JP5055543B2 - 新規癌検出方法、癌検出器具、および癌検出キット - Google Patents

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Description

本発明は、癌の新規検出方法に関するものであり、特に食道癌における特定遺伝子の発現レベルを正常レベルと比較して癌の検出を行う方法、癌を検出するための器具、および癌を検出するためのキットに関するものである。
従来、癌の診断には主として病理形態学的診断が用いられてきた。病理形態学的診断による病変の質的診断、広がりの程度、脈管内侵襲および断端浸潤の有無の判定は、後治療の選択・決定に不可欠である。しかし、良性と悪性との中間的な形態を示す病変はまれではなく、また、形態の変化では悪性度や予後の類推に限界がある。
さらに、病理形態学的診断は、1つ1つの検体から癌を目視により検出し、診断するものである。そのため熟練した経験が必要となるばかりか、主観的な判断により診断を行うという恐れがある。また、検体を1つ1つ調べるため、多数の検体を簡便に調べることは困難である。このような病理形態学的診断の弱点を補うために、分子生物学的解析が用いられており、様々な癌の分子マーカーが開発されている。
現在のところ、食道癌のマーカーとして既に実用化されているものにSCC(squamous cell carcinoma)、およびCYFRA21−1がある(非特許文献1)。
一方、本発明者らが食道癌において高発現していることを見出した遺伝子は、ADAMTS16をコードする遺伝子である。
ADAMTS16遺伝子は、非特許文献2において初めて報告された亜鉛依存的なプロテアーゼ活性を示す遺伝子であり、成人の組織では大脳および卵巣で発現しているものの、骨肉腫および乳癌ではまったく発現していないことが報告されている。
さらに非特許文献3および非特許文献4において、骨関節炎の患者の軟骨および滑膜において、ADAMTS16遺伝子が高発現していることが示されている。
Kawaguchi H, Ohno S, Miyazaki M, Hashimoto K, Egashira A, Saeki H, Watanabe M, Sugimachi K,「CYFRA 21-1 determination in patients with esophageal squamous cell carcinoma: clinical utility for detection of recurrences」,CANCER, 89(7), 1413-7,2000 Santiago Cal, Alvaro J. Obaya, Maria Llamazares, Cecilia Garabaya, Victor Quesada and Carlos Lopez-Otin, 「Cloning, expression analysis, and structural characterization of seven novel human ADAMTSs, a family of metalloproteinases with disintegrinand thrombospondin-1 domains」, Gene, 283 49-62, 2002 Lara Kevorkian, David A. Young, Clare Darrah, Simon T. Donell, Lee Shepstone, Sarah Porter, Sarah M. V. Brockbank, Dylan R. Edwards, Andrew E. Parker, and Ian M. Clark, 「Expression Profiling of Metalloproteinases and Their Inhibitors in Cartilage」, ARTHRITIS & RHEUMATISM, Vol. 50, 31-141, 2004 Rose K Davidson, Jasmine G Waters, Lara Kevorkian, Clare Darrah, Adele Cooper, Simon T Donell and Ian M Clark, 「Expression profiling of metalloproteinases and their inhibitors in synovium and cartilage」, Arthritis Research & Therapy, 8, R124, 2006
しかしながら、上述した、SCCおよびCYFRA21−1は、早期の食道癌では発現していないため、早期の食道癌の存在を調べることができない。さらに、癌以外の正常細胞でも多く発現しているため、偽陽性が多いという問題がある。それゆえ、早期の食道癌の検出が可能な特異性の高い腫瘍マーカーの開発が強く望まれている。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、食道癌において特異的に発現するだけでなく、早期の食道癌においても高発現している腫瘍マーカーを見出し、これを用いた癌の新規検出方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために、手術により得られた食道癌において発現している遺伝子をSAGE(Serial analysis of gene expression)法を用いて網羅的に解析し、正常組織における発現レベルと比較することにより、食道癌において特異的に発現レベルが高い遺伝子を見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係る被検体由来の試料の癌検出方法は、被検体由来の試料において、ADAMTS16遺伝子の発現レベルを測定する測定工程、および上記ADAMTS16遺伝子の発現レベルを正常レベルと比較する比較工程を包含することを特徴としている。
本発明に係る被検体由来の試料の癌検出方法は、被検体由来の試料において、配列番号1に示される塩基配列またはその部分配列を含むポリヌクレオチドのレベルを測定するポリヌクレオチド測定工程、および上記ポリヌクレオチドのレベルを正常レベルと比較する比較工程を包含することを特徴としている。上記ポリヌクレオチド測定工程において、配列番号3または4に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドを使用することが好ましい。
また、本発明に係る被検体由来の試料の癌検出方法は、被検体由来の試料において、配列番号2に示されるアミノ酸配列またはその部分配列からなるポリペプチドのレベルを測定するポリペプチド測定工程、および上記ポリペプチドのレベルを正常レベルと比較する比較工程を包含することを特徴としている。上記ポリペプチド測定工程において、配列番号2に示されるアミノ酸配列またはその部分配列からなるポリペプチドに特異的に結合する抗体を使用することが好ましい。
なお、本発明に係る癌検出方法は、食道癌に用いることが好ましい。
本発明に係る被検体由来の試料の癌検出器具は、配列番号1に示される塩基配列またはその部分配列を含むポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドが支持体上に固定化されていることを特徴としている。上記支持体上に固定化されているポリヌクレオチドが、配列番号3または4に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドであることが好ましい。
また、本発明に係る被検体由来の試料の癌検出器具は、被検体由来の試料を用いて癌を検出するための器具であって、配列番号2に示されるアミノ酸配列またはその部分配列からなるポリペプチドに特異的に結合する抗体が、支持体上に固定化されているものであってもよい。
本発明に係る被検体由来の試料の癌検出キットは、配列番号1示される塩基配列またはその部分配列を含むポリヌクレオチドを備えることを特徴としている。上記ポリヌクレオチドが、配列番号3または4に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドであることが好ましい。さらに、上記ポリヌクレオチドがRT−PCRまたはリアルタイムRT−PCRのプライマーとして用いられることが好ましい。
また、本発明に係る被検体由来の試料の癌検出キットは、配列番号2に示されるアミノ酸配列またはその部分配列からなるポリペプチドに特異的に結合する抗体を備えるものであってもよい。
本発明に係る被検体由来の試料の癌検出方法を使用することにより、癌を客観的な分子学的基準に基づき検出することができるという効果を奏する。それゆえ、病理形態学的診断が困難な癌について分子学的基準に基づく診断ができ、癌の機序解明に貢献できる。
また、従来のマーカーによる検出では偽陽性が多いことが問題となっているが、本発明に係る癌検出方法は特異性が高いので、偽陽性が少ないという効果を奏する。さらに、従来のマーカーでは早期癌の検出が困難であったが、本発明に係る被検体由来の試料の癌検出方法を用いれば、早期癌を感度よく検出することができるという効果を奏する。
本発明の実施の一形態について説明すれば、以下のとおりである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本明細書中に記載された非特許文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
(1)被検体由来の試料の癌の検出方法
本発明者らは、手術により得られた1例の食道癌において発現している遺伝子をSAGE(Serial analysis of gene expression)法を用いて網羅的に解析し、正常組織における発現レベルと比較することにより、食道癌特異的遺伝子候補を同定した。さらに、これらの候補遺伝子について、手術により得られた食道癌20例(上記1例とは異なるもの)における発現レベルを詳細に解析し、正常組織における発現レベルが低く、食道癌において発現レベルが高いADAMTS16遺伝子を特定した。さらに上記ADAMTS16遺伝子は食道扁平上皮癌においても正常組織と比べて発現レベルが高いことが明らかとなった。
既に述べたように、このADAMTS16遺伝子はすでにクローニングされており、cDNA(mRNA)の塩基配列がGenBankに登録されている(NM_139056)。さらに上述したようにADAMTS16遺伝子が、癌特異的に発現レベルが高いとの報告はない。それゆえADAMTS16遺伝子が正常組織において発現レベルが低く、かつ癌組織において発現レベルが高いという知見は本発明者らが初めて見出したものである。すなわち、ADAMTS16遺伝子は、癌特異的に発現レベルが高い遺伝子であり、当該遺伝子の転写産物、および翻訳産物は腫瘍マーカーとして利用可能であることが明らかとなった。
なお、配列番号1にはADAMTS16のcDNAの塩基配列が示されており、配列番号2にはADAMTS16遺伝子がコードするポリペプチドのアミノ酸配列が示されている。
本発明の癌検出方法は、被検体由来の試料を用いて、当該試料における上記ADAMTS16遺伝子の発現レベルを測定し、このレベルを正常レベルと比較することにより癌を検出する方法である。
被検体由来の試料におけるADAMTS16遺伝子の発現レベルが、正常レベルよりも高ければ被検体は癌を有していることになる。本明細書において、癌を検出するとは、被検体における癌の有無を見出すことである。
被検体は特に限定されるものではなく広く動物一般を含むが、ヒトであることが好ましい。被検体がヒトである場合、癌患者や癌を有する疑いのある患者のみでなく、健常人も被検体となり得る。
被検体由来の試料としては、被検体から得られるものであれば特に限定されない。例えば、生検組織、外科的に切除された検体等を挙げることができる。
遺伝子の発現レベルは、その転写産物(mRNA)レベル、またはその翻訳産物(ポリペプチド)レベルを測定することにより決定することができる。
正常レベルとは、正常健康個体(健常人)における同一遺伝子の発現レベルを意味する。正常レベルは、比較する被検体由来の試料と同一の正常細胞、組織を試料として用いて測定されたものであることが好ましい。また、正常レベルは正常健康個体集団の平均レベルを用いることがより好ましい。
また、検出の対象となる癌の種類は特に限定されるものではないが、食道癌であることが特に好ましい。さらに、上記食道癌が食道扁平上皮癌であってもよい。
(1−1)ポリヌクレオチドのレベルの測定による癌の検出
一実施形態において、本発明に係る癌検出方法は、被検体由来の試料において、配列番号1に示される塩基配列またはその部分配列を含むポリヌクレオチドのレベルを測定するポリヌクレオチド測定工程、および上記ポリヌクレオチドのレベルを正常レベルと比較する比較工程を包合するものであれば良い。
本実施形態では、ポリヌクレオチド測定工程において、ADAMTS16遺伝子のmRNAレベルを測定すればよい。すなわち、被検体由来の試料における、ADAMTS16遺伝子のmRNAレベルが、正常レベルよりも高いかどうかを調べることにより、癌を検出することができる。
mRNAレベルを測定する方法としては、特定のmRNAレベルを測定できる方法であれば特に限定されず、公知の方法から適宜選択して用いることができる。例えば、上記、ADAMTS16遺伝子のmRNAもしくはそのcDNAの塩基配列またはそれらの相補塩基配列の一部からなるポリヌクレオチドであって、上記、ADAMTS16遺伝子のRNAまたはcDNAに部位特異的に結合(ハイブリダイズ)するポリヌクレオチドを含むプライマーやプローブを用いた方法が挙げられる。
具体的には、上記プライマーやプローブを標識し、当該標識を検出することにより、上記mRNAまたはcDNAを検出することができる。そして、当該標識のシグナナル強度を調べることによりmRNAレベルを測定することができる。上記標識としては特に限定されないが、例えば、32Pに代表される放射性物質のほか、フルオレセインに代表される蛍光物質を用いることができる。
上記プライマーおよび/またはプローブとして使用するポリヌクレオチドとしては、例えば配列番号3または4に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドを挙げることができる。これらのポリヌクレオチドは、本発明者らが実際にリアルタイムRT−PCRを実施した際に用いたプライマーであり、目的のmRNAを特異的に増幅させるものであることが実証されている。なお、目的のmRNA(cDNA)を特異的に増幅させるプライマーとして利用可能なポリヌクレオチドは当該mRNA(cDNA)を特異的に検出するためのプローブとして使用可能であることは当業者にとって周知である。
mRNAまたはcDNAに部位特異的に結合するポリヌクレオチドを含むプライマーやプローブを用いてmRNAを検出する公知の方法としては、例えば、RT−PCR法、リアルタイムRT−PCR法、コンペティティブPCR法、in Situ ハイブリダイゼーション法、in Situ PCR法、DNAアレイ法、ノーザンブロット法などを挙げることができる。
RT−PCR(Reverse transcribed-Polymerase chain reaction)法とは、ADAMTS16遺伝子のmRNAを鋳型とし、逆転写酵素反応によりcDNAを合成後、PCRによるDNAの増幅を行う方法[Kawasaki,E.S.,et al.,Amplification of RNA.In PCR Protocol,A Guide to methods AND applications,Academic Press,Inc.,SanDiego,21-27(1991)]である。なお、DNAの増幅反応は特に限定されず、その反応条件も特に限定されない。
また、ADAMTS16遺伝子のDNAの増幅領域は、必ずしもDNA全長である必要はなく、増幅産物の確認に支障が無ければ、当該DNAの一部領域であってもよい。DNAの増幅反応に使用するプライマーは、当該DNAのみを特異的に増幅するように設計するのが好ましい。
増幅DNAレベルは、例えば、上記DNA増幅反応液をアガロースゲル電気泳動に供した後、目的増幅断片に特異的にハイブリダイズするプローブを用いることで検出することができる。一方、十分量の増幅産物が得られる場合には、アガロースゲル電気泳動を行った後、ゲルをEtBr染色し、増幅ポリヌクレオチドの位置とその蛍光強度により確認することも可能である。
さらに、RT−PCTの際に、リアルタイムモニタリング試薬を用いることによりリアルタイムRT−PCR法を行うことができる。リアルタイムRT−PCR法は、増幅産物の生成過程をリアルタイムでモニタリングし、解析する方法である。そのため、増幅産物の増幅量が飽和する前に増幅反応をストップすることができる。したがって、ADAMTS16遺伝子のmRNAレベルをより正確に測定することができる。上記リアルタイムモニタリング試薬としては、例えば、SYBR(登録商標:Molecular Probes社)Green、TaqMan(登録商標:Applied Biosystems社)プローブ等が挙げられる。
ノーザンハイブリダイゼーション法によるADAMTS16遺伝子のRNAの検出は、試料より抽出された一定量の粗RNA試料を分子量等による分画後ナイロンフィルター等に固定し、検出対象となるADAMTS16遺伝子のmRNAとプローブとを接触させ、当該mRNAにハイブリダイズした上記プローブを検出することにより実施することができる。
in Situ ハイブリダイゼーション法によるADAMTS16遺伝子のmRNAレベルの検出は、例えば、以下の方法で行うことができる。細胞、組織切片等の試料をホルマリン等で固定する。Triton−X等を用いてプローブが試料を透過できるように処理した後、プローブを加えてADAMTS16遺伝子のmRNAとハイブリダイズさせる。そして、当該mRNAにハイブリダイズしたプローブを検出することにより実施することができる。
DNAアレイ法によるADAMTS16遺伝子のmRNAレベルの検出は、例えば、以下の方法で行うことができる。支持体上にADAMTS16遺伝子のcDNAまたはその部分配列を固定化し、試料から調製したmRNAまたはcDNAとハイブリダイズさせる。この際、上記mRNAまたはcDNAを蛍光標識等することにより、支持体上に固定化したcDNAまたはその部分配列と試料から調製したRNAまたはcDNAとのハイブリダイゼーションを検出することができる。
mRNAレベルの測定は、例えば、上述の方法で検出したmRNAまたはcDNAに対してデンシトメーター等を用いて得られるシグナル強度を確認することにより実施することができる。すなわち、シグナル強度が強いほどmRNAまたはcDNAのレベルが高いと判断できる。
ポリヌクレオチドのレベルを正常レベルと比較する比較工程においては、ポリヌクレオチド測定工程において測定した試料中のmRNAレベルを正常レベルと比較すればよい。正常レベルは、上述のように、比較する被検体由来の試料と同一の正常細胞、組織を試料として用いて、同一の方法で測定されたものであることが好ましい。正常レベルは正常健康個体由来の試料を同時に測定してもよく、背景データとして蓄積されているデータを用いてもよい。
(1−2)ポリペプチドレベルの測定による癌の検出
他の実施形態において、本発明に係る方法は、被検体由来の試料を用いて癌を検出する方法であって、被検体由来の試料において、配列番号2に示されるアミノ酸配列またはその部分配列からなるポリペプチドのレベルを測定するポリペプチド測定工程、および上記ポリペプチドのレベルを正常レベルと比較する比較工程を包含するものであればよい。
本実施形態では、ポリペプチド測定工程において、ADAMTS16遺伝子がコードするポリペプチド(以下、「ADAMTS16タンパク質」と称する。)レベルを測定すればよい。すなわち、被検体由来の試料における、ADAMTS16タンパク質レベルが、正常レベルよりも高いかどうかを調べることにより、癌を検出することができる。
例えば、被検体由来の試料から粗ポリペプチド溶液を調製し、当該粗ポリペプチド溶液に含まれるADAMTS16タンパク質レベルを測定すればよい。粗ポリペプチド溶液を調製する方法は、例えば、上記試料をリン酸緩衝溶液等の緩衝溶液にサスペンドした後に、超音波処理等を行う。その後、遠心分離を行い、上清を回収することにより調製することができる。すなわち当該上清が、粗ポリペプチド溶液となる。
ADAMTS16タンパク質レベルを測定する方法としては、例えば、ADAMTS16タンパク質の生物活性を利用して測定する方法や、ADAMTS16タンパク質に特異的な抗体を用いて測定する方法を挙げることができる。
ADAMTS16タンパク質レベルを生物活性により測定する方法として、例えば、以下の方法を用いることができる。すなわち、ADAMTS16タンパク質は、プロテアーゼであることを利用し、基質となるポリペプチドまたはペプチドと上記粗ポリペプチド溶液とを反応させて、反応前後の上記基質の量を測定することによりADAMTS16タンパク質の生物活性を測定することができる。具体的には分解される基質の量が多いほど(反応後の基質の量が少ないほど)、ADAMTS16タンパク質レベルが高いと判断できる。
上記基質としては、例えばコラーゲン等を用いることができる。また、基質の量を測定する方法は、用いる基質に応じて適宜公知の方法を選択すればよい。例えば、上記基質に特異的な抗体を用いてウェスタンブロット法、ELISA法等の方法を行うことにより基質の量を測定することができる。
ADAMTS16タンパク質に特異的な抗体を用いて測定する方法としては、例えば、ウェスタンブロット法、ELISA法(固相酵素免疫検定法)、免疫沈降法、免疫組織化学法、抗体アレイ法などを挙げることができる。これらの中でも、より感度がよく、簡便という点から、ELISA法が好ましい。なお、抗体の種類は、ポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよい。また、完全な抗体分子でもよく特異的に結合し得る抗体フラグメント(例えば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント等)でもよい。
ウェスタンブロット法は、上記粗ポリペプチド溶液中の粗ポリペプチドを、SDS−ポリアクリルアミド電気泳動で分離させた後、ニトロセルロース膜などに転写しADAMTS16タンパク質に特異的な抗体によって検出する方法である。当該抗体は、例えば、25I−標識プロテインA、ペルオキシダーゼ結合抗IgG抗体などを用いて二次的に検出することができる。
ADAMTS16タンパク質レベルの測定は、例えば、上述の方法で検出したADAMTS16タンパク質に対してデンシトメーター等を用いて得られるシグナル強度を確認することにより実施することができる。すなわち、シグナル強度が強いほどADAMTS16タンパク質レベルが高いと判断できる。
ELISA法は、マルチウェルプレートに上記粗ポリペプチド溶液中の粗ポリペプチドを固定し、その後ADAMTS16タンパク質に特異的な抗体を用いてADAMTS16タンパク質を検出する方法である。上記抗体は、アルカリフォスファターゼまたはペルオキシダーゼ結合抗IgG抗体などを用いて二次的に検出することができる。
上記粗ポリペプチドの固定方法としては特に限定されないが、例えば、ADAMTS16タンパク質に特異的な抗体をマルチウェルプレートに固定した後に、上記粗ポリペプチドを加えることで、ADAMTS16タンパク質を容易に固定することができる。なお、この場合、ADAMTS16タンパク質を検出するための抗体を認識する抗原は、ADAMTS16タンパク質を固定するための抗体が認識する抗原部位とは別であることが好ましい。
ADAMTS16タンパク質レベルの測定は、上述のアルカリフォスファターゼまたはペルオキシダーゼの酵素活性を測定することにより調べることができる。すなわち、アルカリフォスファターゼまたはペルオキシダーゼの酵素活性が強いほどADAMTS16タンパク質レベルが高いと判断できる。
上記ポリペプチドのレベルを正常レベルと比較する比較工程においては、ポリペプチド測定工程において測定した試料中のポリペプチドレベルを正常レベルと比較すればよい。正常レベルは、上述のように、比較する被検体由来の試料と同一の正常細胞、組織を試料として用いて、同一の方法で測定されたものであることが好ましい。正常レベルは正常健康個体由来の試料を同時に測定してもよく、背景データとして蓄積されているデータを用いてもよい。
(2)癌の診断方法
本発明に係る被検体由来の試料の癌診断方法は、以下の(a)または(b)の場合に癌であると判定するものであればよい。
(a)本発明に係る癌検出方法において、配列番号1に示される塩基配列またはその部分配列を含むポリヌクレオチドのレベルが正常レベルの2倍以上である場合
(b)本発明に係る癌検出方法において、配列番号2に示されるアミノ酸配列またはその部分配列を含むポリペプチドのレベルが正常レベルの2倍以上である場合。
本明細書において、癌を診断するとは、被検体が癌を有しているか否かの判定を行うことを意味する。癌を有しているか否かの判定の基準としては、ADANTS16遺伝子の発現レベルが正常レベルよりも少なくとも2倍以上、好ましくは5倍以上である。
したがって、上述の癌検出方法において測定された、ADAMTS16遺伝子のmRNAレベル、または、ADAMTS16タンパク質レベルが、正常レベルの少なくとも2倍以上、好ましくは5倍以上である場合に、被検体が癌を有していると判定することができ、癌患者であると診断することができる。
(3)癌を検出するための器具
本発明に係る被検体由来の試料の癌検出器具は、配列番号1に示される塩基配列またはその部分配列を含むポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドが支持体上に固定化されている器具であればよい。
より具体的には、ADAMTS16遺伝子のmRNAもしくはそのcDNAの塩基配列またはそれらの相補塩基配列の一部からなるポリヌクレオチドであって、ADAMTS16遺伝子のmRNAまたはcDNAに特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドが支持体上に固定化されたDNAアレイ(DNAチップ)が挙げられる。
上記支持体上に固定化されるポリヌクレオチドはADAMTS16遺伝子のmRNAまたはcDNAに特異的にハイブリダイズするものであれば特に限定されるものではない。例えば、配列番号3または4に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドを挙げることができる。
これらのポリヌクレオチドは、本発明者らが目的のmRNAを特異的に増幅させるプライマーとして使用したポリヌクレオチドであり、当該mRNAを特異的に検出するためのプローブとして使用可能であることは当業者にとって周知である。なお、上記ADAMTS16遺伝子のmRNAまたはcDNAに特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドが支持体上に固定化されているものであれば、これら以外のポリヌクレオチドが同じ支持体上に固定化されているものであってもよい。
支持体としては、ポリヌクレオチドを固定化できるものであれば特に限定されるものではなく、どのような形状や材質であってもよい。支持体の材料としては、一般的には、例えば、ガラス、シリコンウエハ等の無機系材料、紙等の天然高分子、ニトロセルロース、ナイロン等の合成高分子、合成高分子や天然高分子を用いたゲル体等を挙げることができる。
上記本発明に係る被検体由来の試料の癌検出器具は、公知のDNAアレイ作製方法を用いて作製することができる。例えば、cDNA(全長配列または部分配列)からなるポリヌクレオチド溶液を調製し、スポッター等により支持体上にスポットして固定化すればcDNAアレイを作製することができる。固定化するポリヌクレオチドはcDNAの塩基配列を有する合成オリゴヌクレオチドでもよい。また、基板上でDNAを合成する、いわゆるアフィメトリクス型のDNAチップ技術を用いることも可能である。
遺伝子の発現を検出するために設計された公知の手法は、上記本発明に係る癌検出器具に好適に応用することができる。例えば、試料は細胞や組織のトータルRNAやmRNAから調製したcDNAやcRNAを用いることができる。より具体的には、cDNAやcRNAを蛍光標識しておき、支持体上に固定化されたポリヌクレオチドとハイブリダイズさせる。そのハイブリダイズしたcDNAやcRNAの量を蛍光を指標に測定することにより遺伝子の発現レベルを評価することができる。また、2種類の試料から調製したcDNAやcRNAをそれぞれ異なる色を発する蛍光物質で標識し、同一の支持体上のポリヌクレオチドにハイブリダイズさせれば、その色調と蛍光強度を測定することにより、遺伝子発現の差異を評価することができる。
また、他の実施形態において、本発明に係る被検体由来の試料の癌検出器具は、配列番号2に示されるアミノ酸配列またはその部分配列からなるポリペプチドに特異的に結合する抗体が支持体上に固定化されている器具であればよい。より具体的には、ADAMTS16タンパク質に特異的に結合する抗体が支持体上に固定化された抗体アレイまたはELISA用プレートが挙げられる。なお、上記ADAMTS16タンパク質に特異的に結合する抗体が支持体上に固定化されているものであれば、これら以外の抗体が同じ支持体上に固定化されているものであってもよい。
支持体としては、抗体、すなわちポリペプチドを固定化できるものであれば特に限定されるものではなく、どのような形状や材質であってもよい。支持体の材料としては、一般的には、例えば、ガラス、シリコンウエハ等の無機系材料、紙等の天然高分子、ニトロセルロース、ナイロン、ポリスチレン等の合成高分子、合成高分子、天然高分子を用いたゲル体等を挙げることができる。
抗体を用いてポリペプチド(ポリペプチド)を検出するために設計された公知の手法は、上記本発明に係る器具に好適に応用することができる。例えば、サイファージェン・バイオシステムズ社より、プロテインチップの1種類としてバイオロジカルチップが販売されている。これは基板(支持体)の表面にカルボニルジイミダゾールまたはエポキシの活性基を持つもので、ユーザーが自由に目的のポリペプチドや抗体を固定化して使用するものである。上記本発明に係る器具の作製にこれを応用することが可能である。
(4)癌を検出するためのキット
本発明に係る被検体由来の試料の癌検出キットは、配列番号1に示される塩基配列またはその部分配列を含むポリヌクレオチドを備えるものであればよい。配列番号1に示される塩基配列またはその部分配列を含むポリヌクレオチドとしては、例えば、ADAMTS16遺伝子のmRNAのレベルを測定するために使用するプライマーまたはプローブを挙げることができる。
また、本発明に係る癌検出キットは、被検体由来の試料を用いて癌を検出するためのキットであって、配列番号2で示されるアミノ酸配列またはその部分配列からなるポリペプチドに特異的に結合する抗体を備えるものでもよい。
一実施形態として、本キットはRT−PCR用キットまたはリアルタイムRT−PCR用キットを構成することができる。キットにはADAMTS16遺伝子を増幅するためのプライマーセットが備えられていることが好ましい。
上記プライマーセット以外のキットの構成品は特に限定されないが、例えば、被検体由来の試料からRNAを調製するための試薬、逆転写酵素、逆転写反応に用いる緩衝液、耐熱性DNAポリメラーゼ、PCR用試薬、リアルタイムPCR用試薬、PCR用チューブ、PCR用プレートなどを備えていることが好ましい。また、上記プライマーセットに加えて、上記以外のプライマーセットが含まれていてもよい。
他の実施形態として、本キットはDNAアレイ用キットを構成することができる。当該キットには上記本発明に係る器具(DNAアレイ)が備えられていることが好ましい。DNAアレイ以外のキットの構成品は特に限定されないが、例えば、組織または細胞からRNAを調製するための試薬、逆転写酵素、逆転写反応に用いる緩衝液、cDNAを蛍光標識するための試薬、ハイブリダイゼーション用試薬などを備えていることが好ましい。
さらに他の実施形態として、本キットはELISA用キットを構成することができる。キットには、ADAMTS16タンパク質に特異的に結合する抗体が備えられていることが好ましい。
また、上記抗体は、予めELISA用プレートに固定化(固相化)された状態でキットに含まれていることが好ましい。なお、その場合は、ADAMTS16タンパク質の別の抗原部位を認識する、ADAMTS16タンパク質に特異的な抗体が備えられていることが好ましい。
上記ELISA用プレート以外のキットの構成品は特に限定されないが、例えば、標識された二次抗体、発色用試薬、洗浄用緩衝液などを備えていることが好ましい。また、上記抗体に加えて、他のポリペプチドに対する抗体が含まれていてもよい。
なお本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以下、本発明について実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、核酸の抽出、切断、連結、大腸菌の形質転換、遺伝子の塩基配列決定等、一般の遺伝子組換えに必要な方法は、特に記載のない限り、各操作に使用する市販の試薬、機器装置等に添付されている説明書や、実験書(例えば「Molecular Cloning, a Laboratory Manual, 3rd Ed(Sambrookら(2001), Cold Spring Harbor Laboratory Press)」)に基本的に従った。
(1)SAGE法による食道癌特異的遺伝子候補の同定
広島大学病院で外科的に切除された食道癌(中分化扁平上皮癌)について、SAGE法を用いて遺伝子発現を網羅的に解析した。
すなわち、上記食道癌から調製したmRNA(5μg)を材料として、ビオチンラベルされたオリゴdTプライマーを用いて逆転写反応を行い、first strandおよびsecond strandを合成した。次に、CATGを認識して切断する制限酵素NlaIIIで切断し、アビジンをコートしたマグネットビーズを用いて3’側のフラグメントを回収した。ライゲースによりリンカーを結合させた後、CATGから3’側に10〜12塩基を認識して切断する制限酵素BsmFIで切断し、アビジンをコートしたマグネットビーズを用いて5’側のフラグメントを回収した。得られたフラグメントをライゲースを用いて2分子結合させ、これを鋳型としてリンカーの塩基配列を有するプライマーを用いてPCRを行い増幅させた。
増幅産物をゲルで精製した後、ライゲースによりフラグメントをいくつも直列に結合させた。電気泳動により500bp以上のフラグメントを回収し、pZeroに組み込んで大腸菌DH10Bにトランスフォームした。抗生物質ゼオシンを含むLB培地で大腸菌を培養し、生育したコロニーからプラスミドを抽出して、組み込まれたフラグメントの塩基配列を決定した。塩基配列情報を、SAGE2000ソフトウェアを用いて遺伝子発現情報に変換した。
上記食道癌から得られた合計約1151クローンの解析から約14000タグが得られ、多数の癌関連遺伝子を新規に同定した。
食道癌に特異的に発現している遺伝子を同定するため、NCBI(米国国立バイオテクノロジーインフォメーションセンター)のSAGEデータベースである「SAGEmap」で利用可能な正常食道組織のSAGEライブラリーと上記食道癌のSAGEライブラリーとをコンピュータ上で比較した。その結果、ADAMTS16遺伝子が食道癌で最も高発現していた。
(2)リアルタイムRT−PCR法によるレベルの測定
上記ADAMTS16遺伝子のmRNAについて、食道癌におけるレベルをリアルタイムRT−PCR法を用いて測定した。試料として、広島大学病院で外科的に切除された食道癌20例を用いた。また、対照試料として、食道非腫瘍部粘膜20例と正常組織14種類を用いた。
上記食道癌20例のそれぞれ、および上記食道非腫瘍部粘膜20例のそれぞれからTotal RNAを抽出した。また、上記正常組織14種類のそれぞれのTotal RNAは、クロンテックより購入した、大脳(カタログ番号636530)、脊髄(カタログ番号636554)、心臓(カタログ番号636532)、肺(カタログ番号636524)、胃(カタログ番号636578)、小腸(カタログ番号636539)、結腸(カタログ番号636553)、肝臓(カタログ番号636531)、膵臓(カタログ番号636577)、腎臓(カタログ番号636529)、骨髄(カタログ番号636548)、脾臓(カタログ番号636525)、骨格筋(カタログ番号636534)、白血球(カタログ番号636580)のTotal RNAを用いた。
上記の食道癌20例、食道非腫瘍部粘膜20例、および上記正常組織14例の各Total RNAを鋳型として、定法にしたがってcDNAを合成した。次に上記cDNAを鋳型とし、上記特異的プライマーを用いてリアルタイムRT−PCR行った。リアルタイムRT−PCRは、アプライドバイオシステムズ社製のABI PRISM(登録商標) 7700 Sequence Detection System上で、SYBR Green PCR Core Reagents Kitを用いて行った。
反応液の組成は、10×SYBR Green PCR Buffer:5μL、25mM MgCl2 Solution:6μL、12.5mM dNTP Mix:4μL、5U/μL Ampli Taq GoldTM:0.25μL、1U/μL AmpErase(登録商標):0.5μL、Forwardプライマー:0.5μL、Reverseプライマー:0.5μL、試料(各組織由来のcDNA):1μLおよび滅菌蒸留水:32.25μLとした。なお、プライマー、試料および滅菌蒸留水以外はすべて上記SYBR Green PCR Core Reagents Kitに付属のものである。反応条件は、50℃/2分、95℃/10分に引き続き、95℃/15秒および60℃/1分の反応を40サイクル行った。
なお、上記Forwardプライマーとして、配列番号3で表される塩基配列のプライマーを用いた。また、上記Reverseプライマーとして、配列番号4で表される塩基配列のプライマーを用いた。
図1は、上記リアルタイムRT−PCRの結果を示す図である。具体的には、図1は食道癌20例、食道非腫瘍部粘膜20例、および正常組織14種類の各試料におけるADAMTS16遺伝子のmRNAレベルを表している。なお、縦軸の値は、正常組織の中で最も高かったADAMTS16遺伝子のmRNAレベルを1としたときの、各試料におけるADAMTS16遺伝子のmRNAレベルの相対レベルを表している。本実施例の場合は、脊髄のADAMTS16遺伝子のmRNAレベルを1とした。
図1から明らかなように、脊髄でのレベルを1とした場合に、食道癌20例の中で最も高く発現しているADAMTS16遺伝子のmRNAレベルは、9倍であった。また、早期の食道癌についても5例中、1例においてADAMTS16遺伝子のmRNAが高発現していることが明らかとなった。さらに脊髄でのレベルを1とした場合に、食道非腫瘍部粘膜において、ADAMTS16遺伝子のmRNAはほとんど発現していないということが分かった。
また、脊髄でのレベルを1とした場合に、食道癌においてADAMTS16遺伝子のmRNAレベルが2倍以上である試料の数は20例中5例であった。
〔実施例2〕
〔実施例1〕と同様に、食道扁平上皮癌10例、および正常食道2例からcDNAを作製した。なお、上記食道扁平上皮癌10例、および正常食道2例は、大分大学付属病院で外科的に切除されたものを用いた。
また、クロンテックより購入した、正常組織14種類(肝臓(カタログ番号636531)、腎臓(カタログ番号636529)、心臓(カタログ番号636532)、結腸(カタログ番号636553)、大脳(カタログ番号636530)、骨髄(カタログ番号636548)、骨格筋(カタログ番号636534)、肺(カタログ番号636524)、小腸(カタログ番号636539)、膵臓(カタログ番号636577)、脊髄(カタログ番号636554)、胃(カタログ番号636578)、脾臓(カタログ番号636525)、白血球(カタログ番号636580))の各Total RNAからcDNAを作製した。
そして、配列番号3および4で表される塩基配列のプライマーを用いてリアルタイムRT−PCRを行った。
図2は、リアルタイムRT−PCRの結果を示す図である。具体的には、図2は、食道扁平上皮癌10例、正常食道2例、および正常組織14種類の各試料におけるADAMTS16遺伝子のmRNAレベルを表している。なお、縦軸の値は、正常組織の中で最も高かったADAMTS16遺伝子のmRNAレベルを1としたときの、各試料におけるADAMTS16遺伝子のmRNAレベルの相対レベルを表している。本実施例の場合は、脊髄のADAMTS16遺伝子のmRNAレベルを1とした。
また、図2から明らかなように、脊髄でのレベルを1とした場合に、食道扁平上皮癌10例の中で最も高く発現しているADAMTS16遺伝子のmRNAレベルは、9倍以上であった。さらに、脊髄でのレベルを1とした場合に、正常食道においてADAMTS16遺伝子のmRNAはほとんど発現していないということが分かった。
また、脊髄でのレベルを1とした場合に、食道扁平上皮癌においてADAMTS16遺伝子のmRNAレベルが2倍以上である試料の数は10例中4例であった。
〔比較例〕
SCCA1遺伝子のレベルについて、食道癌におけるレベルをリアルタイムRT−PCR法で測定した。プライマー以外の測定条件は〔実施例2〕と同じである。なお、SCCA1遺伝子は従来から用いられている食道癌のマーカーである。また、Forwardプライマーとして、配列番号5で表される塩基配列のプライマーを用いた。また、Reverseプライマーとして、配列番号6で表される塩基配列のプライマーを用いた。
図3は、リアルタイムRT−PCRの結果を示す図である。具体的には、図3は、食道扁平上皮癌10例、正常食道2例、および正常組織14種類の各試料におけるSCCA1遺伝子のmRNAレベルを表している。なお、縦軸の値は、正常組織の中で最も高かったSCCA1遺伝子のmRNAレベルを1としたときの、各試料におけるSCCA1遺伝子のmRNAレベルの相対レベルを表している。本比較例の場合は、肺のSCCA1遺伝子のmRNAレベルを1とした。
図3から明らかなように、肺でのレベルを1とした場合に、食道扁平上皮癌10例の中で最も高く発現しているSCCA1遺伝子のmRNAレベルは、14倍以上であった。さらに、肺でのレベルを1とした場合に、正常食道において最も高く発現しているSCCA1遺伝子のmRNAレベルは1であった。
また、肺でのレベルを1とした場合に、食道扁平上皮癌においてSCCA1遺伝子のmRNAレベルが2倍以上である試料の数は10例中2例であった。
上記結果より、ADAMTS16遺伝子のmRNAは、食道癌および食道扁平上皮癌に特異的に高発現していることが明らかとなった。また、早期の食道癌においてもADAMTS16遺伝子のmRNAは、高発現していることが明らかとなった。さらに、SCCA1遺伝子と比べて、ADAMTS16遺伝子のmRNAは、食道扁平上皮癌特異的に発現していることが明らかとなった。
また、正常組織の中で最もレベルの高いものを1とした場合に、ADAMTS16遺伝子のmRNAを2倍以上発現している食道扁平上皮癌は4試料であるのに対し、SCCA1遺伝子のmRNAを2倍以上発現している食道扁平上皮癌は2試料である。このことは、ADAMTS16遺伝子のmRNAの方が、SCCA1遺伝子のmRNAと比べてより感受性が高く、より広範囲の食道扁平上皮癌を検出することができることを示している。
本発明は癌の検出に用いるものであり、特に癌検出薬、癌検出キット、癌研究用試薬等を提供することができる。それゆえ、医薬産業、医療機器産業、試薬産業、臨床検査薬産業等において利用することができる。
食道癌、食道非腫瘍部粘膜、および正常組織におけるADAMTS16遺伝子のmRNAのレベルをリアルタイムRT−PCR法で測定した結果を示す図である。 食道扁平上皮癌、正常食道、および正常組織におけるADAMTS16遺伝子のmRNAのレベルをリアルタイムRT−PCR法で測定した結果を示す図である。 食道扁平上皮癌、正常食道、および正常組織におけるSCCA1遺伝子のmRNAのレベルをリアルタイムRT−PCR法で測定した結果を示す図である。

Claims (12)

  1. 被検体由来の試料において、ADAMTS16遺伝子の発現レベルを測定する測定工程、および
    上記ADAMTS16遺伝子の発現レベルを正常レベルと比較する比較工程
    を包含することを特徴とする被検体由来の試料の食道癌の検出を補助する方法。
  2. 被検体由来の試料において、配列番号1に示される塩基配列またはその部分配列を含むポリヌクレオチドのレベルを測定するポリヌクレオチド測定工程、および
    上記ポリヌクレオチドのレベルを正常レベルと比較する比較工程
    を包含することを特徴とする被検体由来の試料の食道癌の検出を補助する方法。
  3. 上記ポリヌクレオチド測定工程において、配列番号3または4に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドを使用することを特徴とする請求項2に記載の食道癌の検出を補助する方法。
  4. 被検体由来の試料において、配列番号2に示されるアミノ酸配列またはその部分配列からなるポリペプチドのレベルを測定するポリペプチド測定工程、および
    上記ポリペプチドのレベルを正常レベルと比較する比較工程
    を包含することを特徴とする被検体由来の試料の食道癌の検出を補助する方法。
  5. 上記ポリペプチド測定工程において、配列番号2に示されるアミノ酸配列またはその部分配列からなるポリペプチドに特異的に結合する抗体を使用することを特徴とする請求項4に記載の食道癌の検出を補助する方法。
  6. 配列番号1に示される塩基配列またはその部分配列を含むポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドが支持体上に固定化されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法に使用するための被検体由来の試料の食道癌検出器具。
  7. 支持体上に固定化されているポリヌクレオチドが、配列番号3または4に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドであることを特徴とする請求項6に記載の食道癌検出器具。
  8. 配列番号2に示されるアミノ酸配列またはその部分配列からなるポリペプチドに特異的に結合する抗体が支持体上に固定化されていることを特徴とする、請求項4または5に記載の方法に使用するための被検体由来の試料の食道癌検出器具。
  9. 配列番号1に示される塩基配列またはその部分配列を含むポリヌクレオチドを備えることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法に使用するための被検体由来の試料の食道癌検出キット。
  10. 上記ポリヌクレオチドが、配列番号3または4に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドであることを特徴とする請求項9に記載の食道癌検出キット。
  11. 上記ポリヌクレオチドがRT−PCRまたはリアルタイムRT−PCRのプライマーとして用いられることを特徴とする請求項9または10に記載の食道癌検出キット。
  12. 配列番号2に示されるアミノ酸配列またはその部分配列からなるポリペプチドに特異的に結合する抗体を備えることを特徴とする、請求項4または5に記載の方法に使用するための被検体由来の試料の食道癌検出キット。
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