粒径が15μm、比表面積が2.0m/g、β型酸化マンガンの結晶化度が600の混晶状態の酸化マンガンを得た。これを用いたこと以外は、電池A1と同様に電池B6を作製した。
λ型酸化マンガンの熱処理を500℃で2時間実施したこと以外、電池A1に用いた酸化マンガンの調製と同様にして、平均粒径が15μm、比表面積が2.0m/g、β型酸化マンガンの結晶化度が700の混晶状態の酸化マンガンを得た。これを用いたこと以外は、電池A1と同様に電池B7を作製した。
(評価)
発明の効果を検証するために、実施例1で行ったパルス放電試験と同じ方法で試験を実施し、電池の最低電圧(パルス電圧)を測定した。結果を表2に記す。
Figure 0005095088
表2が示すように、実施例の電池B3〜B5のパルス電圧は、他の電池に比べて高い値を示した。これは、酸化マンガンの格子中へのリチウムイオンの侵入性(表面反応性)、酸化マンガン内部におけるリチウムイオンの拡散性、リチウムイオンの酸化マンガン格子中での安定性などのバランスが最適化されたためと考えられる。
スピネル型リチウムマンガン酸化物の原料混合物の焼成温度を950℃としたこと以外、電池A1に用いた酸化マンガンの調製と同様にして、平均粒径が15μm、比表面積が0.2m/g、β型酸化マンガンの結晶化度が400の混晶状態の酸化マンガンを得た。これを用いたこと以外は、電池A1と同様に電池C1を作製した。
スピネル型リチウムマンガン酸化物の原料混合物の焼成温度を900℃としたこと以外、電池A1に用いた酸化マンガンと同様にして、平均粒径が15μm、比表面積が0.5m/g、β型酸化マンガンの結晶化度が400の混晶状態の酸化マンガンを得た。これを用いたこと以外は、電池A1と同様に電池C2を作製した。
電池A1に用いた酸化マンガンと同様の、平均粒径が15μm、比表面積が2.0m/g、β型酸化マンガンの結晶化度が400の混晶状態の酸化マンガンを用いて、電池A1と同様の電池C3を作製した。
スピネル型リチウムマンガン酸化物の原料混合物の焼成温度を700℃としたこと以外、電池A1に用いた酸化マンガンの調製と同様にして、平均粒径が15μm、比表面積が4.0m/g、β型酸化マンガンの結晶化度が400の混晶状態の酸化マンガンを得た。これを用いたこと以外は、電池A1と同様に電池C4を作製した。
スピネル型リチウムマンガン酸化物の原料混合物の焼成温度を550℃したこと以外、電池A1に用いた酸化マンガンの調製と同様にして、平均粒径が15μm、比表面積が7.0m/g、β型酸化マンガンの結晶化度が400の混晶状態の二酸化マンガンを得た。これを用いたこと以外は、電池A1と同様に電池C5を作製した。
(評価)
発明の効果を検証するために、実施例1で行った高温保存試験と同じ方法で試験を実施し、電池の「保存後膨れ量」と「IR変化量」を測定した。また、実施例1で行ったパルス放電試験と同じ方法で試験を実施し、電池の最低電圧(パルス電圧)を測定した。結果を表3に記す。
Figure 0005095088
表3が示すように、実施例の電池C2〜C4は、保存後膨れ量およびIR変化量ともに小さく、パルス電圧も他の電池に比べて高い値を示した。それに対して、電池C1は、保存後膨れ量とIR変化量は良好であったが、パルス電圧が比較的低くなった。これは、酸化マンガンの比表面積が小さいため、放電反応場が小さくなったことが原因と考えられる。また、電池C5は、パルス電圧は良好であったが、保存後膨れ量とIR変化量が比較的大きくなった。これは、酸化マンガンの比表面積が大きいため、電解液と接する部分が増加したためと考えられる。
スピネル型のリチウムマンガン酸化物を硫酸溶液に浸漬する時間を変えたこと以外、電池A1に用いた酸化マンガンの調製と同様にして、リチウム含有量が0.5wt%、平均粒径が15μm、比表面積が2.0m/g、β型酸化マンガンの結晶化度が400の混晶状態の酸化マンガンを得た。これを用いたこと以外は、電池A1と同様に電池D1を作製した。
スピネル型のリチウムマンガン酸化物を硫酸溶液に浸漬する時間を変えたこと以外、電池A1に用いた酸化マンガンの調製と同様にして、リチウム含有量が1.0wt%、平均粒径が15μm、比表面積が2m/g、β型酸化マンガンの結晶化度が400の混晶状態の酸化マンガンを得た。これを用いたこと以外は、電池A1と同様に電池D2を作製した。
電池A1に用いた酸化マンガンと同様の、リチウム含有量が1.5wt%、平均粒径が15μm、比表面積が2.0m/g、β型酸化マンガンの結晶化度が400の混晶状態の酸化マンガンを用いて、電池A1と同様の電池D3を作製した。
スピネル型のリチウムマンガン酸化物を硫酸溶液に浸漬する時間を変えたこと以外、電池A1に用いた酸化マンガンの調製と同様にして、リチウム含有量が2.0wt%、平均粒径が15μm、比表面積が2.0m/g、β型酸化マンガンの結晶化度が400の混晶状態の酸化マンガンを得た。これを用いたこと以外は、電池A1と同様に電池D4を作製した。
スピネル型のリチウムマンガン酸化物を硫酸溶液に浸漬する時間を変えたこと以外、電池A1に用いた酸化マンガンの調製と同様にして、リチウム含有量が4.0wt%、平均粒径が15μm、比表面積が2.0m/g、β型酸化マンガンの結晶化度が400の混晶状態の酸化マンガンを得た。これを用いたこと以外は、電池A1と同様に電池D5を作製した。
(評価)
発明の効果を検証するために、実施例1で行った容量確認試験と同じ方法で試験を実施し、電池電圧が2.5Vに達するまでの放電容量を確認した。結果を表4に記す。
Figure 0005095088
表4が示すように、実施例D1〜D3では十分な容量が得られたが、電池D4〜D5では放電容量が低下した。これは、リチウム含有量が多くなるほど、放電維持電圧が明瞭に2段化し、放電終止電圧である2.0Vまでの放電時間が短くなったことが原因である。リチウムが放電前から酸化マンガンの結晶格子中に多く存在する場合、放電によって後から入ってくるリチウムの侵入経路やリチウムが安定化するサイトが変化するため、この様な容量低下が発現するものと考えられる。
混晶状態の酸化マンガンにおいて、他元素の含有量が表5記載の含有量になるように、マンガン元素を部分的に他元素で置換したこと以外、電池A1に用いた酸化マンガンの調製と同様にして、リチウム含有量が0〜1.0wt%、平均粒径が10〜20μm、比表面積が1.0〜3.0m/g、β型酸化マンガンの結晶化度が300〜500の混晶状態の酸化マンガンを得た。これを用いたこと以外は、電池A1と同様に電池E1〜E19を作製した。
(評価)
発明の効果を検証するために、実施例1で行った容量確認試験と同じ方法で試験を実施し、電池電圧が2.5Vに達するまでの放電容量を確認した。また、実施例1で行ったマンガン溶解量確認試験と同じ方法で試験を実施し、電解液中に溶出したマンガン量を測定した。結果を表5に記す。
Figure 0005095088
表5が示すように、最も良好な結果が得られたのは電池E2〜E4であり、十分な放電容量が得られ、かつマンガン溶解量も少なかった。それに対して、電池E1では、放電容量は電池E2〜E4と遜色なく得られたが、マンガン溶解量はλ型酸化マンガンの実力通りであった。以上の結果は、マグネシウムが酸化マンガンの結晶格子をより安定化させ、マンガンの電解液への溶解を更に抑制したことによるものと考えられる。
ただし、電池E5〜E6では、放電容量が大きく減少した。これは、マグネシウム置換量が多い場合には、放電によって後から入ってくるリチウムの侵入経路やリチウムが安定化するサイトが変化するためと考えられる。
マグネシウム以外の元素でマンガンの置換を行った電池E7〜E19は、マンガンを他元素で置換していない電池E1と比較すると、マンガン溶解量が低減されているが、電池容量が比較的小さくなった。マンガンと置換される他元素の種類によって、侵入してくるリチウムに対する結晶格子の影響には変化があるものと考えられる。
比較例1
λ型酸化マンガンの熱処理を行わなかったこと以外、電池A1と同様に電池F1を作製した。ここで用いたλ型酸化マンガンには、β型酸化マンガンが事実上含まれていないため、β型酸化マンガンの結晶化度を測定することはできなかた。
(評価)
発明の効果を検証するために、実施例1で行ったパルス放電試験と同じ方法で試験を実施し、電池の最低電圧(パルス電圧)を測定した。結果を表6に記す。
Figure 0005095088
表6が示すように、電池F1のパルス電圧は比較的低い値しか得られなかった。これは、λ型酸化マンガンの熱処理を行わなかったことにより、λ型酸化マンガンの結晶構造が変化せず、酸化マンガン格子中へのリチウムイオンの侵入性(表面反応性)、酸化マンガン内部におけるリチウムイオンの拡散性、リチウムイオンの酸化マンガン格子中での安定性などのバランスが改善されなかったためと考えられる。
厚み1.0mmの金属リチウムからなるフープの代わりに、表7記載の含有量でアルミニウムを含むリチウム合金からなるフープ(厚み1.0mm)を用い、直径20mmのディスク状の負極を作製した。この負極を用いたこと以外、電池A1と同様に電池G1〜G8を作製した。電池G1は電池A1と同一である。リチウム合金におけるアルミニウムの含有量は、以下の方法で定量した。
[アルミニウム含有量]
負極のリチウム合金に含まれるアルミニウムの含有量は、合金試料を純水に溶解し、得られた溶液に対して、高周波プラズマ発光分析(ICP)を実施して定量した。分析装置には、(株)島津製作所製の「ICPS−1000III」を用いた。
(評価)
発明の効果を検証するために、実施例1で行った容量確認試験と同じ方法で試験を実施し、電池電圧が2.5Vに達するまでの放電容量を確認した。また、60℃、90%RHの高温多湿環境下において、1MΩの抵抗値で放電を4ヶ月間実施し、放電前後の電池の内部抵抗値(IR)を1kHzの交流法で測定し、その差を「放電によるIR変化量」として算出した。結果を表7に記す。
Figure 0005095088
表7に示すように、リチウム合金に含まれるアルミニウム含有量は、放電容量と、放電によるIR変化量とのバランスに影響することが認められた。まず、電池G1から電池G7までは、安定した放電容量が得られるが、電池G8は放電容量が低下した。これは、活物質であるリチウムに活物質以外の金属元素(Al)を合金化(添加)することで、負極のエネルギー密度が低下したことに基づく。また、本来、添加元素量が多くなるほど、放電容量は低下すると予測されるが、添加元素量が適量である場合には、導電性などが補助されることで、放電反応における活物質利用率が高まり、エネルギー密度の低下分を超える容量が補填されることも認められた。さらに、添加元素量が多すぎると、活物質利用率の向上よりも、エネルギー密度の低下の方が支配的となり、放電容量も低下することがわかった。
また、放電によるIR変化量は、電池G3から電池G8が好適であった。高温多湿環境では、水分侵入などで負極表面が酸化され、不活性な酸化被膜が形成されることが知られている。また、高温や放電によって正極の酸化マンガンが溶解し、負極表面で析出して高抵抗被膜を形成することも知られている。すなわち、高活性なリチウムは、非常に反応しやすく、負極表面に被膜が形成されることが原因で、失活しやすい。しかし、本発明のように、リチウムがアルミニウムなどで合金化されている場合、反応活性の高いリチウムは、前述の理由で失活するが、添加元素近傍のリチウムは失活が抑制され、導電経路として有効に働くと考えられる。このような失活が抑制された部分(導電経路)の存在により、IRが安定化したものと考えられる。IRを安定化させる効果は、添加元素量が比較的少量であっても、一定量以上であれば得られるものと考えられる。
本発明は、正極に活物質として酸化マンガンを用い、負極に活物質としてリチウムおよび/またはリチウム合金を用い、非水電解液を用いたリチウム一次電池の保存特性、電気特性および信頼性を改善するものであり、リチウム一次電池の汎用性を向上させるものである。本発明のリチウム一次電池は、汎用性が高く、−40℃〜125℃で使用され、もしくは従来よりも長期間にわたって機器を駆動する用途に適しており、特に長期信頼性を必要とする機器や、優れた大電流放電特性もしくはパルス放電特性が要求される機器に好適である。本発明によれば、例えば高品質のタイヤ・プレッシャ・モニタリング(マネジメント)・システム(TPMS)を得ることができる。
コイン型のリチウム一次電池の縦断面図である。
符号の説明
11 電池ケース
12 正極
13 セパレータ
14 負極
15 ガスケット
16 封口板

Claims (7)

  1. 混晶状態の酸化マンガンを含む正極、リチウムおよびリチウム合金よりなる群から選択される少なくとも1種を含む負極、およびリチウムイオン伝導性の非水電解液を具備し、
    前記混晶状態の酸化マンガンが、少なくともλ型酸化マンガンとβ型酸化マンガンを含み、
    前記β型酸化マンガンの結晶化度が、300〜500である、リチウム一次電池。
  2. 前記混晶状態の酸化マンガンの比表面積が、0.5〜4m/gである、請求項1記載のリチウム一次電池。
  3. 前記混晶状態の酸化マンガンが、初期状態において、1.5wt%以下のリチウムを含む、請求項1記載のリチウム一次電池。
  4. 前記混晶状態の酸化マンガンにおいて、マンガン元素が部分的に他元素で置換されており、前記他元素の含有量が1wt%以下である、請求項1記載のリチウム一次電池。
  5. 前記混晶状態の酸化マンガンが、λ型酸化マンガンを100℃〜300℃で焼成して得たものである、請求項1記載のリチウム一次電池。
  6. 前記リチウム合金が、少なくともアルミニウムを含む、請求項1記載のリチウム一次電池。
  7. 前記リチウム合金における前記アルミニウムの含有量が、0.2wt%〜15wt%である、請求項6記載のリチウム一次電池。
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