JP5059413B2 - バイオ電池 - Google Patents
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Description
一方、触媒として生体触媒を用いるバイオ燃料電池がある。このバイオ燃料電池は、生体触媒(例えば酵素及び該酵素を含む生体物質)により燃料を酸化する際に生じた還元型の補酵素から、容易に酸化・還元反応を行うメディエータ(mediator)により、電子を外部回路に取り出すことで、燃料の持つ化学エネルギーを電気エネルギーへ変換するデバイスである。前述のように、バイオ燃料電池は、触媒が生体触媒(例えば酵素)であるため、該生体触媒の選択により、様々な基質を燃料として利用できる。そのため、従来の燃料電池では十分に検討されなかった、バイオマス由来の物質、例えばグルコース又はエタノールから電気エネルギーを取り出すデバイスとしてのバイオ燃料電池、生体内に存在するグルコース又は乳酸などにより作動するミクロな医療機器の動力源としてのバイオ燃料電池の開発が期待されている。
A.Heller, Phys. Chem. Chem. Phys., 6, 209(2004)。
また、本発明の目的は、上記の燃料電池用の材料に限らず、電子授受に関与する材料を提供することにある。
<1> 7nm以上の細孔にかかる比表面積である外部比表面積が0.5m2/g以上である電子伝導体、レドックスポリマー、及び生体触媒又はその類似体、例えば生体触媒を有する材料であって、
前記レドックスポリマーは、酸化還元挙動を示す酸化還元部位を有し、且つ10−16S/cm以上の電子伝導性を示す、上記材料。
前記レドックスポリマーは、酸化還元挙動を示す酸化還元部位を有し、且つ10−16S/cm以上の電子伝導性を示し、
前記材料と接触する第1の物質が前記生体触媒又はその類似体により酸化される際に生じる電子を前記レドックスポリマーを介して電子伝導体に伝達する、上記材料。
<3> 7nm以上の細孔にかかる比表面積である外部比表面積が0.5m2/g以上である電子伝導体、レドックスポリマー、及び生体触媒又はその類似体、例えば生体触媒を有する材料であって、
前記レドックスポリマーは、酸化還元挙動を示す酸化還元部位を有し、且つ10−16S/cm以上の電子伝導性を示し、
前記材料と接触する第2の物質が前記生体触媒又はその類似体により還元される際の電子を電子伝導体を介してレドックスポリマーに伝達する、上記材料。
<5> 上記<1>〜<4>のいずれかにおいて、電子伝導体は、その形状が粒状、又は棒状であるのがよい。粒状の場合はその粒径、棒状である場合はその断面の直径がそれぞれ、10μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは100nm以下であるのがよい。
<7> 上記<1>〜<6>のいずれかにおいて、電子伝導体の外部比表面積が1m2/g以上、好ましくは6〜5000m2/g、より好ましくは10〜800m2/gであるのがよい。
<8> 上記<1>〜<7>のいずれかにおいて、レドックスポリマーの酸化還元部位が、フェロセン誘導体類(例えばフェロセン基、カルボキシフェロセン、ジカルボキシフェロセン、メチルフェロセン、ジメチルフェロセン、ビニルフェロセンなど)、キノン化合物(例えばベンゾキノン、ヒドロキノン、ナフトキノン、ピロキノリンキノンなど)、オスミウムビピリジン錯体類([Os(4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)2Cl]+/2+、[Os(4,4’-ジアミノ-2,2’-ビピリジン)2Cl]+/2+、[Os(4,4’-ジメトキシ-2,2’-ビピリジン)2Cl]+/2+、[Os(ターピリジン)(4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)2Cl]2+/3+、[Os(4,4’-ジクロロ-2,2’-ビピリジン)2Cl]+/2+など)、オスミウムビイミダゾール錯体類([Os(4,4’-ジアルキル化-2,2’-ビイミダゾール)3]2+/3+など)、ビオローゲン、及び2,2-アゾビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホネート)からなる群から選ばれるのがよい。
<10> 上記<1>〜<9>のいずれかにおいて、生体触媒が、オキシダーゼ又はデヒドロゲナーゼであるのがよく、特に、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、グルコン酸2-デヒドロゲナーゼ、ケトグルコン酸2-デヒドロゲナーゼ、アルコールオキシダーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、ギ酸デヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、アルドースデヒドロゲナーゼ、オリゴ糖デヒドロゲナーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、ラッカーゼ、及びシトクロームオキシダーゼからなる群から選ばれるのがよい。
<11> 上記<1>〜<10>のいずれかにおいて、材料が、電池用負極、又は電池用正極として用いられるのがよい。
プロトン伝導性を有する正極;及び
前記正極と前記負極とに挟まれた電解質;を有する電池であって、
前記第1のレドックスポリマーは、酸化還元挙動を示す第1の酸化還元部位を有し、且つ10−16S/cm以上の電子伝導性を示す、上記電池。
<14> 上記<12>又は<13>において、第1の生体触媒が、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、グルコン酸2-デヒドロゲナーゼ、ケトグルコン酸2-デヒドロゲナーゼ、アルコールオキシダーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、ギ酸デヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、アルドースデヒドロゲナーゼ、及びオリゴ糖デヒドロゲナーゼからなる群から選ばれるのがよい。
<16> 上記<12>〜<15>のいずれかにおいて、正極が第2の電子伝導体を有するのがよい。
<17> 上記<12>〜<16>のいずれかにおいて、正極が第2のレドックスポリマーを有し、該レドックスポリマーは、酸化還元挙動を示す第2の酸化還元部位を有し、且つ10−16S/cm以上の電子伝導性を示すのがよい。
<19> 上記<12>〜<18>のいずれかにおいて、正極は、プロトン伝導性ポリマーを有するのがよい。
<20> 上記<12>〜<19>のいずれかにおいて、正極が触媒を有するのがよい。
<21> 上記<20>において、触媒が第2の生体触媒又はその類似体であるのがよい。
<22> 上記<21>において、第2の生体触媒が、ビリルビンオキシダーゼ、ラッカーゼ、及びシトクロームオキシダーゼからなる群から選ばれるのがよい。
<24> 上記<12>〜<23>のいずれかにおいて、第1及び/又は第2の電子伝導体は各独立に、その形状が粒状、又は棒状であるのがよい。粒状の場合はその粒径、棒状である場合はその断面の直径がそれぞれ、10μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは100nm以下であるのがよい。
<25> 上記<23>又は<24>において、カーボンが、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、及びカーボンナノホーンからなる群から選ばれるのがよい。
<26> 上記<12>〜<25>のいずれかにおいて、第1及び/又は第2の電子伝導体の外部比表面積が1m2/g以上、好ましくは6〜5000m2/g、より好ましくは10〜800m2/gであるのがよい。
<27> 上記<12>〜<26>のいずれかにおいて、電池は燃料電池であるのがよい。
a)電子伝導体とレドックスポリマー又はレドックスポリマー前駆体とを混合及び/又は結合する工程(但し、酸化還元部位を有しないレドックスポリマー前駆体を用いる場合、前記酸化還元部位をレドックスポリマー前駆体に導入しレドックスポリマーを形成する工程をa)〜c)の工程のいずれかの前後又はa)〜c)と同時に有する);
b)電子伝導体前駆体を3次元的な電子伝導体へと形成する工程;
c)生体触媒又はその類似体を導入する工程。
<30> 上記<28>又は<29>のいずれかにおいて、電子伝導体前駆体は、その形状が粒状、又は棒状であるのがよい。粒状の場合はその粒径、棒状である場合はその断面の直径がそれぞれ、10μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは100nm以下であるのがよい。
<32> 上記<28>〜<31>のいずれかにおいて、電子伝導体の外部比表面積が1m2/g以上、好ましくは6〜5000m2/g、より好ましくは10〜800m2/gであるのがよい。
<33> 上記<28>〜<32>のいずれかにおいて、レドックスポリマーの酸化還元部位が、フェロセン誘導体類(例えばフェロセン基、カルボキシフェロセン、ジカルボキシフェロセン、メチルフェロセン、ジメチルフェロセン、ビニルフェロセンなど)、キノン化合物(例えばベンゾキノン、ヒドロキノン、ナフトキノン、ピロキノリンキノンなど)、オスミウムビピリジン錯体類([Os(4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)2Cl]+/2+、[Os(4,4’-ジアミノ-2,2’-ビピリジン)2Cl]+/2+、[Os(4,4’-ジメトキシ-2,2’-ビピリジン)2Cl]+/2+、[Os(ターピリジン)(4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)2Cl]2+/3+、[Os(4,4’-ジクロロ-2,2’-ビピリジン)2Cl]+/2+など)、オスミウムビイミダゾール錯体類([Os(4,4’-ジアルキル化-2,2’-ビイミダゾール)3]2+/3+など)、ビオローゲン、及び2,2-アゾビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホネート)からなる群から選ばれるのがよい。
<35> 上記<28>〜<34>のいずれかにおいて、生体触媒が、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、グルコン酸2-デヒドロゲナーゼ、ケトグルコン酸2-デヒドロゲナーゼ、アルコールオキシダーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、ギ酸デヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、アルドースデヒドロゲナーゼ、オリゴ糖デヒドロゲナーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、ラッカーゼ、及びシトクロームオキシダーゼからなる群から選ばれるのがよい。
<36> 上記<28>〜<35>のいずれかにおいて、材料が、電池用負極、又は電池用正極として用いられるのがよい。
1〜n個の電池領域が第1〜第nの電池領域であり、該第1〜第nの電池領域が直列及び/又は並列に配線され、
第1の電池領域は、第1の負極、第1の正極及び前記第1の正極と前記第1の負極とに挟まれた第1の電解質を有し、
第1の負極が7nm以上の細孔にかかる比表面積である外部比表面積が0.5m2/g以上、好ましくは6〜5000m2/g、より好ましくは10〜800m2/gである第1の電子伝導体、第1のレドックスポリマー、及び第1の生体触媒又はその類似体を有し、前記第1のレドックスポリマーは、酸化還元挙動を示す第1の酸化還元部位を有し、且つ10−16S/cm以上の電子伝導性を示し、
第1の正極が電子伝導性を有し、
第mの電池領域(mは2からnまでのすべての整数)は各々、第mの負極、第mの正極及び前記第mの正極と前記第mの負極とに挟まれた第mの電解質を有し、
第mの負極が7nm以上の細孔にかかる比表面積である外部比表面積が0.5m2/g以上である第mの電子伝導体(第mの電子伝導体は、第1〜第(m−1)の電子伝導体と同じであっても異なってもよい)、第mのレドックスポリマー(第mのレドックスポリマーは、第1〜第(m−1)のレドックスポリマーと同じであっても異なってもよい)、及び第mの生体触媒又はその類似体(第mの生体触媒又はその類似体は各々、第1〜第(m−1)の生体触媒又はその類似体とは異なる)を有し、前記第mのレドックスポリマーは、酸化還元挙動を示す第mの酸化還元部位(第mの酸化還元部位は、第1〜第(m−1)の酸化還元部位と同じであっても異なってもよい)を有し、且つ10−16S/cm以上の電子伝導性を示し、
第mの正極が電子伝導性を有し、
第1の負極において、燃料が第1の生体触媒又はその類似体により第1の分解物に分解されると共に1電子以上を生成し、
第mの負極の各々において、第(m−1)の分解物が第mの生体触媒又はその類似体により第mの分解物に分解されると共に1電子以上を生成する、上記電池。
<39> 上記<37>又は<38>において、第(m−1)の正極と第mの負極とが通電され、第1〜第nの電池領域が直列に配線されるのがよい。
1〜n個の電池領域が第1〜第nの電池領域であり、該第1〜第nの電池領域が直列及び/又は並列に配線され、
第1の電池領域が、第1の負極、第1の正極及び前記第1の正極と前記第1の負極とに挟まれた第1の電解質を有し、
第1の負極が第1の電子伝導体、第1のレドックスポリマー、及び第1の生体触媒又はその類似体を有し、前記第1のレドックスポリマーは、酸化還元挙動を示す第1の酸化還元部位を有し、且つ10−16S/cm以上の電子伝導性を示し、
第1の正極が電子伝導性を有し、
第mの電池領域(mは2からnまでのすべての整数)は各々、第mの負極、第mの正極及び前記第mの正極と前記第mの負極とに挟まれた第mの電解質を有し、
第mの負極が第mの電子伝導体(第mの電子伝導体は第1〜第(m−1)の電子伝導体と同じであっても異なってもよい)、第mのレドックスポリマー(第mのレドックスポリマーは第1〜第(m−1)のレドックスポリマーと同じであっても異なってもよい)、及び第mの生体触媒又はその類似体(第mの生体触媒又はその類似体は各々、第1〜第(m−1)の生体触媒又はその類似体とは異なる)を有し、前記第mのレドックスポリマーは、酸化還元挙動を示す第mの酸化還元部位(第mの酸化還元部位は第1〜第(m−1)の酸化還元部位と同じであっても異なってもよい)を有し、且つ10−16S/cm以上の電子伝導性を示し、
第mの正極が電子伝導性を有し、
第1の負極において、燃料が第1の生体触媒又はその類似体により第1の分解物に分解されると共に1電子以上を生成し、
第mの負極の各々において、第(m−1)の分解物が第mの生体触媒又はその類似体により第mの分解物に分解されると共に1電子以上を生成し、
第1〜第nの電解質が略一平面に形成され、第1〜第nの負極が該略一平面の一面に、第1〜第nの正極が該略一平面の他面に形成され、且つ、第1〜第nの負極が形成される略一平面の一面上に、前記燃料及び第1〜第nの分解物が接触するように、第1〜第nの負極が形成される、上記電池。
<42> 上記<40>又は<41>において、第(m−1)の正極と第mの負極とが通電され、第1〜第nの電池領域が直列に配線されるのがよい。
<43> 上記<40>〜<42>のいずれかにおいて、第1〜第nの負極の第1〜第nの電子伝導体は、7nm以上の細孔にかかる比表面積である外部比表面積が0.5m2/g以上であるのがよい。
<45> 上記<37>〜<43>のいずれかにおいて、燃料がエタノールであり、nが2であり、第1の生体触媒がアルコールデヒドロゲナーゼであり、第1の分解物がアセトアルデヒドであり、第2の生体触媒がアルデヒドデヒドロゲナーゼであり、第2の分解物が酢酸であるのがよい。
<47> 上記<37>〜<46>のいずれかにおいて、第1〜第nの負極がプロトン伝導性を有するのがよい。特に、プロトン伝導性を示す材料、例えばNafion、炭化水素系プロトン伝導性ポリマーを有するのがよい。
<48> 上記<37>〜<47>のいずれかにおいて、第1〜第nの電子伝導体が、カーボン、導電性ポリマー、及び金属からなる群から選ばれるのがよい。なお、導電性ポリマーの場合、その分子量が50〜100万、好ましくは1000〜10万であるのがよい。
<50> 上記<48>又は<49>において、カーボンが、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、及びカーボンナノホーンからなる群から選ばれるのがよい。
<51> 上記<37>〜<50>のいずれかにおいて、第1〜第nの電子伝導体は、その各々の外部比表面積が1m2/g以上、好ましくは6〜5000m2/g、より好ましくは10〜800m2/gであるのがよい。
<54> 上記<37>〜<53>のいずれかにおいて、第1〜第nの正極は各々が第1〜第p(pは2〜nのすべての整数)の電子伝導体を有するのがよい。
<55> 上記<54>において、第1〜第pの電子伝導体は、カーボン、導電性ポリマー、及び金属からなる群から選ばれるのがよい。なお、導電性ポリマーの場合、その分子量が50〜100万、好ましくは1000〜10万であるのがよい。
<57> 上記<55>又は<56>において、カーボンが、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、及びカーボンナノホーンからなる群から選ばれるのがよい。
<58> 上記<54>〜<57>のいずれかにおいて、第1〜第pの電子伝導体は、その各々の外部比表面積が1m2/g以上、好ましくは6〜5000m2/g、より好ましくは10〜800m2/gであるのがよい。
<60> 上記<37>〜<59>のいずれかにおいて、第1〜第nの正極は各々が第1〜第p(pは2〜nのすべての整数)のレドックスポリマーを有し、該第1〜第pのレドックスポリマーは各々が、酸化還元挙動を示す第1〜第pの酸化還元部位を有し、且つ10−16S/cm以上の電子伝導性を示すのがよい。
<62> 上記<37>〜<61>のいずれかにおいて、第1〜第nの正極は各々が、プロトン伝導性ポリマーを有するのがよい。
<63> 上記<37>〜<62>のいずれかにおいて、第1〜第nの正極は各々が触媒を有するのがよい。
<65> 上記<64>において、正極用の生体触媒が、ビリルビンオキシダーゼ、ラッカーゼ、及びシトクロームオキシダーゼからなる群から選ばれるのがよい。
<66> 上記<37>〜<65>のいずれかにおいて、第1〜第nの正極は酸化性ガス又は酸化性液体(例えば、酸素ガス、酸素溶存液体、酸素キャリア含有液体(酸素キャリアとは、ヘモグロビン、ヘモグロビン模倣体など酸素運搬機能を有する化合物の総称をいう))と接触するように配置されるのがよい。
また、本発明により、上記の燃料電池用の材料に限らず、電子授受に関与する材料を提供することができる。
本発明は、材料、特に電子授受に関与する材料を提供する。本発明の材料は、例えば電池用、例えばバイオ燃料電池用材料を提供する。また、本発明の材料は、燃料電池とは逆反応、即ち、水から水素及び/又は酸素をもたらす材料を提供する。さらに、本発明は、上記作用に限らず、電子授受に関与することができる材料を提供する。
本発明の材料は、次のように作用する。即ち、本発明の材料と接触する第1の物質が生体触媒などにより酸化される際に生じる電子をレドックスポリマーを介して電子伝導体に伝達されるか、又は本発明の材料と接触する第2の物質が生体触媒などにより還元される際の電子を電子伝導体を介してレドックスポリマーに伝達される。
本発明の用いられる電子伝導体は、外部比表面積が0.5m2/g以上、好ましくは1m2/g以上、好ましくは6〜5000m2/g、より好ましくは10〜800m2/gであるのがよい。
ここで、外部比表面積とは、7nm以上の細孔にかかる比表面積を意味する。本発明において、「外部比表面積」とは、特記しない限り、上記の意味を有する。
例えば、電子伝導体が、粒状物質由来である場合、次のように、「外部比表面積」が概算される。即ち、粒子の半径rp[m]、粒子の密度:d[g/m3]とすると、外部比表面積S[m2/g]は次のように表される。
S=4πrp 2/(4/3πrp 3×d)=3/(rp×d)。
S=(2πrrod 2+2πrrod×L)/(πrrod 2×L×d)
ここで、「2πrrod 2」はほとんど無視できるので、Sは次のように概算できる。
S=2/(rrod×d)。
また、電子伝導体として、カーボンを用いる場合、該カーボンとして、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、及びカーボンナノホーンなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
本発明に用いられるレドックスポリマーは、酸化還元挙動を示す酸化還元部位を有するのがよい。また、レドックスポリマーは、電子伝導性を有するのがよい。レドックスポリマーの電子伝導性は、そのポリマー鎖長に依存するが、10−16S/cm以上であるのがよい。即ち、レドックスポリマーの鎖長が長い場合、より高い電子伝導性を有するのがよく、鎖長が短い場合、低い電子伝導性(但し、10−16S/cm以上)であってもよい。
レドックスポリマーは、酸化還元部位を有する。該部位を有するレドックスポリマーは、それを有するモノマーとそれ以外のモノマーとのブロック共重合体であっても、単独重合体又は共重合体に酸化還元部位を付与する反応により調製してもよい。なお、共重合体の場合、2元又は3元以上のモノマーからなってもよい。
本発明の材料は、生体触媒又はその類似体を有する。類似体とは、生体触媒と同様の機能を有する、天然又は人工の物質である。類似体として、天然の生体触媒の修飾体、又は天然の生体触媒を模した人工物質を挙げることができる。なお、本明細書において、生体触媒反応とは、生体触媒の有する作用による反応をいい、生体触媒類似反応とは、生体触媒の類似体による、生体触媒の有する作用と同様の作用による反応をいう。
例えば、生体触媒として、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、グルコン酸2-デヒドロゲナーゼ、ケトグルコン酸2-デヒドロゲナーゼ、アルコールオキシダーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、ギ酸デヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、アルドースデヒドロゲナーゼ、オリゴ糖デヒドロゲナーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、ラッカーゼ、及びシトクロームオキシダーゼなどを挙げることができるがこれらに限定されない。なお、酸化還元部位として、上記のうち、2つ以上の種類のものを含んでもよい。
また、上記の負極と合わせて構成することにより、燃料電池としての作用を有することができる。
したがって、本発明の材料は、電池用材料、特に電池用負極、又は電池用正極として用いることができる。特に、電池用負極として用いるのが好ましい。
本発明の燃料電池、特にバイオ燃料電池は、負極;正極;及び正極と負極とに挟まれた電解質を有し、負極及び/又は正極が上述の材料を用いることにより構成される。
上述のように、負極は、上記材料を用いることができる。以下、本発明の材料を負極として用いる場合を説明する。
負極は、プロトン伝導性を有してもよい。特に、負極は、プロトン伝導性を示す材料、例えばNafion、炭化水素系プロトン伝導性ポリマーを有するのがよい。
負極の生体触媒(第1の生体触媒)として、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、グルコン酸2-デヒドロゲナーゼ、ケトグルコン酸2-デヒドロゲナーゼ、アルコールオキシダーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、ギ酸デヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、アルドースデヒドロゲナーゼ、及びオリゴ糖デヒドロゲナーゼなどを挙げることができるがこれらに限定されない。
正極は、プロトン伝導性を有する。正極は、プロトン伝導性を示す材料、例えばNafion、炭化水素系プロトン伝導性ポリマーを有するのがよい。
正極は、負極の電子導電体(第1の電子伝導体)と同じであっても異なってもよい第2の電子伝導体を有するのがよい。
また、正極は、負極のレドックスポリマー(第1のレドックスポリマー)と同じであっても異なってもよい第2のレドックスポリマーを有してもよい。該レドックスポリマーは、酸化還元挙動を示す第2の酸化還元部位を有し、且つ10−16S/cm以上の電子伝導性を示すのがよい。
さらに、正極は、生体触媒を含めた触媒を有する。
第2の生体触媒として、ビリルビンオキシダーゼ、ラッカーゼ、及びシトクロームオキシダーゼを挙げることができるがこれらに限定されない。
電解質として、従来より公知の電解質、特にプロトン伝導性を有する電解質を用いることができる。電解質は、正極と負極との間に配置する。
上記では、負極用の燃料としてグルコース、負極の第1の生体触媒としてグルコースオキシダーゼを用い、且つ正極用の燃料(媒体)として酸素、正極の第2の生体触媒としてシトクロームオキシダーゼを用いる例を説明したが、これに限定されるものではなく、上述の負極用の生体触媒と負極用の燃料を用いることができる。また、正極についても、その他の組み合わせを用いることができる。
このようにして、本発明は、バイオ燃料電池を提供することができる。なお、バイオ燃料電池として構成する場合、燃料供給用容器(負極用、正極用のそれぞれ)を有するのがよい。
本発明は、次に示す多段階反応型電池も提供する。
即ち、本発明は、燃料をn段階(nは2以上の整数)でn以上の生体触媒反応又は生体触媒類似反応で分解する、1〜n個の電池領域を有する電池であって、
1〜n個の電池領域が第1〜第nの電池領域であり、該第1〜第nの電池領域が直列及び/又は並列に配線され、
第1の電池領域は、第1の負極、第1の正極及び前記第1の正極と前記第1の負極とに挟まれた第1の電解質を有し、
第1の負極が7nm以上の細孔にかかる比表面積である外部比表面積が0.5m2/g以上、好ましくは6〜5000m2/g、より好ましくは10〜800m2/gである第1の電子伝導体、第1のレドックスポリマー、及び第1の生体触媒などを有し、前記第1のレドックスポリマーは、酸化還元挙動を示す第1の酸化還元部位を有し、且つ10−16S/cm以上の電子伝導性を示し、
第1の正極が電子伝導性を有し、
第mの電池領域(mは2からnまでのすべての整数)は各々、第mの負極、第mの正極及び前記第mの正極と前記第mの負極とに挟まれた第mの電解質を有し、
第mの負極が7nm以上の細孔にかかる比表面積である外部比表面積が0.5m2/g以上である第mの電子伝導体(第mの電子伝導体は、第1〜第(m−1)の電子伝導体と同じであっても異なってもよい)、第mのレドックスポリマー(第mのレドックスポリマーは、第1〜第(m−1)のレドックスポリマーと同じであっても異なってもよい)、及び第mの生体触媒など(第mの生体触媒などは各々、第1〜第(m−1)の生体触媒などとは異なる)を有し、前記第mのレドックスポリマーは、酸化還元挙動を示す第mの酸化還元部位(第mの酸化還元部位は、第1〜第(m−1)の酸化還元部位と同じであっても異なってもよい)を有し、且つ10−16S/cm以上の電子伝導性を示し、
第mの正極が電子伝導性を有し、
第1の負極において、燃料が第1の生体触媒などにより第1の分解物に分解されると共に1電子以上を生成し、
第mの負極の各々において、第(m−1)の分解物が第mの生体触媒などにより第mの分解物に分解されると共に1電子以上を生成する、上記電池を提供する。なお、第1〜第nの電池領域に用いられる第1〜第nの負極、及び第1〜第nの正極などは、上述の電池と同様の材料も用いることができる。
さらに、上述の電池において、第(m−1)の正極と第mの負極とが通電され、第1〜第nの電池領域が直列に配線されるのがよい。直列配置することにより、高起電力を有する電池を提供できる点で好ましい。
即ち、本発明は、燃料をn段階(nは2以上の整数)でn以上の生体触媒反応又は生体触媒類似反応で分解する、1〜n個の電池領域を有する電池であって、
1〜n個の電池領域が第1〜第nの電池領域であり、該第1〜第nの電池領域が直列及び/又は並列に配線され、
第1の電池領域が、第1の負極、第1の正極及び前記第1の正極と前記第1の負極とに挟まれた第1の電解質を有し、
第1の負極が第1の電子伝導体、第1のレドックスポリマー、及び第1の生体触媒などを有し、前記第1のレドックスポリマーは、酸化還元挙動を示す第1の酸化還元部位を有し、且つ10−16S/cm以上の電子伝導性を示し、
第1の正極が電子伝導性を有し、
第mの電池領域(mは2からnまでのすべての整数)は各々、第mの負極、第mの正極及び前記第mの正極と前記第mの負極とに挟まれた第mの電解質を有し、
第mの負極が第mの電子伝導体(第mの電子伝導体は第1〜第(m−1)の電子伝導体と同じであっても異なってもよい)、第mのレドックスポリマー(第mのレドックスポリマーは第1〜第(m−1)のレドックスポリマーと同じであっても異なってもよい)、及び第mの生体触媒など(第mの生体触媒などは各々、第1〜第(m−1)の生体触媒などとは異なる)を有し、前記第mのレドックスポリマーは、酸化還元挙動を示す第mの酸化還元部位(第mの酸化還元部位は第1〜第(m−1)の酸化還元部位と同じであっても異なってもよい)を有し、且つ10−16S/cm以上の電子伝導性を示し、
第mの正極が電子伝導性を有し、
第1の負極において、燃料が第1の生体触媒などにより第1の分解物に分解されると共に1電子以上を生成し、
第mの負極の各々において、第(m−1)の分解物が第mの生体触媒などにより第mの分解物に分解されると共に1電子以上を生成し、
第1〜第nの電解質が略一平面に形成され、第1〜第nの負極が該略一平面の一面に、第1〜第nの正極が該略一平面の他面に形成され、且つ、第1〜第nの負極が形成される略一平面の一面上に、前記燃料及び第1〜第nの分解物が接触するように、第1〜第nの負極が形成される、上記電池を提供する。なお、第1〜第nの電池領域に用いられる第1〜第nの負極、及び第1〜第nの正極などは、上述の電池と同様の材料に限定されることはないが、上述の電池と同様の材料も用いることができる。
また、上述の電池と同様に、第(m−1)の正極と第mの負極とが通電され、第1〜第nの電池領域が直列に配線されるのがよい。
さらに、上述の電池と同様に、第1〜第nの負極の第1〜第nの電子伝導体は、7nm以上の細孔にかかる比表面積である外部比表面積が0.5m2/g以上であるのがよい。
略平板状の部分は、第1の電池領域22、第2の電池領域23、第3の電池領域24、第4の電池領域25からなる。第1〜第4の電池領域は各々、第1〜第4の負極22a〜25a、第1〜第4の電解質22b〜25b、第1〜第4の正極22c〜25cを有する。
第1の正極22cと第2の負極23aとは配線30により通電されている。同様に、第2の正極23cと第3の負極24aとは配線31により、第3の正極24cと第4の負極25aとは配線32により、通電されている。なお、絶縁体33は、第1と第2の電池領域を絶縁する一方、配線30を通す図示しない孔を設けられる。また、絶縁体34及び35も、絶縁体33と同様に設けられる。配線37及び配線38はそれぞれ、電池としての負極及び正極としての作用を有する。
ここで、第1〜第4の電解質は、プロトン伝導性を有する。なお、一般に、第1〜第nの電解質は、用いる燃料及び酸化性ガス又は酸化性液体に依存して、種々の材質からなる、種々の特性を有する電解質を用いることができる。例えば、固体電解質膜、より具体的には、Nafionなどの通常用いられる固体電解質膜、多孔性膜の孔中にプロトン伝導性材料、例えばプロトン伝導性を有する液(例えば、プロトン伝導性を有するポリマー、プロトン伝導性を有する緩衝液など)を充填させてなる電解質膜などを用いることができる。
第1〜第4の正極は、プロトン伝導性及び電子伝導性を有する。
第1〜第4の正極において、酸化性ガス、例えば酸素が、移動してきたプロトン及び電子と反応し、水を生成する。なお、一般に、正極は、酸化性ガス又は酸化性液体に含まれる酸素とプロトンと電子とから水を生成する反応における触媒を有するのがよい。該正極用触媒は、用いる酸化性ガス又は酸化性液体などに依存するが、上述の正極用の生体触媒などを用いることができる。
さらに、燃料としてグルコースを用いる例を以下に示す。
本発明の材料は、次のような製法により調製することができる。
即ち、次のa)〜c)を順不同に有するか及び/又はa)〜c)のいずれか2つもしくは3つを同時に行うことにより、調製することができる。
a)電子伝導体とレドックスポリマー又はレドックスポリマー前駆体とを混合及び/又は結合する工程(但し、酸化還元部位を有しないレドックスポリマー前駆体を用いる場合、前記酸化還元部位をレドックスポリマー前駆体に導入しレドックスポリマーを形成する工程をa)〜c)の工程のいずれかの前後又はa)〜c)と同時に有する);
b)電子伝導体前駆体を3次元的な電子伝導体へと形成する工程;
c)生体触媒又はその類似体を導入する工程。
なお、ここで、「電子伝導体」、「レドックスポリマー」、「生体触媒又はその類似体」、「酸化還元部位」の語は、材料と同定義である。
また、a)工程とb)工程との同時に行い、その後にc)工程を行うなど、2つ以上の工程を同時に行うことができる。
さらに、a)工程において、酸化還元部位を有するレドックスポリマーの代わりに、酸化還元部位を有しないレドックスポリマー前駆体を用いる場合、該酸化還元部位を前駆体に導入する工程を、上記a)〜c)工程の前後又は同時に行うこともできる。
以下の、簡略化した化学反応式に示すように、カーボンブラックへのアゾ基導入を行った。これには、まず、カーボンブラック上のフェノール性OH基又はCOOH基へジイソシアネートを反応させることによりイソシアネート(−NCO)基を導入する。その後、このイソシアネート(−NCO)基と、両末端にカルボキシル基を有するアゾ化合物とを反応させることにより、アゾ(−N=N−)基をカーボンブラックに導入する。
「生体触媒又はその類似体の導入」は、単に材料への混合による導入であっても、例えば生体触媒同士の架橋反応、生体触媒とウシ血清アルブミンとグルタルアルデヒドとの架橋反応を用いることにより、材料に固定するように導入するのがよい。
カーボンブラック(以下、単に「CB」と略記する)としてケッチェンブラック(比表面積:約800m2/g;外部比表面積:約200m2/g;粒径:30nm)を用いた。
CB2.5g、脱水ジメチルスルホキシド(以下、単に「DMSO」と略記する)65ml、α―ピコリン1ml、及び2,4-ジイソシアン酸トリレン1mlを、窒素雰囲気下、60℃で4時間反応させることで、CBにイソシアネート(−NCO)基を導入した。
反応溶液を室温まで冷却後、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)2.0gのDMSO(8ml)溶液を該反応溶液へ加え、窒素雰囲気下、室温で8時間反応させることにより、アゾ(−N=N−)基をCBに導入した。反応後、反応溶液を濾過により除去し、未反応物を除去するためにメタノール溶液中で10分間攪拌した。その後、減圧濾過を行い、メタノールにより数回洗浄した。なお、特記しない限り、試薬は精製せずに用いた。
アゾ基導入CBへ、アクリルアミド(以下、単に「AAm」と略記する)、ビニルフェロセン(以下、単に「VFc」と略記する)のグラフト重合を行った。アゾ基導入CB0.3gへ、[AAm]=1.41mol/L、[VFc]=0.42mol/Lのジオキサン溶液を10ml加え、系内を脱気、窒素置換後、70℃で24時間反応させた。非グラフト性ポリマー、及び未反応物を除去するために、メタノール溶液中で10分間超音波洗浄した後、水を溶媒として24時間ソックスレー抽出を行った。
上記で得られた、レドックスポリマーをグラフト重合したCB又は未処理のCBと、結着剤としてPTFE懸濁液を混合したカーボンインクをスクリーン印刷によりカーボンペーパーへ塗布し、乾燥後、130℃、0.25MPaでホットプレスを行い、レドックスポリマーをグラフト重合したCBから調製したカーボン3次元電極Ered−1、及び未処理CBから調製したカーボン3次元電極E−2を得た。
上記で得られた3次元電極Ered−1を、30mg/mlグルコースオキシダーゼ(以下、単に「GOx」と略記する)を含む0.1Mリン酸緩衝液(PBS)へ10分間含浸させた後、0.1M PBSで30秒間洗浄を行った。続いて、20mg/mlのウシ血清アルブミン(BSA)を含む0.1M PBSへ10分間含浸させ、0.1M PBSで30秒間洗浄を行った。その後、2%のグルタルアルデヒド(GA)を含む0.1M PBSへ10分間含浸させ、0.1M PBSで1分間洗浄を行うことにより、生体触媒を3次元電極へ導入した電極Ered−1enを得た。
上記で得られた電極Ered−1、E−2、及びEred−1enに関して電気化学測定を行った。具体的には、各電極に金線をカーボンペーストにより固定化して作用極とし、電気化学測定を行った。参照極は飽和KCl中の銀・塩化銀電極、対極は白金黒電極を用いた。測定は、0.1Mグルコースを含むpH7.0の0.1M PBS中で行った。測定前に、測定溶液についてN2バブリングを30分間行い、溶存酸素を除去した。
電気化学測定の結果を図3及び図4に示す。
図4は、電極Ered−1enのCVの結果を示す。なお、図4中、実線は0.1Mグルコースを含む液での結果であり、点線はグルコースを含まない液での結果を示す。電極Ered−1enは、グルコース溶液中において、酸化ピーク電流が増加し、還元ピークがほぼみられないシグモイド型の応答が得られた。一方、グルコースを含まない液における電極E−1en(図4中、点線の結果)は、シグモイド型の応答が観察されなかった。これは、電極中の生体触媒がグルコースを酸化した際に生じた還元型の補酵素により、酸化型レドックスポリマーが還元されたためと考えられ、カーボン三次元電極中へ固定化した生体触媒は、レドックスポリマーと電子授受することが示された。
Claims (18)
- 7nm以上の細孔にかかる比表面積である外部比表面積が0.5m2/g以上であるカーボン、レドックスポリマー、及び生体触媒又はその類似体を有する材料であって、
前記カーボンが重合開始基を有し、
前記レドックスポリマーは、該重合開始基からグラフト重合により形成され、その一端が前記カーボンに化学的に結合し、
前記レドックスポリマーは、酸化還元挙動を示す酸化還元部位を有し、且つ10−16S/cm以上の電子伝導性を示す、上記材料。 - 前記材料と接触する第1の物質が前記生体触媒又はその類似体により酸化される際に生じる電子を前記レドックスポリマーを介して電子伝導体に伝達する請求項1記載の材料。
- 前記材料と接触する第2の物質が前記生体触媒又はその類似体により還元される際の電子を電子伝導体を介してレドックスポリマーに伝達する請求項1記載の材料。
- 前記カーボンが、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、及びカーボンナノホーンからなる群から選ばれる請求項1〜3のいずれか1項記載の材料。
- 前記カーボンの外部比表面積が1m2/g以上である請求項1〜4のいずれか1項記載の材料。
- 前記レドックスポリマーの酸化還元部位が、フェロセン誘導体類、キノン化合物、オスミウムビピリジン錯体類、オスミウムビイミダゾール錯体類、ビオローゲン、及び2,2-アゾビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホネート)からなる群から選ばれる請求項1〜5のいずれか1項記載の材料。
- 前記生体触媒が、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、グルコン酸2-デヒドロゲナーゼ、ケトグルコン酸2-デヒドロゲナーゼ、アルコールオキシダーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、ギ酸デヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、アルドースデヒドロゲナーゼ、オリゴ糖デヒドロゲナーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、ラッカーゼ、及びシトクロームオキシダーゼからなる群から選ばれる請求項1〜6のいずれか1項記載の材料。
- 前記材料が、電池用負極、又は電池用正極として用いられる請求項1〜7のいずれか1項記載の材料。
- 7nm以上の細孔にかかる比表面積である外部比表面積が0.5m2/g以上であるカーボン、レドックスポリマー、及び生体触媒又はその類似体を有する材料の製造方法であって、次のa)〜c)を順不同に有するか及び/又はa)〜c)のいずれか2つもしくは3つを同時に行う、上記方法:
a)重合開始基を有するカーボンとレドックスポリマー前駆体とを混合し、前記重合開始基からグラフト重合するポリマーを前記レドックスポリマー前駆体から形成し、前記カーボンと前記ポリマーとを化学的に結合する工程(但し、酸化還元部位を有しないレドックスポリマー前駆体を用いる場合、前記酸化還元部位をレドックスポリマー前駆体に導入しレドックスポリマーを形成する工程をa)〜c)の工程のいずれかの前後又はa)〜c)と同時に有する);
b)カーボンの粒子をカーボンの3次元的なネットワークへと形成する工程;及び
c)生体触媒又はその類似体を導入する工程。 - 前記a)工程、前記b)工程及び前記c)工程の順で行う請求項9記載の方法であって、
前記b)工程は、前記a)工程で得られたカーボンの粒子を用いて、前記カーボンの3次元的なネットワークを形成し、
前記c)工程は、前記b)工程で得られた3次元的なネットワークへ、生体触媒又はその類似体を導入する、請求項9記載の方法。 - 請求項1〜8のいずれか1項記載の材料を有する負極;
電子伝導性及びプロトン伝導性を有する正極;及び
前記正極と前記負極とに挟まれた電解質;を有する電池。 - 前記負極がプロトン伝導性を有する請求項11記載の電池。
- 前記正極が、請求項1〜8のいずれか1項記載の材料を有する請求項11又は12記載の電池。
- 請求項1〜8のいずれか1項記載の材料を有する正極;
電子伝導性及びプロトン伝導性を有する負極;及び
前記正極と前記負極とに挟まれた電解質;を有する電池。 - 前記正極は、プロトン伝導性を有する請求項14記載の電池。
- 電池の燃料がメタノールであり、前記生体触媒がアルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、及びギ酸デヒドロゲナーゼである請求項11〜15のいずれか1項記載の電池。
- 電池の燃料がエタノールであり、前記生体触媒がアルコールデヒドロゲナーゼ、及びアルデヒドデヒドロゲナーゼである請求項11〜15のいずれか1項記載の電池。
- 電池の燃料がグルコースであり、前記生体触媒がグルコースオキシダーゼ、グルコン酸2−デヒドロゲナーゼ、及びケトグルコン酸デヒドロゲナーゼである請求項11〜15のいずれか1項記載の電池。
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