以下、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置について、図面を用いて説明する。
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態におけるパネル10の構造を示す分解斜視図である。ガラス製の前面板21上には、走査電極22と維持電極23とからなる表示電極対28が複数形成されている。そして走査電極22と維持電極23とを覆うように誘電体層24が形成され、その誘電体層24上に保護層25が形成されている。背面板31上にはデータ電極32が複数形成され、データ電極32を覆うように誘電体層33が形成され、さらにその上に井桁状の隔壁34が形成されている。そして、隔壁34の側面および誘電体層33上には赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各色に発光する蛍光体層35が設けられている。
これら前面板21と背面板31とは、微小な放電空間をはさんで表示電極対28とデータ電極32とが交差するように対向配置され、その外周部をガラスフリット等の封着材によって封着されている。そして放電空間には、例えばネオンとキセノンの混合ガスが放電ガスとして封入されている。放電空間は隔壁34によって複数の区画に仕切られており、表示電極対28とデータ電極32とが交差する部分に放電セルが形成されている。そしてこれらの放電セルが放電、発光することにより画像が表示される。
なお、パネルの構造は上述したものに限られるわけではなく、例えばストライプ状の隔壁を備えたものであってもよい。
図2は、本発明の実施の形態におけるパネル10の電極配列図である。パネル10には、行方向に長いn本の走査電極SC1〜SCn(図1の走査電極22)およびn本の維持電極SU1〜SUn(図1の維持電極23)が配列され、列方向に長いm本のデータ電極D1〜Dm(図1のデータ電極32)が配列されている。そして、1対の走査電極SCi(i=1〜n)および維持電極SUiと1つのデータ電極Dj(j=1〜m)とが交差した部分に放電セルが形成され、放電セルは放電空間内にm×n個形成されている。
次に、パネル10を駆動するための駆動電圧波形とその動作について説明する。プラズマディスプレイ装置1は、サブフィールド法、すなわち1フィールド期間を複数のサブフィールドに分割し、サブフィールド毎に各放電セルの発光・非発光を制御することによって階調表示を行う。それぞれのサブフィールドは、例えば、初期化期間、書込み期間および維持期間を有する。
初期化期間では初期化放電を発生し、続く書込み放電に必要な壁電荷を各電極上に形成する。加えて、放電遅れを小さくし書込み放電を安定して発生させるためのプライミング(放電のための起爆剤=励起粒子)を発生させるという働きを持つ。このときの初期化動作には、全ての放電セルで初期化放電を発生させる初期化動作(以下、「全セル初期化動作」と略記する)と、1つ前のサブフィールドで維持放電を行った放電セルで初期化放電を発生させる初期化動作(以下、「選択初期化動作」と略記する)とがある。
書込み期間では、後に続く維持期間において発光させるべき放電セルで選択的に書込み放電を発生し壁電荷を形成する。そして維持期間では、輝度重みに比例した数の維持パルスを表示電極対28に交互に印加して、書込み放電を発生した放電セルで維持放電を発生させて発光させる。このときの比例定数を輝度倍率と呼ぶ。なお、サブフィールド構成の詳細については後述することとし、ここではサブフィールドにおける駆動電圧波形とその動作について説明する。
図3は、本発明の実施の形態におけるパネル10の各電極に印加する駆動電圧波形図である。図3には、全セル初期化動作を行うサブフィールドと選択初期化動作を行うサブフィールドとを示している。
まず、全セル初期化動作を行うサブフィールドについて説明する。
初期化期間前半部では、データ電極D1〜Dm、維持電極SU1〜SUnにそれぞれ0(V)を印加し、走査電極SC1〜SCnには、維持電極SU1〜SUnに対して放電開始電圧以下の電圧Vi1から、放電開始電圧を超える電圧Vi2に向かって緩やかに上昇する傾斜波形電圧を印加する。
この傾斜波形電圧が上昇する間に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUn、データ電極D1〜Dmとの間でそれぞれ微弱な初期化放電が起こる。そして、走査電極SC1〜SCn上部に負の壁電圧が蓄積されるとともに、データ電極D1〜Dm上部および維持電極SU1〜SUn上部には正の壁電圧が蓄積される。ここで、電極上部の壁電圧とは電極を覆う誘電体層上、保護層上、蛍光体層上等に蓄積された壁電荷により生じる電圧を表す。
初期化期間後半部では、維持電極SU1〜SUnに正の電圧Ve1を印加し、走査電極SC1〜SCnには、維持電極SU1〜SUnに対して放電開始電圧以下となる電圧Vi3から放電開始電圧を超える電圧Vi4に向かって緩やかに下降する傾斜波形電圧を印加する。この間に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUn、データ電極D1〜Dmとの間でそれぞれ微弱な初期化放電が起こる。そして、走査電極SC1〜SCn上部の負の壁電圧および維持電極SU1〜SUn上部の正の壁電圧が弱められ、データ電極D1〜Dm上部の正の壁電圧は書込み動作に適した値に調整される。以上により、全ての放電セルに対して初期化放電を行う全セル初期化動作が終了する。
続く書込み期間では、維持電極SU1〜SUnに電圧Ve2を、走査電極SC1〜SCnに電圧Vcを印加する。
次に、1行目の走査電極SC1に負の走査パルス電圧Vaを印加するとともに、データ電極D1〜Dmのうち1行目に発光させるべき放電セルのデータ電極Dk(k=1〜m)に正の書込みパルス電圧Vdを印加する。このときデータ電極Dk上と走査電極SC1上との交差部の電圧差は、外部印加電圧の差(Vd−Va)にデータ電極Dk上の壁電圧と走査電極SC1上の壁電圧の差とが加算されたものとなり放電開始電圧を超える。そして、データ電極Dkと走査電極SC1との間および維持電極SU1と走査電極SC1との間に書込み放電が起こり、走査電極SC1上に正の壁電圧が蓄積され、維持電極SU1上に負の壁電圧が蓄積され、データ電極Dk上にも負の壁電圧が蓄積される。
このようにして、1行目に発光させるべき放電セルで書込み放電を起こして各電極上に壁電圧を蓄積する書込み動作が行われる。一方、書込みパルス電圧Vdを印加しなかったデータ電極D1〜Dmと走査電極SC1との交差部の電圧は放電開始電圧を超えないので、書込み放電は発生しない。以上の書込み動作をn行目の放電セルに至るまで行い、書込み期間が終了する。
なお、走査パルス電圧Vaのパルス幅および書込みパルス電圧Vdのパルス幅は実質的に等しく、以下、それらのパルス幅を総称して「書込み周期」と記す。
また、本実施の形態では、書込み期間の後半でこの書込み周期を延長する制御を行っている。図4は、本発明の実施の形態における書込み期間の詳細を示した波形図である。図4に示すように、本実施の形態では、第1行目から第n/2行目までの書込み周期をTw1とし、第n/2+1行目から第n行目までをTw1よりも書込み周期を延長したTw2としている。したがって、書込み期間の前半は(Tw1×n/2)μsecとなり、書込み期間の後半は(Tw2×n/2)μsecとなる。なお、本実施の形態では、Tw1を1.3μsec、Tw2を1.5μsec、nを768としており、書込み期間の前半は約499μsec、書込み期間の後半は約576μsecである。ただし、本実施の形態は何らこれらの数値に限定されるものではなく、パネルの特性やプラズマディスプレイ装置の仕様等に合わせて適宜最適な値に設定することが望ましい。
そして、本実施の形態では、この書込み周期を延長する制御を、サブフィールドの輝度重みに応じて行っており、輝度重みの最も大きいサブフィールドを含む第7SF〜第10SFにおいてのみこの書込み周期を延長する。さらに、本実施の形態においては、それらの制御をパネルの温度にもとづいて行っており、パネルの温度が低温または高温のときにのみこの書込み周期の延長を行う。すなわち、パネルの温度が低温または高温のときに、第7SF〜第10SFにおいて書込み期間の後半の書込み周期を書込み期間の前半の書込み周期よりも延長する。これによりパネルの温度が低温または高温であっても、書込みに必要な電圧を増大させることなく安定した書込み放電を発生させている。なお、これらの動作の詳細については後述する。
続く維持期間では、まず走査電極SC1〜SCnに正の維持パルス電圧Vsを印加するとともに維持電極SU1〜SUnに0(V)を印加する。すると書込み放電を起こした放電セルでは、走査電極SCi上と維持電極SUi上との電圧差が維持パルス電圧Vsに走査電極SCi上の壁電圧と維持電極SUi上の壁電圧との差が加算されたものとなり放電開始電圧を超える。
そして、走査電極SCiと維持電極SUiとの間に維持放電が起こり、このとき発生した紫外線により蛍光体層35が発光する。そして走査電極SCi上に負の壁電圧が蓄積され、維持電極SUi上に正の壁電圧が蓄積される。さらにデータ電極Dk上にも正の壁電圧が蓄積される。書込み期間において書込み放電が起きなかった放電セルでは維持放電は発生せず、初期化期間の終了時における壁電圧が保たれる。
続いて、走査電極SC1〜SCnには0(V)を、維持電極SU1〜SUnには維持パルス電圧Vsをそれぞれ印加する。すると、維持放電を起こした放電セルでは、維持電極SUi上と走査電極SCi上との電圧差が放電開始電圧を超えるので再び維持電極SUiと走査電極SCiとの間に維持放電が起こり、維持電極SUi上に負の壁電圧が蓄積され走査電極SCi上に正の壁電圧が蓄積される。以降同様に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとに交互に輝度重みに輝度倍率を乗じた数の維持パルスを印加し、表示電極対28の電極間に電位差を与えることにより、書込み期間において書込み放電を起こした放電セルで維持放電が継続して行われる。
そして、維持期間の最後には走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとの間にいわゆる細幅パルス状の電圧差を与えて、データ電極Dk上の正の壁電圧を残したまま、走査電極SCiおよび維持電極SUi上の壁電圧を消去している。具体的には、維持電極SU1〜SUnを一旦0(V)に戻した後、走査電極SC1〜SCnに維持パルス電圧Vsを印加する。すると、維持放電を起こした放電セルの維持電極SUiと走査電極SCiとの間で維持放電が起こる。そしてこの放電が収束する前、すなわち放電で発生した荷電粒子が放電空間内に十分残留している間に維持電極SU1〜SUnに電圧Ve1を印加する。これにより維持電極SUiと走査電極SCiとの間の電圧差が(Vs−Ve1)の程度まで弱まる。すると、データ電極Dk上の正の壁電荷を残したまま、走査電極SC1〜SCn上と維持電極SU1〜SUn上との間の壁電圧はそれぞれの電極に印加した電圧の差(Vs−Ve1)の程度まで弱められる。以下、この放電を「消去放電」と呼ぶ。
このように、最後の維持放電、すなわち消去放電を発生させるための電圧Vsを走査電極SC1〜SCnに印加した後、表示電極対28の電極間の電位差を緩和するための電圧Ve1を維持電極SU1〜SUnに印加する。こうして維持期間における維持動作が終了する。
次に、選択初期化動作を行うサブフィールドの動作について説明する。
選択初期化期間では、維持電極SU1〜SUnに電圧Ve1を、データ電極D1〜Dmに0(V)をそれぞれ印加したまま、走査電極SC1〜SCnに電圧Vi3’から電圧Vi4に向かって緩やかに下降する傾斜波形電圧を印加する。
すると前のサブフィールドの維持期間で維持放電を起こした放電セルでは微弱な初期化放電が発生し、走査電極SCi上および維持電極SUi上の壁電圧が弱められる。またデータ電極Dkに対しては、直前の維持放電によってデータ電極Dk上に十分な正の壁電圧が蓄積されているので、この壁電圧の過剰な部分が放電され、書込み動作に適した壁電圧に調整される。
一方、前のサブフィールドで維持放電を起こさなかった放電セルについては放電することはなく、前のサブフィールドの初期化期間終了時における壁電荷がそのまま保たれる。このように選択初期化動作は、直前のサブフィールドの維持期間で維持動作を行った放電セルに対して選択的に初期化放電を行う動作である。
続く書込み期間の動作は全セル初期化動作を行うサブフィールドの書込み期間の動作と同様であるため説明を省略する。続く維持期間の動作も維持パルスの数を除いて同様である。
次に、サブフィールド構成について説明する。図5は、本発明の実施の形態におけるサブフィールド構成を示す図である。図5はサブフィールド法における1フィールド間の駆動波形を略式に記したもので、それぞれのサブフィールドの駆動波形は図3の駆動波形と同等なものである。
本実施の形態においては、1フィールドを10のサブフィールド(第1SF、第2SF、・・・、第10SF)に分割し、各サブフィールドはそれぞれ(1、2、3、6、12、22、37、45、57、71)の輝度重みを持つ。また各サブフィールドの維持期間においては、それぞれのサブフィールドの輝度重みに所定の輝度倍率を乗じた数の維持パルスが表示電極対28のそれぞれに印加される。そして、サブフィールドのそれぞれは、初期化期間に全セル初期化動作を行うサブフィールド(以下、「全セル初期化サブフィールド」と略記する)か、初期化期間に選択初期化動作を行うサブフィールド(以下、「選択初期化サブフィールド」と略記する)かのどちらかであり、本実施の形態では、第1SFを全セル初期化サブフィールドとし、第2SF〜第10SFを選択初期化サブフィールドとする。しかし、本実施の形態は、サブフィールド数や各サブフィールドの輝度重みが上記の値に限定されるものではなく、また、画像信号等にもとづいてサブフィールド構成を切換える構成であってもよい。
そして、上述したように、本実施の形態では、書込み期間の後半で書込み周期を延長する制御をサブフィールドの輝度重みに応じて行い、輝度重みの最も大きい第10SFを含む第7SF〜第10SFにおける書込み期間の後半において、書込み周期を延長する。
次に、本実施の形態におけるパネルの温度にもとづく書込み周期を延長する制御の詳細について説明する。なお、本実施の形態では、後述するように、温度センサが検出するパネル10周辺の温度、すなわち筐体内部の温度と所定のしきい値との比較によってパネル10の温度(以下、「パネル温度」と表記する)を推定している。
図6は、本発明の実施の形態におけるパネル温度と書込み周期の関係を示す図である。この図に示すように、パネル温度が常温のとき、すなわちパネル温度が低温しきい値(30℃)以上高温しきい値(60℃)未満のときには、全てのサブフィールド(第1SF〜第10SF)における全ての放電セル(1行目〜n行目)において、書込み周期を1.3μsecとする。また、パネル温度が低温のとき、すなわちパネル温度が低温しきい値(30℃)未満のとき、およびパネル温度が高温のとき、すなわちパネル温度が高温しきい値(60℃)以上のときには、第1SF〜第6SFにおける全ての放電セル(1行目〜n行目)と、第7SF〜第10SFにおける1行目〜n/2行目の放電セルとにおいて書込み周期を1.3μsecとし、第7SF〜第10SFにおける(n/2+1)行目〜n行目の放電セルにおいて書込み周期を1.5μsecする。
このように、本実施の形態では、サブフィールド毎の輝度重みに応じて、輝度重みの最も大きい第10SFを含む第7SF〜第10SFにおける書込み期間の後半で書込み周期を延長する制御を行う。また、それ以外の書込み期間、すなわち、第1SF〜第6SFの書込み期間および第7SF〜第10SFの書込み期間の前半では、書込み周期の延長を行わないようにする。さらに、それらの制御をパネルの温度にもとづいて行い、パネルの温度が低温または高温のときに上述した書込み周期の延長を行う。これにより、パネルの温度が低温または高温であっても、書込みに必要な電圧を増大させることなく安定した書込み放電を発生させることを可能にしている。
次に、本実施の形態における制御方法により書込みに必要な電圧を増大させることなく安定した書込み放電を発生させることができる理由について説明する。本発明者は、正常な書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧Vaが書込み周期でどのように変化するかを調べる実験を行った。図7は、書込み周期を延長する放電セルの行を変化させた場合の、書込み周期と走査パルス電圧との関係を示す図であり、縦軸は走査パルス電圧(振幅)を示し、横軸は延長した書込み周期を示している。
まず、1行目からn行目までの全ての放電セルに対して書込み周期を延長した場合について説明する。図7の一番上のグラフに示すように、書込み周期を1.3μsecから1.35μsecに延長すると、走査パルス電圧Vaは一旦減少するが、書込み周期を1.35μsecからさらに1.55μsecに延長すると走査パルス電圧Vaは逆に上昇することがわかった。
これは、次のような理由によるものと思われる。書込み周期を延長すると書込み放電のための電圧印加期間が長くなるため、放電遅れの影響を吸収することができ、走査パルス電圧Vaが一旦減少する。しかし、書込み周期をさらに延長すると、その分、各行への書込みが行われる度に放電セルに書込みパルス電圧Vdが印加される時間が長くなり、暗電流が発生する時間も長くなる。そのため、書込み期間の後半で書込みがなされる放電セルでは、暗電流が増加し、壁電荷の電荷抜けが生じる。そして、電荷抜けが生じた放電セルで正常な書込み放電を発生させるために、走査パルス電圧Vaが上昇すると考えることができる。図7に示した実験では、書込み周期を0.05μsec以上延長させてしまうと、放電遅れの影響を吸収することによる走査パルス電圧Vaの低減効果よりも、電荷抜けによる走査パルス電圧Vaの上昇が上回ってしまったためにこのような結果が得られたものと考えられる。
次に、書込み周期の延長を開始する行を1行目、(n/6+1)行目、(n/3+1)行目、(n/2+1)行目と変更した場合に、正常な書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧Vaがどのように変化するかを調べた。その結果、例えば図7の上から2番目のグラフに示すように、(n/6+1)行目からn行目までの放電セルの書込み周期を延長した場合には、書込み周期を1.45μsecに延長することで走査パルス電圧Vaをおよそ106(V)に低減することができた。また、(n/3+1)行目からn行目までの放電セルの書込み周期を延長した場合には、書込み周期を1.5μsecに延長することで走査パルス電圧Vaをおよそ104(V)まで低減することができた。さらに、(n/2+1)行目からn行目までの放電セルの書込み周期を延長した場合には、書込み周期を1.55μsecに延長することで走査パルス電圧Vaをおよそ103(V)まで低減することができた。
このように、書込み期間の前半では書込み周期を延長せず、書込み期間の後半で書込み周期の延長を行うことで、書込み期間の延長時間を抑えるとともに、正常な書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧Vaを低減することができるという結果が実験により得られた。
なお、この実験は表示電極対数768の42インチのパネルを使用して行っており、上述した数値はそのパネルにもとづくものであって、本実施の形態は何らこれらの数値に限定されるものではない。
このように、この実験からは、書込み周期の延長を開始する行と書込み周期の適切な延長時間とには関係があり、書込み周期を延長する放電セルを制限して書込み周期の延長を開始する行を遅くすることで、正常な書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧を低減できることがわかった。
次に、本実施の形態において、書込み周期の延長を行うサブフィールドを制限した理由について説明する。比較的輝度重みが大きいサブフィールドでは維持放電の回数も多くなるため、維持放電において形成されるプライミングも比較的多くなる。プライミングの増加は暗電流の増加を招くため、書込み期間の後半で書込みがなされる放電セルでは、暗電流がさらに増加してしまい、その結果、壁電荷の電荷抜けが増えて書込み放電が不安定になってしまう。そのために、直前のサブフィールドが輝度重みの大きいサブフィールドの場合、続くサブフィールドでは書込み期間の後半で書込み周期を延長することが望ましい。逆に、直前のサブフィールドが比較的輝度重みが小さく維持期間が短いサブフィールドであれば、プライミングの発生量は比較的少ないため、続くサブフィールドでは壁電荷の電荷抜けも少なく、放電遅れも比較的少ないと考えられる。したがって、輝度重みの小さいサブフィールドに続くサブフィールドでは書込み周期の延長を行わなくてもよい。
これらの理由から、本実施の形態においては、少なくとも輝度重みの最も大きいサブフィールドを含む所定のサブフィールドにおいて、本実施の形態における好ましい例としては輝度重みの大きい方のサブフィールドから順に4つのサブフィールド、すなわち第7SF〜第10SFにおいて、書込み期間の後半で書込み周期を延長する制御を行う。
そして、本実施の形態においては、パネルの温度が低温または高温のときに上述した書込み周期の延長を行う。次に、このような制御にした理由について説明する。
放電特性はパネル温度に依存して変化し、放電遅れ、暗電流といった放電を不安定にする要素もパネル温度に依存して変化する。そこで、本発明者は、正常な書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧Vaがパネル温度でどのように変化するかを調べる実験を行った。図8は、本発明の実施の形態におけるパネル温度と走査パルス電圧との関係を示す図である。図8において、縦軸は走査パルス電圧Vaを表し、横軸はパネル温度を表す。この実験では、パネル温度が40℃付近にあるときに、正常な書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧Vaは最も小さくなった。そして、パネル温度がその温度、すなわち40℃より低くなると必要な走査パルス電圧Vaは上昇し、また、パネル温度がその温度より高くなっても必要な走査パルス電圧Vaは上昇した。これは、次のような理由によるものと思われる。
パネル温度が低温になると、プライミングまたは初期電子の減少に起因する放電遅れが大きくなると考えられる。一方、パネル温度が高温になると、プライミングや初期電子は多くなると考えられるが、暗電流も増え、電荷抜けが増加してしまう。これにより、電荷抜けに起因する放電遅れが大きくなる。いずれの場合も走査パルス電圧Vaを大きくすることで放電が安定するため、パネル温度が低温、あるいは高温のいずれの場合にも、必要な走査パルス電圧Vaは大きくなると考えられる。
なお、この実験には上述の実験に用いたパネルと同様のパネルを使用しており、上述した温度はそのパネルにもとづくものであって、本実施の形態は何らこれらの数値に限定されるものではない。
そして、図7を用いて説明したように、書込み周期を延長することで正常な書込み放電を発生させるために必要な走査パルス電圧Vaを低減することが可能である。したがって、これらのことから、本実施の形態では、パネルの温度が低温または高温のときに、第7SF〜第10SFにおいて書込み期間の後半の書込み周期を書込み期間の前半の書込み周期よりも延長する。これによりパネルの温度が低温または高温であっても、書込みに必要な電圧を増大させることなく安定した書込み放電の発生を実現している。
また、本実施の形態においては、書込み周期の延長による書込み期間の延長時間を、輝度倍率を下げて維持期間を短縮することで補っている。これによりサブフィールド数を変えることなく書込み周期の延長を実現しているが、このとき、急激な明るさの変化が発生しないように徐々に輝度倍率を変化させている。この様子を図面を用いて説明する。
図9は、本発明の実施の形態における輝度倍率の制御の様子を示した概略図である。図9において、縦軸は輝度倍率を表し、横軸は時間を表す。また、図9(a)は書込み周期を延長するときの動作を示した図であり、図9(b)は書込み周期を通常に戻すときの動作を示した図である。図9(a)に示すように、パネル温度が常温のときには、例えば輝度倍率を4倍にして通常の駆動を行う。そして、パネル温度が低温しきい値以上から低温しきい値未満になったと判断されたとき、あるいはパネル温度が高温しきい値未満から高温しきい値以上になったと判断されたときには、すぐに書込み周期を延長するのではなく、まずその直後の時刻t1から輝度倍率変更期間後の時刻t2までの間で輝度倍率を4倍から3倍へと徐々に下げていく。そして、輝度倍率が3倍になった時刻t2以降で速やかに書込み周期を1.3μsecから1.5μsecに延長する。逆に、パネル温度が低温しきい値未満から低温しきい値以上になったと判断されたとき、あるいはパネル温度が高温しきい値以上から高温しきい値未満になったと判断されたときには、図9(b)に示すように、その直後の時刻t3で書込み周期を1.5μsecから1.3μsecに短縮し、時刻t3から輝度倍率変更期間後の時刻t4までの間で輝度倍率を3倍から4倍へと徐々に上げていく。こうして、書込み周期の延長および短縮によって輝度倍率を切換える際に、急激な明るさの変化が発生しないようにしている。
図10は、本発明の実施の形態におけるパネルを駆動するための駆動回路の回路ブロック図である。プラズマディスプレイ装置1は、パネル10、画像信号処理回路51、データ電極駆動回路52、走査電極駆動回路53、維持電極駆動回路54、タイミング発生回路55、パネル温度判断部である温度推定回路58および各回路ブロックに必要な電源を供給する電源回路(図示せず)を備えている。
画像信号処理回路51は、入力された画像信号sigをサブフィールド毎の発光・非発光を示す画像データに変換する。データ電極駆動回路52はサブフィールド毎の画像データを各データ電極D1〜Dmに対応する信号に変換し各データ電極D1〜Dmを駆動する。
温度推定回路58は、温度を検出するために用いられる熱電対等の一般に知られた素子からなる温度センサ81を有し、温度センサ81で検出されたパネル10周辺の温度、すなわち筐体内部の温度からパネル10のパネル温度を算出する。パネル温度の算出方法としては、例えば、温度センサ81が検出した温度にあらかじめ設定した補正値を加算する方法を用いることができる。そして、算出したパネル温度をあらかじめ定めた高温しきい値および低温しきい値と比較してパネル温度が常温か高温か低温かを判断し、その判断の結果が切換わったときにそれを表す信号をタイミング発生回路55に出力する。具体的には、パネル温度が常温から高温になったと判断したとき、すなわちパネル温度が高温しきい値未満から高温しきい値以上になったときと、パネル温度が高温から常温になったと判断したとき、すなわちパネル温度が高温しきい値以上から高温しきい値未満になったときと、パネル温度が常温から低温になったと判断したとき、すなわちパネル温度が低温しきい値以上から低温しきい値未満になったときと、パネル温度が常温から低温になったと判断したとき、すなわちパネル温度が低温しきい値未満から低温しきい値以上になったときとに、それぞれ判断の結果が切換ったことを示す信号をタイミング発生回路55に出力する。
なお、本実施の形態では、高温しきい値を60℃、低温しきい値を30℃に設定しているが、何らこれらの数値に限定されるものではなく、プラズマディスプレイ装置の仕様、パネルの特性、駆動回路の特性等にもとづいて適宜最適な値に設定することが望ましい。
タイミング発生回路55は水平同期信号H、垂直同期信号Vおよび温度推定回路58が算出したパネル温度をもとにして各回路ブロックの動作を制御する各種のタイミング信号を発生し、それぞれの回路ブロックへ供給する。そして、上述したように、本実施の形態においては、書込み期間において走査電極SC1〜SCnに印加する走査パルス電圧のパルス幅およびデータ電極D1〜Dmに印加する書込みパルス電圧のパルス幅を、パネル温度にもとづいて制御しており、それに応じたタイミング信号を走査電極駆動回路53およびデータ電極駆動回路52に出力する。これにより、書込み動作を安定させる制御を行う。
走査電極駆動回路53は、書込み期間において走査電極SC1〜SCnに印加する走査パルス電圧波形を発生するための走査パルス発生回路400を有し、タイミング信号にもとづいて各走査電極SC1〜SCnをそれぞれ駆動する。維持電極駆動回路54は、タイミング信号にもとづいて維持電極SU1〜SUnを駆動する。
次に、走査電極駆動回路53の詳細とその動作について説明する。図11は、本発明の実施の形態における走査電極駆動回路53の回路図である。走査電極駆動回路53は、維持パルスを発生させる維持パルス発生回路100、初期化波形を発生させる初期化波形発生回路300、走査パルスを発生させる走査パルス発生回路400を備えている。
維持パルス発生回路100は、走査電極22を駆動するときの電力を回収して再利用するための電力回収回路110と、走査電極22を電圧Vsにクランプするためのスイッチング素子SW1と、走査電極22を0(V)にクランプするためのスイッチング素子SW2とを有し、維持パルス電圧Vsを発生させる。
初期化波形発生回路300は、ミラー積分回路310、320を備え、上述した初期化波形を発生させる。ミラー積分回路310は、FET、コンデンサ、抵抗等を有し、電圧Vrに依存した電圧Vi2までランプ状に緩やかに上昇する傾斜波形電圧を発生する。ミラー積分回路320は、FET、コンデンサ、抵抗等を有し、負の電圧Vaに依存した電圧Vi4までランプ状に緩やかに低下する傾斜波形電圧を発生する。
走査パルス発生回路400は、スイッチング素子S31、S32と、ScanICと、制御回路401と、逆流防止用のダイオードD31と、コンデンサC31とを備え、主通電ライン(維持パルス発生回路100、初期化波形発生回路300、走査パルス発生回路400が共通して接続された通電ライン)に印加された電圧と、主通電ラインの電圧に電圧Vscnを重畳した電圧とのいずれか一方を選択して走査電極22に印加する。例えば、書込み期間では、主通電ラインの電圧を負の電圧Vaに維持し、ScanICに入力される負の電圧Vaと、負の電圧Vaに電圧Vscnを重畳した電圧Vcとを切換えて出力することで、上述した負の走査パルス電圧Vaを発生させる。そして、この切換えの時間を制御することで走査パルス電圧Vaのパルス幅を変更することができる。
なお、走査パルス発生回路400は、初期化期間では初期化波形発生回路300の電圧波形を、維持期間では維持パルス発生回路100の電圧波形をそのまま出力する。また、上述したスイッチング素子S31、S32およびScanICはスイッチング動作を行う一般に知られたMOSFET等の素子からなり、タイミング発生回路55から出力されるタイミング信号によって制御される制御回路401からの制御信号にもとづき切換えが制御される。
なお、図示はしていないが、維持電極駆動回路54の維持パルス発生回路は維持パルス発生回路100と同様の構成であり、維持電極23を駆動するときの電力を回収して再利用するための電力回収回路と、維持電極23を電圧Vsにクランプするためのスイッチング素子と、維持電極23を0(V)にクランプするためのスイッチング素子とを有し、維持パルス電圧Vsを発生させる。
図12は、本発明の実施の形態におけるデータ電極駆動回路52の回路図である。データ電極駆動回路52は、スイッチング素子Q1D1〜Q1Dmおよびスイッチング素子Q2D1〜Q2Dmを有している。そして、スイッチング素子Q1D1〜Q1Dmを介して各データ電極32をそれぞれ独立して電圧Vdにクランプする。また、スイッチング素子Q2D1〜Q2Dmを介して各データ電極32をそれぞれ独立して接地し、0(V)にクランプする。このようにしてデータ電極駆動回路52はデータ電極32をそれぞれ独立に駆動し、データ電極32に正の書込みパルス電圧Vdを印加する。そして、このスイッチング素子Q1D1〜Q1Dmおよびスイッチング素子Q2D1〜Q2Dmの切換えの時間を制御することで書込みパルス電圧Vdのパルス幅を変更することができる。
なお、本実施の形態では、温度センサ81が検出した温度にあらかじめ設定した補正値を加算し、それをパネル温度として高温しきい値および低温しきい値と比較する構成を説明したが、何らこの構成に限定されるものではない。図13は、本発明の実施の形態におけるパネル温度推定方法の他の例を示した図である。例えば、図面に示したように、温度センサ81で検出した温度に、高温補正値を加算した温度を最高推定温度、低温補正値を減算した温度を最低推定温度とし、最高推定温度と高温しきい値との比較、および最低推定温度と低温しきい値との比較を行い、最高推定温度が高温しきい値以上になったときを高温、最低推定温度が低温しきい値未満になったときを低温、最高推定温度が高温しきい値未満であって最低推定温度が低温しきい値以上になったときを常温と判断する構成としてもよい。あるいは、プラズマディスプレイ装置への通電時間やパネルに表示している絵柄に応じてそれらの補正値を変える構成であってもよい。
なお、本実施の形態では、高温しきい値と低温しきい値とをそれぞれ1つずつ設定した例を説明したが、何らこの構成に限定されるものではない。図14は、本発明の実施の形態におけるパネル温度判定方法の他の例を示した図である。例えば、図面に示したように、高温しきい値と低温しきい値とそれぞれ2つずつ設定し、例えば、パネル温度が高い方の低温しきい値(30℃)以上であって低い方の高温しきい値(60℃)未満を常温とし、パネル温度が高い方の低温しきい値(30℃)未満かつ低い方の低温しきい値(10℃)以上のとき、およびパネル温度が低い方の高温しきい値(60℃)以上かつ高い方の高温しきい値(70℃)未満のときには、所定のサブフィールド(第7SF〜第10SF)における所定の放電セル((n/2+1)行目〜n行目の放電セル)において書込み周期を1.4μsecとし、パネル温度が低い方の低温しきい値(10℃)未満のとき、およびパネル温度が高い方の高温しきい値(70℃)以上のときには、所定のサブフィールド(第7SF〜第10SF)における所定の放電セル((n/2+1)行目〜n行目の放電セル)において書込み周期を1.5μsecとする構成としてもよい。
また、本実施の形態においては、パネル温度の判定の際にヒステリシス特性を持たせる構成としてもよい。図15は、本発明の実施の形態におけるパネル温度と高温しきい値との比較の一例を示す図である。上述したように、本実施の形態においては書込み周期の切換え時に、あわせて輝度倍率の切換えを行っている。したがって、図15(a)に示すようにパネル温度が高温しきい値をはさんで頻繁に変動すると輝度倍率も頻繁に変動し明るさの変化が目立ちやすくなる。そこで、図15(b)に示すように、2つの高温しきい値TH1、TH2を設け、常温から高温への判断に用いる高温しきい値TH1を、高温から常温への判断に用いる高温しきい値TH2よりも高く設定してヒステリシス特性を持たせる構成としてもよい。こうすることで、輝度倍率の頻繁な切換えを防ぐことが可能となる。このヒステリシス特性は、常温から低温への判断に用いる低温しきい値TL1を、低温から常温への判断に用いる低温しきい値TL2よりも低く設定することで、低温の判断についても同様とすることが可能である。
また、本実施の形態では、(n/2+1)行目〜n行目の放電セルにおいて書込み周期を切換える構成を説明したが、何らこの構成に限定されるものではなく、パネルの特性やプラズマディスプレイ装置の仕様等にあわせて、適宜最適な範囲に設定することが望ましい。あるいは、パネル温度に応じて書込み周期の切換えを開始する行を制御する構成としてもよい。
また、本実施の形態では、行電極を上から順に走査するいわゆるシングルスキャンの構成を例に説明を行ったが、例えば、パネルの表示面を上半分と下半分の2つの領域に分け、各領域における行電極をそれぞれ走査するいわゆるダブルスキャン、あるいはそれ以外のスキャン方式であっても、書込み期間の後半で書込み周期を延長させることで、上述と同様の効果を得ることができる。
なお、本実施の形態では、1つの温度センサ81をパネル10に対して離間して配置した構成を説明したが、例えば、複数の温度センサを用い、パネルの複数箇所の温度を検出しそれらの平均値を算出してパネル温度とする構成であってもかまわない。
なお、本実施の形態では、第1SFを全セル初期化サブフィールドとし第2SF〜第10SFを選択初期化サブフィールドとするサブフィールド構成を例に挙げて説明を行ったが、必ずしもこのサブフィールド構成に限定されるものではなく、例えば全てのサブフィールドを選択初期化サブフィールドとする等、これ以外のサブフィールド構成であってもかまわない。
なお、本実施の形態において用いた具体的な各数値は、単に一例を挙げたに過ぎず、パネルの特性やプラズマディスプレイ装置の仕様等に合わせて、適宜最適な値に設定することが望ましい。