JP5061264B1 - 小型姿勢センサ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 移動物体の独立な3軸上の角速度を計測する角速度センサ101、加速度センサ102、磁気センサ103と、角速度センサ101、加速度センサ102、及び磁気センサ103の計測値を基にクォータニオンの推定値を算出する演算処理部104とを備え、演算処理部104において、角速度データについて、バイアス誤差、スケールファクタ誤差、ミスアラインメント誤差、ノイズの要素を含む角速度センサ誤差とクォータニオンレベルの誤差を演算により求め、これらの値を用いて得られた拡張カルマンフィルタを用いて現在の姿勢を表すクォータニオン推定し、出力する小型姿勢センサを提供する。
【選択図】図1
Description
先ず、この説明で用いる座標系および各座標系上で表されるベクトルの表記方法についての定義を行う。ここで用いる座標系を図19に示す。ここで、図中のr-frame はReference frame (参照フレーム)といい、地上の任意の点を原点として、磁北をXr軸、重力方向をZr軸、XrZr平面の垂直方向をYr軸にとった座標系である。また、b-frame はBody frame (機体フレーム)といい、機体の重心を原点として、機体前方をXb軸、機体下方をZb軸、XbZb平面の垂直方向をYb軸にとった座標系である。ここで、三次元空間中の任意の幾何ベクトルをrとしたとき、rを各座標系上の代数ベクトルとして表したものをそれぞれrr,rbと定義する。また、r-frameに対する b-frameの姿勢を機体姿勢として定義する。
q=qo +q1i+q2j+q3k ・・・(1)
ただしここで、式中のi,j,kは虚数単位であり、それぞれ次式のような関係を満たしている。
i2=j2=k2=−1 ・・・(2)
ij=k, jk=i, ki=j ・・・(3)
V=[l m n]T
・・・(4)
ここで、V:ベクトル
(l2+m2+n2)1/2=1
・・・(5)
q+p=[qo+po q1+p1 q2+p2 q3+p3]T
・・・(7)
q−p=[qo−po q1−p1 q2−p2 q3−p3]T
・・・(8)
q*=[qo −q1 −q2 −q3]T
・・・(10)
いま、r-frame上の代数ベクトルrrからb-frame上の代数ベクトルrbへの座標変換は次式で表すことができる。
ただしここで、式中の(rb)qおよび(rr)qは三次元ベクトルをクォータニオン表記したものであり、それぞれ次式のように定義される。
ここでは、先行技術において開発されたMARGセンサのハードウェアの諸元と従来の機体姿勢推定アルゴリズムの概要およびその問題点について説明する。MARGセンサの諸元を表2に示す。
図1は本発明の第1の実施の形態に係る小型姿勢センサに備えられる各ハードウェア構成を示すブロック図である。小型姿勢センサ100は、移動物体の独立な3軸上の角速度を計測する角速度センサ101、移動物体の独立な3軸上の加速度を計測する加速度センサ102、移動物体の独立な3軸上の地磁気を計測する磁気センサ103、及び角速度センサ101、加速度センサ102、及び磁気センサ103の計測値を基にクォータニオンを算出する演算処理部104を備えている。この第1の実施の形態の小型姿勢センサ100は1入力1出力の線形システムに適用し、定常カルマンフィルタを構成するとともに、演算項目の中にジャイロセンサ(角速度センサ)の誤差を導入することにより、「カルマンゲイン」や「クォータニオン」の算出をより精密にすることができ、現実的な実装を可能にし、さらに、小型化及び実時間処理を可能とする。
プロセスモデルの構築
カルマンフィルタを構成するためには、システムのプロセスモデルが必要となる。以下では、本発明で対象とするシステムの離散時間プロセスモデルを導出する。先ず状態方程式を求める。式(19)の右辺において、機体角速度ωbはジャイロセンサから得ることができるが、ジャイロセンサや加速度センサといった慣性センサには様々な要因による誤差があることが知られている。より精度の高い推定を行うためにはこのような誤差も推定することが望ましいため、ジャイロセンサ誤差を状態量として導入する。いま、ジャイロセンサより得られた角速度をωmeasure =[ωx ωy ωz]T、ジャイロセンサの誤差をΔωb=[δωx δωy δωz]Tとすると、これらとωbとは以下のような関係となる。
ωmeasure =ωb+Δωb
・・・(22)
この式を式(19)に代入することで次式が得られる。
ジャイロセンサのバイアス誤差は経験的に次のようなダイナミクスを持つことが知られている。
先に示した式(31)、式(34)のような離散時間のプロセスモデルを得ることができた。しかし、両式はともに非線形方程式となっているため、線形カルマンフィルタアルゴリズムをそのまま適用することができない。このような場合、式(31)、式(34)を真値に対する推定誤差に関して線形化し、推定誤差を改めて状態量に選び、線形カルマンフィルタを適用して誤差推定カルマンフィルタを構成する方法と、非線形システムに線形カルマンフィルタを適用するための近似手法である拡張カルマンフィルタを構成するという2つの方法があるが、ここでは後者を選択した。以下では、拡張カルマンフィルタアルゴリズムについて説明を行う。いま、式(31)、式(34)のシステムに関して、tステップ目におけるxtの濾波推定値及び予備推定値を次のように表記したとき、
本発明の主目的である動的加速度環境下における姿勢誤差の低減化を実現するためには、観測ノイズの共分散行列Rtの決め方が重要になる。ここでは、Rtの値をシミュレーションにより決定する。先ず動的加速度による誤差が少なくなるようにRtの値を決定した。このときの値をR1とする。図4にR1によるシミュレーション結果を示す。図4(a)が姿勢を変動させたとき、図4(b)がセンサを水平に保った状態で、図19のb-frame上のXb軸方向、すなわちピッチ角度に大きな誤差が生じやすい方向に正弦波状の動的加速度を印加したときのシミュレーション結果である。また、それぞれ破線が従来のアルゴリズムによる結果、実線が拡張カルマンフィルタによる結果、点線がその際の真の姿勢値である。図4より、R1を用いると動的加速度による誤差は低減化するが、姿勢の追従が極端に遅くなってしまうことが分かる。一方、姿勢の追従を充分に速くなるようなRtの値をR2として、R2による結果を図5に示す。図5よりR2を用いると姿勢の追従はよくなるが、動的加速度誤差が低減化できないことが分かる。そこで、上述のR1,R2を用いてRtを次式のような関数とした。ただし、KRは適当なゲインである。また、Tに関してはシミュレーションを繰り返すことによって適当な値を決定した。この事例では、Tの値は11[s]となっている。
従来のアルゴリズムおよび本発明の拡張カルマンフィルタアルゴリズムをマイクロコンピュータ上に実装し、リアルタイムで姿勢・方位推定を行った結果を図10〜図13に示す。比較対象として、Crossbow社製の高精度姿勢センサAHRS400を選択した。このAHRS400は移動体に搭載することを目的とした姿勢センサであり、動的加速度を印加しても姿勢誤差が生じにくいという特徴を持っている。しかし、その重量は700(g)であり、MARGセンサの10倍以上となっている。本来であればAHRS400とMARGセンサをともに小型無人ヘリコプタ上のマウントに搭載し、飛行しつつ姿勢データの比較を行うことが望ましいが、AHRS400の重量の関係上それは難しいため、この実験では両方のセンサを同一マウント上に搭載した状態で、そのマウントを地上で動かすという試験方法をとった。ちなみに、比較を行いやすくするために、得られたクォータニオン推定値をオイラー角に変換した後にプロットしている。図10は、従来のアルゴリズムおよび本発明の拡張カルマンフィルタアルゴリズムをマイクロコンピュータ上に実装し、小型無人ヘリコプタの運動の際に発生する角速度を大きく上回るような角速度環境下で、ロール角についてリアルタイムで姿勢・方位推定を行った結果を示す図である。この図において、実線は拡張カルマンフィルタアルゴリズムによる方位推定結果を示し、細かい点線は従来のアルゴリズムによる方位推定結果を示す。また、粗い目の鎖線は上記高精度姿勢センサAHRS400による方位推定結果を示す。これらのグラフ図から、本発明の拡張カルマンフィルタアルゴリズムは高精度の姿勢・方位推定結果が得られることが分かる。
本発明の第2の実施の形態は、加速度環境下における高精度の姿勢・方位推定を実現するに当って、低周波数の加速度環境下での姿勢推定誤差の低減化を図るものである。
第1の実施の形態の方法においては、加速度環境下における高精度の姿勢・方位推定を或る程度は実現している。しかしながら、一定値に近い低周波数の加速度外乱が印加されると姿勢推定値がドリフトしてしまう。そこで、低周波数の加速度外乱をシステムの状態の一部として推定することで姿勢誤差を低減化する方法を以下に提案する。加速度外乱を推定するためのもう一つの手法として、カルマンフィルタの状態量に加速度外乱を含めることで、姿勢と加速度外乱を同時に推定する手法を提案する。移動や回転運動に伴って発生する加速度外乱は加速度センサのサンプリング周期に比べて十分に低周波であることから、サンプリング間における加速度外乱のダイナミクスを下記の式で示す。
adr=[abx aby abz]T
とし、外乱のダイナミクスを次式のように表す。
以下においては、本発明の拡張フィルタアルゴリズムによって正常に低周波数の加速度の外乱が推定されていることを確認するために移動体に一定値の低周波数の加速度外乱を加え、それが正しく推定されていることをシミュレーションにより確認する。本シミュレーションでは、機体が停止状態から最大加速度で加速し、一定時間の移動の後、最大加速度で原則すると仮定し、印加される外乱の大きさは0.2Gとした。また、各アルゴリズムの性能を明確にするため、加減速による加速度外乱の印加時間は実フライトよりも十分に長い20秒間に設定した。図14は本シミュレーションに用いた各軸の加速度データを示す。図14中において、実線はX軸方向の加速度データを示し、一点鎖線はY軸方向の加速度データを示し、点線はZ軸方向の加速度データを示す。図14により、開始から約15秒後にx軸加速度に一定値の外乱が負方向及び正方向に1回ずつ印加されていることが分かる。y軸には加速度がなく、z軸には重力加速度が印加されている。図15は各アルゴリズムの姿勢推定結果を示し、図15(a)はロール方向における姿勢推定結果を示し、図15(b)はピッチ方向における姿勢推定結果を示し、図15(c)はヨー方向における姿勢推定結果を示す。また、図15において、Trueの表示は姿勢推定結果の真値を実線で示し、Prevの表示は従来のアルゴリズムによる姿勢推定結果を点線(細線)示し、Newの表示は本発明において状態量に加速度外乱を含めた拡張カルマンフィルタのアルゴリズムによる姿勢推定結果を点線(太線)示す。図16は本発明のアルゴリズムにおける加速度外乱推定値と加速度外乱の真値との比較を示す図であり、図16(a)はX方向における加速度外乱の比較結果を示し、図16(b)はY方向における加速度外乱の比較結果を示し、図16(c)はZ方向における加速度外乱の比較結果を示す。図16において、Trueの表示は加速度外乱の真値を実線で示し、Newの表示は本発明のアルゴリズムによる加速度外乱推定結果を点線(太線)で示す。
実際の加速度外乱環境下における測定結果を基に、従来の姿勢推定アルゴリズムと本発明の姿勢推定アルゴリズムの性能比較を行う。アルゴリズムを実装するハードウェアとして本発明の小型姿勢センサを用いるが、この小型姿勢センサに搭載されているマイクロプロセッサ(MPU)は小型のため、複数種類のアルゴリズムを同時にリアルタイムで演算することはできない。そこで、カルマンフィルタを用いた加速度外乱推定を行うアルゴリズムを実装し、測定によって得られた加速度、角速度、磁気データを基にオフラインで推定演算を行った。演算に用いる行列の次数からカルマンフィルタを用いた加速度外乱推定アルゴリズムの演算量が多いのは明らかであるため、本手法がMPUに実装可能であれば、他の手法においても十分に実現可能である。姿勢推定アルゴリズムの比較検証を行うための真値は、Crossbow社製の高精度姿勢センサAHRS440から取得する。
Claims (4)
- 移動物体の独立な3軸上の角速度を計測する角速度センサと、
移動物体の独立な3軸上の加速度を計測する加速度センサと、
移動物体の独立な3軸上の地磁気を計測する磁気センサと、
前記角速度センサ、前記加速度センサ、及び前記磁気センサの計測値を基にクォータニオンの推定値を算出する演算処理部とを備え、
前記演算処理部は、予め推定されたクォータニオン推定値を用いて座標変換行列を算出し、当該座標変換行列を用いて地上固定座標系成分の地磁気ベクトル及び重力加速度ベクトルを変換し、現ステップのセンサ座標系成分の地磁気ベクトル及び重力加速度ベクトルを推定する座標変換部と、
前記磁気センサ及び前記加速度センサから現ステップのセンサ座標系成分の地磁気ベクトル及び重力加速度ベクトルを取得する磁気・加速度センサデータ取得部と、
前記座標変換部で推定した現ステップのセンサ座標系成分の地磁気ベクトル及び重力加速度ベクトルと、前記磁気・加速度センサデータ取得部で取得した現ステップのセンサ座標系成分の地磁気ベクトル及び重力加速度ベクトルとの誤差を算出するベクトル誤差算出部と、
前記角速度センサから現ステップのセンサ座標系成分の角速度ベクトルを取得する角速度センサデータ取得部と、
前記取得した角速度データについて、バイアス誤差、スケールファクタ誤差、ミスアラインメント誤差、ノイズの要素を含む角速度センサ誤差を演算により求める角速度データ誤差算出部と、
前ステップのクォータニオンと現ステップのクォータニオンの時間変化を求めるクォータニオン算出部と
前記座標変換部、前記磁気・加速度センサデータ取得部、前記ベクトル誤差算出部、前記角速度データ誤差算出部、及び前記クォータニオン算出部を基に現在の姿勢を表すクォータニオンおよび角速度誤差を推定する拡張カルマンフィルタを構成し、
前記拡張カルマンフィルタによるクォータニオン推定値を現在の姿勢として出力することを特徴とする小型姿勢センサ。 - 前記拡張カルマンフィルタは、
低周波数の加速度外乱
adr=[abx aby abz]T
に対して
- 前記拡張カルマンフィルタは、請求項2の演算に追加して、式(62)の状態方程式を離散化して、
の式を求め、ここで、改めて
ここで、
- 前記拡張カルマンフィルタは、請求項3の演算に追加して、
行列Ft及びHtを、
以上のように定義された行列と式(64)、式(67)を用いた拡張カルマンフィルタアルゴリズムを以下に示す式で与え、
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