JP5092742B2 - 放電表面処理方法及び被膜 - Google Patents

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Description

本発明は、金属粉末あるいは金属の化合物の粉末を成形した成形体、もしくは、該粉末の成形体を加熱処理した粉末成形体を電極として、加工液中或いは気中において電極と被加工物の間にパルス状の放電を発生させ、そのエネルギーにより、被加工物表面に電極材料あるいは電極材料が放電エネルギーにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理に関するものである。
二つの金属部材が摺動する面において、二つの部材を共に摩耗させないことは、耐久性や省エネルギーなどの観点から重要であり、この金属と金属の摺動部の境界潤滑領域における摩耗を抑制する方法として、従来、摺動部に反応膜を形成させるという方法が取られている。
この反応膜は、潤滑油中に添加されたリン、塩素などの活性元素が、摩擦発熱により化学反応し、硫化鉄、リン酸鉄、塩化鉄などせん断性の低い固体潤滑被膜であり、摩耗を抑制することができる。
これら、反応膜を形成できる物質としては、Fe(鉄)、Sn(錫)、Zn(亜鉛)、Cr(クロム)、Ni(ニッケル)などが挙げられる。
また、剥離しにくい被膜を形成できる表面処理方法としては、放電表面処理が近年確立されてきた。
この放電表面処理により、Zn被膜やCr被膜の形成を目的にしていないが、ZnやCrを含んだ電極を使用してセラミックスからなる高硬度被膜を形成させた例がいくつか報告されている。
例えば特開平7−70761号公報には、炭化しやすい金属の単体粉末または二種以上の混合粉末に、結合金属としてAl粉末を加えて所望の形状に圧縮成形した放電表面処理用電極を用い、石油や灯油などの放電によって分解され炭素を生成する加工液中で表面処理し、電極中の炭化しやすい金属と分解生成された炭素が反応してできた炭化物と電極材質とが混合した表面層を、母材であるAlまたはAl合金表面に形成させる技術が開示されている。
すなわち、特開平7−70761号公報においては、炭化しやすい金属を放電によって炭化させ、高硬度な炭化物からなる被膜の形成を目的とし、Al粉末は柔らかいという特徴を生かし、炭化しやすい金属の粉末を成形する際のバインダーとして用いられる。
被膜においてAlなどの軟らかい材質の占める割合が増加すると、被膜の強度は著しく低下することから、高硬度被膜の形成を目的とした特開平7−70761号公報では、電極に含まれるAl粉末の量を極力抑え、重量比で64wt%以下としている。
そして、このAl粉末と同じ作用を持つ物質としてZn粉末が挙げられている。
また、例えば国際公開WO2004/108990には、Cr3C2(炭化クロム)に炭化物を形成しないCo(コバルト)を40体積%以上混合した電極を用いることで、厚い金属被膜を形成させる技術が開示されている。
なお、この炭化物を形成しない材質として、Coの他に、Ni、Fe、Al、Cu、Znなどを挙げている。
特開平7−70761号公報 国際公開WO2004/108990
従来、反応膜を利用して摩擦係数や摩耗量を制御する使用環境下において、摺動部にZnやCrのリン化物や硫黄化物からなる反応膜を形成することが非常に重要であることから、添加剤としてZn やZn化合物等を潤滑油中に添加して反応膜を形成していたが、潤滑油中にZnを多く添加すると潤滑油としての作用を失うため、その添加量に制限があり、微量の添加量では摺動面全面を反応膜で十分に覆うことができず、摩擦係数の制御や摩耗量を抑制する効果としては十分ではなかった。
つまり、摺動部にCrやZnの被膜を形成できれば、潤滑油のPやSと反応し、摺動部のほぼ全面で反応膜となることから、部材の摩擦係数の制御と摩耗を抑制できるのだが、従来行われるZnやCrのメッキによる被膜は、小さな荷重で簡単に剥離してしまい、実用的ではなく、摺動部に反応膜を形成するためのZn被膜やCr被膜を適用することはできなかった。
なお、上述した特開平7−70761号公報に示される炭化しやすい金属が炭化した物質からなる高硬度被膜は、放電表面処理用電極中にZn粉末を混入する例が開示されているが、Zn粉末はバインダーとして混入し、その電極中の成分割合が少ないため、主成分である物質の影響で、反応膜を形成できない。
また、国際公開WO2004/108990には、厚い被膜を形成させるため、Cr3C2にCo粉末を40体積%以上混入させる場合について説明され、Coと同様の効果があるとしてZnが挙げられているが、Cr3C2にZnを混合する場合を示しているに過ぎず、Zn量が少なく反応膜を形成することや部材表面の硬度を制御することはできない。
本発明は、リンや硫黄を含む潤滑油中でリン化物や硫黄化物からなる反応膜となりうるZn、Sn、Cr、Ni被膜を形成することを目的とするものである。
また、それら被膜を摺動部に形成でき、かつ表面硬さの異なる被膜を形成することを目的とし、特に境界潤滑領域にある摺動部でも剥離することのない高い耐摩耗性と様々な摩擦係数を発揮できる被膜とその形成方法を提供するものである。
この発明に係る放電表面処理方法は、ZnまたはSnを含有する粉末を材料する電極と被加工物である第1部材との間にパルス状の放電を発生させ、放電エネルギーにより電極材料または放電エネルギーにより電極材料が反応した物質を第1部材表面に付着させる工程と、リンまたは硫黄成分を含有する潤滑油が存在する雰囲気中で、電極材料または放電エネルギーにより電極材料が反応した物質を表面に付着させた第1部材を他の第2部材と接触させ、かつ摺動させる工程と、摺動工程に伴う第1部材と第2部材の摩擦により、潤滑油成分であるリンまたは硫黄成分を含有する被膜を第1部材表面または第2部材表面に形成させる工程とから成る。

本発明によれば、剥離のしにくい、Zn、Sn、Cr、Ni被膜を形成することができ、それら被膜は、リンや硫黄を含む潤滑油中でリン化物や硫黄化物からなる反応膜となりうる。
本実施の形態における放電表面処理用電極製造のためのプロセスである。 平均粒径2μmのZn粉末で電極を製造したときの成形圧力とJIS K 7194に規定された四探針法による電極の抵抗の関係図である。 平均粒径2μmのZn粉末を成形した圧粉体電極における抵抗をそれぞれ変え、各抵抗の電極で放電表面処理を行った際の被膜表面のEDS(Energy-Dispersive X-ray Spectroscopy)によるZn量の関係である。 摺動試験後の被膜表面をTOF-SIMS 分析した図である。 0.02Ωの電極を用いてピーク電流5A、放電時間0.5μsでSCM上に形成されたZn被膜の断面写真と線分析結果を示す図である。 被加工物を硬さ300HV程度のS45Cとし、抵抗0.02ΩのZn電極を用いて被膜を形成したときの放電電流と放電時間の積と被膜表面硬さの関係を示す図である。 粒径2μmのZn粉末に対し、TiCの混合割合を変化させた電極で被膜を形成させた際の被膜硬度を示す図である。
実施の形態1.
まず、放電表面処理の原理について説明する。
金属または金属の合金の粉末を成形したもの、もしくは、成形した後、加熱処理したものを電極として用い、石油系の加工液で満たされた加工漕に設置した母材(被加工物)と所定間隙離間して配置し、電極を陰極、被加工物を陽極とし、両者が接触しないように主軸はサーボを取りつつ、電極と被加工物の間で放電を発生させる。ここで、石油系の加工液について説明したが、気中または水中でも放電を発生させることができる。
放電の熱により被加工物及び電極は溶融・気化され、気化により発生する爆風や静電気力によって、溶融した電極の一部(溶融粒子)を被加工物表面に輸送する。
そして、溶融した電極の一部が被加工物表面に到達すると、再凝固し被膜となる。被加工物表面を溶融させ、その上に被膜を堆積させるため、被加工物と被膜は拡散接合をし、被膜と被加工物が剥がれることがない。
次に、本実施の形態における放電表面処理用電極製造のためのプロセスを図1に示す。
潤滑油中のリンや硫黄と反応して、反応膜を形成する物質はZn、Sn、Cr、Ni等があり、これら被膜を形成するための電極を製造する。
本実施の形態では、Zn、Snの場合は平均粒径15μm以下、CrやNiの場合は4μm下の粉末のみを用いる。
Crの場合、市場に流通している平均粒径数十μmの粉末を、ボールミル装置などの粉砕機で平均粒径4μm以下に粉砕する。
なお、液体中で粉砕された場合、液体を蒸発させ、粉末を乾燥させる必要があるが、乾燥後の電極粉末は、粉末と粉末が凝集し、大きな塊を形成している。
そこで、この大きな塊をバラバラにするために、100μmから300μm程度のメッシュサイズの篩にかけ、凝集してできていた塊を分解する。
ZnやSn、Niの場合、市場で流通している上記粒径の粉末を購入して、粉砕せずに成形することも可能であるが、その場合も、その粉末は凝集しているので、篩にかける。
なお、篩のメッシュサイズは、後の工程でのプレスの成形性と、放電被膜処理中に電極と母材の間に脱落したときに放電の爆発力で粉砕できるサイズから決定されている。
なお、使用するZn、Sn粉末の平均粒径が他の金属よりも大きいのは、Zn、Snの融点は約400℃あり、他の金属は1300℃程度であることから、ZnやSn粉末は小さなエネルギーで溶融させることができるためである。
つまり、ZnやSnとその他の金属を同じ放電条件で処理する場合、ZnやSn粉末はより平均粒径の大きな粉末を使用して被膜を形成でき、粒径が大きいほうが電極の成形性が高いという点で有利である。
ただし、ZnやSn粉末の平均粒径を15μmより大きくすると、極間が短絡するなど放電の状態が不安定になるため、ZnやSnの平均粒径は15μm以下が適当である。
篩を通過した粉末を金型にいれ、パンチにより所定のプレス圧で圧力を負荷しプレスすることで粉末は固まり、圧粉体となる。
Zn粉末やSn粉末、Ni粉末は酸化膜が薄く、プレスの圧力により容易に酸化膜が破れ、粉末と粉末が金属結合できるが、Crは容易に酸化膜を破ることができず、成形性があまりよくない。そこで、Cr粉末にパラフィンなどのワックスを重量比で1%から10%程度混入すると、プレスの際に混合粉末内部へのプレス圧力の伝わりが良くなり、成形性を改善できる。
圧縮成形された圧粉体は、圧縮により所定の硬さが得られていればそのまま放電表面処理用の電極として使用できるが、強度不足の場合は、加熱し強度を増加させる。
また、ワックスを使用した場合、ワックスの融点より高い温度に加熱し、ワックスを除去する必要があり、このようにして放電表面処理用の電極を得る。
Zn粉末やSn粉末、Ni粉末で電極を製造する場合、プレスの圧力だけで粉末と粉末を金属結合できるために、加熱せずとも十分な強度を持つ電極となるが、Cr粉末で電極を製造する場合、プレスのみでは強度が足りないため、プレス後に300℃から500℃で加熱処理する必要がある。
次に、本実施の形態における最適な実施例について説明する。
本例では、市場に流通している平均粒径2μmのZn粉末を購入し、メッシュサイズ300μmの篩にかけることで、300μm以下の凝集後の塊を得た後、該粉末を圧縮することで電極を成形した。
ここで、平均粒径2μmのZn粉末で電極を製造したときの成形圧力と電極に4本の針状のプローブを直線上に置き、外側の二探針の間に一定電流を流し、内側の二探針の間に生じる電位差を測定し抵抗を求めるJIS K 7194に規定された四探針法による電極の抵抗の関係を図2に示す。
図より、成形圧力を高くすると電極の抵抗が低下していることがわかる。
粉末に対する成形圧力が低い場合は、電極中の粉末間の金属結合が少ないため、電極の抵抗が高いが、成形圧力が高くなるに従い、粉末間の金属結合が多くなるため、抵抗が指数関数的に低下する。
ここで、電極の抵抗の被膜形成するための条件について説明する。
電極の先端と被加工物の隙間を保持するため、電極と被加工物の間に電圧を印可し、検出される極間の電圧がほぼ一定となるようにサーボをとることで、電極と被加工物との間の極間を制御しているが、抵抗が大きすぎる(例えば、4Ω以上)と、電極が隙間同様に極間の電圧を大きく降下させるため、極間電圧に相当する距離まで主軸は下げようと電極先端を被加工物に近づける制御をし、電極と被加工物が衝突してしまう。
電極と被加工物が接触すると、その間に電圧を印可できないため、放電を発生できない。
すなわち、電極の抵抗が4Ωよりも大きい場合、電極とワークの間でサーボを取ることができず、放電を発生できない。
平均粒径2μmのZn粉末を成形した圧粉体電極における抵抗をそれぞれ変え(図2に示されるように成形圧力を変えることで抵抗を変化させる)、各抵抗の電極で放電表面処理を行った際の被膜表面のEDS(Energy-Dispersive X-ray Spectroscopy)によるZn量の関係を図3に示す。
被加工物は炭素鋼(S45C)で、被膜の形成条件は、放電電流8A、放電時間8μs、処理面積2×16、処理時間2分である。
観察エリアを被膜表面の200倍のエリアとし、加速電圧を15kVとしてZn量を測定した。
EDSによる分析は、被膜の最表面だけでなく、ある程度の深さ(数μm)も含んで検出される。そのため、表面のZn被膜より下の被加工物S45Cの成分であるFeが多く検出される。
被膜であるZnの量が増加すると、Feの量が減少する。これはZn 膜の厚さが増加したことやZnが堆積した部分が増加したことを示す。
図3に示されるように抵抗が0.002Ωの電極による被膜のZn量は、0.1wt%であり、抵抗が大きくなるほど、Znの量が増加した。
なお、抵抗が0.002Ωより小さい電極では、電極の硬度が高いことと同義であり、被膜となるZnが電極から離脱しにくくなるため、電極から被加工物に供給されるZn量が非常に少なくなり、Znをわずかしか堆積できないもしくは除去加工となった。
つまり、Zn被膜を形成するためには、電極の抵抗が0.002Ω以上必要である。
反応膜は原子レベルの薄さでも効果を発揮するため、被加工物の極表層をZnが覆っているZn量が0.1wt%の被膜でも摩耗を抑制することが可能である。ただし、摺動面となる反応膜は摩耗されることがあるため、薄いZn被膜では、長期間に渡る被膜の耐久性が低くなる。
また、国際公開WO2004/108990のセラミックスなどの混合電極で形成された被膜のZnの含有量は、0.1wt%程度となることがあるが、摺動面にZn以外の物質が存在するため反応膜を形成できず、相手材を摩耗してしまう。
以上の如く、Zn 粉末の圧粉体電極を用いた放電表面処理の場合、該電極の抵抗は、0.002Ω以上4Ω以下とするように製造することにより、被加工物表面に反応膜となりうるZn被膜を形成することができる。
このZnやCrやNi被膜を形成させた摺動部を潤滑油中で摺動させると、その被膜と潤滑油中に含まれるリンや硫黄と反応し、リン化物や硫黄化物からなる反応膜を形成できる。
ビッカース硬度1000HV程度のSCM420鋼上に0.02Ωの電極を用いてピーク電流7A、放電時間0.5μsで形成されたZn被膜を、Sを0.06〜0.30wt%およびPを100〜600ppm含有する潤滑油を5cc/min滴下しながら摺動試験した。相手材は焼入れ焼き戻しを施されたSKS-95 鋼ピンで、先端は曲率半径18mm、硬度はHRC60〜64である。
このピン先端を5kgfの荷重で被膜に押圧し、200cpmのサイクルで50mm 往復摺動させた。その結果、反応膜を形成でき、SCM420の研磨面と比較して摩擦係数10%程度大きくすることができ、さらに摩耗量も未処理の試料と比較して抑制できた。
摺動試験後の被膜表面をTOF-SIMS分析した。その結果を図4に示す。
TOF-SIMS分析は、試料表面にGa+イオンを照射して試料表面の元素の二次イオンを飛散させ、二次イオンの質量に起因する飛散時間から元素を同定するとともに、イオン数を計数する分析方法である。この分析方法では、試料面に対してマッピングされた画像にイオン数に応じた輝度の輝点が生じ、輝度の高さとイオン数の量で元素の量を特定する。
図に示すように、摺動面にはZn、P、SおよびSO3の分布が見られ、ZnSやZnSO3の存在が確認された。被膜、相手材ともにほとんど摩耗しておらず、リン酸亜鉛やZnS やZnSO3の反応膜の持つ耐摩耗性向上などの特性が発揮されている。
0.02Ωの電極を用いてピーク電流5A、放電時間0.5μsでSCM上に形成されたZn被膜の断面写真と線分析結果を図5に示す。
被加工物の主成分であるFeは被膜に向かって減少し、被膜のZnは被加工物に向かって減少した混合層が形成されている。このような放電表面処理による被膜は、被加工物と剥離しないことがわかる。
被膜の膜厚は拡散層も含めると2μm程度である。
境界潤滑下にある摺動面の摩擦係数や摩耗量には、部材の表面硬さも影響する。
一般的に、表面硬さが低いほど摩擦係数は小さくなる。
また、被摩耗材と相手材の硬さの差が大きいと、摩耗により硬さの小さい側が摩耗する。
放電表面処理による被膜は、加工条件を変えることにより、様々な表面硬さを実現できるので、被膜形成に有利である。
反応膜を形成できるZnやNiは、固体金属の硬さが100HV以下であり、ZnやNiの厚さ0.1mm以上の被膜を堆積させると、被膜表面の硬さはZnやNiの固体金属程度かそれより少し大きい程度にしかならない。
上述の如く摩耗を防止するためには、相手材として広く普及しているスチールの硬度が200HV以上であることから、摩耗を抑制するためには200HV以上の部材の表面硬さが必要である。
次に、摩耗を防止するために、被膜の表面硬さを高める技術について説明する。
例えば、被膜の表面硬さは、被膜厚さを厚くすると上述のように被膜材質である金属の硬さとなるが、その膜厚が10μm以下なら被膜材質である金属の硬さにならず、被膜形成過程の加工条件で変化する。そこで、被膜形成過程の加工条件を変化させることで、被膜の表面硬さを調整したものが以下の例である。
被加工物を硬さ300HV程度のS45Cとし、抵抗0.02ΩのZn電極を用いて被膜を形成したときの放電電流と放電時間(電荷量)の積と試験荷重10gfのときの被膜表面硬さの関係を図6に示す。
被加工物表面が放電によって十分に温度上昇されるよう処理時間は長くしている。電荷量が大きくなるほど表面の硬さが高くなる。これは、加工液が放電のエネルギーにより分解され炭素ができ、その炭素が溶融した被加工物表面に溶け込み、表面の炭素量を増加させることにより硬度が増加すると考えられる。
電荷量が多いほど、炭素の溶け込み量が多くなり、硬さが高くなると推察される。
炭素は沸点が4000K程度であり、最も始めに析出し始めるため、被加工物が凝固するときは表面が炭素リッチな状態である。
よって、放電電流と放電時間の制御により、被膜表面の硬さを調整することが可能となる。
本実施の形態によれば、放電表面処理により従来被膜を形成することが困難であったZnやSnやNiやCrの被膜を形成することができ、これら被膜は、硫黄やリンを含有する潤滑油環境下において反応膜を形成し、耐摩耗性の高い機械摺動面を形成できる。
なお、それら被膜は剥離せず、様々な硬度を持つZnやSnやNiやCrの被膜を形成することができる。
また、放電電流と放電時間の調整により、被膜の表面硬さを制御できる。そのため摺動する相手材の硬度と同程度にできるため、両部材が摩耗せず、部材の耐久性や信頼性を向上できる。
また、被膜の表面硬さを相手材より低くなるよう被膜を形成させることにより、被膜表面のせん断性が低下し、摩擦係数を小さくすることができる。
以上、Zn被膜の例について説明したが、SnやNiやCrの被膜でもほぼ同様の効果が得られた。その中で、Sn被膜の例について簡単に追加の説明を加える。Sn被膜を、Sを0.06〜0.30wt%およびPを100〜600ppm含有する潤滑油を5cc/min滴下しながら摺動試験した。相手材は焼入れ焼き戻しを施されたSKS-95 鋼ピンで、先端は曲率半径18mm、硬度はHRC60〜64である。
このピン先端を5kgfの荷重で被膜に押圧し、200cpmのサイクルで50mm 往復摺動させた。その結果、反応膜を形成でき、SCM420の研磨面と比較して摩擦係数10%程度大きくすることができ、さらに摩耗量も未処理の試料と比較して抑制できた。
実施の形態2.
実施の形態1では、放電条件によって被膜の表面硬さを変更する方法を説明した。
本実施の形態では、被加工物の硬度を変更させることで、被膜の表面硬さを変化させた場合について説明する。
前述したように反応膜を形成できるZnやSn、Niは、固体金属の硬さが100HV以下であり、ZnやSn、Niの厚さ0.1mm以上の被膜を堆積させると、被膜表面の硬さはZnやSn、Niの固体金属程度かそれより少し大きい程度にしかならない。
しかしながら、被膜の厚さを3μm以下とすることで、被膜の組成に左右されず、被加工物の硬度が被膜の表面硬さと密接に関係する。
そこで、浸炭処理、窒化処理、高周波焼き入れ、電子ビーム焼き入れなどにより表面の硬さの異なるスチールを被加工物として使用し、その上に厚さ3μm以下のZnやSn、Ni、Crの被膜を形成させる。
灯油を主成分とする加工油中で、抵抗が0.074Ωの60×16×2のZn電極を使用し、浸炭処理と焼き戻しにより1000HV程度まで高硬度化されたSCM420鋼上に、ピーク電流5A、放電時間0.5μs、放電と放電の休止間隔2μs(ジャンプ動作やサーボ制御の影響で処理中に休止間隔が長くなることはある)のパルス放電を使用し、1mm×1mmの単位面積あたりの処理時間が0.6sとなるように放電表面処理した。
ここで、処理時間を図6の場合と比較してかなり短くしている。処理時間を長くすると、放電の熱によって被加工物の表面温度を上昇させ、実施の形態1に示すような浸炭処理や被膜厚みの拡大などが生じ、被膜の表面硬さが低下するためである。
なお、単位面積あたりの処理時間が0.6sより短くなると、Zn被膜が十分に形成されず被加工物の表面が所々に露出する。被加工物表面の露出が増加すると、Znの反応膜を形成していない領域の割合が大きくなるため、全面をZn被膜が覆った場合と比較して、摩耗量が増えるなど反応膜の効果が低下する。
上記条件で形成された被膜の表面粗さはRa=0.2μm、10gfの試験荷重による被膜の表面硬さは940HV、加速電圧15kVのEDSによるZn量は10.0wt%であった。
また、被膜厚みは2μm程度であり、被膜硬さをほとんど低下させていない。
被膜の相手材は焼入れ焼き戻しを施され硬度はHRC60〜64の先端は曲率半径18mmのSKS-95鋼ピンを用い、Sを0.06〜0.30wt%およびPを100〜600ppm含有する潤滑油を5cc/min滴下しながら摺動試験した。このピン先端を5kgfの荷重で被膜に押圧し、200cpmのサイクルで50mm往復摺動させた。その結果、反応膜を形成でき、SCM420の研磨面と比較して摩擦係数10%程度大きくすることができ、さらに摩耗量も未処理の試料と比較して抑制できた。
また、抵抗が0.074Ωの60×16×2のZn電極を使用し、浸炭処理と焼き戻しにより、1000HV程度まで高硬度化されたSCM420鋼上に、ピーク電流7A、放電時間0.5μs、放電と放電の休止間隔2μs(ジャンプ動作やサーボ制御の影響で処理中に休止間隔が長くなることはある)のパルス放電を使用し、単位面積あたりの処理時間が0.6sとなるように放電表面処理した。
上記条件で形成された被膜の表面粗さはRa=0.3μm、試験荷重10gfによる被膜の表面硬さは920HV、加速電圧15kVでのEDSによるZn量は12.0wt%であった。
また、抵抗が0.074Ωの60×16×2のZn電極を使用し、浸炭処理と焼き戻しにより、1000HV程度まで高硬度化されたSCM420鋼上に、ピーク電流10A、放電時間1μs、放電と放電の休止間隔2μs(ジャンプ動作やサーボ制御の影響で処理中に休止間隔が長くなることはある)のパルス放電を使用し、単位面積あたりの処理時間が0.6sとなるように放電表面処理した。
上記条件で形成された被膜の表面粗さはRa=0.8μm、試験荷重10gfでの被膜の表面硬さは900HV、加速電圧15kVでのEDSによるZn量は12.0wt%であった。
ピーク電流を12A、放電時間を2μsとすると、処理時間を短くしても被膜表面の硬さは800HVまで低下した。
よって被加工物の硬度を利用して被膜の表面硬さを大きくするためには、ピーク電流を10A以下、放電時間を1μs以下にすることが重要である。また、ピーク電流を0.1Aより小さくし、放電時間を0.1μsより短くすると、被加工物や電極から離脱した粒子を溶融するにはエネルギー不足となり、放電表面処理で被膜を形成できないため、それらより放電条件を大きくすることが重要である。
また、400HV程度に高硬度化されたS45Cに上記ピーク電流10A以下、放電時間1μs以下、放電と放電の間2μs(ジャンプ動作やサーボ制御の影響で処理中に休止間隔が長くなることはある)、単位面積あたりの処理時間0.6sの放電条件でZn被膜を形成させた。
試験荷重10gfでのその表面硬さは約400HVであった。さらに、600HV程度に高硬度化されたS45Cに上記放電条件でZn被膜を形成させた。試験荷重10gfでのその表面硬さは580HV程度であった。さらに、水焼き入れにより800HV程度に高硬度化されたS45Cに上記放電条件でZn被膜を形成させた。試験荷重10gfでのその表面硬さは77HV程度であった。
また、浸炭処理、窒化処理、焼き入れなどの処理は表面から内部に向かうほど硬度が低下する。よって所望の硬さまで浸炭/窒化/焼入れ等により高硬度被膜を形成し、その後表面を研磨した面に放電表面処理によりZn被膜を形成させると、所望の硬さを持ったZn被膜を形成できる。
本実施の形態では、スチールについて説明したが、固体金属でアルミ合金やモリブデン合金に放電表面処理でZn被膜を形成させても、固体金属と同程度の硬さを持ったZn被膜を実現できる。
すなわち、本実施の形態によれば、硫黄やリンを含有する潤滑油環境下において反応膜を形成でき、剥離せず、様々な硬さを持つZnやSnやNiやCrの被膜を形成することができる。
また、被加工物の硬さを利用して固体金属の硬さの低いZnやNiの高硬度な被膜を形成できる。
そのため、被摩耗材と相手材が同じ材質の場合、硬さ低下を懸念することなく被膜を形成でき、両部材が摩耗せず、部材の耐久性や信頼性を向上できる。
また、被処理材表面を相手材よりわずかに硬さを低下させると、表面のせん断性が低下し、摩擦係数を小さくすることができる。
実施の形態3.
境界潤滑領域において、摩擦係数を小さくする、摩耗を抑制する等の反応膜の特性を利用する場合、被膜の表面粗さも重要である。
表面粗さが大きいと、局所面圧が高くなり、潤滑油がその部分に進入できず、反応膜が形成されなくなってしまう場合がある。
そこで本実施の形態では、反応膜を形成する際の摺動部材の表面粗さについて検討する。
灯油を主成分とする加工油中で、抵抗が0.074Ωの60×16×2の電極を使用し、被加工物である焼き入れされたSCM420鋼上に、ピーク電流8A、放電時間8μs、放電と放電の間隔128μsのパルス放電を使用し、1mm×1mmの単位面積あたりの処理時間が5sとなるように放電表面処理した。
得られた被膜の表面粗さはRa=2.0μmであった。表面粗さは小さいほど反応膜は形成されやすくなるため、実際の使用状況を考慮するとRa=1.0μm以下にしたほうがよい。
また、Zn被膜の膜厚や堆積量を増加させるため、上記放電電流や放電時間より大きな値を使用して被膜を形成させることがあるが、その場合、表面粗さが大きくなる。
表面粗さが大きくなる要因である放電表面処理によって形成された突起部を除去するための放電加工による除去方法について説明する。
除去工程では、被膜と同じ材質の固体金属の電極を用い、被膜と平行に電極の処理面を対峙させる。
被膜と同じ材質の固体金属の電極を用いなければ、放電の熱により電極がわずかに蒸発し、被膜に不純物として混入してしまう可能性があるためである。
例えば、形彫り放電加工で一般的に使用されているCu-W電極を用いて加工すると、Wが被膜表面に付着してしまう。
具体的には、電極にZnの固体金属の電極を用い、ピーク電流8A、放電時間1μs、放電と放電の間隔8μs(ジャンプ動作やサーボ制御の影響で処理中に休止間隔が長くなることはある)の加工条件で、60×16のZn被膜に対して、処理面16×2のZnの固体金属電極を用い、電極と被膜の間をサーボにより一定の間隔に保ち、被膜の60mm方向に電極を移動させつつ放電加工により膜厚が5μm以下となるように突起を除去した。
以上の方法で仕上げられたZn被膜の表面粗さはRa=0.4μmであり、リンや硫黄を含有する潤滑油雰囲気において反応膜を形成することができる。
なお、除去工程において被膜と同じサイズ(60×16)の電極を用いた場合、電極と被膜を数μmの精度で平行に対峙させることが難しいため、被膜と電極の距離が近い部分でのみ放電が発生し、表面の仕上がりにばらつきが生じてしまう。
また、加工開始直後は、被膜の突起部を除去できるが、加工を更に続けると、突起部の除去のために発生した放電でZnの固体金属電極の処理面も除去されるため、Zn被膜の薄い部分と固体金属電極部とが近接し、その位置でも放電が発生してしまい、適度な膜厚(薄い)であったZn被膜を除去してしまう。
そこで被膜よりも小さな電極、つまり本実施の形態のごとく60×16の被膜に対して、2×16の電極を用い、サーボを取りつつ移動させながら加工すると、常に被膜の最高部(突起部)で放電が発生するため、Zn被膜の突起部のみを除去でき、被膜表面の仕上がりも均一にできる。
なお、電極の移動速度は2mm/min以上であればよい。
また、突起部を除去する他の手法としては、上記条件で形成されたZn被膜を、Al2O3やSiO2の研磨材を用い、回転数を180rpm、処理時間を1hrでバレル研磨した。
バレル研磨後の仕上げ後の表面粗さはRa=0.8μmであり、反応膜を形成するのに十分な粗さである。
本実施の形態では、主にZnについて説明したが、リンや硫黄と反応膜を形成できる物質としてZnの他にSnやNi、Crなどがある。
これら電極を製造する方法は、上述しており、Znと同様の方法で表面粗さRaが1.0μm以下の被膜を形成でき、上記方法で表面粗さを低下させることができる。
本実施の形態によれば、表面粗さRaを1.0μm以下でき、硫黄やリンを含有する潤滑油環境下において反応膜を形成でき、剥離せず、様々な硬度を持つZnやSnやNiやCrの被膜を形成することができる。
実施の形態4.
本実施の形態では、放電条件ではなく、電極の材質を変更しても反応膜を形成でき、しかも表面硬さを200HV以上にできる別の被膜処理方法を説明する。
実施の形態1では、Zn粉末、Sn粉末、Ni粉末、Cr粉末のみの圧粉体電極から被膜を形成する場合について説明したが、本実施の形態では、それらZn粉末、Ni粉末、Cr粉末に対してTiC、Cr3C2、WC等のセラミックス粉末を混合した電極について説明する。
本実施の形態において、TiC、Cr3C2、WC等のセラミックス粉末を混合する理由としては、被膜の硬さを変更させるために用いるものである。
本実施の形態では、粒径2μmのZn粉末に対し、粒径1μmのTiC粉末の混合割合を2wtから20wt%まで変化させて混合し、メッシュサイズ300μmの篩にかけた後、圧縮成形で60×16×2の電極を複数製造し、それら製造した電極を用いて、ピーク電流8A、放電時間1μs、放電と放電の休止間隔2μs(ジャンプ動作やサーボ制御の影響で処理中に休止間隔が長くなることはある)のパルス放電で、十分な処理時間をかけて被膜を形成させた際の被膜硬度を図7に示す。
上記条件による被膜の表面粗さRa は、0.4μm程度である。また、被加工物としては、焼きや窒化処理されていないS45C鋼の生材(300HV 程度)を使用した。
例えば、TiCが5wt%混合された電極による被膜の硬さは、試験荷重10gfで850HV程度となり、S45Cの生材と比較して、高硬度なTiCの影響で被膜の表面硬さを550HVも大きくできた。
また、TiCが10wt%混合された電極による被膜の試験荷重10gfでの硬さは、300HV程度のS45Cの生材の表面を1100HV程度まで大きくできた。
TiC等のセラミックスと反応膜を形成できるZnやNiを混合した被膜を形成すると様々な硬さを持った被膜を形成できる。
ただし、TiCを20wt%以上にすると、被膜表面に存在するTiCが増え、反応膜が形成できなくなってしまう。また、その被膜表面硬さは1500HVを越え、スチールなど一般に使用されている材質よりも硬さが大きくなりすぎ、スチール等の一般の部材を摩耗してしまうことがある。
例えば、相手材は焼入れ焼き戻しを施され硬度はHRC60〜64の先端は曲率半径18mmのSKS-95鋼ピンを用い、Sを0.06〜0.30wt%およびPを100〜600ppm含有する潤滑油を5cc/min滴下しながら摺動試験した。このピン先端を5kgfの荷重で被膜に押圧し、200cpmのサイクルで50mm往復移動させた。摩擦係数と摩耗量を測定すると、TiCが10wt%を境界とし、急激にピンの摩耗量が増加し、そのときの試験荷重10gfでの被膜硬さは1200HVを超えていた。
さらに、TiCは反応膜を形成しないため、ピンと被膜が固体接触し、高硬度なTiCがSKSピンを摩耗したと推察できる。
TiCの混合量を10wt%より更に大きくすると被膜に含まれるTiC量が多くなり、被膜硬さが大きくなると同時にTiC が多くなって反応膜を形成できなくなってしまう。このような
被膜では、相手材を摩耗してしまう。
なお、Zn粉末に替えてSn粉末、Ni粉末、Cr粉末にTiCを混入した場合も同様であり、また、TiCに替えてCr3C2、WC等のセラミックス粉末でも同様の試験結果が得られた。
よって、境界潤滑領域で反応膜の特性を使用することを目的とする場合、Zn粉末、Sn粉末、Ni粉末、Cr粉末に対して、混合するTiC、Cr3C2、WC等のセラミックス粉末の割合は、10wt%以下で十分である。
上記したZn粉末やTiC粉末の粒径は、放電痕よりも非常に小さいため、電極の粒径が異なっても均一にセラミックスが分布した被膜を形成できる。
よって、電極の粒径が異なっても被膜硬さは、混合比の割合の影響を受けない。
次に、本実施の形態における放電表面処理用電極製造のためのプロセスについて説明する。
ZnやSnの場合は平均粒径15μm以下、CrやNiの場合は4μm以下の粉末を90wt%以上とし、平均粒径が1μm程度のTiCやCr3C2やWCなどのセラミックス粉末を重量比で10wt%以下を、円筒容器に入れ、更にその中に体積で粉末の2倍以上になるよう揮発性の高い有機溶媒をいれて密閉し、その円筒容器を数時間から数十時間回転させ、ZnやSnやCrやNi何れかの粉末と、セラミックス粉末を均一に混合する。
ここで、混合時間が短すぎる場合、セラミックス粉末にZn粉末が均一に混合されず、被膜上に存在するTiCの濃度が均一にならないという問題があるため、10時間以上混合し続ける必要がある。
混合を終了すると、しばらく放置することで、混合粉末を容器底部に沈降させる。
そして、その沈降した粉末が舞い上がらないように、上澄み液を別の容器に静かに取り除き、わずかに有機溶媒を含んだ混合粉末のみを取り出す。
その後、その混合粉末を真空炉または常温雰囲気で乾燥させ、有機溶媒を揮発させる。
乾燥後の混合粉末をメッシュサイズ100μmから300μmの篩にかけ、凝集してできていた塊を分解する。
このメッシュサイズは、後の工程でのプレスの成形性と、処理中に電極と被加工物の間に脱落したときに放電の爆発力で粉砕できるサイズから決定されている。
次に、篩を通過した粉末を金型にいれ、パンチにより圧力を負荷しプレスすることで、粉末は固まり、圧粉体となる。
Zn粉末やNi粉末は酸化膜が薄く、プレスの圧力により容易に酸化膜が破れ、粉末と粉末が金属結合できるが、Crは容易に酸化膜を破ることができず、成形性があまりよくない。
そこで、粉末にパラフィンなどのワックスを重量比で1%から10%程度混入すると、プレスの際に混合粉末内部へのプレス圧力の伝わりが良くなり、成形性を改善できる。
圧縮成形された圧粉体は、圧縮により所定の硬さが得られていればそのまま放電表面処理用の電極として使用できるが、強度不足の場合は、放電を生成させることができないため、加熱し強度を増加させる必要がある。
また、ワックスを使用した場合、圧粉体中よりワックスを除去する必要があり、ワックスの融点より高い温度に加熱し、ワックスを除去する。
このようにして放電表面処理用の電極を得る。
なお、Zn粉末やSn粉末、Ni粉末で電極を製造する場合、プレスの圧力だけで粉末と粉末を金属結合できるために、加熱せずとも十分な強度を持つ電極となる。
しかしながら、Cr粉末で電極を製造する場合、プレスのみでは強度が足りないため、プレス後に300℃500℃加熱処理する必要がある。
本実施の形態によれば、Zn、Sn、Ni、Cr等のリンや硫黄と反応膜を形成できる物質にセラミックスを混合することで、被加工物の硬さを大きくせずとも、試験荷重10gf程度で被膜表面の硬さを200HV以上にできる。
本実施の形態により、0.002Ω以上の抵抗を有する放電表面処理用電極を製造し、Zn被膜を形成することができた。その電極を用い、表面粗さRaが1μm以下と表面硬度が200HV以上を有するZn被膜を形成できた。その特性を有する被膜をリンや硫黄を含んだ潤滑油中で使用すると、反応膜を形成でき、相手材をほとんど摩耗することがない。
以上のように、本発明に基づく被膜は、剥離することのない高い耐摩耗性をもち、リンや硫黄を含む潤滑油中でリン化物や硫黄化物からなる反応膜となりうる被膜を形成することができ、それら被膜は表面硬度の異なる被膜を形成することができることから、特に境界潤滑領域にある摺動部に適用するのに適している。

Claims (6)

  1. ZnまたはSnを含有する粉末を材料する電極と被加工物である第1部材との間にパルス状の放電を発生させ、該放電エネルギーにより前記電極材料または前記放電エネルギーにより前記電極材料が反応した物質を前記第1部材表面に付着させる工程と、
    リンまたは硫黄成分を含有する潤滑油が存在する雰囲気中で、前記電極材料または前記放電エネルギーにより前記電極材料が反応した物質を表面に付着させた前記第1部材を他の第2部材と接触させ、かつ摺動させる工程と、
    該摺動工程に伴う前記第1部材と前記第2部材の摩擦により、前記潤滑油成分であるリンまたは硫黄成分を含有する被膜を前記第1部材表面または前記第2部材表面に形成させる工程と、
    から成ることを特徴とする放電表面処理方法。
  2. 前記電極材料は、平均粒径15μm以下のZn粉末を含有すると共に、前記電極の表面抵抗はJIS K7194に規定された四探針法により0.002Ω以上、4Ω以下であることを特徴とする請求項1に記載の放電表面処理方法。
  3. 前記電極材料は、TiCまたはCr3C2またはWCのセラミックス粉末を10wt%以下で混合したものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の放電表面処理方法。
  4. 前記放電のパルス条件は、ピーク電流10A以下、放電時間1μs以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の放電表面処理方法。
  5. 前記電極材料または前記放電エネルギーにより前記電極材料が反応した物質を前記第1部材表面に付着させた後、前記第1部材表面に対して研磨やショットブラストを行い、前記第1部材表面の突起を除去することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の放電表面処理方法。
  6. 請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の放電処理方法を用い、前記電極材料または前記放電エネルギーにより前記電極材料が反応した物質が付着した前記第1部材表面または前記第2部材表面に形成された、前記潤滑油成分であるリンまたは硫黄成分を含有する被膜。
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