JP5083681B2 - 新規抗癌剤 - Google Patents

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Description

本発明は、新規な抗癌剤に関し、詳しくは、細胞周期調節作用を有する新規ベンゾキノン誘導体を用いた抗癌剤に関する。
癌の治療には、多くの場合、抗癌剤を用いた化学療法が用いられる。抗癌剤には、癌細胞に対し選択的に殺す、またはその増殖を妨げるように作用し、かつ、正常細胞に対しては悪影響を及ぼさないことが求められる。しかしながら、癌による死亡例は年々増加の一途をたどっており、有効な新しい抗癌剤の開発が切望されている。
国際公開第98/17629号パンフレット
本発明は、新規な抗癌剤を提供することを目的とする。
本発明の抗癌剤は、下記一般式(I)で表わされるベンゾキノン誘導体またはその医薬的に許容し得る塩を含むことを特徴とする。
Figure 0005083681
(一般式(I)中、R1〜R3はそれぞれ独立して、水素または炭素数1〜5のアルキル基であり、nは1〜5の整数である。)
本発明の抗癌剤が治療または予防の対象とする癌細胞としては、肝癌細胞、乳癌細胞、大腸癌細胞および白血病細胞から選ばれる少なくともいずれかであることが好ましい。
本発明の抗癌剤において、上記ベンゾキノン誘導体は、下記式(II)で表わされる5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕−ベンゾキノンであることが好ましい。
Figure 0005083681
また本発明の抗癌剤は、3〜30μMの範囲内の濃度で5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕−ベンゾキノンを含んでいることが好ましい。
本発明の抗癌剤は、様々な癌細胞(好ましくは肝癌細胞、乳癌細胞、大腸癌細胞および白血病細胞から選ばれる少なくともいずれか)に対し、強力な抗癌作用を示すものであり、化学療法による癌治療に好適に用い得るものであることが期待される。
本発明の抗癌剤は、下記一般式(I)で表わされるベンゾキノン誘導体を含むことを特徴とする。
Figure 0005083681
上記一般式(I)中、R1〜R3はそれぞれ独立して、水素または炭素数1〜5のアルキル基であり、中でもメチル基、エチル基またはイソプロピル基が好ましい。また、R1およびR2は共にメチル基であり、かつ、R3は水素であることが特に好ましい。また上記一般式(I)中、nは1〜5の整数である。
本発明の抗癌剤は、上記一般式(I)で表わされるベンゾキノン誘導体の中でも、下記式(II)で表わされる5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕−ベンゾキノンであることが好ましい。
Figure 0005083681
本発明の抗癌剤は、上述したベンゾキノン誘導体を、医薬的に許容し得る塩の形態で含んでいてもよい。ここで、医薬的に許容し得る塩としては、たとえば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ホスホン酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、乳酸塩、ピルビン酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、グルタル酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、シュウ酸塩、メタンスルホン酸塩、ショウノウ酸塩などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
上述した一般式(I)で表わされるベンゾキノン誘導体またはその医薬的に許容し得る塩を含む本発明の抗癌剤は、後述する実験例にて実証されるように、様々な癌細胞に対し強力な抗癌作用を示すものであり、化学療法による癌の治療または予防に好適に適用し得ることが期待される。ここで、本発明の抗癌剤が治療または予防の対象とする癌細胞としては、特に制限されるものではなく、たとえば、肝癌細胞、乳癌細胞、大腸癌細胞、白血病細胞、膀胱癌細胞、腎臓癌細胞、肺癌細胞、食道癌細胞、胆癌細胞、卵巣癌細胞、膵臓癌細胞、胃癌細胞、子宮頸癌細胞、甲状腺癌細胞、前立腺癌細胞、皮膚癌細胞などを挙げることができる。中でも、肝癌細胞、乳癌細胞、大腸癌細胞および白血病細胞から選ばれる少なくともいずれかに対し特に有効に作用し得る。
本発明の抗癌剤は、3〜30μM(より好ましくは10〜30μM)の範囲内の濃度で上記一般式(I)で表わされるベンゾキノン誘導体(中でも特に、上記式(II)で表わされる5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕−ベンゾキノン)またはその医薬上許容し得る塩を含むことが好ましい。上記範囲内の濃度でベンゾキノン誘導体またはその医薬上許容し得る塩を含む場合、実験例にて後述するように、癌細胞の細胞周期のうち、S期およびG2/M期の細胞(特にG2/M期の細胞)を有意に増加させる細胞周期調節作用を示す。
ここで、図1は、細胞の一般的な細胞周期を関連する細胞周期調節タンパク質と共に模式的に示す図である。図1に示すように、細胞の体細胞分裂は、有糸分裂を起こす時期であるM期(M(mitosis) phase)と、M期とM期との間の間期とに大きく分けられる細胞周期を有しており、間期はさらに、G1期(G1(gap 1) phase)、S期(S(synthesis) phase)およびG2期(G2(gap2) phase)に分けられる。S期は核のDNAの複製が起こる時期であり、M期とこのS期との間が第1のギャップ期であるG1期である。またS期を経た後、次のM期までの間が第2のギャップ期であるG2期である。なお、細胞分裂を続けない細胞は、M期からS期に入らず、細胞周期の外に出て、G1期と似た状態となる(G0期)。上記G2/M期は、この細胞周期のうちG2期、M期の状態の総称である。
図1に示した細胞周期は、種々の細胞周期調節タンパク質により制御されて進行することが知られている。この細胞周期の制御の中心となる細胞周期調節タンパク質がサイクリン(Cyclin)とサイクリン依存性タンパクキナーゼ(Cdk:Cyclin dependent kinase)である。細胞が増殖刺激を受けると、G0期からG1期に移り、細胞内でサイクリンDが合成され、サイクリン依存性タンパクキナーゼ−4(Cdk-4)と複合体を形成する。このサイクリンDとサイクリン依存性タンパクキナーゼ−4との複合体は、サイクリン依存性タンパクキナーゼアクチベーティングキナーゼ(CAK)によりリン酸化され、活性化されることで、サイクリンEの発現が誘導され、このサイクリンEがサイクリン依存性タンパクキナーゼ−2(Cdk-2)と複合体を形成することで、S期に移行する。S期に入ると、サイクリンEは分解し、発現が誘導されたサイクリンAがサイクリン依存性タンパクキナーゼ−2と複合体を形成し、G2期へ移行する。G2期では、まずサイクリンAがサイクリン依存性タンパクキナーゼ−1(Cdk1)と複合体を形成する。その後、発現が誘導されたサイクリンBがサイクリン依存性タンパクキナーゼ−1と複合体を形成する。このサイクリンBがサイクリン依存性タンパクキナーゼ−1との複合体は、サイクリン依存性タンパクキナーゼアクチベーティングキナーゼ(CAK)によりスレオニン(Threonine)14位、チロシン(Tyrosine)15位、スレオニン161位がリン酸化され(高リン酸化状態、不活性)、さらにタンパク質チロシンホスファターゼCDC25によりスレオニン14位、チロシン15位が脱リン酸化される(低リン酸化状態、活性)ことで、M期が開始される。その後、サイクリン依存性タンパクキナーゼと複合体を形成していたサイクリンAは分解される。このようにサイクリン量の周期的変換は、細胞周期を起動させる原動力となる。
本発明の抗癌剤を3〜30μMの濃度で作用させた場合には、サイクリンAの発現が有意に減少され、不活性な高リン酸化状態のサイクリン依存性タンパクキナーゼ−2(Cdk-2)およびサイクリン依存性タンパクキナーゼ−4(Cdk-4)を有意に減少される(実験例にて後述)。すなわち、上記範囲内の濃度で上記一般式(I)で表わされるベンゾキノン誘導体(特に好ましくは上記式(II)で表わされる5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕−ベンゾキノン)またはその医薬上許容し得る塩を含む本発明の好ましい抗癌剤を投与することで、サイクリンAとサイクリン依存性タンパクキナーゼ−2(Cdk-2)との複合体においてサイクリン依存性タンパクキナーゼ−2を脱リン酸化して活性化させるタンパク質チロシンホスファターセCDC25の作用を阻害することで、細胞周期をG2/M期で有意に停滞させ、癌細胞周期を遅延させることにより抗癌作用を示すものと考えられる。
本発明の抗癌剤は、上述した一般式(I)で表わされるベンゾキノン誘導体またはその医薬上許容し得る塩をそのまま、または各種の医薬組成物として経口的または非経口的に投与され得る。医薬組成物とする場合の剤形としては特に制限されるものではなく、たとえば錠剤、丸薬、散剤、顆粒剤、カプセル剤、注射剤、点滴剤などが挙げられる。上述した各剤形への製剤化は、当分野において従来より広く知られている適宜の方法を用いて行なうことができ、本発明の効果を阻害しない範囲で従来公知の適宜の添加剤(たとえば賦形剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤、懸濁化剤、等張化剤、乳化剤、吸収促進剤など)が添加されていてもよい。本発明の抗癌剤はまた、医薬上許容し得る担体を含んでいてもよく、このような担体としては、たとえば水、注射用蒸留水、生理食塩水、グルコース、フラクトース、白糖、マンニット、ラクトース、澱粉、コーン・スターチ、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸、タルク、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、尿素、シリコーン樹脂、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルなどの従来公知の適宜の担体を、本発明の効果を阻害しない範囲で製剤の種類に応じて選択して用いるでき、特に制限されるものではない。
本発明の抗癌剤の投与量および投与回数は、治療または予防の対象とする癌細胞、投与経路、治療期間、患者の年齢、体重などに応じて適宜選択することができ、特に制限されるものではない。
また本発明の抗癌剤は、単独投与しても有効な癌の治療または予防の効果を発揮するものであるが、本発明の効果を阻害しない範囲で、従来公知の適宜の他の抗癌剤と併用するようにしても勿論よい。この場合、本発明の抗癌剤の投与は、他の抗癌剤の投与前、同時、または投与後のいずれの時期に投与してもよい。
以下、実験例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<製造例>
以下に示すスキームで、5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンを合成した。
Figure 0005083681
(1)2,3−ジメチル−1,4−ベンゾキノンの合成
2,3−ジメチル−1,4−ヒドロキノン(1.38g、10mmol)をクロロホルム50mlに溶解し、氷冷下、攪拌した。そこへ、硝酸第二セリウムアンモニウム(CAN:Ceric Ammonium Nitrate)(6g、11mmol)を水50mlに溶かしたものをゆっくり滴下した。その後、室温で1時間攪拌し、有機層を分離した。有機層を分液ロートを用いて水洗し、乾燥、濃縮を経て、粗2,3−ジメチル−1,4−ベンゾキノンを得た。
(2)5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンの合成
上記(1)で得られた粗2,3−ジメチル−1,4−ベンゾキノン(10mmolとして計算)をエタノール40mlに溶解し、アルゴン気流下、2−メルカプトエタノール(1.4ml、20mmol)を滴下した。18時間室温で攪拌し、反応終了を確認してエタノールを濃縮した。得られた油状物質をクロロホルム50mlに溶かして氷冷攪拌し、硝酸第二セリウムアンモニウム(6g、11mmol)の水溶液(50ml)をゆっくり滴下した。室温で反応後、有機層を分画し、水洗後乾燥、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(クロロホルム:メタノール=20:1)により精製した。このようにして、得られた化合物(1.14g(53%))は、融点が92℃の赤褐色固体であり、ECP−400(日本電子社製)を用いた1H−NMRの結果、5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンが得られたことが確認された。
1H−NMR(400MHz、CDCl3)δ1.90(t, 1H, J=6Hz, -OH), 2.04(s, 6H, CH3×2), 3.0(t, 2H, J=6Hz, -SCH2-), 3.91(q, 2H, J=6Hz, -CH2OH), 6.43(s, 1H, -C(O)-CH=C-), 13C-NMR(100MHz, CDCl3)δ12.3(-CH3), 12.4(-CH3), 33.1(-CH2S-), 59.7(-CH2OH), 125.2(C=C-H), 140.8(-C(CH3)=C-), 151.3(C(O)-C(SCH2CH2OH), 184.0(O=C-), 184.1(O=C-).
<実験例1>
上述のようにして得られた5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンを用い、培養癌細胞に対する抗癌活性強度の評価を行なった。培養癌細胞としては、ヒト乳癌細胞MCF−7(大日本製薬株式会社より入手)、ヒト結腸上皮細胞HT−29(大日本製薬株式会社より入手)、ヒト肝癌細胞Hep−G2(大日本製薬株式会社より入手)、急性骨髄性白血病細胞HL−60(大日本製薬株式会社より入手)、ヒトリンパ芽細胞IM−9(大日本製薬株式会社より入手)を用いた。
5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンを上記各癌細胞1×104cells/wellに添加し、24時間後、PBS(−)で洗浄後、CCK−F(同仁化学研究所製)によりCalcein/AM溶液を37℃、30分間反応させた。細胞内エステラーゼのCalcein/AM分解による蛍光発光をCytoFluoro蛍光光度計(PerSeptive Biosystems)を用いて測定し、各癌細胞の生存率が50%となる(IC50)濃度(μM)を求めた。なお、測定波長は、励起フィルター490nm、測定フィルター515nmとした。また、ヒト乳癌細胞MCF−7およびヒト結腸上皮細胞HT−29については、5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンを添加して48時間経過後の場合についても同様に行なった。図2は、実験例1の結果を示すグラフであり、縦軸は癌細胞の生存率(%)、横軸は5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンの濃度(μM)である。また、実験例1でそれぞれ求められた5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンのIC50濃度(μM)をhill係数と共に表1に示す。
Figure 0005083681
図2および表1に示す結果から、すべての癌細胞に関し、5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンのIC50濃度は3〜19μMの範囲内であり、癌細胞に対し十分な毒性作用を示すことが示唆された。中でも、5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンは、白血病細胞(急性骨髄性白血病細胞HL−60およびヒトリンパ芽細胞IM−9)に対して3〜7μMという非常に強力な抗癌活性を示し、白血病治療薬としての効果が示唆された。一方、5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンは、乳癌細胞(ヒト乳癌細胞MCF−7)、大腸癌細胞(ヒト結腸上皮細胞HT−29)および肝癌細胞(ヒト肝癌細胞Hep−G2)に対しても強い抗癌活性を示し、これらの癌細胞に対しても有効な抗癌剤として作用することを示唆する結果が得られた。
<実験例2>
上述のようにして得られた5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンを用い、ヒト結腸上皮細胞HT−29の細胞周期に対する影響について検討した。0μM、10μM、20μM、50μMおよび100μMの各濃度の5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンを1.3×106cells/wellのヒト結腸上皮細胞HT−29にそれぞれ添加し、5−ブロモ−2’−デオキシウリジンを10g/Lになるように添加し、S期細胞に取り込ませた。この細胞を回収し、マウス抗−BrdU抗体で標識して、ヒト結腸上皮細胞HT−29が細胞周期のうちG1期、S期、G2/M期のいずれの状態にあるかを観察し、割合を求めた。なお、ヒト結腸上皮細胞HT−29が細胞周期のうちG1期、S期、G2/M期のいずれの状態にあるかは、FACS Calibur(Becton Dickinson製)を用いて、フローサイトメトリーにより定量することで確認した。
図3は、5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンの各濃度とヒト結腸上皮細胞HT−29の細胞周期との関係を示すグラフであり、図3(a)はG1期、図3(b)はS期、図3(c)はG2/M期についての割合(%)を示している。図3(a)〜(c)において、縦軸は実験例2に用いたヒト結腸上皮細胞HT−29全体に占める各時期(図3(a)はG1期、図3(b)はS期、図3(c)はG2/M期)の割合(%)であり、横軸は5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンの濃度(μM)である。
図3(c)から分かるように、5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンを添加することで、G2/M期のヒト結腸上皮細胞HT−29の割合の有意な増加が観察された(特に、5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンの濃度が10μM、50μM、100μMの場合)。一方、S期のヒト結腸上皮細胞HT−29は、10μMの濃度の5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンを添加した場合のみ有意な増加が観察されたが、その他の濃度の場合には変化が認められなかった(図3(b))。また、G1期のヒト結腸上皮細胞HT−29については、すべての濃度において変化が認められなかった(図3(a))。以上のことから、5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンは、ヒト結腸上皮細胞HT−29の細胞周期中、主にG2/M期の細胞を特異的に増加させる可能性が示唆された。
<実験例3>
実験例2の結果から、5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンは、細胞周期においてS期およびG2/M期にあるヒト結腸上皮細胞HT−29を特異的に増加させる可能性が示唆された。本実験例では、S期およびG2/M期の増加機序に関連する細胞周期制御タンパク質と5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンとの関係について検討した。なお、細胞を血清飢餓状態とし、細胞周期を一度G1期で停滞させた後、0μM、10μM、20μM、50μMおよび100μMの各濃度の5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンを1.3×106cells/wellのヒト結腸上皮細胞HT−29にそれぞれ添加した後、回収し、各細胞周期制御タンパク質に対する抗体を用いて、細胞周期制御タンパク質としてサイクリンA、サイクリン依存性タンパクキナーゼ−2(Cdk-2)およびサイクリン依存性タンパクキナーゼ−4(Cdk-4)を抽出・精製し、SDS−PAGEにて発現量をみた。なお、サイクリン依存性タンパクキナーゼ−2およびサイクリン依存性タンパクキナーゼ−4については、ProteinG−Sepharose 4B Fast Flow recombinant proteinG(SIGMA製)を10μL添加することで免疫沈降を行ない、高リン酸化状態(不活性)の細胞周期の停滞を検出した。
図4は、実験例3についての結果を示す写真であり、0μM、10μM、20μM、50μMおよび100μMの各濃度の5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンを添加した場合について、サイクリンA、サイクリン依存性タンパクキナーゼ−2およびサイクリン依存性タンパクキナーゼ−4の発現を示している。図4に示すように、サイクリンAの発現は、5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンの濃度が10μMである場合に最も低下し、濃度が増加するに伴い増加した。また高リン酸化状態のサイクリン依存性タンパクキナーゼ−2については、5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンの濃度が20μMである場合に減少が認められた。また、高リン酸化状態のサイクリン依存性タンパクキナーゼ−4についても、5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンの濃度が20μMである場合に減少が認められた。これらの結果から、5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンを低濃度で作用させた場合には、サイクリンAとサイクリン依存性タンパクキナーゼ1(Cdk-1)との複合体でのサイクリンAの発現抑制を介してG2期で細胞周期停滞を引き起こしている可能性が示唆された。このサイクリンAの発現抑制は、サイクリンAとサイクリン依存性タンパクキナーゼ1との複合体を不活性の高リン酸化状態から活性な低リン酸化状態とするタンパク質チロシンホスファターゼCDC25の作用を阻害することに起因するものと考えられた。なお、5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンを高濃度で作用させた場合には、上述した低濃度で作用させた場合とは異なる細胞周期調節作用を示すのではないかと考えられた。
<実験例4>
実験例2と同様にして、5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンを用い、ヒト肝癌細胞Hep−G2についても細胞周期に対する影響について検討した。0μM、3μM、10μM、20μMおよび30μMの各濃度の5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンを1.5×106cells/wellのヒト肝癌細胞Hep−G2にそれぞれ添加し、5−ブロモ−2’−デオキシウリジンを10μg/Lとなるよう添加し、S期細胞に取り込ませた。この細胞を回収し、マウス抗−BrdU抗体で標識し、ヒト肝癌細胞Hep−G2が細胞周期のうちG1期、S期、G2/M期のいずれの状態にあるかを観察し、割合を求めた。なお、ヒト肝癌細胞Hep−G2が細胞周期のうちG1期、S期、G2/M期のいずれの状態にあるかは、実験例2と同様の手法にて確認した。
図5は、5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンの各濃度とヒト肝癌細胞Hep−G2の細胞周期との関係を示すグラフであり、図5(a)はG1期、図5(b)はS期、図5(c)はG2/M期についての割合(%)を示している。図5(a)〜(c)において、縦軸は実験例4に用いたヒト肝癌細胞Hep−G2全体に占める各時期(図5(a)はG1期、図5(b)はS期、図5(c)はG2/M期)の割合(%)であり、横軸は5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンの濃度(μM)である。
図5(c)から分かるように、ヒト肝癌細胞Hep−G2の場合にも、5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンを添加することで、G2/M期の割合が有意に増加することが認められた。一方、ヒト肝癌細胞Hep−G2の場合、G1期およびS期の割合は減少する傾向が認められた(図5(a)、(b))。
今回開示された実施の形態および実験例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
細胞の一般的な細胞周期を関連する細胞周期調節タンパク質と共に模式的に示す図である。 実験例1の結果を示すグラフであり、縦軸は癌細胞の生存率(%)、横軸は5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンの濃度(μM)である。 5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンの各濃度とヒト結腸上皮細胞HT−29の細胞周期との関係を示すグラフであり、図3(a)はG1期、図3(b)はS期、図3(c)はG2/M期についての割合(%)を示している。図3(a)〜(c)において、縦軸は実験例2に用いたヒト結腸上皮細胞HT−29全体に占める各時期(図3(a)はG1期、図3(b)はS期、図3(c)はG2/M期)の割合(%)であり、横軸は5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンの濃度(μM)である。 実験例3についての結果を示す写真であり、0μM、10μM、20μM、50μMおよび100μMの各濃度の5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンを添加した場合について、サイクリンA、サイクリン依存性タンパクキナーゼ−2およびサイクリン依存性タンパクキナーゼ−4の発現を示している。 5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンの各濃度とヒト肝癌細胞Hep−G2の細胞周期との関係を示すグラフであり、図5(a)はG1期、図5(b)はS期、図5(c)はG2/M期についての割合(%)を示している。図5(a)〜(c)において、縦軸は実験例4に用いたヒト肝癌細胞Hep−G2全体に占める各時期(図5(a)はG1期、図5(b)はS期、図5(c)はG2/M期)の割合(%)であり、横軸は5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕ベンゾキノンの濃度(μM)である。

Claims (4)

  1. 下記一般式(I)で表わされるベンゾキノン誘導体またはその医薬的に許容し得る塩を含む抗癌剤。
    Figure 0005083681
    (一般式(I)中、R1〜R3はそれぞれ独立して、水素または炭素数1〜5のアルキル基であり、nは1〜5の整数である。)
  2. 治療または予防の対象とする癌細胞が、肝癌細胞、乳癌細胞、大腸癌細胞および白血病細胞から選ばれる少なくともいずれかである、請求項1に記載の抗癌剤。
  3. ベンゾキノン誘導体が、下記式(II)で表わされる5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕−ベンゾキノンであることを特徴とする、請求項1または2に記載の抗癌剤。
    Figure 0005083681
  4. 5−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−2,3−ジメチル−〔1,4〕−ベンゾキノンの濃度が3〜30μMの範囲内であることを特徴とする、請求項3に記載の抗癌剤。
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