以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に言うポリエステルとは、ジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体とジオールおよび/またはそのエステル形成性誘導体とから成るものをいう。
ジカルボン酸としては、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、1,3ーシクロブタンジカルボン酸、1,3ーシクロペンタンジカルボン酸、1,2ーシクロヘキサンジカルボン酸、1,3ーシクロヘキサンジカルボン酸、1,4ーシクロヘキサンジカルボン酸、2,5ーノルボルナンジカルボン酸、ダイマー酸などに例示される飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などに例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5ー(アルカリ金属)スルホイソフタル酸、ジフェニン酸、1,3ーナフタレンジカルボン酸、1,4ーナフタレンジカルボン酸、1,5ーナフタレンジカルボン酸、2,6ーナフタレンジカルボン酸、2,7ーナフタレンジカルボン酸、4、4’ービフェニルジカルボン酸、4、4’ービフェニルスルホンジカルボン酸、4、4’ービフェニルエーテルジカルボン酸、1,2ービス(フェノキシ)エタンーp,p’ージカルボン酸、パモイン酸、アントラセンジカルボン酸などに例示される芳香族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
これらのジカルボン酸のうちテレフタル酸およびナフタレンジカルボン酸(とくに2,6ーナフタレンジカルボン酸)が、得られるポリエステルの物性等の点で好ましく、必要に応じて他のジカルボン酸を構成成分とする。
これらジカルボン酸以外にも少量であれば多価カルボン酸を併用しても良い。該多価カルボン酸としては、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、3、4、3’、4’ービフェニルテトラカルボン酸、およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
グリコールとしてはエチレングリコール、1、2ープロピレングリコール、1、3ープロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1、2ーブチレングリコール、1、3ーブチレングリコール、2、3ーブチレングリコール、1,4ーブチレングリコール、1、5ーペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6ーヘキサンジオール、1,2ーシクロヘキサンジオール、1,3ーシクロヘキサンジオール、1,4ーシクロヘキサンジオール、1,2ーシクロヘキサンジメタノール、1,3ーシクロヘキサンジメタノール、1,4ーシクロヘキサンジメタノール、1,4ーシクロヘキサンジエタノール、1,10ーデカメチレングリコール、1、12ードデカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどに例示される脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4,4’ージヒドロキシビスフェノール、1,4ービス(βーヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4ービス(βーヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1、2ービス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、ビスフェノールC、2,5ーナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加したグリコール、などに例示される芳香族グリコールが挙げられる。
これらのグリコールのうちエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
これらグリコール以外に少量であれば多価アルコールを併用しても良い。該多価アルコールとしては、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロール、ヘキサントリオールなどが挙げられる。
また、ヒドロキシカルボン酸を併用しても良い。該ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、3ーヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、pー(2ーヒドロキシエトキシ)安息香酸、4ーヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
また、環状エステルの併用も許容される。該環状エステルとしては、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、β−メチル−β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、グリコリド、ラクチドなどが挙げられる。
多価カルボン酸もしくはヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、これらの化合物のアルキルエステルやヒドロキシルアルキルエステル等が挙げられる。
ジオールのエステル形成性誘導体としては、ジオールの酢酸等の低級脂肪族カルボン酸とのエステルが挙げられる。
本発明のポリエステルとしてはPET、PBT、ポリプロピレンテレフタレート、ポリ(1,4ーシクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、PEN、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレートおよびこれらの共重縮合体が好ましく、これらのうちポリエチレンテレフタレートおよびこの共重縮合体が特に好ましい。共重縮合体としてはエチレンテレフタレート単位を50モル%以上よりなるものが好ましく、70モル%以上がより好ましい。
本発明において用いられる重縮合触媒は、限定されない。アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、スズ化合物およびアルミニウム化合物等の従来公知の重縮合触媒が使用できる。
本発明において使用可能なアンチモン化合物としては、特に限定はされないが、好適な化合物として三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモングリコキサイドなどが挙げられ、特に三酸化アンチモンの使用が好ましい。また、ゲルマニウム化合物としては、特に限定はされないが、二酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウムなどが挙げられ、特に二酸化ゲルマニウムが好ましい。二酸化ゲルマニウムとしては結晶性のものと非晶性のものの両方が使用できる。
本発明において使用可能なチタン化合物としては特に限定はされないが、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトライソブチルチタネート、テトラ−tert−ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネート、蓚酸チタン酸リチウム、蓚酸チタン酸カリウム、蓚酸チタン酸アンモニウム、酸化チタン、チタンとケイ素やジルコニウムやアルカリ金属やアルカリ土類金属などとの複合酸化物、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステル、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステルとヒドロキシカルボン酸からなる反応生成物、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステルとヒドロキシカルボン酸とリン化合物からなる反応生成物、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステルと少なくとも2個のヒドロキシル基を有する多価アルコール、2−ヒドロキシカルボン酸および塩基からなる反応生成物などが挙げられ、このうちチタンとケイ素の複合酸化物、チタンとマグネシウムの複合酸化物、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステルとヒドロキシカルボン酸とリン化合物からなる反応生成物が好ましい。
またスズ化合物としては、ジブチルスズオキサイド、メチルフェニルスズオキサイド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキサイド、トリエチルスズハイドロオキサイド、モノブチルヒドロキシスズオキサイド、トリイソブチルスズアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズサルファイド、ジブチルヒドロキシスズオキサイド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸などが挙げられ、特にモノブチルヒドロキシスズオキサイドの使用が好ましい。
また、アルミニウム化合物としては、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウム、アクリル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、トリクロロ酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、酒石酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウムなどのカルボン酸塩、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ホスホン酸アルミニウムなどの無機酸塩、アルミニウムメトキサイド、アルミニウムエトキサイド、アルミニウムn−プロポキサイド、アルミニウムiso−プロポキサイド、アルミニウムn−ブトキサイド、アルミニウムt−ブトキサイドなどアルミニウムアルコキサイド、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテートジiso−プロポキサイドなどのアルミニウムキレート化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物及びこれらの部分加水分解物、アルミニウムのアルコキサイドやアルミニウムキレート化合物とヒドロキシカルボン酸からなる反応生成物、酸化アルミニウム、超微粒子酸化アルミニウム、アルミニウムシリケート、アルミニウムとチタンやケイ素やジルコニウムやアルカリ金属やアルカリ土類金属などとの複合酸化物などが挙げられる。これらのうちカルボン酸塩、無機酸塩及びキレート化合物が好ましく、これらの中でもさらに酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム及びアルミニウムアセチルアセトネートが特に好ましい。
これらのアルミニウム化合物の中でも、アルミニウム含有量が高い酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウムが好ましく、さらに溶解度の観点から酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウムが好ましい。さらに、装置を腐食しない観点から、酢酸アルミニウムの使用がとくに好ましい。
ここで、水酸化塩化アルミニウムは一般にポリ塩化アルミニウムや塩基性塩化アルミニウムなどとも呼ばれるものの総称であり、水道用に使われるものなどが使用できる。これらは、例えば一般構造式[Al2(OH)nCl6−n]m(ただし1≦n≦5)で表される。これらの中でも、装置を腐食しない観点から塩素含有量の少ないものが好ましい。
上記の酢酸アルミニウムは、塩基性酢酸アルミニウム、トリ酢酸アルミニウム、酢酸アルミニウム溶液などに代表される酢酸のアルミニウム塩の構造を有するものの総称であり、これらの中でも、溶解性および溶液の安定性の観点から、塩基性酢酸アルミニウムの使用が好ましい。塩基性酢酸アルミニウムの中でも、モノ酢酸アルミニウム、ジ酢酸アルミニウム、あるいはこれらがホウ酸で安定化されたものが好ましい。ホウ酸で安定化されたものを用いる場合、塩基性酢酸アルミニウムに対して等モル以下の量のホウ酸で安定化されたものを用いることが好ましく、とくに1/2〜1/3モル量のホウ酸で安定化された塩基性酢酸アルミニウムの使用が好ましい。塩基性酢酸アルミニウムの安定剤としては、ホウ酸以外に尿素、チオ尿素などが挙げられる。
本発明においては、上記重縮合触媒の添加量は限定されない。実用的な重縮合触媒活性を示す範囲で適宜設定すればよい。ただし、該重縮合触媒起因の異物生成を抑制し、得られるポリエステルの清澄度を確保する点より必要最低限の添加に留めるのがよい。
最も代表的な重縮合触媒であるアンチモン化合物を用いる場合は、最終的に得られるポリエステルに対するアンチモン原子の含有量が100〜200ppmとなる量添加するのが好ましく、100ppm未満であると重合生産性が低下し、逆に、200ppmを超えると、不溶性の異物を生じやすくなる。より好ましいアンチモン原子の含有量は140〜170ppmである。
本発明において使用するアルカリ土類金属化合物としては、Be,Mg,Ca,Sr,Baから選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。該アルカリ土類金属化合物はポリエステルの溶融比抵抗を下げ、静電密着性を向上するために添加される。高度な静電密着性を付与するためには、MgまたはCa化合物の使用が好ましい。
また、本発明においては、さらにアルカリ金属化合物を添加するのが好ましい。該アルカリ金属化合物を添加することにより、静電密着性向上効果を増大させることができ、かつ、副反応であるグリコール成分同士の縮合反応、例えば、グリコール成分としてエチレングリコールを用いた場合はジエチレングリコールの副生が抑制される。
本発明において使用するアルカリ金属は、Li,Na,K,Rb,Csである。NaまたはK化合物の使用が好ましい。
上記のアルカリ土類金属やアルカリ金属化合物としては、例えば、これら金属のギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、蓚酸などの飽和脂肪族カルボン酸塩、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和脂肪族カルボン酸塩、安息香酸などの芳香族カルボン酸塩、トリクロロ酢酸などのハロゲン含有カルボン酸塩、乳酸、クエン酸、サリチル酸などのヒドロキシカルボン酸塩、炭酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、炭酸水素、リン酸水素、硫化水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸などの無機酸塩、1−プロパンスルホン酸、1−ペンタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などの有機スルホン酸塩、ラウリル硫酸などの有機硫酸塩、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシなどのアルコキサイド、アセチルアセトネートなどとのキレート化合物、水素化物、酸化物、水酸化物などが挙げられる。これらのアルカリ金属、アルカリ土類金属などの化合物のうち、水酸化物等のアルカリ性の強いものを用いる場合、これらはエチレングリコール等のジオールもしくはアルコール等の有機溶媒に溶解しにくい傾向があるため、水溶液で重合系に添加しなければならず重合工程上問題となる場合が有る。さらに、水酸化物等のアルカリ性の強いものを用いた場合、重合時にポリエステルが加水分解等の副反応を受け易くなるとともに、重合したポリエステルは着色し易くなる傾向があり、耐加水分解性も低下する傾向がある。従って、本発明のアルカリ金属化合物あるいはアルカリ土類金属化合物として好適なものは、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の飽和脂肪族カルボン酸塩、不飽和脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン塩、ハロゲン含有カルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、リン酸水素、硫化水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸から選ばれる無機酸塩、有機スルホン酸塩、有機硫酸塩、キレート化合物、および酸化物である。これらの中でもさらに、取り扱い易さや入手のし易さ等の観点から、アルカリ土類金属あるいはアルカリ金属などの金属の飽和脂肪族カルボン酸塩、特に酢酸塩の使用が好ましい。
上記のアルカリ土類金属化合物およびアルカリ金属化合物はグリコール溶液、特にエチレングリコール溶液としてポリエステル製造工程に添加するのが好ましい。これらの金属化合物は、両者を混合して添加してもよいし、それぞれを別個に添加してもよい。
ポリエステル中のアルカリ土類金属元素含有量は3〜200ppmが好ましい。ポリエステル中のアルカリ土類金属元素含有量は5〜160ppmがより好ましく、10〜120ppmがさらに好ましく、15〜100ppmがよりさらに好ましい。アルカリ土類金属元素含有量が3ppm未満ではポリエステルの溶融比抵抗の低下が少なくなり静電密着性が悪化するので好ましくない。逆に、200ppmを超えた場合は、該アルカリ土類金属起因の異物生成が増大するとともに、ポリエステルの熱安定性等の安定性が低下したり、ポリエステルの着色が増大するので好ましくない。
ポリエステル中のアルカリ金属元素含有量は0.5〜50ppmが好ましい。ポリエステル中のアルカリ金属元素含有量は1〜40ppmがより好ましく、2〜30ppmがさらに好ましく、3〜20ppmがよりさらに好ましい。アルカリ金属元素含有量が0.5ppm未満ではポリエステルの溶融比抵抗の低下が少なくなり静電密着性が悪化する。さらに、副反応であるグリコール成分同士の縮合反応が増加し、例えば、グリコール成分としてエチレングリコールを用いた場合はジエチレングリコールの副生が増大する。該副反応の増大によりポリエステルの融点低下や熱酸化安定性等の品質低下が低下するので好ましくない。逆に、50ppmを超えた場合は、ポリエステルの溶融比抵抗の低下やグリコール成分同士の縮合反応の抑制効果が頭打ちになり、かつポリエステルの着色が増大し色調の低下が起こるので好ましくない。
本発明においては、リン化合物を添加するのが好ましい。該リン化合物は、例えば、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体等が挙げられ、具体例としては、リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリブチル、リン酸トリフェニル、リン酸モノメチル、リン酸ジメチル、リン酸モノブチル、リン酸ジブチル、亜リン酸、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリブチル、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、エチルホスホン酸ジメチル、フェニールホスホン酸ジメチル、フェニールホスホン酸ジエチル、フェニールホスホン酸ジフェニール等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。また、これらのうちでもリン酸トリメチルおよび/またはリン酸が好ましい。
当該リン化合物は、アルカリ土類金属原子/リン原子(原子比)は1.0〜10の範囲が好ましく、1.2〜3.0が特に好ましい。アルカリ土類金属原子/リン原子(原子比)が1.0未満ではポリエステルの静電密着性向上効果が低下するので好ましくない。一方、10を超えた場合はポリエステルの耐熱性やレジンカラーが悪化するので好ましくない。ここで原子比とは、原子の数の比を表し、以下原子比と記した場合、同様である。
本発明においては、上記方法でえられたポリエステルは275℃での溶融比抵抗が0.5×108Ω・cm以下であることが好ましい。0.4×108Ω・cm以下がより好ましく、0.3×108Ω・cm以下がさらに好ましい。該ポリエステルの溶融比抵抗が0.5×108Ω・cmを超えた場合は、静電密着性が悪化し、キャスティング速度が遅くなり生産性が悪くなる。ここで、溶融比抵抗とは、静電密着キャスト法においてピンナーブルの発生を抑制しながらキャストできる最高のキャスティング速度、すなわち静電密着性と相関している。溶融比抵抗が低いポリマーほど、高速でキャスティングすることが可能となり、フィルム生産性の面から非常に重要である。ただし、0.1×108Ω・cm未満になると該ポリエステルを用いた成型体がエレクトレットを形成し易くなるので好ましくないことも発生する。
該ポリエステルの溶融比抵抗は、275℃で溶融したポリエステル中に2本の電極(ステンレス針金)を置き、120Vの電圧を印加した時の電流(io)を測定し、これを次式に当てはめて求めた比抵抗値Si(Ω・m)である。
Si(Ω・m)=(A/L)×(V/io)
[A:電極間面積(cm2)、L=電極間距離(cm)、V=電圧(V)]
本発明においては、得られるポリエステルの清澄度が高いことが好ましい。該ポリエステルの清澄度は、ポリエステルチップに含まれる粗大粒子(5μm以上の粒子)を位相差顕微鏡で観察して、その個数によっても評価できる。すなわち、この方法は、ポリエステルチップ(一粒)を2枚のカバーグラス間に挟んで280℃で溶融プレスし、急冷したのち、100倍の位相差顕微鏡で20視野観察し、イメージアナライザーで2.4mm2当たりの5μm以上の粒子の数をカウントして評価する方法によっても行うことができる。この方法で測定した2.4mm2当たりの5μm以上の粒子の合計個数が30個以下であれば、そのようなポリエステルは、不溶性の異物(粗大粒子)が少なく、高度の清澄度を有し、例えば、製膜して得られるフィルムは高度の清澄度を有するので高度の清澄度が要求される光学用フィルムとして好適に使用することができる。
また、該ポリエステルの清澄度は、該ポリエステルを溶媒に溶解し、その溶液を平均孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過した後のフィルター上の残渣における金属量を定量することができる。本発明においては、該ポリエステル中の不溶性のアルカリ土類金属分が、該ポリエステル1kg当たり1mg以下であることが好ましい。0.8mg以下がより好ましく、0.6mg以下がさらに好ましい。
さらに、本発明においては、ポリエステルを長期に渡り連続生産した場合に、上記の清澄度がポリエステルの製造開始より少なくとも3ヶ月間に渡り維持されることが好ましい。
該特性を付与するための好ましい実施態様は後述する。
本発明のポリエステルには、色調改善等の目的でコバルト化合物をコバルト原子としてポリエステルに対して10ppm未満の量で添加することが好ましい態様である。より好ましくは5ppm以下であり、さらに好ましくは3ppm以下である。コバルト化合物としては特に限定はないが、具体的には例えば、酢酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト、コバルトアセチルアセトネート、ナフテン酸コバルトおよびそれらの水和物等が挙げられる。その中でも特に酢酸コバルト四水和物が好ましい。
本発明のポリエステルの色調を改善するために、コバルト化合物以外の色調改善剤を用いることも好ましい態様である。色調改善剤とは添加することで色調を変化させる物質のことをいう。本発明の色調改善剤としては特に限定はされないが、無機および有機の顔料、染料、蛍光増白剤などが好ましい。
顔料または染料を使用する場合、使用量が増えると、結果重縮合体の明るさが低下するという問題が発生する。そのため多くの用途で許容できなくなるという問題が発生する。そのため顔料および染料の総使用量は得られるポリエステルに対して20ppm以下であることが好ましく、より好ましくは10ppm以下、さらに好ましくは5ppm以下である。かかる領域では重縮合体の明るさを低下させることなく着色を効果的に消去できる。
さらに蛍光増白剤を単独もしくは他の色調改善剤と併用して用いると、色調が良好になり、例えば使用する顔料または染料の量が少なくてよいので好ましい。蛍光増白剤は一般に用いられている物を1種だけ使用してもよくもしくは2種以上を併用してもよい。添加量は得られるポリエステルに対して50ppm以下であることが好ましく、5〜25ppmであることがさらに好ましい。
本発明の無機顔料としては、色調を変化できるものであれば特に規定はされないが、例えば二酸化チタン、カーボンブラック、鉄黒、ニッケルチタンイエロー、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、黄鉛、クロムチタンイエロー、亜鉛フェライト顔料、弁柄、カドミウムレッド、モリブデンレッド、酸化クロム、スピネルグリーン、クロムオレンジ、カドミウムオレンジ、群青、紺青、コバルトブルー、などが挙げられる。このうち酸化クロム、群青、紺青、コバルトブルーが好ましく、群青、コバルトブルーがさらに好ましい。またこれら無機顔料の一種もしくは二種以上を必要に応じて組み合わせて使用しても良い。
本発明の有機顔料および染料としては、色調を変化できるものであれば規定はされないが、例えばカラーインデックスで表示されているPigment Red 5, 22, 23, 31, 38, 48:1, 48:2, 48:3, 48:4, 52, 53:1, 57:1, 122, 123, 144, 146, 151, 166, 170, 177, 178, 179, 187, 202, 207, 209, 213, 214, 220, 221, 247, 254, 255, 263, 272、Pigment Orange 13, 16, 31, 36, 43, 61, 64, 71、Pigment Brown 23、Pigment Yellow 1, 3, 12, 13, 14, 17, 55, 73, 74, 81, 83,93, 94, 95, 97, 109, 110, 128, 130, 133, 136, 138, 147, 150, 151, 154,180, 181, 183, 190, 191, 191:1, 199、Pigment Green 7, 36、Pigment Blue15, 15:1, 15:2, 15:3, 15.4, 15:6, 29, 60, 64, 68、Pigment Violet 19, 23,37, 44、Solvent Red 52, 117, 135, 169, 176、Disperse Red 5、Solvent Orange 63, 67, 68, 72, 78、Solvent Yellow 98, 103, 105, 113, 116、DisperseYellow 54, 64, 160、Solvent Green 3, 20, 26、Solvent Blue 35, 45, 78, 90, 94, 95, 104, 122, 132、Solvent Violet 31、などが挙げられる。またその他のアンスラキノン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、ジオキサジン系、キノフタロン系、ペリレン系、ペリノン系、ベンズイミダゾロン系、ジアリライド系、バット系、インジゴ系、キノフタロン系、ジケトピロロピロール系、アントラピロリドン系の染料/顔料等を挙げることができる。
このうちPigment Red 187, 263、Pigment Blue 15:1, 15:3, 29,60、Pigment Violet 19、Solvent Red 135、Solvent Blue 45, 90,104, 122、およびアンスラキノン系とフタロシアニン系の染料/顔料が好ましい。さらにアンスラキノン系とフタロシアニン系の染料/顔料は特に好ましい。
選択される顔料および/または染料は下記の条件を満たす物が好ましい。まず顔料および染料は最大限の安全性をもたらすために重縮合体から非抽出性であること。また日光に対しておよび広範囲の温度および湿度条件に対して安定であること。さらにポリエステルの製造の間に遭遇する極めて高い温度の結果として昇華や、色相の変化を生じないことである。更にこの顔料および染料はポリエステルポリマーの物理的性質に悪影響を及ぼさないものが好ましい。
これらの条件を満たす顔料および/または染料でポリエステルの色調を改善するものであれは特に限定されないが、例えば特表2000−511211ではある種の青色1,4−ビス(2,6−ジアルキルアニリノ)アントラキノンを主に用い赤色アンスラキノンおよびアントラピリドン(3H−ジベンゾ[fi,j]イソキノリン−2,7−ジオン)化合物を色相に応じて組み合わせた色調改善剤などが例示されており、これらを用いることができる。これらの染料は適当な色特性を有し、熱、光、湿度および種々の環境要因に対して安定であると共に重縮合の合間にポリエステルポリマー構造中に含ませることができ、公知の有機染料で遭遇する問題の多くを克服する。またUV光、高温および加水分解に対して安定である。更に青色成分および赤色成分の量は、着色度の異なったポリエステルに有効に働くように、必要に応じて変化させることができる。
本発明の蛍光増白剤としては一般に用いられているものを単独もしくは組み合わせて使用しても良い。例えばベンズオキサゾリン系蛍光増白剤、好ましくはチバ・スペシャルティーケミカルズ社製のUVITEX OB、UVITEX OB−P、UVITEX OB−ONE、クラリアント社製のHOSTALUX KSや、特開平10−1563に記載のものなどが好ましく使用できる。
以上の色調改善剤は無彩色の色相を達成するため、その種類や添加比などを任意に組み合わせ使用することができる。また、色調改善剤の添加時期は重縮合のどの段階であってもよく、重縮合反応終了後であっても構わなく、重縮合反応終了後から成形時までのどの段階であってもかまわない。また添加方法は重縮合中であれば粉末や、ポリエステルのモノマーの1つに溶解させて添加することが好ましい。さらに重縮合反応終了後では粉末やマスターバッチとして添加することが好ましい。
また顔料等の分散性に問題が生じる場合は、必要に応じて分散剤を使用すると好ましい場合がある。分散剤は顔料の分散を助けるものであれば特に規定はされないが、例えばN,N’−エチレンビスミリスチン酸アミド、N,N’−エチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−メチレンビスミリスチン酸アミド、N,N’−メチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−メチレンビスオレイン酸アミドなどのN,N’−アルキレンビス脂肪酸アミドなどがある。その中でもN,N’−メチレンビスステアリン酸アミドが好ましい。添加量に関しては性能にも左右されるが、顔料に対して10〜200質量%、好ましくは40〜150質量%添加するのが良い。
本発明のポリエステルは、0.580〜0.630dl/gの極限粘度を有することが好ましい。極限粘度が0.580dl/g未満であるようなポリエステルは、製膜して得られるフィルム等の成型体の力学的特性が劣悪になるため好ましくなく、逆に、0.630dl/gを超えるようなポリエステルは、重縮合反応後に製造したポリエステルチップをシート状に押出す際の押出機負荷が大きくなって、生産性が低下するので好ましくない。より好ましい極限粘度は0.600〜0.620dl/gである。
本発明においては、上記ポリエステルを直接エステル化法で、かつ連続法で実施するのが好ましい。
直接エステル化法はエステル交換法に比べ経済性の点で有利である。また、連続式重縮合法は回分式重縮合法に比して品質の均一性や経済性において有利である。
本発明においては、エステル化および重縮合工程の反応槽サイズや各工程の製造条件等は限定なく適宜選択できる。
例えば、テレフタル酸1モルに対して1.2〜2.5モル、好ましくは1.3〜2.2モルのエチレングリコ−ルが含まれたスラリ−を調製し、これをエステル化反応工程に連続的に供給する。エステル化反応は、1個のエステル化反応槽を用い反応によって生成した水を精留塔で系外に除去しながら実施するのが好ましい。エステル化反応の温度は240〜270℃、好ましくは245〜265℃、圧力は常圧〜300KPaが好ましく、20〜280kPaがより好ましく、40〜260kPaがさらに好ましい。引き続き重縮合反応槽に移送し重縮合を行う。該重縮合工程の反応槽数も限定されない。一般には初期重縮合、中期重縮合および後期重縮合の3段階方式が取られているが、コスト低減より1段階あるいは2段階方式が好ましい。重縮合反応条件は、例えば、2段階方式における第1段階目の重縮合の反応温度は250〜290℃、好ましくは260〜280℃であり、圧力は10〜2.7KPa、好ましくは2.7〜0.27KPaで、第2段階の重縮合反応の温度は265〜300℃、好ましくは275〜295℃であり、圧力は1.3〜0.13KPa、好ましくは0.65〜0.065KPaである。
本発明においては、(1)上記リン化合物をスラリー調製槽、エステル化反応槽、重縮合反応槽、およびこれらの槽間の移送ラインからなる群から選ばれる少なくとも一箇所に添加すること(2)上記アルカリ土類金属化合物をスラリー調製槽、スラリー調製槽からエステル化反応槽へ至る移送ライン、エステル化反応槽から重縮合反応槽へ至る移送ラインからなる群から選ばれる少なくとも一箇所に、攪拌式のインラインミキサーを設置し、該インラインミキサーに添加することを同時に満たすことが好ましい。該対応により、良好な静電密着性を有し、しかも、長期連続運転をしても異物含有量の増加が少なく、極めて高度な清澄度を有するポリエステルが安定して生産できることが可能となる。
なお、スラリー調製槽にインラインミキサーを設置する方法としては、スラリー調製槽に循環ラインを設けて、この循環ラインにインラインミキサーを設置する方法を挙げることができる。これによりアルカリ土類金属化合物をインラインミキサーを介してスラリー調製槽に添加することができる。
上記インラインミキサーの攪拌翼外周の周速は、2〜100m/秒であることが好ましい。4〜90m/秒がより好ましく、6〜80m/秒がさらに好ましい。該特性の攪拌式のインラインミキサーを用いることにより、前述した公知技術であるスタテックミキサー添加では達成ができない効果が発現できる。
本発明に用いられるインラインミキサーは、上記要件を満たし、均一混合効果を発現できればその構造やサイズは限定されないが、例えば、特開平8−299771号公報において開示されているスラリーを分散混合する目的のインラインミキサーが好適である。
該インラインミキサーの設置場所は上記したいずれでも構わないが、エステル反応槽から第1重縮合反応槽への移送ラインを利用するのが好ましい。該対応により本発明の効果がより顕著に発現できる。
上記方法で実施することにより、アルカリ土類金属化合物起因の異物生成が抑制され、長期により清澄なポリエステルが得られ、前述した清澄度を長期に渡り安定して維持することができる。すなわち、従来公知のポリエステル製造方法は、生産をスタートした時は清澄度の高いポリエステルが得られるが、運転の経過により静電密着性付与する目的で添加されるマグネシウム化合物等のアルカリ土類金属化合物あるいはアルカリ土類金属化合物とリン化合物およびこれらとポリエステルオリゴマーとの反応生成物が配管や反応装置の缶壁に析出し、該析出物が運転時間の経過とともに脱落してポリエステルに混入することで得られるポリエステルの清澄度が時間の経過とともに悪化するという課題を有していた。本発明は、アルカリ土類金属化合物を攪拌式のインラインミキサーに添加することでその攪拌能の向上により配管や反応装置の缶壁に析出する析出物の生成を抑制することにより達成したものである。
本発明においては、前記したリン化合物の少なくともその一部を、アルカリ土類金属化合物を添加するインラインミキサーに添加することが好ましい。該方法の実施により上記のアルカリ土類金属化合物起因の配管や反応装置の缶壁に析出する析出物の生成が抑制されると共に、静電密着性がより向上するので好ましい。
上記方法で実施する場合の添加方法は限定されない。アルカリ土類金属化合物と別個の添加口から添加してもよいし、事前に混合あるいは添加ラインで両者を合流させて同一の添加口から添加してもよい。
本発明においては、上記製造工程の反応槽間の移送ラインを複数本に分岐し、該分岐した各ラインに前記した攪拌式のインラインミキサーを設置し、該分岐したラインの少なくとも一つを使用してポリエステル中間体を移送させ、該ポリエステル中間体が流れるラインに設置されたインラインミキサーに前記したアルカリ土類金属化合物を添加し、長期に渡り連続運転をした場合に得られるポリエステルの清澄度が悪化してきた場合に、ポリエステル中間体の流路を切り替え、該流路を切り替えと同時にアルカリ土類金属化合物の添加を切り替えた流路に設置されたインラインミキサーに変更し連続生産を続けることがより好ましい実施態様である。
すなわち、上記方法で得られるポリエステルを溶媒に溶解し、その溶液を平均孔径0.1μmのメンブレンフィルターでろ過した後のフィルター上残渣におけるマグネシュウム量がポリエステル1kgあたり1mgを超えたら、ポリエステル中間体の流路を切り替え、該流路を切り替えと同時にアルカリ土類金属化合物の添加を切り替えた流路に設置されたインラインミキサーに変更し連続生産を続けることが好ましい。
さらに、上記方法で流路切換えの後に、切換え前にアルカリ土類金属化合物を添加していたインラインミキサーの洗浄を行うことが好ましい実施態様である。
上記態様により、上記流路切換え後の生産において、さらに流路切り替えの必要が生じた場合に、上記洗浄されたインラインミキサーの流路の使用が可能となり、結果として、分岐ライン数を2個とするのみで、交互使用でポリエステルの清澄度が長期に渡り安定生産可能となるので好ましい実施態様である。
該洗浄方法は限定されないが、例えば、250〜270℃に加熱したトリエチレングリコールをインラインミキサーの入口から出口に循環させ、ミキサーの上部よりガス抜きを行いつつ所定時間循環を続行して行う方法が挙げられる。
上記方法にて洗浄した後に、該インラインミキサーを分解して攪拌機等の構成部品毎にバフ仕上げ等により完璧な洗浄を実施してもよい。
以上の本発明においては、攪拌式のインラインミキサーにアルカリ土類金属化合物を添加することにより、アルカリ土類金属化合物起因の異物生成が抑制され、長期により清澄なポリエステルが得られ、前述した清澄度を長期に渡り維持することができる。すなわち、従来公知のポリエステル製造方法は、生産をスタートした時は清澄度の高いポリエステルが得られるが、運転の経過により静電密着性付与する目的で添加されるマグネシウム化合物等のアルカリ土類金属化合物あるいはアルカリ土類金属化合物とリン化合物およびこれらとポリエステルオリゴマーとの反応生成物が配管や反応装置の缶壁に析出し、該析出物が運転時間の経過とともに脱落してポリエステルに混入することで得られるポリエステルの清澄度が時間の経過とともに悪化するという課題を有していた。本発明は、アルカリ土類金属化合物を攪拌式のインラインミキサーに添加することでその攪拌能の向上により配管や反応装置の缶壁に析出する析出物の生成を抑制することにより達成したものである。さらに、本発明においては、該改良された製造方法では、アルカリ土類金属化合物は高速攪拌されたインラインミキサーに添加されるために、前述した缶壁に析出する析出物の生成が大幅に低減され、高清澄度のポリエステルが得られる期間が延長されるが、該析出物の生成を完全に抑制することはできないために、清澄度が悪化してくることがある。そこで、ポリエステルの清澄度を評価し、上述のごとく該清澄度が悪化したら、アルカリ土類金属化合物の添加ラインの切り替えを行い、さらなる期間の延長と品質の安定化を可能としたものである。
本発明における上記のポリエステルの清澄度の評価頻度は限定されない。毎日の評価が最も好ましい。前記のポリエステルの清澄度評価法のうち、ポリエステルチップに含まれる粗大粒子数の評価法は、不溶分量評価法に比べて簡便であるので、該粗大粒子数の評価法による評価の頻度を高くしておき、該評価結果が悪化傾向になった時点で不溶分量評価法の測定頻度をあげて、添加ライン切換えの判断をするのが好ましい実施態様である。例えば、定常状態においては、粗大粒子数評価法は1回/日で、不溶分量評価法は1回/週の割で測定し、粗大粒子数の増加が見られるようになったら測定頻度を上げるのが好ましい。該測定頻度は、生産するポリエステルの使用用途や要求品質に応じて適宜設定すればよい。
本発明においては、エステル化反応や重縮合反応の条件は限定されないが、エステル化反応の変動が最終製品であるポリエステルの品質変動に大きく影響する。特に、本発明の1基のエステル化反応槽でポリエステルを製造する方法においては、複数個のエステル化反応槽を設けたポリエステル製造方法に比べてエステル化反応の変動が大きくなるので、下記の方法で行うのが好ましい実施態様である。
エステル化反応槽内に滞留する反応物の単位時間当たりの熱量を設定値の±1.5%以内になるように制御することが重要である。該エステル化反応槽内に滞留する反応物の単位時間当たりの熱量の変動範囲は±1.3%以内がより好ましく、±1.1%以内がさらに好ましい。下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より±0.3%が好ましく、±0.5%がより好ましい。上記変動範囲が±1.5%を超えた場合は、エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の変動が大きくなり、結果として最終ポリエステルのカルボキシル末端基濃度や色調等の品質変動が大きくなるので好ましくない。また、用いる重縮合触媒の種類によっては、重縮合触媒活性の変動に繋がる場合があり、上記ポリエステルの品質変動がより拡大されることがある。
上記エステル化反応槽内に滞留する反応物の単位時間当たりの熱量の制御方法は限定されない。例えば、以下に示すような方法が挙げられる。
その第1の方法は、エステル化反応槽内に滞留する反応物温度および流量、スラリー温度および流量を計測し、エステル化反応槽内に滞留する反応物の単位時間当たりの熱量が一定になるようにスラリーの持ち込む単位時間当たりの熱量を制御することにより行うのが好ましい。該方法において、スラリーの持ち込む単位時間当たりの熱量の制御方法としては、スラリー温度、スラリー供給量および両者を制御する方法があるが、スラリー供給量を変更するとエステル化反応槽の液面変動等のエステル化反応に影響を及ぼす要因の変動を引き起こすことになるので、スラリー流量は一定になるようにして、スラリー温度を制御するのが好ましい。該方法で実施する場合は、スラリー供給量を設定値±3%以内に制御することが好ましい。±2.5%以内がより好ましく、±2.0%以内がさらに好ましい。下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より±0.3%が好ましく、±0.5%がより好ましい。該スラリーの供給量の制御方法は限定されない。例えば、流量計を用いて設定流量になるように送液ポンプ回転数を変更する方法、送液ラインの送液ポンプの後に、スラリー調合槽に戻るバイパスラインを設け、送液ポンプの回転数を一定回転とし、送液ラインに設けた流量計の流量が一定になるようにバイパスラインに設けたコントロール弁の開度を調整する方法、スラリー調製槽とエステル化反応槽の位置に高低差を設けて、ヘッド圧でスラリーの送液を行い、該送液ラインに設けた流量計の流量が一定になるように送液ラインに設けたコントロール弁の開度調整により行う等が挙げられる。流量計の種類は限定されない。例えば、ローター流量計、ローターピストン流量計、オーバル流量計およびマイクロモーション流量計等が挙げられる。また、エステル化反応槽の液面レベルが一定になるように調整してもよい。また、反応槽内に滞留する反応物温度は、反応槽の底部の缶壁より200〜400mm内部の温度を測定するのが好ましい。
また、エステル化反応槽を通過する反応物の通過量は高温用の流量計を用いてエステル化反応槽出口の反応物流量を計測する、あるいは該エステル化反応槽に供給されるスラリー供給量とエステル化反応槽の液面レベルより算出する方法等が挙げられる。
第2の方法は、エステル化反応槽内に滞留する反応物の温度および液面レベルをそれぞれ設定値の±3.0%以内および±0.2%以内になるように制御した上で、エステル化反応槽に供給するスラリーの単位時間当たりの熱量を設定値の±1.5%以内になるように制御する方法である。
エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の変動はエステル化槽の温度および滞留時間(限定されたポリエステル製造ラインにおいては、反応槽の液面レベル)の影響を受けるので、該要因は上記範囲に制御するのが好ましい。例えば、温度は設定値±2.0%以内がより好ましい。一方、下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より、±0.2%が好ましく、±0.5%がより好ましい。また、液面レベルは設定値±0.2%以内が好ましく、±0.1%以内がより好ましい。一方、下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より、±0.02%が好ましく、±0.05%がより好ましい。該液面レベルの制御は前記のスラリー流量制御を上記範囲にすることにより制御が可能である。
上記要件を満たした上で、エステル化反応槽に供給するスラリーの単位時間当たりの熱量を設定値の±1.5%以内になるように制御するのが好ましい。±1.3%以内がより好ましく、±1.1%以内がさらに好ましい。下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より±0.3%が好ましく、±0.5%がより好ましい。
第3の方法は、第2の方法と同様にエステル化反応槽内に滞留する反応物の温度および液面レベルをそれぞれ設定値の±3.0%以内および±0.2%以内になるように制御した上で、エステル化反応槽内に滞留している反応物温度とエステル化反応槽供給されるスラリー温度との温度差とスラリー流量およびスラリー比熱より求められ該エステル化反応槽供給されるスラリーの単位時間当たりの熱量を設定値の±1.5%以内になるように制御することが好ましい。該上記方法で求められるエステル化反応槽内に供給するスラリーの単位時間当たりの熱量の変動範囲は±1.3%以内がより好ましく、±1.1%以内がさらに好ましい。下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より±0.1%が好ましく、±0.3%がより好ましい。
該方法は、エステル化反応槽内に滞留する反応物の単位時間当たりの熱量変動はエステル化反応槽内に滞留している反応物温度で近似でき、かつ該熱量の変動はエステル化反応槽内に滞留している反応物温度とエステル化反応槽供給されるスラリー温度との温度差とスラリー流量およびスラリー比熱より求められ該エステル化反応槽供給されるスラリーの単位時間当たりの熱量変動を小さくすることで抑制できることを見出したことに基づいている。すなわち、エステル化反応槽へ供給されるスラリーにより持ち込まれる熱量の変動を抑制すればエステル化反応槽内に滞留する反応物の単位時間当たりの熱量変動抑制ができるとともに、該エステル化反応槽へ供給されるスラリーにより持ち込まれる熱量の変動が大きくなるとエステル化反応槽の温度制御の過応答が起こることがあり、エステル化反応槽内に滞留している反応物温度制御が困難となるがあるが、該方法により該過応答の回避に繋がり、エステル化反応槽におけるエステル化反応の変動が抑制され、エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の変動が抑制される。
上記方法におけるエステル化反応槽内に供給するスラリーの単位時間当たりの熱量の制御方法は限定されない。例えば、エステル化反応槽内に供給するスラリーの温度およびスラリー流量を計測し、スラリー温度および/またはスラリー流量を制御する方法が挙げられるが、スラリー流量を制御する方法はエステル化反応槽内の反応物の液面変動等のエステル化反応に影響する要因の変動に繋がるので、スラリー流量は一定になるようにして、スラリー温度を制御するのが好ましい。該方法で実施する場合は、スラリー供給量を設定値±3.0%以内に制御することが好ましい。±2.5%以内がより好ましく、±2.0%以内がさらに好ましい。下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より±0.3%が好ましく、±0.5%がより好ましい。該スラリーの供給量の制御方法は限定されない。例えば、流量計を用いて設定流量になるように送液ポンプ回転数を変更する方法、送液ラインの送液ポンプの後に、スラリー調合槽に戻るバイパスラインを設け、送液ポンプの回転数を一定回転とし、送液ラインに設けた流量計の流量が一定になるようにバイパスラインに設けたコントロール弁の開度を調整する方法、スラリー調製槽とエステル化反応槽の位置に高低差を設けて、ヘッド圧でスラリーの送液を行い、該送液ラインに設けた流量計の流量が一定になるように送液ラインに設けたコントロール弁の開度調整により行う等が挙げられる。流量計の種類は限定されない。例えば、ローター流量計、ローターピストン流量計、オーバル流量計およびマイクロモーション流量計等が挙げられる。また、エステル化反応槽の液面レベルが一定になるように調整してもよい。
また、上記方法で実施する場合のスラリー温度の制御方法は限定されない。例えば、上記スラリー調製槽の温度および/またはテレフタル酸温度を検出し、該調製槽に供給されるグリコール温度にフィードバックし制御するのが好ましい。また、スラリー温度制御はスラリー調製槽やスラリーの移送ラインに熱交換器を設置して制御してもよい。また、スラリー調製槽に循環ラインを設けてスラリー調製槽中のスラリーを循環させて温度制御の精度向上を図ってもよい。該方法の場合は、循環ラインにも温度制御機能を付加するのが好ましい。以上の方法を単独でおこなってもよいし、複数の方法を組み合わせて行ってもよい。また、スラリー調製槽出口からエステル化反応槽供給するまでの間にスラリー貯留槽を設けてスラリー温度制御の精度を高めてもよい。該方法の場合に、スラリー貯留槽に温度制御機構を付加してもよい。該スラリー貯留槽を設ける方法はスラリー調製槽におけるスラリー調整はバッチ式で実施してもよい。バッチ式スラリー調製法は、スラリー調製における重要工程管理項目であるスラリーのジカルボン酸とグリコールとの組成比の管理が容易となるので該管理の制御系を簡略化することができるという利点にも繋がる。また、該方法の場合は、スラリー貯留槽において、上記のジカルボン酸とグリコールとの組成比の調整が実施できるので、該組成比の変動抑制に繋げることもできるという利点を有する。該方法においては、スラリー調製を連続法やセミバッチ法で実施してもよい。また、該方法と前者の方法を組み合わせて実施してもよい。
上記のスラリー温度の設定値は限定されないが室温から180℃が好ましい。本発明においては、後述のごとくインプラントで回収された回収グリコールが循環再使用するのが好ましい。該回収グリコールは、エネルギー効率の点より加温状態で循環するのが好ましい。従って、回収グリコールは加温状態にあるので、該設定温度は加温状態が好ましく70〜150℃がより好ましい。本発明においては、該循環再使用される回収グリコールの温度変動はスラリー温度変動に影響する。従って、該回収グリコールの温度管理や供給量管理は重要管理項目となる。
本発明においては、エステル化反応槽圧力を設定値±4%以内になるように制御するのが好ましい。±3%以内がより好ましい。±2%以内がより好ましい。一方、下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より、±0.2%が好ましく、±0.5%がより好ましい。該エステル化反応槽圧力が設定値±4%を超えた場合は、前記制御をしてもエステル化反応槽出口のオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の変動が後述の範囲を超えることがあるので好ましくない。
上記エステル化反応槽圧力の設定値は限定されないが、前述のごとく大気圧〜300kPaが好ましい。20〜280kPaが好ましく、40〜260kPaがさらに好ましく、後述のごとく留出グリコールの分留を行う蒸留塔の塔頂圧力調整法で調整するのが好ましい。
また、該スラリーの中のジカルボン酸とグリコールとのモル比もエステル化反応に影響するので一定範囲に制御することが好ましい。該変動範囲は、前記した公知技術の範囲で十分である。設定値±0.3%以内が好ましい。設定値±0.25%以内がより好ましく、設定値±0.2%以内がさらに好ましい。一方、下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より、±0.01%が好ましく、±0.02%がより好ましい。
本発明においては、エステル化反応槽出口のオリゴマーのカルボキシル末端基濃度を設定値±5%以内にするのが好ましい。±4%以内がより好ましく、±3%以内がさらに好ましい。該カルボキシル末端基濃度変動が±5%を超えた場合は後続の重縮合反応の変動が増大して得られるポリエステルの品質の均一性が低下するので好ましくない。一方、下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より、±0.2%が好ましく、±0.5%がより好ましい。
カルボキシル末端基濃度の設定値は限定されないが150〜900eq/tonの範囲が好ましい。170〜800eq/tonの範囲がより好ましく、190〜700eq/tonの範囲がさらに好ましい。カルボキシル末端基濃度の設定値が150eq/ton未満になると、重縮合活性の低下や重縮合工程でのジエチレングリコールの生成の増大が起こるので好ましくない。特に、重縮合反応活性に対してポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の影響の大きい重縮合触媒系を用いた場合に重縮合触媒活性が著しく低下するので好ましくない。逆に、カルボキシル末端基濃度の設定値が900eq/tonを超えた場合は、後続の重縮合反応の進行が不安定になり得られるポリエステルの重合度の変動が大きくなるので好ましくない。また、得られるポリエステルのカルボキシル末端基濃度が高くなり、ポリエステルの加水分解安定性等の安定性低下に繋がるので好ましくない。
該エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーカルボキシル末端基濃度を上記範囲に設定する方法が限定されない。例えば、エステル化反応装置の構造等の製造装置要因や、エステル化反応槽に供給するスラリーのジカルボン酸とグリコールの組成比、エステル化反応温度、エステル化反応圧、エステル化反応時間等のエステル化反応条件等を適宜設定することにより行えばよい。また、エステル化反応工程に水を添加して調整してもよい。
本発明においては、最終生成物(ポリマー)はろ過してから、チップ化されるのが好ましい。かかるろ過には、通常、目開き3〜20μm程度のフィルターが使用される。
本発明方法により得られたポリエステルを前述のごとく固相状態で減圧下あるいは不活性ガス気流下でポリエステル樹脂を加熱し、さらに重縮合を進めたり、該ポリエステル樹脂中に含まれている環状3量体等のオリゴマーやアセトアルデヒド等の副生成物を除去する等の手段を取ることも何ら制約を受けない。また、例えば超臨界圧抽出法等の抽出法でポリエステル樹脂を精製し前記の副生成物等の不純物を除去する等の処理を行うことを取り入れても良い。
本発明のポリエステル中には、他の任意の重縮合体や制電剤、消泡剤、染色性改良剤、染料、顔料、艶消剤、蛍光増白剤、安定剤、酸化防止剤、その他の添加剤が含有されていてもよい。酸化防止剤としては、芳香族アミン系、フェノール系等の酸化防止剤が使用可能であり、安定剤としては、リン酸やリン酸エステル系等のリン系、硫黄系、アミン系等の安定剤が使用可能である。
これらの添加剤は、ポリエステルの重縮合時もしくは重縮合後、あるいはポリエステル成形時の任意の段階で添加することが可能であり、どの段階が好適かは対象とするポリエステルの構造や得られるポリエステルの要求性能に応じてそれぞれ適宜選択すれば良い。
本発明のポリエステルは、ポリエステルの溶融比抵抗が最適化されているので溶融押出しキャスティングにおいて静電密着法を適用した場合に溶融押出ししたシートをチルロールに密着させる静電密着力を増大させることができ、ピンナーバブルの発生を抑制しながらキャストできる最高のキャスティング速度を上げることができるので、溶融押出し成型工程が含まれるフィルムやシートの原料として好適に用いることができる。
フィルム用として用いる場合は、滑り性、巻き性、耐ブロッキング性などのハンドリング性を改善するために、フィルム中に無機粒子、有機塩粒子や架橋高分子粒子などの不活性粒子を含有させることが出来る。また、これらの粒子は無機・有機又は親水・疎水等の表面処理がされたもの、されていないもの、どちらを使っても良いが、例えば粒子の分散性を向上させる等の目的で、表面処理した粒子を用いる方が好ましい場合がある。
無機粒子としては、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、フッ化リチウム、ソジュウムカルシウムアルミシリケート、疎水処理シリカ、無機処理シリカ、有機処理シリカ、ガラス粉、シリコン等が挙げられる。
有機塩粒子としては、蓚酸カルシウムやカルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩等が挙げられる。架橋高分子粒子としては、ジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸またはメタクリル酸のビニル系モノマーの単独または共重合体が挙げられる。その他に、ポリテトラフルオロエチレン、ベンゾグアナミン樹脂、熱硬化エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂などの有機粒子を用いても良い。
上記不活性粒子を基材フィルムとなるポリエステル中に含有させる方法は、限定されないが、(a)ポリエステル構成成分であるジオール中で不活性粒子をスラリー状に分散処理し、該不活性粒子スラリーをポリエステルの重合反応系へ添加する方法、(b)ポリエステルフィルムの溶融押出し工程においてベント式二軸押出し機で、溶融ポリエステル樹脂に分散処理した不活性粒子の水スラリーを添加する方法、(c)ポリエステル樹脂と不活性粒子を溶融状態で混練する方法(d)ポリエステル樹脂と不活性粒子のマスターレジンを溶融状態で混練する方法などが例示される。
重合反応系に添加する方法の場合、不活性粒子のジオールスラリーを、エステル化反応またはエステル交換反応前から重縮合反応開始前の溶融粘度の低い反応系に添加することが好ましい。また、不活性粒子のジオールスラリーを調整する際には、高圧分散機、ビーズミル、超音波分散などの物理的な分散処理を行うとことが好ましい。さらに、分散処理したスラリーを安定化させるために、使用する粒子の種類に応じて適切な化学的な分散安定化処理を併用することが好ましい。
分散安定化処理としては、例えば無機酸化物粒子や粒子表面にカルボキシル基を有する架橋高分子粒子などの場合には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ化合物をスラリーに添加し、電気的な反発により粒子間の再凝集を抑制することができる。また、炭酸カルシウム粒子、ヒドロキシアパタイト粒子などの場合にはトリポリ燐酸ナトリウムやトリポリ燐酸カリウムをスラリー中に添加することが好ましい。
また、不活性粒子のジオールスラリーをポリエステルの重合反応系へ添加する際、スラリーをジオールの沸点近くまで加熱処理することも、重合反応系へ添加した際のヒートショック(スラリーと重合反応系との温度差)を小さくすることができるため、粒子の分散性の点で好ましい。
これらの添加剤は、ポリエステルの重合時もしくは重合後、あるいはポリエステルフィルムの製膜後の任意の段階で添加することが可能であり、どの段階が好適かは化合物の特性やポリエステルフィルムの要求性能に応じてそれぞれ異なる。