永久磁石のN極から出てS極に戻る磁路が開放された電動機として、図19に示すように、固定子112の内側にインナーロータ型の回転子118を備え、永久磁石114における回転子118側とその反対側とが固定子コア113に覆われずに開放された構成のものが考えられる。
この構成において、回転子118は、軟磁性体からなり14個の突極部119を有し、固定子112は、固定子コア113と永久磁石114と巻線115からなる。ここで、固定子コア113は、固定子112の半径方向に延出した2つの延出片116および当該2つの延出片116同士を巻線115よりも固定子112の外周部側で連結する連結片117とから構成されている。
この電動機111は、図18に示す電動機101と異なり、固定子コア113が永久磁石114の磁路を短絡していない分、永久磁石114から回転子118へ流れる磁束を増加させることができるので、図18に示す電動機101に比べて回転子118で発生するトルクが高い。
また、永久磁石のN極から出てS極に戻る磁路が開放された電動機として、図20に示すように、固定子122の外側に回転子128を備えるアウターロータ型の電動機121が考えられる。この電動機121は、永久磁石124における回転子128側とその反対側とが固定子コア123に覆われずに開放されており、図19に示す電動機111と同様に、図18に示す電動機101に比べて、回転子128に発生するトルクが高い。
しかしながら、図19や図20に示す構造の電動機では、エネルギー積が低い材質の磁石を使用した場合、高トルクを発生させるために大電流を流すと永久磁石が減磁しやすいという問題がある。
この様子を図21に示す磁界解析の結果を用いて説明する。図21(a)は、図19に示す電動機111において、永久磁石114として希土類磁石114A(エネルギー積:350[kJ/m3])を用いて巻線115に通電をしてトルクを発生させた場合の電動機111内部の磁束の様子を示し、図21(b)は、永久磁石114として、フェライト磁石114B(エネルギー積:42[kJ/m3])を用いて巻線115に通電をしてトルクを発生させた場合の電動機111内部の磁束の様子を示す。
図21に示す状態において、永久磁石114A2、114B2および永久磁石114A3、114B3には、永久磁石114A2、114B2および永久磁石114A3、114B3で発生する磁界とは逆向きの磁界(以下、「逆向き磁界」と称す。)が加わっている。一方、永久磁石114A4、114B4には、永久磁石114A4、114B4で発生する磁界とは同じ向きの磁界が加わっている。
そして、永久磁石114A2、114B2および永久磁石114A3、114B3と、永久磁石114A4、114B4とを比べると、図21(a)に示す希土類磁石114Aを用いた電動機111では、逆向き磁界が加わった永久磁石の磁束線密度に大きな変化はないのに対して、図21(b)に示すフェライト磁石を用いた電動機111では、逆向き磁界が加わった永久磁石の磁束線密度が粗くなっていることがわかる。つまり、図19に示す構造の電動機では、希土類磁石を用いた場合は希土類磁石の磁束に大きな変化がないが、フェライト磁石を用いた場合にはフェライト磁石に作用する逆磁界により減磁が発生してしまう。従って、図19に示す構造の電動機では、希土類磁石に比べてエネルギー積の小さなフェライト磁石を用いた高トルクな電動機は困難である。
本明細書において開示される電動機は、周方向に互いに間隔を空けて配置された永久磁石の間に配置された複数の固定子コア、および複数の巻線を有する円環状の固定子と、固定子の外側に配置され且つ固定子の中心を通る軸を回転軸とする、第1の突極部が複数設けられた円環状の外側回転子と、固定子の内側に配置され且つ外側回転子と同軸に連結されてなる、第2の突極部が第1の突極部と同数設けられた円環状の内側回転子とを備え、永久磁石それぞれが、固定子の半径方向に延出し且つ固定子の周方向に着磁されてなり、半径方向における両側が固定子コアで覆われておらず、巻線それぞれが、各永久磁石と当該永久磁石の周方向両側に配置される2つの固定子コアそれぞれの一部とからなるティースそれぞれに集中巻に巻回されてなり、第1の突極部および第2の突極部は、互いに固定子の周方向にずれた位置に配置されてなる。
本構成によれば、複数の第2の突極部が第1の突極部と同数設けてなり、且つ、第1の突極部および第2の突極部が、互いに固定子の周方向にずれた位置に配置されてなることにより、第1の突極部および第2の突極部のいずれか一方が永久磁石の磁路内に位置する確率を高めることができ、永久磁石のパーミアンス係数を高めることができるので、巻線への通電に対する永久磁石の耐減磁力を高めることができる。また、外側回転子または内側回転子がトルクを発生しているタイミング中に、第1の突極部および第2の突極部のいずれもが永久磁石の磁路内に位置しないタイミングが含まれることになるので、永久磁石から出る磁束の多くをトルク発生に寄与させることができ、高トルク化を図れる。
また、本明細書において開示される電動機は、上記固定子コアが、上記固定子の半径方向に延出する2つの延出片と当該2つの延出片を固定子の半径方向において上記巻線よりも上記内側回転子側で連結する連結片とを有し、固定子コアの一部は、延出片であり、延出片および上記永久磁石が、上記軸方向に直交する断面において、固定子の半径方向における上記外側回転子側に第1の周面を有し、内側回転子側に第2の周面を有し、上記第1の突極部および上記第2の突極部が、軸方向に直交する断面において、第2の突極部の周面における第1の周方向側の端部と、永久磁石の第1の周方向側に隣接する延出片の上記第2の周面における第1の周方向とは逆向きの第2の周方向側の端部とが固定子の周方向において一致する場合、第1の突極部と、永久磁石の第1の周方向側に隣接する延出片の一部とが固定子の半径方向において重複する位置に配置されているものであってもよい。
本構成によれば、主として外側回転子がトルクを発生する構成とすることができるとともに、耐減磁力を高め、高トルク化および高効率化を図ることができる。
また、本明細書において開示される電動機は、上記固定子コアが、上記固定子の半径方向に延出する2つの延出片と当該2つの延出片を固定子の半径方向において上記巻線よりも上記内側回転子側で連結する連結片とを有し、固定子コアの一部が、延出片であり、延出片および上記永久磁石が、上記軸方向に直交する断面において、固定子の半径方向における上記外側回転子側に第1の周面を有し、内側回転子側に第2の周面を有し、上記第1の突極部および上記第2の突極部が、軸方向に直交する断面において、第2の突極部の周面における第2の周方向側の端部と、永久磁石の第2の周方向側に隣接する延出片の第2の周面における第2の周方向とは逆向きの第1の周方向側の端部とが固定子の周方向において一致する場合、第1の突極部と、永久磁石の第2の周方向側に隣接する延出片とが固定子の半径方向において重複しない位置に配置されているものであってもよい。
本構成によれば、主として外側回転子がトルクを発生する構成とすることができるとともに、耐減磁力を高め、高トルク化および高効率化を図ることができる。
また、本明細書において開示される電動機は、上記内側回転子が、上記第2の突極部が磁性体により構成され、第2の突極部以外の部位が非磁性体により構成されるものであってもよい。
本構成によれば、主として外側回転子がトルクを発生する構成において、内側回転子への磁束漏れ量を低減することができるので、高トルク化および高効率化を図ることができる。
また、本明細書において開示される電動機は、上記永久磁石が、少なくとも、上記外側回転子側の周面が上記固定子の周方向において隣接する上記延出片の外側回転子側の周面に対して半径方向に窪んでいるものであってもよい。
また、本明細書において開示される電動機は、上記固定子の周方向において、上記永久磁石の上記第2の周面の幅が、上記第2の突極部の周面の幅よりも小さいものであってもよい。
本構成によれば、永久磁石から上記延出片を通って第2の突極部に流れ、永久磁石に戻る磁路を短絡することができるので、永久磁石のパーミアンス係数の向上を図ることができ、耐減磁力をより高めることができる。
また、本明細書において開示される電動機は、上記固定子コアが、上記固定子の半径方向に延出する2つの延出片と当該2つの延出片を固定子の半径方向において上記巻線よりも上記外側回転子側で連結する連結片とを有し、固定子コアの一部は、延出片であり、延出片および上記永久磁石が、上記軸方向に直交する断面において、固定子の半径方向における外側回転子側に第1の周面を有し、上記内側回転子側に第2の周面を有し、上記第1の突極部および上記第2の突極部が、軸方向に直交する断面において、第1の突極部の周面における第1の周方向側の端部と、永久磁石の第1の周方向側に隣接する延出片の第1の周面における第1の周方向とは逆向きの第2の周方向側の端部とが固定子の周方向において一致する場合、第2の突極部と、永久磁石の第1の周方向側に隣接する前記延出片の一部とが固定子の半径方向において重複する位置に配置されているものであってもよい。
本構成によれば、主として内側回転子がトルクを発生する構成とすることができるとともに、耐減磁力を高め、高トルク化および高効率化を図ることができる。
また、本明細書において開示される電動機は、上記固定子コアが、上記固定子の半径方向に延出する2つの延出片と当該2つの延出片を上記固定子の半径方向において上記巻線よりも上記外側回転子側で連結する連結片とを有し、固定子コアの一部が、延出片であり、延出片および上記永久磁石が、上記軸方向に直交する断面において、固定子の半径方向における外側回転子側に第1の周面を有し、上記内側回転子側に第2の周面を有し、上記第1の突極部および上記第2の突極部が、軸方向に直交する断面において、第1の突極部の周面における第2の周方向側の端部と、永久磁石の上記第2の周方向側に隣接する延出片の第1の周面における第2の周方向とは逆向きの第1の周方向側の端部とが固定子の周方向において一致する場合、第2の突極部と、永久磁石の第2の周方向側に隣接する延出片とが固定子の半径方向において重複しない位置に配置されているものであってもよい。
本構成によれば、主として内側回転子がトルクを発生する構成とすることができるとともに、耐減磁力を高め、高トルク化および高効率化を図ることができる。
また、本明細書において開示される電動機は、上記外側回転子が、上記第1の突極部が磁性体により構成され、第1の突極部以外の部位が非磁性体により構成されるものであってもよい。
本構成によれば、主として外側回転子がトルクを発生する構成において、内側回転子への磁束漏れ量を低減することができるので、高トルク化および高効率化を図ることができる。
また、本明細書において開示される電動機は、上記永久磁石が、少なくとも、上記内側回転子側の周面が上記固定子の周方向において隣接する上記延出片の内側回転子側の周面に対して半径方向に窪んでいるものであってもよい。
また、本明細書において開示される電動機は、上記固定子の周方向において、上記永久磁石の上記第1の周面の幅が、上記第1の突極部の周面の幅よりも小さいものであってもよい。
本構成によれば、永久磁石から上記延出片を通って第1の突極部に流れ、永久磁石に戻る磁路を短絡することができるので、永久磁石のパーミアンス係数の向上を図ることができ、耐減磁力をより高めることができる。
また、本明細書において開示される電動機は、上記第1の突極部および上記第2の突極部が、更に、上記軸方向に直交する断面において、上記固定子の周方向において隣り合う2つの第1の突極部の中央部の各々と軸とを結ぶ2つの線分の対象軸上に第2の突極部の中央部が位置するように配置されてなるものであってもよい。
本構成によれば、外側回転子と内側回転子とが、個々で発生するトルク脈動を打ち消すように配置されているので、振動低減を図ることができる。
また、本明細書において開示される電動機は、上記巻線それぞれが、上記固定子の周方向において隣り合う巻線と巻回方向が同じであり、上記永久磁石が、固定子の周方向で隣り合う永久磁石と着磁方向が逆であってもよい。
また、本発明に係る電動機は、上記永久磁石のエネルギー積が、150[kJ/m3]以下であってもよい。
また、本明細書において開示される電動機は、上記永久磁石が、フェライト磁石であってもよい。
また、本明細書において開示される電動機は、上記外側回転子の第1の突極部および上記内側回転子の第2の突極部の数が、14n(nは1以上の整数)個であり、上記ティースの数が、12n個であり、巻線の数が、12n個であってもよい。
本構成によれば、上記外側回転子および上記内側回転子の突極部の数が14nとなるような電動機であっても有効磁束の低下を防ぐことができるので、高トルク化および高効率化を図ることができる。
また、nの値を適宜変更することにより、各種電動機に適用することができる。
また、本明細書において開示される電動機は、上記外側回転子の第1の突極部および上記内側回転子の第2の突極部の数が、10n(nは1以上の整数)個であり、上記ティースの数が、12n個であり、巻線の数が、12n個であってもよい。
本構成によれば、外側回転子8および内側回転子10の突極部の数が10nとなるような電動機であっても有効磁束の低下を防ぐことができるので、高トルク化および高効率化を図ることができる。
<実施の形態1>
<1>構成
本実施の形態に係る電動機1の構成を図1に示す。
電動機1は、円環状の固定子2と、固定子2の外側に配置され且つ固定子2の中心を通る軸を回転軸とする円環状の外側回転子8と、固定子2の内側に配置され且つ外側回転子8と同軸に連結されてなる内側回転子10とを備える。固定子2は、周方向に等間隔で離間して配置される12個の永久磁石4と、互いに隣り合う永久磁石4の間に配置された複数(図1の例では12個)の固定子コア3と、12個の巻線5とから構成される。
外側回転子8および内側回転子10は、いずれも軟磁性体により形成されている。また、外側回転子8は、内側に突出する14個の第1の突極部9が設けられてなり、内側回転子10は、外側に突出する14個の第2の突極部11が設けられてなる。なお、内側回転子10は、第2の突極部11の材料と突極部11以外の部位の材料とが異なっていてもよい。具体的には、第2の突極部11が磁性体から形成され、第2の突極部11以外の部位が磁性体ではない材料(例えば、樹脂、アルミニウム合金等)から形成されていてもよい。
第2の突極部11の周方向の寸法は、永久磁石4の内側回転子10側の周面の周方向の寸法よりも大きい。そして、外側回転子8の第1の突極部9と内側回転子10の第2の突極部11とは、軸方向に直交する断面において、固定子2の周方向において隣り合う2つの第1の突極部9の中央部の各々と軸Cとを結ぶ2つの線分L1,L1の対称軸L2上に、第2の突極部11の中央部が位置するように配置されてなる。
固定子コア3は、固定子2の半径方向に延出する2つの延出片6と、当該2つの延出片6を接続する連結片7とから構成され、軸C方向に直交する断面形状が略コ字状に形成されている。ここで、延出片6は、軸C方向に直交する断面において、固定子2の半径方向における一端側に形成された周面6aと、他端側に形成された周面6bとを有し、周面6aは、第1の突極部9の先端面(周面)に略平行となっており、周面6bは、第2の突極部11の先端面に略平行となっている。そして、各固定子コア3は、連結片7が巻線5に対して内側回転子10側となるように配置されている。これにより、外側回転子8が、主としてトルク発生に寄与させるようにすることができる。
永久磁石4は、軸C方向に直交する断面において、固定子2の半径方向における一端側に形成された周面4aと、他端側に形成された周面4bとを有し、周面4bが第2の突極部11の先端面(周面)に略平行となっている。そして、前述のように、延出片6の周面6bが第2の突極部11の先端面に略平行となっているので、延出片6の周面6bおよび永久磁石4の周面4bと、第2の突極部11の先端面との間の空隙を小さくすることができる。また、永久磁石4は、固定子2の略周方向に着磁されている。そして、各永久磁石4は、固定子2の周方向で互いに隣り合う2つの永久磁石4が固定子2の周方向で同じ極同士が向い合わせになるように着磁されている。
巻線5それぞれは、各永久磁石4と当該永久磁石4の両側に配置される2つの固定子コア2それぞれの延出片6とからなる組それぞれに集中巻に巻回されている。これらの巻線5それぞれは、巻回方向が同じにしてある。そして、巻線5は、固定子2の周方向において、U相、V相、W相の順に並んでいる。ここで、永久磁石4と当該永久磁石4の両側に配置される2つの固定子コア2それぞれの延出片6とが、本発明におけるティースに相当する。
図2に電動機1の概略分解斜視図を示す。電動機1は、内側回転子10に設けられた内側回転子支持部10cと、外側回転子8に設けられた外側回転子支持部8cが、シャフトC1に連結されている。そして、シャフトC1は、固定子2に設けられた固定子支持部2dに貫設され軸受け用孔2eに挿通されている。即ち、内側回転子10と外側回転子8とがシャフトC1に連結された状態で、内側回転子10と外側回転子8との間に生じる空隙に、固定子2が嵌めこまれている。
永久磁石4と外側回転子8および内側回転子10との関係を図3に示す。図3(a)は永久磁石4の磁束が内側回転子10の第2の突極部11で短絡される状態を示す。ここで、永久磁石4の磁路を短絡するとは、永久磁石4のN極から出た磁束が永久磁石4に隣接する延出片6の中を通り、第1の突極部9または第2の突極部11に入り、永久磁石4のS極に入る磁路中に空気よりも透磁率の高い材料を配置することを意味する。図3(a)では、外側回転子8の第1の突極部9と、永久磁石4に接した固定子2の延出片6のうち、回転方向(反時計方向)前側の延出片6との一部が重なっているとき(図3(a)中の丸印参照)に、内側回転子10の第2の突極部11の回転方向前側と、永久磁石4の回転方向前側に接した、固定子2の内径側エッジとが並ぶ関係にある(図3(a)中の矢印参照)。このとき、永久磁石4の磁束の短絡を開始する。
図3(a)に示す状態から、外側回転子8および内側回転子10が連動して反時計方向に回転するにつれて、内側回転子10の第2の突極部11により永久磁石4の磁束が短絡される。
図3(b)は永久磁石4の磁束が内側回転子10の第2の突極部11での短絡がなくなる状態を示す。図3(b)では、外側回転子8の第1の突極部9と、永久磁石4に接した固定子2の延出片6のうち、回転方向後側の延出片6のエッジが近づくとき(図3(b)中の丸印参照)に、内側回転子10の第2の突極部11の回転方向後側と、永久磁石4の回転方向後側に接した固定子2の内径側エッジとが並ぶ関係にある(図3(b)中の矢印参照)。
図3(b)に示す状態から、外側回転子8および内側回転子10が連動して反時計方向に回転するにつれ、内側回転子10の第2の突極部11による、永久磁石4の磁束の短絡が終わる。
図4を用いて外側回転子8と内側回転子10の位置関係について説明する。
図4に示すように、内側回転子10は第2の突極部(突極歯ともいう。)11のみ磁性体で形成されている。外側回転子8と内側回転子10とは、ほぼ反ピッチずれている。ここで、外側回転子8の第1の突極部9と内側回転子10の第2の突極部11とはちょうど反ピッチずれた状態から更にずれている(つまり、ちょうど反ピッチではない方)方が好ましい(図4中の矢印参照)。
図3(b)の位置関係にあるときに巻線5に流れる電流を最大とすると、電動機1が最もトルクを発生する。図3(b)に示すように、電動機1が最もトルクを発生するタイミングでは、第2の突極部11が永久磁石4の周面4bを、固定子2の周方向において跨がず、内側回転子10の第2の突極部11が永久磁石4の磁路を短絡していない。即ち、軸C方向に直交する断面において、第2の突極部11の時計周り方向における端部11a1が、永久磁石4の周面4b上に位置することになる。このとき、永久磁石4から延出片6の周面6aおよび第1の突極部9の周面9aを介して外側回転子8へ流れる磁束により、外側回転子8にトルクを発生させることになる。
図4の状態では、内側回転子10による永久磁石4の磁路の短絡はない。そして、トルクの発生に有効な有効磁束を増加させた状態で、トルクを発生している。
永久磁石4の磁路を内側回転子10で短絡させることにより、永久磁石4に対して逆磁界が印加されたときの減磁の発生が抑制できる。一方、電動機1が最もトルクを発生するタイミングでは、永久磁石4の磁路を短絡せずに外側回転子8のトルク発生に寄与する有効磁束を増加させることにより、電動機1の高トルク化を図っている。
<2>本実施の形態と比較例との比較
本実施の形態に係る電動機1について、磁界解析を行った結果を図5に示す。また、固定子122の内側にヨークがない比較例1に係る電動機について、内部の磁束線の様子を解析した結果を図6に示し、固定子132の内側に固定子ヨーク137が配置された比較例2に係る電動機について、内部の磁束線の様子を解析した結果を図7に示す。
永久磁石4としては、エネルギー積が150[kJ/m3]以下の磁石が採用される。本実施の形態では、永久磁石4として、42[kJ/m3]のフェライト磁石が採用されている。
図6に示す比較例1に係る電動機では、複数の突極部129を有する回転子128が固定子122の外側に配置されており、固定子122内に配置された永久磁石124が右側をN極、左側をS極となる形で周方向に着磁されている。なお、永久磁石124の短手方向における両側には、固定子122の半径方向に延出する延出片126が当接している。また、2つの延出片126は、連結片127で連結されている。図6において、永久磁石124の右側の巻線125には、紙面下方向に電流が流れており、永久磁石124の左側では、紙面上方向に電流が流れている。これにより、回転子128に反時計方向のトルクが発生することになる。以下では、この比較例に係る電動機において、回転子128に発生するトルクを1p.u.として説明する。
図6に示す電動機では、永久磁石124における固定子122の内側が開放されているので、永久磁石124を通る磁束は、固定子122の内側の空気層を通ることとなり、その分、永久磁石124を通る磁路の透磁率が低くなり、永久磁石124のパーミアンス係数が低くなる。図6に示す状態では、永久磁石124のパーミアンス係数が0.30となる。このパーミアンス係数が低くなると、永久磁石124に逆磁界を印加すると、永久磁石124が減磁を起こしやすくなる。この比較例1に係る電動機では、永久磁石124として、一般的にエネルギー積が低いと言われるフェライト磁石(エネルギー積が42[kJ/m3])を用いているので、永久磁石124としてエネルギー積が高い希土類磁石(エネルギー積が350[kJ/m3])を用いた場合に比べて、巻線125への通電の際に永久磁石124に逆磁界が印加されたときに、減磁が発生しやすく、電動機の性能劣化に繋がってしまう。
図7に示す比較例2に係る電動機は、固定子132の内側に配置された固定子ヨーク137が永久磁石134のN極とS極とを短絡する磁路の一部を構成している点が図6に示す比較例1に係る電動機と相違する。なお、この電動機では、図6に示す比較例1に係る電動機と同様に、複数の突極部139を有する回転子138が固定子132の外側に配置されており、固定子132内に配置された永久磁石134が周方向における右側がN極で左側がS極となるように着磁されている。また、永久磁石134の短手方向における両側には、固定子132の半径方向に延出する延出片136が当接している。図7において、永久磁石134の右側の巻線135には、紙面下方向に電流が流れており、永久磁石134の左側の巻線135には、紙面上方向に電流が流れている。これにより、回転子138に反時計方向のトルクが発生することになる。
図7に示す電動機では、固定子132の内側で固定子ヨーク137が磁路を短絡していることにより、永久磁石134を通る磁路の透磁率が高くなり、永久磁石134のパーミアンス係数は増加する。図7に示す状態では、永久磁石134のパーミアンス係数は、1.06となり、減磁しにくくなっている。このことは、図7において、図6に示した例に比べて、永久磁石134を通る磁束が増加していることに現れている。
ところで、図7に示す電動機では、永久磁石134の磁束は、図6に示す電動機と比べて、固定子ヨーク137で短絡される磁束が増加した分、回転子138へ流れる磁束が低下している。つまり、回転子138のトルクの発生に寄与する磁束が低下している。実際、図7に示す例では、回転子138で発生するトルクは、図6のトルクを1p.u.として、0.78p.u.となっており、図6に示した例に比べて発生するトルクが低下している。
本実施の形態に係る電動機1では、図5(a)に示すように、各永久磁石4が、固定子2の周方向における右側がN極、左側がS極となるように着磁されている。図5において、永久磁石4の右側の巻線5では、紙面下方向に電流が流れ、永久磁石4の左側の巻線5では、紙面上方向に電流が流れる。このとき、外側回転子8は、反時計方向にトルクが発生することになる。
図5(a)に示す状態では、延出片6の端面6aが、外側回転子8の第1の突極部9に対向していないが、外側回転子8と同軸に接続され且つ固定子2の内側に配置された内側回転子10の第2の突極部11が、永久磁石4の端面4bに対向する位置にあり、永久磁石4の磁路を短絡している。これにより、永久磁石4のパーミアンス係数が高くなり、永久磁石4の減磁が抑制される。
図5(a)に示す状態から、外側回転子8および内側回転子10が反時計方向に回転した状態を図5(b)に示す。
図5(b)に示す状態では、延出片6の周面6aに、外側回転子8の第1の突極部9が近づき、延出片6から外側回転子8の第1の突極部9に磁束が流れ、外側回転子8に反時計方向のトルクが発生する。このとき、外側回転子8とともに、外側回転子8の回転軸に連結された内側回転子10も反時計方向に回転する。
一方、内側回転子10の第2の突極部11は、永久磁石4の先端部を周方向に跨がなくなり、第2の突極部11で磁束が短絡しなくなっている。このため、永久磁石4の磁束の多くが、外側回転子8に流れ、外側回転子8のトルク発生に寄与することになる。また、永久磁石4のパーミアンス係数は、図7に示す例に比べて低く、0.70となるが、発生するトルクは、図7に示す例に比べて高い1.08p.u.となる。
<3>効果
次に、本実施の形態に係る電動機1により得られる効果について説明する。
ネオジムやジスプロシウム等の希土類金属は、地球上の産地が偏在し、埋蔵量が極めて少ないので、希土類磁石よりも入手容易なフェライト磁石を永久磁石として採用したいという要請がある。
本実施の形態に係る電動機1であれば、永久磁石4としてエネルギー積が低い磁石(例えば、エネルギー積が42[kJ/m3]のフェライト磁石)を用いても、永久磁石4のパーミアンス係数を高めることができるので、図6に示す比較例1に比べて、巻線5への通電による減磁を抑制することができる。
また、外側回転子8または内側回転子10にトルクを発生させるタイミングで一時的に永久磁石4の磁路を短絡しないようにすることで、図7に示す比較例2に比べて、高トルク化を図ることができる。
更に、電動機1は、延出片6に巻線5を集中巻に巻回している。これにより、分布巻を採用した場合に比べて、巻線5のコイルエンドの小型化ができ、電動機1全体の小型化を図ることができ、更に、通電時のジュール損(銅損)を低減することができるので、高効率化を図ることができる。
また、電動機1は、アウターロータ型であって、外側回転子8が主にトルクの発生に寄与している。従って、内側回転子が主にトルクの発生に寄与するインナーロータ型の電動機に比べて、同じ大きさであれば、トルクの発生に寄与する回転子の径を大きくすることができる。従って、本実施の形態のように、回転子の突極部の数が同じであれば、インナーロータ型の電動機に比べて、回転子の周方向で隣り合う2つの突極部の間の距離を大きくすることができるので、回転子にトルクを発生させるタイミングにおいて、隣接する突極部への漏れ磁束を低減することができるから、トルク発生時における有効磁束の低下を防ぐことができる。
<実施の形態2>
本実施の形態に係る電動機21の構成を図8に示す。
電動機21は、円環状の固定子22と、固定子22の外側に配置され且つ固定子22の中心を通る軸を回転軸とする円環状の外側回転子30と、固定子22の内側に配置され且つ外側回転子30と同軸に連結されてなる内側回転子28とを備える。固定子22は、周方向に等間隔で離間して配置される12個の永久磁石24と、互いに隣り合う永久磁石24の間に配置された12個の固定子コア23と、12個の巻線25とから構成される。以下、実施の形態1と同様の構成については、適宜説明を省略する。
外側回転子30は、内側に突出する10個の第1の突極部31が設けられてなり、内側回転子28は、外側に突出する10個の第2の突極部29が設けられてなる。この第1の突極部31および第2の突極部29は、それぞれ回転対称となるように配置されている。そして、外側回転子30の第1の突極部31と内側回転子28の第2の突極部29とは、軸方向に直交する断面において、固定子22の周方向において隣り合う2つの第1の突極部31の中央部の各々と軸Cとを結ぶ2つの線分L1,L1の対称軸L2上に第2の突極部29の中央部が位置するように配置されてなる。
固定子コア23は、実施の形態1と同様に、固定子22の半径方向に延出する2つの延出片26と、当該2つの延出片26を接続する連結片27とから構成され、軸C方向に直交する断面形状が略コ字状に形成されている。そして、各固定子コア23が、連結片27が外側回転子30側となるように配置されている点が実施の形態1とは相違する。これにより、内側回転子28が、主にトルクの発生に寄与することになる。また、延出片26は、実施の形態1と同様に、軸C方向に直交する断面において、固定子22の半径方向における一端側に形成された周面26aと、他端側に形成された周面26bとを有し、周面26aは、第1の突極部31の先端面(周面)31aに略平行となっており、周面26bは、第2の突極部29の先端面29aに略平行となっている。
永久磁石24は、軸C方向に直交する断面において、固定子22の半径方向における一端側に形成された周面24aと、他端側に形成された周面24bとを有し、周面24aが第1の突極部31の先端面31aに略平行となっている。そして、前述のように、延出片26の周面26aが第1の突極部31の先端面31aに略平行となっているので、延出片26の周面26aおよび永久磁石24の周面24aと、第1の突極部31の先端面との間の空隙を狭くすることができる。また、永久磁石24は、固定子22の周方向に着磁されている。そして、各永久磁石24は、固定子22の周方向で互いに隣り合う2つの永久磁石24が固定子22の周方向で同じ極同士が向い合わせになるように着磁されている。
巻線25それぞれは、各永久磁石24と当該永久磁石24の両側に配置される2つの固定子コア22それぞれの延出片26とからなる組それぞれに集中巻に巻回されている。また、巻線25は、固定子22の周方向において、U相、V相、W相の順に並んでいる。
永久磁石24と外側回転子30および内側回転子28との関係を図9に示す。図9(a)は永久磁石24の磁束が外側回転子30の第1の突極部31で短絡される状態を示す。ここで、永久磁石24の磁路を短絡するとは、永久磁石24のN極から出た磁束が永久磁石24に隣接する延出片26の中を通り、第1の突極部31または第2の突極部29に入り、永久磁石24のS極に入る磁路中に空気よりも透磁率の高い材料を配置することを意味する。図9(a)では、内側回転子28の第2の突極部29と、永久磁石24に接した固定子22の延出片26のうち、回転方向(反時計方向)前側の延出片26との一部が重なっているとき(図9(a)中の丸印参照)に、外側回転子30の第1の突極部31の回転方向前側と、永久磁石24の回転方向前側に接した、固定子22の外径側エッジとが並ぶ関係にある(図9(a)中の矢印参照)。
図9(a)に示す状態から、外側回転子30および内側回転子28が連動して反時計方向に回転するにつれて、外側回転子30の第1の突極部31により永久磁石24の磁束が短絡される。
図9(b)は永久磁石24の磁束が外側回転子30の第1の突極部31での短絡がなくなる状態を示す。図9(b)では、内側回転子28の第2の突極部29と、永久磁石24に接した固定子22の延出片26のうち、回転方向後側の延出片26のエッジが近づくとき(図9(b)中の丸印参照)に、外側回転子30の第1の突極部31の回転方向後側と、永久磁石24の回転方向後側に接した固定子22の外径側エッジとが並ぶ関係にある(図9(b)中の矢印参照)。
図9(b)に示す状態から、外側回転子30および内側回転子28が連動して反時計方向に回転するにつれ、外側回転子30の第1の突極部31による、永久磁石24の磁束の短絡が終わる。
外側回転子30は第1の突極部(突極歯ともいう。)31のみ磁性体で形成されている。内側回転子28と外側回転子30とは、ほぼ反ピッチずれている。ここで、図9(a)(b)でも示したように、内側回転子28の第2の突極部29と外側回転子30の第1の突極部31とはちょうど反ピッチずれた状態から更にずれている方が好ましい。なお、外側回転子30は、第1の突極部31以外の部位も磁性体で構成されていてもよい。
図9(b)の位置関係にあるときに巻線25に流れる電流を最大とすると、電動機21が最もトルクを発生する。図9(b)に示すように、電動機21が最もトルクを発生するタイミングでは、外側回転子30の第1の突極部31が永久磁石24の磁路を短絡しないように、第1の突極部31の周面31aが永久磁石24の周面24aを、固定子2の周方向において跨がない。即ち、軸C方向に直交する断面において、第1の突極部31の時計周り方向における端部31a1が、永久磁石24の周面24a上に位置する。このとき、永久磁石24から延出片26の周面26bおよび第2の突極部29の周面29aを介して内側回転子28へ流れる磁束により、内側回転子28にトルクが発生することになる。
以上説明したように、永久磁石24の磁路を外側回転子28または内側回転子30で短絡させることにより、永久磁石24に対して逆磁界が印加されたときの減磁の発生を抑制している。一方、電動機21が最もトルクを発生するタイミングでは、永久磁石24の磁路を短絡せずに回転子のトルク発生に寄与する有効磁束を増加させることにより、電動機21の高トルク化を図っている。
<変形例>
以上、本発明に係る電動機について、実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限られない。例えば、以下のような変形例が考えられる。
(1)前述の実施の形態1では、外側回転子8にトルクを発生させていないタイミングで第2の突極部11が永久磁石4の磁路を短絡する例について説明したがこれに限定されるものではない。例えば、外側回転子8にトルクを発生させているタイミングと第2の突極部11が永久磁石4の磁路を短絡するタイミングとで一部重複する期間があってもよい。
(2)前述の実施の形態1および2において、固定子2、22の巻線5、25が外側回転子8、30および内側回転子10、28の軸方向に進むほど、周方向に最大で固定子2、22の巻線5、25の配置間隔だけずれていくスキュー配置を施すこととしてもよい。
(3)前述の実施の形態1および2において、外側回転子の第1の突極部および内側回転子の第2の突極部をスキュー配置としてもよい。また、スキューは一定の滑らかなスキューでも、段階状のスキューでもよい。
(4)前述の実施の形態1および2では、エアギャップが半径方向にあるデュアルロータ型の電動機の例について説明したが、これに限定されるものではなく、軸方向にエアギャップのあるアキシャルギャップのデュアルロータ型の電動機でもよい。
(5)前述の実施の形態1および2では、巻線に通電する電流の波形が、正弦波でもよいし、矩形波であってもよい。
(6)前述の実施の形態1では、外側回転子8の第1の突極部9および内側回転子10の第2の突極部11それぞれを14個、延出片6を24個、巻線5を12個備える電動機1の例について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、外側回転子8の第1の突極部9および内側回転子10の第2の突極部11それぞれを14n個、延出片6を24n個、巻線5を12n個(nは1以上の整数)備えるものであってもよい。
(7)前述の実施の形態2では、外側回転子30の第1の突極部31および内側回転子28の第2の突極部29の数それぞれを10個、延出片26を24個、巻線25を12個備える電動機21の例について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、外側回転子30の第1の突極部31および内側回転子28の第2の突極部29それぞれを10n個、延出片26を24n個、巻線25を12n個(nは1以上の整数)備えるものであってもよい。
(8)前述の実施の形態1では、固定子2の周方向において、永久磁石4の第2の周面4bの幅が、第2の突極部11の周面11aの幅よりも小さい例について説明したがこれに限定されるものではない。例えば、固定子2の周方向において、永久磁石4の第2の周面4bの幅が、第2の突極部11の周面11aの幅よりも大きくても、永久磁石4の磁路中の実効的な透磁率を高めることができ、パーミアンス係数を大きくすることができるので、減磁を抑制する効果を得ることができる。
(9)前述の実施の形態1および2では、第1の突極部9、31および第2の突極部11、29が、軸C方向に直交する断面において、固定子2、22の周方向において隣り合う2つの第1の突極部9、31の中央部の各々と軸Cとを結ぶ2つの線分L1,L1の対称軸上に第2の突極部11、29の中央部が位置するように配置されてなる、即ち、第1の突極部9、31と第2の突極部11、29とが固定子2、22の周方向において、第1の突極部9、31および第2の突極部11、29が並ぶ周期の半周期だけずれた形で配置されてなる例について説明したが、これに限定されるものではなく、ずれの大きさが半周期よりも小さくてもよい。
(10)前述の実施の形態1では、永久磁石4を挟んで隣接する2つの延出片6同士の固定子2の周方向における間隔が、固定子2の外側と内側とで略同じ例について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図10(a)に示すように、隣接する2つの延出片6同士の固定子2の周方向における間隔が、固定子2の外側に比べて内側が広がっているものであってもよい。
或いは、図10(b)に示すように、永久磁石4を挟んで隣接する2つの延出片6同士の固定子2の周方向における間隔が、固定子2の外側に比べて内側が広がるように、永久磁石4を挟んで隣接する2つの延出片6のうち一方の延出片6における永久磁石4側の側面の形状が傾斜した形状となっているものであってもよい。
図10(a)および(b)に示す構成によれば、使用する永久磁石4の大きさを小さくすることができるので、電動機1の材料コストの低減および軽量化を図ることができる。
また、図10(c)に示すように、永久磁石4を挟んで隣接する2つの延出片6における永久磁石4側の側面が、固定子2の内側において、固定子2の1つの周方向に傾斜した形状となっているものであってもよい。
図10(c)に示す構成によれば、外側回転子8と内側回転子10に作用する力のバランスを変更することができるので、振動低減を図ることが可能となる。
(11)前述の実施の形態1では、固定子コア3が、固定子2の半径方向に延出する2つの延出片6と、当該2つの延出片6を端部で接続する連結片7とから構成され、軸C方向に直交する断面形状が略コ字状に形成されている例について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図11に示すように、連結片7が、延出片6の端部から固定子2の半径外側方向にずれた位置に設けられており、永久磁石4の内側回転子10側の先端面が、連結片7の内側回転子10側の先端面よりも外側へずれているものであってもよい。
図11に示す構成によれば、延出片6から第2の突極部11を介して内側回転子10へ流れる漏れ磁束を制限することができ、有効磁束の増加によりトルク増加を図ることができる。
(12)前述の実施の形態1では、永久磁石4の外側の周面と当該永久磁石4を挟んで隣接する2つの延出片6の外側の周面とが半径方向において略一致している例について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図12に示すように、永久磁石4の外側の周面が、隣接する2つの延出片6の外側の周面に対して半径方向に窪んだ形で配置されているものであってもよい。
ここで、永久磁石4の磁化方向が固定子2の周方向であり、永久磁石の磁束は、永久磁石に隣接する2つの延出片6から、エアギャップを介して外側回転子8に流れる。永久磁石4の端面が略固定子2の端面と並んでいると、永久磁石4の端面が略固定子2に流れ込む磁束の影響を受けるため、強い逆磁界を局所的に受けて永久磁石4が部分的に減磁を起こすおそれがある。
そこで、本変形例によれば、永久磁石4の外側の周面をエアギャップ(外側回転子8と固定子2との間に生じた隙間)から離すことにより、外側回転子8からエアギャップを介して半径方向に流れる磁束の永久磁石4の磁束への作用を低減できるので、永久磁石4の減磁を抑制できる。
(13)前述の実施の形態1に係る内側回転子10の形状は、図1に示すものに限定されない。
本変形例に係る電動機の一部断面図を図13および図14に示す。なお、図13および図14において、実施の形態1と同様の構成については同一の符号を付して適宜説明を省略している。本変形例に係る電動機は、内側回転子210、310、410、510の形状が、実施の形態1に係る内側回転子10と異なる。
図13(a)に示すように、隣接する2つの第2の突極部211の間の部位に、内側回転子210の中心軸方向に貫通する貫通孔210aが配置されていてもよい。
また、図13(b)に示すように、隣接する2つの第2の突極部311の間の部位における第2の突極部311が突出する側の周面に、溝部310aが配置されていてもよい。
更に、図14(a)に示すように、隣接する2つの第2の突極部411の間の部位における第2の突極部411が突出する側とは反対側の周面に、溝部410aが配置されていてもよい。
なお、溝部310a,410aの断面形状は、いずれも楔状(図13(b)参照)であってもよいし、半円状(図14(a)参照)であってもよいし、他の形状であってもよい。
内側回転子210,310,410では、隣接する2つの第2の突極部211,311,411の間の部位における、内側回転子210,310,410の周方向に直交する方向の断面積が小さくなっている。これにより、隣接する2つの第2の突極部211,311,411間で短絡される磁束を低減でき、延出片6から内側回転子210,310,410側に流れる磁束を減少させることができる。そして、延出片6から内側回転子210,310,410側に流れる磁束が低減した分、延出片6から外側回転子8の第1の突極部9に流れる磁束を増加させることができる。従って、トルク発生に寄与する外側回転子8側に流れる磁束を増加させることにより、トルクの向上を図ることができる。
また、図14(b)に示すように、内側回転子510における隣接する2つの第2の突極部511の間に、磁気特性が劣化している(即ち、透磁率が低下している)部位510aが配置されていてもよい。この内側回転子510でも、隣接する2つの第2の突極部511間で短絡される磁束を低減でき、延出片6から内側回転子510側に流れる磁束を減少させることができる。
図14(b)に示す構成の内側回転子510の製造方向を説明するための図を図15に示す。
まず、図15(a)に示すような、矩形板状の板状部材2512の一表面側に第2の突極部511の基となる14個の突条2511が配置された基部材2510を準備する。この14個の突条2511は、その延伸方向に直交する方向に配置されている。
次に、基部材2510の中央部に突条2511の突出方向への力(図15(a)中の矢印A2513参照)を加えるとともに、突条2511の並び方向における両端部に突条2511の突出方向とは反対方向への力(図15(a)中の矢印A2514参照)を加えることにより、基部材2510を湾曲させていく。このとき、基部材2510における、隣接する2つの突条2511の間の部位2510aには歪が集中することになる。そして、基部材2510の上記両端部同士を溶接等により繋ぎ合わせることにより内側回転子510が完成する。
ここにおいて、内側回転子510における、隣接する2つの第2の突極部511の間の部位510aは、基部材2510を湾曲していく際に歪が集中した部位2510aに対応しており、磁気特性が劣化した状態となる。
また、他の変形例に係る内側回転子610,710の斜視図を図16に示す。
図16(a)に示すように、内側回転子610は、略円筒状の形状を有しており、隣接する2つの第2の突極部611の間の部位に中心軸方向に延びる長孔610aが配置されている。
また、図16(b)に示すように、内側回転子710は、略円筒状の形状を有しており、隣接する2つの第2の突極部711の間の部位の中心軸方向における両端部に切欠部710aが配置されている。
これらの内側回転子610,710では、隣接する2つの第2の突極部611,711の間の部位における、内側回転子610,710の周方向に直交する方向の断面積が小さくなっている。これにより、これらの内側回転子610,710を備えた電動機において、隣接する2つの第2の突極部611,711間で短絡される磁束を低減することができる。
(14)前述の実施の形態2に係る外側回転子30の形状は、図8に示すものに限定されない。
本変形例に係る電動機の一部断面図を図17に示す。なお、図17において、実施の形態2と同様の構成については同一の符号を付して適宜説明を省略している。
図17(a)に示すように、外側回転子230には、隣接する2つの第1の突極部231の間の部位に、外側回転子230の中心軸方向に貫通する貫通孔230aが配置されていてもよい。なお、貫通孔230aの形状は、図17(a)に示す長孔形状に限定されるものではない。
また、図17(b)に示すように、外側回転子330には、隣接する2つの第2の突極部311の間の部位における第1の突極部331が突出する側とは反対側の周面に、溝部330aが配置されていてもよい。
外側回転子230,330では、隣接する2つの第1の突極部231,331の間の部位における、外側回転子230,330の周方向に直交する方向の断面積が小さくなっている。これにより、隣接する2つの第1の突極部231,331間で短絡される磁束を低減でき、延出片26から外側回転子230,330側に流れる磁束を減少させることができる。そして、延出片26から外側回転子230,330側に流れる磁束が低減した分、延出片26から内側回転子28の第2の突極部29に流れる磁束を増加させることができる。従って、トルク発生に寄与する内側回転子28側に流れる磁束を増加させることにより、トルクの向上を図ることができる。
<補足>
(1)前述の実施の形態1および2並びに変形例で説明した電動機は、直動駆動されるリニア電動機、リニア発電機にも適用できる。
(2)前述の実施の形態1および2並びに変形例で説明した電動機は、低振動、低騒音な電動機を提供することができ、低振動、低騒音性が要求される自動車用途に特に有用である。
(3)また、前述の実施の形態1および2並びに変形例で説明した電動機は、特に出力が1kW以上の比較的大型な電動機において、永久磁石に希土類磁石を使用しない場合、コスト削減効果が高くなる。