JP5092214B2 - セメント用添加剤 - Google Patents
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Description
従来、減水剤としてナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩、リグニンスルホン酸の塩などが用いられてきたが、これら減水剤は、セメント組成物中に使用する練り混ぜ水量を減らす効果はあるものの、同時に要求される様々な性能を満足できるものではなく、例えば、セメント組成物の凝結時間が遅くなるという問題がある。
これらの問題点を解決するために、ポリカルボン酸系の減水剤、例えばポリオキシエチレンモノアリルエーテル−マレイン酸共重合体を主成分とする減水剤が用いられている(例えば、特許文献1参照)。しかし、セメント組成物中に使用する練り混ぜ水量を減らす効果は大きいが、それでも様々な要求性能を同時に満たすには不十分であり、例えば、製造したコンクリートの施行時間(スランプ保持効果)に限界がある。また、ポリカルボン酸系の減水剤、すなわちポリオキシエチレンモノアルケニルモノアルキルエーテル−無水マレイン酸共重合体(例えば、特許文献2参照)や、ポリカルボン酸系の減水剤と含窒素ポリオキシアルキレン化合物との混合物(例えば、特許文献3参照)や、ポリカルボン酸系の共重合体中に含窒素化合物を導入した共重合体(例えば、特許文献4参照)や、ポリカルボン酸系の共重合体と含窒素ポリエーテル化合物との併用(例えば、特許文献5参照)は、セメント組成物中に使用する練り混ぜ水量を減らす効果は大きく、スランプ保持効果も高い。しかしながら、セメント組成物に使用する練り混ぜ水量を減らす効果が大きく、スランプ保持効果が高いポリカルボン酸系の減水剤を用いた場合、セメント組成物に用いる練り混ぜ水量の減少に伴い、セメント組成物を施工する際の作業性が悪い(粘性が高い)という問題が生じている。ここでの粘性とは、コンクリートに動的運動を与えた際に初めて生じるものであり、従来から作業性の指標として用いられてきたスランプ試験では判別できない性能である。この粘性が高いとポンプ圧送によるセメント組成物の流し込み、型枠への打設、表面仕上げなど、特に人手に頼る工程での作業性の低下が問題として指摘されている。
(1)アミノ基またはイミノ基由来の活性水素を5個以上40個未満有しかつ、3個以上の窒素原子を有する化合物(PA)のアミノ基またはイミノ基由来の活性水素に、下記の(i)および(ii)のセグメントが結合順序に関係なく結合され、(i)のセグメントの合計平均付加モル数aと(ii)のセグメントの合計平均付加モル数bとが0.5≦a/b≦5の関係を満たすオキシラン誘導体(A)からなるセメント用添加剤。
(i)オキシランまたはオキシランメタノールを含み、オキシランメタノールを必須の単量体からなり、(PA)のアミノ基またはイミノ基由来の活性水素1当量あたりの合計平均付加モル数が2〜50であるセグメント。
(ii)メチルオキシランまたはエチルオキシランの1種または2種を含む単量体からなり、(PA)のアミノ基またはイミノ基由来の活性水素1当量あたりの合計平均付加モル数が2〜50であるセグメント。
(2)前記のオキシラン誘導体(A)1〜95重量%およびポリカルボン酸系化合物(PC)5〜99重量%とからなるセメント用添加剤。
(3)ポリカルボン酸系化合物(PC)が式(1)の化合物に基づく構成単位(ア)50〜99重量%、式(2)で示されるジカルボン酸または無水マレイン酸に基づく構成単位(イ)1〜50重量%および共重合可能な他の単量体に基づく構成単位(ウ)を、構成単位(ア)および構成単位(イ)との重量の和に対して0〜30重量%有する共重合体である前記のセメント用添加剤。
(4)ポリカルボン酸系化合物(PC)が式(4)で示される化合物に基づく構成単位(エ)50〜99重量%、式(5)で示されるモノカルボン酸に基づく構成単位(オ)1〜50重量%および共重合可能な他の単量体に基づく構成単位(ウ)を、構成単位(エ)および構成単位(オ)との重量の和に対して0〜30重量%有する共重合体である請求項3記載のセメント用添加剤。
(5)前記のセメント用添加剤、骨材、水およびセメントからなるセメント組成物。
(6)セメントに対する水の比率が、重量比で45%以下であることを特徴とする前記のセメント組成物。
従来のコンクリートの作業性の指標とされてきたスランプ値やスランプフロー値に差が見られない場合でも、本発明のセメント用添加剤を用いたセメント組成物は、粘性が低減され、取扱い易いコンクリートが得られるため、ポンプ圧送などに有利であり、施工性の改善と迅速化が可能となる。
オキシラン誘導体(A)の原料となる、アミノ基またはイミノ基由来の活性水素を5個以上40個未満有しかつ、3個以上の窒素原子を有する化合物(PA)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミンなどのポリアルキレンポリアミン;N,N’−ジメチルテトラエチレンペンタミンなどのN−アルキルポリアルキレンポリアミン;ポリエチレンイミン、ポリアリルアミンなどの化合物が挙げられる。(PA)の活性水素の数が40個を越えると、オキシラン誘導体(A)の分子量が大きくなり、本発明の効果が得られにくくなるので好ましくない。(PA)として、好ましくは、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、数平均分子量が300〜1,700のポリエチレンイミンである。さらに好ましくは、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、数平均分子量が300〜1,700のポリエチレンイミンで、最適なのは、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、数平均分子量が300〜1,200のポリエチレンイミンである。なお、用いられる(PA)は単一化合物でも良く2種以上でも良い。
(i)および(ii)のセグメントの結合順序には特に制限ない。(i)または(ii)のセグメントとなる単量体を先に付加させた後、残りの単量体を付加させることによりブロック状に付加させることができる。
オキシラン、メチルオキシランおよびエチルオキシランなどオキシラン類は、原料(PA)のアミノ基またはイミノ基由来の由来の活性水素に付加し、付加したオキシラン類に由来するヒドロキシアルキル基が導入されるが、導入されたヒドロキシアルキル基の水酸基部位には、新たなオキシラン類の付加が逐次起こり、ポリエーテル鎖が形成される。オキシラン類としてオキシランメタノールの付加が起こった場合には、ジヒドロキシアルキル基が導入されるため、原料(PA)のアミノ基またはイミノ基由来の窒素原子1当量あたり2個の水酸基が導入される。それら水酸基に対して新たなオキシラン類が生成することとなり、場合によっては生成するポリエーテル鎖が枝分かれした構造となる。
1)式(1)で示される化合物に基づく構成単位(ア)50〜99重量%と、式(2)で示されるジカルボン酸または無水マレイン酸に基づく構成単位(イ)1〜50重量%および共重合可能な他の単量体に基づく構成単位(ウ)を、構成単位(ア)および構成単位(イ)との重量の和に対して0〜30重量%有する共重合体。
2)式(4)で示される化合物に基づく構成単位(エ)50〜99重量%と式(5)で示されるモノカルボン酸に基づく構成単位(オ)1〜50重量%および共重合可能な他の単量体に基づく構成単位(ウ)を、構成単位(エ)および構成単位(オ)との重量の和に対して0〜30重量%有する共重合体。
1)において、式(1)で示される化合物に基づく構成単位(ア)と、式(2)で示されるジカルボン酸または無水マレイン酸に基づく構成単位(イ)は、重量%で構成単位(ア):構成単位(イ)=50〜99:1〜50の比率であり、この範囲を外れた場合セメント組成物の減水性能とスランプロス防止性能が低下するので好ましくない。好ましくは、重量%で構成単位(ア):構成単位(イ)=75〜99:1〜25の比率である。また、共重合可能な他の単量体に基づく構成単位(ウ)は、構成単位(ア)および構成単位(イ)との重量の和に対して0〜30重量%であり、好ましくは10重量%以下である。
1)または2)において、共重合可能な他の単量体に基づく構成単位(ウ)、あっても無くとも良い。
式(1)、式(3)および式(4)において、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられ、好ましくはオキシエチレン基とオキシプロピレン基であり、より好ましくはオキシエチレン基である。
R5は炭素数1〜4のアルキレン基であり、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基があり、プロピレン基としては、1,2−プロピレン基が好適であり、ブチレン基としては、1,2−ブチレン基、2,3−ブチレン基が好適である。R5の炭素数が4を超えると製造が困難なため好ましくない。
pは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の付加モル数であり、1〜150であり、好ましくは10〜100である。
アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウムが挙げられる。
有機アンモニウムとしては、有機アミン由来のアンモニウムであり、有機アミンとしては、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどが挙げられ、好ましくはモノエタノールアミン、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミンである。
R5、R6およびR8は水素原子または炭素数1〜22の炭化水素基であり、炭素数1〜22の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第三ブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、オレイル基、ドコシル基、フェニル基、ベンジル基、クレジル基、ブチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、ナフチル基などがある。R5、R6およびR8で示される炭化水素基の炭素数が22を超えると、で示される化合物の親水性が十分でなくなるので好ましくない。
式(4)において、rは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数で1〜150であり、好ましくは3〜100である。
式(5)において、sは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数で1〜150であり、好ましくは3〜100である。
また、溶液重合でメタノール、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール、n−ヘキサン、2−エチルヘキサン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチルなどの有機溶剤を用いた重合の場合や塊状重合の際には、ベンゾイルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルペルオキシイソブチレートなどの有機過酸化物やアゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系化合物などを用いることができる。また、その際にはチオグリコール酸、メルカプトエタノールなどの連鎖移動剤を併用することもできる。
セメント用添加剤として、オキシラン誘導体(A)とポリカルボン酸系化合物(PC)を併用する場合において、オキシラン誘導体(A)とポリカルボン酸系化合物(PC)の組成割合は、オキシラン誘導体(A)1〜80重量%とポリカルボン酸系化合物(PC)20〜99重量%であり、好ましくはオキシラン誘導体(A)5〜50重量%とポリカルボン酸系化合物(PC)50〜95重量%であり、さらに好ましくはオキシラン誘導体(A)10〜30重量%とポリカルボン酸系化合物(PC)70〜90重量%である。ポリカルボン酸系化合物(PC)に対してオキシラン誘導体(A)が1重量%より少ないとセメント組成物の粘性低減効果が見られないために多量の添加が必要となり、過剰添加による材料分離やセメントなど水硬性材料の硬化遅延などが起こるため好ましくない。ポリカルボン酸系化合物(PC)に対してオキシラン誘導体(A)が50重量%より多いとセメント組成物の減水性を高めるためには、添加量を多く必要とするが、粘性低減の面からは過剰添加することとなり、過剰添加してもそれに見合う粘性低減効果は見られないため経済性の面では好ましくない。
本発明のセメント組成物には、少なくとも、水、セメントおよび本発明の添加剤を含み、必要に応じて砂・砂利などの骨材、粘土など他の増量材などを配合することもできる。セメントとしては、普通、早強、中庸熱、ビーライトなどのポルトランドセメントや、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、シリカフューム、フライアッシュ、石灰石などの鉱物系粉体を配合した各種混合セメント、石膏などが挙げられる。また、上記の各種セメントに、さらに、高炉スラグ、シリカフューム、フライアッシュ、石灰石などの鉱物系粉体各種粉体を配合しても良い。骨材についても特に制限されることはなく、川砂、山砂、陸砂、砕砂、川砂利、砕石、人工骨材、コンクリート再生骨材など通常用いられている骨材を使用でき、その種類、配合比率は目的に応じて適宜選択して使用できる。
また、セメント組成物の水の比率は、セメントなどの粉体に対して、水が15〜300重量%であるが、セメント組成物中の水の比率が低い場合で、粘性が問題となることが多いため、本発明の効果が発揮しやすい範囲として、好ましくは水が15〜50重量%であり、さらに好ましくは、水が20〜45重量%である。
セメント組成物に使用するセメント用添加剤は、セメント組成物中で、セメントと他の水硬性材料の重量に対して0.01〜5重量%、好ましくは0.02〜3重量%であり、0.01重量%では、十分な分散効果が得られないので好ましくない。
本発明のセメント用添加剤は、その効果を損なわない程度で、必要に応じて他の添加剤と併用することができる。他の添加剤として、主成分が、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩、芳香族スルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩、リグニンスルホン酸の塩、変性リグニンスルホン酸の塩、ポリオキシアルキレンアリールエーテル誘導体、オキシカルボン酸の塩など他のセメント用減水剤や、空気連行剤、膨張剤、防水剤、硬化遅延剤、硬化促進剤、急結剤、乾燥収縮低減剤、消泡剤、防錆剤などが挙げられる。
撹拌機、圧力計、温度計、安全弁、破裂弁、ガス吹き込み管、排気管、冷却用コイル、蒸気ジャケットを装備したステンレス製5Lの容耐圧反応装置に、試薬のペンタエチレンヘキサミン(1モルあたり窒素原子に結合した活性水素:8当量)232gおよび水酸化ナトリウム3gを仕込み、系内を窒素ガスで置換した。攪拌下、80℃まで昇温後、80〜100℃、0.05〜0.5MPa(ゲージ圧)の条件で、別に用意した耐圧容器よりオキシラン1,778gとオキシランメタノール627gの混合物を窒素ガス圧により加圧添加した。添加終了後、同条件で内圧が一定となるまで反応させた後、窒素ガスを吹き込みながら、70〜80℃、13kPa以下で0.5時間処理を行なった後、窒素ガスで0.05MPaまで加圧し、反応物309gを1Lナスフラスコに抜き取った。これに吸着剤7g(商品名:キョーワード700、協和化学工業(株)製)を加え、窒素ガスを吹き込みながら、70〜80℃、13kPa以下で1時間処理を行なった。ろ過により吸着剤を取り除き、ろ過物は0.1N過塩素酸を用いた電位差滴定により全アミン価を測定したところ129.4KOHmg/gであった。
残りの反応物は、80〜100℃、0.05〜0.5MPaの条件でメチルオキシラン836gをガス吹き込み管より窒素ガスにより加圧添加した。添加終了後、同条件で内圧が一定になるまで反応させた後、窒素ガスを吹き込みながら、70〜80℃、13kPa以下で1時間処理を行なった後、窒素ガスで0.05MPaまで加圧後、5Lナスフラスコに全量を取り出したところ3,062gであった。これに吸着剤72g(商品名:キョーワード700、協和化学工業(株)製)を加え、窒素ガスを吹き込みながら、70〜80℃、13kPa以下で1時間処理を行なった。ろ過により吸着剤を取り除き、表1に示すオキシラン誘導体(a)を得た。0.1N過塩素酸を用いた電位差滴定により全アミン価を測定したところ97.2KOHmg/gであった。
合成例1で用いたものと同様の装置に、トリエチレンテトラミン(東ソー(株)製)146g(1モルあたり窒素原子に結合した活性水素:6当量)、水酸化ナトリウム5gを仕込み、系内を窒素ガスで置換した。攪拌下、80℃まで昇温後、80〜100℃、0.05〜0.5MPaの条件でオキシラン2,133gをガス吹き込み管より窒素ガス圧により加圧添加した。添加終了後、同条件で内圧が一定となるまで反応させた後、窒素ガスを吹き込みながら、70〜80℃、13kPa以下で1.0時間処理を行なった。窒素ガスで0.05MPaまで加圧し、反応物315gを1Lナスフラスコに抜き取った。これに吸着剤7g(商品名:キョーワード700、協和化学工業(株)製)を加え、窒素ガスを吹き込みながら、70〜80℃、13kPa以下で1時間処理を行なった。ろ過により吸着剤を取り除き、ろ過物は0.1N過塩素酸を用いた電位差滴定により全アミン価を測定したところ98.2KOHmg/gであった。残りの反応物に、80〜100℃、0.05〜0.5MPaの条件で、オキシランメタノール812gをガス吹き込み管より窒素ガスにより加圧添加した。添加終了後、同条件で内圧が一定となるまで反応させた後、窒素ガスを吹き込みながら、70〜80℃、13kPa以下で0.5時間処理を行なった。窒素ガスで内圧を0.05MPaとし、反応物322gを抜き取り、前記と同様に吸着剤処理を行ない全アミン価を測定したところ70.3KOHmg/gであった。残りの反応物に、80〜100℃、0.05〜0.5MPaの条件で、メチルオキシラン941gをガス吹き込み管より窒素ガスにより加圧添加した。添加終了後、添加終了後、同条件で内圧が一定となるまで反応させた後、窒素ガスを吹き込みながら、70〜80℃、13kPa以下で0.5時間処理を行なった。窒素ガスで0.05MPaまで加圧し、反応物318gを1Lナスフラスコに抜き取り、前記と同様に吸着剤処理を行ない全アミン価を測定したところ54.3KOHmg/gであった。残りの反応物に、80〜100℃、0.05〜0.5MPaの条件で、エチルオキシラン814gをガス吹き込み管より窒素ガスにより加圧添加した。添加終了後、同条件で内圧が一定となるまで反応させた後、窒素ガスを吹き込みながら、70〜80℃、13kPa以下で1時間処理を行なった。窒素ガスで常圧に戻し、60℃まで冷却後、5Lナスフラスコに全量を取り出したところ3,619gであった。前記と同様の吸着剤85gを加え、窒素ガスを吹き込みながら、70〜80℃、13kPa以下で1時間処理を行なった。ろ過により吸着剤を取り除き、表1に示すオキシラン誘導体(b)を得た。0.1N過塩素酸を用いた電位差滴定により全アミン価を測定したところ44.8KOHmg/gであった。
以下同様にして、表1に示すオキシラン誘導体(c)〜(f)を得た。
*2・・・(PA)1分子あたりの窒素原子に結合した活性水素数
*3・・・−はブロック状付加を示し、/はランダム状付加を示す。
注)(Ox)、(Om)、(Mo)および(Eo)は、それぞれオキシラン、オキシランメタノール、メチルオキシランおよびエチルオキシランを由来とする基の略である。
合成例3[ポリカルボン酸系化合物(イ)の合成]
撹拌装置、冷却管、温度計および窒素ガス導入管を装着した2リットル四つ口フラスコに、ポリオキシエチレン(平均付加モル数40)アリルメチルエーテル916g(0.5モル)、無水マレイン酸49g(0.5モル)およびトルエン200gを秤取り、窒素ガス雰囲気下、50〜55℃に加温し均一に溶解させた。続いて、ベンゾイルペルオキシド5.0gを加え、80〜85℃で8時間反応させた。続いて80〜90℃の範囲で、窒素ガスを吹き込みながら13kPa以下の減圧下でトルエンを除去した。反応物を60℃まで冷却後、イオン交換水1,455gを加え、ポリカルボン酸系化合物(イ)を含む水溶液を得た。水溶液10gを120±2℃に調整した恒温槽で2時間放置後の重量変化により求めた水溶液の水分は39.9重量%であり、GPCにより求めた共重合体の重量平均分子量は22,400(ポリエチレングリコールを標準体として換算)であった。
撹拌装置、2個の滴下漏斗、冷却管、温度計および窒素ガス導入管を装着した3リットル四つ口フラスコにイオン交換水520gを秤取り、窒素ガス雰囲気下、65〜70℃に加温した。別に用意したポリオキシエチレン(平均付加モル数23)メチルエーテルメタクリレート734g、メタクリル酸93.7g、メルカプトエタノール5.8gをイオン交換水560gに溶解させたモノマー溶液と、過硫酸アンモニウム11.0gをイオン交換水180gに溶解させた開始剤溶液を別々の滴下漏斗に秤取り、それぞれ65〜70℃で5時間かけて滴下した。滴下終了後さらに2時間攪拌反応させ、ポリカルボン酸系化合物(ロ)を含む水溶液を得た。水溶液10gを120±2℃に調整した恒温槽で2時間放置後の重量変化により求めた水溶液の水分は40.0重量%であり、GPCにより求めた重量平均分子量は25,100であった。
撹拌装置、滴下漏斗、冷却管、温度計および窒素ガス導入管を装着した3リットル四つ口フラスコに、ポリオキシエチレン(平均付加モル数25)アリルメチルエーテル762g、無水マレイン酸73.3gおよびイオン交換水1,070gを秤取り、窒素ガス雰囲気下、60〜65℃に加温し均一に溶解させた。続いて、過硫酸アンモニウム12.0gをイオン交換水200gに溶解させた溶液を、60〜65℃で6時間かけて滴下した。滴下終了後さらに3時間攪拌反応させ、ポリカルボン酸系化合物(ハ)を含む水溶液を得た。水溶液10gを120±2℃に調整した恒温槽で2時間放置後の重量変化により求めた水溶液の水分は40.1重量%であり、GPCにより求めた重量平均分子量は23,500であった。
合成例1で得たオキシラン誘導体(a)25gおよび合成例3で得たポリカルボン酸系化合物(イ)を含む水溶液251.2gを2リットルビーカーに秤取り、これにイオン交換水222.8gを加えて15分間撹拌した。続いて撹拌下、消泡剤としてディスホームCC−118(日本油脂(株)製)1gを投入し均一に分散させ、セメント用添加剤(1)を調整した。
上記で調整したセメント用添加剤(1)と空気連行剤6.0g[マイクロエア202((株)ポゾリス物産製)を水で10倍(重量)希釈したもの]を使用して、以下のようにコンクリート試験を行なった。
セメント用添加剤の配合を表2、表3に示す。
「コンクリート試験」
コンクリート試験は、温度20±3℃、湿度50%〜70%に調整した試験室にて行った。
「コンクリートの調整」
50Lの強制二軸ミキサに研究用セメント(社団法人セメント協会製)14.6kg、粗骨材(高知県鳥形山産砕石、表面乾燥状態)27.2kg、細骨材(千葉県君津産丘砂、表面水率0.8%)7.3kgおよび(栃木県田沼産砕砂、表面水率0.1%)17.0kgを投入し、15秒間空練りを行った。空練り終了後、所定量のセメント用添加剤と空気連行剤を上水に混合分散させた練り混ぜ水5.0kgを投入し、120秒間練り混ぜ、コンクリートを80L型樹脂製コンテナに排出して調整した。
・スランプフロー
90cm×90cmの鉄製底板の中心部分に置いたJISA1101記載のスランプコーンにコンクリートを詰め、コーンのみを上方に抜き、コンクリートの広がりが静止した時点でのコンクリートの最大直径とそれに直交する方向の直径を測定し、平均値を0.5cm単位で求めスランプフロー値とする。
・空気量
ワシントン型エアメーター(テスコ(株)製)を用いJISA1128に準拠して測定を行った。
・傾斜フロー試験
傾斜フロー試験器((株)ニューテック製)を用い、傾斜角23.0度で測定を行った。測定は、試験器上部にある10L容の投入部に、コンクリートを1層あたり10回スランプ測定用の突き棒で突き、全部で3層に分けて投入し、鏝で上面を均一にする。コンクリート投入完了後、速やかにゲートを開き、流出したコンクリートが、ゲートから25cmと30cmにあるセンサー間を通過する速度(V1)と、ゲートから30cmと35cmにあるセンサー間を通過する速度(V2)を測定し、V1とV2の平均を求め傾斜フロー速度とする。また、ゲートを開けてから60cmの距離をコンクリートが到達するのに要する時間の測定も行った。
なお、スランプフローの測定と傾斜フロー試験はコンクリートの調整後、ほぼ同時に行った。
結果を表4に示す。
実施例1におけるオキシラン誘導体(a)の代わりに、合成例2で得たオキシラン誘導体(b)、実施例1におけるポリカルボン酸系化合物(イ)の代わりに合成例4で得たポリカルボン酸系化合物(ロ)を用い、含有比率が表2記載の重量比になるように調整した以外は、実施例1と同様にしてセメント用添加剤(2)を調整し、セメント用添加剤(2)と空気連行剤を表4の割合で使用してコンクリート試験を行った。結果を表4にまとめた。
実施例3〜5
オキシラン誘導体(c)〜(e)、および合成例3および合成例5で得たポリカルボン酸系化合物(イ)および(ハ)を用いた表2に示すセメント用添加剤(3)〜(5)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、それぞれコンクリート試験を行った。結果を表4にまとめた。
実施例1におけるオキシラン誘導体(a)の代わりに、オキシラン誘導体(f)を用い、実施例1と同様の方法で調整したセメント用添加剤(6)を用いて、セメント用添加剤(6)と空気連行剤を表3の割合で使用してコンクリート試験を行った。結果を表5にまとめた。
比較例2
比較例1におけるセメント用添加剤(6)の代わりに、市販の高性能AE減水剤(シーカメント1100NT、日本シーカ(株)製)と空気連行剤を表5の割合で用いて、それぞれコンクリート試験を行った。結果を表5に示す。
一方、表5に示した比較例のコンクリートは、実施例と同様の規定範囲のスランプフローおよび空気量であるが、実施例と比べて傾斜フロー速度は遅く、最終フロー到達時間も長いため、取り扱いにくく、粘性は高いと判断される。
比較例1で試験したコンクリートは、実施例1と比較して、取り扱いにくく、粘性は高いと判断される。比較例1のセメント用添加剤(6)は、オキシラン誘導体(f)を含有するものであるが、グラフト鎖に本願発明の必須の単量体であるオキシランメタノールおよびメチルオキシランまたはエチルオキシランからなる疎水性部位を含んでいないためであると考えられる。
さらに、市販品を用いた比較例2の場合も他の比較例と同様で、実施例と比べると、傾斜フロー速度は実施例よりも遅く、最終フロー到達時間も遅く、粘性は高いと判断できる。
Claims (5)
- アミノ基またはイミノ基由来の活性水素を5個以上40個未満有しかつ、3個以上の窒素原子を有する化合物(PA)のアミノ基またはイミノ基由来の活性水素に、下記の(i)および(ii)のセグメントが結合順序に関係なく結合され、(i)のセグメントの合計平均付加モル数aと(ii)のセグメントの合計平均付加モル数bとが0.5≦a/b≦5の関係を満たすオキシラン誘導体(A)1〜95重量%およびポリカルボン酸系化合物(PC)5〜99重量%からなるセメント用添加剤。
(i)オキシランまたはオキシランメタノールを含み、オキシランメタノールを必須とする単量体からなるセグメントであって、(PA)のアミノ基またはイミノ基由来の活性水素1当量あたりの合計平均付加モル数が2〜50であるセグメント。
(ii)メチルオキシランまたはエチルオキシランの1種または2種を含む単量体からなり、(PA)のアミノ基またはイミノ基由来の活性水素1当量あたりの合計平均付加モル数が2〜50であるセグメント。 - ポリカルボン酸系化合物(PC)が式(1)の化合物に基づく構成単位(ア)50〜99重量%、式(2)で示されるジカルボン酸または無水マレイン酸に基づく構成単位(イ)1〜50重量%および共重合可能な他の単量体に基づく構成単位(ウ)を、構成単位(ア)および構成単位(イ)との重量の和に対して0〜30重量%有する共重合体である請求項1記載のセメント用添加剤。
(ただし、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、R4は炭素数1〜4のアルキレン基を表し、R5は水素原子または炭素数1〜22の炭化水素基、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種または2種以上で、2種以上の場合はブロック状でもランダム状でも良く、pは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数でp=1〜150である。)
(ただし、Xは−OM2または−Y−(AO)rR6〔式(3)〕を表し、M1およびM2はそれぞれ独立に水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表し、Yはエーテル基またはイミノ基を表し、R6は水素原子または炭素数1〜22の炭化水素基、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種または2種以上で、2種以上の場合はブロック状でもランダム状でも良く、rは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数でr=1〜150である。) - ポリカルボン酸系化合物(PC)が式(4)で示される化合物に基づく構成単位(エ)50〜99重量%、式(5)で示されるモノカルボン酸に基づく構成単位(オ)1〜50重量%および共重合可能な他の単量体に基づく構成単位(ウ)を、構成単位(エ)および構成単位(オ)との重量の和に対して0〜30重量%有する共重合体である請求項2記載のセメント用添加剤。
(ただし、R7は水素原子またはメチル基を表し、R8は水素原子または炭素数1〜22の炭化水素基を表し、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種または2種以上で、2種以上の場合はブロック状でもランダム状でも良く、sは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数でs=1〜150である。)
(ただし、R9は水素原子またはメチル基を表し、M3は水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表す。) - 請求項1〜3いずれか1項に記載のセメント用添加剤、骨材、水およびセメントからなるセメント組成物。
- セメントに対する水の比率が、重量比で45%以下であることを特徴とする請求項4記載のセメント組成物。
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