JP5090777B2 - アルミニウム箔 - Google Patents
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Description
従来は、これらの食品包装体を、ガスコンロ等にかけることにより、直火で加熱調理するのが一般的であったが、近年は、火災に対する安全性などから電磁調理器が急速に普及してきており、電磁調理器による加熱調理が可能な食品包装体が要請されている。
電磁調理器に内蔵されたコイルに交流電流を流し、その上に金属製の容器を置くと、磁力線の変化により電磁誘導が起こり、磁力線の変化を妨げる向きに容器の底面に渦電流が発生する。
この渦電流が容器に流れると、容器の素材である金属の持つ電気抵抗によってジュール熱が発生し、容器に収納された食品が加熱されるという仕組みである。
また、一般消費者に「鍋確認ランプ」等で知られている、電磁調理器が動作可能か否かを判断する基準は製造者により異なるため、一部のメーカーや型番の電磁調理器にアルミニウム箔成形容器が使用できないことがあった。
電気抵抗値を上げる最も簡単な方法はアルミニウム箔の厚みを薄くすることであるが、あまりに薄くすると、アルミニウム箔成形容器の強度が低下し、食品を保持できなかったり変形したりするおそれがある。
電気抵抗値を上げる他の方法として、不純物の添加があるが、容器に収納された食品は塩分を含んでいることが多く、不純物の添加によりアルミニウム箔成形容器の耐食性が劣ると、容器が変色したり腐食孔から内容物が洩れたりするおそれがある。
このように、箔の厚みを薄くしたり、不純物の添加量を増やしたりするにも限界がある。
例えば特許文献1には、2枚以上のアルミニウム箔を積層してその外面に断熱層を設けたアルミニウム箔成形容器が開示されている。
また、特許文献2には、鉄箔とアルミニウム箔を重ね合せて成形した容器が開示されている。
特許文献3には、少なくとも底面を平面状に形成すると共に、その厚さを12μm〜96μmに形成したアルミニウム箔成形容器が開示されている。
特許文献4には、0.15〜0.35重量%のSiと、2.2〜2.8重量%のMgと、0.10〜0.35重量%のCrと、合計で1.5重量%以下の微量元素と、100重量%中残部がAlよりなるアルミニウム箔成形容器が開示されている。
また、0.15〜0.35重量%のSiと、1.0〜1.8重量%のMnと、0.8〜1.8重量%のMgと、合計で1.5重量%以下の微量元素と、100重量%中残部がAlよりなるアルミニウム箔成形容器とが開示されている。
特許文献5には、少なくとも底壁が2枚以上のアルミニウム箔を積層してなり、かつ積層された箔同士は一部で互いに接触しているアルミニウム箔成形容器が開示されている。
特許文献6には、0.1〜2.0質量%のMgと、0.03〜0.5質量%のCrを含有し、100質量%中残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金芯材の片面または両面に、0.01〜0.05質量%のCrと、0.05〜0.5質量%のTiを含有し、100質量%中残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金皮材を被覆した複合アルミニウム箔からなる成形容器が開示されている。
また、特許文献2に記載の容器は、製造工程が複雑になるうえ重量が大きくなる問題がある。
特許文献3および4に記載の容器は、十分な抵抗値に至っていないため、一部の電磁調理器では加熱調理できないという問題があった。
特許文献5に記載の容器は、容器底壁の積層されたアルミニウム箔の接触面積が異なれば抵抗値も異なってくるため、例えば、内容物充填時に底面が変形して接触面積が増せば抵抗値が小さくなり、必要な抵抗値が得られなくなる。
特許文献6に記載の容器は、芯材と皮材の組成が異なれば加工性も異なるため、合わせ箔として得られる容器の形状が限定的となり、意匠性に富んだ容器を求める市場の要求に応えることができず、また、工数もかさむため使い捨てのアルミニウム箔容器としては高価なものとなる問題がある。
具体的には、この発明にかかるアルミニウム箔を、100質量%中に、95質量%以上のAlと、0.1〜1.0質量%のCrと、1.0〜3.0質量%のMnと、0.005〜0.6質量%のTiと、0.005質量%以下のCuと、0.1質量%以下のSiと、0.2質量%以下のFeと、0.1質量%以下のMgとを含有したアルミニウム合金から形成し、20℃における電気比抵抗値を5.5〜10μΩcmとしたものである。
また、発明にかかるアルミニウム箔成形容器であって、少なくとも底壁と、底壁から立ち上がる周壁とを有するものをこのアルミニウム箔から形成したのである。
さらに、発明にかかる食品包装体を、このアルミニウム箔成形容器に食品を収納して形成したのである。
ここで、このアルミニウム箔の厚みは、50〜200μmとするのが好ましい。
また、アルミニウム箔の平均結晶粒径は、1〜10μmであるのがなお好ましい。
図示のように、底壁11には多数のエンボスが形成され、周壁12には多数の縦リブが形成され、フランジ13の外周には縁巻きが設けられている。
このアルミニウム箔成形容器10は、麺類、鍋物等の食品を収納した状態で、主として電磁調理器による加熱調理に用いられる。
ここで底壁11の投影面積は、約70〜255cm2 が好ましい。70cm2 未満では電磁調理器による加熱ができず(温度が上がらない)、255cm2 を越えると容器としての強度が不充分となるからである。
なお、この容器10は、ガスコンロ等の直火による加熱調理に用いることも無論可能である。
また、所定の組成を有する溶湯を調製し、これを鋳造して得られたアルミニウム合金の鋳塊を、450〜660℃、好ましくは450〜550℃で均質化処理した後、熱間圧延および冷間圧延を施すことにより得てもよい。
また、冷間圧延の途中に、150〜450℃で焼鈍をしても良い。
得られたアルミニウム箔は、成形容器への加工を容易にするため、150〜300℃で最終焼鈍をしても良い。
50μm未満ではアルミニウム箔成形容器10の強度が低下し、食品を保持できなかったり変形したりするおそれがあり、200μmを超えると成形容器への加工が困難になるおそれがあるからである。
10μmを超えると成形容器への加工が困難になるおそれがあるからであり、また平均結晶粒径は小さい方が好ましいが、通常は1μm程度であるからである。
このようなアルミニウム箔は、100℃/秒以上の冷却速度で10mm以下の厚さに鋳造したアルミニウム合金を用いることにより得ることができる。
なお、本発明でいう結晶粒径とは、冷間圧延方向に対して垂直方向の結晶粒の最大幅をいう。
以下に、各組成物、電気比抵抗値の順に詳述する。
また、Mnと共存することにより、電気比抵抗をさらに増大させる効果をもつ。
含有率は、Crが0.1質量%未満であると、電磁調理用の成形容器10として必要な電気比抵抗値が得られず、また、1.0質量%を超えると強度が大きくなりすぎて容器10の成型が困難になるおそれがあることから定められている。
さらに好ましいCrの含有率は0.15〜0.3質量%である。
また、Crと共存することにより、電気比抵抗をさらに増大させる効果をもつ。
含有率は、Mnが1.0質量%未満であると、電磁調理用の成形容器10として必要な電気比抵抗値が得られず、また、3.0質量%を超えると強度が大きくなりすぎて容器10の成型が困難になるおそれがあることから定められている。
さらに好ましいMnの含有率は1.5〜3.0質量%であり、2.1〜2.8質量%であるとなお一層好ましい。
含有率は、Tiが0.005質量%未満であると、電磁調理用の成形容器10として必要な電気比抵抗値が得られず、アルミニウム箔の平均結晶粒径が大きくなり容器10の成型が困難になるおそれがある。
また、0.6質量%を超えると強度が大きくなりすぎて容器10の成型が困難になるおそれがあることから定められている。
さらに好ましいTiの含有率は0.08〜0.25質量%である。
含有率は、Cuが0.005質量%を超えると、成形容器10に収納する食品によってはアルミニウム箔が変色したり腐食孔が形成されたりするおそれがあることから定められている。
ここで、Cu含有率の下限は特に限定されないが、一般に0.0005質量%程度である。さらに好ましいCuの含有率は0.003質量%以下である。
含有率は、Siが0.1質量%を超えると、成形容器10に収納する食品によってはアルミニウム箔が変色したり腐食孔が形成されたりするおそれがあることから定められている。
Si含有率の下限は特に限定されないが、一般に0.06質量%程度である。さらに好ましいSiの含有率は0.01質量%以下である。
含有率は、Feが0.2質量%を超えると、成形容器10に収納する食品によってはアルミニウム箔が変色したり腐食孔が形成されたりするおそれがあることから定められている。
Fe含有率の下限は特に限定されないが、一般に0.001質量%程度である。さらに好ましいFeの含有率は0.08質量%以下である。
含有率は、Mgが0.1質量%を超えると、強度が大きくなりすぎて容器10の成型が困難になるおそれがあることから定められている。
Mg含有率の下限は特に限定されないが、一般に0.001質量%程度である。
Alの含有率は、上記各元素の含有率が上記範囲内であっても、Alが95質量%未満であると、成形容器10に収納する食品によってはアルミニウム箔が変色したり腐食孔が形成されたりするおそれがあることから定められている。
ここで、一般にアルミニウムの製錬、精製、溶製過程でFe、Si、Cu、Ti、V、Ga等の元素が不純物元素として混入するが、種々の品質(品位)のアルミニウムを組み合わせ配合することによってそれらの元素の含有量を調整できる。
この発明におけるアルミニウム合金は、このように不純物元素を調整した後に、有意元素としてある種の元素を添加配合することにより製造される。
なお、95質量%以上のAlとは、化学分析またはグロー放電質量分析法によってCr、Mn、Fe、Si、Cu、Ti、V、Ga、Mgおよび任意の添加元素(ただし、O、N、Cは除く)を定量的に分析し、それらの合計値を100から引いた差として定義する。
ここでO、N、Cを除いたのは、これらの元素が分析試料の作製工程で取り込まれ易いため、分析結果の信頼性が低いからである。
電気比抵抗値が5.5μΩcm未満であると、電磁調理器の使用に必要な抵抗値を得るためにアルミニウム箔の厚みを薄くしなければならず、成形容器10の強度が低下し、内容物を保持できなかったり変形したりするおそれがあるからである。
また、電気比抵抗値が10μΩcmを超えると、耐食性が著しく低下したり、成形容器への加工が困難になったりするおそれがあるからである。
表1に、実施例および比較例にかかるアルミニウム箔の組成を示す。
なお、箔の組成分析はICP発光分光分析装置を用いて行った。
また、比較例1は3004系アルミニウム箔相当材、比較例2は5052系アルミニウム箔相当材である。
また、表中下線が付されている数値は、発明にかかるアルミニウム箔の組成の範囲外であることを示す。
まず、電気比抵抗は、温度293Kにおいて直流四端子法で測定し、表中下線が付されている数値は、発明にかかるアルミニウム箔の電気比抵抗の範囲外であることを示す。
つぎに、平均結晶粒径は、光学顕微鏡により撮った結晶粒写真から任意の100個の結晶粒について、冷間圧延方向に対して垂直方向の結晶粒の最大幅を測定してその平均値として求めた。表中下線が付されている数値は、発明にかかるアルミニウム箔の特に好ましい平均結晶粒径の範囲外であることを示す。
表中○は変色が認められないことを、×は腐食孔が認められることを示す。
表中○は底壁および底壁から立ち上がる周壁に割れが認められる成形容器が全くないことを、×は割れが認められる成形容器が一つ以上あることを示す。
これに対して、比較例1〜3、5、7、8においては、成形性が劣り、比較例1〜3、6〜8においては、耐食性に劣り、比較例1〜4においては電気比抵抗が小さく発熱性が不十分であり、いずれの比較例も実施例より劣ることがわかる。
11 底壁
12 周壁
13 フランジ
Claims (5)
- 100質量%中に、95質量%以上のAlと、0.1〜1.0質量%のCrと、1.0〜3.0質量%のMnと、0.005〜0.6質量%のTiと、0.005質量%以下のCuと、0.1質量%以下のSiと、0.2質量%以下のFeと、0.1質量%以下のMgとを含有し、残部が不可避不純物であり、電気比抵抗値が5.5〜10μΩcmであるアルミニウム箔。
- 厚みが50〜200μmである請求項1に記載のアルミニウム箔。
- 平均結晶粒径が1〜10μmである請求項1または2に記載のアルミニウム箔。
- 請求項1から3のいずれかに記載のアルミニウム箔からなり、少なくとも底壁と、底壁から立ち上がる周壁とを有するアルミニウム箔成形容器。
- 請求項4に記載のアルミニウム箔成形容器に食品を収納してなる食品包装体。
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