一般に、圧縮型冷凍機は少なくとも圧縮機,凝縮器,膨張機構(膨張弁など),蒸発器、あるいは更に乾燥器から構成され、冷媒と潤滑油の混合液体がこの密閉された系内を循環する構造となっている。従来、圧縮型冷凍機、特に空調器の冷媒としては、クロロジフルオロメタン(以下、R22と称する。)やクロロジフルオロメタンとクロロペンタフルオロエタンの重量比48.8:51.2の混合物(以下、R502と称する。)が多く用いられ、また潤滑油としては、前記の要求特性を満たす種々の鉱油や合成油が用いられてきた。しかしながら、R22やR502は、成層圏に存在するオゾン層を破壊するなど環境汚染をもたらすおそれがあることから、世界的にその規制が厳しくなりつつある。そのため、新しい冷媒として1,1,1,2−テトラフルオロエタン;ジフルオロメタン;ペンタフルオロエタン;1,1,1−トリフルオロエタン(以下、それぞれR134a,R32,R125,R143aと称する。)に代表されるハイドロフルオロカーボンが注目され、それに代わりつつある。このハイドロフルオロカーボン、特にR134a,R32,R125,R143aはオゾン層を破壊するおそれがなく、圧縮型冷凍機用冷媒として好ましいものである。しかしながら、前記ハイドロフルオロカーボンを単独で使用する場合には問題があり、例えば非特許文献1には、(1)R22の代替としてR134aを空調機器に適応する場合、運転圧力が低く、R22に比べて能力が約40%、効率は約5%低下する、(2)R32はR22に比べて効率は良いが、運転圧力が高く、微燃性である、(3)R125は不燃性であるが、臨界圧力が低く効率が低くなるなどが報告されている。また、R143aはR32と同様に可燃性の問題がある。
圧縮型冷凍機用冷媒としては、現状の冷凍装置の変更なしに使用できることが望ましいが、上記問題により、実際は前記のハイドロフルオロカーボンを混合した冷媒を使用すべきである。すなわち、現行のR22,R502冷媒を代替するためには、効率の面から、可燃性であるR32,R143aを使用し、冷媒全体として不燃性をもたせるため、R125,R134aを前者に混合することが望ましい。非特許文献2には、R32/R134a混合物の場合、R32の含有量が56重量%以上では可燃性であることが示されている。冷媒組成により一概に規定はできないが、不燃性の面から、R125やR134aなどの不燃性ハイドロフルオロカーボンを45重量%以上含む冷媒が好ましいといえる。
一方、冷媒は、冷凍システム内において様々な条件下で使用されるため、混合するハイドロフルオロカーボンの組成が、冷凍システム内各所において大きく異なることは好ましくない。冷凍システム内では、冷媒は気体,液体の両方の状態をとるため、混合するハイドロフルオロカーボン同士の沸点が大きく異なる場合には、混合冷媒の組成は、上記理由により冷凍システム内各所において、大きく異なる可能性がある。
R32,R143a,R125及びR134aの沸点は、それぞれ−51.7℃,−47.4℃,−48.5℃及び−26.3℃であり、ハイドロフルオロカーボン混合冷媒系にR134aを使用する場合には、この点で注意が必要である。したがって、R125使用混合冷媒においては、その含有量は20〜80重量%、特に40〜70重量%であることが好ましい。含有量が20重量%未満では不燃性をもたせるために、さらにR134aなどの沸点の大きく異なる冷媒を多量に必要とし、上記理由から好ましくない。また、R125の含有量が80重量%を超えると効率が低下するため好ましくない。
これらの点から、これまでのR22冷媒に対する代替としては、R32とR125とR134aとの重量比23:25:52の混合物(以下、R407Cと称する。),重量比25:15:60の混合物,R32とR125との重量比50:50の混合物(以下,R410Aと称する。),R32とR125との重量比45:55の混合物(以下、R410Bと称する。)が好ましく、一方、R502冷媒に対する代替としては、R125とR143aとR134aとの重量比44:52:4の混合物(以下、R404Aと称する。)やR125とR143aとの重量比50:50の混合物(以下、R507と称する。)が好ましい。
このハイドロフルオロカーボン系冷媒は、従来の冷媒とは性質を異にし、それと併用される冷凍機油としては、例えば特定の構造を有するポリアルキレングリコール,ポリオールエステル,ポリビニルエーテルなどを基油とし、これに酸化防止剤,極圧剤,消泡剤などの各種添加を配合したものが有用であることが知られている。
一方、冷凍機には、冷凍サイクル内にキャピラリー管と呼ばれる膨張弁が備わっている。そのキャピラリー管は直径が0.7mm程度の細管であるため閉塞しやすい。キャピラリー管の閉塞現象は冷凍サイクルの寿命を決定する最大の要因となる。ところが、上記の添加剤を使用するためスラッジが蓄積し、それらがキャピラー管を閉塞させる原因となっていた。したがって、キャピラリーの閉塞物質を溶解させる添加剤の開発が待たれ、それを含有した冷凍機油組成物の出現が望まれていた。
「エネルギー・資源」第16巻,第5号,第474頁
The International Symposium on R22 & R502 Alternative Refrigerants, 1994, 166 頁
先ず、本発明の冷凍機油組成物においては、基油として、ポリビニルエーテルから選ばれる含酸素系合成油が用いられる。この合成油の粘度については特に制限はないが、40℃における動粘度が2〜500mm2/s、特に5〜200mm2/s、とりわけ10〜100mm2/sの範囲にあるものが好適である。また、この基油の低温流動性の指標である流動点については特に制限はないが、−10℃以下であるのが望ましい。上記の含酸素系合成油については、最後に詳細に説明する。
本発明の添加剤であるアルキルベンゼンについて説明する。該アルキルベンゼンは、平均分子量が100〜1,000であれば、構造は特に限定されない。平均分子量が100未満では、キャピラリー閉塞防止効果が小さく、1,000を超えると基油への溶解性が劣り好ましくない。また、分子量分布は500〜3,000であるのが好ましい。さらに、40℃における動粘度は、好ましくは2〜100mm2/s、さらに好ましくは5〜70mm2/sの範囲である。
該アルキルベンゼンの構造については、炭素数4〜20のアルキル基を1〜4個を有するものが好ましい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ウンデシル基、各種ドデシル基、各種トリデシル基、各種テトラデシル基、各種ペンタデシル基、各種ヘキサデシル基、各種ヘプタデシル基、各種オクタデシル基、各種ノナデシル基、エイコシル基を挙げることができる。
このアルキル基としては直鎖状でも分岐鎖状でもどちらでもよいが、安定性、粘度特性などの点から分岐鎖状のものが好ましい。特に入手可能性の点から、プロピレン、ブテン、イソブチレンなどのオリゴマーから誘導される分岐鎖状アルキル基がより好ましい。
上記アルキルベンゼンのアルキル基の個数は1〜4個が好ましいが、安定性、入手可能性の点から1個又は2個のアルキル基を有するアルキルベンゼン、すなわちモノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン、またはこれらの混合物が最も好ましく用いられる。
本発明の冷凍機油組成物においては、前記のアルキルベンゼンは、一種又は二種以上を組み合わせて使用してもよい。また、その配合量は、組成物全量基準で1〜40重量%である。この配合量が1重量%未満では本発明の目的が充分に発揮されず、40重量%を超えるとその量の割には効果の向上がみられず、また基油に対する溶解性が低下する。好ましい配合量は5〜35重量%の範囲である。
本発明の冷凍機油組成物には、必要に応じ公知の各種添加剤、例えばリン酸エステル、亜リン酸エステルなどの極圧剤;フェノール系,アミン系の酸化防止剤;さらにはフェニルグリシジルエーテル、シクロヘキセンオキシド、エポキシ化大豆油などのエポキシ化合物などの酸捕捉剤;ベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾール誘導体などの銅不活性化剤;シリコーン油、フッ化シリコーン油などの消泡剤などを適宜配合することができる。上記添加剤の配合量は、冷凍機油組成物全量基準で、それぞれ0.01〜2重量%である。
本発明の冷凍機油組成物が適用される冷凍機に用いられる冷媒としては、ハイドロフルオロカーボン系、フルオロカーボン系、ハイドロカーボン系、エーテル系、二酸化炭素系又はアンモニア系冷媒が用いられるが、これらの中でハイドロフルオロカーボン系冷媒が好ましい。このハイドロフルオロカーボン系冷媒としては、例えば1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R134a),ジフルオロメタン(R32)、ペンタフルオロエタン(R125)及び1,1,1−トリフルオロエタン(R143a)が好ましく、これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのハイドロフルオロカーボンは、オゾン層を破壊するおそれがなく、圧縮冷凍機用冷媒として好ましいものである。また、混合冷媒の例としては、R32とR125とR134aとの重量比23:25:52の混合物(以下、R407Cと称する。),重量比25:15:60の混合物,R32とR125との重量比50:50の混合物(以下、R410Aと称する。),R32とR125との重量比45:55の混合物(以下、R410Bと称する。),R125とR143aとR134aとの重量比44:52:4の混合物(以下、R404Aと称する。)、R125とR143aとの重量比50:50の混合物(以下、R507と称する。)などが挙げられる。
最後に、本発明の冷凍機油組成物の基油として使用する含酸素系合成油について詳述する。前記のポリビニルエーテルとしては、例えば一般式(III)
(式中、R3〜R5はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよく、R6は炭素数1〜10の二価の炭化水素基又は炭素数2〜20の二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基、R7は炭素数1〜20の炭化水素基、aはその平均値が0〜10の数を示し、R3〜R7は構成単位毎に同一でもそれぞれ異なっていてもよく、またR6Oが複数ある場合には、複数のR6Oは同一でも異なっていてもよい。)で表される構成単位を有するポリビニルエーテル系化合物(1)が挙げられる。
また、上記一般式(III)で表される構成単位と、下記一般式(IV)
(式中、R8〜R11は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよく、またR8〜R11は構成単位毎に同一でもそれぞれ異なっていてもよい。)で表される構成単位とを有するブロック又はランダム共重合体からなるポリビニルエーテル系化合物(2)も使用することができる。また、上記ポリビニルエーテル系化合物(1)とポリビニルエーテル系化合物(2)との混合物からなるポリビニルエーテル系化合物(3)も使用することができる。
前記一般式(III)におけるR3〜R5はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜8、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す。ここで炭化水素基とは、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、各種メチルシクロヘキシル基、各種エチルシクロヘキシル基、各種ジメチルシクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、各種メチルフェニル基、各種エチルフェニル基、各種ジメチルフェニル基のアリール基、ベンジル基、各種フェニルエチル基、各種メチルベンジル基のアリールアルキル基を挙げることができる。なお、これらのR3〜R5としては、特に水素原子が好ましい。
一方、一般式(III)中のR6は、炭素数1〜10、好ましくは2〜10の二価の炭化水素基又は炭素数2〜20の二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示すが、ここで炭素数1〜10の二価の炭化水素基とは、具体的にはメチレン基;エチレン基;フェニルエチレン基;1,2−プロピレン基;2−フェニル−1,2−プロピレン基;1,3−プロピレン基;各種ブチレン基;各種ペンチレン基;各種ヘキシレン基;各種ヘプチレン基;各種オクチレン基;各種ノニレン基;各種デシレン基の二価の脂肪族基、シクロヘキサン;メチルシクロヘキサン;エチルシクロヘキサン;ジメチルシクロヘキサン;プロピルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素に2個の結合部位を有する脂環式基、各種フェニレン基;各種メチルフェニレン基;各種エチルフェニレン基;各種ジメチルフェニレン基;各種ナフチレン基などの二価の芳香族炭化水素基、トルエン;キシレン;エチルベンゼンなどのアルキル芳香族炭化水素のアルキル基部分と芳香族部分にそれぞれ一価の結合部位を有するアルキル芳香族基、キシレン;ジエチルベンゼンなどのポリアルキル芳香族炭化水素のアルキル基部分に結合部位を有するアルキル芳香族基などを挙げることができる。これらの中で炭化数2〜4の脂肪族基が特に好ましい。
また、炭素数2〜20の二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基の具体例としては、メトキシメチレン基;メトキシエチレン基;メトキシメチルエチレン基;1,1−ビスメトキシメチルエチレン基;1,2−ビスメトキシメチルエチレン基;エトキシメチルエチレン基;(2−メトキシエトキシ)メチルエチレン基;(1−メチル−2−メトキシ)メチルエチレン基などを好適に挙げることができる。なお、一般式(III)におけるaはR6Oの繰り返し数を示し、その平均値が0〜10、好ましくは0〜5の範囲の数である。R6Oが複数ある場合には、複数のR6Oは同一でも異なっていてもよい。
さらに、一般式(III)におけるR7は炭素数1〜20、好ましくは1〜10の炭化水素基を示すが、この炭化水素基とは、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、各種メチルシクロヘキシル基、各種エチルシクロヘキシル基、各種プロピルシクロヘキシル基、各種ジメチルシクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、各種メチルフェニル基、各種エチルフェニル基、各種ジメチルフェニル基、各種プロピルフェニル基、各種トリメチルフェニル基、各種ブチルフェニル基、各種ナフチル基などのアリール基、ベンジル基、各種フェニルエチル基、各種メチルベンジル基、各種フェニルプロピル基、各種フェニルブチル基のアリールアルキル基などを挙げることができる。
このポリビニルエーテル系化合物(1)は、前記一般式(III)で表される構成単位を有するものであるが、その繰り返し数(重合度)は、所望する粘度に応じ適宜選択すればよい。また、該ポリビニルエーテル系化合物は、その炭素/酸素モル比が4.2〜7.0の範囲にあるものが好ましい。該モル比が4.2未満では、吸湿性が高くなる場合があり、また7.0を超えると、冷媒との相溶性が低下する場合がある。
また、ポリビニルエーテル系化合物(2)は、前記一般式(III)で表される構成単位と前記一般式(IV)で表される構成単位とを有するプロック又はランダム共重合体からなるものであって、該一般式(IV)において、R8〜R11は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよい。ここで、炭素数1〜20の炭化水素基としては、上記一般式(III)におけるR7の説明において例示したものと同じものを挙げることができる。なお、R8〜R11は構成単位毎に同一でもそれぞれ異なっていてもよい。
該一般式(III)で表される構成単位と一般式(IV)で表される構成単位とを有するブロックまたはランダム共重合体からなるポリビニルエーテル系化合物(2)の重合度は、所望する粘度に応じて適宜選択すればよい。また、このポリビニルエーテル系化合物は、その炭素/酸素モル比が4.2〜7.0の範囲にあるものが好ましい。該モル比が4.2未満では、吸湿性が高くなる場合があり、また7.0を超えると、冷媒との相溶性が低下する場合がある。
さらに、ポリビニルエーテル化合物(3)は、前記ポリビニルエーテル系化合物(1)と前記ポリビニルエーテル系化合物(2)との混合物からなるものであるが、その混合割合については特に制限はない。
本発明に用いられるポリビニルエーテル系化合物(1)及び(2)は、それぞれ対応するビニルエーテル系モノマーの重合、及び対応するオレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーと、対応するビニルエーテル系モノマーとの共重合により製造することができる。ここで用いることができるビニルエーテル系モノマーは、下記一般式(V)
(式中、R3〜R7及びaは、前記と同じである。)で表されるものである。このビニルエーテル系モノマーとしては、上記ポリビニルエーテル系化合物(1),(2)に対応する各種のものがあるが、例えばビニルメチルエーテル;ビニルエチルエーテル;ビニル−n−プロピルエーテル;ビニル−イソプロピルエーテル;ビニル−n−ブチルエーテル;ビニル−イソブチルエーテル;ビニル−sec−ブチルエーテル;ビニル−tert−ブチルエーテル;ビニル−n−ペンチルエーテル;ビニル−n−ヘキシルエーテル;ビニル−2−メトキシエチルエーテル;ビニル−2−エトキシエチルエーテル;ビニル−2−メトキシ−1−メチルエチルエーテル;ビニル−2−メトキシ−2−メチルエーテル;ビニル−3,6−ジオキサヘプチルエーテル;ビニル−3,6,9−トリオキサデシルエーテル;ビニル−1,4−ジメチル−3,6−ジオキサヘプチルエーテル;ビニル−1,4,7−トリメチル−3,6,9−トリオキサデシルエーテル;ビニル−2,6−ジオキサ−4−ヘプチルエーテル;ビニル−2,6,9−トリオキサ−4−デシルエーテル;1−メトキシプロペン;1−エトキシプロペン;1−n−プロポキシプロペン;1−イソプロポキシプロペン;1−n−ブトキシプロペン;1−イソブトキシプロペン;1−sec−ブトキシプロペン;1−tert−ブトキシプロペン;2−メトキシプロペン;2−エトキシプロペン;2−n−プロポキシプロペン;2−イソプロポキシプロペン;2−n−ブトキシプロペン;2−イソブトキシプロペン;2−sec−ブトキシプロペン;2−tert−ブトキシプロペン;1−メトキシ−1−ブテン;1−エトキシ−1−ブテン;1−n−プロポキシ−1−ブテン;1−イソプロポキシ−1−ブテン;1−n−ブトキシ−1−ブテン;1−イソブトキシ−1−ブテン;1−sec−ブトキシ−1−ブテン;1−tert−ブトキシ−1−ブテン;2−メトキシ−1−ブテン;2−エトキシ−1−ブテン;2−n−プロポキシ−1−ブテン;2−イソプロポキシ−1−ブテン;2−n−ブトキシ−1−ブテン;2−イソブトキシ−1−ブテン;2−sec−ブトキシ−1−ブテン;2−tert−ブトキシ−1−ブテン;2−メトキシ−2−ブテン;2−エトキシ−2−ブテン;2−n−プロポキシ−2−ブテン;2−イソプロポキシ−2−ブテン;2−n−ブトキシ−2−ブテン;2−イソブトキシ−2−ブテン;2−sec−ブトキシ−2−ブテン;2−tert−ブトキシ−2−ブテンなどが挙げられる。これらのビニルエーテル系モノマーは公知の方法により製造することができる。また、オレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーは、下記一般式(VI)
(式中、R8〜R11は前記と同じである。)で表されるものであり、該モノマーとしては、例えばエチレン、プロピレン、各種ブテン、各種ペンテン、各種ヘキセン、各種ヘプテン、各種オクテン、ジイソブチレン、トリイソブチレン、スチレン、各種アルキル置換スチレンなどを挙げることができる。本発明に用いられるポリビニルエーテル系化合物としては、次の末端構造を有するもの、すなわちその一つの末端が、一般式(VII)又は(VIII)
(式中、R12〜R14は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、R12〜R14はたがいに同一でも異なっていてもよく、R17〜R20は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、R17〜R20はたがいに同一でも異なっていてもよい。R15は炭素数1〜10の二価の炭化水素基又は炭素数2〜20の二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基、R16は炭素数1〜20の炭化水素基、bはその平均値が0〜10の数を示し、R15Oが複数ある場合には、複数のR15Oは同一でも異なっていてもよい。)で表され、かつ残りの末端が一般式(IX)又は(X)
(式中、R21〜R23は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、R21〜R23はたがいに同一でも異なっていてもよく、R26〜R29は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、R26〜R29はたがいに同一でも異なっていてもよい。R24は炭素数1〜10の二価の炭化水素基又は炭素数2〜20の二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基、R25は炭素数1〜20の炭化水素基、cはその平均値が0〜10の数を示し、R24Oが複数ある場合には、複数のR24Oは同一でも異なっていてもよい。)で表される構造を有するもの、及びその一つの末端が、上記一般式(VII)又は(VIII)で表され、かつ残りの末端が一般式(XI)
(式中、R30〜R32は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよい。)で表される構造を有するものが好ましい。このようなポリビニルエーテル系化合物の中で、特に次に挙げるものが本発明の冷凍機油組成物の基油として好適である。
(1)その一つの末端が一般式(VII)又は(VIII)で表され、かつ残りの末端が一般式(IX)又は(X)で表される構造を有し、一般式(III)におけるR3〜R5が共に水素原子、aが0〜4の数、R6が炭素数2〜4の二価の炭化水素基及びR7が炭素数1〜20の炭化水素基であるもの。
(2)一般式(III)で表される構成単位のみを有するものであって、その一つの末端が一般式(VII)で表され、かつ残りの末端が一般式(IX)で表される構造を有し、一般式(III)におけるR3〜R5が共に水素原子、aが0〜4の数、R6が炭素数2〜4の二価の炭化水素基及びR7が炭素数1〜20の炭化水素基であるもの。
(3)その一つの末端が一般式(VII)又は(VIII)で表され、かつ残りの末端が一般式(XI)で表される構造を有し、一般式(III)におけるR3〜R5が共に水素原子、aが0〜4の数、R6が炭素数2〜4の二価の炭化水素基及びR7が炭素数1〜20の炭化水素基であるもの。(4)一般式(III)で表される構成単位のみを有するものであって、その一つの末端が一般式(VII)で表され、かつ残りの末端が一般式(X)で表される構造を有し、一般式(III)におけるR3〜R5が共に水素原子、aが0〜4の数、R6が炭素数2〜4の二価の炭化水素基及びR7が炭素数1〜20の炭化水素基であるもの。また、本発明においては、前記一般式(III)で表される構成単位を有し、その一つの末端が一般式(VII)で表され、かつ残りの末端が一般式(XII)
(式中、R33〜R35は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよく、R36及びR38はそれぞれ炭素数2〜10の二価の炭化水素基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよく、R37及びR39はそれぞれ炭素数1〜10の炭化水素基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよく、d及びeはそれぞれその平均値が0〜10の数を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよく、また複数のR36Oがある場合には複数のR36Oは同一でも異なっていてもよいし、複数のR38Oがある場合には複数のR38Oは同一でも異なっていてもよい。)で表される構造を有するポリビニルエーテル系化合物も使用することができる。さらに、本発明においては、下記一般式(XIII)又は(XIV)
(式中、R40は炭素数1〜8の炭化水素基を示す。)で表される構成単位からなり、かつ重量平均分子量が300〜3,000(好ましくは300〜2,000)であって、片方の末端が一般式(XV)又は(XVI)
(式中、R41は炭素数1〜3のアルキル基、R42は炭素数1〜8の炭化水素基を示す。)で表される構造を有するアルキルビニルエーテルの単独重合物又は共重合物からなるポリビニルエーテル系化合物も使用することができる。また、下記一般式(XVII)
(式中、R43は炭素数1〜3の分子内にエーテル結合を有するもしくは有しない炭化水素基を示す。)で表される構成単位(A)と下記一般式(XVIII)
(式中、R44は炭素数3〜20の分子内にエーテル結合を有するもしくは有しない炭化水素基を示す。)で表される構成単位(B)とを有するポリビニルエーテル共重合体〔但し、構成単位(A)のR43及び(B)のR44は同一ではない。〕が特に好適に使用される。R43が炭素数1〜3のアルキル基、R44が炭素数3〜20のアルキル基の場合が、より好ましく、特にR43がメチル基又はエチル基、R44が炭素数3〜6のアルキル基の場合のポリビニルエーテル共重合体の場合が好適で、中でもR43がエチル基、R44がイソブチル基の場合のポリビニルエーテル共重合体が最適で、その場合構成単位(A)と構成単位(B)との割合は、モル比で95:5〜50:50の範囲が好ましく、95:5〜70:30の範囲がより好ましい。
前記のポリビニルエーテル系化合物は、前記したモノマーをラジカル重合,カチオン重合,放射線重合などによって製造することができる。例えばビニルエーテル系モノマーについては、以下に示す方法を用いて重合することにより、所望の粘度の重合物が得られる。
重合の開始には、ブレンステッド酸類、ルイス酸類又は有機金属化合物類に対して、水、アルコール類、フェノール類、アセタール類又はビニルエーテル類とカルボン酸との付加物を組み合わせたものを使用することができる。ブレンステッド酸類としては、例えばフッ化水素酸、塩化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸などが挙げられる。ルイス酸類としては、例えば三フッ化ホウ素、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、四塩化スズ、二塩化亜鉛、塩化第二鉄などが挙げられ、これらのルイス酸類の中では、特に三フッ化ホウ素が好適である。また、有機金属化合物としては、例えばジエチル塩化アルミニウム、エチル塩化アルミニウム、ジエチル亜鉛などが挙げられる。
これらと組み合わせる水,アルコール類、フェノール類、アセタール類又はビニルエーテル類とカルボン酸との付加物は任意のものを選択することができる。ここで、アルコール類としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、各種ペンタノール、各種ヘキサノール、各種ヘプタノール、各種オクタノールなどの炭素数1〜20の飽和脂肪族アルコール、アリルアルコールなどの炭素数3〜10の不飽和脂肪族アルコールなどが挙げられる。
ビニルエーテル類とカルボン酸との付加物を使用する場合のカルボン酸としては、例えば酢酸;プロピオン酸;n−酪酸;イソ酪酸;n−吉草酸;イソ吉草酸;2−メチル酪酸;ピバル酸;n−カプロン酸;2,2−ジメチル酪酸;2−メチル吉草酸;3−メチル吉草酸;4−メチル吉草酸;エナント酸;2−メチルカプロン酸;カプリル酸;2−エチルカプロン酸;2−n−プロピル吉草酸;n−ノナン酸;3,5,5−トリメチルカプロン酸;カプリル酸;ウンデカン酸などが挙げられる。
また、ビニルエーテル類は重合に用いるものと同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。このビニルエーテル類と該カルボン酸との付加物は、両者を混合して0〜100℃程度の温度で反応させることにより得られ、蒸留などにより分離し、反応に用いることができるが、そのまま分離することなく反応に用いることもできる。
ポリマーの重合開始末端は、水,アルコール類,フェノール類を使用した場合は水素が結合し、アセタール類を使用した場合は水素又は使用したアセタール類から一方のアルコキシ基が脱離したものとなる。またビニルエーテル類とカルボン酸との付加物を使用した場合には、ビニルエーテル類とカルボン酸との付加物からカルボン酸部分由来のアルキルカルボニルオキシ基が脱離したものとなる。
一方、停止末端は、水、アルコール類、フェノール類、アセタール類を使用した場合には、アセタール、オレフィン又はアルデヒドとなる。またビニルエーテル類とカルボン酸との付加物の場合は、ヘミアセタールのカルボン酸エステルとなる。このようにして得られたポリマーの末端は、公知の方法により所望の基に変換することができる。この所望の基としては、例えば飽和の炭化水素、エーテル、アルコール、ケトン、ニトリル、アミドなどの残基を挙げることができるが、飽和の炭化水素,エーテル及びアルコールの残基が好ましい。
一般式(V)で表されるビニルエーテル系モノマーの重合は、原料や開始剤の種類にもよるが、−80〜150℃の間で開始することができ、通常は−80〜50℃の範囲の温度で行うことができる。また、重合反応は反応開始後10秒から10時間程度で終了する。この重合反応における分子量の調節については、前記一般式(V)で表されるビニルエーテル系モノマーに対し、水、アルコール類、フェノール類、アセタール類及びビニルエーテル類とカルボン酸との付加物の量を多くすることで平均分子量の低いポリマーが得られる。さらに上記ブレンステッド酸類やルイス酸類の量を多くすることで平均分子量の低いポリマーが得られる。
この重合反応は、通常溶媒の存在下に行われる。該溶媒については、反応原料を必要量溶解し、かつ反応に不活性なものであればよく特に制限はないが、例えばヘキサン、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素系、及びエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフランなどのエーテル系の溶媒を好適に使用することができる。なお、この重合反応はアルカリを加えることによって停止することができる。重合反応終了後、必要に応じて通常の分離・精製方法を施すことにより、目的とする一般式(III)で表される構成単位を有するポリビニルエーテル系化合物が得られる。
本発明に用いるポリビニルエーテル系化合物は、前記したように炭素/酸素モル比が4.2〜7.0の範囲にあるのが好ましいが、原料モノマーの炭素/酸素モル比を調節することにより、該モル比が前記範囲にあるポリマーを製造することができる。すなわち、炭素/酸素モル比が大きいモノマーの比率が大きければ、炭素/酸素モル比の大きなポリマーが得られ、炭素/酸素モル比の小さいモノマーの比率が大きければ、炭素/酸素モル比の小さなポリマーが得られる。
また、上記ビニルエーテル系モノマーの重合方法で示したように、開始剤として使用する水、アルコール類、フェノール類、アセタール類及びビニルエーテル類とカルボン酸との付加物と、モノマー類との組合せによっても可能である。重合するモノマーより炭素/酸素モル比が大きいアルコール類、フェノール類などを開始剤として使用すれば、原料モノマーより炭素/酸素モル比の大きなポリマーが得られ、一方、メタノールやメトキシエタノールなどの炭素/酸素モル比の小さなアルコール類を用いれば、原料モノマーより炭素/酸素モル比の小さなポリマーが得られる。
さらに、ビニルエーテル系モノマーとオレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーとを共重合させる場合には、ビニルエーテル系モノマーの炭素/酸素モル比より炭素/酸素モル比の大きなポリマーが得られるが、その割合は、使用するオレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーの比率やその炭素数により調節することができる。