以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
まず、本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置について説明する。
図1は、本実施の形態に係る撮像装置としてのカメラの主要部の構成を示すブロック図である。
図1において、カメラ本体1(図2参照)に内蔵されたマイクロコンピュータからなる中央処理装置(以下、「MPU」という。)100は、カメラの動作制御を司るものであり、各要素に対して様々な処理や指示を実行する。MPU100に内蔵されたEEPROM100aは、時刻計測回路109の計時情報やその他の情報を記憶することができる。
MPU100には、ミラー駆動回路101、焦点検出回路102、シャッタ駆動回路103、映像信号処理回路104、スイッチセンサ回路105、測光回路106が接続されている。また、LCD駆動回路107、バッテリチェック回路108、時刻計測回路109、電力供給回路110、圧電素子駆動回路111が接続されている。これらの回路は、MPU100の制御により動作するものである。
MPU100は、撮影レンズユニット200a内のレンズ制御回路201とマウント接点21を介して通信を行う。マウント接点21は、撮影レンズユニット200aが接続されるとMPU100へ信号を送信する機能も有する。これにより、レンズ制御回路201は、MPU100との間で通信を行い、AF駆動回路202及び絞り駆動回路203を介して撮影レンズユニット200a内の撮影レンズ200及び絞り204の駆動を行う。なお、図1では便宜上1枚の撮影レンズ200のみを図示しているが、実際は多数のレンズ群によって構成される。
AF駆動回路202は、例えばステッピングモータによって構成され、レンズ制御回路201の制御により撮影レンズ200内のフォーカスレンズ位置を変化させ、撮像素子33に撮影光束の焦点を合わせるように調整する。絞り駆動回路203は、例えばオートアイリス等によって構成され、レンズ制御回路201の制御により絞り204を変化させ、光学的な絞り値を得る。
メインミラー6は、図1に示す撮影光軸に対して45°の角度に保持された状態で、撮影レンズ200を通過する撮影光束をペンタダハミラー22へ導くと共に、その一部を透過させてサブミラー30へ導く。サブミラー30は、メインミラー6を透過した撮影光束を焦点検出センサユニット31へ導く。
ミラー駆動回路101は、例えばDCモータとギヤトレイン等によって構成され、メインミラー6を、ファインダにより被写体像を観察可能とする位置と、撮影光束から待避する位置とに駆動する。メインミラー6が駆動すると、同時にサブミラー30も、焦点検出センサユニット31へ撮影光束を導く位置と、撮影光束から待避する位置とに移動する。
焦点検出センサユニット31は、不図示の結像面近傍に配置されたフィールドレンズ、反射ミラー、2次結像レンズ、絞り、複数のCCDからなるラインセンサ等によって構成され、位相差方式の焦点検出を行う。焦点検出センサユニット31から出力される信号は、焦点検出回路102へ供給され、被写体像信号に換算された後、MPU100に送信される。MPU100は、被写体像信号に基づいて位相差検出法による焦点検出演算を行う。そして、デフォーカス量及びデフォーカス方向を求め、これに基づいて、レンズ制御回路201及びAF駆動回路202を介して撮影レンズ200内のフォーカスレンズを合焦位置まで駆動する。
ペンタダハミラー22は、メインミラー6により反射された撮影光束を正立正像に変換反射する。撮影者はファインダ光学系を介してファインダ接眼窓18から被写体像を観察することができる。ペンタダハミラー22は、撮影光束の一部を測光センサ23へも導く。測光回路106は、測光センサ23の出力を得て、観察面上の各エリアの輝度信号に変換し、MPU100に出力する。MPU100は、輝度信号に基づいて露出値を算出する。
シャッタユニット(機械フォーカルプレーンシャッタ)32は、撮影者がファインダにより被写体像を観察している時には、シャッタ先幕が遮光位置にあると共に、シャッタ後幕が露光位置にある。次いで、撮影時には、シャッタ先幕が遮光位置から露光位置へ移動する露光走行を行って被写体からの光を通過させ、撮像素子33で撮像を行う。所望のシャッタ秒時の経過後、シャッタ後幕が露光位置から遮光位置へ移動する遮光走行を行って撮影を完了する。機械フォーカルプレーンシャッタ32は、MPU100の指令を受けたシャッタ駆動回路103により制御される。
撮像ユニット400は、光学ローパスフィルタ410、圧電部材である圧電素子430、撮像素子33が後述する他の部品と共にユニット化されたものである。撮像素子33は、被写体の光学像を電気信号に変換するものであり、本実施の形態ではCMOSセンサが用いられるが、その他にもCCD型、CMOS型及びCID型等様々な形態があり、いずれの形態の撮像デバイスを採用してもよい。撮像素子33の前方に配置された光学ローパスフィルタ410は、水晶からなる1枚の複屈折板であり、その形状は矩形状である。圧電素子430は、単板の圧電素子(ピエゾ素子)であり、MPU100の指示を受けた圧電素子駆動回路111により加振され、その振動を光学ローパスフィルタ410に伝えるように構成されている。
クランプ/CDS(相関二重サンプリング)回路34は、A/D変換する前の基本的なアナログ処理を行うものであり、クランプレベルを変更することも可能である。AGC(自動利得調整装置)35は、A/D変換する前の基本的なアナログ処理を行うものであり、AGC基本レベルを変更することも可能である。A/D変換器36は、撮像素子33のアナログ出力信号をデジタル信号に変換する。
映像信号処理回路104は、デジタル化された画像データに対してガンマ/ニー処理、フィルタ処理、モニタ表示用の情報合成処理等、ハードウエアによる画像処理全般を実行する。この映像信号処理回路104からのモニタ表示用の画像データは、カラー液晶駆動回路112を介してカラー液晶モニタ19に表示される。また、映像信号処理回路104は、MPU100の指示に従って、メモリコントローラ38を通じてバッファメモリ37に画像データを保存することもできる。さらに、映像信号処理回路104は、JPEG等の画像データ圧縮処理を行うこともできる。連写撮影等、連続して撮影が行われる場合は、一旦バッファメモリ37に画像データを格納し、メモリコントローラ38を通して未処理の画像データを順次読み出すこともできる。これにより、映像信号処理回路104は、A/D変換器36から入力されてくる画像データの速度に関わらず、画像処理や圧縮処理を順次行うことができる。
メモリコントローラ38は、外部インタフェース40から入力される画像データをメモリ39に記憶し、メモリ39に記憶されている画像データを外部インタフェース40から出力する機能を有する。なお、外部インタフェース40は、後述する図2におけるビデオ信号出力用ジャック16及びUSB出力用コネクタ17が相当する。メモリ39としては、カメラ本体1に着脱可能なフラッシュメモリ等が用いられる。
スイッチセンサ回路105は、各スイッチの操作状態に応じて入力信号をMPU100に送信する。スイッチSW1(7a)は、レリーズボタン7(図2参照)の第1ストローク(半押し)によりONする。スイッチSW2(7b)は、レリーズボタン7の第2ストローク(全押し)によりONする。スイッチSW2(7b)がONされると、撮影開始の指示がMPU100に送信される。また、スイッチセンサ回路105には、メイン操作ダイヤル8、サブ操作ダイヤル20、撮影モード設定ダイヤル14、メインスイッチ43、クリーニング指示操作部材44が接続されている。
LCD駆動回路107は、MPU100の指示に従って、LCD表示パネル9やファインダ内液晶表示装置41を駆動する。
バッテリチェック回路108は、MPU100の指示に従って、バッテリチェックを行い、その検出結果をMPU100に送信する。電源42は、カメラの各要素に対して電源を供給する。
時刻計測回路109は、メインスイッチ43がOFFされて次にONされるまでの時間や日付を計測し、MPU100からの指示に従って、計測結果をMPU100に送信する。
図2及び図3は、本実施の形態に係る撮像装置としてのカメラの外観を示す図である。具体的には、図2は、カメラを前面側から見た斜視図であって、撮影レンズユニット200aを外した状態を示している。図3は、カメラを撮影者側(背面側)から見た斜視図である。
図2において、1はカメラ本体であり、撮影時に撮影者がカメラを安定して握り易いように前方に突出したグリップ部1aが設けられている。2はマウント部であり、着脱可能な撮影レンズユニット200a(図1参照)をカメラ本体1に固定させる。マウント接点21は、カメラ本体1と撮影レンズユニット200aとの間で制御信号、状態信号、データ信号などをやり取りすると共に、撮影レンズユニット200a側に電力を供給する機能を有する。また、マウント接点21は電気通信のみならず、光通信、音声通信などを可能なように構成してもよい。
4は撮影レンズユニット200aを取り外す際に押し込むレンズロック解除釦である。5はカメラ筐体内に配置されたミラーボックスで、撮影レンズ200を通過した撮影光束はここへ導かれる。ミラーボックス5の内部には、メインミラー6が配設されている。メインミラー6は、撮影光束をペンタダハミラー22(図1参照)の方向へ導くために撮影光軸に対して45°の角度に保持される状態と、撮像素子33(図1参照)の方向へ導くために撮影光束から退避した位置に保持される状態とを取り得る。
カメラ上部のグリップ側には、撮影開始の起動スイッチとしてのレリーズボタン7と、撮影時の動作モードに応じてシャッタスピードやレンズ絞り値を設定するためのメイン操作ダイヤル8と、撮影系の動作モード設定ボタン10が配置されている。これら操作部材の操作結果の一部は、LCD表示パネル9に表示される。
レリーズボタン7は、第1ストローク(半押し)でスイッチSW1(7a)がONし、第2ストローク(全押し)でスイッチSW2(7b)がONする構成となっている。
また、動作モード設定ボタン10は、レリーズボタン7の1回の押込みで連写になるか1コマのみの撮影となるかの設定や、セルフ撮影モードの設定などを行うものであり、LCD表示パネル9にその設定状況が表示されるようになっている。
カメラ上部中央には、カメラ本体1に対してポップアップするストロボユニット11とフラッシュ取付け用のシュー溝12とフラッシュ接点13とが配置され、図2におけるカメラ上部右寄りには撮影モード設定ダイヤル14が配置されている。
グリップ側とは反対側の側面には、開閉可能な外部端子蓋15が設けられていて、この外部端子蓋15を開けた内部には、外部インタフェースとしてビデオ信号出力用ジャック16とUSB出力用コネクタ17とが納められている。
図3において、カメラ背面の上方には、ファインダ接眼窓18が設けられている。また、カメラ背面の中央付近には、画像表示可能なカラー液晶モニタ19が設けられている。
カラー液晶モニタ19の横には、サブ操作ダイヤル20が配置されている。サブ操作ダイヤル20は、メイン操作ダイヤル8の機能の補助的役割を担うものである。例えばカメラのAEモードでは、自動露出装置により算出された適正露出値に対する露出補正量を設定するために使用される。シャッタスピード及びレンズ絞り値の各々を撮影者の意志により設定するマニュアルモードでは、メイン操作ダイヤル8でシャッタスピードを設定し、サブ操作ダイヤル20でレンズ絞り値を設定するように使用される。また、このサブ操作ダイヤル20は、カラー液晶モニタ19に表示される撮影済み画像の表示を選択するためにも使用される。
また、カメラ背面には、カメラの動作を起動若しくは停止するためのメインスイッチ43と、手作業クリーニングモードを動作させるための手作業クリーニング指示操作部材44とが配置されている。手作業クリーニング指示操作部材44は、詳しくは後述するが、光学ローパスフィルタ410の表面に付着した塵埃等の異物を手動で除去するための動作を指示するためのものである。
次に、本実施の形態における光学ローパスフィルタ410を加振する異物搬送構造について説明する。
図4は、本実施の形態における撮像ユニット400の周り保持構造を示すためのカメラ内部の構成を概略的に示す分解斜視図である。図5は、図4における撮像ユニット400の構成を概略的に示す分解斜視図である。
図4において、カメラ本体1の骨格となる本体シャーシ300の被写体側には、被写体側から順に、ミラーボックス5、シャッタユニット32が配設される。また、本体シャーシ300の撮影者側には、撮像ユニット400が配設される。撮像ユニット400は、撮影レンズユニット200aが取り付けられる基準となるマウント部2の取付面に撮像素子33の撮像面が所定の距離を空けて且つ平行になるように調整されて固定される。
図5において、光学ローパスフィルタ410は、水晶からなる1枚の複屈折板であり、その形状は矩形状である。この光学ローパスフィルタ410が本発明でいう光軸上に配設された光学部材に相当するものである。光学ローパスフィルタ410は、撮影有効領域の両側に圧電素子430a(第1の加振手段)及び430b(第2の加振手段)を配置し、撮影光軸中心に対して直交する方向(カメラ左右方向)は対称である。このようにした光学ローパスフィルタ410の表面には、光学的なコーティングが施されている。
圧電素子430a及び430bは、単板の矩形の短冊形状を呈し、光学ローパスフィルタ410の周縁部において、圧電素子430a及び430bの長辺が光学ローパスフィルタ410の短辺(側辺)に平行になるように配置されて接着保持される(貼着される)。この圧電素子430a及び430bが本発明でいう光学部材を振動させる矩形状の振動手段に相当するものである。すなわち、圧電素子430a及び430bは、光学ローパスフィルタ410のカメラ左右方向の辺の付近に平行に貼着され、辺に平行な複数の節部を有するように光学ローパスフィルタ410を波状に振動させる。
420は樹脂製又は金属製の光学ローパスフィルタ保持部材であり、光学ローパスフィルタ410を保持し、撮像素子保持部材510にビス固定される。
圧電素子430a及び430bは、電圧の印加により光軸と直交する方向に主として伸縮振動し、光学ローパスフィルタ410を振動させる。
440は付勢部材であり、光学ローパスフィルタ410及び遮光マスクを撮像素子33の方向に付勢し、光学ローパスフィルタ保持部材420に係止される。付勢部材440の詳細な構成については後述する。付勢部材440はカメラ本体1のグランドに接地され、光学ローパスフィルタ410の表面(光学的なコーティングが施された面)もカメラ本体1のグランドに接地される。これにより、光学ローパスフィルタ410の表面への塵埃等の静電気的な付着を抑制することができる。
450は断面が円形の枠状の弾性部材であり、光学ローパスフィルタ410と光学ローパスフィルタ保持部材420とで挟まれて密着保持される。この密着力は、付勢部材440の撮像素子33方向への付勢力により決定される。なお、弾性部材450はゴムでもよいし、弾性体であれば、ポロンやプラスチック等の高分子重合体を用いてもよい。
460は位相板(偏光解消板)と赤外カットフィルタと光学ローパスフィルタ410に対して屈折方向が90°異なる複屈折板とを貼り合わせた光学部材であり、光学ローパスフィルタ保持部材420に接着固定される。
510は板状の撮像素子保持部材であり、矩形の開口部を有し、その開口部に撮像素子33を露出させるように撮像素子33が固着する。撮像素子保持部材510の周囲には、ミラーボックス5に3ヵ所でビス固定するための腕部が設けられている。
520は撮像素子33に撮影光路外からの余計な光が入射することを防ぐためのマスクであり、光学ローパスフィルタ保持部材420と撮像素子33とで挟まれて密着保持される。
530は左右一対の板バネ状の撮像素子付勢部材であり、撮像素子保持部材510にビス固定され、撮像素子33を撮像素子保持部材510に押し付ける。
以上の構成をとることにより、光学ローパスフィルタ410は、付勢部材440と弾性部材450とで挟み込まれて振動自在に支持される。
図6は、図5における圧電素子430a及び430bの詳細を説明するための図である。
図6において、圧電素子430のB面は、光学ローパスフィルタ410に定在波振動を励起するための+相と、G相とに分割されている。また、圧電素子430のC面は、不図示の導電材等により電気的に接続されてB面のG相と同電位に保たれている。B面には不図示の圧電素子用フレキシブルプリント基板が接着等により固着され、+相、G相にそれぞれ所定の電圧を独立して印加できるようになっている。C面が光学ローパスフィルタ410に接着等により固着され、圧電素子430と光学ローパスフィルタ410とが一体的に運動するように構成されている。
次に、図7〜図10を用いて、手作業クリーニングモードを動作させる際の処理について説明する。ここでいう手作業クリーニングモードとは、光学ローパスフィルタ410の表面に付着した塵埃等の異物を、溶剤等を使用して手作業によって拭き取るためのモードである。
図7は、本実施の形態において手作業クリーニングモードを動作させる際の処理を示すフローチャートである。
図7において、まず、ステップS701では、手作業クリーニング指示操作部材44が操作されるとカメラの状態が手作業クリーニングモードへ移行する。このとき、電力供給回路110は、手作業クリーニングモードに必要な電力をカメラの各部へ供給する。また、これに並行して電源42の電池残量を検出して、その結果をMPU100へ送信する。
続くステップS702では、シャッタ先幕を走行させる。これは光学ローパスフィルタ410を加振した後にシャッタを走行させると、光学ローパスフィルタ410上の異物が影響を受ける虞があるためである。ステップS702終了時点での光学ローパスフィルタ410上の異物の付着状況を図8に示す。図8では、異物が光学ローパスフィルタ410の全面に付着している。
続くステップS703では、第1の駆動を行う。具体的には、まず、MPU100が圧電素子駆動回路111に駆動信号を送る。圧電素子駆動回路111は、MPU100より駆動信号を受け取ると、光学ローパスフィルタ410の定在波振動を励起する周期電圧を生成し、圧電素子430a及び430bに印加する。圧電素子430a及び430bを用いて次数の1つ異なる2つの曲げ振動を励起することで、光学ローパスフィルタ410に搬送波を発生させる。これにより、光学ローパスフィルタ410上の異物は図8に示すX方向正の向きに搬送される。この異物の搬送動作の詳細については後述する。光学ローパスフィルタ410に生じる搬送波は、弾性部材450が配置されている位置では搬送波の振幅が下がるため、搬送能力が落ちる。このため、搬送された異物は弾性部材450が配置された位置X’(図8参照)までくると搬送されにくくなり、位置X’付近に溜まる。
続くステップS704では、第1の駆動と同時にタイマを作動させて、第1の駆動の駆動時間tが所定の時間t1を超えたか否かを判別し、駆動時間tが所定の時間t1を超えるまで第1の駆動を行う。ここでいう所定の時間t1とは光学ローパスフィルタ410の左端に付着していた異物が、位置X’に移動するのに要する時間である。所定の時間t1の求め方については後述する。ステップS704終了時点での光学ローパスフィルタ410上の異物の付着状況を図9に示す。図9では、異物が光学ローパスフィルタ410の端部付近にある。この場合、ミラーボックスやシャッタの影響を受けて、手作業でクリーニングを行うことが困難である。
続くステップS705では、第2の駆動を行う。これは第1の駆動で位置X’に集めた異物を、光学ローパスフィルタ410の中央付近に移動させ、手作業でのクリーニングを行いやすくすることが目的である。第2の駆動では圧電素子430a及び430bに印加する電圧の周期及び振幅を上げると共に、位相の差を変化させることで、第1の駆動より搬送力を上げた状態で、第1の駆動とは反対向きに搬送を行う。第2の駆動の詳細についても後述する。
続くステップS706では、第2の駆動と同時にタイマを作動させて、第2の駆動の駆動時間tが所定の時間t2を超えたか否かを判別し、駆動時間tが所定の時間t2を超えるまで第2の駆動を行う。ここでいう所定の時間t2とは位置X’にある異物が光学ローパスフィルタ410の中央付近に移動するのに要する時間である。ステップS706終了時点での光学ローパスフィルタ410上の異物の付着状況を図10に示す。
最後に、ステップS707において、ミラーアップを行い、本処理を終了する。
図7の処理によれば、手作業クリーニングモードにおいて、異物を光学ローパスフィルタ410の中央付近に集めることができる。このため、中央部を縦方向に拭くだけで容易に異物を除去することができ、もって光学ローパスフィルタ410の手作業によるクリーニングを容易にすることができる。
なお、本実施の形態ではクリーニング指示操作部材44を設けたが、クリーニングモードへの移行を指示するための操作部材はこれに限定されるものではない。例えば、クリーニングモードへの移行を指示するための操作部材は、機械的なボタンに限らず、カラー液晶モニタ19に表示されたメニューから、カーソルキーや指示ボタン等を用いて指示するものであってもよい。
次に、図11〜図19を用いて、異物の搬送動作について説明をする。
本実施の形態では、光学ローパスフィルタ410に接着された圧電素子430a及び430bを複数回(少なくとも2回)に亘って駆動して、次数の1つ異なる二つの曲げ振動を、時間位相をずらして励起することによって異物の搬送を行う。なお、搬送動作の原理の説明に目的を絞るため、必要最小限の構成である、光学ローパスフィルタ410、圧電素子430a及び430bの構成で説明を行う。
図11は、本実施の形態における光学ローパスフィルタ410に励起される2つの振動モードの周波数と振幅の関係を示すグラフである。
図11に示すように、f(m)で示される周波数でm次の振動モードが励起され、f(m+1)で示される周波数でm+1次の振動モードが励起される。ここで、圧電素子430a及び430bに印加する電圧の周波数fをf(m)<f<f(m+1)に設定すると、m次のモードとm+1次のモード両方の共振を利用することができる。fをf<f(m)に設定すると、m次の共振を利用することはできるが、f(m+1)次の共振点から離れるため、m+1次モードの振幅を大きくすることは困難となる。また、f(m+1)<fとした場合は、m+1次のモードのみ振幅が大きくなってしまう。本実施の形態では、両方の振動モードを利用するため、周波数fはf(m)<f<f(m+1)となる範囲で設定する。
図12(A)及び図12(B)は、mが奇数の場合のm次、及びm+1次の振動モード形状、並びに圧電素子430a及び430bに印加される電圧を示す図であり、図13(A)及び図13(B)は、mが偶数の場合のm次、及びm+1次の振動モード形状、並びに圧電素子430a及び430bに印加される電圧を示す図である。
図12(A)及び図12(B)では、mが奇数の時の例としてm=9の場合を示す。図12(A)に示すように、それぞれのモードで圧電素子430の長手方向に平行な向きに(同一方向に)複数の節が等間隔で現れる。図12(B)には、それぞれのモードで圧電素子430a及び430bに印加する交流電圧の振幅と時間的位相が、実数成分と虚数成分で表されている。(1)はm次の振動モードの、(2)はm+1次の振動モードの、(3)はm+1次の振動モードを90°時間位相をずらしたものの、交流電圧を示している。なお、ここでは、ある周波数の交流電圧に対するm次振動モードとm+1次振動モードの振幅比をA:1として、2つのモードで同じ振幅を出すために、各モードの電圧をm次の振動モードの振幅で規格化している。光学ローパスフィルタ410にm次の振動モードと、時間位相が90°異なるm+1次の振動モードを同時に励起させるためには、(1)と(3)の交流電圧を足せばよい。すなわち(4)に示すような、交流電圧を印加すればよい。
同様にして、図13にはmが偶数の時の例としてm=10の場合において、振動モード形状と圧電素子430a及び430bに印加される交流電圧とを示す。
なお、本実施の形態では、m次とm+1次の振動モードの位相差を90°としたが、交流電圧の振幅、位相、及び周波数を制御することで2つのモードの重ね合わせ方は任意に制御することが可能である。
次に、上記の制御方法によって、2つの振動モードを同時に励起した場合の光学ローパスフィルタ410の挙動について説明する。
図14に示すように、光学ローパスフィルタ410に対して、9次と10次の振動モードを同時に励起する場合を考える。図中A,Bで示されているのが、9次、10次の振動モード形状である。光学ローパスフィルタ410の左端から右端までを0〜360の数値で表している。また図中に示すように、光学ローパスフィルタ410の長辺方向をX,短辺方向をY、面の法線方向をZとする。
上記の2つのモードを時間位相を90°ずらして、同時に励起した場合の光学ローパスフィルタ410の各時間位相ごとの挙動を図15〜図18に示す。図15〜図18における各時間位相において、図中Cは9次の振動モード波形、Dは10次の振動モード波形を表す。また、Eが2つのモードが合成された波形、つまり実際の光学ローパスフィルタ410の振幅を表している。Fは光学ローパスフィルタ410のZ方向の加速度である。
光学ローパスフィルタ410上に付着した異物は、光学ローパスフィルタ410が変形することによって、法線方向の力を受けて移動して行く。つまり、Z方向の加速度を示す曲線Fが正の値をとるとき、異物は面外に突き上げられ、この時間位相における光学ローパスフィルタ410の変位を示す曲線Eの法線方向の力を受ける。図中rn(n=1,2,3,…)で示した区間では、異物は右方向(X方向の正の向き)に力を受ける。図中ln(n=1,2,3,…)で示した区間では、異物は左方向(X方向負の向き)に力を受ける。結果として、Xn(n=1,2,3,…)で示す場所に異物は移動する。本実施の形態では、このXn(n=1,2,3,…)が時間位相が進むにつれてX方向正の向きに移動して行くことによって、異物がX方向正の向きに移動して行く。
また、上述した本実施の形態では2つのモードの時間位相差を90°としたが、これに限らず、0°より大きく180°より小さく設定してもよい。この場合でも上記Xnにあたる箇所がX方向正の向きに移動して行くため、異物をX方向正の向きに搬送することが可能である。また2つのモードの時間位相差が−180°より大きく0°より小さい場合は、上記Xnに相当する箇所がX方向負の向きに移動して行くため、上記の例とは反対方向に異物を搬送することが可能である。
一方、異物の搬送力は光学ローパスフィルタ410の加速度によって決定される。光学ローパスフィルタの加速度aは、駆動周波数をf、振幅をP、駆動電圧をV、k1、k2を比例定数として、以下の式で表される。
a=k1P(2πf)2=k2V(2πf)2
また、異物が光学ローパスフィルタ410から受ける力は、上式の加速度aに比例する。よって、異物の搬送力は光学ローパスフィルタ410の振幅及び駆動周波数の二乗に比例することが分かる。本実施の形態において、弾性部材450が光学ローパスフィルタ410に接している箇所に異物が集積するのは、弾性部材450によって振動が減衰してしまい、搬送力が下がるためである。
また、上式より、圧電素子430に印加する交流電圧Vと周波数fを上げることで、搬送力が上がることが分かる。
異物が移動する速度は、駆動する周波数、2つのモードの位相差に依存する。このため、ある駆動条件における異物の移動速度は、予め求めておくことが可能である。つまり図19に示すように、光学ローパスフィルタ410の左端から右端までの距離をLとして、実験的に求めた速度、V1,V2より駆動時間t1,t2を決定しておくことが可能である。
以上詳述したように、本実施の形態では、光学ローパスフィルタ410の中央付近縦1列に異物が集積されるので、中央部を縦に拭くだけで、容易に異物を清掃することができる。また、光学ローパスフィルタ410の端部に付着していた異物も、中央付近に集まってくるため、確実に異物を取り除くことが可能である。
次に、図20を用いて、手作業クリーニングモードを動作させる際の処理の変形例について説明する。
図20は、本実施の形態において手作業クリーニングモードを動作させる際の処理の変形例を示すフローチャートである。
図20において、まず、ステップS2001では、手作業クリーニング指示操作部材44が操作されるとカメラの状態が手作業クリーニングモードへ移行する。このとき、電力供給回路110は、手作業クリーニングモードに必要な電力をカメラの各部へ供給する。また、これに並行して電源42の電池残量を検出して、その結果をMPU100へ送信する。
続くステップS2002では、図7におけるステップS702と同様に、シャッタ先幕を走行させる。
続くステップS2003では、ミラーアップを行う。これにより、撮像素子33に光が取り込まれるようになる。
続くステップS2004では、図7におけるステップS703と同様に、第1の駆動を行う。
続くステップS2005では、図7におけるステップS704と同様に、第1の駆動と同時にタイマを作動させて、第1の駆動の駆動時間tが所定の時間t1を超えたか否かを判別し、駆動時間tが所定の時間t1を超えるまで第1の駆動を行う。
続くステップS2006では、図7におけるステップS705と同様に、第2の駆動を行う。
続くステップS2007では、撮像素子33等を用いて画像(撮影画像)を取得する。取得された画像はMPU100に送られる。
続くステップS2008では、MPU100は、取得された画像に基づいて、異物が所定の範囲に存在するか否かを判別する。ここでいう所定の範囲とは光学ローパスフィルタ410の中央付近である。そして、異物が所定の範囲に移動するまで、ステップS2006及びステップS2007の処理を繰り返す。
ステップS2008の判別の結果、異物が所定の範囲に存在するときは(ステップS2008でYES)、本処理を終了する。
図20の処理によれば、撮像素子33等により取得された画像に基づいて第2の駆動を制御するので、異物を確実に光学ローパスフィルタ410の中央付近に集めることができ、上述した図7の処理と同様の効果を奏することができる。
次に、本発明の第2の実施の形態に係る撮像装置について説明する。
本実施の形態は、その構成、作用が第1の実施の形態と基本的に同じであるので、重複した構成、作用については説明を省略し、以下に異なる構成、作用についての説明を行う。
本実施の形態に係る撮像装置における光学ローパスフィルタ410には、図22に示すように、圧電素子430a及び430bの他、光学ローパスフィルタ410のカメラ上下方向の辺の付近に平行に圧電素子430c及び430dが貼着されている。
次に、図21〜図26を用いて、手作業クリーニングモードを動作させる際の処理について説明する。
図21は、本実施の形態において手作業クリーニングモードを動作させる際の処理を示すフローチャートである。
図21において、まず、ステップS2101では、手作業クリーニング指示操作部材44が操作されるとカメラの状態が手作業クリーニングモードへ移行する。このとき、電力供給回路110は、手作業クリーニングモードに必要な電力をカメラの各部へ供給する。また、これに並行して電源42の電池残量を検出して、その結果をMPU100へ送信する。
続くステップS2102では、シャッタ先幕を走行させる。これは光学ローパスフィルタ410を加振した後にシャッタを走行させると、光学ローパスフィルタ410上の異物が影響を受ける虞があるためである。ステップS2102終了時点での光学ローパスフィルタ410上の異物の付着状況を図22に示す。図22では、異物が光学ローパスフィルタ410の全面に付着している。
続くステップS2103では、第1の駆動を行う。具体的には、まず、MPU100が圧電素子駆動回路111に駆動信号を送る。圧電素子駆動回路111は、MPU100より駆動信号を受け取ると、光学ローパスフィルタ410の定在波振動を励起する周期電圧を生成し、圧電素子430a及び430bに印加する。圧電素子430a及び430bに印加される交流電圧の位相をずらすことで、光学ローパスフィルタ410に搬送波を発生させる。これにより、光学ローパスフィルタ410上の異物は図22に示すX方向正の向きに搬送される。光学ローパスフィルタ410に生じる搬送波は、弾性部材450が配置されている位置では搬送波の振幅が下がるため、搬送能力が落ちる。このため、搬送された異物は弾性部材450が配置された位置X’(図22参照)までくると搬送されにくくなり、位置X’付近に溜まる。
続くステップS2104では、第1の駆動と同時にタイマを作動させて、第1の駆動の駆動時間tが所定の時間t1を越えたか否かを判別し、駆動時間tが所定の時間t1を超えるまで第1の駆動を行う。ここでいう所定の時間t1とは光学ローパスフィルタ410の左端に付着していた異物が、位置X’に移動するのに要する時間である。ステップS2104終了時点での光学ローパスフィルタ410上の異物の付着状況を図23に示す。図23では、異物が光学ローパスフィルタ410の端部付近にある。この場合、ミラーボックスやシャッタの影響を受けて、手作業でクリーニングを行うことが困難である。
続くステップS2105では、第2の駆動を行う。これは第1の駆動で位置X’に集めた異物を、光学ローパスフィルタ410の中央付近に移動させることが目的である。第2の駆動では圧電素子430a及び430bに印加する電圧の周期及び振幅を上げると共に、位相の差を変化させることで、第1の駆動より搬送力を上げた状態で、第1の駆動とは反対向きに搬送を行う。
続くステップS2106では、第2の駆動と同時にタイマを作動させて、第2の駆動の駆動時間tが所定の時間t2を超えたか否かを判別し、駆動時間tが所定の時間t2を超えるまで第2の駆動を行う。ここでいう所定の時間t2とは位置X’にある異物が光学ローパスフィルタ410の中央付近に移動するのに要する時間である。ステップS2106終了時点での光学ローパスフィルタ410上の異物の付着状況を図24に示す。
続くステップS2107では、第3の駆動を行う。具体的には、圧電素子430c及び430dに位相をずらした交流電圧を印加して、図24に示すY方向正の向きに異物を搬送する。
続くステップS2108では、第3の駆動と同時にタイマを作動させて、第3の駆動の駆動時間tが所定の時間t3を超えたか否かを判別し、駆動時間tが所定の時間t3を超えるまで第3の駆動を行う。ここでいう所定の時間t3とは光学ローパスフィルタ410の下端にある異物が、位置Y’に移動するのに要する時間である。ステップS2108終了時点での光学ローパスフィルタ410上の異物の付着状況を図25に示す。図25では、異物が弾性部材450上の位置Y’に集積している。
続くステップS2109では、第4の駆動を行う。具体的には、圧電素子430c及び430dにステップS2107より周波数と電圧とを上げて、位相を変化させた交流電圧を印加して、図25に示すY方向負の向きに異物を搬送する。
続くステップS2110では、第4の駆動と同時にタイマを作動させて、第4の駆動の駆動時間tが所定の時間t4を超えたか否かを判別し、駆動時間tが所定の時間t4を超えるまで第4の駆動を行う。ここでいう所定の時間t4とは光学ローパスフィルタ410の上端、位置Y’にある異物が、光学ローパスフィルタ410の中央付近に移動するのに要する時間である。ステップS2110終了時点での光学ローパスフィルタ410上の異物の付着状況を図26に示す。
続くステップS2111では、ミラーアップを行い、本処理を終了する。
図21の処理によれば、手作業クリーニングモードにおいて、異物を光学ローパスフィルタ410の中央付近一点に集めることができる。このため、中央部を拭くだけで容易に異物を除去することができ、もって光学ローパスフィルタ410の手作業によるクリーニングを容易にすることができる。
なお、図21の処理では、異物の搬送をX方向、Y方向の順に行ったが、この順番に限定されるものではない。また、X方向の搬送波とY方向の搬送波とを同時に励起して、異物を斜めに搬送するようにしてもよい。また、上述した図20の処理と同様に、撮像素子33等により取得された画像に基づいて異物の位置を算出し、搬送波駆動の制御を行うようにしてもよい。
なお、本発明でいう光学部材は光学ローパスフィルタ410に限定されるものではない。上述した各実施の形態では水晶複屈折板に複数の定在波振動を励起する構成としたが、複屈折板の材質は水晶ではなくニオブ酸リチウムを用いてもよい。また、複屈折板と位相板と赤外吸収フィルタとの貼り合わせによって構成される光学ローパスフィルタや赤外吸収フィルタ単体に定在波振動を励起する構成にしてもよい。また、複屈折板の前に配置したガラス板単体に定在波振動を励起する構成にしてもよい。