JP5089589B2 - 吸光物質含有コロイドシリカ粒子、ナノ吸光材料、及び吸光標識ナノビーズキット - Google Patents

吸光物質含有コロイドシリカ粒子、ナノ吸光材料、及び吸光標識ナノビーズキット Download PDF

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Description

本発明は、吸光物質含有コロイドシリカ粒子、ナノ吸光材料、吸光標識ナノビーズキット及び前記吸光物質含有コロイドシリカ粒子を用いた生体分子の検出ないしは定量方法に関する。
タンパク質等の生体分子の量を測定することは、基礎研究にとどまらず臨床診断においても重要である。例えば、血漿、リンパ液、組織液などの体液中に含まれるサイトカイン、ホルモン、タンパク質、核酸等の生体分子の量を定量すること、または体液中に含まれる微量の特定の生体分子を検出することは、疾病の早期診断あるいは病態の正確な把握に必要不可欠である。
従来、上述のような生体分子を定量するために免疫分析(イムノアッセイ)が用いられ、免疫分析(イムノアッセイ)の分野における測定対象分析物の存在及び濃度を同定するために用いられてきた技術として、原理的には化学発光法(検出限界1.7×10−18〜1×10−20M)、ELISA法(検出限界1×10−15〜1×10−18M)、RIA法(検出限界1×10−15M)、蛍光法(検出限界1×10−14M)が挙げられるが、この順に高感度といわれている(例えば、非特許文献1参照。)。
上記ELISA法は、発色反応に酵素を用いる。酵素は不安定であるため、ELISA法ではウェル間で酵素活性が異なることによって、発色の程度にばらつきが生じ、精度の高いデータ、あるいは再現性の良いデータが得られないことがあった。また、酵素反応の基質の調製や酵素反応による基質の発色反応に時間がかかり、測定結果が得られるまでに長時間と煩雑な操作を要し、大量の検体を短時間で処理することができないことがあった。
ELISA法の煩雑さを解消するために、予め蛍光標識された標識用試薬を用いる上記蛍光法が知られている。蛍光法は、酵素反応を含まず簡便であるものの、標的物質一つに結合する蛍光分子の蛍光強度が非常に小さい上自己消光を起こしたり、また、標識に用いる有機色素が退色しやすいため、感度が良くなかった。
蛍光法と同様に酵素反応を用いず生体分子を検出ないしは定量する上記イムノアッセイとして、様々な吸光物質をタンパク質等の生体分子に結合し、その吸光を指標として、目視または吸光光度計等によって生体分子の検出・定量を行う上記吸光光度法が広く使われている。
その吸光物質として用いられるのは、主に有機分子である。例えば電気泳動後のアクリルアミドゲルをPVDF膜に転写後、アミドブラックまたはCBB(Coomassie Brilliant Blue)で染色し、その吸光を目視で確認することによって、タンパク質の同定を行う。しかしながらアミドブラックまたはCBBによる染色では1ピコモル以下の微量のサンプルについては信頼性の高い同定ができないことがあった。
上記吸光光度法によるイムノアッセイの中でも、金粒子の吸収を観測する、金コロイド免疫測定法が優れている(例えば、特許文献1、2参照。)。しかし、金コロイド免疫測定法は金コロイドが高価であり、コストがかかる。また、吸光波長は金吸収の一種類であり、モル吸光係数も一定であることから、吸光スペクトルの違いないしはモル吸光係数の違いにより該粒子を多種類化するようなことはできず、ハイスループットなアッセイへ応用することができなかった。
今掘和友、山川民夫、「生化学辞典 第3版」(1998)、232、東京化学同人 特開2003−262638公報 特開平6−213891号公報
本発明は、タンパク質等の生体分子を高感度に検出ないしは定量する吸光標識ナノビーズとして、吸光物質を高濃度に含有することにより吸光係数εを増強してなる吸光物質含有コロイドシリカ粒子、及び前記コロイドシリカ粒子からなるナノ吸光材料を提供することを課題とする。
また、吸光スペクトルの違いにより複数種化された複数の吸光物質含有コロイドシリカ粒子、並びに前記複数種化したコロイドシリカ粒子を組み合わせてなる、複数種の標的生体分子を同時に検出ないしは定量しうる吸光標識ナノビーズキットを提供することを課題とする。
さらに、本発明は、モル吸光係数の大きな吸光標識用ナノビーズを用いた生体分子の検出ないしは定量法であって、酵素反応を行わずにタンパク質等の生体分子を短時間かつ高感度に検出ないしは定量する方法を提供することを課題とする。
さらにまた、本発明は、吸光スペクトルの違いにより複数種化された複数個の吸光物質含有コロイドシリカ粒子を組み合わせて用いることによる、複数種の標的生体分子を同時に検出ないしは定量する方法を提供することを課題とする。
本発明によれば、以下の手段が提供される:
(1) 吸光物質が、コロイドシリカ粒子の粒子全体に分布している吸光物質含有コロイドシリカ粒子であって、前記吸光物質とシリカ成分とが化学的に結合もしくは吸着してな前記吸光物質が、下記式で表される、DY-415、DY-495、DY-590、Alexa Fluor405、Alexa Fluor488及びAlexa Fluor568からなる群より選ばれる少なくとも1種である、吸光物質含有コロイドシリカ粒子、
(2) 平均粒径が50nm〜2000nmである、(1)に記載の吸光物質含有コロイドシリカ粒子、
(3) 前記吸光物質の少なくとも1種が前記シリカ粒子全体に分布していることを特徴とする(1)又は(2)に記載の吸光物質含有コロイドシリカ粒子、
(4) 前記コロイドシリカ粒子の吸光スペクトルにおける吸光最大波長が、200nm〜800nmの範囲にあることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の吸光物質含有コロイドシリカ粒子、
(5) 前記吸光スペクトルの極大波長における、前記コロイドシリカ粒子のモル吸光係数が5×10−1cm−1以上であることを特徴とする(4)に記載の吸光物質含有コロイドシリカ粒子、
(6) 前記シリカ粒子の表面にアミノ基、水酸基、チオール基、カルボキシル基、マレイミド基、シアノ基及びスクシンイミジルエステル基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する(1)〜(5)のいずれか1項に記載の吸光物質含有コロイドシリカ粒子、
(7) 前記シリカ粒子の表面が、標的生体分子に特異的に結合もしくは吸着する物質で修飾されたことを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の吸光物質含有コロイドシリカ粒子、
(8) 前記標的生体分子が、抗原、抗体、DNA、RNA、糖、糖鎖、リガンド、受容体、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、ペプチド又は化学物質であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載の吸光物質含有コロイドシリカ粒子、
(9) 吸光標識ナノビーズとして標的生体分子を吸光標識し、その吸光度を測定することあるいは発色を目視で確認することにより該標的生体分子を検出ないしは定量することに用いる、(1)〜(8)のいずれか1項に記載の吸光物質含有コロイドシリカ粒子、
(10) 前記吸光物質含有コロイドシリカ粒子が、各々、吸光スペクトルの極大波長が異なる1〜4種類の吸光物質を含有していることを特徴とする、(1)〜(9)のいずれか1項に記載の吸光物質含有コロイドシリカ粒子、
(11) 前記(1)〜(10)のいずれか1項に記載の吸光物質含有コロイドシリカ粒子からなるナノ吸光材料、
(12) 前記(1)〜(10)のいずれか1項に記載の吸光物質含有コロイドシリカ粒子を2種以上少なくとも有するセットとしてなる吸光標識ナノビーズキット、
(13) 2種以上の標的生体分子を同時に検出ないしは定量する、(12)に記載の吸光標識ナノビーズキット、
(14) 前記2種以上の標的生体分子を、2種以上の吸光物質含有コロイドシリカ粒子を用いてそれぞれ特異的に吸光標識付けすることにより、2種以上の標的生体分子を同時に検出ないしは定量する、(13)に記載の吸光標識ナノビーズキット、
(15) 前記2種以上の吸光物質含有コロイドシリカ粒子が、異なる吸光スペクトルを有することを特徴とする(12)〜(14)のいずれか1項に記載の吸光標識ナノビーズキット、
(16) 前記2種以上の吸光物質含有コロイドシリカ粒子各々が、吸光スペクトルの極大波長が異なる1〜4種類の吸光物質を含有していることを特徴とする、(12)〜(15)のいずれか1項に記載の吸光標識ナノビーズキット、
(17) 検体中の標的生体分子が第1の認識物質によって修飾されている生体分子の検出ないしは定量方法であって、次の工程を含んでなることを特徴とする生体分子の検出ないしは定量方法、
(c1)プレート上に固定した第2の認識物質と、前記標的生体分子とを分子認識させる工程、
(c2)第3の認識物質によって表面修飾された吸光コロイドシリカ粒子を用いて、前記第1の認識物質を分子認識させる工程、及び
(c3)プレート上の前記コロイドシリカ粒子の吸光を検出ないしは定量する工程、
(18) 標的生体分子の抗体認識部位に結合する標識用抗体によって表面修飾された吸光物質含有コロイドシリカ粒子を用いる二抗体サンドイッチ式検出ないしは定量方法、
(19) (a1)検体中の標的生体分子を吸光物質含有コロイドシリカ粒子を用いて吸光標識した後、プレート上に固定した第1の認識物質と、前記コロイドシリカ粒子により吸光標識した標的生体分子とを分子認識させる工程、及び
(a2)プレート上の前記コロイドシリカ粒子の吸光を検出ないしは定量する工程を含んでなることを特徴とする生体分子の検出ないしは定量方法、
(20) (c’1)プレート上に固定した第1の認識物質と、検体中の標的生体分子とを分子認識させる工程、
(c’2)第2の認識物質と、前記第1の認識物質と分子認識した後の前記標的生体分子とを分子認識させる工程、
(c’3)第3の認識物質によって表面修飾された吸光物質含有コロイドシリカ粒子を用いて、前記第2の認識物質を分子認識させる工程、及び
(c’4)プレート上の前記コロイドシリカ粒子の吸光を検出ないしは定量する工程を含んでなることを特徴とする生体分子の検出ないしは定量方法、
(21) (d1)プレート上に固定した第1の認識物質と、検体中の標的生体分子とを分子認識させる工程、
(d2)第2の認識物質と、前記第1の認識物質を分子認識した後の前記標的生体分子とを分子認識させる工程、
(d3)第3の認識物質で、前記第2の認識物質を分子認識させる工程、
(d4)第4の認識物質によって表面修飾された吸光コロイドシリカ粒子を用いて、前記第3の認識物質を分子認識させる工程、及び
(d5)プレート上の前記コロイドシリカ粒子の吸光を検出ないしは定量する工程を含んでなることを特徴とする生体分子の検出ないしは定量方法、
(22) 前記標的生体分子が、抗原、抗体、DNA、RNA、糖、糖鎖、リガンド、受容体、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、ペプチド又は化学物質であることを特徴とする(17)〜(21)のいずれか1項に記載の生体分子の検出ないしは定量方法、
(23) 前記コロイドシリカ粒子の平均粒径が50nm〜2000nmである、(17)〜(22)のいずれか1項に記載の生体分子の検出ないしは定量方法、
(24) 前記コロイドシリカ粒子の吸光スペクトルにおける吸光最大波長が、200nm〜800nmの範囲にあることを特徴とする(17)〜(23)のいずれか1項に記載の生体分子の検出ないしは定量方法、
(25) 前記吸光極大波長における、前記吸光コロイドシリカ粒子のモル吸光係数が5×10−1cm−1以上であることを特徴とする、(24)に記載の生体分子の検出ないしは定量方法、
(26) 前記吸光物質含有コロイドシリカ粒子が、各々、吸光極大波長が異なる1〜4種類の吸光物質を含有していることを特徴とする、(17)〜(25)のいずれか1項に記載の生体分子の検出ないしは定量方法、
(27) 2種以上の吸光物質含有コロイドシリカ粒子を用いて、2種以上の標的生体分子を特異的にそれぞれ吸光標識することにより、前記2種以上の標的生体分子を同時に検出ないしは定量することを特徴とする、生体分子の検出ないしは定量方法、
(28) 前記2種以上の吸光物質含有コロイドシリカ粒子が、2種以上の標的生体分子を、それぞれ、特異的に分子認識する物質で表面修飾されていることにより、2種以上の標的生体分子を同時に検出ないしは定量することを特徴とする、前記(27)に記載の生体分子の検出ないしは定量方法、
(29) 前記2種以上の吸光物質含有コロイドシリカ粒子が、異なる吸光スペクトルを有する前記コロイドシリカ粒子は、異なる標的生体分子に対して特異的に分子認識する物質で表面修飾されているのに対し、同じ吸光スペクトルを有する前記コロイドシリカ粒子は、同一の標的生体分子に対して特異的に分子認識する物質で表面修飾されていることを特徴とする、(27)又は(28)に記載の生体分子の検出ないしは定量方法、
(30) 前記2種以上の吸光物質含有コロイドシリカ粒子が、異なる吸光スペクトルを有することを特徴とする、(27)〜(29)のいずれか1項に記載の生体分子の検出ないしは定量方法、及び
(31) 前記2種以上の吸光物質含有コロイドシリカ粒子各々が、吸光極大波長が異なる1〜4種類の吸光物質を含有していることを特徴とする、(27)〜(30)のいずれか1項に記載の生体分子の検出ないしは定量方法
を提供するものである。
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、適宜添付の図面を参照して、下記の記載からより明らかになるであろう。
図1は、得られた吸光コロイドシリカ粒子のSEM写真像を示す図である。 図2は、DYQ−660含有コロイドシリカ粒子の吸光スペクトルを示す図である。
まず、本発明の「吸光物質含有コロイドシリカ粒子」について説明する。
本発明の吸光物質含有コロイドシリカ粒子(以下、単に「吸光コロイドシリカ粒子」ということもある。)は、吸光物質とシリカ成分とが化学的に結合もしくは吸着してなり、標的生体分子(生理活性物質を含む。)を吸光標識付けする吸光標識ナノビーズである。
本発明の吸光コロイドシリカ粒子は、吸光物質がコロイドシリカ粒子の内部から表面まで前記コロイドシリカ粒子全体に分布していても良いし、吸光物質とシリカ成分とが化学的に結合もしくは吸着(本発明において、「吸着」とは、ファンデルワールス力または疎水性相互作用による一体化をいう。)してなる粒子を、シリカ成分で被覆したコアシェル構造を有していても良い。
本発明の吸光物質含有コロイドシリカ粒子においては、吸光物質とシリカ成分とが化学的に結合もしくは吸着して固定化されており、このとき吸光コロイドシリカ粒子に対する吸光物質の濃度が20mmol/l以上であることがより好ましく、40〜80mmol/lであることがさらに好ましい。
ここで、「吸光コロイドシリカ粒子に対する吸光物質の濃度」とは、吸光物質のモル数を、吸光コロイドシリカ粒子の体積で割ったものである。吸光物質のモル数は、吸光シリカ粒子分散コロイドの吸光度から求めたものであり、また吸光コロイドシリカ粒子の体積は、一定量の吸光シリカ粒子分散コロイド(例えば1ml)から吸光シリカ粒子のみを回収し、乾燥させ、質量を求め、シリカ粒子の密度を2.3g/cmとして求めたものである。
本発明において、「吸光」とは、吸光コロイドシリカ粒子ないしは吸光物質による任意の波長の入射光の強度I及び透過光の強度Iの差異としてのみ測定される光の吸収をいう。
ここで、前記透過光は、吸光物質により吸光された後の光であるのに対し、蛍光は蛍光物質が発する固有の波長の発光であり、吸光と蛍光とは相異なる現象である。これにより、吸光の測定と蛍光の測定とでは、測定対象の光が異なる。したがって、標的生体分子を定量ないしは検出する場合の測定機構等の測定系が異なる。
また、前記蛍光の測定には、蛍光の受光部への収集を要し、さらに励起光と蛍光とを分離し、蛍光のみを測定する。
本発明者らは、下記の事実を見出した。すなわち、蛍光物質を含有させてなる蛍光物質含有コロイドシリカ粒子は、シリカ粒子に対する蛍光物質の濃度が高すぎると、濃度消光によって前記蛍光物質含有コロイドシリカ粒子の蛍光強度が減少することがあるが、これに対し、シリカ粒子に吸光物質を含有させてなる吸光物質含有コロイドシリカ粒子においては、シリカ粒子に対する吸光物質の濃度を高くすればするほど前記吸光物質含有コロイドシリカ粒子の吸光度が増加することがある。
また、本発明者らは、標的生体分子を定量ないしは検出する標識ナノビーズとして蛍光物質を含有させてなるコロイドシリカ粒子を用いた蛍光標識の場合、再現性高いデータを取得するには平均粒径が30nm以下であることを要することについて特許出願している(特願2005−376401)。
一方、本発明の吸光コロイドシリカ粒子は、50nm以上の平均粒径を有することが好ましい。50nm未満であると標的生体分子を定量ないしは検出するのに十分なモル吸光係数εを有し得ないし、吸光光度計、プレートリーダー等の測定機器に適用し得ない。
ここで、吸光度(以下、単に「A」と表すこともある。)は下記ランベルト−ベールの式により表される。
A=Log10(I/I)=εbc=abc’
[A:吸光度、I:透過光の強度、I:入射光の強度、ε:モル吸光係数(M−1cm−1)、b:光路長(cm)、c:本発明の吸光コロイドシリカ粒子の濃度(M(mol/l))、a:比吸光度、c’:本発明の吸光コロイドシリカ粒子の濃度(g/l)]
上記濃度c’(g/l)は、上述のように一定量の吸光コロイドシリカ粒子分散液(例えば1ml)から吸光シリカ粒子のみを回収し、乾燥させて得られた質量を決定して得られた値である。一方、上記濃度c(mol/l)は、シリカ粒子の大きさをTEM写真から求め、一粒子の体積を決定し、粒子の密度を2.3g/cmとして一粒子の質量を決定し、一定量の吸光コロイドシリカ粒子分散液(例えば1ml)から吸光シリカ粒子のみを回収し、乾燥させて得られたシリカ粒子の質量からモル数を決定して得られた値である。
本発明において、「吸光コロイドシリカ粒子のモル吸光係数ε」とは、吸光コロイドシリカ粒子分散液について吸光度を測定し、前記ランベルト−ベールの式に適用することにより得られた、前記分散液中における吸光コロイドシリカ粒子のモル吸光係数εをいう。
本発明の吸光物質含有コロイドシリカ粒子は、5×10−1cm−1以上のモル吸光係数εとすることができ、εが1×10−1cm−1以上であることが好ましく、εが2×10−1cm−1〜1×1013−1cm−1であることがより好ましく、εが1×10−1cm−1〜1×1013−1cm−1であることがさらに好ましい。
本発明の吸光物質含有コロイドシリカ粒子の吸光度、吸光スペクトル及びεは、任意の吸光光度計ないしはプレートリーダーを用いて、水分散液、エタノール分散液、N,N−ジメチルフォルムアミド分散液等の分散液として測定できる。
本発明の吸光物質含有コロイドシリカ粒子は、ナノ吸光材料として用いることができる。
本発明のナノ吸光材料は、標的生体分子を吸光標識付けする吸光標識ナノビーズ、免疫沈降法用の発色粒子等として用いられる。
本発明において、複数個の、さらには複数種の前記吸光物質含有コロイドシリカ粒子を、吸光標識ナノビーズとして一緒に用いたナノ吸光材料とすることもできる。
前記標的生体分子ないしは標的生理活性物質としては、任意の、抗原、抗体、DNA、RNA、糖、糖鎖、リガンド、受容体、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、ペプチド、化学物質等が挙げられる。
本発明において、リガンドとはタンパク質と特異的に結合する物質をいい、例えば、酵素に結合する基質、補酵素、調節因子、あるいはホルモン、神経伝達物質などをいい、低分子量の分子やイオンばかりでなく、高分子量の物質も含む。
また化学物質とは天然有機化合物に限らず、人工的に合成された生理活性を有する化合物や環境ホルモン等を含む。
本発明の吸光コロイドシリカ粒子は、検体(例えば、任意の細胞抽出液、溶菌液、培地・培養液、溶液、バッファー)中に含まれる定量したい前記標的生体分子に特異的に吸着もしくは結合する物質で表面修飾された吸光コロイドシリカ粒子とするのが好ましく、前記標的生体分子を分子認識する物質で表面修飾された吸光コロイドシリカ粒子とするのがより好ましい。
次に、「吸光物質」について説明する。
本発明における「吸光物質」は、シリカ成分と化学的に結合ないしは吸着して前記吸光コロイドシリカ粒子を形成する。
本発明において、「吸光物質」とは、可視光、紫外光、深紫外光、赤外光、遠赤外光等所定の光源による光を吸光する物質をいう。また、蛍光等の発光性を有していてもよい。
本発明に用いる吸光物質が有するモル吸光係数εについては特に制限はないが、吸光スペクトルの極大波長において、εが1×10−1cm−1以上であることが好ましく、εが5×10−1cm−1〜8×10−1cm−1であることがより好ましい。
前記吸光物質としては、前記所定の光源による光を吸光する物質であり、プレートリーダー等の汎用の検出器(例えば、Vmax(商品名、Molecular Devices社製)、マイクロプレートリーダーMPR−A4i(商品名、東ソー社製))により吸光を検出しうるものであることが好ましい。なかでも、吸光スペクトルにおける吸光最大波長が200〜800nmの範囲内にある吸光物質が好ましく、吸光スペクトルにおける吸光最大波長が400〜700nmの範囲にある吸光物質がより好ましい。
ここで、「吸光最大波長」とは、吸光スペクトルにおいて、吸収ピークが複数存在する場合において、前記吸収ピークの中で、吸光度が最大であるものの波長をいう。
上記のとおり、吸光スペクトルにおける吸光最大波長が200〜800nmの範囲内に存在する吸光物質を用いることが好ましく、そのような吸光性色素として具体的には、DYQ−660、DY−415、DY−495、DY−590、DY−650(いずれも商品名、Dyomics GmbH社製)、Alexa Fluor405、Alexa Fluor488、Alexa Fluor568、Alexa Fluor660(いずれも商品名、Invitrogen社製)等が好ましく、なかでも、DYQ−660、DY−590、Alexa Fluor405、Alexa Fluor660がより好ましく、DYQ−660、Alexa Fluor660が特に好ましい。
次に、「本発明の吸光物質含有コロイドシリカ粒子の調製」について説明する。
本発明の吸光物質含有コロイドシリカ粒子は、前記吸光物質とシラン化合物とを反応させ、共有結合、イオン結合その他の化学的に結合もしくは吸着させて得られた生成物に1又は2種以上のシラン化合物を重合させることにより調製することができる。
本発明の吸光物質含有コロイドシリカ粒子の調製法として、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル基、マレイミド基、イソシアナート基、イソチオシアナート基、アルデヒド基、パラニトロフェニル基、ジエトキシメチル基、エポキシ基、シアノ基等の活性基を有する前記吸光分子と、それら活性基と対応して反応する置換基(例えば、アミノ基、水酸基、チオール基)を有するシランカップリング剤とを反応させ、共有結合させて得られた生成物に1又は2種以上のシラン化合物を重合させることにより調製するのが好ましい。
前記吸光物質含有コロイドシリカ粒子は、下記(a)及び(b)の工程を行なうことにより調製することができる。
(a)N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル等の活性エステル基を有する吸光物質(1)とアミノ基を有するシランカップリング剤(2)とを反応させて、吸光物質/シランカップリング剤複合化合物(3)を生成する工程、及び
(b)前記(a)で得られた吸光物質/シランカップリング剤複合化合物(3)を、シリカ化合物(4)と塩基性条件下で重合させて吸光物質含有コロイドシリカ粒子(5)を形成する工程。
上記工程(a)及び(b)の反応スキームを、活性エステル基を有する吸光物質(1)としてDYQ−660−NHSエステル、アミノ基を有するシランカップリング剤(2)としてAPS、シリカ化合物(4)としてTEOSを用いたときのものを一例として、下記に示す。
前記工程(a)で用いるNHSエステル基を有する吸光物質(1)は、吸光性を有する任意のカルボン酸化合物とN−ヒドロキシスクシンイミドとのエステル化反応により調製することができる。但し、市販のものを入手することも可能である。
前記NHSエステル基を有する吸光物質(1)として具体的には、DYQ−660−NHSエステル、DY−415−NHSエステル、DY−495−NHSエステル、DY−590−NHSエステル、DY−650−NHSエステル(いずれも商品名、Dyomics GmbH社製)、Alexa Fluor405−NHSエステル、Alexa Fluor488−NHSエステル、Alexa Fluor568−NHSエステル、Alexa Fluor660−NHSエステル(いずれも商品名、Invitrogen社製)等を挙げることができる。中でも、DYQ−660−NHSエステル又はAlexa Fluor660−NHSエステルが好ましい。
前記アミノ基を有するシランカップリング剤(2)としては、特に制限されないが、例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(APS)、3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピル−トリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。中でも、APSが好ましい。
前記NHSエステル基を有する吸光物質(1)と前記アミノ基を有するシランカップリング剤(2)との反応は、DMSOや水等の溶媒に溶解した後、室温(例えば、25℃)条件下で攪拌しながら反応することによって行うことができる。
反応に用いる前記NHSエステル基を有する吸光物質(1)とシランカップリング剤(2)との割合は特に制限されないが、前記NHSエステル基を有する吸光物質(1):前記アミノ基を有するシランカップリング剤(2)=1:0.5〜2(モル比)の割合が好ましく、1:0.8〜1.2(モル比)の割合がより好ましい。
斯くして、吸光物質(1)のカルボニル基と、アミノ基を有するシランカップリング剤(2)のアミノ基とが、アミド結合(−NHCO−)して、吸光物質/シランカップリング剤複合化合物(3)が得られる。すなわち、前記吸光物質/シランカップリング剤複合化合物(3)は、アミド結合を介して吸光物質とシリカ成分が結合している。
次いで工程(b)で、前記吸光物質/シランカップリング剤複合化合物(3)をシリカ化合物(4)と反応させる。前記シリカ化合物(4)としては、特に制限はないが、テトラエトキシシラン(TEOS)、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPS)、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(APS)、3−チオシアナトプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、及び3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピル−トリエトキシシランを挙げることができる。中でも、TEOS、MPS又はAPSが好ましく、前記吸光物質含有コロイドシリカ粒子中に、ポリケイ酸部分を構築できる観点からTEOSが特に好ましい。
吸光物質/シランカップリング剤複合化合物(3)とシリカ化合物(4)の割合は、特に制限はないが、吸光物質/シランカップリング剤複合化合物(3)1モルに対するシリカ化合物(4)のモル比として、50〜40000が好ましく、100〜2000がより好ましく、150〜1000がさらに好ましい。
この反応は、アルコール、水及びアンモニアの存在下で行うのが好ましい。ここでアルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜3の低級アルコールを挙げることができる。
かかる反応系における水とアルコールの割合は、特に制限されないが、好ましくは水1容量部に対してアルコールを0.5〜20容量部、より好ましくは2〜16容量部、さらに好ましくは4〜10容量部の範囲である。アンモニアの量も特に制限されないが、アンモニアの濃度が30〜1000mMが好ましく、60〜500mMがより好ましく、80〜200mMがさらに好ましい。
この反応は室温で行うことができ、また攪拌しながら行うことが好ましい。通常、数十分〜数十時間の反応で、本発明の吸光物質含有コロイドシリカ粒子(5)を調製することができる。
また、前記工程(b)は逆ミセル溶液中で行なうことにより、より粒径の揃った、好ましくは単分散である、本発明の吸光物質含有コロイドシリカ粒子(5)を調製することができる。
逆ミセル溶液の油相と界面活性剤の組み合わせとしては特に制限はないが、ヘプタンとエーロゾルOT(AOT)、イソオクタンとAOT、シクロヘキサン/ヘキサノールの混合溶媒とTritonX−100等が挙げられる。
逆ミセル溶液の微小水滴相としては、アンモニアの好ましい濃度は、前記工程(b)について前述したものと同様である。また、色素シランカップリング剤複合化合物(3)とシリカ化合物(4)の量比、好ましい範囲等も前述した通りである。
なお、前記工程(b)において、使用するシリカ化合物(4)の濃度を調整したり、反応時間を調整することにより、調製するシリカ粒子の大きさ(直径)を適宜調節することができる。使用するシリカ化合物(4)の濃度を低くしたり、また反応時間を短くすることにより、より小さなシリカ粒子を調製することができる(例えば、Blaaderenet al.,“Synthesis and Characterization of Monodisperse Colloidal Organo−silica Spheres”,J. Colloid and Interface Science 156,1−18.1993参照)。一方、工程(b)を複数回、繰り返し行えば、より大きなシリカ粒子を調製することができる。このように、得られる吸光物質含有シリカ粒子の粒径(直径)を、所望の大きさに、例えばnmオーダーからμmオーダーへと自在に調整することができる。具体的には、数十nmサイズ、具体的には50〜100nmといった微小な大きさを有する吸光物質含有シリカ粒子を調製することが可能である。また必要に応じて、その後の処理により希望する粒子径分布となるように調整することもでき、斯くして所望の粒子径分布範囲にあるシリカ粒子を得ることができる。
このようにして得られる吸光物質含有コロイドシリカ粒子群は、必要に応じて、限外ろ過膜などの常法を利用して共存イオンや共存する不要物を除いて精製してもよい。
上述のように調製すると、球状、もしくは、球状に近いシリカ粒子群が製造できる。球状に近い微粒子とは、具体的には長軸と短軸の比が2以下の形状である。
本発明の吸光コロイドシリカ粒子の平均粒径は、任意の検出手段により検出できる限り特に制限はないが、検出感度の観点から、50〜2000nmが好ましく、100〜2000nmがより好ましく、200〜2000nmがさらに好ましく、200〜400nmが特に好ましい。
本発明において、前記粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)等の画像から無作為に選択した50個のシリカ粒子の合計の投影面積からシリカ粒子の占有面積を画像処理装置によって求め、この合計の占有面積を、選択したシリカ粒子の個数(50個)で割った値に相当する円の直径の平均値(平均円相当直径)を求めたものである。
粒度分布の変動係数いわゆるCV値は特に制限はないが、10%以下が好ましく、8%以下がより好ましい。
本発明において、単分散とはCV値15%以下の粒子群をいう。
吸光物質をシリカ粒子内に固定し、高濃度に包含させると、遊離の吸光物質よりも高いεが達成され、感度を上げることができる。
下記表1に本発明の吸光コロイドシリカ粒子の好ましい実施態様(含有吸光物質、平均粒径、CV値、ε、吸収極大波長)を示すが、本発明はこれに制限されるものではない。
次に「コロイドシリカ粒子表面修飾」について説明する。
シリカは、一般に、化学的に不活性であると共に、その修飾が容易であることが知られている。本発明の吸光物質含有コロイドシリカ粒子もまた、容易に所望の認識分子を表面に結合させることが可能であり、またその表面をメソポーラスや平滑状にすることもできる。
本発明の吸光コロイドシリカ粒子は、親水性が高く、純水や緩衝液に分散させやすいことが特徴である。ポリスチレン等の高分子ビーズの多くは疎水性であり、純水や緩衝液に分散させるために特別な処理が必要となるのに対し、前記吸光コロイドシリカ粒子はそういった特別な処理は必要ない。
またシリカの消衰係数が小さいため、前記吸光コロイドシリカ粒子は、シリカによる光の散乱が起こりにくく、吸光物質が効率的に光を吸収することができる。したがって、前記吸光コロイドシリカ粒子は、高いモル吸光係数が実現できる。吸光物質を含有したポリスチレン等の高分子ビーズの場合、ポリスチレン等の高分子の消衰係数がシリカに比べて大きく、ポリスチレン等の高分子による光の散乱が起こるため、吸光物質による光の吸収が非効率になる。
本発明の吸光コロイドシリカ粒子の表面修飾について、具体的には、上記工程(b)で用いるシリカ化合物(4)の種類に応じて、所望の認識分子と結合可能なアクセプター基を表面に有する吸光コロイドシリカ粒子とすることができる。前記アクセプター基として、アミノ基、水酸基、チオール基、カルボキシル基、マレイミド基、スクシンイミジルエステル基等が挙げられる。
反応に用いるシリカ化合物(4)と、それによって得られる吸光コロイドシリカ粒子の表面に形成されたアクセプター基との関係を表2に示す。
なお、上記得られる吸光コロイドシリカ粒子(5)について、反応に使用したシリカ化合物(4)によって表面に導入されるアクセプター基とは異なるアクセプター基を導入したい場合には、前記吸光コロイドシリカ粒子(5)を、さらに工程(b)で使用したシリカ化合物(4)とは異なるシリカ化合物で処理することにより達成できる。この処理は、工程(b)で使用したシリカ化合物(4)とは異なるシリカ化合物を用いて、上記工程(b)と同様な操作を行うことにより実施することができる。
本発明の吸光コロイドシリカ粒子は、表面に有するアクセプター基の種類に応じて所望の認識分子〔例えば、抗原、抗体、DNA、RNA、糖、糖鎖、リガンド、受容体、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、ペプチド、化学物質等〕を表面に結合もしくは吸着させ、修飾させることができる。
本発明の吸光物質含有コロイドシリカ粒子の表面を所望の認識分子で修飾させる方法として特に制限はないが、下記(i)〜(iii)の例が挙げられる。
(i)MPS等を用いて調製したチオール基を表面に有する吸光コロイドシリカ粒子は、ジスルフィド結合、チオエステル結合、またはチオール置換反応を介した結合を介して、その表面を所望の認識分子で修飾することができる。
(ii)特に前記所望の認識分子がアミノ基を有する場合には、吸光コロイドシリカ粒子が有するチオール基と、前記所望の認識分子が有するアミノ基とをスクシンイミジル−トランス−4−(N−マレイミジルメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、N−(6−マレイミドカプロイルオキシ)スクシンイミド(EMCS)等の架橋剤を用いて結合することもできる。
(iii)APS等を用いて調製したアミノ基を表面に有する吸光コロイドシリカ粒子は、前述と同様に、このアミノ基と所望の認識分子が有するチオール基とをSMCC、EMCS等の架橋剤を用いて結合することができる。また、このアミノ基と所望の認識分子が有するアミノ基とをグルタルアルデヒド等の架橋剤で結合することもできる。さらに、アミド結合やチオウレア結合を介して、その表面を所望の認識分子で修飾することもできる。
本発明において、前記吸光コロイドシリカ粒子は、標的生体分子で直接修飾してもよいが、前記吸光コロイドシリカ粒子を修飾した所望の認識分子〔例えば、抗体、DNA、RNA、糖鎖、受容体、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、ペプチド等〕が、更にそれ自体がアクセプター分子となって、例えば抗原−抗体反応、ビオチン−アビジン反応、塩基配列の相補性を利用したハイブリダイゼーションなどの特異的な分子認識反応を利用して、標的生体分子に特異的に結合させることが好ましい。
または、前記吸光コロイドシリカ粒子は、「本発明の標的生体分子の検出ないしは定量方法」について後述するように、前記標的生体分子が第1の分子認識物質によって修飾されている場合、第1の分子認識物質を分子認識する第2の物質によって表面修飾されていてもよい。
ここで、分子認識反応とは、(1)DNA分子間又はDNA−RNA分子間のハイブリダイゼーション、(2)抗原抗体反応、(3)酵素(受容体)−基質(リガンド)間の反応など、生体分子(生理活性物質を含む。)間の特異的相互作用に由来する反応をいう。
次に「複数種の吸光コロイドシリカ粒子をセットとしてなる吸光標識ビーズキット」について説明する。
本発明において、異種の複数個の、前記吸光コロイドシリカ粒子を、1つのセットとして、後述のプレートに用いれば、2種以上の標的生体分子を同時に検出ないしは定量できる。
前記複数種の吸光コロイドシリカ粒子をセットとする吸光標識ビーズキットは、異なる吸光物質を含有した、2種以上の前記吸光コロイドシリカ粒子を、別個の表面修飾物質で表面修飾してなる、複数種の前記吸光コロイドシリカ粒子からなる。
ここで、前記表面修飾物質は、前記標的生体分子に特異的に結合もしくは吸着する物質であってよいし、前記標的生体分子が第1の分子認識物質によって修飾されている場合、第1の分子認識物質を分子認識する第2の物質であってよい。
前記複数種の吸光コロイドシリカ粒子のセットの具体例としては、
標的タンパク質Aを認識するリガンドで表面修飾された吸光物質DYQ−660含有コロイドシリカ粒子と、
標的タンパク質Bを認識するリガンドで表面修飾された吸光物質Alexa Fluor405含有コロイドシリカ粒子とからなるセット等が挙げられ、標的タンパク質A及び標的タンパク質Bを同時に検出ないしは定量できる。
本発明において、前記2種以上の吸光コロイドシリカ粒子が、該シリカ粒子1個毎に異なる吸光スペクトルを有することにより複数種化されてなることが好ましい。
さらには、前記複数化されてなる2種以上の吸光コロイドシリカ粒子において、該シリカ粒子1個毎に、異なる吸光スペクトルの極大波長を有する1〜4種類の吸光物質を含有することにより吸光スペクトルが異なることがより好ましい。
前記2種以上の吸光コロイドシリカ粒子の具体例としては、例えば、2種類の吸光物質として、Alexa Fluor405及びDYQ−660が含有されるように、本発明の吸光コロイドシリカ粒子の調製について前述する方法により調製された2種含有吸光シリカ粒子、同様な方法により調製された、
DY−415及びAlexa Fluor660の2種含有吸光シリカ粒子、
Alexa Fluor568、Alexa Fluor405及びDYQ−660の3種含有吸光シリカ粒子、
Alexa Fluor488、Alexa Fluor568、Alexa Fluor405及びDYQ−660の4種含有吸光シリカ粒子等が挙げられる。
以下、標的生体分子の検出ないしは定量方法(以下、単に「検出ないしは定量方法」ということもある。)について説明する。
前記検出ないしは定量方法は、検体(例えば、任意の細胞抽出液、溶菌液、培地・培養液、溶液、バッファー)中の標的生体分子を吸光標識付けするナノビーズとして前記吸光コロイドシリカ粒子を用いる。
前記検出ないしは定量方法において、標的生体分子(生理活性物質を含む。)は、前述のように抗原、抗体、DNA、RNA、糖、糖鎖、リガンド、受容体、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、ペプチド、化学物質等が挙げられる。
まず、前記検出ないしは定量方法において、「検体中の標的生体分子を前記吸光コロイドシリカ粒子により直接吸光標識する場合」について説明する(以下、単に「検出ないしは定量方法の好ましい態様A」という。)。
前記検出ないしは定量方法の好ましい態様Aは、
(a1)検体中の標的生体分子を吸光物質含有コロイドシリカ粒子を用いて吸光標識した後、プレート上に固定した第1の標的生体分子認識分子(以下、単に「第1の認識物質」という。)と、前記コロイドシリカ粒子により吸光標識した標的生体分子とを分子認識させる工程、及び
a2)プレート上の前記コロイドシリカ粒子の吸光を検出ないしは定量する工程を含んでなることが好ましい。
以下、前記検出ないしは定量方法において、「プレート上に固定した前記第1の認識物質とともに、それとは異なる第2の標的生体分子認識分子(以下、単に「第2の認識物質」という。)を用いて標的生体分子を分子認識させて、検出ないしは定量する場合」について説明する。
まず、前記検出ないしは定量方法において、「前記吸光コロイドシリカ粒子が、前記第2の認識物質で表面修飾されている場合」について説明する(以下、単に「検出ないしは定量方法の好ましい態様B」という。)。
前記検出ないしは定量方法の好ましい態様Bは、
(b1)プレート上に固定した第1の認識物質と、前記検体中の前記標的生体分子とを分子認識させる工程、
(b2)前記第2の認識物質によって表面修飾された前記吸光コロイドシリカ粒子を用いて、前記第1の認識物質と分子認識した後の前記標的生体分子を分子認識させる工程、及び
(b3)プレート上の前記コロイドシリカ粒子の吸光を検出ないしは定量する工程を含んでなることが好ましい。
前記検出ないしは定量方法の好ましい態様Bにおいて、前記第2の認識物質に相当する標識用抗体として、標的生体分子の抗体認識部位を認識する抗体によって表面修飾された前記吸光コロイドシリカ粒子を用いる二抗体サンドイッチ式検出ないしは定量方法とすることがより好ましい。
記二抗体サンドイッチ式検出ないしは定量方法の具体例としては、
<i>前記第1の認識物質に相当するプレート固定用抗体としてのヒツジ由来の抗マウス免疫グロブリン抗体、標識用抗体としてのヤギ由来の抗マウス免疫グロブリン抗体で表面修飾された吸光コロイドシリカ粒子を用いて、標的としてのマウスIgGを二抗体サンドイッチ式に検出ないしは定量する方法、
<ii>前記第1の認識物質に相当するプレート固定用抗体としての抗ヒトγ−インターフェロン抗体、前記プレート固定用抗体とは別のエピトープと結合する標識用抗体としての抗ヒトγ−インターフェロン抗体で表面修飾された吸光コロイドシリカ粒子を用いて、標的のヒトγ−インターフェロンを二抗体サンドイッチ式に検出ないしは定量する方法
等が挙げられる。
次に、前記検出ないしは定量方法において、「前記吸光コロイドシリカ粒子が、前記第2の認識物質を分子認識する第3の物質(以下、単に「第3の認識物質」という。)で表面修飾されている場合」について説明する(以下、単に「検出ないしは定量方法の好ましい態様C’」という。)。
前記検出ないしは定量方法の好ましい態様C’は、
c’1)プレート上に固定した第1の認識物質と、前記検体中の前記標的生体分子とを分子認識させる工程、
c’2)前記第2の認識物質と、前記第1の認識物質と分子認識した後の前記標的生体分子とを分子認識させる工程、
c’3)前記第3の認識物質によって表面修飾された吸光コロイドシリカ粒子を用いて、前記第2の認識物質を分子認識させる工程、及び
c’4)プレート上の前記コロイドシリカ粒子の吸光を検出ないしは定量する工程を含んでなることが好ましい。
前記態様C’において、前記第2の認識物質の具体例として、任意の抗体(例えば、マウスIgG、マウスIgM)、ビオチンもしくはアビジンで修飾された任意の抗体、マルトース結合タンパクで修飾された任意の抗体等が挙げられる。
また、それらに対応する前記第3の認識物質によって表面修飾された吸光コロイドシリカ粒子の具体例として、任意の抗体結合タンパク質(例えば、プロテインA、プロテインG)によって表面修飾された吸光コロイドシリカ粒子、ビオチンもしくはアビジンによって表面修飾された吸光コロイドシリカ粒子、任意のマルトース含有糖鎖によって表面修飾された吸光コロイドシリカ粒子等が挙げられる。
前記態様C’において、「さらに、検体中の前記標的生体分子が第2の認識物質によって修飾されている場合」について説明する(以下、単に「検出ないしは定量方法の好ましい態様C」という。)。
前記検出ないしは定量方法の好ましい態様Cは
(c1)プレート上に固定した第1の認識物質と、前記第2の認識物質によって修飾された標的生体分子とを分子認識させる工程、
(c2)前記第3の認識物質によって表面修飾された前記吸光コロイドシリカ粒子を用いて、前記第2の認識物質を分子認識させる工程、及び
(c3)プレート上の前記コロイドシリカ粒子の吸光を検出ないしは定量する工程を含んでなることが好ましい。
前記検出ないしは定量方法の好ましい態様Cにおいて、第2の認識物質によって修飾されている前記標的生体分子の具体例としては、ビオチンもしくはアビジンで修飾されたDNAないしはRNA、ビオチンもしくはアビジンで修飾されたDNAないしはRNA、ビオチンもしくはアビジンで修飾されたマウスIgG、マルトース結合タンパクで修飾されたマウスIgM等が挙げられる。
上記のような、前記標的生体分子を前記第2の認識物質を用いて修飾する方法は、特開平9−154599、特表2003−522158等に記載の方法により行なうことができる。
前記検出ないしは定量方法の好ましい態様Cにおいて、それら第2の認識物質に対応する前記第3の認識物質によって表面修飾された吸光コロイドシリカ粒子の具体例として、ビオチンもしくはアビジンによって表面修飾された吸光コロイドシリカ粒子、任意のマルトース含有糖鎖によって表面修飾された吸光コロイドシリカ粒子等が挙げられる。
特に、前記検出ないしは定量方法の好ましい態様Cにおいて、前記第2の認識物質及び前記第3の認識物質の組み合わせが、下記(i)〜(ix)からなる群より選ばれるいずれか1つであることが好ましい。
(i)前記第2の認識物質が抗原であり、かつ前記第3の認識物質が抗体である、
(ii)前記第2の認識物質が抗体であり、かつ前記第3の認識物質が抗原である、
(iii)前記第2の認識物質がビオチンであり、かつ前記第3の認識物質がアビジンないしはストレプトアビジンである、
(iv)前記第2の認識物質がアビジンないしはストレプトアビジンであり、かつ前記第3の認識物質がビオチンである、
(v)前記第2の認識物質が糖ないしは糖鎖であり、かつ前記第3の認識物質がそれに特異的に結合する糖結合タンパク質である、
(vi)前記第2の認識物質が糖結合タンパク質であり、かつ前記第3の認識物質がそれに特異的に結合する糖ないしは糖鎖である、
(vii)前記第2の認識物質がリガンドであり、かつ前記第3の認識物質がそれらに特異的に結合する受容体である、
(viii)前記第2の認識物質が受容体であり、かつ前記第2の認識物質がそれに特異的に結合するリガンドである、及び
(ix)前記第2の認識物質が化学物質であり、かつ前記第3の認識物質がそれに特異的に結合する抗体もしくはペプチドである。
次に、「前記吸光コロイドシリカ粒子が、前記第3の認識物質を分子認識する第4の物質(以下、単に「第4の認識物質」という。)で表面修飾されている場合」について説明する(以下、単に「検出ないしは定量方法の好ましい態様D」という。)。
前記検出ないしは定量方法の好ましい態様Dは、
d1)プレート上に固定した第1の認識物質と、前記検体中の前記標的生体分子とを分子認識させる工程、
d2)前記第2の認識物質と、前記第1の認識物質を分子認識した後の前記標的生体分子とを分子認識させる工程、
d3)前記第3の認識物質で、前記第2の認識物質を分子認識させる工程、
d4)前記第4の認識物質によって表面修飾された吸光コロイドシリカ粒子を用いて、前記第3の認識物質を分子認識させる工程、及び
d5)プレート上の前記コロイドシリカ粒子の吸光を検出ないしは定量する工程を含んでなることが好ましい。
前記態様Dにおいて、前記第2の認識物質は、前記標的生体分子を分子認識する限り特に制限はないが、任意の動物種の抗体であることが好ましい。
また、前記第3の認識物質は、前記第2の認識物質を分子認識する限り特に制限はないが、前記第2の認識物質としての前記抗体に特異的に結合する2次抗体(例えば、前記1次抗体の動物種(マウス等)とは異なる動物種(ヤギ等)の抗体が好ましく、ビオチンもしくはアビジンで修飾された任意の2次抗体、マルトース結合タンパクで修飾された任意の2次抗体がより好ましい。
また、それらに対応する前記第4の認識物質によって表面修飾された吸光コロイドシリカ粒子の具体例として、任意の抗体結合タンパク質(例えば、プロテインA、プロテインG)によって表面修飾された吸光コロイドシリカ粒子、ビオチンもしくはアビジンによって表面修飾された吸光コロイドシリカ粒子、任意のマルトース含有糖鎖によって表面修飾された吸光コロイドシリカ粒子等が挙げられる。
次に、前記検出ないしは定量方法において、「複数種類の標的生体分子を同時に検出ないしは定量する」態様(以下、単に「検出ないしは定量方法の好ましい態様E」という。)について説明する。
前記検出ないしは定量方法の好ましい態様Eは、複数種類の標的生体分子に、それぞれ、特異的に結合する、吸光スペクトルの異なる複数種類の吸光コロイドシリカ粒子を混合して用いることにより、複数種類の標的生体分子を同時に検出ないしは定量することができる。
前記検出ないしは定量方法の好ましい態様Eにおいて、異なる吸光スペクトルを有する複数種類の吸光コロイドシリカ粒子は、異なる標的生体分子に対して特異的に分子認識する物質で表面修飾され、吸光スペクトルの同じ吸光コロイドシリカ粒子は、同一の標的生体分子に対して特異的に分子認識する物質で表面修飾されている。
前記検出ないしは定量方法の好ましい態様Eは、
(i)標的生体分子固定用の処理をしたプレート上に、複数種の標的生体分子を固定する工程、
(ii)別途、吸光スペクトルの異なる複数種類の吸光コロイドシリカ粒子を用意し、各々のシリカ粒子に対応して、異なる前記標的生体分子に対する標的分子認識物質を結合させてなる複数種類の吸光コロイドシリカ粒子を調製する工程、
(iii)これら複数種の吸光コロイドシリカ粒子を用いて、上記(i)により固定化されたプレート上の複数種の標的生体分子を、それぞれ、特異的に吸光標識する工程、及び
(iv)プレート上の前記複数種のコロイドシリカ粒子の吸光を、それぞれ、検出ないしは定量する工程を含んでなることが好ましい。
前記態様Eの具体例として、例えば、
(i)タンパク質固定用の処理をしたプレートに複数種の標的タンパク質を含有する検体を添加し、タンパク質の固定化を行う工程、
(ii)別途、吸光スペクトルの異なる複数種類の吸光コロイドシリカ粒子を用意し、各々のシリカ粒子に対応して、異なる標的タンパク質に対する抗体を結合させる工程、
(iii)これら複数種類の吸光コロイドシリカ粒子を標的タンパク質が上記(i)により固定化されたウェルに添加し、タンパク質を吸光標識する工程、及び
(iv)プレート上の前記コロイドシリカ粒子の吸光を、それぞれ、検出ないしは定量する工程を含んでなる複数種の標的タンパク質の検出ないしは定量法が挙げられる。
これにより、複数の波長の吸光度を測定することによって同一ウェルから複数種の標的タンパク質の検出ないしは定量が可能である。
前記検出ないしは定量方法によれば、少量のサンプルから複数種の生体分子を高効率に検出ないしは定量することができる。
上記吸光の測定方法又は前記吸光コロイドシリカ粒子の発色の測定方法としては、プレート表面に光を照射し、その透過光を測定する方法、その反射光を測定する方法等が挙げられ、その装置としては、例えば、任意のプレートリーダーなどが挙げられる。また、CCDカメラで検出したプレート表面の画像をコンピューターで定量解析する方法も適用できる。
前記吸光コロイドシリカ粒子の吸光を定量する工程において、2つ以上の波長で吸光度を測定し、測定値の補正を行っても良い。
予め濃度既知のコントロール試料を測定することにより検量線を作成し、この検量線と対比することにより標的生体分子は定量される。
さらに、検体中における複数種の標的生体分子の検出やその存在比を求める場合には、かかる検量線の作成は必要でなく、吸光量の相対比を求めるだけでよい。
本発明において、上記各工程における分子認識反応は、リン酸緩衝食塩水(PBS)等任意のバッファーないしは溶媒中一定の反応条件下でインキュベートし、次いで、洗浄液で分子認識反応をしなかった未反応物を洗い流すことにより行うことができる。
洗浄液としては、分子認識反応を妨げず、未反応物を効率的に除去できるものであれば特に制限はなく、Tween20などの非イオン性界面活性剤を含有するPBSなどが好ましい。洗浄の方法としては、洗浄液中にプレートを浸漬してもよいし、プレートの上から洗浄液を添加して洗浄してもよい。
本発明の吸光コロイドシリカ粒子は、検体中に含まれる定量したい前記標的生体分子に特異的に吸着もしくは結合する物質で表面修飾された吸光コロイドシリカ粒子とするのが好ましく、前記標的生体分子を分子認識する物質で表面修飾された吸光コロイドシリカ粒子とするのがより好ましい。
以下、前記検出ないしは定量方法に用いる「プレート」並びに「プレート固定用の標的生体分子認識分子」について説明する。
前記吸光コロイドシリカ粒子は、高いモル吸光係数を有し、微量であってもプレートリーダーあるいは前記吸光コロイドシリカ粒子の発色を目視によって確認が可能であるので吸光標識用ナノビーズとして高感度分析を要する各種プレートに好ましく用いることができる。
本発明において、プレートには、標的生体分子に対応した標的生体分子認識分子が固定されていることが好ましい。上述のように複数種の標的生体分子を同時に測定する場合、各々の標的生体分子を特異的に認識することができる標的生体分子認識分子が標的生体分子の種類の数だけ固定されていることが好ましい。かかる標的生体分子認識分子は、標的生体分子に応じて適宜選択されるものであるが、例えば、標的生体分子が抗原である場合には、この抗原に対する抗体を用いることができる。
プレートは、複数の穴(ウェル)を有し、かつ複数の標的生体分子認識分子を固定できる板状体であれば、特に制限されるものではない。
プレートの形状、大きさ及び厚み等は特に制限されない。形状としては、例えば、矩形状、多角形状、円形状等が挙げられる。大きさは、80〜150cmの範囲が好ましく、標的生体分子の種類等に応じて適宜調整される。
プレートを構成する素材は特に限定されず、プラスチック、ガラス、石英、珪素、セラミック、金属、ゴム等を用いることができる。これらの素材の中でもプラスチックが好適であり、例えば、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、セルロースアセテートなどを用いることができる。特に好ましくは、抗体などの標的生体分子認識分子を煩雑な操作を要することなく物理吸着させることのできるポリスチレンを主成分としたプラスチックが用いられる。プレートは、単一の素材から構成される単層の板状体であっても、複数種の素材が積層されて構成される多層の板状体であってもよい。プレートの表面は、固定化される標的生体分子認識分子の種類に応じて適当な表面処理が施されてもよい。
標的生体分子認識分子をプレートに固定化するには、物理吸着法、共有結合法などの方法を用いることができる。標的生体分子認識分子が固定されるプレートの表面部分は、予め、固定化される標的生体分子認識分子の種類に応じて、該分子を固定化し易くする処理を施すことが好ましい。また、プレートの表面部分であって、標的生体分子認識分子を固定しない部分は、標的生体分子等の非特異的な吸着を防止するために、適切な表面処理を行うのが好ましい。例えば、プレート上に、標的生体分子認識分子を固定化した後は、標的生体分子の非特異吸着を防ぐために、スキムミルク、血清アルブミン、カゼインなどの標的生体分子とは異なるタンパク質など任意のブロッキング剤でブロッキング処理を施すのが好ましい。
本発明に用いるプレートとしては、OptiPlate−96(商品名、Perkin Elmer社製)、ファルコン96(商品名、ベクトン・ディッキンソン社製)、96ウェルガラスマイクロプレート(商品名、日本板硝子(株)社製)等市販のプレートを用いてもよい。
本発明の吸光物質含有コロイドシリカ粒子は、吸光物質を高濃度に含有することによって高いモル吸光係数を有し、高感度イムノアッセイに適し、例えば、従来の吸光イムノアッセイのELISA法に比べて、10〜100倍に検出感度が向上する。
また、本発明の吸光物質含有コロイドシリカ粒子は、煩雑な操作を要することなく、シランカップリング剤により所望の生体分子で表面を修飾することができ、あらゆる生体分子ないしは生理活性物質を吸光標識するのに用いることができる。
本発明の吸光物質含有コロイドシリカ粒子は、イムノアッセイに用いれば、酵素反応を用いないため煩雑な操作を要せず、また酵素活性のばらつきによる問題もないので測定データの精度と再現性に優れる。
本発明の吸光物質含有コロイドシリカ粒子は、含有する吸光物質の種類を変えることによって、吸光スペクトルが異なるコロイドシリカ粒子を複数種類調製することができる。
本発明のナノ吸光材料は、所望の粒径とし得て、かつ所望の波長における吸光性が優れるので、生体分子を吸光標識付けする吸光標識ナノビーズ、免疫沈降法用の発色粒子などとして用いることができる。
本発明の吸光標識ナノビーズキットは、これら複数種類のコロイドシリカ粒子を同時に用いてなり、複数種類の生体分子を同時に検出ないしは定量でき、臨床試料等の入手試料に限界がある場合に有効である。また、ELISA法と比べて検出感度が高いため、極微量成分を定量する場合等に有用である。
また、吸光度を測定して生体分子の検出ないしは定量を行うため、検出に用いる装置が蛍光イムノアッセイに比べてコンパクトかつ安価である。
前記生体分子の検出ないしは定量方法によれば、高いモル吸光係数を有する吸光物質含有コロイドシリカ粒子を用いることによって、タンパク質等の生体分子の検出ないしは定量を短時間かつ高感度に行うことができ、例えば、従来の吸光イムノアッセイのELISA法に比べて、10〜100倍に検出感度が向上する。
前記生体分子の検出ないしは定量方法は、酵素反応を用いないため煩雑な操作を要せず、また酵素活性のばらつきによる問題もないので測定データの精度と再現性に優れる。
前記生体分子の検出ないしは定量方法は、吸光スペクトルの違いにより複数種化された吸光物質含有コロイドシリカ粒子を同時に用いることにより、複数種類の生体分子を同時に検出ないしは定量でき、臨床試料等の入手試料に限界がある場合に有効である。また、ELISA法と比べて検出感度が高いため、極微量成分を定量する場合等に有用である。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
実施例1
(表面を抗体修飾した吸光コロイドシリカ粒子の調製法)
DYQ−660−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(Dyomics GmbH社製)3.3mgを1mlのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した。ここに1.0μlのAPS(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)を加え、室温(23℃)で1時間反応を行い、DYQ−660/シランカップリング剤複合体溶液を得た。
続いて、ヘプタン4mlにAOT(エーロゾルOT)280mgを加えた。ここに、蒸留水40μl、28%アンモニア水40μlを加え、良く撹拌し、逆ミセルを調製した。
上記の逆ミセル液に、DYQ−660/シランカップリング剤複合体溶液40μl、TEOS(オルトけい酸テトラエチル)100μlを加え、室温で良く混合し、24時間反応を行った。
反応液にアセトンを4ml加え良く混合した後、22000×gの重力加速度で30分間遠心分離を行い、上清を除去した。沈殿したシリカ粒子にエタノールを1ml加え分散させ、再度22000×gの重力加速度で30分間遠心分離を行った。本洗浄操作をさらに2回繰り返した。続いて、沈殿したシリカ粒子に蒸留水を1ml加え分散させ、22000×gの重力加速度で30分間遠心分離を行った。本洗浄操作をさらに2回繰り返し、吸光シリカ粒子分散液に含まれる未反応のTEOSやアンモニア等を除去した。
これによって、DYQ−660含有コロイドシリカ粒子(平均粒径138nm)を得た。収率44%。
図1に得られた吸光コロイドシリカ粒子のSEM写真像を示す。図中、白く見える球形状物が、得られた吸光コロイドシリカ粒子である。図1のSEM写真を観察し、前記吸光コロイドシリカ粒子が得られたことを確認した。
(DYQ−660含有コロイドシリカ粒子の吸光スペクトル並びに吸光最大波長におけるモル吸光係数εの測定)
吸光光度計(Molecular Devices社製)及び光路長1cmのセルを用いて、DYQ−660含有コロイドシリカ粒子の水分散液(濃度1.37×10−9mol/l)の吸光スペクトルと吸光最大波長(660nm)におけるモル吸光係数εを測定した。図2は、得られた吸光スペクトルを示す図である。また、660nmにおけるεは2.4×10−1cm−1であった。
(吸光コロイドシリカ粒子の抗体による表面修飾)
DYQ−660含有シリカ粒子を1mlのリン酸緩衝食塩水(PBS)に分散させた。DYQ−660含有シリカ粒子分散液50μlに3−スルホ−N−ヒドロキシスクシンイミド(Sulfo−NHS)と1−エチル−3(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)の混合物(0.05M Sulfo−NHS、0.2M EDC、PBSに溶解)を400μl加え10分間混合後、ヤギ由来の抗マウス免疫グロブリン抗体100μg/ml(LAB VISION社製)を50μl加え、さらに1時間混合した。
遠心分離によって吸光コロイドシリカ粒子を沈殿させ上清を除去した後、PBSに対して透析を2回行って未反応の試薬を除去した。これによって吸光コロイドシリカ粒子の表面がヤギ由来の抗マウス免疫グロブリン抗体で修飾された吸光コロイドシリカ粒子が得られた。
実施例2
(ハイブリドーマ培養上清中の免疫グロブリンタンパク濃度の決定)
まず、抗体をプレートに固定するため、10mlのPBSに10μlのヒツジ由来の抗マウスIgG抗体(LAB VISION社製)を添加し、軽く攪拌し、プレート固定用ヒツジ抗体液を調製した。
リザーバーに前記プレート固定用ヒツジ抗体液を移し、8連式のピペットマンを用いて96ウェルプレート(商品名ファルコン96(商品名、ベクトン・ディッキンソン社製)に1ウェルに対し100μlずつ加えた。
37℃で1〜2時間インキュベートし、前記ヒツジ由来の抗マウスIgG抗体を前記プレートの各ウェル中に固定した。
次に、ブロッキングのため、スキムミルク1.5gを30mlのPBSに溶解した。得られた溶液15mlを、前述とは別のリザーバーに移し、8連式のピペットマンを用いて96ウェルプレートに1ウェルに対し150μlずつ加えた。
37℃インキュベーターを用いて1〜2時間インキュベーションし、ブロッキングした。
9本の1.5mlエッペンドルフチューブを取り、全チューブに、450μlずつ5%スキムミルク含有PBS溶液を入れ、5%スキムミルク液とした。
次に、標的である免疫グロブリン(マウスIgG)を分泌するハイブリドーマ細胞(タカラバイオ(株))の培養上清と培養液とを準備した。
前記培養上清と培養液とを、それぞれ、50μlずつとり、1/10倍、1/100倍、1/1000倍に希釈した。
標準サンプル(200ng/mlの免疫グロブリン(マウスIgG))を調製した。
前記ブロッキング後のプレートから液を捨てた後、0.1%Tween20含有PBS液を用いて前記プレートを4回洗った。ティッシュペーパーで前記プレートを包み、叩くようにして水分を切った。
前記5%スキムミルク液を前記プレートの全ウェルに1ウェルあたり100μlずつ入れた。
続いて、各列の最上段にそれぞれ、前述のように調製した標準サンプル、ハイブリドーマ細胞の培養上清、並びに培養液を添加した。倍々希釈を繰りかえした。
37℃で1〜2時間インキュベートし、標的マウスIgGをプレート上に固定した。
吸光標識のため、前記得られた200μlのヤギ由来の抗マウス免疫グロブリン抗体で表面修飾された前記吸光コロイドシリカ粒子(濃度20μM;溶媒PBS)を10mlのPBSに添加した。
前述のように標的マウスIgGを固定した後のプレートから液を捨て、0.1%Tween20/PBS液を用いて4回洗った。ティッシュペーパーで前記プレートを包み、叩くようにして水分を切った。
このプレートに前記吸光シリカ粒子コロイド液を100μlずつ入れた。
37℃で1時間インキュベートすることにより、前記吸光シリカコロイド粒子を用いて、標的であるマウスIgGを吸光標識した。
前記プレートを0.1%Tween20/PBS液を用いて4回洗った。
各ウェルに溶媒PBSを500μl添加し、プレートリーダー(Molecular Devices社製;商品名Vmax)で650nmの吸光度を測定した。
濃度既知の標準サンプルを用いて、検量線を作成した。
前記ハイブリドーマの培養上清中の免疫グロブリン(マウスIgG)濃度を算出した。
本発明の吸光物質含有コロイドシリカ粒子は、吸光物質を高濃度に含有させることによりモル吸光係数εを増大させ、高感度検出を可能とし、さらに煩雑な操作を要せずに、所定の生体分子を標的とするための表面修飾ができ、かつ所望の粒径としうる。
また、本発明の吸光物質含有コロイドシリカ粒子は、異なる吸光物質を含有させることにより複数種化でき、さらには吸光スペクトルの極大波長の異なる複数種の吸光物質を含有させることにより複数の吸光スペクトルの極大を有する粒子とすることができ、いわゆるバーコード吸光標識ナノビーズとしうる。
さらに、上記複数種化された吸光物質含有コロイドシリカ粒子を複数個組み合わせたものは、複数種の標的生体分子を同時に検出ないしは定量しうるバーコード吸光標識ナノビーズキットとしうる。
前記生体分子の検出ないしは定量方法は、煩雑な操作を要せずに、所定の生体分子を標的とするための表面修飾ができ、かつ所望の粒径とし得るコロイドシリカ粒子を用い、吸光物質を高濃度に含有させ、モル吸光係数εを増大しうる吸光標識用ナノビーズとすることにより、生体分子の高感度検出・定量に使用できる。
また、前記生体分子の検出ないしは定量方法において、前記吸光物質含有コロイドシリカ粒子は、異なる吸光物質を含有させることにより複数種化でき、さらには吸光極大波長の異なる複数種の吸光物質を含有させることにより複数の吸光極大を有する粒子とすることができ、上記複数種化された吸光物質含有コロイドシリカ粒子を複数個組み合わせたものは、複数種の標的生体分子を同時に検出ないしは定量しうる。
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。

本願は、2006年8月10日に日本国で特許出願された特願2006−218877、及び2006年8月10日に日本国で特許出願された特願2006−218903に基づく優先権を主張するものであり、これらはいずれもここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。

Claims (16)

  1. 吸光物質が、コロイドシリカ粒子の粒子全体に分布している吸光物質含有コロイドシリカ粒子であって、前記吸光物質とシリカ成分とが化学的に結合もしくは吸着してな前記吸光物質が、下記式で表される、DY-415、DY-495、DY-590、Alexa Fluor405、Alexa Fluor488及びAlexa Fluor568からなる群より選ばれる少なくとも1種である、吸光物質含有コロイドシリカ粒子。
  2. 平均粒径が50nm〜2000nmである、請求項1に記載の吸光物質含有コロイドシリカ粒子。
  3. 前記吸光物質の少なくとも1種が前記シリカ粒子全体に分布していることを特徴とする請求項1又は2に記載の吸光物質含有コロイドシリカ粒子。
  4. 前記コロイドシリカ粒子の吸光スペクトルにおける吸光最大波長が、200nm〜800nmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸光物質含有コロイドシリカ粒子。
  5. 前記吸光スペクトルの極大波長における、前記コロイドシリカ粒子のモル吸光係数が5×10−1cm−1以上であることを特徴とする請求項4に記載の吸光物質含有コロイドシリカ粒子。
  6. 前記シリカ粒子の表面にアミノ基、水酸基、チオール基、カルボキシル基、マレイミド基、シアノ基及びスクシンイミジルエステル基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸光物質含有コロイドシリカ粒子。
  7. 前記シリカ粒子の表面が、標的生体分子に特異的に結合もしくは吸着する物質で修飾されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸光物質含有コロイドシリカ粒子。
  8. 前記標的生体分子が、抗原、抗体、DNA、RNA、糖、糖鎖、リガンド、受容体、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、ペプチド又は化学物質であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の吸光物質含有コロイドシリカ粒子。
  9. 吸光標識ナノビーズとして標的生体分子を吸光標識し、その吸光度を測定することあるいは発色を目視で確認することにより該標的生体分子を検出ないしは定量することに用いる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の吸光物質含有コロイドシリカ粒子。
  10. 前記吸光物質含有コロイドシリカ粒子が、各々、吸光スペクトルの極大波長の異なる1〜4種類の吸光物質を含有していることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の吸光物質含有コロイドシリカ粒子。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の吸光物質含有コロイドシリカ粒子からなるナノ吸光材料。
  12. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の吸光物質含有コロイドシリカ粒子を2種以上少なくとも有するセットとしてなる吸光標識ナノビーズキット。
  13. 2種以上の標的生体分子を同時に検出ないしは定量する、請求項12に記載の吸光標識ナノビーズキット。
  14. 前記2種以上の標的生体分子を、2種以上の吸光物質含有コロイドシリカ粒子を用いてそれぞれ特異的に吸光標識付けすることにより、2種以上の標的生体分子を同時に検出ないしは定量する、請求項13に記載の吸光標識ナノビーズキット。
  15. 前記2種以上の吸光物質含有コロイドシリカ粒子が、異なる吸光スペクトルを有することを特徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載の吸光標識ナノビーズキット。
  16. 前記2種以上の吸光物質含有コロイドシリカ粒子各々が、吸光スペクトルの極大波長の異なる1〜4種類の吸光物質を含有していることを特徴とする、請求項12〜15のいずれか1項に記載の吸光標識ナノビーズキット。
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