JP5072808B2 - 口唇化粧料の使用感の評価方法 - Google Patents

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本発明は、棒状口紅等の口唇化粧料を塗布した後の使用感を評価する方法に関する。
口唇化粧料に関して、滑らかさや潤い感等に代表される使用感の評価は、一般に習熟した開発技術者(口唇化粧料の開発に従事して5年以上の経験を有するような習熟した開発技術者)による官能評価が主である。習熟した開発技術者は多様な処方の評価を日常行っており、この種の評価には極めて精通している。
ところで、口唇化粧料とは異なるが、クリームやジェル等の粘性を有する化粧料に関し、その法線応力に着目した技術が知られている。例えば、皮膚に高い摩擦と艶のない仕上がりを与えることを目的とした、特定の値未満の法線応力を有しているクリーム様粘度の化粧組成物が提案されている(特許文献1参照)。この化粧組成物は、ヒトの皮膚に外用塗布するために用いられる。具体的には、皮膚の色を明るくするか皮膚の色素沈着を除去するため、皮膚状態を調整し皮膚を滑らかにするため、及び、皮膚のしわ又は老化の外観を予防又は抑制するために用いられる。この化粧組成物は、1−5ml程度の量を皮膚の露出領域に塗布し、手や指を使用して皮膚に塗り延ばしたり、皮膚に擦り込んだりして使用される。
上述の技術とは別に、曳糸性を有する高分子を配合した液状組成物の法線応力効果を利用した皮膚マッサージ化粧料及び皮膚洗浄化粧料も知られている(特許文献2及び3参照)。この化粧料は法線応力を有するので、これを用いて皮膚をマッサージすることで、皮膚面の法線方向、すなわち皮膚面と直角な方向に応力が発生する。その応力が、化粧料を通して毛穴や皮溝の方向や、動かす範囲よりも大きい範囲まで力が伝わることによりマッサージ行為や洗浄行為が実現できるとされている。
以上の各技術は、化粧料のうち、クリームやジェル等を利用し、皮膚への高摩擦の付与やマッサージ効果を高めるためのものであり、口唇化粧料の感触に関する検討は何らなされていない。
特表2005−526781号公報 特開2007−238571号公報 特開2007−238572号公報
上述のような官能評価に基づいて口唇化粧料の使用感の評価を毎回行うことは開発上非効率的である。特に口唇化粧料を唇に塗布した後の使用感の良し悪しについては、塗布後の飲食や会話等の唇を動かす行為による影響が大きい上に個人差が大きいので、再現性良く使用感の評価が行えない。また、客観的数値化や一般化ができない(個々の評価結果の経験の蓄積は評価者に属しているため)、あるいは安全性の確認されていない素材の配合された口唇化粧料の評価を行うことができないといった問題点があった。
したがって本発明は、口唇化粧料の使用感について、簡便、かつ、安全で信頼性の高い評価方法を提供することを目的とする。
本発明は、口唇化粧料について、レオロジー測定から得られる第1法線応力差の値に基づき該口唇化粧料の使用感の良否を評価する方法を提供するものである。
本発明の評価方法によれば、口唇化粧料の使用感を信頼性高く評価することができる。しかも、本発明の評価方法においては、測定対象物のレオロジー測定が簡便であることから、評価を容易に行うことができる。また、新規物質等安全性の確認できていない素材を含む配合処方品の感触を評価する目的としても本発明の評価方法はよく適している。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。以下の説明では、口唇化粧料としてその典型なものである棒状の口紅を例にとる。本発明の評価方法において評価される口紅の使用感とは、口紅塗布後に上下の唇を前後にすり合わせて塗膜の存在感や該塗膜の滑らかさを感じた際に、滑らか感や潤い感があるとして表現される使用感である。加えて、糸曳性の少ないことも使用感として評価されうる。また、口紅の使用感の持続性が良好であることも本発明の評価方法で判断可能である。ここでいう持続性とは、口紅塗布後数時間経過後に、単に視覚的に口紅が残っているのみならず、上下の唇を前後にすり合わせたときに塗膜の存在感や該塗膜の滑らかさが感じられたり、それらが持続することにより使用感が持続していると判断される状態にあることである。口紅塗布後数時間経過後に上下の唇を前後にすり合わせた時、塗膜の存在感、該塗膜の滑らか感や潤い感を感じた場合、その口紅の使用感の持続性が良いと判断される。
唇の表面に塗られた口紅の状態を本発明者らが種々検討したところ、使用感を発現している口紅の塗膜の持続性は口紅の塗膜のずり変形に対する抵抗性と関連していることが判明した。ここで言うずり変形に対する抵抗性とは、唇の強いすり合わせという行為下での塗膜の薄膜化に対する抵抗性のことである。本発明者らが更に検討を推し進めたところ、口紅の塗膜が高いずり速度で法線応力を示すと、口紅の塗膜が長時間にわたり存在していると使用者が感じることが判明した。つまり、唇を前後に摺動させる動作により塗膜が薄膜化することに対する抵抗感が、それと直交する方向に発生(法線応力)すると、口紅塗膜の存在を感じるようになり、それによって口紅塗膜の存在感、滑らか感や潤い感を想起するようになる。口紅塗布後、経時で塗膜が薄くなると、唇をすり合わせた時に発生するずり速度はより大きくなるため、法線応力の値も大きくなり、塗膜薄膜化への抵抗性も大きくなり、口紅塗膜の使用感の向上につながる。この性質は、使用者に対して滑らか感や潤い感が持続するといった感覚を与えうるものである。
法線応力は、粘弾性流体からなる測定対象物にずり変形を加えたときに、ずりを加えた方向と直交する方向に発生する応力である。法線応力は、それ単独で把握されるものではなく、ずり応力との差で把握されるものである。すなわち、単純ずり流れにおいて流動方向を1とし、ずり方向を2とすると、法線応力差は第1法線応力差N1(=σ11−σ22)、第2法線応力差N2(=σ22−σ33)及び第3法線応力差N3(=σ33−σ11)として定義される。これらの法線応力差のうち、本発明においては、第1法線応力差N1を法線応力の尺度として採用している。法線応力の尺度として第1法線応力差N1を採用した理由は、(i)粘弾性特性によって生じる多くの現象はN1の効果として説明可能であること、(ii)市販のレオメータで容易にN1を測定することが可能であること等によるものである。
本発明においては、レオロジー測定から得られる第1法線応力差N1の値に基づき口紅の使用感とその持続性の良否を評価する。例えば、第1法線応力差N1の値の大小に基づき評価する。官能評価との相関をみると、相対的に第1法線応力差N1の大きい口紅の方が、相対的に第1法線応力差N1の小さい口紅よりも使用感とその持続性が良好であると判断することが適切である。
図1は、本発明の評価方法のために本発明者らが調製した口紅を対象として測定された第1法線応力差N1の値を示すグラフの一例である。同図から明らかなように、第1法線応力差N1はその値がずり速度に依存する。しかし、評価の対象となる2種の口紅について第1法線応力差N1を比較した場合、同じずり速度で比較する限り、第1法線応力差N1の大小関係は、ずり速度が異なってもほとんど変わらないことが本発明者らの検討の結果判明した。したがって、本発明に従い塗布後の使用感を評価するにあたっては、任意のずり速度で測定された第1法線応力差N1の値を採用してもよい。このように、本発明によれば、評価の対象となる2種以上の口紅の第1法線応力差N1を比較することで、口紅塗膜の使用感の良否に序列をつけることが可能になる。
本発明者らが、種々の口紅について第1法線応力差N1の値と、官能評価との相関を調べたところ、200s-1のずり速度下において測定された第1法線応力差N1aの値を採用して口紅塗膜の使用感を評価することが、官能評価との相関を一層高くする観点から有利であることが判明した。特に、このずり速度下において第1法線応力差N1a(以下、第1法線応力差の単位はPa)の値がN1a>200である場合に、口紅の使用感である滑らか感や潤い感、及びその持続性が非常に高いことが判明した。したがって、本発明によれば、2種以上の口紅についての第1法線応力差N1の値の比較に基づく口紅塗膜の使用感の評価に加え、単独の口紅についての第1法線応力差N1の値そのものから、その口紅の塗膜の使用感を評価することができる。
200s-1のずり速度下での第1法線応力差N1aの値は、N1a>200であれば、その値が高いほど口紅の使用感である滑らか感や潤い感、及びその持続性は高くなる。しかし、N1aが高くなりすぎると、口紅の糸引きが起こりやすくなることが判明した。この観点から、評価の対象となる口紅の200s-1のずり速度下での第1法線応力差N1aの値は、N1a<1000であることが好ましい。
特に、評価の対象となる口紅の200s-1のずり速度下での第1法線応力差N1aの値が、210<N1a<980であると、糸引きが生じることを一層防止しつつ、上述した使用感とその持続性を高めることができるので好ましい。
評価の精度を一層高める観点から、使用感とその持続性の評価は、上述した200s-1のずり速度下での第1法線応力差N1aの値に基づいて行うことに加え、400s-1のずり速度下で行うことが好ましい。この場合、400s-1のずり速度下での第1法線応力差N1bの値がN1b>500である口紅は、使用感である滑らか感や潤い感、及びその持続性が更に一層高いことが判明した。しかし、上述した200s-1のずり速度下での場合と同様に、400s-1のずり速度下での第1法線応力差N1bの値が高くなりすぎると、口紅の糸引きが起こりやすくなる。この観点から、評価の対象となる口紅の400s-1のずり速度下での第1法線応力差N1bの値は、N1b<1500であることが好ましい。
特に、評価の対象となる口紅の400s-1のずり速度下での第1法線応力差N1bの値が、510<N1b<1480であると、糸引きが生じることを更に一層防止しつつ、上述した使用感とその持続性を更に一層高めることができるので好ましい。
口紅の使用感とその持続性が高い、かつ特に糸引きが起こりにくい口紅であるとの評価を精度良く行う観点から、以下の評価基準(以下、基準1という)を採用することが更に好ましい。すなわち、ずり速度300s-1でずり応力の成長測定(サンプルに瞬間的に300s-1のずりを印加した際のずり応力や法線応力の応答を計測)を行ったとき、図2に示すように、測定開始から0.1〜10秒間において第1法線応力差N1cの値がピーク状の時間依存性を示さず、かつ10秒の時点での第1法線応力差N1cの値が900Paを超えない場合、特に895Paを超えない場合に、その口唇化粧料の使用感とその持続性が良好であり、かつ特に糸引きが起こりにくいと判断する。
上述の基準1において、ずり応力の成長測定を、ずり速度300s-1で行った理由は、測定が容易であること、及び糸引き性の有無を十分に判断できるデータが得られることによるものである。また、第1法線応力差N1cの値の時間依存性を、0.1〜10秒の間で評価した理由は、この時間内でのN1cの時間依存性パターンが糸引き性と関係していることを本発明者らが見いだしたことによるものである。
上述の基準1に代えて、口唇化粧料の使用感とその持続性が良く、かつ特に糸引きが起こりにくい口紅であるとの評価を精度良く行うための別の基準(以下、基準2という)を採用することも好ましい。すなわち、動的粘弾性測定において、ずり速度300s-1でずり応力の成長測定を行ったとき、図3に示すように、測定開始から0.1〜10秒間において第1法線応力差N1cの値がピーク状の時間依存性を示し、かつ10秒の時点での第1法線応力差N1cの値(以下、N110という)が、0.1〜10秒間でのピーク位置における第1法線応力差N1の値(以下、N1Pという)の1/100以下に減衰している場合、特に1/110以下に減衰している場合に、その口紅の使用感とその持続性が良好であり、かつ特に糸引きが起こりにくいと判断する。
上述の基準2において、ずり応力の成長測定を、ずり速度300s-1で行った理由、及び第1法線応力差N1cの値の時間依存性を、0.1〜10秒の間で評価した理由は、基準2と同様である。また、第1法線応力差N1cの値がピーク状の時間依存性を示すが、N110/N1Pが1/100以下であるということは、口唇化粧料塗膜の糸引き性が少ないことを意味している。
本発明に従い口唇化粧料のレオロジー測定を行う場合は、その性状に合わせて、測定に先立ち口唇化粧料を特定の方法で前処理する。この前処理とは、口唇化粧料が固形(たとえば、棒状)の場合には、図4に示すように、レオロジー測定に必要な量のサンプルを得るに足るだけの量の口唇化粧料1を2枚の平板2A、2B間に挟み、該平板の軸方向(図1中、矢印Pで示す)に、最大で150〜250Nの力を加えて押し潰し、次いで押し潰された状態の口唇化粧料1に所定の圧力を加えた状態下に平板2A、2Bを摺動させて口唇化粧料1を練る操作である。形状が棒状である場合には、所定厚さに輪切りにしたものを2枚の平板2A、2B間に挟む。また、口唇化粧料が液状である場合には、押し潰すのみの操作を行えばよい。
上述の前処理を行うことによって、口唇化粧料の使用感とその持続性の評価が容易になることを本発明者らは見いだした。この理由は必ずしも分明ではないが、ワックスとオイル成分とを主とする固形の口唇化粧料におけるカードハウス構造(口紅の一般的な構造で、鱗片状に成長したワックス結晶が、それぞれの鱗片状の結晶面部と端部がお互いにぶつかり合うように、空隙の多い三次元の固体構造体を形成し、その空隙内にオイルを内包している構造)や液状の口唇化粧料中のワックス結晶が前述の押し潰し操作及び練り操作によって破壊され、その破壊後の状態が、口唇化粧料の塗布後の状態に類似するからであると考えられる。
前記の処理に必要な口唇化粧料の量は本発明の評価方法に臨界的でなく、レオロジー測定を行うに足るだけのサンプルがとれる程度の量とすればよい。口唇化粧料を押し潰すときの力は、最大で150〜250Nであり、特に100〜230Nであることが、再現性の良好な結果が得られることから好ましい。平板2A,2Bとしては、ガラス製、プラスチック製、金属製のものなどを用いることができる。平板2A,2Bの面積は、サンプルの断面積よりも十分に大きなものとする。加圧手段としては、例えばプレス機や重りなどを用いることができるが、天秤等で加えた力をモニターしながら手で押してもよい。サンプルを押し潰す際の所要時間は、0.1〜10秒、特に0.3〜1秒程度とすることが、再現性の良好な結果が得られることから好ましい。押し潰しの際の環境は本発明の評価方法に臨界的でなく、口唇化粧料が使用される環境であればよい。一般には、通常の環境、例えば温度10〜25℃、湿度40〜70%RHとすることができる。
固形の口唇化粧料について行う押し潰し操作に引き続く練りの操作に関しては、該口唇化粧料に平均で65〜150N、好ましくは95〜140Nの力を加えた状態下に図5に示すように平板2A,2Bを水平方向に摺動させる。この範囲内の力を加えることで再現性の良好な結果が得られる。摺動速度は、平板2A,2B間の相対速度で0.5〜30mm/秒、特に1〜15mm/秒とすることが、再現性の良好な結果が得られることから好ましい。摺動による練りの環境は、押し潰しの環境と同様とすることができる。摺動距離は10〜30mm、特に15〜21mm、摺動回数は1〜20往復、特に1〜15往復とすることが、やはり再現性の良好な結果が得られることから好ましい。
このよう前処理された口唇化粧料は、直ちに、次に述べるレオロジー測定に供する必要がある。前処理された口唇化粧料を放置しておくと、油剤成分が染み出し、ワックスと油剤成分の分布の仕方が変化するため、測定の再現性が悪くなってしまう。
レオロジー測定には、測定時にサンプルに印加されるずり流動を短時間に再現性良く制御できる(たとえば、100ミリ秒以内に所望のずり速度に制御可能であること)タイプのレオメータが必要である。この目的のためにPhysica社のModular Compact Rheometer MCR500が好ましく用いられる。しかし、ずり流動を短時間に再現性良く制御できるレオメータであれば特にこの機種に限定されない。サンプルをマウントするフィクスチュアとしてはパラレルプレート又はコーンプレート(円錐−平板)が使用可能である。大変形下での法線応力を計測することを考慮し、本発明においてはコーンプレートを用いて測定を行う。コーンプレートとしては、その直径が10〜50mm、特に測定に必要なサンプル量を減らしかつ精度の良いデータを得る意味で17〜26mmのものを用いることが好ましい。コーンプレートの円錐角(円錐の頂点を通る軸線を含む平面に形成された三角形の頂点の角度)は、測定に必要なサンプル量を減らしかつ精度の良いデータを得る意味で0.5〜3度、特に1〜2度が好ましい。本発明の評価方法におけるレオロジー測定の環境は、温度30℃とすることが好ましい。これは、通常環境下における、実際に口唇化粧料が塗布された唇の温度に近い温度として選択されたものである。更には、25〜35℃、特に28〜33℃の範囲におけるレオロジー測定を行い、本発明の評価を行うことが、冬季から夏季までを考慮した評価となる点で好ましい。湿度は本発明の評価方法に臨界的でなく、通常の環境、例えば45〜70%RHとすることができる。
レオロジー測定は、ずり速度が103-1まで、特に600s-1までであれば、口唇化粧料の評価には十分である。
本発明の評価方法は、例えば新しい口唇化粧料の設計、開発、製品の製造工程における品質管理、製品の店頭でのデモンストレーション等に用いることができる。本発明の評価方法を例えば製品の品質管理に用いる場合には、製品の製造工程において製品をランダムに抜き取って本発明の評価方法に付し、所望の使用感とその持続性が得られる製品であるか否かを判断する。所望の使用感とその持続性が得られないと判断した場合には、使用感とその持続性を得るのに必要ないし有効な所定の成分の配合量を増加又は減少させたり、製造プロセス条件を変更させたりするといったフィードバック操作を行う。これによって、使用感とその持続性にばらつきの無い口唇化粧料製品を製造することができる。
口唇化粧料に使用感とその持続性を付与するためには、油剤中で物理的な相互作用により見かけの分子量が増したり三次元架橋構造を形成する高分子を配合することが有利であることが、本発明者らの検討の結果判明した。この手法を採用することで、口唇化粧料の塗膜に法線応力が発現し、使用者に塗膜の使用感を想起させることができる。特に、高分子として、数平均分子量が10万〜300万、特に15万〜150万の(スチレン−イソプレン)ジブロック共重合体若しくは水添(スチレン−イソプレン)ジブロック共重合体又は重量平均分子量が10万以上400万以下で、側鎖として−OCOR基を有し、Rが炭素数9〜21の直鎖又は分岐のアルキル基又はアルケニル基であるセルロース誘導体を用いることで、糸引きの発生を抑えつつ使用感とその持続性が良好な口紅を得ることができる。
上述のジブロック共重合体は、スチレンとイソプレンとのAB型ブロック共重合体又はこれを水添したものである。したがってABA型ブロック共重合体は、上述の共重合体に含まれない。また、上述のジブロック共重合体におけるスチレンとイソプレンとの割合(重量)は、10/90〜50/50、特に20/80〜40/60であることが好ましい。
上述の数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーション液体クロマトグラフィ(溶媒;THF、直鎖ポリスチレンを標準として定められた較正曲線、屈折率検出器)によって求められる。
上述のジブロック共重合体やセルロース誘導体は、炭化水素油及びエステル油から選ばれる液状油と配合されることが潤い感の向上の点で好ましい。液状油としては、流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン等の炭化水素油;ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸オレイル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、イソノナン酸イソトリデシル、リシノレイン酸オクチルドデシル、カカオ油、ひまし油、ホホバ油、オリーブ油、アボカド油、ヒマワリ油、マカデミアナッツ油等の油脂類等の脂肪酸エステル油が挙げられる。
上述のジブロック共重合体又はセルロース誘導体及び液状油を含む口唇化粧料においては、該口唇化粧料中に占めるジブロック共重合体又はセルロース誘導体の割合が0.1〜10重量%、特に1〜7重量%であることが好ましく、液状油の割合が30〜90重量%、特に40〜70重量%であることが好ましい。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。前記実施形態では棒状の口紅を測定対象としたが、口紅に限らず、例えば棒状のリップクリーム、リップグロス、リップライナーやファンデーション等を測定対象としてもよい。あるいは、棒状に限らず、液状の口唇化粧料(例えば、花王株式会社製のオーブ(登録商標)ルージュ モイスチュール)を測定対象としてもよい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
〔棒状口紅の製造方法〕
以下の表2に示す基剤原料(色材以外)を加熱融解して均一に混合した。次に、これに色材原料を加えて加熱状態でディスパーザーにて均一に分散させ、脱泡した後型に流し込んで成型し、棒状の口紅を得た。
〔実施例1〜6〕
以下の表1に示す口紅を厚さ3mmの輪切りにし、ガラス製の2枚の平板間に挟み、温度25℃・湿度55%RH環境下で、力が最大で200Nとなるように0.6秒間で押し潰した。各口紅の詳細は、実施例1〜5に関しては、表2に示すとおりである。実施例6に関しては、市販の口紅(花王株式会社製のオーブ(登録商標)ルージュ モイスチュール)を用いた。押し潰した口紅を、更に、平均で120Nの力を加えた状態下にガラス板を摺動させて練った。摺動速度は平板2A、2B間の相対速度で20mm/秒、摺動距離は18mm、摺動回数は10往復とした。その後直ちに、レオメータ Physica社のModular Compact Rheometer MCR500におけるコーンプレート(直径25mm、円錐角2度)間に挟み込みレオロジー測定を行った。測定条件は温度30℃・湿度55%RHであった。第1法線応力は、ずり速度0.001s-1から1000s-1までの間を対数軸で等分して19点測定した。測定のサンプリング時間は0.001s-1の測定については30s、1000s-1の測定については2sとし、その間の測定点については対数軸で等分した。得られた測定結果から、200s-1及び400s-1のずり速度下において測定された第1法線応力差N1を求めた。また、300s-1で応力成長測定を行ったときの第1法線応力差N1の時間依存性を観察した。更に、10秒の時点での第1法線応力差N1の値N110及びピーク位置における第1法線応力差N1の値N1Pを求めた。これらの結果を以下の表1に示す。
これとは別に、各実施例で測定対象とした口紅について、10人の専門パネラーに、口紅の使用感の持続性及び糸引き防止性を、以下の基準で官能評価させた。これらの結果も以下の表1に示す。
〔口紅の使用感の持続性(1): 滑らかさ〕
専門パネラーにより、口紅を塗布して数時間経過後の口紅塗膜の滑らかさの程度を官能により評価した
◎;10名中8名以上が滑らかと評価した。
○;10名中6〜7名が滑らかと評価した。
△;10名中4〜5名が滑らかと評価した。
×;10名中3名以下が滑らかと評価した。
〔口紅の使用感の持続性(2): 感触的な存在感〕
専門パネラーにより、口紅を塗布して数時間経過後の口紅塗膜の存在感を官能により評価した。
◎;10名中8名以上が存在すると評価した。
○;10名中6〜7名が存在すると評価した。
△;10名中4〜5名が存在すると評価した。
×;10名中3名以下が存在すると評価した。
〔糸引き防止性〕
口紅を手の親指と薬指の間に挟んで軽く練った後に、両指の間隔を広げた時に指の間で糸が切れるかどうかを評価した。
◎;全く糸を引かない。
○;角が立つが直ぐ切れる。
×;糸が切れない
Figure 0005072808
Figure 0005072808
表1に示す結果から明らかなように、第1法線応力差N1の値の大小が、口紅の使用感とその持続性の良否と相関していることが判る。特に第1法線応力差N1の値が特定の範囲内である場合には、口紅の使用感の持続性が高く評価されていることが判る。更に、第1法線応力差N1の値に時間依存性がない場合には、口紅の使用感の持続性が高く、特に糸引き発生が起こりづらいと評価されていることが判る。
〔実施例7〜9〕
市販されている3種類の外国ブランドの口紅を測定対象として、実施例1〜6と同様にして、第1法線応力差N1を求めた。得られた第1法線応力差N1とずり速度との関係の結果を図6(a)〜(c)に示す。実施例7で用いた口紅は、A社の3品である。実施例8はB社の、実施例9はC社の各1品である。実施例7〜9で用いた口紅について、実施例1〜6と同様の官能評価を行ったところ、第1法線応力差N1の値の大小が、口紅の使用感とその持続性の良否と相関していることが確認された。
口唇化粧料のずり速度と第1法線応力差N1との関係を示すグラフである。 応力成長測定を行ったときの、口唇化粧料の第1法線応力差N1の時間依存性を示すグラフである。 応力成長測定を行ったときの、口唇化粧料の第1法線応力差N1の時間依存性を示す別のグラフである。 測定対象の口唇化粧料を押し潰す状態を示す模式図である。 押し潰した後の口唇化粧料を摺動によって練る状態を示す模式図である。 図6(a)〜(c)は実施例7〜9で測定した口紅のずり速度と第1法線応力差N1との関係を示すグラフである。
符号の説明
1 口唇化粧料(口紅)
2A,2B 平板

Claims (7)

  1. 口唇化粧料のレオロジー測定から得られる第1法線応力差の値に基づき該口唇化粧料の使用感の良否を評価する方法であって、
    200s -1 のずり速度下において測定された第1法線応力差N1aの値が200Pa<N1a<1000Paである場合に、口唇化粧料の使用感が良好であると判断する評価方法。
  2. 400s-1のずり速度下において測定された第1法線応力差N1bの値が500Pa<N1b<1500Paである場合に、口唇化粧料の使用感が良好であると判断する請求項記載の評価方法。
  3. 前記口唇化粧料について、300s-1で応力成長測定を行ったとき、測定開始から0.1〜10秒間において第1法線応力差N1cの値がピーク状の時間依存性を示さず、かつ10秒の時点での第1法線応力差N1cの値が900Paを超えない場合に、口唇化粧料の使用感が良好であると判断する請求項1又は2記載の評価方法。
  4. 前記口唇化粧料について、300s-1で応力成長測定を行ったとき、測定開始から0.1〜10秒間において第1法線応力差N1cの値がピーク状の時間依存性を示し、かつ10秒の時点での第1法線応力差N1cの値が、0.1〜10秒間でのピーク位置における第1法線応力差N1cの値の1/100以下に減衰している場合に、口唇化粧料の使用感が良好であると判断する1又は2記載の評価方法。
  5. 前記使用感の良否を潤い感を基準として評価する、請求項1ないし4のいずれかに記載の評価方法。
  6. 前記使用感の良否を滑らか感を基準として評価する、請求項1ないし4のいずれかに記載の評価方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の評価方法に基づいて使用感が良好である口紅を設計する方法。
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