JP5094291B2 - アルマイト処理アルミニウム系金属材料用の表面処理剤 - Google Patents

アルマイト処理アルミニウム系金属材料用の表面処理剤 Download PDF

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Description

本発明は、アルマイト処理アルミニウム系金属材料用の表面処理剤及び表面処理方法に関する。
さらに詳しくは、本発明は、アルマイト処理された船舶推進用エンジン及び当該エンジンの周辺機器(以下、「船舶推進用エンジン等」という。)部材用アルミニウム系金属材料の表面に、従来使用されていた6価クロムを含むことなしに、高い一次防錆性と塗装密着性を兼備した表面処理皮膜を形成し得る表面処理剤及び表面処理方法に関する。
船舶推進用エンジンは、船舶のトランサムボードに取付けられる推進機関であり、漁業分野、プレジャー分野、搭載艇分野などにおいて幅広く用いられている。この船舶推進用エンジンにおいては、ハウジングなどに、一般にアルミニウムダイキャスト部材などアルミニウム系金属材料が使用されている。
一方、アルミニウムは軽量性、塑性加工性、耐食性に優れ、かつ電気・熱伝導性が良好であるなど、金属として優れた特性を有している。また、このアルミニウムに銅、マグネシウム、亜鉛、珪素、リチウム、ニッケル、クロム、マンガン、鉄、ジルコニウムなどを加え合金化すれば、固溶体硬化、加工硬化、時効硬化などによって、常温並びに高温において機械的性質が著しく向上し、また耐食性、耐摩耗性、低熱膨張係数などの特性も付加されることが知られている。したがって、このような性質を有するアルミニウム又はアルミニウム合金は、生活に最も近い家庭用品や飲料用缶、家具、インテリアをはじめ、航空・宇宙、自動車、電気・電子製品、車両、船舶、土木・建築など、多くの分野において幅広く用いられている。
このようなアルミニウムやアルミニウム合金などのアルミニウム系金属材料の加工方法の1つとしてダイキャスト法が知られており、現在、各種成形品を製造するのに広く使用されている。
このダイキャスト法は、金属製金型内に溶湯を圧入プランジャーにより高速(20〜60m/秒程度)、高圧(30〜200MPa程度)で射出、充填し、急速に凝固させる鋳造方式であって、最小肉厚1mm程度の薄肉鋳物の製造が可能で、寸法精度や鋳肌がよく、かつ高い生産性を有するなどの長所を有している。
このようなダイキャスト法においては、特に流動性、金型内への充填性に優れ、かつ金型に溶着しないことが要求されることから、アルミニウム系金属材料として、Al−Si系を基本とする、Al−Si系合金、Al−Si−Mg系合金、Al−Si−Cu系合金、Al−Si−Cu−Mg系合金などが用いられる。
これらのアルミニウム合金からなるアルミニウム系ダイキャスト部材は非常に錆びやすく、しかも船舶推進用エンジン等は海水中で高温雰囲気で使用されるために、極めて高度の耐食性が要求される。
前記のダイキャスト法などで加工されたアルミニウム系金属材料の一次防錆処理や塗装下地処理としては、従来6価クロメートによる処理が多用されていた。しかしながら、近年6価クロメートを使用しない防錆処理剤や塗装下地処理剤が用いられるようになってきた。例えば、3価のクロムイオンと共に、キレート剤とコバルトイオンなどを含む処理剤(例えば特許文献1参照)、あるいは3価のクロムイオンに重金属イオンを添加してなる処理剤(例えば特許文献2参照)が開示されている。
しかしながら、これらの処理剤は、主成分が3価のクロムイオンであり、したがって皮膜を構成する主成分も3価のクロムを含む酸化クロムであって、対象素材は亜鉛メッキ材であり、高度の耐食性が要求される船舶推進用エンジン等部材用のアルミニウム系金属材料には適用しにくい。
これまで、船舶推進用エンジン等部材用に成形されたアルミニウム系ダイキャスト部材などアルミニウム系金属材料の表面に、6価クロムを含まずに高い耐食性(6価クロメート処理に匹敵する耐食性)皮膜を形成する表面処理方法は見出されていない。
また、アルミニウム系ダイキャスト部材をアルマイト処理(陽極酸化処理)すると、防錆性が付与できるが、船舶推進用エンジン等用途で使用するに十分な、高度の耐食性までは付与することができない。
特開2003−268562号公報 特開2003−313675号公報
本発明は、このような状況下で、アルマイト処理された船舶推進用エンジン等部材用アルミニウム系金属材料の表面に、6価クロムを含むことなしに、高い一次防錆性(裸耐食性)と塗装密着性(塗装下地性)を兼備した表面処理皮膜を形成し得る表面処理剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、アルマイト処理アルミニウム系金属材料の表面に、6価クロムを含むことなしに、高い一次防錆性と塗装密着性を兼備した表面処理皮膜を形成し得る表面処理剤について、鋭意研究を重ねた結果、アルマイト処理アルミニウム系金属材料に対して、特定の組成からなる表面処理剤を使用することにより、当該表面処理剤はアルマイト処理皮膜と相俟って、6価クロムを含む皮膜よりも更に優れた一次防錆性と塗装密着性を有する表面処理皮膜をアルミニウム系金属材料上に形成し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)アルマイト処理された船舶推進用エンジン等部材用アルミニウム系金属材料を表面処理するための表面処理剤であって、
(a)Zrのフッ素系化合物をZrイオンとして10〜2000質量ppm、
(b)3価Crイオンを1〜5000質量ppm、
(c)Alイオンを10〜5000質量ppm、
及び(d)ビグアニド化合物を1〜500質量ppm含み、
かつ(e)pHが2.5〜6の水性液であることを特徴とするアルマイト処理アルミニウム系金属材料用の表面処理剤;
(2)ウレタン変性エポキシ系防錆プライマーまたはエポキシ系カチオン電着塗料の下地処理剤である、上記(1)に記載の表面処理剤;
(3)上記(1)に記載の表面処理剤を用いて表面処理することを特徴とするアルマイト処理アルミニウム系金属材料の表面処理方法;
(4)上記(1)に記載の表面処理剤で表面処理されたアルマイト処理アルミニウム系金属材料に、ウレタン変性エポキシ系防錆プライマーまたはエポキシ系カチオン電着塗料を塗装することを特徴とするアルマイト処理アルミニウム系金属材料の塗装方法;
を提供するものである。
本発明によれば、アルマイト処理された船舶推進用エンジン等部材用アルミニウム系金属材料の表面に、ジルコニウム及び3価クロムを主体とする化成皮膜を施すことにより、従来使用されていた6価クロメートを用いなくとも、高い一次防錆性(裸耐食性)と塗装密着性(塗装下地性)を実現することができる。
本発明のアルマイト処理アルミニウム系金属材料の表面処理剤(以下、単に表面処理剤と称することがある。)は、船舶推進用エンジン等部材用に成形され、アルマイト処理されたアルミニウムダイキャスト部材に適用される。
ここで、船舶推進用エンジンとは、通常アウトボード・モーター(エンジン)を指し、船舶のトランサムボードに取付けられる推進機関である。このようにトランサムボードに取付ける構造となっているので、他の推進機関、船内外機及び船内機に比べて極めて簡単に脱着が可能である。特に小型の船舶推進用エンジンは、船舶推進用エンジン本体に燃料タンク、前後進切替レバー、スロットルグリップ及びステアリングバーなどが付設されており、それらを操作することで操船できるようになっている。
この船舶推進用エンジンは、基本的には、船舶推進用エンジン本体のみで、船舶の推進機関としての機能を備えている。すなわち、頭部に出力を出すパワーユニットを配し、バーチカルドライブシャフト及びベベルギヤを介してプロペラシャフトにつながるロワーユニットの2つの部分で構成されている。パワーユニット部分には、2サイクル又は4サイクルガソリンエンジンなどが縦置きに配設されている。
なお、エンジンは、現在2サイクル、または4サイクルガソリンエンジンが主流であるが、2サイクル筒内直接燃料噴射エンジンも増えてきており、また、ディーゼル船舶推進用エンジンや、灯油を燃料とするケロシン船舶推進用エンジンも用いられている。
このような船舶推進用エンジンには、ハウジングや周辺機器その他にアルミニウム系ダイキャスト部材などアルミニウム系金属材料が用いられている。
ダイキャスト法による鋳造加工においては、特に流動性、金型内への充填性に優れ、かつ金型に溶着しないことが要求されることから、アルミニウム系金属材料として、Al−Si系を基本とするアルミニウム合金が用いられる。このようなアルミニウム合金としては、例えばAl−Si系合金(ADC1)、Al−Si−Mg系合金(ADC3)、Al−Si−Cu系合金(ADC10、ADC10Z、ADC12、ADC12Z)、Al−Si−Cu−Mg系合金(ADC14)などがあり、本発明の表面処理剤は、いずれのアルミニウム合金からなるダイキャスト部材をアルマイト処理したものに対しても適用することができる。
本発明の表面処理剤の被処理材料としては、船舶推進用エンジン等部材用に成形されたアルミニウム系ダイキャスト部材を公知の方法でアルマイト処理(陽極酸化処理)したものが用いられる。
以下、本発明の表面処理剤について説明する。
本発明の表面処理剤においては、金属イオンとして、(a)Zrのフッ素系化合物由来のZrイオン、(b)3価Crイオン及び、(c)Alイオンが必須イオンとして含まれている。
当該表面処理剤における前記(a)Zrイオンの含有量は、防錆性、沈殿物生成の防止及び経済性のバランスなどの面から、10〜2000質量ppm、好ましくは20〜1500質量ppm、より好ましくは30〜1000質量ppmの範囲で選定される。
また、前記(b)3価Crイオンの含有量は、前記Zrイオンの場合と同様の理由から、1〜5000質量ppm、好ましくは5〜3000質量ppm、より好ましくは10〜2500質量ppmの範囲で選定される。
さらに、前記(c)Alイオンの含有量は、同じく前記Zrイオンの場合と同様の理由から、10〜5000質量ppm、好ましくは25〜3000質量ppm、より好ましくは40〜2000質量ppmの範囲で選定される。
また、他の金属イオンも添加することができる。防錆性をさらに向上させるために加えられるものであり、その効果及び経済性などの点から、該金属イオンとしては、Fe、Zn、Mg、Ca及びCoのイオンが好ましい。また、この金属イオンの含有量は、防錆性の向上効果、沈殿物生成の防止及び経済性の面などから、1〜5000質量ppm、好ましくは1〜3000質量ppm、より好ましくは10〜1000質量ppmの範囲で選定される。
当該表面処理剤は、さらに、必須成分として(d)ビグアニド化合物が含まれる。
ビグアニド化合物としては、o−トリルビグアニド、ビグアニド、ポリヘキサメチレンビグアニジン硫酸塩、グアニルチオ尿素、グアナミンなどを挙げることができる。
ビグアニド化合物は、防錆性の向上及び塗装密着性に寄与する化合物であり、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
当該表面処理剤における前記(d)ビグアニド化合物の含有量は、防錆性、塗装密着性の向上効果及び経済性のバランスなどの面から、1〜500質量ppm、好ましくは5〜400質量ppm、より好ましくは、10〜300質量ppmの範囲で選定される。
また、当該表面処理剤においては、(e)pHは、2.5〜6の範囲にあることを要する。このpHが2.5以上であれば、被処理アルミニウム系金属材料に対する過度の侵食を抑えることができ、一方6以下であれば表面処理剤A中に沈殿が生じるのを抑制することができる。該pHは、好ましくは3.0〜5.5、より好ましくは3.5〜5.0である。
当該表面処理剤は、前述の(a)〜(e)の条件を満たしていれば、その調製方法については特に制限はない。例えば各種の金属イオンを形成する金属イオン源化合物、ビグアニド化合物、pHを2.5〜6に調整するためのpH調整剤及び所望により各種添加剤を水系媒体に加え、均質に溶解することにより、前記の性状を有する表面処理剤を調製することができる。
Zrイオン源化合物であるZrのフッ素系化合物としては、例えばジルコニウムフッ化水素酸、フルオロジルコニウム酸のリチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム塩などが挙げられる。なお、これらZrのフッ素系化合物は、フッ素含有イオン源化合物でもあり、フッ素含有イオンは、アルミニウム系金属材料の表面に、密着性のよい化成皮膜を形成するのに寄与する。
また、3価Crイオン源化合物としては、例えば硫酸、硝酸、などの無機酸塩、酢酸、ギ酸などの有機酸塩などが挙げられる。さらに、6価Crイオンをホルムアルデヒド、亜リン酸、次亜硫酸ナトリウムなどで還元したものを使用することができる。
Alイオン源化合物としては、硝酸、硫酸などの無機酸塩、酢酸、ギ酸などの有機酸塩などが挙げられる。
pH調整剤としては、酸性側で例えば硝酸、硫酸、リン酸、塩酸などの無機酸、酢酸、ギ酸などの有機酸が挙げられる。アルカリ側へのpH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニアなどのアルカリ液が挙げられる。
当該表面処理剤には、所望により、本発明の目的が損なわれない範囲で、従来公知の各種添加剤、例えば防錆向上剤、皮膜形成促進剤、安定剤などを含有させることができる。
前記防錆向上剤としては、リン酸、亜リン酸(ホスホン酸)、次亜リン酸(ホスフィン酸)、フィチン酸、エチルホスホン酸、縮合リン酸及びこれらの塩、各種ホスホニウム塩及びその塩、アルキルリン酸エステル、リン酸アルカノールアミンなどのリン化合物;ポリアルキルシロキサンなどのケイ素化合物;ジメチルメルカプトチアジアゾール、トリメルカプトトリアジン、ジブチルアミノジメルカプトトリアジン、チオ尿素などのイオウ化合物;イミダゾール、ヒドラジン、アミン類、ヒドラジドなどの窒素化合物等が挙げられる。
皮膜形成促進剤としては、例えば亜硝酸ナトリウム、過酸化水素、ホウ酸、ホウフッ酸、臭化水素酸、金属のオキソ酸及びこれらの塩などが挙げられる。安定剤としては、例えば含窒素界面活性剤などの界面活性剤を挙げることができる。
本発明の表面処理剤による表面処理は、以下のようにして行うことができる。
まず、被処理アルマイト処理アルミニウム系金属材料の表面を、常法に従って脱脂処理したのち、水洗処理する。
次に、このようにして予め素地調整された被処理アルマイト処理アルミニウム系金属材料に対して、当該表面処理剤を用いて化成処理を施す。この化成処理方法については特に制限はなく、例えば被処理アルマイト処理アルミニウム系金属材料の表面に、当該表面処理剤をスプレーする方法、あるいは当該処理剤を収容した処理浴中へ、前記アルマイト処理被処理アルミニウム系金属材料を浸漬する方法などを用いることができる。
この化成処理時における当該表面処理剤の液温は、25〜65℃の範囲が好ましく、処理時間は5〜300秒間程度である。液温及び処理時間が上記範囲にあれば、所望の化成皮膜が良好に形成されると共に、経済的にも有利である。該液温は、より好ましくは30〜55℃であり、処理時間は、30〜200秒間が好ましい。
このようにしてZr及び3価Crを主体とする化成皮膜を形成したのち、必要に応じ、水洗処理および乾燥を施す。化成皮膜の皮膜量は、通常20〜200mg/m2程度である。
本発明の表面処理剤を用いれば、アルマイト処理された船舶推進用エンジン等部材用アルミニウム系金属材料の表面に、従来使用されていた6価クロムを含むことなしに、高い一次防錆性(裸耐食性)と塗装密着性(塗装下地性)を兼備した表面処理皮膜を形成することができる。
すなわち、本発明の表面処理剤で表面処理されたアルマイト処理アルミニウム系金属材料は、裸耐食性に優れているのでそのまま船舶推進用エンジン等部材として用いることができ、また、塗装下地性に優れているので塗装を施して船舶推進用エンジン等部材として用いることもできる。
本発明の表面処理剤で表面処理されたアルマイト処理アルミニウム系金属材料との塗装密着性に特に優れる塗料としては、ウレタン変性エポキシ系防錆プライマー、エポキシ系カチオン電着塗料が挙げられる。
これら塗料の塗装方法、焼付け方法は特に制限されず、通常の方法が採用できる。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例の表面処理で得られたアルマイト処理アルミニウムダイキャスト板(評価板)について、以下に示す方法に従って性能評価を行った。
(1)一次防錆性(裸耐食性)
評価板について、そのまま塩水噴霧試験(SST)を行い、1000時間後の発錆面積率を目視測定し、下記の判定基準で評価した。
5:発錆面積率2%以下
4:発錆面積率2%超5%以下
3:発錆面積率5%超10%以下
2:発錆面積率10%超20%以下
1:発錆面積率20%超
(2)塗装密着性(塗装下地性)
下記の方法により、評価板に塗装を行い、塗装板を作製した。
この塗装板にカッターナイフでクロスカットを入れて塩水噴霧試験(SST)を行い、4000時間後のカット部のふくれ幅を測定し、下記の判定基準で評価した。
5:ふくれ幅1mm以下
4:ふくれ幅1mm超2mm以下
3:ふくれ幅2mm超3mm以下
2:ふくれ幅3mm超4mm以下
1:ふくれ幅4mm超
<塗装板の作製>
各例の表面処理で得られた評価板に、次の2種類の塗装を行って2種類の塗装板を作製した。
a)ウレタン変性エポキシ系溶剤塗料(日本ペイント製ウレタン変性エポキシプライマー「O1000−660NCプライマー」)をスプレー塗装し、120℃で20分間保持して焼付け乾燥を行い、塗装膜厚が20μmの塗装板を作製した。
b)エポキシ系変性カチオン電着塗料(日本ペイント製カチオン電着塗料「LAGREED−1070」)を通電塗装し、195℃で25分間保持して焼付け乾燥を行い、塗装膜厚が20μmの塗装板を作製した。
実施例1
市販のアルミニウムダイキャスト板[日本テストパネル社製「ADC−12」]のアルマイト処理(陽極酸化処理)物(7×15cm)をアルカリクリーナー[日本ペイント社製「サーフクリーナー53NF」]にて、50℃で2分間脱脂処理したのち、水洗した。
次に、ジルコンフッ化アンモニウムに由来するZrイオン150質量ppm、3価のCrイオン180質量ppm、Alイオン225質量ppm及びビグアニド75質量ppmを含み、かつpH3.8の表面処理剤中に、前記脱脂処理したアルマイト処理アルミニウムダイキャスト板を45℃で2分間浸漬処理後、水洗、乾燥した。
この評価板の性能評価結果を第1表に示す。
実施例2〜12及び比較例1
第1表に示す処理剤を用い、実施例1と同様にして、市販のアルミニウムダイキャスト板アルマイト処理物の表面処理を行い、各表面処理を施したアルマイト処理アルミニウムダイキャスト板(評価板)を作製した。
各評価板の性能評価結果を、第1表に示す。
比較例1は、本発明の表面処理剤で表面処理をしないアルマイト処理アルミニウムダイキャスト板についての一次防錆性、塗装密着性を評価したものであるが、性能は不十分であった。
比較例2〜5
第1表に示す処理剤を用い、実施例1と同様にして、脱脂処理したアルマイト処理アルミニウムダイキャスト板に表面処理を施した。結果を第1表に示す。
比較例2は、脱脂処理したアルマイト処理アルミニウムダイキャスト板に、処理剤としてりん酸ジルコニウムを用いた表面処理を施した。
比較例3は、第1表に示す処理剤を用い、苛性ソーダでpHを6.5としたが、白濁沈殿を生じたため評価しなかった。
比較例4は、第1表に示す処理剤を用い、硝酸でpHを1.8とした。
比較例5は、第1表に示す処理剤を用いたが、白濁沈殿を生じたため評価しなかった。
Figure 0005094291
参考例1
実施例1と同様にして、脱脂処理したアルマイト処理アルミニウムダイキャスト板を得た。このアルマイト処理アルミニウムダイキャスト板に対し、6価クロメート処理剤[日本ペイント社製「アルサーフ1000」]を用いてクロム付着量が30mg/m2となるように、40℃にて30秒間表面処理を行い、表面処理したアルマイト処理アルミニウムダイキャスト板(評価板)を作製した。
この評価板の性能評価を行ったところ、一次防錆性は4であり、塗装密着性は4であった。
前記実施例で得られた表面処理したアルマイト処理アルミニウムダイキャスト板は、いずれも、この6価クロメート処理したアルマイト処理アルミニウムダイキャスト板に匹敵する性能を有していた。
本発明の表面処理剤によれば、アルマイト処理された船舶推進用エンジン等部材用アルミニウム系金属材料の表面に、従来使用されていた6価クロムを含むことなしに、高い一次防錆性(裸耐食性)と塗装密着性(塗装下地性)を兼備した表面処理皮膜を形成することができる。

Claims (4)

  1. アルマイト処理された船舶推進用エンジン及び当該エンジンの周辺機器部材用アルミニウム系金属材料を表面処理するための表面処理剤であって、
    (a)Zrのフッ素系化合物をZrイオンとして10〜2000質量ppm、
    (b)3価Crイオンを1〜5000質量ppm、
    (c)Alイオンを10〜5000質量ppm、
    及び(d)ビグアニド化合物を1〜500質量ppm含み、
    かつ(e)pHが2.5〜6の水性液であることを特徴とするアルマイト処理アルミニウム系金属材料用の表面処理剤。
  2. ウレタン変性エポキシ系防錆プライマーまたはエポキシ系カチオン電着塗料の下地処理剤である、請求項1に記載の表面処理剤。
  3. 請求項1に記載の表面処理剤を用いて表面処理することを特徴とするアルマイト処理アルミニウム系金属材料の表面処理方法。
  4. 請求項1に記載の表面処理剤で表面処理されたアルマイト処理アルミニウム系金属材料に、ウレタン変性エポキシ系防錆プライマーまたはエポキシ系カチオン電着塗料を塗装することを特徴とするアルマイト処理アルミニウム系金属材料の塗装方法。
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