JP5056597B2 - 大気圧イオン化質量分析装置 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば液体クロマトグラフのカラムからの溶出液などの液体試料をイオン化室にてイオン化して質量分析を行う質量分析装置に関し、さらに詳しくは、液体試料を略大気圧雰囲気であるイオン化室内に噴霧してイオン化するための大気圧イオン化インターフェイスの取付構造に関する。
液体クロマトグラフ質量分析装置(LC/MS)では、液体クロマトグラフ(LC)のカラムから溶出した液体試料が、エレクトロスプレイイオン化法(ESI)や大気圧化学イオン化法(APCI)などを用いた大気圧イオン化インターフェイスに導入されてイオン化され、発生したイオンが質量分析に供される。
APCIでは、LCのカラムの末端に接続されたノズルを略大気圧雰囲気にあるイオン化室内に向けて開口して配設し、そのノズル先端の前方に針電極を配置しておく。そして、ノズルにおいて加熱により霧化した液体試料の液滴に、針電極からのコロナ放電により生成したキャリアガスイオン(バッファイオン)を化学反応させることで、試料中の成分分子をイオン化する。他方、ESIでは、液体試料が導入されるノズルの先端部に数kV程度の高電圧を印加する。液体試料はこの高電圧により生成される電場の作用によって電荷分離し、主としてクーロン引力により引きちぎられるように霧化する。試料液滴は周囲の空気に衝突して微細化され、同時に液滴中の溶媒は蒸発する。その過程で液滴中の試料成分分子が電荷をもって液滴から飛び出し、気体イオンが発生する。
このようにESIとAPCIとではイオン化の原理が相違し、イオン化に適した試料の種類も相違する。そこで、一般にLC/MSでは、APCI用、ESI用それぞれのイオン化インターフェイスユニット(以下「イオン化プローブ」という)を用意しておき、イオン化室を内部に形成するハウジングにいずれかのイオン化プローブを取り付けるようにしている(例えば特許文献1など参照)。
図7は、ハウジングへのイオン化プローブの従来の取付構造を示す一部断面斜視図である。イオン化プローブ20は、中央のスプレー部21と、周囲に大きく円盤状に張り出したフランジ部22と、から成る。スプレー部21の内部構造はESI用とAPCI用とで相違するが、ここではその構造は重要ではないので説明を省略する。
フランジ部22には2本のボルト23が回転自在に貫設されている。外側に露出したボルト23の端部には円盤形状のツマミ23aが設けられ、内側の先端には雄ねじが螺刻されている。ハウジング30には、スプレー部21が内側に挿通される円筒状の取付開口31が形成され、その周囲の2箇所に、雌ねじが内側に螺刻されたボルト孔32が形成されている。イオン化プローブ20をハウジング30に固定する際には、スプレー部21を取付開口31に挿入するとともに、2個のボルト孔32に2本のボルト23の先端が位置するように、イオン化プローブ20の回転位置を定める。そして、ツマミ23aを回すことでボルト23をボルト孔32に螺入して適度に締め付ける。
スプレー部21内部の部材は高電圧が印加されたり高温に加熱されたりする。そのため安全性を確保するためのインターロック機構の一部として、イオン化プローブ20が適切に装着されているか否かを機械的に確認する検知機構が設けられている。即ち、ハウジング30に形成された凹部33の内側には、ヒンジレバー型のマイクロスイッチ40が固定されている。一方、フランジ部22にはイオン化プローブ20がハウジング30に装着されたときに上記マイクロスイッチ40のヒンジレバー(可動片)を押し込む認識用ピン24が突設されている。なお、実際にはマイクロスイッチとピンとはもう1組設けられており、そのスイッチの検知信号が、ハウジング30に装着されたイオン化プローブ20の種類(ESI用又はAPCI用)の判定に利用されている。
イオン化プローブ20がハウジング30に装着された状態では、Oリング34のシールにより液密性が確保されるが、Oリング34の劣化等により、液体がハウジング30内(イオン化室内)から外部に漏出する場合もある。マイクロスイッチ40が露出していると、漏出した液体がマイクロスイッチ40に直接掛かり、故障の原因となり易い。また、作業者が誤って指でマイクロスイッチ40を押してしまったり、異物が凹部33に入り込んでマイクロスイッチ40を押してしまったりすると、安全上問題である。そこで、凹部33は金属製の保護カバー50で被覆されており、保護カバー50には認識用ピン24が貫通し、IEC(国際電気標準会議)で規格化されているテストフィンガーが入らないような大きさのピン受け孔51が穿設されている。
イオン化法の切替えに伴うイオン化プローブ20の交換、イオン化プローブ20の清掃などのメインテナンス作業、或いは、ハウジング30(イオン化室)内の清掃などの際には、イオン化プローブ20の取り外し、取り付けの作業が必要である。上記従来のイオン化プローブ取付構造では、その作業の度に、2個のツマミ23aを回してボルト23を緩めたり締め付けたりしなければならないため、作業性が悪いという問題がある。
他方、ボルト23の雄ねじとボルト孔32の雌ねじとの螺合ではなく、イオン化プローブに設けたレバーを回動させてその回動に伴って回動するピンとハウジング側の係止部との係合により、イオン化プローブを固定する機構も実用化されている。しかしながら、このようなレバー式の固定構造と上述したインターロック機構とを組み合わせようとすると、部品点数が増加し、コストが高くなってしまうという問題がある。
特開2003−66007号公報
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、質量分析装置本体へのイオン化プローブの取り付けや取り外しが容易でありながら、部品点数が少なくコストの増加を抑えることができる大気圧イオン化質量分析装置を提供することにある。
上記課題を解決するためになされた本発明は、略大気圧雰囲気のイオン化室内に試料液を噴霧して該試料液に含まれる成分をイオン化する質量分析装置であって、試料液を噴霧するノズルを有するイオン化プローブが、内部にイオン化室を形成するハウジングの外部に着脱可能である構造の大気圧イオン化質量分析装置において、
前記イオン化プローブは、操作対象であるレバーと、該レバーの回動操作に伴って回動する被係止部と、当該イオン化プローブが前記ハウジングに装着されたときに後記スイッチの可動部を押し込む突部と、を有し、
前記ハウジングは、前記レバーが所定位置まで回動された状態で前記被係止部と係合して前記イオン化プローブの脱離を阻止する係止部と、前記イオン化プローブの装着を検知するための前記スイッチが内部に収容された凹部と、を有し、
前記凹部内の前記スイッチの上面を被覆するように前記ハウジングに固定され、前記イオン化プローブが前記ハウジングに装着されたときに前記突部が貫通する孔が形成された板状部材が、前記係止部として機能することを特徴としている。
本発明の一態様として、レバーは回転軸ともなるシャフトの端部に設けられ、被係止部はそのシャフトに突設されたピンなどの突部とすることができる。なお、レバー、被係止部、係止部は少なくとも2以上とするとよい。
本発明に係る大気圧イオン化質量分析装置では、イオン化プローブをハウジングの所定位置に保持した状態でレバーを所定位置まで回動させると、イオン化プローブ側の被係止部がハウジング側の係止部と係合し、イオン化プローブをハウジングに固定することができる。また逆に、イオン化プローブをハウジングから取り外す際には、レバーを反対方向に所定位置まで回動させ、被係止部と係止部との係合を解除しさえすればよい。したがって、従来のようにボルトを用いた場合に比べて、ハウジングへのイオン化プローブの取り付け・取り外し作業は簡単になり、イオン化プローブの交換、イオン化プローブの清掃、或いはハウジング内部の清掃などの作業性が向上する。
上記板状部材はイオン化プローブをハウジングに固定するために被係止部を係止する機能と、液体の侵入や不所望の操作などからスイッチを保護するべくその上面を被覆する機能との、2つの機能を併せ持つ。これにより、上述したようにレバー式固定構造を採用し、イオン化プローブの取り付け・取り外しを検知するインターロック機構を設ける場合であっても、部品点数の増加を抑え、コスト低減を図ることができる。
以下、本発明に係る大気圧イオン化質量分析装置の一実施例について、添付図面を参照しつつ説明する。図1は本実施例の大気圧イオン化質量分析装置の全体構成図である。
本実施例の質量分析装置は、アルミニウム合金製のチャンバ1の内部に、イオン化室2、第1中間室3、第2中間室4、及び分析室5を備える。イオン化室2には、図示しないLCのカラム出口端に接続されたイオン化プローブ20が配設される。分析室5には四重極質量フィルタ10及びイオン検出器11が配設される。第1及び第2中間室3、4にはそれぞれ第1イオンレンズ7及び第2イオンレンズ9が配設される。イオン化室2と第1中間室3との間は細径の脱溶媒管6を介して連通し、第1中間室3と第2中間室4との間は極小径の通過孔を有するスキマー8を介して連通している。
イオン化室2内はイオン化プローブ20から連続的に供給される液体試料の気化分子によりほぼ大気圧雰囲気に維持される。第1中間室3内はロータリーポンプ12により約10Pa程度の低真空雰囲気に、第2中間室4内はターボ分子ポンプ13により約10−1〜10−2Pa程度の中真空雰囲気に維持される。分析室5内は、高性能のターボ分子ポンプ14により約10−3〜10−4Paの高真空状態まで真空排気される。このように各室毎に段階的に真空度を高めた多段差動排気系の構成を採ることで、分析室5内を高真空雰囲気に維持している。
ESI用のイオン化プローブ20を使用した場合の、質量分析動作を簡単に説明する。液体試料はイオン化プローブ20の先端で電荷を付与されてイオン化室2内に噴霧され、液滴中の溶媒が蒸発する過程で試料分子はイオン化される。発生したイオンは未だイオン化していない微小液滴とともに、イオン化室2と第1中間室3との圧力差により脱溶媒管6中に引き込まれる。第1イオンレンズ7には直流電圧が印加され、それにより形成される電場は脱溶媒管6を介してのイオンの引き込みを助けるとともに、イオンをスキマー8の通過孔近傍に収束させる。
スキマー8の通過孔を通って第2中間室4に導入されたイオンは、第2イオンレンズ9により収束され分析室5へと送られる。分析室5では、特定の質量(厳密にはm/z)を有するイオンのみが四重極質量フィルタ10中央の長軸方向の空間を通り抜け、イオン検出器11に到達して検出される。四重極質量フィルタ10を通過するイオンの質量は該フィルタ10に印加される直流電圧及び高周波電圧に依存するから、この印加電圧を走査することにより、四重極質量フィルタ10を通り抜けるイオンの質量を所定範囲に亘って走査することができる。
図2はチャンバ1へのイオン化プローブ20の取付構造を示す一部断面斜視図、図3はイオン化プローブ20とマイクロスイッチ40との位置関係を示す斜視図、図4は凹部33周辺の上面平面図(a)及びA−A’線断面図(b)、図5はレバーの位置とイオン化プローブの固定状態を示す概略図、である。図7で説明した構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付して詳しい説明を略す。なお、従来例の説明と同様に、以下の説明では、イオン化室2を内部に形成する部材をハウジング30と呼ぶが、これはチャンバ1と同一であってもよいし、例えば特許文献1に記載のようにハウジング30がチャンバ1とは別部材であってもよい。
イオン化プローブ20のフランジ部22には、従来のボルトに代えて、頭部にレバー26が固定された2本のシャフト25が回転自在に貫設されている。フランジ部22には、各レバー26に対応して2本の位置規制ピン28、29が立設されており、この位置規制ピン28、29に接触することによってレバー26の回動範囲が規制される。この例では、レバー26の回動範囲は約90°である(図5参照)。シャフト25の周面にはその径方向に係止ピン(本発明における係止部に相当)27が突設されている。この係止ピンは圧入によりシャフト25と一体化されている。
ハウジング30には上記シャフト25が挿入される深い挿入孔35が穿設され、シャフト25が挿入孔35に挿入された状態で該シャフト25が回動されたときに上記係止ピン27が回転自在であるように、挿入孔35の上部には外周側に広がるざぐり35aが形成されている。ハウジング30に形成された凹部33は、マイクロスイッチ40を内部に収容する深い凹部33aと、ざぐり35aと干渉する位置に形成された浅い凹部33bとが連なったものである。ステンレス製の保護プレート52は上面視L字形状であり、浅い凹部33bにおいて2本のネジ54でハウジング30に固定されている。このとき、挿入孔35に向いた保護プレート52の縁端部は上面視で挿入孔35の外径よりも外側で、且つざぐり35aの内径よりも内側に位置するようになっている。
イオン化プローブ20をハウジング30に取り付ける際には、2本のレバー26を解除用位置規制ピン28に当たる位置にする。このとき、図5(a)に示すように、2本のレバー26はそれぞれフランジ部22の径方向に張り出した状態(フランジ部22の法線方向に延伸した状態)となる。この状態では、係止ピン27はざくり35aの上の保護プレート52がない位置にくる。スプレー部21を取付開口31に挿入し、シャフト25を挿入孔35に挿入するようにイオン化プローブ20をハウジング30にセットする。なお、このとき、認識用ピン24は保護プレート52に形成されている貫通孔53を貫通し、深い凹部33a内に侵入してマイクロスイッチ40の可動片を押し込む。
その状態から、作業者は2本のレバー26をそれぞれ他方の位置規制ピン29に当たるまで約90°回動させる。これにより図5(b)に示すように、レバー26はフランジ部22の接線方向に延伸した状態になる。レバー26の回動に伴いシャフト25も回動し、係止ピン27もざぐり35aの内側で回動する。図5(b)に示す状態では、係止ピン27は保護プレート52の下面に軽く接しながら或いはごく僅かな隙間を有して、保護プレート52下方に入り込む。これにより、係止ピン27は保護プレート52と係合し、イオン化プローブ20はハウジング30に固定される。このとき、イオン化プローブ20のフランジ部22とハウジング30との間の隙間は、Oリング34により封止される。また、認識用ピン24はマイクロスイッチ40の可動片を確実に押し込んだ状態となり、図示しない制御回路はマイクロスイッチ40からの信号により、イオン化プローブ20が取り付けられた状態であることを認識する。
このようにハウジング30に固定されている保護プレート52はイオン化プローブ20の係止ピン27と係合することでイオン化プローブ20を固定する機能を有する。また、保護プレート52はマイクロスイッチ40の上面、特に可動片の上面を被覆し、液体がマイクロスイッチ40に直接掛かったり、指や或る程度の大きさの異物によりマイクロスイッチ40が誤って押されたりすることを防止する機能も有する。
なお、マイクロスイッチ40はハウジング30に固定されていても保護プレート52に固定されていてもいずれでもよい。
また、保護プレート52にあって挿入孔35に面する縁端部を、図6に示すようにL字状に上に折り曲げて折り曲げ部55とした構成としてもよい。この場合、その折り曲げ部55の上部はハウジング30の外面よりも飛び出すから、イオン化プローブ20を装着する際にこれと干渉しないようにイオン化プローブ20の形状を考慮しておく必要がある。これにより、ステンレス製である保護プレート52の加工面(切断面、切削面)がシャフト25の外周面に向かない。保護プレート52の加工面の縁端部にはバリ等の細かな突起が形成されている場合があり、係止ピン27が回動する度にこれに触れると係止ピン27に傷が付いて錆などの原因となり易い。これに対し、図6の構成では係止ピン27に傷が付くことを防止することができ、しかも、保護プレート52の強度を向上させて無理な力が加わった場合でも変形が生じにくくなる。
なお、上記実施例では、イオン化プローブがESI用である場合について説明したが、APCI用やそれ以外の大気圧イオン化法、例えば大気圧光イオン化法(APPI)のためのイオン化プローブでも同様であることは言うまでもない。また、上記実施例は本発明の一例であり、本発明の趣旨の範囲で適宜変更、修正、追加などを行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
本発明の一実施例である大気圧イオン化質量分析装置の全体構成図。 本実施例におけるハウジングへのイオン化プローブの取付構造を示す一部断面斜視図。 本実施例におけるイオン化プローブとマイクロスイッチとの位置関係を示す斜視図。 本実施例における凹部周辺の上面平面図(a)及びA−A’線断面図(b)。 本実施例におけるレバーの位置とイオン化プローブの固定状態を示す概略図。 変形例による保護プレートを示す図。 ハウジングへのイオン化プローブの従来の取付構造を示す一部断面斜視図。
符号の説明
1…チャンバ
2…イオン化室
3…第1中間室
4…第2中間室
5…分析室
6…脱溶媒管
7、9…イオンレンズ
8…スキマー
10…四重極質量フィルタ
11…イオン検出器
12…ロータリーポンプ
13、14…ターボ分子ポンプ
20…イオン化プローブ
21…スプレー部
22…フランジ部
24…認識用ピン
25…シャフト
26…レバー
27…係止ピン
28、29…位置規制ピン
30…イオン化室ハウジング
31…取付開口
33…凹部
33a…深い凹部
33b…浅い凹部
35…挿入孔
35a…ざぐり
40…マイクロスイッチ
52…保護プレート
53…貫通孔

Claims (1)

  1. 略大気圧雰囲気のイオン化室内に試料液を噴霧して該試料液に含まれる成分をイオン化する質量分析装置であって、試料液を噴霧するノズルを有するイオン化プローブが、内部にイオン化室を形成するハウジングの外部に着脱可能である構造の大気圧イオン化質量分析装置において、
    前記イオン化プローブは、操作対象であるレバーと、該レバーの回動操作に伴って回動する被係止部と、当該イオン化プローブが前記ハウジングに装着されたときに後記スイッチの可動部を押し込む突部と、を有し、
    前記ハウジングは、前記レバーが所定位置まで回動された状態で前記被係止部と係合して前記イオン化プローブの脱離を阻止する係止部と、前記イオン化プローブの装着を検知するための前記スイッチが内部に収容された凹部と、を有し、
    前記凹部内の前記スイッチの上面を被覆するように前記ハウジングに固定され、前記イオン化プローブが前記ハウジングに装着されたときに前記突部が貫通する孔が形成された板状部材が、前記係止部として機能することを特徴とする大気圧イオン化質量分析装置。
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