第1の発明は、鍋と、前記鍋を加熱する加熱手段と、前記鍋の温度を検知する温度検知手段と、計時する計時手段と、報知手段とを備え、糊化温度よりも低い第2の所定温度で米を第2の所定時間浸水させる浸水工程の前に、前記鍋の温度が糊化温度よりも高い第1の所定温度になったことを検知してから第1の所定時間経過するまでの間、水面が米の上面と略同じ高さになる量の水に前記米を浸水させ、前記第1の所定時間経過後、前記報知手段で前記鍋内に給水することを促す報知を行う予備浸水工程を実行するものである。
これにより、加熱されて高温になった水が米に水分と熱を供給するため、熱により米表面が吸水しやすい状態となって多くの水を吸水し、含水率を上げることができる。また、上面の米がぎりぎり水に沈む程度の少量の水だけを加熱すればよいため、短時間で所定の温度にすることができ、おいしさを維持したまま炊飯時間を短縮することが可能となる。
また、米は吸水しやすい状態になっていることから、浸水工程、炊き上げ工程の時間を短縮しても十分に吸水することができ、おいしさを維持したまま炊飯時間を短縮することができる。
さらに、米を炊飯するのに必要な量の水を直接鍋に入れるため、一気に鍋内の水温が下がり、急激に冷やされた米は、でんぷんの結晶構造の崩壊がおこりやすくなって吸水しやすい状態となり、浸水工程、炊き上げ工程の時間を短くしても十分な含水率を確保することができ、炊飯時間を短縮することができる。また、予備浸水工程において高温となった水をそのまま使うため、新たに給水する場合に比べて加熱量を減らすことができる。
第2の発明は、鍋と、前記鍋を加熱する加熱手段と、前記鍋の温度を検知する温度検知手段と、前記鍋に給水する給水手段とを備え、糊化温度よりも低い第2の所定温度で米を第2の所定時間浸水させる浸水工程の前に、前記鍋の温度が糊化温度よりも高い第1の所定温度になったことを検知してから第1の所定時間経過するまでの間、水面が米の上面と略同じ高さになる量の水に米を浸水させ、前記第1の所定時間経過後、前記給水手段により前記鍋内に給水する予備浸水工程を実行するものである。
これにより、加熱されて高温になった水が米に水分と熱を供給するため、熱により米表面が吸水しやすい状態となって多くの水を吸水し、含水率を上げることができる。また、上面の米がぎりぎり水に沈む程度の少量の水だけを加熱すればよいため、短時間で所定の温度にすることができ、おいしさを維持したまま炊飯時間を短縮することが可能となる。
また、米は吸水しやすい状態になっていることから、浸水工程、炊き上げ工程の時間を短縮しても十分に吸水することができ、おいしさを維持したまま炊飯時間を短縮することができる。
さらに、米を炊飯するのに必要な量の水を直接鍋に入れるため、一気に鍋内の水温が下がり、急激に冷やされた米は、でんぷんの結晶構造の崩壊がおこりやすくなって吸水しやすい状態となり、浸水工程、炊き上げ工程の時間を短くしても十分な含水率を確保することができ、炊飯時間を短縮することができる。また、予備浸水工程において高温となった水をそのまま使うため、新たに給水する場合に比べて加熱量を減らすことができる。
第3の発明は、鍋と、前記鍋を加熱する加熱手段と、前記鍋の温度を検知する温度検知手段と、計時する計時手段とを備え、糊化温度よりも低い第2の所定温度で米を第2の所定時間浸水させる浸水工程の前に、前記鍋の温度が糊化温度よりも高い第1の所定温度になったことを検知してから第1の所定時間経過するまでの間、米を浸水させ、前記第1の所定時間経過後、前記鍋内の温度を前記第2の所定温度まで下げる予備浸水工程を実行するものである。
これにより、加熱されて高温になった水が米に水分と熱を供給するため、熱により米表面が吸水しやすい状態となって多くの水を吸水し、含水率を上げることができる。
また、米は吸水しやすい状態になっていることから、浸水工程、炊き上げ工程の時間を短縮しても十分に吸水することができ、おいしさを維持したまま炊飯時間を短縮することができる。
さらに、炊飯途中に給水する必要がなく、炊飯開始時に米と水をセットするだけで炊飯が行われるため、使用者の使い勝手がよい。
第4の発明は、鍋と、前記鍋を加熱する加熱手段と、前記鍋の温度を検知する温度検知手段と、計時する計時手段と、前記鍋内の温度を下げる冷却手段とを備え、糊化温度よりも低い第2の所定温度で米を第2の所定時間浸水させる浸水工程の前に、前記鍋の温度が糊化温度よりも高い第1の所定温度になったことを検知してから第1の所定時間経過するまでの間、米を浸水させ、前記第1の所定時間経過後、前記冷却手段により前記鍋内の温度を前記第2の所定温度まで下げる予備浸水工程を実行するものである。
これにより、加熱されて高温になった水が米に水分と熱を供給するため、熱により米表面が吸水しやすい状態となって多くの水を吸水し、含水率を上げることができる。
また、米は吸水しやすい状態になっていることから、浸水工程、炊き上げ工程の時間を短縮しても十分に吸水することができ、おいしさを維持したまま炊飯時間を短縮することができる。
また、急激に冷やされた米は、でんぷんの結晶構造の崩壊がおこりやすくなって吸水しやすい状態となり、浸水工程、炊き上げ工程の時間を短くしても十分な含水率を確保することができ、炊飯時間を短縮することができる。また、予備浸水工程において高温となった水をそのまま使うため、新たに給水する場合に比べて加熱量を減らすことができる。
さらに、炊飯開始時に米と水をセットするだけで炊飯が行われるため、使用者の使い勝手がよい。
第5の発明は、特に、第1〜4の発明において、予備浸水工程において、第1の所定温度に応じて第1の所定時間を変化させるものである。
これにより、設定された第1の所定温度の違いに関わらず、予備浸水工程終了時の米の含水率をほぼ一定に調整し所望の硬さに炊き上げることができる。また、米の上面がぎりぎり浸水する程度に給水する第1の給水工程において、給湯器等で生成した高温の水を供給することにより、水を加熱する時間を短縮することができ、また第1の所定温度を低く設定した場合に比べて第1の所定時間を短くしても含水率を高くすることができるので、炊飯時間を短縮することができる。
第6の発明は、特に、第2の発明において、給水手段は、貯水する貯水タンクと、前記貯水タンクから鍋へ給水する水を加熱する水加熱手段を備えたものである。
これにより、第1の給水工程中に水を加熱して熱水を鍋に供給することができるので、第1の所定温度にするための加熱時間を短縮することができ、炊飯時間を短縮することが可能となる。
第7の発明は、特に、第1〜4の発明において、予備浸水工程のみを実施する予備浸水コースを備えたものである。
これにより、あらかじめ予備浸水工程のみを実施することにより、炊飯を行うときは通常の米と比べて含水率が高いため炊飯時間を短縮することが可能となる。
第8の発明は、特に、第1〜4の発明において、制御手段は、浸水工程における第2の所定時間や第2の所定温度に応じて、炊き上げ工程での加熱手段による加熱量を制御するものである。
浸水工程において、予備浸水工程を経た米は吸水しやすい状態となっているため、浸水工程の実行時間や水温によって含水率に大きく差が生じる。炊き上げ工程において、含水率が異なる米に対して一様な加熱量で加熱すると、炊き上がった際の米の硬さにばらつきが生じ、所定の硬さに炊き上げることができない。炊き上げ工程では、でんぷんの糊化が行われるとともに吸水も行われることから、浸水工程での時間や水温に応じて炊き上げ工程での加熱量を変化させることで、炊き上げ工程を実行する時間すなわち炊き上げ工程中の吸水時間を変化させることができ、含水率を調節し適切な硬さのご飯に炊き上げることができる。これにより、浸水工程の時間が長い場合や水温が高い場合は、炊き上げ工程での加熱量を多くして時間を短くすることにより、所定の硬さに炊き上げることができるとともに、炊飯時間を短縮することができる。
第9の発明は、特に、第1〜4の発明において、制御手段は、予備浸水工程における第1の所定時間や第1の所定温度に応じて、炊き上げ工程での加熱手段による加熱量を制御するものである。
予備浸水工程での浸水時間や水の温度によって、米の糊化度、デンプンの構造崩壊度が変化し、吸水状態が変わるため浸水工程終了時の含水率が異なる。炊き上げ工程において含水率が異なる米に対して一様な加熱速度で加熱すると、炊き上がった際の米の硬さにばらつきが生じてしまう。そのため、予備浸水工程での浸水時間や水温に応じて、炊き上げ工程での加熱量を変化させることで、炊き上がったご飯の硬さをおいしく感じられる範囲内に抑えることができる。これにより、予備浸水工程での浸水工程の時間が長い場合や水温が高い場合は、炊き上げ工程での加熱量を多くして炊き上げ工程を実行する時間を短くすることにより、所定の硬さに炊き上げることができるとともに、炊飯時間を短縮することができる。
第10の発明は、特に、第1〜4の発明において、鍋の重量を検知する重量計測手段を備え、前記重量計測手段により計測した前記鍋内の米の重量に応じて、炊き上げ工程での加熱手段による加熱量を制御するものである。
鍋内に収容された米の重量を正確に判別することができるので、炊き上がったご飯の硬さを左右する炊き上げ工程での水の昇温スピードである加熱量を、米の重量に応じてコントロールすることができるので、米の重量に関係なく適切な硬さのご飯に炊き上げることが可能となる。これにより、米の重量が多い場合は、少ない場合に比べて炊き上げ工程における加熱量を多くすることができるため、米の重量に関わらず加熱量を一定にした場合に比べて短時間で鍋の温度を上げることができ、炊飯時間を短縮することができる。
第11の発明は、特に、第1〜4の発明において、鍋内の圧力を調整する圧力調整手段を備え、予備浸水工程において、前記圧力調整手段により前記鍋内の圧力を大気圧より高くするものである。
これにより、予備浸水工程において、鍋内の水を加熱した際に鍋を密閉して鍋外に熱が流出することを低減するため、加熱手段により加熱して鍋内の水を昇温させる時間を短縮することができる。また鍋内の水の温度を下がりにくくすることで、より省エネルギー性が高くなる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における炊飯器の断面図を示すものである。
図1において、炊飯器本体1は、着脱自在で有底略円筒形の鍋2と、鍋2を覆う蓋3と、蓋3に固定され鍋2開口部を密閉する内蓋4とからなっている。
炊飯器本体1内には、鍋2を誘導加熱するための加熱手段5と、鍋2の温度を測定するためにバネ(図示せず)により鍋2に付勢された温度検知手段6と、制御手段7と、ブザーからなる報知手段8が設置されている。制御手段7は、予備浸水工程、浸水工程、炊き上げ工程、蒸らし工程を有する炊飯工程に従って最適に加熱手段5を制御し、炊飯を行う。炊飯工程は白米・玄米などの米の種類ややわらかめ・硬めなど出来上がりの米の状態などによって複数のコースが準備されている。また、蓋3には鍋2内の余分な蒸気を炊飯器本体1外へと排出するための蒸気筒9と、内蓋4の温度を検知する蓋温度検知手段10とが設置されている。
以下、予備浸水工程について説明する。
予備浸水工程では、予め、図1に示すように鍋2には米と、水面が米の上面(図1の線Rで示す)と同程度、つまり上面の米がぎりぎり水に沈む程度の量の水が入れられている(第1の給水工程)。まず、加熱手段5により鍋2を加熱し、温度検知手段6により鍋2の温度が糊化温度(約60℃)以上の第1の所定温度(例えば、100℃)になったことを検知すると、検知してから第1の所定時間(例えば、30秒)の間第1の所定温度を維持するよう加熱を行う。第1の所定時間が経過すると、加熱手段5による加熱を停止する。次に、報知手段8により、鍋2内の米を炊飯するために必要な所定量(米量に対する量)の水(図1の点線Sに示す)を鍋2内へ入れるよう促す報知を行う。使用者により給水が行われると(第2の給水工程)、次に浸水工程へ移行する。第2の給水工程が終了したことは、給水が行われると鍋2内の温度が急激に下がるため、温度検知手段6が鍋2の温度が所定温度よりも低くなったことを検知することにより判断することができる。
このように、米の上面がぎりぎり水に沈む程度の水を供給して加熱するため、加熱する水の量が少なく短時間で所定の温度まで加熱することができ、加熱により水が対流し、米に満遍なく水と熱を供給することができる。
また、熱を供給された結果米表面が少し糊化することにより、米表面は水を吸収しやすい状態となっているため、炊飯開始以前に含水率を通常の浸水では最高で約30%としかならないところ、45%程度の含水率を実現することができ、蒸気を使った予備浸水と同等の効果を有しながら、しかも吸水に費やす時間を短くしても含水率を上げることができ、おいしさを維持したまま炊飯時間を短縮させることが可能となる。ここで、予備浸水工程において米表面で糊化が行われるが、予備浸水工程における加熱時間は後述する炊き上げ工程での加熱時間に比べて短いため、完全に糊化が行われることはなく糊化したデンプンにより米中心部への水の浸透が阻害されることはない。
また、古米や表面が硬い品種など米表面部分が硬く吸水しにくくなっている米に対しては、予備浸水工程を実施して米表面を適度に糊化させることで、吸水効果を向上させることができる。そのため、例えば、炊飯時間は従来とほぼ同じ時間で、十分吸水した柔らかいご飯を炊くことができ、炊飯性能を向上することができる。
また、第1の所定時間経過後に鍋内の水温より低い水を直接鍋に入れることにより、一気に水温が下がるため、急激に冷やされた米はデンプンの結晶構造の崩壊がおこりやすくなって吸水しやすい状態となる。これにより、吸水に費やす時間を短くしても含水率を上げることができ、おいしさを維持したまま炊飯時間を短縮させることが可能となる。
以上のように構成された炊飯器について、以下その動作、作用について図2の本発明の実施の形態1における炊飯器の予備浸水工程のフローチャート、図3の本発明の実施の形態1における炊飯器の炊飯工程を構成する各工程における鍋2の温度を示すグラフを用いて説明する。
まず研いだ米が鍋2にセットされ、上面の米がぎりぎり水に沈む程度の水が鍋2に供給される(第1の給水工程)。その後、炊飯開始ボタン(図示せず)が押下され、予備浸水工程が開始される。
予備浸水工程PSでは、ステップ1において、制御手段7は加熱手段5を動作させて鍋2を加熱する(時刻t0)。制御手段7は温度検知手段6により鍋2の温度を監視し、ステップ2において、鍋2の温度Xが糊化温度(約60℃)以上の第1の所定温度A(例えば約100℃)に達したことを検知すると(時刻t1)、ステップ3において時間計測手段(図示せず)により経過時間を計測する。ステップ4において、第1の所定時間B(例えば30秒)経過すると(時刻t2)、ステップ5において、加熱手段5の動作を停止させ鍋2の加熱を停止する。次にステップ6において、報知手段8により使用者に給水を促す報知を行う。ステップ7において、使用者が米の炊飯に必要な量の水を鍋2に追加し(第2の給水工程)、蓋3を閉じた後に炊飯開始ボタン(図示せず)を再び押下されると、浸水工程S1へ移る。
浸水工程S1では、加熱手段5により鍋2を加熱し、鍋2内の水の温度を温度検知手段6によって検知し、米の糊化が始まらない温度(約60℃未満)である第2の所定温度になるよう調整して米の吸水を促進する(時刻t2)。第2の所定時間経過すると、次に炊き上げ工程S2へ移る(時刻t3)。
炊き上げ工程S2では、米に水と熱を加えて糊化を進行させる。加熱手段5を動作させて鍋2を急速に加熱し(時刻t3)、鍋2内の水を沸騰させ(t4)、沸騰状態を維持する。炊き上げ工程は炊飯後のご飯の硬さを大きく左右する工程であり、最も大きな要因は水を沸騰温度まで加熱する際の加熱速度である。加熱量を多くして加熱速度を速くすると、米の表面が急激に水と熱を加えられるために糊化し、この糊化したでんぷんが米中心部への水の浸透を阻害する。一方、加熱量を少なくして加熱速度を遅くすると、糊化したでんぷんが再配列を開始し、米中心部への水の浸透を阻害する。このように米中心部への水の浸透が阻害されると、中心部は含水率が低く糊化が十分に行われないため、芯が残ったご飯が炊き上がってしまう。
以上のことにより、炊き上げ工程における加熱速度をある程度の範囲内の速度に抑えることで、おいしいご飯を炊くことができる。また、前記の加熱速度の範囲内でも加熱速度を速くすると硬いご飯が、加熱速度を遅くすると柔らかいご飯が炊ける傾向がある。
鍋2内の水が蒸発すると、鍋2の温度は急激に高くなり、所定温度よりも高くなったことを温度検知手段6が検知すると、蒸らし工程に移る(時刻t5)。
蒸らし工程では、米に付着した余分な水分を蒸散させながら、鍋2内を高温状態(約100℃の状態)に維持して糊化をさらに進展させる。この蒸らし工程が終了すると炊飯が終了し(時刻t6)、自動的に保温工程へと移行し、炊き上がったご飯の温度が低下しないようにして、使用者にいつでも温かいご飯を提供することができる。
なお、本実施の形態においては、第1の給水工程において、鍋2内の水量を上面の米がぎりぎり水に沈む程度としたが、全部の米が浸水する必要はなく、半分以上、半分または一部の米が浸水する程度にしてもよい。この場合、第1の所定温度を水の沸点とすることで、水が気化して生成された蒸気が浸水していない部分の米に水と熱を与えるため含水率を上げることができ、加熱する水量が少ないため加熱時間を短縮することができる。また、第1の所定温度を沸点よりも低くした場合は、第1の所定温度をできるだけ高くすることにより対流が起こり少量の水でも全ての米にまんべんなく水と熱を供給することができる。また、米全部が十分に浸水する程度にした場合は、十分に米に水と熱が供給されるため含水率が上がり、浸水工程や炊き上げ工程における吸水に費やす時間を短縮することができる。
また、本実施の形態においては、予備浸水工程において水温を低下させる際に第2の給水工程で水を追加して水温を下げているが、水温が糊化温度以下に下がればよく、自然冷却で温度低下させてもよいし、ファンなどによる送風冷却など他の冷却手段を用いてもよい。この場合、第1の給水工程で上面の米がぎりぎり水に沈む程度の水ではなく、米量に必要な量の水を全て入れる。予備浸水工程終了後、鍋2の温度を冷却し、温度検知手段6により鍋2の温度が第2の所定温度よりも低くなったことを検知すると、浸水工程に移行するようにする。これにより、使用者が2度も給水する必要がなく、はじめに米と水をセットするだけで炊飯が行われるので使い勝手がよくなる。
なお、自然冷却させるなど長時間(例えば30分)かけて水温を低下させる場合には、その間に米が十分吸水するので、浸水工程を省略して予備浸水工程が終了すると炊き上げ工程に移行しても炊飯性能が低下することがないのでよい。
なお、予備浸水工程は、第1の所定温度を検知した後、第1の所定時間経過後に、必ずしも第2の所定温度まで低下することで終了する必要はなく、一定時間(例えば15分)経過すると予備浸水工程を終了し、次の工程へと移行すると、炊飯時間が一定となり、炊飯器の周囲温度環境などにより、冷却に時間がかかり過ぎることを防止することができるのでよい。
また、本実施の形態においては、あらかじめ鍋2に第1の給水工程用の水位線を備えていると、簡単に給水量を把握することができる。また、第1の給水工程で給水する量が米量に関わらず一定とすると、第2の給水工程で米量に応じた量の水を追加すればよいので、例えば米・水の計量カップに追加する水用の水位線を設けるなどすれば、水を追加する際も簡単に給水量を把握することができる。
また、本実施の形態においては、予備浸水工程において第1の所定温度Aを一定(例えば約80℃)に決定するのではなく数段階設定できるようにし(例えば約60℃、約70℃、約80℃、約90℃、約100℃の5段階)、鍋2の温度Xに応じて第1の所定時間Bを変化させる(例えば、温度Xが100℃なら第1の所定時間Bを30秒、温度Xが90℃〜100℃なら第1の所定時間Bを1分、温度Xが80℃〜90℃なら第1の所定時間Bを1分30秒、温度Xが70℃〜80℃なら第1の所定時間Bを2分、温度Xが60℃〜70℃なら第1の所定時間Bを2分30秒)と、使用者が鍋2に熱湯を供給した場合に、制御手段7は加熱手段5により加熱することなく、鍋2の温度Xに応じて決定された第1の所定時間放置するだけで予備浸水工程後に所定の糊化度の米を得ることができるので、省エネルギー性が向上するとともに加熱時間を短縮することができる。なお、上記の例のように温度Xが10℃刻みで浸水時間Bを決定することに限定するものではなく、温度Xを5℃刻みなどより細かな間隔で浸水時間Bを決定すると、より正確に米の糊化度をコントロールできるのでよい。
また、本実施の形態では、予備浸水工程中の第1の給水工程後、加熱手段5によって第1の所定温度になるよう鍋2を加熱しているが、第1の給水工程において予め給湯器等で糊化温度以上となった水を供給することにより、加熱時間を短縮することができる。
また、本実施の形態では、予備浸水工程において糊化温度以上の第1の所定温度Aを沸騰温度以下(例えば80℃)とすると、予備浸水工程においては、水は沸騰しない。使用者は第2の給水工程において水を追加する必要があるが、予備浸水工程において一度水が沸騰してしまうと、鍋2内は蒸気で満たされ、使用者が蓋3を開放すると、鍋2内に閉じ込められていた蒸気が開口部から勢いよく鍋2外へと噴出する。約100℃の温度の蒸気なので、触れると熱く感じるとともに視野も遮られ、使用者が蓋3開放と同時に即座に水を追加することは難しいため、使用者は蒸気がある程度拡散するのを待って、水を追加する必要があるが、第1の所定温度Aが沸騰温度以下であれば、蒸気の量は大幅に低減でき、速やかに水を追加することができるので、使い勝手がよい。また、第1の所定温度Aが沸騰温度以下であると、鍋2自体の温度も低く抑えることができるので、使用者が手で鍋2を取り出して、鍋2に水道の蛇口から直接に水を追加するということも可能となり、使い勝手が向上する。なお、第1の所定温度Aは80℃と限定するものではなく、約65℃など糊化温度以上という条件の中で最も低い温度に設定すると、蒸気量は非常に減少するので、使い勝手がよい。
また、本実施の形態では、予備浸水工程のみを実施する予備浸水コースを備えることで、使用者があらかじめ予備浸水コースを終了させた状態にしておくと、米は一定含水率まで給水している状態となるので、その後炊飯を開始した場合も短時間でおいしく炊き上げることが可能となる。使用者が炊飯以前に予備浸水コースを終了させておけば、さらに短時間で炊飯を終了することができるのでよい。
(実施の形態2)
図4は、本発明の第2の実施の形態における炊飯器の断面図を示すものである。
図4において、給水手段12は、蓋3内に着脱自在に設けられた貯水タンク11と、鍋2を連通接続する給水経路13と、給水経路の中間に給水を停止・開始するためにソレノイドなどによって開閉する弁14とから構成されており、貯水タンク11に貯水された水を鍋2へ給水する。
第1の給水工程では、まず弁14を動作させて、貯水タンク11に貯水された水を鍋2へ給水する。制御手段7は、給水されてからの経過時間により給水量を判定し、予め設定された、米の上面がぎりぎり浸水する程度の水量が供給されたと判定すると、弁14を動作させて給水を停止する。
また、予備浸水工程では、第1の所定時間経過後、制御手段7は弁14を動作させて給水タンク11の水を鍋2に供給する第2の給水工程を行う。制御手段7は、鍋2内の米量に対する水量が供給されたと判定すると、弁14を動作させて給水を停止する。
以上のように構成された炊飯器について、以下その動作、作用について説明する。その他の構成、工程は実施の形態1と同様であり、説明を省略する。
まず、研いだ米が鍋2に、また貯水タンク11に所定量の水がセットされ、炊飯量が入力された後、炊飯開始ボタン(図示せず)が押下されると炊飯を開始する。炊飯を開始すると、給水手段12により、鍋2内に米の上面が浸水する程度の水を供給する。その後、予備浸水工程を開始する。
予備浸水工程では、まず加熱手段5を動作させて鍋2を加熱する。温度検知手段6により鍋2の温度を監視し、鍋2の温度Xが糊化温度(約60℃)以上の第1の所定温度A(例えば約100℃)に達し、第1の所定温度Aに達してから第1の所定時間B(例えば30秒)経過すると、加熱手段5の動作を停止させ、鍋2の加熱を停止する。その後、給水手段12により給水タンク11の水を鍋2に供給する。米量に対する量の水が供給されると給水を停止する。これにより、鍋2の温度Yは糊化温度(約60℃)以下である第2の所定温度まで低下し、予備浸水工程を終了する。その後、浸水工程、炊き上げ工程、蒸らし工程を行い、炊飯工程を終了する。
以上のように、本実施の形態においては、使用者が米と水をセットした後は、なんら作業を必要とすることなく炊飯が終了するので、水を途中で加えるなどの手間がまったく必要なく、おいしさを維持したまま炊飯時間を短縮することが可能となる。
なお、貯水タンク11は蓋3内でなく鍋2の側方など他の場所に配置されていてもよいが、鍋2の開口部よりも下方に配置する場合には、ポンプなど他の給水手段を設ける必要がある場合もある。
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3における炊飯器の断面図を示すものである。その他の構成は実施の形態2と同様であり説明を省略する。
図5に示すように、水加熱手段15は、給水経路13に設けられており、給水経路13を加熱することで貯水タンク11から鍋2へ給水される水を加熱する。これにより、第1の給水工程中に水を加熱して熱水を鍋に供給することができるので、予備浸水工程において第1の所定温度にするための加熱時間を短縮することができ、炊飯時間を短縮することが可能となる。
また、第2の給水工程に給水する水温を水加熱手段15で調節することにより、加熱手段5による加熱を行うことなく浸水工程における第2の所定温度にすることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態における炊飯器は、浸水工程の実行時間(第2の所定時間)や水温(第2の所定温度)に応じて炊き上げ工程での加熱量を変化させることにより、最適な硬さのご飯を炊き上げるものである。その他の構成、工程については実施の形態1または2と同様であるため、説明を省略する。
図6は、本発明の実施の形態4における炊飯器の浸水工程での米の含水率変化を示すグラフである。図6に示すように、予備浸水工程を経た米は浸水工程の時間や温度によって含水率に差が生じる。そのため、炊き上げ工程において、含水率が異なる米に対して一様な加熱量で加熱すると、炊き上がった際の米の硬さにばらつきが生じてしまい、例えば、浸水工程終了時の含水率が低い場合は炊き上がりが硬すぎたり、含水率が高い場合は炊き上がりが柔らかすぎたりしてしまう恐れがある。この炊き上げ工程では、でんぷんの糊化が行われるとともに吸水も行われることから、浸水工程の時間が長かったり水温が高かったりしたため含水率が高い場合は、炊き上げ工程での加熱量を多くして急速に沸騰させることにより、吸水時間を短くして吸水量を抑えることができる。また、浸水工程の時間が短かったり水温が低かったりしたために含水率が低い場合は、炊き上げ工程での加熱量を少なくして穏やかに沸騰させることにより、吸水時間を長くして吸水量を高めることができる。
以上のように、浸水工程での時間や水温という条件に応じて炊き上げ工程での加熱量を変化させることで、炊き上げ工程を実行する時間、すなわち炊き上げ工程中の吸水時間を変化させることができ、含水率を調節して炊き上がったご飯の硬さをおいしく感じられる範囲内に抑えることができる。
(実施の形態5)
本実施の形態における炊飯器は、予備浸水工程での糊化温度以上の水への浸水時間(第1の所定時間)や水温(第1の所定温度)に応じて炊き上げ工程での水と米への加熱量を変化させることにより、最適な硬さのご飯を炊き上げることができるものである。その他の構成は実施の形態1または2と同様であるため、説明を省略する。
予備浸水工程での浸水時間や水の温度によって、米の糊化度やでんぷんの構造崩壊度が変化し、米表面の吸水しやすさの状態が変化する。図7は、本発明の実施の形態5における浸水工程での米の含水率変化を示すグラフである。図7に示すように、米表面の糊化度によって浸水工程での含水率に差が生じる。米表面が完全に糊化されると糊化したでんぷんにより米中心部への水や熱の浸透を阻害されるが、予備浸水工程における加熱時間は炊き上げ工程での加熱時間に比べて短いため、完全に糊化されることはなく、少し糊化することにより米表面は吸水しやすい状態となる。そのため、炊き上げ工程において、含水率が異なる米に対して一様な加熱量で加熱すると、炊き上がった際の米の硬さにばらつきが生じてしまい、例えば、浸水工程終了時の含水率が低い場合は炊き上がりが硬すぎたり、含水率が高い場合は炊き上がりが柔らかすぎたりしてしまう恐れがある。そこで、予備浸水工程における第1の所定時間が長かったり第1の所定温度が高かったりしたため含水率が高い場合は、炊き上げ工程での加熱量を多くして急速に沸騰させることにより、吸水時間を短くして吸水量を抑えることができる。また、第1の所定時間が短かったり第1の所定温度が低かったりしたために含水率が低い場合は、炊き上げ工程での加熱量を少なくして穏やかに沸騰させることにより、吸水時間を長くして吸水量を高めることができる。
以上により、糊化度を左右する予備浸水工程での浸水時間や温度に応じて、炊き上げ工程での加熱量を変化させることで、炊き上がったご飯の硬さをおいしく感じられる範囲内に抑えることができる。
(実施の形態6)
図8は、本発明の第6の実施の形態における炊飯器の断面図を示すものである。図8に示すように、重量計測手段16は鍋2の重量を計測するものであり、鍋2の下方に設けられている。その他の構成は実施の形態1または2と同様であるため、説明を省略する。
以上のように構成された炊飯器について、以下その動作、作用について説明する。本実施の形態では炊き上げ工程のみが実施の形態1または2と異なるものであるため、その他の工程については説明を省略する。
炊飯準備として、使用者により研がれた米が鍋2にセットされ、計量ボタン(図示せず)が押下される。計量ボタン(図示せず)を押下された時の米の入った鍋2の重量情報を重量計測手段16から得ることで、米の重量を検知することができる。その後、第1の給水工程が行われ、炊飯工程が開始される。
炊飯工程中の炊き上げ工程においては、適切な硬さのご飯を得るために加熱速度を一定範囲に抑えることが必要であり、加熱速度を適切な速度にするために、米の重量と追加された水量に対応する加熱手段5の加熱量で加熱を行う。
以上のように、本実施の形態においては、米の重量を正確に検知することが可能となるので、米の重量に対応する加熱量を用いることで、炊き上げ工程での加熱速度をコントロールし適切な硬さに炊き上げることが可能となる。これにより、米の重量が多い場合、少ない場合に比べて炊き上げ工程における加熱量を多くすることができるため短時間で鍋の温度を上げることができ、炊飯時間を短縮することができる。
また、貯水タンクと給水手段を設けている場合には、使用者が米量を入力する必要があったが、重量計測手段を備えることで、入力する手間もなくすことができ、使い勝手のよい炊飯器を提供することが可能となる。
また、本実施の形態において、米の入った鍋2に水を追加する際に、音声や表示などの報知手段によって、供給した水が適切な水量であるかどうかを報知すると、誤った水量で炊飯されることがなくなり、常においしく炊飯することができる。
また、本実施の形態において、重量計測手段16を用いて、炊き上げ工程での加熱量のみでなく浸水工程での加熱量をもコントロールすると、浸水工程での加熱速度もご飯の硬さに影響するので、ご飯の硬さを最適にコントロールすることができるのでよい。
(実施の形態7)
図9は、本発明の第7の実施の形態における炊飯器の断面図を示すものである。図9に示すように、内蓋4の孔部4aを密閉し、一定以上の圧力がかかると移動して鍋内の圧力を一定に保つ圧力調整手段17を蓋3に設けている。その他の構成は実施の形態1または2と同様であるため説明を省略する。
予備浸水工程や浸水工程、炊き上げ工程において、圧力調整手段17により鍋2内空間を密閉することにより、鍋2を加熱する際に加熱された鍋2内の空気が内蓋4の孔部4aから蒸気筒9を通って放出され鍋2中の熱を放熱してしまうことを低減することができるので、鍋2内の水をより早く加熱することができるので、省エネルギー性が向上されるとともに、加熱時間を短縮することができ、炊飯時間を短縮することができる。
また、本実施の形態においては、圧力調整手段17は圧力を一定に保つ機能を備えているが、必ずしも必要な機能ではなく、鍋2空間を密閉して放熱を低減することができれば、圧力を一定に保つ必要はなく、圧力が可変されてもよい。
また、本実施の形態においては、圧力調整手段17は孔部4aに球状の密閉手段を備えているだけの単純な機構であるが、圧力調整手段17の形状を限定するものではなく、密閉できればどのような形状でもよい。また、圧力調整の手段としてソレノイドなどで強制的に密閉手段を移動させるような機構を備えていてもよい。
なお、上記実施の形態1〜7において、加熱手段5は鍋2を誘導加熱するIHコイルでもよいし、ヒーター線でもよく、鍋2を加熱できれば他の手段でもよい。
また、上記実施の形態1〜7において、内蓋4を加熱する内蓋加熱手段を設けると、鍋2内の温度をさらに高温に保てるのでよい。
なお、上記実施の形態1〜7において、制御手段7は炊飯器本体1内にある必要はなく、例えば蓋3内にあってもよい。
なお、上記実施の形態1〜7において、報知手段8は、使用者に報知できればよく、ブザーでなくとも表示や人間の音声によるガイドなど他の手段でもよい。
なお、上記実施の形態1〜7において、炊飯器本体1は蒸気発生手段を備え、炊飯工程中および予備浸水中に蒸気を利用するとさらに効果的に加熱することができるのでよい。