JP5060063B2 - 接着剤組成物 - Google Patents
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Description
特に、キチン、キトサンは生物活性効果のある生体親和性材料として注目されている。キチン(N−アセチル−D−グルコサミン残基がβ‐1,4結合した多糖類)はカニやエビなどの甲殻類、カブトムシやコオロギなどの昆虫類の骨格物質として存在し、また菌類の細胞壁にも存在する。キトサンは、キチンを脱アセチル化して得られるポリグルコサミンであり、高温、強アルカリにも安定な塩基性多糖類である。
これらには、キトサンと天然物のヒアルロン酸やコンドロイチン、キチン、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、デキストラン等の多糖類、またゼラチンやポリアミノ酸、ポリペプチド及びタンパク質、さらにはポリアクリル酸等の合成高分子とのポリイオンコンプレックスを利用し、感染症の心配のない生体用接着剤もいくつか提案されている。
さらに、キトサン単独でも耐水性の接着剤として使用することができるが、高粘度のため高濃度塗布ができないという問題や、キトサンは健康食品や化粧品に使用されるもので価格が高く工業用の接着剤として使用するにはコストアップになるという課題もある。
また、本発明の接着剤組成物は澱粉が主成分であり、少量添加するキトサンも食品や化粧品に使用できるものであるため、合成樹脂を成分とする水溶性接着剤と比較して、人体への安全性、生分解性に優れる。さらに、価格的にも高価格のキトサンを少量添加するだけで目的とする耐水性を得られるので、キトサン主体の接着剤より価格的に有利である。
本発明において、架橋澱粉とは、単に架橋剤を作用させたものだけでなく、架橋反応と同時または、その前後において、エーテル化またはエステル化を行った架橋エーテル化澱粉または架橋エステル化澱粉、及びそれらをアルファー化処理したものも含めた総称として「架橋澱粉」という。
また、反応は上記のように水または有機溶媒に懸濁させる湿式反応のほか、少量の水または有機溶媒を澱粉に添加し、例えば、ブレンダー、ミキサーなどで混合・加熱する乾式反応で行うこともできる。
架橋された澱粉は、澱粉の種類や架橋剤の量に応じて澱粉の膨潤の度合が変わる。本願では架橋反応の程度を膨潤度として表す。膨潤度の測定は、以下の通りである。無水換算試料0.15gを電解液(塩化亜鉛10質量部、塩化アンモニウム26質量部、イオン交換水64質量部を溶解後、濾過したもの)15mlを添加し、分散後、直ちによく沸騰した湯浴中で5分間加熱し、冷却後、再度分散し10mlのメスシリンダーに正確に入れ、室温で静置後18時間静置後の沈澱層(ml)を膨潤度とする。
一方、膨潤度が6.0を上回る場合、澱粉糊の曳糸性は抑えられるが、耐水性が十分ではなくなってしまう。
また、上記のように水または有機溶媒に懸濁させる湿式反応のほか、少量の水または有機溶媒を澱粉に添加し、例えば、ブレンダー、ミキサーなどで混合・加熱する乾式反応で行うこともできる。
また、D.S.が高くなると、ペーストに曳糸性が生じてくるが、膨潤度を低くすることによって、塗工に適した粘性にすることが出来る。
また、上記のように水または有機溶媒に懸濁させる湿式反応のほか、少量の水または有機溶媒を澱粉に添加し、例えば、ブレンダー、ミキサーなどで混合・加熱する乾式反応で行うこともできる。
また、D.S.が高くなると、ペーストに曳糸性が生じてくるが、膨潤度を低くすることによって、塗工に適した粘性にすることが出来る。
ドラムドライヤー処理するときの澱粉水分散液の濃度は、実際のドラムドライヤーの運転条件に応じて適宜選択できるが、通常ドラムドライヤーの場合30〜60%とすることが好ましい。また、ドラムドライヤーの運転条件には特に制約がなく、通常の温度、圧力、回転数、ロールスリット幅が採用でき、使用澱粉によって適宜調整できる。
エーテル化又はエステル化していないアルファー化架橋澱粉の糊液はざらついた粘性になるが、その粒径を150μm以下になるように微粉砕すると、なめらかな糊液を調製することが出来る。
一般に、キトサンの分子量は10万以上でありしかも直鎖状の高分子物質で多数のアミノ基がその直鎖上に等間隔にあるため天然物では唯一のカチオン性高分子として優れた特性を備えている。
また、キトサンは酢酸、クエン酸などの有機酸、または塩酸、硝酸などを加えて溶解して用いるのが一般的であるが、本発明では臭気がなく、pH調整でのpH振れ巾が少なくなるアジピン酸を用いて溶解するのが好ましい。
架橋澱粉はアルファー化した架橋澱粉については、冷水に溶けるので加熱を必要としないが、アルファー化していない架橋澱粉は水中で加熱溶解(膨潤)して糊液として用いる。
こうして溶解したキトサン溶液と架橋澱粉糊液を、架橋澱粉100質量部に対しキトサンを5質量部以上になる比率に混合し、本発明の接着剤組成物を調製する。
本発明の接着剤組成物は、生分解性の澱粉やキトサンを使用する水性の接着剤であるので、必要に応じ防腐剤や防黴剤を添加し保存安定性を高めることができる。
架橋澱粉とキトサンの併用比率の耐水性効果を見るための試験を行った。架橋澱粉はタピオカ澱粉原料でヒドロキシプロピル化・エピクロルヒドリン架橋澱粉(ヒドロキシプロピル化置換度DS0.06、膨潤度3.4ml)のドラムドライヤーアルファー化処理品(以下、架橋澱粉1という)を用いた。キトサンは1%アジピン酸溶液に溶解した1%溶液粘度が220mPa・s(25℃、30rpm)のもの(以下、キトサン1という)を用いた。
キトサン1を0.9部、架橋澱粉1を9部、アジピン酸を0.9部、イオン交換水89.2部の割合で均一に溶解し試料1(pH4.40、25℃、30rpmでの粘度12,620mPa・sの糊液を得た。
実施例1と同様にして、キトサン1を0.7部、架橋澱粉1を7部、アジピン酸を0.7部、イオン交換水91.6部の割合で均一に溶解し試料2(pH4.41、25℃、30rpmでの粘度2,904mPa・s)の糊液を得た。
実施例1と同様にして、キトサン1を0.9部、架橋澱粉1を9.3部、アジピン酸を1.8部、イオン交換水88.0部の割合で均一に溶解し試料3(pH4.09、25℃、30rpmでの粘度19,000mPa・s)の糊液を得た。
実施例1と同様にして、キトサン1を0.5部、架橋澱粉1を10.5部、アジピン酸を1部、イオン交換水88.0部の割合で均一に溶解し試料4(pH4.20、25℃、30rpmでの粘度8,780mPa・s)の糊液を得た。
実施例1,2,3、比較例1で得た試料1,2,3,4の糊液をクラフト紙に26番のメイヤーバーで塗布し、クラフト紙を貼り合わせた。糊液の塗工面20mm×20mmとし、乾燥後、片方のクラフト紙の端に10gの重りをつけて水中に吊るし、T形剥離でクラフト紙が剥がれ落ちるまでの時間を測定した。48時間で終了とし、貼り合わせたクラフト紙を剥がして接着面の様子を比較した。
試料1は48時間剥がれなかった。接着面は1/3程度剥がれており、接着面を剥がしても紙破は起こらなかった。
試料2は20時間剥がれなかった。接着面は1/3程度剥がれており、接着面を剥がしても紙破は起こらなかった。
試料3は48時間剥がれなかった。接着面を剥がすと紙破が起こり非常に耐水性が高かった。
試料4は5分で剥がれ落ちた。架橋澱粉100部に対する低分子量キトサン1の量が5未満になると、接着力が劣ることが判った。
実施例1において、キトサンを1%アジピン酸溶液に溶解した1%溶液粘度が519mPa・s(25℃、30rpm)のもの(以下、キトサン2という)を用いた以外は同様にして、キトサン2を0.5部、架橋澱粉1を10.0部、アジピン酸を0.5部、イオン交換水89.0部の割合で均一に溶解し試料5(pH4.62、25℃、30rpmでの粘度15,920mPa・s)の糊液を得た。
実施例5と同様にして、キトサン2を0.8部、架橋澱粉1を10.0部、アジピン酸を1.2部、イオン交換水88.0部の割合で均一に溶解し試料6(pH4.24、25℃、6rpmでの粘度88,200mPa・s)の糊液を得た。
実施例4と同様にして、実施例3,5,6で得た試料3,5,6の糊液をクラフト紙に26番のメイヤーバーで塗布し、クラフト紙を貼り合わせた。糊液の塗工面20mm×20mmとし、乾燥後、片方のクラフト紙の端に10gの重りをつけて水中に吊るし、T形剥離でクラフト紙が剥がれ落ちるまでの時間を測定した。48時間で終了とし、貼り合わせたクラフト紙を剥がして接着面の様子を確認した。
試料5,6はいずれも48時間剥がれなかった。接着面を剥がすと紙破が起こり非常に耐水性が高かった。
粘度(分子量)の高いキトサンを使用すると、架橋澱粉100部に対する高分子量キトサンの添加量が5部でも耐水性が優れることが判った。
実施例5において、架橋澱粉をタピオカ澱粉原料でヒドロキシプロピル化・エピクロルヒドリン架橋澱粉(ヒドロキシプロピル化DS0.06、膨潤度3.4ml)でアルファー化処理をしないもの(以下、架橋澱粉2という)及びタピオカ澱粉原料のトリメタリン酸架橋澱粉(膨潤度1.5ml)でアルファー化処理をしないもの(以下、架橋澱粉3という)を用い、架橋澱粉2,3をイオン交換水中で加熱糊化した以外は同様にして、キトサン2を0.8部、架橋澱粉2を4.0部、架橋澱粉3を6.0部、アジピン酸を1.6部、イオン交換水87.6部の割合で均一に溶解し試料7(pH3.86、25℃、20rpmでの粘度43,000mPa・s)の糊液を得た。
試料7の糊液は架橋澱粉として、エーテル化架橋澱粉2よりもエーテル化していない架橋澱粉3の比率が高いので、保存安定性を確認するため糊液を凍結18時間、30℃解凍4時間を1サイクルとして、7サイクルの凍結解凍試験後の粘度測定を行った。7サイクル後の粘度も最初の粘度と同じ43,000mPa・sであり、粘度安定性に問題がないことが判った。
実施例4と同様にして、実施例8で得た試料7の糊液をクラフト紙に26番のメイヤーバーで塗布し、クラフト紙を貼り合わせた。糊液の塗工面20mm×20mmとし、乾燥後、片方のクラフト紙の端に10gの重りをつけて水中に吊るし、T形剥離でクラフト紙が剥がれ落ちるまでの時間を測定した。48時間で終了とし、貼り合わせたクラフト紙を剥がして接着面の様子を確認した。
試料7は48時間剥がれなかった。接着面を剥がすと紙破が起こり非常に耐水性が高かった。
エーテル化していない架橋澱粉を併用しても、耐水性が優れることが判った。
実施例5において、架橋澱粉の代わりにタピオカ澱粉原料の4級カチオン化澱粉(窒素量0.3%、膨潤度10.0ml)で架橋処理をしないもの(以下、カチオン化澱粉という)を用いた以外は同様にして、キトサン2を0.8部、カチオン化澱粉を10.0部、アジピン酸を1.6部、イオン交換水87.6部の割合で均一に溶解し試料8(pH3.85、25℃、30rpmでの粘度30,700mPa・s)の糊液を得た。
実施例4と同様にして、試料8の糊液をクラフト紙に26番のメイヤーバーで塗布し、クラフト紙を貼り合わせた。糊液の塗工面20mm×20mmとし、乾燥後、片方のクラフト紙の端に10gの重りをつけて水中に吊るし、T形剥離でクラフト紙が剥がれ落ちるまでの時間を測定した。
架橋処理をしていないカチオン化澱粉は粘度が高く、餅のような粘性で塗工適性はなかった。
試料8の耐水性試験は48時間で剥がれ落ちなかったが、接着面はほぼ剥がれており、かろうじて接着していた。架橋処理をしていないカチオン化澱粉は塗工適性がなく、耐水性も劣ることが判った。
実施例5において、架橋澱粉の代わりにタピオカ澱粉原料の酸化アセチル化澱粉(アセチル化置換度DS0.08、膨潤度10.0ml)で架橋処理をしないもの(以下、酸化アセチル化澱粉という)を用いた以外は同様にして、キトサン2を0.8部、酸化アセチル化澱粉を10.0部、アジピン酸を1.6部、イオン交換水87.6部の割合で均一に溶解し試料9(pH3.80、25℃、30rpmでの粘度3,556mPa・s)の糊液を得た。
実施例4と同様にして、試料9の糊液をクラフト紙に26番のメイヤーバーで塗布し、クラフト紙を貼り合わせた。糊液の塗工面20mm×20mmとし、乾燥後、片方のクラフト紙の端に10gの重りをつけて水中に吊るし、T形剥離でクラフト紙が剥がれ落ちるまでの時間を測定した。
試料9は20分で剥がれ落ちた。架橋処理をしていない酸化アセチル化澱粉は耐水性がないことが判った。
実施例5において、架橋澱粉の代わりにタピオカ澱粉原料の酸化ヒドロキシプロピル化澱粉(ヒドロキシプロピル化置換度DS0.03、膨潤度10.0ml)で架橋処理をしないもの(以下、酸化ヒドロキシプロピル化澱粉という)を用いた以外は同様にして、キトサン2を0.8部、酸化ヒドロキシプロピル化澱粉を10.0部、アジピン酸を1.6部、イオン交換水87.6部の割合で均一に溶解し試料10(pH3.81、25℃、30rpmでの粘度8,820mPa・s)の糊液を得た。
実施例4と同様にして、試料10の糊液をクラフト紙に26番のメイヤーバーで塗布し、クラフト紙を貼り合わせた。糊液の塗工面20mm×20mmとし、乾燥後、片方のクラフト紙の端に10gの重りをつけて水中に吊るし、T形剥離でクラフト紙が剥がれ落ちるまでの時間を測定した。
試料10は14分で剥がれ落ちた。架橋処理をしていない酸化ヒドロキシプロピル化澱粉は耐水性がないことが判った。
試料7の糊液、及び、架橋澱粉2のみを試料7の糊液と同じ粘度に調整した糊液(固形分9.5%、pH6.16、25℃、30rpmでの粘度41,600mPa・s)(試料11)を裁断した紙管原紙に26番メイヤーバーを使用し塗工面が2cm×2cmとなるように塗工し、室温で8g/cm2の荷重をかけ10分間圧締し貼り合わせた。
試料7又は試料11を塗布し接着した紙管原紙を20℃、相対湿度65%で2日間養生し、引張り速度20mm/分にて引張り試験機(テンシロン)で引張せん断試験を行った。試料7は3検体の剥離強度平均値が31.3kgfで紙管原紙の材料破壊が起こっていた。試料11は3検体の剥離強度平均値が25.4kgfで紙管原紙の材料破壊が起こっていた。
キトサンを配合しない試料11は常態においてもキトサンを配合した試料7より接着力が劣ることが判った。
試料7又は試料11を塗布し接着した紙管原紙を20℃、相対湿度65%で2日間養生した後、20℃水中に2時間浸漬後軽く水を拭き取った状態で、引張り速度20mm/分にて引張り試験機(テンシロン)で引張せん断試験を行った。試料7は3検体の剥離強度平均値が6.9kgfで紙管原紙の材料破壊が起こっていた。試料11は3検体の剥離強度平均値が1.4kgfで紙管原紙の材料破壊が起こらず剥がれた。
キトサンが配合された試料7の方が耐水接着力に優れていることが判った。
試料7又は試料11を塗布し接着した紙管原紙を20℃、相対湿度65%で2日間養生した後、20℃水中に4時間浸漬後軽く水を拭き取った状態で、引張り速度20mm/分にて引張り試験機(テンシロン)で引張せん断試験を行った。試料7は3検体の剥離強度平均値が5.2kgfで紙管原紙の材料破壊は起こっていなかったが毛羽立って剥がれた。試料11は3検体の剥離強度平均値が0.4kgfで紙管原紙の材料破壊や毛羽立ちが起こらず剥がれた。キトサンが配合された試料7の方が耐水接着力に優れていることが判った。
実施例10で用いた試料7と試料11の糊液をJIS A 6922に規定する方法で合板に塗布し綿布を貼り合せ、20℃、相対湿度65%で2日間養生し、引張り速度200mm/分にて引張り試験機(テンシロン)で180°剥離試験を行った。
試料7は2検体10測定値の剥離強度平均値が838gf/25mmであった。試料11は2検体10測定値の剥離強度平均値が497gf/25mmであった。
キトサンを配合しない試料11は常態においてもキトサンを配合した試料7より剥離強度(接着力)が劣ることが判った。
実施例10で用いた試料7と試料11の糊液をJIS A
6922に規定する方法で合板に塗布し綿布を貼り合せ、20℃、相対湿度65%で2日間養生しさらに20℃、相対湿度93%の状態で3日間放置後、引張り速度200mm/分にて引張り試験機(テンシロン)で180°剥離試験を行った。
試料7は2検体10測定値の剥離強度平均値が682gf/25mmであった。試料11は2検体10測定値の剥離強度平均値が433gf/25mmであった。
キトサンを配合した試料7は、キトサンを配合しない試料11より高湿度下における剥離強度(接着力)が優り、耐湿性があることが判った。
Claims (1)
- 架橋澱粉、キトサン及び酸性剤を含有することを特徴とする水性接着剤組成物であって、架橋澱粉を7〜10質量部、キトサンを0.5〜0.9質量部、及び酸性剤を0.5〜1.8質量部含有し、架橋澱粉、キトサン及び酸性剤の合計が8.0〜12.7質量部であることを特徴とする水性接着剤組成物。
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