以下、本発明の実施例を図に基づいて詳説する。本実施例における電気機器の筐体等に組み込まれる構造色が可変な可変構造色形成部材1は、図1に示すように、基板11と、基板11上に積層され構造色を形成する構造色形成層12と、構造色形成層12上に積層される保護膜13及び上塗り層14とから形成されるものであり、構造色形成層12によって構造色が形成されるものである。
この基板11は、金属板やガラス板等によって形成されるものであり、デジタルカメラや携帯電話機等の電気機器における筐体を形成する或いは内蔵される光学系の表面を形成する部材である。
又、構造色形成層12は、高屈折率層23と低屈折率層24とが多段に積層された棚構造体25が基板11上に規則的に配列されて形成されるものであり、この棚構造体25は、高屈折率層23の行間に配置され柱を形成する支持部材21と、高屈折率層23の行間に位置し支持部材21の周縁に形成される低屈折率層24と、支持部材21と高屈折率層23との間に配置された透明電極22とから構成されるものであり、支持部材21は、高屈折率層23の面積より小面積に形成され、伸縮可能なアクチュエータによって形成されるものであり、このアクチュエータとされた支持部材21が伸張することにより高屈折率層23の行間の厚みが変化し、光学的距離も変化するため構造色が可変となるものである。
更に、この棚構造体25は、可視光線の波長をλ0(約380〜760nm)とすると、二枚の透明電極22と高屈折率層23の合計の厚さ、及び、支持部材21の厚さは、夫々約λ0/4(約95〜190nm)の厚さ、若しくは、一つの高屈折率層23及び一つの支持部材21並びにこの支持部材21の両面に位置する二枚の電極からなる周期間隔20が約λ0/2とされるものである。
更に、基板11上に配列された棚構造体25の各列間には空隙26が形成され、所定の一列の棚構造体25の幅と空隙26の幅の合計は、約500nm〜1μmとされ、図2に示すように、アクチュエータとされる支持部材21は、一つの棚構造体25の同一層内で複数に分断されていると共に他の列の同一層に位置する支持部材21とも分断されているが、透明電極22及び高屈折率層23は、一つの棚構造体25の同一層内では一枚の層として形成されていると共に他の列の同一層とも連結部によって連結されているものである。よって、構造色形成層12の表面は、各棚構造体25間の空隙26と連結部とからなる方形状の開口が規則的に形成され、回折格子を形成しているものである。
そして、棚構造体25を構成する高屈折率層23は、前後方向に細長い長方形状の薄膜であって、棚構造体25の他の列における同一層の高屈折率層23と連結部により連結されているものであり、高屈折率の誘電体によって形成され、例えば、二酸化チタン(TiO2)、二酸化ケイ素(SiO2)、フッ化マグネシウム(MgF2)等の酸化物或いはフッ化物等によって形成され、屈折率の異なる高屈折率層23と低屈折率層24が交互に複数段積層されることにより多段構成とされ、多層膜干渉による構造色を形成するものである。又、高屈折率層23の行間に形成されている低屈折率層24は、屈折率n=1.0の空気によって形成される空気層である。
又、透明電極22は、前後方向に細長い長方形状の薄板であって、支持部材21と高屈折率層23との間に配置され、支持部材21の上下二面に接続されているものであり、アクチュエータとされる支持部材21に電圧を印加することによりアクチュエータの伸縮距離を連続的に制御するものである。尚、透明電極22を形成する物質としては、銀(Ag)、銀パラジウム(AgPd)、白金(Pt)、金(Au)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、イリジウム(Ir)、酸化イリジウム(IrOx)、ルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO3)等を用いることができる。
更に、支持部材21は、前後方向に細長い長方形状の薄膜であって、幅は透明電極22及び高屈折率層23の幅よりも狭く形成されると共に前後方向の長さも透明電極22及び高屈折率層23の長さよりも短く形成されているものである。よって、この支持部材21は、高屈折率層23(透明電極22も含む)の行間の横方向略中央部分に配置されているが、高屈折率層23の幅よりも幅狭に形成されているため、高屈折率層23(透明電極22も含む)の行間であって支持部材21の周縁に低屈折率層24とする空気層を形成しているものであり、棚構造体25の柱として機能するものである。又、支持部材21は、透明電極22及び高屈折率層23の前後方向の長さよりも短く形成されていることにより、同一の棚構造体25の同一層内に複数の支持部材21が分断された状態で規則的に配置されているものである。
又、アクチュエータとされる支持部材21は、チタン酸バリウム、ニオブ酸リチウム、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン(PLZT)等の圧電材料によって形成された圧電アクチュエータとされるものであり、上下に接続された透明電極22から電圧が印加されることによって数十〜数百nmの範囲で伸縮可能とされるものである。
そして、この圧電アクチュエータの電圧による変位特性は、分極方向の長さをL、印加する電圧(電界)をE、分極方向の変位量をΔL、積層数をN、電圧をV、圧電定数をd
33とすると、ΔLは(1)式で計算でき、(2)式が導き出される。尚、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)ではd
33=300〜450pm/Vであり、BaTiO
3ではd
33=約190pm/V、PNN−PZT系圧電材料ではd
33=約1200pm/Vである。
そして、圧電素子の変位特性をグラフに表すと図3(a)示すようなグラフとなり、0〜最大変位量までの間を略電圧と比例して伸張するものである。尚、電圧を下げた場合の収縮量の方が電圧を上げた場合の伸張量よりも僅かに大きな変位量となる。このように圧電素子の変位特性は、電圧と略比例するため数値化することが可能であり、圧電アクチュエータとされる支持部材21の厚みを連続的に制御することができるため、低屈折率層24の厚みをアクチュエータによって連続的に制御することが可能となるものである。
尚、支持部材21として形状記憶型の圧電アクチュエータを用いることもできる。この形状記憶型の圧電アクチュエータとは、PZT等の圧電材料を150℃程度の高温下で、700V程度の高電圧を印加することにより素子表面に電荷を蓄積させ、常温・常圧において二種の安定な歪みストレスを取り得るという特徴を有したものであり、図3(b)のグラフに示すように、圧電変位と同時に、歪みストレスによって誘電率や屈折率にメモリ機能を付与でき、このような形状記憶型の圧電アクチュエータを用いることにより、常時電圧を印加しなくとも一度与えた電圧による歪みや変位を長時間保持することができ、構造色を長時間保持できると共に低消費電力化も可能となるものである。
更に、構造色形成層12の表面を覆う保護膜13は、透明なガラス板又は透明な樹脂フィルム等によって形成されるものであり、構造色形成層12を保護するためのものである。又、上塗り層14は、ハードコート塗装等によって形成される膜であり、可変構造色形成部材1の最外層とされ、保護膜13等に水分が直接付着することや細かい傷がつくことによる可変構造色形成部材1の劣化を防止するものである。尚、この上塗り層14は、保護フィルムを貼り付けることでも同様の効果を得ることができ、保護膜13と一体とすることもできる。
次に、構造色について述べる。自然界では、顔料や光輝材、発光素子等が無くともメタリックな光沢や鮮やかな発色が見られる。このような光沢や発色は、光の波長程度の規則正しい微細構造や回折格子構造による干渉色や遊色現象、薄膜干渉や多層膜干渉等、物理的構造に基づいて発生するものである。
この多層膜干渉とは、図4に示すような、高屈折率(NH)薄膜Hと低屈折率(NL)薄膜Lを交互に積層した多層膜に光を入射させた場合に各膜間の屈折率の違いにより各膜間で発生する、多段に渡る反射光のことである。つまり、多層膜に照射された光は、多層膜の表面で反射される反射光と、透過する透過光とに分光され、この現象が各段において繰り返されることにより、各段で反射された反射光の波長が同期して美しい発色となる現象である。
例えば、南米アマゾン川流域に生息するモルフォ蝶は、蝶の宝石と言われる程に美しい青色をしているが、モルフォ蝶にはブルー色素が無く、鱗粉の微細形状によって美しい青色を形成しているものである。このモルフォ蝶の鱗粉は、長さ0.2mm×幅0.1mm×厚さ3μmの薄い膜状であり、鱗粉上にはリッジ(ridge)といわれる回折格子のような筋が約0.7μm〜1μm間隔で規則正しく形成されている。又、この筋は中心に柱を有し、柱の両側に棚が数段、約0.2μmの間隔で突き出した棚構造とされているものであり、筋は回折格子ではなく半回折格子として多層膜干渉を発生するものである。そして、この棚(屈折率1.5)と空気層(屈折率1.0)をあわせて一層と考え、多層膜干渉の公式λ=2・n・d(λ:波長、n:屈折率、d:棚の間隔)を用いると、(3)式に示すように、波長λは約0.48μmとなり、
青色光の波長が選択されて反射され、青色の構造色が生み出されることがわかる。
又、高屈折率の薄膜H及び低屈折率の薄膜Lの夫々の厚みをλ
0/4として交互にm組み積層した多層膜の反射特性は、図5のグラフに示すように、波長λがλ
0、λ
0/3、λ
0/5、・・・の時に反射率がピークを持つ反射特性を示し、その最大反射率R
mは、基板の屈折率をN
Sとすると、(4)式となり、その波長域は、(5)式となる。
よって、積層数mを多くするほど、又、高屈折率N
Hと低屈折率N
Lの屈折率の比が大きい材料の組み合わせほど反射率が高くなることがわかる。
そして、本実施例の可変構造色形成部材1は、このモルフォ蝶の鱗粉の構造色を形成する構造と略同様の構造をしているものであり、棚の間隔は図4に示した図と同様にλ0/4とされているため、支持部材21の周縁の空気層と高屈折率層23との屈折率の違いにより多層膜干渉が得られ、図5のグラフに示したものと同様の反射特性を示すものである。又、構造色形成層12の表面は回折格子が形成されているため、コンパクトディスク(CD)の表面のようなメタリックな光沢と色彩の構造色を得ることができるものである。
次に、可変構造色形成部材1における構造色の可変制御に関して述べる。本発明の可変構造色形成部材1は、構造色形成層12の圧電アクチュエータとされる支持部材21に直流電圧又は交流電圧又はパルス電流を印加して圧電材の厚さを伸縮させ、支持部材21の周縁に形成された低屈折率層24の厚みを増減させることにより、高屈折率層23と低屈折率層による多層膜の反射光の波長特性を可変制御できるものである。
そして、低屈折率層24の厚さ変化による構造色の変化は、図6のグラフに示すように、空気層の厚さが100nmの場合にはピーク波長が青色領域(435〜480nm)に位置し、120nmでは緑色領域(500〜560nm)、140nmでは黄色領域(580〜595nm)、170nmでは赤色領域(610〜750nm)といったように連続的に変化するため、構造色を連続的に可変制御することができるものである。尚、図6のグラフは、高屈折率層23として屈折率n=1.46、厚さ100nmの二酸化ケイ素を用い、低屈折率層24とする空気層の厚さを100nmとし、交互に計8層積層した構造色形成層12で圧電アクチュエータとする支持部材21を伸張させた場合における反射特性の変化をシミュレーションしたものである。
又、この可変構造色形成部材1の構造色を設定する設定データの構成について図7の表に示す。この表は、圧電アクチュエータに印加する電圧値V、或いは、反射特性における位相差δやnd又はΔnd等の光学特性等に対応する構造色の色コード、RGB値、色度座標等を示す表である。尚、多層膜による干渉色では位相差δ=2π(nd/λ)やndを変化させるとき、出現する干渉色の順番がおよそ決まっている。これは、偏光顕微鏡観察で用いるレターデーション(Retardation、光路差)と偏光色の関係と同様であり、干渉色図表等のカラーチャートや色の順序と、位相差δやnd等の光学特性とを対応させるように構成することもできるものである。本実施の形態では、これらの情報を後述する制御回路130に内蔵のROMに記憶している。
次に、本実施例における可変構造色形成部材1の製造方法について図8のフローチャート及び図9を用いて述べる。最初に樹脂又は金属板を可変構造色形成部材1の基板11として成形する基板成形処理を行い(ステップS101)、基板成形処理(ステップS101)において成形された基板を洗浄及び平坦化並びに塵を除去する基板洗浄処理を行うことにより基板11を製造する(ステップS103)。そして、この基板11上にインプリントや蒸着、スパッタリング等の薄膜形成技術により所定の選択領域に透明電極22を形成する透明電極形成処理を行い(ステップS105)、透明電極22上の狭い領域にインプリント技術等によって圧電材料の層を形成する支持部材形成処理を行い(ステップS107)、透明電極22や支持部材21が位置する箇所以外の空間領域に有機物等を流し込み、図9(a)に示すように支持部材21の先端と有機物の表面とを同一の高さにすることにより平坦化する平坦化処理を行う(ステップS109)。
次に、平坦化処理(ステップS109)によって形成した平坦面上の所定の選択領域にスパッタリング等により透明電極22を形成する透明電極形成処理(ステップS111)を行い、更に、透明電極22上にスパッタリング等により高屈折率の誘電体等による層である高屈折率層23を形成する誘電体層形成処理を行い(ステップS113)、透明電極22や高屈折率層23以外の空間領域に有機物等を流し込み図9(b)に示すように高屈折率層23の表面と有機物の表面を同一の高さにすることにより平坦化する平坦化処理を行う(ステップS115)。そして、所要の層数を形成したか判断する層数判断処理を行い(ステップS117)、所要の層数に足らない場合には、所定の選択領域に透明電極22を形成する透明電極形成処理(ステップS105)から高屈折率層23の表面と有機物の表面を同一の高さにすることにより平坦化する平坦化処理(ステップS115)までを図9(c)に示すように所要の層数に達するまで繰り返す。
層数判断処理(ステップS117)において所要の層数を満たしていた場合には、図9(d)に示すように、有機物等の部分を酸によって融解、加熱による溶解等によって除去する有機物除去処理を行い(ステップS119)、図9(e)に示すように、最表面に保護膜13及び上塗り層14を形成する仕上げ処理(ステップS121)を行い、最後に検査等を行って可変構造色形成部材1の製造が終了するものである。
そして、可変構造色形成部材1をこのように製造することにより、ナノミリ単位での正確な製造が可能となり、又、製造コストを抑えることができ、更に、広面積な可変構造色形成部材1を製造できるものである。
次に、可変構造色形成部材1の製法における薄膜形成技術に関して述べる。EB(電子線)蒸着等の蒸着法は、膜厚の制御性が高く、成膜速度も速いため、MgF2等のフッ化物等、低屈折率材料の成膜も可能である。
又、RFスパッタ法や、IAD(イオンアシスト蒸着)法等のイオンプレーティングは、従来のEB蒸着が粗な膜になりやすく、水分吸着や光学特性の不良も目立つため、EB蒸着にプラズマを併用したものである。このRFスパッタ法は、基板ドームに高周波を印加することによって発生した自己バイアス現象によってイオンが基板ドームに向かって加速し、スパッタライクで緻密な膜を得ることができる製法であり、IAD法は、イオン銃から加速イオンを基板ドームに打ち付けることで蒸着膜を緻密にできる製法である。そして、これらのイオンプレーティングは、低温でも緻密な膜が生成でき、膜厚の制御性に優れ、成膜速度が速いという特徴があり、スパッタリングと同様、金属材料からの反応を利用した酸化物等の成膜も行えるものである。
更に、スパッタリングは、Ar、O2、N2等のイオンをターゲット材料に照射し、ターゲット材料の構成原子がターゲット表面から放出される現象を利用して成膜する製法であり、電源にはDC電源若しくはRF電源を利用する。このスパッタリングは、最大210×300mm(A4サイズ)程度、標準でも一辺100mm〜300mm程度の大面積な均一成膜が可能であり、低温でも緻密で耐久性の高い膜が成膜できるものであり、高融点材料も含め、略全ての無機材料を成膜できるという特徴がある。
又、近年の薄膜製法の技術としては、マイクロコンタクト・プリントやナノ・インプリント等がある。このマイクロコンタクト・プリントは、型を元にスタンプを作成し、活性分子等のインクを押しつけて印刷し、マスクを作製する技術であり、図10(a)及び図10(b)に示すように、まずフォトリソグラフィー技術等で精密なフォトレジストパターン(原版)401を作り、PDMS(シリコンゴム)等のスタンプ材402をフォトレジストパターン401に押しつけて、図10(c)に示すようなフォトレジストパターン401の型を取ったスタンプ403を作製する。次に、スタンプ403を活性分子溶液のインクにつけた後、図10(d)に示すように、金(Au)等が蒸着された基板405の表面に押しつけて、活性分子406を基板405の表面に転写する。すると、活性分子406は、金等の表面に化学吸着されて、図10(e)に示すように、基板405の表面に安定した自己組織化膜(SAM)407が形成される。その後、このように形成された自己組織化膜407をマスクとして、図10(f)に示すように、微細なエッチング加工等を行なうことができるものである。
更に、ナノ・インプリント技術は、原版をレジストに型押し(インプリント)し、紫外線(UV)を照射して重合させ、熟成やマスクを作製する技術であり、図11(a)に示すように、まず透明な石英等の原版411を用意し、基板412上の平坦化した表面にインプリント用のレジスト413を塗る。そして、図11(b)に示すように、このレジスト413の流体に原版411を押し付け、図11(c)に示すように、透明な原版411の裏から紫外線UVをレジスト413の流体に照射して重合させ、レジスト413の流体が固まった後に、図11(d)に示すように、原版411を基板412から取り外すと、原版411パターンの複製ができ上がるものである。又、図11(e)に示すように、原版411の複製をマスクとして、更に微細なエッチング加工等を行なうこともある。
尚、上述した圧電材料の薄膜アクチュエータを形成する場合には、図12(a)に示すようなSTO(チタン酸ストロンチウム)等の基板421上に、図12(b)に示すように、電子ビーム等で所望のレジスト422を作製し、図12(c)及び図12(d)に示すように、このレジスト422にPLZTやチタン酸亜鉛系の圧電材料423のゲルを充填して乾燥させ、図12(e)に示すように、レジスト422部分を除去して乾燥ゲルを焼成し、図12(f)に示すような所望の形状のPLZT結晶を形成する方法を用いることもできる。
以上のような方法により製造された可変構造色形成部材1によれば、構造色形成層12をλ0/4程の膜厚とされた高屈折率層23及び低屈折率層24を交互に積層して形成する、若しくは、λ0/2程の周期間隔20で高屈折率層23及び低屈折率層24を交互に積層することにより、メタリックな光沢を備えた構造色を得ることができ、深みのある構造色を得られる可変構造色形成部材1を提供できるものである。
又、支持部材21をアクチュエータとし、このアクチュエータによって高屈折率層23の行間の光学的距離を変化させることにより、構造色独特の多様な色調及び光沢を可変制御できる可変構造色形成部材1を提供できるものである。
更に、構造色形成層12を高屈折率層23と低屈折率層24とが多段に積層された棚構造体25が基板11上に規則的に配列された構造とすることにより、多層膜干渉による構造色を得ることができ、よってモルフォ蝶のような深みのある鮮やかな構造色を得られる可変構造色形成部材1を提供できる。
又、各構造色形成層12の表面に回折格子を形成することにより、回折格子によるメタリックな深みのある構造色を得ることができると共に、棚構造体25は半回折格子として働くため多層膜干渉による深みのある鮮やかな構造色を得られる。更に、透明電極22は、各棚構造体25の同一層と連結されているため、個別の配線無しに全てのアクチュエータを制御でき消費電力も抑えることができるものである。
そして、高屈折率層23として高屈折率の誘電体を用い、低屈折率層24を空気層とすることにより、屈折率の差を大きくすることができ、より鮮やかな色彩の構造色を得られる可変構造色形成部材1を提供できる。
又、アクチュエータとして圧電素子を用いた圧電アクチュエータとすることにより、印加電圧を変えるだけで容易に連続的に高屈折率層23の行間の厚みを変化させることができ、よって、連続的に構造色を変化させることができる可変構造色形成部材1を提供できる。
更に、本実施例の可変構造色形成部材1によれば、構造色形成層12の層数を多くし、屈折率比を大きくするほど、鮮やかな構造発色を得られることができ、メタリックな色彩を表現可能となり、顔料や染料、フレーク材等を用いずに、鮮やかで光沢感のある発色が得られ、環境に優しい表面加工ができるものである。
又、半導体リソグラフィー技術等を用いずとも、通常のスパッタリングや真空蒸着、マイクロコンタクトプリント、インプリント等の技術は、型を成形すれば大面積でも安価に製造できるため、大面積の電気機器の可変構造色形成部材1としても利用できる。
更に、従来の表示素子や電飾と異なり、電源が入っていない状態であっても鮮やかな構造色や光沢が得られ、電源が入っているときには、機器の状態やユーザーの設定色に応じて、多様な色調や配色、光沢に変化させることができ、よって、新しい装飾性を付加でき、ユーザーの嗜好や状況に合わせて、外観の色柄を自由にカスタマイズすることができ、商品寿命を長くすることができる。
尚、本実施例の可変構造色形成部材1では、構造色形成層12を透明電極22及びアクチュエータとする支持部材21並びに高屈折率層23を積層して形成しているが、図13及び図14に示すように、高屈折率層23として誘電体の代わりに金属膜や導電性の薄膜を用いて導電性薄膜28とし、圧電アクチュエータとされた支持部材21と導電性薄膜28とを約λ0/4ずつ交互に積層する構成とすることもある。この場合には、導電性薄膜28による高屈折率層23に直接電圧を印加することで圧電アクチュエータを伸縮させることができ、製造工程が減るため製造が容易となる。又、このように導電性薄膜28と圧電アクチュエータを積層して構成した場合でも、上述したような透明電極22と誘電体による高屈折率層23とを別々に積層して形成したものと同様の効果を得ることができる。
更に、支持部材21を圧電アクチュエータとしていたが、導電性高分子を用いたアクチュエータを用いることや、電磁ボイスコイル等をアクチュエータとして用いることも可能であり、ナノメートル単位で制御でき、且つ、応答速度が速いアクチュエータであれば圧電アクチュエータに限るものではない。
次に、上述した可変構造色形成部材1を利用した電気機器として、筐体に可変構造色形成部材1が組み込まれたデジタルカメラ100について述べる。本実施例におけるデジタルカメラ100は、図15に示すように、カメラ筐体101の前方を形成する前ケース102の正面にはフラッシュ111や赤外線センサ112、撮像光学系113等が配置され、更に、撮像光学系113を覆う可動なレンズカバー115が取り付けられ、カメラ筐体101の上面にはシャッターボタン116や電源スイッチ117が配置されているものである。又、図16に示すように、カメラ筐体101の後方を形成する後ケース103の背面には、表示装置121やズームボタン122、方向キー123、メニューボタン124等が配置されているものであり、更に、前ケース102及び後ケース103の表面には、上述した可変構造色形成部材1が組み込まれ、カメラ筐体101の色や光沢を可変制御されるものである。
そして、デジタルカメラ100は、図17のブロック図に示すように、制御手段や表示色設定手段としての制御系、デジタルカメラ100の機能を実行する機能手段としての撮影系や撮影補助系、入力手段とする操作系、表示手段としての表示系、構造色形成層駆動手段としての外装色系、電源系、画像ファイル記憶系、音声出力系等に分類することができるものであり、撮影モード、再生モード、設定モード等の異なるモードで使用可能なものである。
この制御系のブロックとしては、制御回路130や画像音声CODEC131等があり、この制御回路130は、CPU、各機能を実行するプログラムや表示色設定情報(構造色設定情報)等の各種設定データを記憶するROM、各種データを一時的に記憶するRAM等で構成され、各系を制御してデジタルカメラ100の動作を集中的にコントロールし、画像表示制御手段や画像データ保存制御手段、画像調整手段や画像生成手段、データ配列手段等として機能すると共に、外装の色を決定する表示色設定手段として機能するものである。
又、画像音声CODEC131は、画像データや音声データのファイルを圧縮し、小容量のデータに変換するものである。更に、電源系としては、電力となるバッテリー等の電池133と、電池133からの電力を制御回路130等に供給する電源回路132とを備えるものである。
又、撮影系としては、撮影レンズ群135と、この撮影レンズ群135を通過した被写体像を二次元の画像信号に変換するCCD(Charge Coupled Devices)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子138と、この撮像素子138からの画像信号に対して所要の画像処理を施す信号処理部139と、画像処理後の画像信号を一時的に記憶する画像メモリ141と、撮影レンズ群135のレンズを駆動させることによりフォーカスやズームを実現させるレンズ駆動部142と、撮像素子138を駆動させる撮像素子駆動部143とを備えるものである。
更に、撮影系として、入射光の光軸方向を撮影レンズ群135の光軸方向に変換する変換ミラー145を備え、この変換ミラー145の反射面には上述した可変構造色形成部材1が取り付けられ、変換ミラー145に、可変構造色形成部材1の構造色形成層12を駆動する構造色形成層駆動手段を備えるミラー駆動部146が接続されているものである。構造色形成層12においてアクチュエータとされる支持部材21は、構造色形成層駆動手段から供給される駆動電圧により伸縮し、構造色形成層12の構造色や反射特性が変化する。このように変換ミラー145の表面に可変構造色形成部材1を組み込むことにより反射特性が可変となるため、ミラー駆動部146で可変構造色形成部材1を制御することにより、入射光の波長特性を変えたり、明るさを減光したりすることができるものである。
更に、撮影補助系としては、上述したフラッシュ111と、フラッシュ111が有する照明用LEDライトを駆動させるLED駆動回路151と、撮影フラッシュとしての高輝度ライトを駆動させるフラッシュ駆動回路152と、反射面に上述の可変構造色形成部材1が取り付けられ、照明用LEDライトや高輝度ライトの光を集光するリフレクタ153と、リフレクタ153の反射面に組み込まれた可変構造色形成部材1の構造色形成層12を駆動する構造色形成層駆動手段を備えた反射鏡駆動部154と、シャッターボタン116にしたがって駆動するシャッター駆動部155とを備えるものである。そして、反射鏡駆動部154内の構造色形成層駆動手段によって、リフレクタ153の反射波長特性(分光反射率)や反射率を変化させ、照明光全体の分光反射率特性や指向方向、ホワイトバランス等を調整することができるものである。
又、操作系としては、カメラ筐体101の各部に設けられた様々な操作ボタン類、すなわち、シャッターボタン116、ズームボタン122、方向キー123、メニューボタン124等の操作入力部158と、この操作入力部158からの操作信号をCPUに入力するための入力回路159と、無線通信によって撮影及び再生を操作するリモコン等の通信装置165と、通信装置165からの信号を受信する受信装置166とを備えるものである。
更に、画像ファイル記憶系としては、メモリインターフェース161と、このメモリインターフェース161に着脱可能に接続されるメモリカード等の外部メモリ162とを備えるものである。又、表示系としては、液晶表示装置等の表示装置121と、CPUから適宜に出力される表示データに従って表示装置121を制御する表示駆動部163とを備えるものである。
又、外装色系としては、前ケース102及び後ケース103の表面に取り付けられた可変構造色形成部材1と、可変構造色形成部材1に電圧を印加することにより外装色を変化させる外装色駆動部171を備えるものであり、この外装色駆動部171は、可変構造色形成部材1の構造色若しくは反射特性を電気的に可変制御する構造色形成層駆動手段を備えるものである。そして、構造色形成層駆動手段は、構造色形成層12においてアクチュエータとされる支持部材21に駆動電圧を供給して支持部材21を伸張或は収縮させ、構造色形成層12の構造色や反射特性が変化させる。尚、可変構造色形成部材1の構造色若しくは反射特性の設定情報である表示色設定情報は、制御回路130で決定され、構造色形成層駆動手段は、制御回路130から供給される決定された表示色設定情報に対応する駆動信号に基づいて、構造色形成層12を上記のように駆動する。つまり、本実施の形態においては、制御回路130が表示色設定手段としての機能を備えるものである。尚、表示色設定情報を決定するとは、デジタルカメラ100の外装色を何色に変化させるか決定したり光沢を決定したりするものであり、可変構造色形成部材1の変化させる構造色や反射特性を決定することをいう。
そして、本実施例のデジタルカメラ100は、起動時のモードに応じて外装色を変化させる機能と、入力手段とする操作入力部158を操作した場合に、操作に応じて外装色を変化させる機能と、ユーザーが選択した色に外装色を変化させる機能と、撮影系等の機能手段が実行した機能に基づいて外装色を変化させる機能と、電源がOFF状態の時に対応する外装色に変化させる機能とを備えているものである。
この起動時のモードに応じて外装色を変化させる場合には、電源がON状態となると、制御回路130(より正確には、制御回路130内のCPU)が現在のモードが撮影モード、再生モード、設定モードのいずれのモードであるかを判定し、判定されたモードと対応する表示色設定情報を内蔵の記憶手段(ROM)から読み込み、この表示色設定情報に対応した駆動信号を外装色駆動部171の構造色形成層駆動手段に出力し、構造色形成層駆動手段が駆動信号に基づいて可変構造色形成部材1のアクチュエータを稼動させることにより外装色を変化させるものである。尚、制御回路130が設定情報に対応した駆動信号を構造色形成層駆動手段に出力する場合、図7の表に基づいて、表示色設定情報(構造色設定情報)と対応する電圧値等を決定し、この電圧値等の情報を駆動信号として構造色形成層駆動手段に出力するものである。このように起動時のモードに応じて外装色を変化させることにより、ユーザーは現在のモードを瞬時に知ることができるため、確認操作等の面倒な操作をする必要が無くなる。
又、入力手段とする操作入力部158を操作した場合に、操作に応じて外装色を変化させる場合には、制御回路130が入力された操作と対応する表示色設定情報を内蔵の記憶手段(ROM)から読み込み、この表示色設定情報に対応する駆動信号を構造色形成層駆動手段に出力し、構造色形成層駆動手段が表示色設定情報に基づいて可変構造色形成部材1のアクチュエータを稼動させることにより外装色を変化させるものである。このように操作入力に応じて外装色を変化させることにより、ユーザーはどのような操作をしたかを判断できると共に、操作入力の度に変化する外装色を楽しむことができる。
更に、ユーザーが選択した色に外装色を変化させる場合には、操作入力部158の操作にによって制御回路130に内蔵の記憶手段(ROM)に予め記憶された複数の表示色設定情報に基づく構造色選択画面が表示手段よって表示され、この構造色選択画面に表示された情報の中からユーザーが操作入力部158を操作して所定の構造色を選択すると、制御回路130はこの選択された表示色設定情報と対応する駆動信号を構造色形成層駆動手段に出力し、構造色形成層駆動手段がこの駆動信号に基づいて可変構造色形成部材1のアクチュエータを稼動させることにより外装色を変化させるものである。このようにユーザーが自身で外装色を設定できるようにすることで、気分に応じて外装色を自由に変更でき、又、変更した色も深みのあるメタリックな色及び光沢であるため、飽きの来ないデジタルカメラ100とすることができる。
又、撮影系等の機能手段が実行した機能に基づいて外装色を変化させる場合には、機能手段が実行した状態に基づいて制御回路130が記憶手段に予め記憶された対応する表示色設定情報を選択し、この表示色設定情報と対応する駆動信号を構造色形成層駆動手段に出力し、構造色形成層駆動手段がこの駆動信号に基づいて可変構造色形成部材1のアクチュエータを稼動させることにより外装色を変化させるものである。このように、機能に応じて外装色を変化させることにより、実行中の機能がわかりやすく、又、外装色の変化を楽しむことができる。
更に、電源がOFF状態の時に対応する外装色に変化させる場合には、制御回路130が、表示色設定情報の一つとして記憶手段に記憶されている主電源OFF状態時の筐体の基本色情報を読み出し、この読み出した基本色情報に基づいて待機電力により対応する駆動信号を構造色形成層駆動手段に出力し、構造色形成層駆動手段がこの駆動信号に基づいて外装色を変化させることにより、電源がOFF状態時の基本色に変化させることができるものである。このように、電源がOFF状態時でも、基本色を楽しむことができるため、使用しているときに限らず、非使用時においても深みのあるメタリックな色及び光沢を観賞して楽しむことができる。
尚、主電源OFF状態時には、構造色形成層駆動手段に供給する一切の電力を停止し、可変構造色形成部材1のデフォルトの構造色に復帰させる構造とすることもできる。このように一切の電力を停止することにより、無駄な電力消費を抑えることができて電池の寿命を延ばすことができると共に、可変構造色形成部材1は、物理的な構造によって構造色を形成しているため、深みのあるメタリックな色及び光沢を観賞して楽しむことができる。
そして、本実施例におけるデジタルカメラ100によれば、上述した構造色の色彩や反射特性が可変とされる可変構造色形成部材1を前ケース102及び後ケース103の表面に取付け、外装色駆動部171によって外装色を変化させることにより、構造色による深みのあるメタリックな外観を備えたデジタルカメラ100を提供できると共に、カメラ筐体101の色を変化させることができ、よって、飽きの来ない電気機器としてのデジタルカメラ100を提供できる。
又、変換ミラー145の反射面に可変構造色形成部材1を取り付け、この可変構造色形成部材1にミラー駆動部146を接続して変換ミラー145の反射特性を可変とすることにより、入射光の波長特性を変えたり、明るさを減光したりすることができ、画像データ上での画像処理等をすることなく物理的に画像の輝度や明度等を変更することができる。
更に、リフレクタ153の反射面に可変構造色形成部材1を取り付け、この可変構造色形成部材1と反射鏡駆動部154とを接続し、反射鏡駆動部154によってリフレクタ153の反射面に取り付けられた可変構造色形成部材1を制御することにより、リフレクタ153の反射波長特性(分光反射率)や反射率を変化させることができ、よって、照明光全体の分光反射率特性や指向方向、ホワイトバランス等を調整することができるものである。
次に、本実施例の可変構造色形成部材1を備えた携帯電話機に関して述べる。携帯電話機200は、通話装置や撮影装置、表示装置と、これらの各種装置を制御する制御手段や記憶手段を内蔵し、上述したデジタルカメラ100と同様に可変構造色形成部材1を可変制御するための構造色形成層駆動手段、表示色設定手段等を有した折り畳み式の携帯電話機である。
そして、図18(a)に示すように、内面下方に操作部201が配置され、内面上方には第一表示装置202が組み込まれ、操作部201の周縁には操作部パネル205が配置され、更に、操作部パネル205の周縁は可変構造色形成部材1が表面に組み込まれた下ケース207によって覆われているものであり、第一表示装置202の周縁は可変構造色形成部材1が表面に組み込まれた上ケース209によって覆われているものである。
又、携帯電話機200は、図18(b)に示すように、外面の中央やや上方位置に第二表示装置212が組み込まれ、中央やや下方にはカメラレンズ213が取り付けられ、カメラレンズ213の下方は下ケース207によって覆われており、第二表示装置212の周縁には表面に可変構造色形成部材1が取り付けられた外パネル215が配置され、この外パネル215の周縁は、上ケース209によって覆われているものである。
更に、下ケース207、上ケース209、外パネル215は各々異なる構造色に設定可能とされているものであり、これらのケースの表面に取り付けられた可変構造色形成部材1は、図19(a)に示すように、小面積の可変構造色形成部材1が複数個並設されることによってケースの表面を形成しているものであり、白色と着色された可変構造色形成部材1の密度を変更することで、外装ケースの濃度の調整を行ったり、図19(b)に示すように外装ケースに複数色を混色させたり、図19(c)に示すように、外装ケースに模様を生成したりすることができる。又、図19(d)に示すように、REC(録音)といったような実行されている機能と対応したメッセージを外装ケースに表示したりすることもできる。
次に、このように携帯電話機200の外装色や模様を変更する場合における第一表示装置202の表示画面及び操作について述べる。図20(a)に示すように、メニューの設定画面上には「外装の配色」及び「色のカスタム設定」というタグが形成され、「外装の配色」というタグを選択すると、図20(b)に示すように、例えば「カジュアル」「シック」といった予め設定された配色パターンのタグと、「カスタム設定」といったユーザーが自ら構造色を生成するタグとが表示される。
そして、ユーザーが「カジュアル」や「シック」といった予め配色パターンが設定されたタグを選択した場合には、表示色設定手段が記憶手段に予め記憶された表示色設定情報の中から対応する表示色設定情報を選択し、この表示色設定情報に対応した駆動信号を構造色形成層駆動手段に出力し、構造色形成層駆動手段がこの駆動信号に基づいて可変構造色形成部材1のアクチュエータを稼動させることにより外装色を変化させるものである。
又、ユーザーが「カスタム設定」というタグを選択した場合には、図20(c)に示すように、上ケース209の構造色及び模様、下ケース207の構造色及び模様、外パネル215の構造色及び模様を個々に設定できる画面が表示され、ユーザーが自由に配色パターンを設定できるものである。そして、表示色設定手段は、ユーザーが設定した配色パターンに対応する表示色設定情報に対応する駆動信号を構造色形成層駆動手段に出力し、構造色形成層駆動手段がこの駆動信号に基づいて上ケース209、下ケース207、外パネル215に組み込まれた可変構造色形成部材1のアクチュエータを稼動させることにより外装色を変化させるものである。
又、メニューの設定画面において、ユーザーが「色のカスタム設定」というタグを選択した場合には、図20(d)に示すように、RGBの濃度をユーザーが任意に選択する画面が表示され、予め設定された色だけでなく、ユーザー自らが任意の色を作成できるものである。この色のカスタム設定の場合は、操作部201等の入力手段によりカスタムの表示色設定情報が設定されると、表示色設定手段が入力手段により決定されたカスタムの表示色設定情報に対応する色、又は、RGB値、又は、HSV値、又は、色度座標のいずれかを記憶手段に追加して記憶、或いは、予め記憶されていた情報に上書きして登録することにより、ユーザーが一度設定したカスタムの表示色設定情報を何度も繰り返し設定できることとなり、図20(b)に示した「外装の配色」というタグの中の「カスタム001」「カスタム002」というタグを選択することで、二度目には簡単にカスタムの表示色設定情報を設定できるものである。よって、ユーザーにとって自由に色を作れるという喜びがあると共に、同設定であれば他の機会に利用することもでき、同じカスタム設定を何度も繰り返す必要が無く、使い勝手の良い機能とすることができる。
このような本実施例の可変構造色形成部材1を用いた携帯電話機200によれば、外装ケースの色や模様を自由に変化させることができ、且つ、変化した色や模様も深みのあるメタリックな外観となり、高級感があり、且つ、遊び心もある携帯電話機200を提供することができ、よって、ユーザーの心をとらえることができる。又、可変構造色形成部材1を用いることによって色を連続的に形成できるため、自由なカスタム色を設定できるものである。
尚、携帯電話機200は、ユーザーの設定によって外装色や模様を可変としているが、タッチセンサを組み込むことによって、機器が手で触れられる毎に外装色や模様が変化する構造とすることや、環境センサを組み込むことによって、周囲の明るさや温度変化等によって外装色や模様が変化する構造とすることもでき、いずれかのセンサが検出した情報に応じて可変にすることにより、新たな嗜好をユーザーに提供できる。
次に、本実施例における可変構造色形成部材1の変形例について述べる。本変形例の可変構造色形成部材1は、図21に示すように、基板11上に透明電極22が積層され、この透明電極22上に配向膜55が積層され、この配向膜55上には高屈折率層23と低屈折率層24とが交互に積層して形成された複数の棚構造体25が規則的に配列されて構造色形成層12を形成しており、この構造色形成層12の周縁を囲むように封止材56が配置され、封止材56によって囲まれた空間に液晶53が注入され、棚構造体25の上方にはスペーサ57を介して配向膜55が配置され、この配向膜55上に棚構造体25と同数の透明電極22が夫々の棚構造体25の上方位置に積層され、この透明電極22の上方にガラス等の透明な保護膜13が積層されたものである。尚、棚構造体25を形成する複数の高屈折率層23の行間には低屈折率の薄膜とされた支持部材21が配置されているものである。
又、棚構造体25は、高屈折率層23と低屈折率の薄膜とされた支持部材21とが、所定の可視光波長をλ0(約380〜760nm)とすると、λ0/4の厚さずつ、若しくは、約λ0/2の周期間隔で交互に積層されて形成されているものである。又、支持部材21は、高屈折率層23よりも幅が狭く形成され、高屈折率層23の行間であって支持部材21の周縁に液晶53が封入可能とされているものである。そして、可変構造色形成部材1は、屈折率異方性や複屈折性を有した液晶53が媒質として機能して構造色が形成されるものであり、上下の透明電極22に電圧を印加することによってこの液晶53を制御し、媒質の屈折率を変化させることにより多層膜干渉により強められる反射光の波長を変えて、外装表面の構造色や反射特性を可変制御するものである。
又、高屈折率層23は、隣接する棚構造体25の同一層と一部で連結しており、構造色形成層12の表面には空隙26と連結部とにより方形状の開口が規則的に形成されて回折格子とされているものである。よって、棚構造体25の多層膜干渉による構造色と、回折格子構造の干渉による構造色とが形成されるものである。
更に、低屈折率の薄膜とされた支持部材21は、低屈折率の誘電体としては、酸化シリコン(SiO2、n=1.46)、フッ化マグネシウム(MgF2、n=1.4)、酸化アルミニウム(Al2O3、n=1.6)等の酸化物やフッ化物、硫化物等を用いられるものである。又、配向膜55は、所定方向にLCD分子を配向させるために配置されるものであり、ポリイミド等が用いられる。更に、スペーサ57は、球状粒子等であって液晶層の厚さが均一になるように配置されているものである。
又、液晶53としては、MBBA、APAPA、5CB、BL−800等のネマチック液晶や、コレスチック液晶等を用いることができ、液晶以外の屈折率異方性の媒質や、電圧により屈折率が変化する液体やゲル状の媒質を封入することも可能である。
そして、BL−008等のネマチック液晶における液晶層の電圧−屈折率特性は、図22に示すように、屈折率の異方性(複屈折性)があり、常光の屈折率はn0=1.53、異常光の屈折率はne=1.80と、偏光方向により屈折率が異なる。つまり、液晶分子の光軸に垂直な偏光方向の常光の屈折率は一定だが、平行な偏光方向の異常光の屈折率は、両端電圧を0V〜6V程度に変化させると、液晶分子の配向方向が変化して液晶の屈折率はn=1.80〜1.53の間で変化する。又、コレスチック液晶では、電圧を印加すると、螺旋状に回転した向きに配向されていた液晶層の螺旋のピッチが変化するものである。よって、高屈折率層23の行間の物理的な厚みは変化しないが、屈折率の変化によって光学的距離が変化するものである。
更に、液晶両端に印加する電圧を可変し、液晶層の屈折率nを可変させた場合の、多層膜における反射特性(分光反射率)は、図23に示すように、電圧を上げていくにつれ、n=1.8(V=0)からn=1.7(V=1.3V)、n=1.6(V=2.2V)、n=1.55(V=5V)、・・・と液晶層の屈折率が順次下がり、反射率のピーク波長や構造色を短波長側(紫側)にシフトして、印加電圧により反射光の波長特性や構造色を可変できるものである。
本変形例によれば、高屈折率層23と低屈折率の薄膜とされた支持部材21とを交互に複数層積層すると共に、支持部材21は高屈折率層23よりも小面積とし、高屈折率層23の一部の上下には支持部材21が積層されない空隙領域を設け、液晶53を浸透させる構成とすることにより、液晶53の屈折率を変化させることで多層膜干渉により、強く反射される波長特性を変化させ構造色を可変できるものである。尚、層数が多い程、或いは、屈折率の比が大きい程、濃く、鮮やかな発色が得られる。又、通常の液晶表示素子(LCD)のように透過光をスイッチングするための偏光板等を設けず、所定の波長帯を殆ど反射するように形成した場合には金属光沢を得ることもできる。
又、上述した実施例における可変構造色形成部材1と同様に、回折格子構造と多層膜干渉による構造色が得られるため、回折格子の開口に垂直な方向に強くキラキラ拡散させる効果を与えることができるものである。
更に、高屈折率の誘電体で高屈折率層23を形成し、低屈折率の誘電体によって支持部材21を形成することにより、高屈折率層23と支持部材21との間においても多層膜干渉による構造色が得られるため、不要光となる光を減少させることができるものである。
次に、本実施例の他の変形例について述べる。本変形例における可変構造色形成部材1は、図24に示すように、基板11上に構造色形成層12が積層され、構造色形成層12上に透明なカバー部材45が積層されて形成されるものであり、この構造色形成層12は、半透過ミラーとされる対の高屈折率層23と、対の高屈折率層23間に形成される媒質層(空気層)44とを備えた多重反射構造体であり、対の高屈折率層23間には、高屈折率層23の面積よりも小さな面積とされアクチュエータとされる支持部材21が配置され、この支持部材21と対の高屈折率層23との間に透明電極22が積層されているものである。そして、対の高屈折率層23は、誘電体膜や金属薄膜等が積層されて形成されているものであり、透明電極22を通してアクチュエータに電圧が印加されることにより媒質層44の厚みが変化し、多重反射干渉による構造色が可変となるものである。更に、高屈折率層23間の厚みは、所定の可視光線波長をλ0とするとλ0に形成されているものである。
又、半透過ミラーとされる高屈折率層23を形成する材料としては、金属膜で形成する場合には、可視光領域なので、銀(Ag)、金(Au)、アルミ(Al)、クロム(Cr)、ロジウム(Rh)等を蒸着した薄膜を用いればよい。又、誘電体多層膜や、高屈折率の誘電体と低屈折率の誘電体との交互多層膜とする場合には、高屈折率の誘電体として、上述した実施例の可変構造色形成部材1における高屈折率層23で用いた、酸化チタン(TiO2、屈折率n=2.8)や、硫化亜鉛(ZnS、n=2.35)、酸化セレン(CeO2、n=2.3)、酸化ジルコン(ZrO2、n=2.2)、酸化亜鉛(ZnO、n=2.01)、酸化ハフニウム(HfO2、n=1.95)等を用いることができる。
そして、多重反射干渉とは、図25に示すように、対向させて配置された二つの半透過ミラー層A,Bと、半透過ミラー層A,B間の媒質層C(空気層)とにより形成された多層膜において、半透過ミラー層Aにθの角度で照射された光線束は、半透過ミラー層Aの反射率に応じて反射光と透過光とに分光され、半透過ミラー層Aを透過し媒質層Cに入射した光線束は半透過ミラーBに照射され、半透過ミラーBの反射率に応じて反射光と透過光に分光され、半透過ミラーBで反射された反射光は、媒質層Cの厚みに応じて位相が変えられて半透過ミラーAに照射され、半透過ミラーAを透過した光線束の内で媒質層Cの厚みによって逆位相となった所定の波長の光線束は、最初に半透過ミラーAで反射された所定の波長の光線束と打ち消しあい、以上の現象を繰り返すことにより、媒質層Cの厚みによって逆位相となった所定の波長の可視光が見えなくなるため、所定の構造色が得られる現象である。
又、この半透過ミラー層Aを透過して媒質層Cに入射され、二枚の半透過ミラー層A,Bの間を多重反射した透過光の波面は、偶数回の反射を受けた後に透過する各成分波面の重畳となるので、入射光をIin、各半透過ミラーの反射率をR、透過光Itは(6)式となり、反射光Irは(7)式となる。
ただし、位相差δは、入射光Iinの入射角度をθ、波長をλ、媒質の屈折率をn、媒質の厚みをdとすると、(8)式である。よって、ndがλ
0/2(所定の可視光波長)の整数倍になるように形成することにより、λ
0の波長を打ち消すことができる。
又、透過特性又は反射特性は、図26(a)に示すように、各成分波面間に位相差が0、2π、4π、・・・のとき、つまり、(9)式に示す条件のときに透過光が最大となり、逆に反射光が最小となる。
このとき、他の波長では、各透過成分波面間で打ち消しあいの干渉が起こり、透過光が0近くまで減少する。よって、(10)式となる。
よって、媒質として空気層を用いた場合には、n=1.0を代入して変形すると(11)式となるため、
本変形例においては、θ=0の場合を基本としてd又はndをλ
0/2の整数倍とするものである。
尚、半透過ミラーの反射率は、高屈折率層と低屈折率層を、λ0/4厚ずつ交互に13層以上重ねた誘電体多層膜等により99%を越えるものも得られるが、反射率が高すぎると、反射波長帯域が狭帯域になり過ぎ、波長選択フィルタ等には好適でも、可視光域で可変構造色形成部材の構造色に用いるには不適となる。
逆に、半透過ミラーの反射率が低すぎても、透過率が高くなり透明に近づくが、どの帯域の反射率も極端に落ちるので、金属光沢のような発色が得られなくなる。よって、メタリックで鮮やかな発色を得るには、反射率R=0.3〜0.9程度の中から、基板の屈折率や所望の発色特性に合わせて、適当な半透過ミラーの反射率に設計すればよい。
そして、半透過ミラーの反射率R=0.5(50%)とし、媒質を空気としたとき、半透過ミラー間の間隔dを変化させた場合の反射特性は、図26(b)に示すように、電圧が0V、d=450nmの状態から電圧をアクチュエータに印加してd=550nm、d=650nm、・・・と間隔を広げていくにつれて、反射波長のピークや透過波長のピークが長波長側に順次ずれていくことがわかる。よって、d=450nmのときには、青色の帯域が打ち消されるため、略「黄色〜橙色」の構造色となり、d=550nmのときには、緑色の帯域が打ち消されるため略「紫色」となり、d=650nmでは、青色及び赤色の帯域が打ち消されるため略「緑色」となり、反射率Rをある程度高くすると、所定の帯域の光が殆ど反射され、金属光沢の構造色が得られるものである。
本変形例の可変構造色形成部材1によれば、半透過ミラーの対を形成し、この半透過ミラー間の光学的距離を変化させることにより、逆位相によって打ち消す所定波長を可変制御することができ、よって、多重反射干渉による反射光の帯域を連続的に変えることができ、構造色や反射特性を連続的に変化させることができるため、可変構造色形成部材1の色彩制御ができ、又、金属光沢を得ることができるものである。そして、構造として、対の半透過ミラーを形成すればよいため、容易に製造できる。
又、半透過ミラー間の光学的距離を変化させるために支持部材21としてアクチュエータを用い、このアクチュエータを可変制御することにより半透過ミラー間の物理的距離を変化させる構造とすることにより、半透過ミラー間の光学的距離を容易に変化させることができると共に、連続的な可変制御が可能となるものである。
更に、高屈折率層23を高屈折率の誘電体による多膜層又は金属膜によって形成される半透過ミラーとすることにより、反射率や透過率の劣化が少なく、安定した構造色を形成可能な可変構造色形成部材1を提供できるものである。
又、この変形例において空気層を媒体とし、空気層の厚みを変化させることにより、可変な構造色を形成していたが、図27に示すように、媒質層44として空気層の代わりに液晶53を注入し、液晶53を媒質とすることもできる。この場合には、上方に位置する高屈折率層23の最上面及び下方に位置する高屈折率層23の最下面に透明電極22を積層し、対の高屈折率層23の内面側に配向膜55を積層し、更に、対の高屈折率層23の間に液晶53を注入して、液晶層の周縁をスペーサやシール等の封止材71で封止するものである。又、媒質層44の厚みである対の高屈折率層23間の光学的距離(nd)は、所定の可視光線波長をλ0とするとλ0とされているものである。
この媒質に液晶53を利用して多重反射干渉を行う場合において、各半透過ミラーの反射率R=50%、間隔d=400nmとした場合における液晶の屈折率nを変えた時の反射特性の変化は、図28に示すように、液晶両端の電圧を上げていき、液晶53の屈折率が下がるにつれて、多重反射による干渉で強められる反射帯域が順次短波長側にシフトするのが分かる。逆に、電圧を下げて、屈折率を上げていくと、順次長波長側にシフトするのが分かる。尚、各半透過ミラーの反射率Rは0.3〜0.9程度とするのがよい。
このように媒質に液晶53を利用して多重反射干渉を行う可変構造色形成部材1によれば、電圧を可変するだけで、反射率が高くなる波長帯域を任意に選択でき、外装表面における構造色や反射特性を変化させることができる。又、所定の帯域で殆どの光を反射させることで金属光沢を得ることもできる。尚、媒質層44の厚みである対の高屈折率層23間の光学的距離をλ0としているが、λ0/2の整数倍であればよい。
そして、上述した実施例及び変形例では、電気機器の筐体における外装色を可変構造色形成部材1のみによって形成しているが、可変構造色形成部材1における構造色形成層12の最下端に或いは基板11表面にカラー塗膜を形成し、このカラー塗膜の色を基本に可変構造色形成部材1の構造色及び光学特性を変化させることにより、外装色や光沢等を可変制御できるように構成することもできる。このように基本色を予め備えた状態とすることにより、電源OFF時の外装色が可変構造色形成部材1による構造色と基本色とが混合された深みのある色となり、高級感のある電気機器を提供できる。
又、可変構造色形成部材1における構造色形成層12の最下端に或いは基板11表面に発光ダイオード等の発光素子を配置し、この発光素子の近傍に発光素子からの射出光を拡散反射させる拡散反射層を設けて発光素子からの射出光を拡散反射させ、拡散反射層からの拡散反射光による照明と可変構造色形成部材1による構造色とを混合させて混合効果を加えて発色させることも可能である。このように、発光素子を設けることにより、暗い場所でも色を変化させることができ、新たな嗜好を備えた電気機器を提供することができる。
更に、上述した実施例及び変形例において電気機器としてデジタルカメラ及び携帯電話機について述べているが、これらの電気機器に限られるわけでなく、全ての電気機器において利用することができる。又、本発明は、以上の実施例に限定されるものでなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で自由に変更、改良が可能である。