JP5092638B2 - 電気回路の異常検出装置 - Google Patents

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Description

本発明は、電気回路の異常検出装置に関するものである。
従来から、電気回路の異常検出装置としては、駆動電流の大きさに応じて所定の量変位するリニアソレノイドと、制御部からの指令に基づき該リニアソレノイドに流れる電流を制御する駆動用トランジスタと、該電流を検出する電流検出部とを備え、複数の所定の目標電流に対し各々設定された上限及び下限電流値を座標上にプロットし、該プロットされた点に基づき上限及び下限回帰直線を最小二乗法によって求め、前記リニアソレノイドに流れる電流(フィードバック電流)を検出し、前記フィードバック電流の値が、下限回帰直線≦フィードバック電流値≦上限回帰直線、であるかどうか判断し、下限回帰直線≦フィードバック電流値≦上限回帰直線、でない場合、前記リニアソレノイドの駆動装置は異常であると判断するものが知られている(特許文献1)。
特開2006−287043号公報
上述した特許文献1に記載の電気回路の異常検出装置においては、精度よい異常判定が可能であるが、例えば目標電流の切替時における目標電流に対する実電流の追従遅れに起因した異常誤判定を防止するために判定時間を長く設定しなければならない。この結果、断線、短絡などの明らかな異常発生時においてもその検出時間(判定時間)が長くなるという問題があった。
そこで、本発明は、上述した問題を解消するためになされたもので、電気回路の異常検出装置において、精度よい異常検出を維持しつつ、断線、短絡などの明らかな異常が発生した場合に短時間で異常を検出することを目的とする。
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、電源に接続され通電電流の大きさに応じて電気・電子部品を駆動・非駆動させるソレノイドと、電源からソレノイドへの通電をオン・オフして通電量を調整可能なスイッチング手段と、ソレノイドの実電流を検出する電流検出手段と、予め設定された目標電流に検出された実電流の値が近づくようにスイッチング手段のオン・オフ状態をフィードバック制御する駆動手段と、を備えた電気回路の異常検出装置において、目標電流に対して設定される実電流の正常範囲の上限値および下限値の少なくともいずれか一方から正常範囲から遠ざかる方向に順に配設されて電気回路の電流異常を検出するための複数の判定閾値であって、正常範囲の近くに設定される値ほど電気回路の電流異常の判定に必要な待機時間が長時間に設定される判定閾値を用いることで、電流検出手段によって検出された実電流と判定閾値との大小の比較を、判定閾値のうち正常範囲から遠いものから近いものに順に完了させて、電気回路の電流異常の判定を実施する判定手段を備えたことである。
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、判定手段は、判定閾値のうち正常範囲から遠いものから近いものに順に、電流検出手段によって検出された実電流との大小を比較して実電流が正常判定範囲外であると判定し、その判定が判定閾値に応じて設定される待機時間だけ継続している場合には、電気回路が電流異常であると判定することである。
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1または請求項2において、複数の判定閾値のうち正常範囲から最も遠い上限閾値は、ソレノイドの使用電流範囲において他の判定閾値よりも大きい一定値であり、複数の判定閾値のうち正常範囲から最も遠い下限閾値は、ソレノイドの使用電流範囲において他の判定閾値よりも小さい一定値であることである。
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項1乃至請求項3の何れか一項において、ソレノイドはリニアソレノイドであることである。
請求項5に係る発明の構成上の特徴は、請求項1乃至請求項4の何れか一項において、ソレノイドは車両の横滑り防止制御が実施されるブレーキアクチュエータを構成する電磁弁に使用されていることである。
上記のように構成した請求項1に係る発明においては、ソレノイドを含む電気回路の電流異常を検出するための判定閾値が複数存在し、それら判定閾値は、目標電流に対して設定される実電流の正常範囲の上限値および下限値の少なくともいずれか一方から正常範囲から遠ざかる方向に順に配設され、正常範囲の近くに設定される値ほど電気回路の電流異常の判定に必要な待機時間が長時間に設定される。判定手段は、電流検出手段によって検出された実電流と判定閾値との大小の比較を、それら判定閾値のうち正常範囲から遠いものから近いものに順に完了させて、電気回路の電流異常の判定を実施する。これによれば、断線、短絡などの異常が発生し実電流が正常範囲から十分離れた値となる場合には、正常範囲から離れた判定閾値と実電流とを比較することによって電流異常を早期かつ短時間に検出することができる。さらに、断線、短絡などの異常以外の異常であって実電流が正常範囲からあまり離れない値となる場合には、正常範囲に近い判定閾値と実電流とを比較することによって電流異常を時間をかけて精度よく検出することができる。したがって、電気回路の異常検出装置において、精度よい異常検出を維持しつつ、断線、短絡などの明らかな異常が発生した場合に短時間で異常を検出することができる。
上記のように構成した請求項2に係る発明においては、請求項1に係る発明において、判定手段は、判定閾値のうち正常範囲から遠いものから近いものに順に、電流検出手段によって検出された実電流との大小を比較して実電流が正常判定範囲外であると判定し、その判定が判定閾値に応じて設定される待機時間だけ継続している場合には、電気回路が電流異常であると判定するので、異常の種類(程度)に応じた適切な検出時間で確実に電流異常を検出することできる。
上記のように構成した請求項3に係る発明においては、請求項1または請求項2に係る発明において、複数の判定閾値のうち正常範囲から最も遠い上限閾値および下限閾値が一定値であるため、これらを実電流の正常範囲から十分遠い値に設定することができ、断線、短絡などの異常が発生した場合にその異常を確実に検出することができる。また、例えば、前記正常範囲から最も遠い上限閾値および下限閾値を、目標電流をパラメータとする関数とした態様と比較して、これら上限閾値および下限閾値が単純なものとなり、これらと実電流との大小比較に係る演算が容易となる。
上記のように構成した請求項4に係る発明においては、ソレノイドがリニアソレノイドである場合に、目標電流が使用電流範囲の範囲内であれば確実かつ適切な時間で電流異常を検出することができる。
上記のように構成した請求項5に係る発明においては、電磁弁への電流異常によるブレーキアクチュエータの異常が発生した場合、その異状を異常の種類に応じた適切な時間で検出することができ、異常発生後適切な時間でその異常に適切な処理(例えば電磁弁の制御停止による車両の横滑り防止制御の停止)を実施することができる。
以下、本発明に係る電気回路の異常検出装置を液圧ブレーキ装置に適用した一実施の形態を図面を参照して説明する。図1は液圧ブレーキ装置の構成を示す概要図であり、図2は電気回路の異常検出装置の電気的な構成を示す概要図である。
液圧ブレーキ装置は、車両を制動させるためのものであり、図1に示すように、各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrr、ブレーキ操作部材であるブレーキペダル11、真空式制動倍力装置12、マスタシリンダ13、リザーバタンク14、液圧自動発生装置であるブレーキアクチュエータ15、および電気回路50の異常検出装置であるブレーキECU16を備えている。
各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrは、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrの回転をそれぞれ規制するものであり、各キャリパCLfl,CLfr,CLrl,CLrrに設けられている。各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに基礎液圧および制御液圧の少なくともいずれかが供給されると、各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrの各ピストン(図示省略)が摩擦部材である一対のブレーキパッド(図示省略)を押圧して各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrと一体回転する回転部材であるディスクロータDRfl,DRfr,DRrl,DRrrを両側から挟んでその回転を規制するようになっている。なお、本実施形態においては、ディスク式ブレーキを採用するようにしたが、ドラム式ブレーキを採用するようにしてもよい。
真空式制動倍力装置12は、エンジンの吸気負圧をダイヤフラムに作用させてブレーキペダル11の踏み込み操作により生じるブレーキ操作力を助勢して倍力(増大)する倍力装置である
マスタシリンダ13は、ドライバによるブレーキペダル11の操作力を変換して基礎液圧を形成し、その基礎液圧によって車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに第1摩擦制動力を発生させ得る装置である。本実施形態では、マスタシリンダ13は、真空式制動倍力装置12により倍力されたブレーキ操作力を基礎液圧に変換し、各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに供給する。
リザーバタンク14は、ブレーキ液を貯蔵してマスタシリンダ13にそのブレーキ液を補給するものである。
ブレーキアクチュエータ15は、マスタシリンダ13と各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrとの間に設けられて、ブレーキペダル11の操作の有無に関係なく自動的に形成した制御液圧をホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに付与し、対応する車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに摩擦制動力を発生させ得る装置である。
図2を参照してブレーキアクチュエータ15の構成を詳述する。ブレーキアクチュエータ15は、独立して作動する液圧回路である複数の系統から構成されている。具体的には、ブレーキアクチュエータ15は、X配管である第1系統15aと第2系統15bを有している。第1系統15aは、マスタシリンダ13の第1液圧室13aと左後輪Wrl,右前輪WfrのホイールシリンダWCrl,WCfrとをそれぞれ連通して、左後輪Wrl,右前輪Wfrの制動力制御に係わる系統である。第2系統15bは、マスタシリンダ13の第2液圧室13bと左前輪Wfl,右後輪WrrのホイールシリンダWCfl,WCrrとをそれぞれ連通して、左前輪Wfl,右後輪Wrrの制動力制御に係わる系統である。
第1系統15aは、差圧制御弁21、左後輪液圧制御部22、右前輪液圧制御部23、および第1減圧部24を含んで構成されている。
差圧制御弁21は、マスタシリンダ13と、左後輪液圧制御部22の上流部および右前輪液圧制御部23の上流部との間に介装されている常開リニア電磁弁(常開リニアソレノイド弁)である。この差圧制御弁21は、ブレーキECU16により連通状態(非差圧状態)と差圧状態を切り替え制御されるものである。差圧制御弁21は非通電して通常連通状態とされているが、通電して差圧状態(閉じる側)にすることによりホイールシリンダWCrl,WCfr側の液圧をマスタシリンダ13側の液圧よりも所定の制御差圧分高い圧力に保持することができる。この制御差圧はブレーキECU16により制御電流に応じて調圧されるようになっている。これにより、ポンプ24a,34aによる加圧を前提に制御差圧に相当する制御液圧が形成されるようになっている。
左後輪液圧制御部22は、ホイールシリンダWCrlに供給する液圧を制御可能なものであり、2ポート2位置切換型の常開電磁開閉弁である増圧弁22aと2ポート2位置切換型の常閉電磁開閉弁である減圧弁22bとから構成されている。増圧弁22aは、差圧制御弁21とホイールシリンダWCrlとの間に介装されており、ブレーキECU16の指令にしたがって差圧制御弁21とホイールシリンダWCrlとを連通または遮断できるようになっている。減圧弁22bは、ホイールシリンダWCrlと調圧リザーバ24cとの間に介装されており、ブレーキECU16の指令にしたがってホイールシリンダWCrlと調圧リザーバ24cとを連通または遮断できるようになっている。これにより、ホイールシリンダWCrl内の液圧が増圧・保持・減圧され得るようになっている。
右前輪液圧制御部23は、ホイールシリンダWCfrに供給する液圧を制御可能なものであり、左後輪液圧制御部22と同様に増圧弁23aと減圧弁23bとから構成されている。増圧弁23aおよび減圧弁23bがブレーキECU16の指令により制御されて、ホイールシリンダWCfr内の液圧が増圧・保持・減圧され得るようになっている。
第1減圧部24は、ポンプ24a、ポンプ用モータ24b、調圧リザーバ24cを含んで構成されている。ポンプ24aは、調圧リザーバ24c内のブレーキ液を汲み上げて、そのブレーキ液を差圧制御弁21と増圧弁22a,23aとの間に供給するようになっている。このポンプ24aは、ブレーキECU16の指令にしたがって駆動するポンプ用モータ24bによって駆動されるようになっている。
調圧リザーバ24cは、ホイールシリンダWCrl、WCfrから減圧弁22b、23bを介して抜いたブレーキ液を一旦溜めておく装置である。また、調圧リザーバ24cは、マスタシリンダ13と連通しており、調圧リザーバ24c内のブレーキ液が所定量以下である場合には、マスタシリンダ13からブレーキ液が供給される一方で、所定量より多い場合には、マスタシリンダ13からのブレーキ液の供給が停止されるようになっている。
これにより、差圧制御弁21によって差圧状態が形成されるとともにポンプ24aが駆動されている場合(例えば、横滑り防止制御、トラクションコントロールなどの場合)、マスタシリンダ13から供給されているブレーキ液を調圧リザーバ24c経由で増圧弁22a,23aの上流に供給することができるようになっている。
第2系統15bは、差圧制御弁31、左前輪液圧制御部32、右後輪液圧制御部33、および第2減圧部34を含んで構成されている。
差圧制御弁31は、マスタシリンダ13と、左前輪液圧制御部32の上流部および右後輪液圧制御部33の上流部との間に介装されている常開リニア電磁弁である。この差圧制御弁31は、差圧制御弁21と同様に、ブレーキECU16によりホイールシリンダWCfl,WCrr側の液圧をマスタシリンダ13側の液圧に対してよりも所定の制御差圧分高い圧力に保持できるようになっている。
左前輪液圧制御部32および右後輪液圧制御部33は、ホイールシリンダWCfl,WCrrに供給する液圧をそれぞれ制御可能なものであり、左後輪液圧制御部22と同様に、それぞれ増圧弁32aと減圧弁32b、増圧弁33aと減圧弁33bから構成されている。増圧弁32aと減圧弁32b、増圧弁33aと減圧弁33bがブレーキECU16の指令によりそれぞれ制御されて、ホイールシリンダWCfl内およびホイールシリンダWCrr内の液圧がそれぞれ増圧・保持・減圧され得るようになっている。
第2減圧部34は、第1減圧部24と同様に、ポンプ34a、ポンプ用モータ24b(第1減圧部24と共用)、調圧リザーバ34cを含んで構成されている。ポンプ34aは、調圧リザーバ24cと同様な調圧リザーバ34c内のブレーキ液を汲み上げて、そのブレーキ液を差圧制御弁31と増圧弁32a,33aとの間に供給するようになっている。このポンプ34aは、ブレーキECU16の指令にしたがって駆動するポンプ用モータ24bによって駆動されるようになっている。
このように構成されたブレーキアクチュエータ15は、通常ブレーキの際には全ての電磁弁が非励磁状態にされて、ブレーキペダル11の操作力に応じたブレーキ液圧、すなわち基礎液圧をホイールシリンダWC**にそれぞれ供給できるようになっている。なお、**は、各輪に対応する添え字であって、fl,fr,rl,rrのいずれかであり、左前、右前、左後、右後を示している。以下の説明及び図面において同じである。
また、ポンプ用モータ24bすなわちポンプ24a,34aを駆動するとともに差圧制御弁21,31を励磁すると、マスタシリンダ13からの基礎液圧に制御液圧を加えたブレーキ液圧をホイールシリンダWC**にそれぞれ供給できるようになっている。
さらに、ブレーキアクチュエータ15は、増圧弁22a,23a,32a,33a、および減圧弁22b,23b,32b,33bを制御することでホイールシリンダWC**の液圧を個別に調整できるようになっている。これにより、ブレーキECU16からの指示により、例えば、周知のアンチスキッド制御、前後制動力配分制御、ESC(Electronic Stability Control)である横滑り防止制御(具体的には、アンダステア抑制制御、オーバステア抑制制御)、トラクションコントロール、車間距離制御等を達成できるようになっている。
また、液圧ブレーキ装置は、車輪速度センサSfl,Sfr,Srl,Srrを備えている。車輪速度センサSfl,Sfr,Srl,Srrは、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrの付近にそれぞれ設けられており、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrの回転に応じた周波数のパルス信号をブレーキECU16に出力している。
電気回路50の異常検出装置であるブレーキECU16は、図2に示すように、目標電流決定部41、目標値生成部42、判定部43、電流検出部44、スイッチング素子46を備えている。なお、図2においては、ソレノイド47は、上述したリニアソレノイド弁21,31のうちの何れか一つのソレノイドのみを示すとともに、そのソレノイド47を駆動させるスイッチング素子46のみを示しており、他のソレノイドおよびそれらのソレノイド駆動回路は省略している。
目標電流決定部41は、ソレノイド47の目標電流(駆動要求値)を決定する目標電流決定手段である。目標電流は、制御差圧に相当する制御電流である。
判定部43は、目標電流決定部41から目標電流を、電流検出部44から実電流を入力するようになっている。判定部43は、電流検出部44によって検出された実電流と判定閾値との大小の比較を、判定閾値のうち正常範囲から遠いものから近いものに順に完了させて、電気回路の電流異常の判定を実施する判定手段である。より具体的には、判定手段は、判定閾値のうち正常範囲から遠いものから近いものに順に、電流検出部44によって検出された実電流との大小を比較して実電流が正常判定範囲外であると判定し、その判定が判定閾値に応じて設定される待機時間だけ継続している場合には、電気回路50が電流異常であると判定する。
目標値生成部42は、目標電流決定部41からの目標電流を示す制御指令信号(駆動要求)を入力しその制御指令信号に応じて制御対象のソレノイド47に供給する駆動電流(駆動電圧)を生成するためオン・オフ制御するものである。目標値生成部42は、目標電流決定部41からの駆動要求に応じたオン・オフ信号(所定のデューティ比のPWM信号でもよい。)をスイッチング素子46に送信してソレノイド47の通電・非通電を制御する。すなわち、開信号によりソレノイド47への通電を実施し閉信号によりソレノイド47への非通電を実施する。
また、この目標値生成部42は、電流検出部44からで検出された実電流を入力し(フィードバックし)、その実電流と目標電流とからフィードバック制御を実施している。なお、フィードバック制御をしないようにしてもよい。このように、目標値生成部42は、予め設定された目標電流に前記検出された実電流の値が近づくようにスイッチング素子46のオン・オフ状態をフィードバック制御する駆動手段である。
ソレノイド駆動回路48は、直流電源である電源45、スイッチング素子46、ソレノイド47から構成されている。
ソレノイド47は、リニアソレノイド弁や開閉ソレノイド弁を構成するものであり、電源45に接続され通電電流の大きさに応じて電気・電子部品(本実施の形態では、ソレノイドバルブ(電磁弁))を駆動・非駆動させるものである。例えばリニアソレノイド弁である差圧制御弁21では、通電時に通電電流の大きさに応じて弁体を移動させて開弁量(通過する油量、入出力間の差圧)をリニアに調整可能である。ソレノイド47の一方はスイッチング素子46および電流検出素子44aを介して電源45に接続されており、他方は接地されている。
スイッチング素子46(スイッチング手段)は、電源45からソレノイド47への通電をオン・オフして(PWM制御して)通電量を調整可能なものであり、例えばMOSFET(MOS型電界効果トランジスタ)にて構成されている。スイッチング素子46のドレインは電源45に接続され、ゲートは目標値生成部42にそれぞれ接続され、ソースは電流検出素子44aおよびソレノイド47を介して接地されている。
電流検出素子44aは、電流を検出するセンサであり、例えばシャント抵抗にて構成されている。シャント抵抗には電流検出部44が接続されている。電流検出部44は、ソレノイドの実電流を検出するものであり、シャント抵抗の電圧値を検出してソレノイド47に通電される電流値を検出しその検出結果を判定部43および目標値生成部42に送信するようになっている。
電気回路50は、上述した、目標電流決定部41、目標値生成部42、判定部43、電流検出部44、スイッチング素子46から構成されている。
判定閾値は、ブレーキECU16に記憶されている。この判定閾値は、目標電流に対して設定される実電流の正常範囲の上限値UNおよび下限値LNの少なくともいずれか一方から正常範囲から遠ざかる方向に順に配設されて電気回路50の電流異常を検出するための複数の値であって、正常範囲の近くに設定される値ほど電気回路50の電流異常の判定に必要な待機時間が長時間に設定されるものである。
具体的には、判定閾値としては、図3に示すように、第1上下限閾値US1,LS1と、第2上下限閾値US2,LS2とが挙げられている。
第1上下限閾値US1,LS1は、正常範囲にノイズマージンを考慮した値に設定されている。正常範囲は、目標電流に対する実電流の理想値(図3にて一点鎖線で示す)に、電気回路50のハード的なばらつき(特にソレノイド駆動回路48や電流検出部44のばらつき)を考慮した値に設定されている。第1上下限閾値US1,LS1は、目標電流に対する実電流の理想値+電気回路50のばらつき+ノイズマージンで設定されている。なお、正常範囲は上限値UNおよび下限値LNを有している。また、第1上限閾値US1と第1下限閾値LS1とで規定される範囲が第1範囲である。
第2上下限閾値US2,LS2は、ソレノイド47の使用電流範囲において、目標電流に対する実電流および電気回路50によるばらつきに基づいて決定される第1上下限閾値US1,LS1よりそれぞれ外側(前記正常範囲から遠い側)の一定の値US2α,LS2αである。この場合、US2αは、例えばソレノイド駆動回路48のスイッチング素子46のドレイン−ソース間が短絡した場合など、電気回路50に通常流れる電流よりはるかに大きい電流がソレノイド47に流れることを想定し、その大きい電流より小さい値に設定されるのが好ましい。このように通常ではあり得ない値の電流を検出することにより早期かつ確実に電流異常であることを検出することが可能となる。また、LS2αは、例えばソレノイド駆動回路48の途中のいずれかが断線した場合など、電気回路50に通常流れる電流よりはるかに小さい電流がソレノイド47に流れること(または電流が流れないこと)を想定し、その小さい電流より大きい値に設定されるのが好ましい。このように通常ではあり得ない値の電流を検出することにより早期かつ確実に電流異常であることを検出することが可能となる。
なお、第2上限閾値US2と第2下限閾値LS2とで規定される範囲が第2範囲である。また、第2上下限閾値US2,LS2は、第1上下限閾値US1,LS1から一定距離だけ離れた値、または所定値以上離れた値に設定するようにしてもよい。
本実施の形態においては、目標電流がC(a)である場合、実電流の理想値はCR(a)である。このとき、CR(a)=C(a)である。また、目標電流C(a)に対する正常範囲の上限値UNおよび下限値LNは、UN(a)およびLN(a)である。さらに、第1上下限閾値US1,LS1は、US1(a),LS1(a)であり、第2上下限閾値US2,LS2は、US2α,LS2βである。
本実施の形態においては、複数の判定閾値のうち最内判定閾値(上限側および下限側でそれぞれ正常範囲に最も近い判定閾値)は、目標電流に対する実電流および電気回路50によるばらつきに基づいて決定される第1上下限閾値US1,LS1である。複数の判定閾値のうち最外判定閾値(上限側および下限側でそれぞれ正常範囲に最も遠い判定閾値)は、最内判定閾値より外側の一定の値である第2上下限閾値US2,LS2である。
次に、上述した電気回路の異常検出装置の異常判定の一例について図4のフローチャートに沿って説明する。ブレーキECU16は、車両のイグニションスイッチ(図示省略)がオン状態になると、上記フローチャートに対応したプログラムを実行する。ブレーキECU16が起動されると、ブレーキECU16は、目標電流を読み込み(ステップ102)、目標電流から第1および第2範囲を算出する(ステップ104)。
具体的には、ブレーキECU16は、図3に示す複数の判定閾値、すなわち第1上下限閾値US1,LS1および第2上下限閾値US2,LS2から、ステップ102で読み込んだ目標電流に対する第1および第2範囲を算出する。例えば、目標電流がC(a)である場合には、第1範囲はLS1(a)以上US1(a)以下であり、第2範囲はLS2α以上US2α以下である。
次に、ブレーキECU16は、電流検出部44によってソレノイド47に流れる実電流を検出する(ステップ106)。そして、ブレーキECU16は、それぞれの判定閾値と電流検出手段によって検出された実電流との大小を比較する(ステップ108,110)。
実電流が第1および第2範囲内にある場合には、ブレーキECU16は、ステップ108,110で「YES」と判定し、カウンタA,Bをクリアし(ステップ112)、その後プログラムをステップ102に戻す。
実電流が第2範囲内にない場合には、ブレーキECU16は、実電流が正常判定範囲外であると判定し(ステップ108で「NO」と判定し)、カウンタA,Bをそれぞれ1だけカウントアップする(ステップ114)。そして、ブレーキECU16は、実電流が第2範囲内にない状態(実電流が正常判定範囲外であるとの判定)が第2待機時間(カウント値B1に相当する時間)だけ継続しているか否かを判定する(ステップ116)。なお、正常判定範囲は第2範囲のことである。
ブレーキECU16は、カウンタBがB1未満である場合には、実電流が第2範囲内にない状態が第2待機時間だけ継続していないと判定して、その後プログラムをステップ102に戻す。一方、カウンタBがB1に達した場合には、実電流が第2範囲内にない状態が第2待機時間だけ継続していると判定して、電気回路50が電流異常である旨の判定を行う(ステップ118)。
実電流が第2範囲内にあるが第1範囲内にない場合には、ブレーキECU16は、ステップ108,110で「YES」、「NO」と判定し、カウンタAを1だけカウントアップする(ステップ120)。そして、ブレーキECU16は、実電流が第2範囲内にあるが第1範囲内にない状態が第2待機時間より長い第1待機時間(カウント値A1に相当する時間)だけ継続しているか否かを判定する(ステップ122)。
ブレーキECU16は、カウンタAがA1未満である場合には、実電流が第2範囲内にあるが第1範囲内にない状態が第1待機時間だけ継続していないと判定して、その後プログラムをステップ102に戻す。一方、カウンタAがA1に達した場合には、実電流が第2範囲内にあるが第1範囲内にない状態が第1待機時間だけ継続していると判定して、電気回路50が電流異常である旨の判定を行う(ステップ118)。
なお、上記では、ステップ108の後でステップ110の処理を行うようにしたが、これに限らず、ステップ110の後でステップ108の処理を行うようにしてもよい。
なお、上述したステップ108,110の処理が、それぞれの判定閾値と実電流との大小を比較することにより、電気回路50の電流異常の判定を実施する判定手段である。また、上述したステップ108,110,114,116,120,122の処理が、それぞれの判定閾値と実電流との大小を比較して実電流が正常判定範囲外であると判定し、その判定が判定閾値に応じて設定される待機時間だけ継続している場合には、電気回路50が電流異常であると判定する判定手段である。これら判定は、電流検出部44によって検出された実電流と判定閾値との大小の比較を、判定閾値のうち正常範囲から遠いものから近いものに順に完了させて、電気回路50の電流異常の判定を実施するものである。
このような電流異常の判定による一例を図5を参照して説明する。時刻t1に目標電流が変更(増大)された場合、時刻t1以降の目標電流はそれまでの目標電流より大きい値となり、実電流が最初は目標電流に対して大きく振動するがしばらくすると目標電流に収束する場合を例に挙げる。例えば、実電流は、時刻t1から時刻t2まで、および時刻t5から時刻t6までは第2下限閾値以上第1下限閾値以下であり、時刻t2から時刻t3まで、時刻t4から時刻t5まで、および時刻t6以降は第1下限閾値以上第1上限閾値以下であるとする。
実電流が第1範囲外である時間帯(時刻t1〜t2、時刻t3〜t4、時刻t5〜t6)はあるが、いずれの時間帯も、第1範囲(判定閾値)に応じて設定された第1待機時間より短いので、電流異常であると誤判定されることなく、時刻t6から第1待機時間経過時点にて電流異常がないことを検出することができる。なお、実電流が第1範囲外である時間が第1待機時間より長い場合には、電流異常であると判定することができる。
さらに、このような電流異常の判定による他の一例を図6を参照して説明する。時刻t11にソレノイド駆動回路48のいずれかの部位が断線した場合を例に挙げる。この場合、実電流は、断線するまでは目標電流とほぼ同じであるが、断線以降は急激に小さくなり最終的には0となる。例えば、実電流は、時刻t11から時刻t12までは第1範囲内にあり、時刻t12から時刻t13までは第2下限閾値以上第1下限閾値以下であり、時刻t13以降は第2下限閾値以下であるとする。
実電流と第2範囲とを比較して、電流異常の判定を行い、実電流が第2範囲外である状態が第1待機時間より短い第2待機時間だけ継続していれば、電流異常である旨の判定がされる。
上述した説明から明らかなように、本実施の形態によれば、ソレノイド47を含む電気回路50の電流異常を検出するための判定閾値が複数存在し、それら判定閾値は、目標電流に対して設定される実電流の正常範囲の上限値および下限値の少なくともいずれか一方から正常範囲から遠ざかる方向に順に配設され、正常範囲の近くに設定される値ほど電気回路50の電流異常の判定に必要な待機時間が長時間に設定される。判定手段(41b;ステップ108,110)は、それぞれの判定閾値について電流検出手段(電流検出部44)によって検出された実電流との大小を比較することにより、電気回路50の電流異常の判定を実施する。これによれば、断線、短絡などの異常が発生し実電流が正常範囲から十分離れた値となる場合には、正常範囲から離れた判定閾値(第2上限閾値、第2下限閾値)と実電流とを比較することによって電流異常を短時間に検出することができる。さらに、断線、短絡などの異常以外の異常であって実電流が正常範囲からあまり離れない値となる場合には、正常範囲に近い判定閾値(第1上限閾値、第1下限閾値)と実電流とを比較することによって電流異常を時間をかけて精度よく検出することができる。したがって、電気回路50の異常検出装置において、精度よい異常検出を維持しつつ、断線、短絡などの明らかな異常が発生した場合に短時間で異常を検出することができる。
また、判定手段(41b;ステップ108,110,114,116,120,122)は、それぞれの判定閾値について電流検出手段(電流検出部44)によって検出された実電流との大小を比較して実電流が正常判定範囲外であると判定し、その判定が判定閾値に応じて設定される待機時間だけ継続している場合には、電気回路50が電流異常であると判定するので、異常の種類(程度)に応じた適切な検出時間で確実に電流異常を検出することできる。
また、複数の判定閾値のうち正常範囲から最も遠い上限閾値および下限閾値(第2上限閾値および第2下限閾値)が一定値であるため、これらを実電流の正常範囲から十分遠い値に設定することができ、断線、短絡などの異常が発生した場合にその異常を確実に検出することができる。また、例えば、前記正常範囲から最も遠い上限閾値および下限閾値を、目標電流をパラメータとする関数とした態様と比較して、これら上限閾値および下限閾値が単純なものとなり、これらと実電流との大小比較に係る演算が容易となる。
また、ソレノイド47がリニアソレノイドである場合に、目標電流が使用電流範囲の範囲内であれば確実かつ適切な時間で電流異常を検出することができる。
また、電磁弁21,31への電流異常によるブレーキアクチュエータ15の異常が発生した場合、その異状を異常の種類に応じた適切な時間で検出することができ、異常発生後適切な時間でその異常に対する適切な処理(例えば電磁弁の制御停止による車両の横滑り防止制御の停止)を実施することができる。
なお、本発明をリニアソレノイドでなく例えば増圧弁22aを構成する開閉(オンオフ)ソレノイドに適用してもよい。
本発明による電気回路の異常検出装置を適用した液圧ブレーキ装置の一実施の形態を示す概要図である。 本発明による電気回路の異常検出装置の電気的な構成を示す概要図である。 判定閾値を説明するための図である。 図1に示すブレーキECUにて実行される制御プログラムのフローチャート例である。 本発明による電気回路の異常検出装置の作動の一例を示すタイムチャートである。 本発明による電気回路の異常検出装置の作動の他の一例を示すタイムチャートである。
符号の説明
11…ブレーキペダル、12…真空式制動倍力装置、13…マスタシリンダ、14…リザーバタンク、15…ブレーキアクチュエータ、16…ブレーキECU(電気回路の異常検出装置)、21,31…差圧制御弁(リニアソレノイド弁)、22…左後輪液圧制御部、23…右前輪液圧制御部、24…第1減圧部、32…左前輪液圧制御部、33…右後輪液圧制御部、34…第2減圧部、41…目標電流決定部、42…目標値生成部、43…判定部、44…電流検出部、45…電源、46…スイッチング素子(スイッチング手段)、47…ソレノイド、48…ソレノイド駆動回路、50…電気回路、Wfl,Wfr,Wrl,Wrr…車輪、Sfl,Sfr,Srl,Srr…車輪速センサ、WCfl,WCfr,WCrl,WCrr…ホイールシリンダ。

Claims (5)

  1. 電源(45)に接続され通電電流の大きさに応じて電気・電子部品を駆動・非駆動させるソレノイド(47)と、
    前記電源から前記ソレノイドへの通電をオン・オフして通電量を調整可能なスイッチング手段(46)と、
    前記ソレノイドの実電流を検出する電流検出手段(44)と、
    予め設定された目標電流に前記検出された実電流の値が近づくように前記スイッチング手段のオン・オフ状態をフィードバック制御する駆動手段(42)と、
    を備えた電気回路(50)の異常検出装置において、
    前記目標電流に対して設定される前記実電流の正常範囲の上限値および下限値の少なくともいずれか一方から前記正常範囲から遠ざかる方向に順に配設されて前記電気回路の電流異常を検出するための複数の判定閾値であって、前記正常範囲の近くに設定される値ほど前記電気回路の電流異常の判定に必要な待機時間が長時間に設定される判定閾値(第1および第2上限閾値、第1および第2下限閾値)を用いることで、前記電流検出手段によって検出された実電流と前記判定閾値との大小の比較を、前記判定閾値のうち前記正常範囲から遠いものから近いものに順に完了させて、前記電気回路の電流異常の判定を実施する判定手段(43;ステップ108,110,114,116,120,122)
    を備えたことを特徴とする電気回路の異常検出装置。
  2. 請求項1において、前記判定手段は、前記判定閾値のうち前記正常範囲から遠いものから近いものに順に、前記電流検出手段によって検出された実電流との大小を比較して前記実電流が正常判定範囲外であると判定し(ステップ108,110)、その判定が前記判定閾値に応じて設定される前記待機時間だけ継続している場合には(ステップ114,116,120,122)、前記電気回路が電流異常であると判定することを特徴とする電気回路の異常検出装置。
  3. 請求項1または請求項2において、前記複数の判定閾値のうち前記正常範囲から最も遠い上限閾値(第2上限閾値)は、前記ソレノイドの使用電流範囲において他の判定閾値よりも大きい一定値であり、前記複数の判定閾値のうち前記正常範囲から最も遠い下限閾値(第2下限閾値)は、前記ソレノイドの使用電流範囲において他の判定閾値よりも小さい一定値であることを特徴とする電気回路の異常検出装置。
  4. 請求項1乃至請求項3の何れか一項において、前記ソレノイドはリニアソレノイドであることを特徴とする電気回路の異常検出装置。
  5. 請求項1乃至請求項4の何れか一項において、前記ソレノイドは車両の横滑り防止制御が実施されるブレーキアクチュエータ(15)を構成する電磁弁(21,31)に使用されていることを特徴とする電気回路の異常検出装置。


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