食器乾燥機で乾燥した食器類は、システムキッチンの収納庫のみならず吊戸棚にも収納することができるので、食器乾燥機と吊戸棚とが同時に利用されることも多い。そして、吊戸棚をキャビネット内外にわたり昇降するように設けた場合、食器乾燥機はその中にビルトインする構成にした方が、一つの操作で両者を同時に利用することができ、駆動部が一つで済む等コスト的に有利となる。
また、乾燥が必要な台所用品としては、食器類の他に、まな板や布巾等の払拭布もある。まな板は包丁等による多数の傷があり、洗剤で洗い流したとしても雑菌が残留している可能性が高く、払拭布も濡れた状態で長時間放置されるので、雑菌が繁殖することもある。したがって、まな板や払拭布に関しては他の台所用品と同様の乾燥に加えて除菌を行うとよく、そのための除菌乾燥機を吊戸棚にビルトインすることも考えられる。
しかし、食器乾燥機にしても除菌乾燥機にしても温風(熱風)で庫内が加熱されるから、加熱状態でラックの下降操作がなされると庫内の熱気がキャビネット外に放出され、使用者が不意に熱気に晒されることになって好ましくない。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、乾燥庫(食器乾燥機)又は除菌庫(除菌乾燥機)といった加熱庫が乾燥のための加熱処理を行っているときにラックの下降操作が行われても、使用者が不意に熱気に晒される事態を防止することができる昇降式吊戸棚を提供することを課題としている。
上記課題を解決するために、本発明の代表的な構成は、キャビネット内に収容される上昇位置とキャビネット外に露出する下降位置との間で昇降可能なラックと、ラックに設置されて加熱処理を行う加熱庫と、ラックの昇降及び加熱庫における加熱処理を制御する制御手段と、制御手段に対してラックの下降開始の命令信号を送出するラック下降信号送出手段とを備え、制御手段が、ラックが上昇位置にある状態で加熱庫における加熱処理を行っているときにラック下降信号送出手段から命令信号を受けても、この命令信号を無視する処理を行う昇降式吊戸棚を特徴とする。
上記構成によれば、制御手段が、加熱庫における加熱処理を行っているときに使用者によるラックの下降操作がなされてラック下降信号送出手段から命令信号を受けても、この命令信号を無視する処理を行うので、ラックが加熱処理の最中に下降操作に応じてキャビネット外に下降してくることがなく、使用者が不意に熱気に晒される事態を防止することができる。
また本発明の他の代表的な構成は、キャビネット内に収容される上昇位置とキャビネット外に露出する下降位置との間で昇降可能なラックと、ラックに設置されて加熱処理を行う加熱庫と、ラックの昇降及び加熱庫における加熱処理を制御する制御手段と、制御手段に対してラックの下降開始の命令信号を送出するラック下降信号送出手段と、制御手段に対して加熱庫における加熱処理停止の命令信号を送出する加熱処理停止信号送出手段とを備え、制御手段が、ラックが上昇位置にある状態で加熱庫における加熱処理を行っているときに加熱処理停止信号送出手段から命令信号を受けると、加熱庫における加熱処理を停止し、さらに加熱庫内が所定温度以下になっていない状態でラック下降信号送出手段から命令信号を受けると、ラックを通常の下降速度よりも遅い速度で下降させる昇降式吊戸棚を特徴とする。ここで、「通常の下降速度」とは、加熱庫内が加熱処理による加熱の影響下にない常温であるときのラックの下降速度を意味する。
上記構成によれば、制御手段が、加熱庫における加熱処理を行っているときに使用者による加熱処理の停止操作がなされて加熱処理停止信号送出手段から命令信号を受けると、加熱庫における加熱処理を停止し、さらに加熱庫内が所定温度以下になっていない状態で使用者によるラックの下降操作がなされてラック下降信号送出手段から命令信号を受けると、ラックを通常の下降速度よりも遅い速度で下降させるので、ラックが加熱処理の最中に下降操作に応じてキャビネット外に下降してくることがないばかりでなく、加熱処理の停止直後で加熱庫内の温度が所定温度よりも高い状態では下降操作に伴うラックの下降速度がゆっくりとしたものとなり、使用者が不意に熱気に晒される事態を防止することができる。
また本発明の他の代表的な構成は、キャビネット内に収容される上昇位置とキャビネット外に露出する下降位置との間で昇降可能なラックと、ラックに設置されて加熱処理を行う加熱庫と、使用者に警報を発する警報手段と、ラックの昇降、加熱庫における加熱処理及び警報手段の作動を制御する制御手段と、制御手段に対してラックの下降開始の命令信号を送出するラック下降信号送出手段と、制御手段に対して加熱庫における加熱処理停止の命令信号を送出する加熱処理停止信号送出手段とを備え、制御手段が、ラックが上昇位置にある状態で加熱庫における加熱処理を行っているときに加熱処理停止信号送出手段から命令信号を受けると、加熱庫における加熱処理を停止し、さらに加熱庫内が所定温度以下になっていない状態でラック下降信号送出手段から命令信号を受けると、警報手段を作動させながらラックを下降させる昇降式吊戸棚を特徴とする。
上記構成によれば、制御手段が、加熱庫における加熱処理を行っているときに使用者による加熱処理の停止操作がなされて加熱処理停止信号送出手段から命令信号を受けると、加熱庫における加熱処理を停止し、さらに加熱庫内が所定温度以下になっていない状態で使用者によるラックの下降操作がなされてラック下降信号送出手段から命令信号を受けると、警報手段を作動させながらラックを下降させるので、ラックが加熱処理の最中に下降操作に応じてキャビネット外に下降してくることがないばかりでなく、加熱処理の停止直後で加熱庫内の温度が所定温度よりも高い状態では下降操作に伴うラックの下降が高温を通知する警報とともに行われることになり、使用者が不意に熱気に晒される事態を防止することができる。
また本発明の他の代表的な構成は、キャビネット内に収容される上昇位置とキャビネット外に露出する下降位置との間で昇降可能なラックと、ラックに設置されて加熱処理を行う加熱庫と、使用者に警報を発する警報手段と、ラックの昇降、加熱庫における加熱処理及び警報手段の作動を制御する制御手段と、制御手段に対してラックの下降開始の命令信号を送出するラック下降信号送出手段と、制御手段に対して加熱庫における加熱処理停止の命令信号を送出する加熱処理停止信号送出手段とを備え、制御手段が、ラックが上昇位置にある状態で加熱庫における加熱処理を行っているときに加熱処理停止信号送出手段から命令信号を受けると、加熱庫における加熱処理を停止し、さらに加熱庫内が所定温度以下になっていない状態でラック下降信号送出手段から命令信号を受けると、警報手段を作動させながらラックを通常の下降速度よりも遅い速度で下降させる昇降式吊戸棚を特徴とする。
上記構成によれば、制御手段が、加熱庫における加熱処理を行っているときに使用者による加熱処理の停止操作がなされて加熱処理停止信号送出手段から命令信号を受けると、加熱庫における加熱処理を停止し、さらに加熱庫内が所定温度以下になっていない状態で使用者によるラックの下降操作がなされてラック下降信号送出手段から命令信号を受けると、警報手段を作動させながらラックを通常の下降速度よりも遅い速度で下降させるので、ラックが加熱処理の最中に下降操作に応じてキャビネット外に下降してくることがないばかりでなく、加熱処理の停止直後で加熱庫内の温度が所定温度よりも高い状態では下降操作に伴うラックの下降が高温を通知する警報とともにゆっくり行われることになり、使用者が不意に熱気に晒される事態を防止することができる。
また本発明の他の代表的な構成は、キャビネット内に収容される上昇位置とキャビネット外に露出する下降位置との間で昇降可能なラックと、ラックに設置されて加熱処理を行う加熱庫と、ラックの昇降及び加熱庫における加熱処理を制御する制御手段と、制御手段に対してラックの下降開始の命令信号を送出するラック下降信号送出手段と、制御手段に対して加熱庫における加熱処理停止の命令信号を送出する加熱処理停止信号送出手段とを備え、制御手段が、ラックが上昇位置にある状態で加熱庫における加熱処理を行っているときにラック下降信号送出手段から命令信号を受けると、加熱庫における加熱処理を停止するとともに、ラックを通常の下降速度よりも遅い速度で下降させる昇降式吊戸棚を特徴とする。
上記構成によれば、制御手段が、加熱庫における加熱処理を行っているときに使用者によるラックの下降操作がなされてラック下降信号送出手段から命令信号を受けると、加熱庫における加熱処理を停止するとともに、ラックを通常の下降速度よりも遅い速度で下降させるので、ラックが加熱処理の最中に下降操作に応じてキャビネット外に下降してくることがないばかりでなく、下降操作に伴うラックの下降速度は加熱処理停止直後の加熱庫内の高温に配慮したゆっくりとしたものとなり、使用者が不意に熱気に晒される事態を防止することができる。
また本発明の他の代表的な構成は、キャビネット内に収容される上昇位置とキャビネット外に露出する下降位置との間で昇降可能なラックと、ラックに設置されて加熱処理を行う加熱庫と、使用者に警報を発する警報手段と、ラックの昇降、加熱庫における加熱処理及び警報手段の作動を制御する制御手段と、制御手段に対してラックの下降開始の命令信号を送出するラック下降信号送出手段と、制御手段に対して加熱庫における加熱処理停止の命令信号を送出する加熱処理停止信号送出手段とを備え、制御手段が、ラックが上昇位置にある状態で加熱庫における加熱処理を行っているときにラック下降信号送出手段から命令信号を受けると、加熱庫における加熱処理を停止するとともに、警報手段を作動させながらラックを下降させる昇降式吊戸棚を特徴とする。
上記構成によれば、制御手段が、加熱庫における加熱処理を行っているときに使用者によるラックの下降操作がなされてラック下降信号送出手段から命令信号を受けると、加熱庫における加熱処理を停止するとともに、警報手段を作動させながらラックを下降させるので、ラックが加熱処理の最中に下降操作に応じてキャビネット外に下降してくることがないばかりでなく、下降操作に伴うラックの下降は加熱処理停止直後の加熱庫内の高温を通知する警報とともに行われることになり、使用者が不意に熱気に晒される事態を防止することができる。
また本発明の他の代表的な構成は、キャビネット内に収容される上昇位置とキャビネット外に露出する下降位置との間で昇降可能なラックと、ラックに設置されて加熱処理を行う加熱庫と、使用者に警報を発する警報手段と、ラックの昇降、加熱庫における加熱処理及び警報手段の作動を制御する制御手段と、制御手段に対してラックの下降開始の命令信号を送出するラック下降信号送出手段と、制御手段に対して加熱庫における加熱処理停止の命令信号を送出する加熱処理停止信号送出手段とを備え、制御手段が、ラックが上昇位置にある状態で加熱庫における加熱処理を行っているときにラック下降信号送出手段から命令信号を受けると、加熱庫における加熱処理を停止するとともに、警報手段を作動させながらラックを通常の下降速度よりも遅い速度で下降させる昇降式吊戸棚を特徴とする。
上記構成によれば、制御手段が、加熱庫における加熱処理を行っているときに使用者によるラックの下降操作がなされてラック下降信号送出手段から命令信号を受けると、加熱庫における加熱処理を停止するとともに、警報手段を作動させながらラックを下降させるので、ラックが加熱処理の最中に下降操作に応じてキャビネット外に下降してくることがないばかりでなく、下降操作に伴うラックの下降は加熱処理停止直後の加熱庫内の高温を通知する警報とともにゆっくり行われることになり、使用者が不意に熱気に晒される事態を防止することができる。
なお制御手段により制御されて加熱庫内を冷却する冷却手段を備え、制御手段が、加熱庫内が所定温度以下になっていない状態でラックを下降させるときに、冷却手段を作動させてもよい。冷却手段としては、加熱庫における熱源から熱風を送出する送風手段を利用することもでき、また熱源とは別途に排気ファンや排気ダクト、その他の冷却手段を設けてもよい。
これにより、制御手段が、加熱庫内が所定温度以下になっていない状態でラックを下降させるときに、加熱庫内を冷却する冷却手段を作動させるので、加熱処理の停止直後で加熱庫内の温度が所定温度より高くても下降操作がなされると加熱庫が積極的かつ自動的に冷却されながらキャビネット外に露出し、使用者が不意に熱気に晒される事態を一層確実に防止することができる。
また本発明の他の代表的な構成は、キャビネット内に収容される上昇位置とキャビネット外に露出する下降位置との間で昇降可能なラックと、ラックに設置されて加熱処理を行う第一の加熱庫と、ラックに設置されて第一の加熱庫よりも低い温度で加熱処理を行う第二の加熱庫と、ラックの昇降、第一の加熱庫における加熱処理及び第二の加熱庫における加熱処理を制御する制御手段と、制御手段に対してラックの下降開始の命令信号を送出するラック下降信号送出手段とを備え、制御手段が、ラックが上昇位置にある状態で第一の加熱庫における加熱処理を行っているときにラック下降信号送出手段から命令信号を受けても、この命令信号を無視する処理を行い、ラックが上昇位置にある状態で第二の加熱庫における加熱処理のみを行っているときにラック下降信号送出手段から命令信号を受けると、第二の加熱庫における加熱処理を停止するとともに、ラックを通常の下降速度よりも遅い速度で下降させる昇降式吊戸棚を特徴とする。ここで、「第二の加熱庫における加熱処理のみを行っているとき」とは、第一の加熱庫における加熱処理を行っておらず、かつ、第二の加熱庫における加熱処理を行っているときを意味する。
上記構成によれば、制御手段が、第一の加熱庫における加熱処理を行っているときに使用者によるラックの下降操作がなされてラック下降信号送出手段から命令信号を受けても、この命令信号を無視する処理を行うので、ラックが(第二の加熱庫における加熱処理に比べて)より高温の加熱処理の最中に下降操作に応じてキャビネット外に下降してくることがなく、使用者が不意に熱気に晒される事態を防止することができる。また、制御手段が、第二の加熱庫における加熱処理のみを行っているときに使用者によるラックの下降操作がなされてラック下降信号送出手段から命令信号を受けると、第二の加熱庫における加熱処理を停止するとともに、ラックを通常の下降速度よりも遅い速度で下降させるので、ラックが(第一の加熱庫における加熱処理に比べて)相対的には低温の加熱処理の最中においても下降操作に応じてキャビネット外に下降してくることがないばかりでなく、下降操作に伴うラックの下降速度は加熱処理停止直後の第二の加熱庫内の高温に配慮したゆっくりとしたものとなり、使用者が不意に熱気に晒される事態をやはり防止することができる。
また本発明の他の代表的な構成は、キャビネット内に収容される上昇位置とキャビネット外に露出する下降位置との間で昇降可能なラックと、ラックに設置されて加熱処理を行う第一の加熱庫と、ラックに設置されて第一の加熱庫よりも低い温度で加熱処理を行う第二の加熱庫と、使用者に警報を発する警報手段と、ラックの昇降、第一の加熱庫における加熱処理、第二の加熱庫における加熱処理及び警報手段の作動を制御する制御手段と、制御手段に対してラックの下降開始の命令信号を送出するラック下降信号送出手段とを備え、制御手段が、ラックが上昇位置にある状態で第一の加熱庫における加熱処理を行っているときにラック下降信号送出手段から命令信号を受けても、この命令信号を無視する処理を行い、ラックが上昇位置にある状態で第二の加熱庫における加熱処理のみを行っているときにラック下降信号送出手段から命令信号を受けると、第二の加熱庫における加熱処理を停止するとともに、警報手段を作動させながらラックを下降させる昇降式吊戸棚を特徴とする。
上記構成によれば、制御手段が、第一の加熱庫における加熱処理を行っているときに使用者によるラックの下降操作がなされてラック下降信号送出手段から命令信号を受けても、この命令信号を無視する処理を行うので、ラックが(第二の加熱庫における加熱処理に比べて)より高温の加熱処理の最中に下降操作に応じてキャビネット外に下降してくることがなく、使用者が不意に熱気に晒される事態を防止することができる。また、制御手段が、第二の加熱庫における加熱処理のみを行っているときに使用者によるラックの下降操作がなされてラック下降信号送出手段から命令信号を受けると、第二の加熱庫における加熱処理を停止するとともに、警報手段を作動させながらラックを下降させるので、ラックが(第一の加熱庫における加熱処理に比べて)相対的には低温の加熱処理の最中においても下降操作に応じてキャビネット外に下降してくることがないばかりでなく、下降操作に伴うラックの下降は加熱処理停止直後の第二の加熱庫内の高温を通知する警報とともに行われることになり、使用者が不意に熱気に晒される事態を防止することができる。
また本発明の他の代表的な構成は、キャビネット内に収容される上昇位置とキャビネット外に露出する下降位置との間で昇降可能なラックと、ラックに設置されて加熱処理を行う第一の加熱庫と、ラックに設置されて第一の加熱庫よりも低い温度で加熱処理を行う第二の加熱庫と、使用者に警報を発する警報手段と、ラックの昇降、第一の加熱庫における加熱処理、第二の加熱庫における加熱処理及び警報手段の作動を制御する制御手段と、制御手段に対してラックの下降開始の命令信号を送出するラック下降信号送出手段とを備え、制御手段が、ラックが上昇位置にある状態で第一の加熱庫における加熱処理を行っているときにラック下降信号送出手段から命令信号を受けても、この命令信号を無視する処理を行い、ラックが上昇位置にある状態で第二の加熱庫における加熱処理のみを行っているときにラック下降信号送出手段から命令信号を受けると、第二の加熱庫における加熱処理を停止するとともに、警報手段を作動させながらラックを通常の下降速度よりも遅い速度で下降させる昇降式吊戸棚を特徴とする。
上記構成によれば、制御手段が、第一の加熱庫における加熱処理を行っているときに使用者によるラックの下降操作がなされてラック下降信号送出手段から命令信号を受けても、この命令信号を無視する処理を行うので、ラックが(第二の加熱庫における加熱処理に比べて)より高温の加熱処理の最中に下降操作に応じてキャビネット外に下降してくることがなく、使用者が不意に熱気に晒される事態を防止することができる。また、制御手段が、第二の加熱庫における加熱処理のみを行っているときに使用者によるラックの下降操作がなされてラック下降信号送出手段から命令信号を受けると、第二の加熱庫における加熱処理を停止するとともに、警報手段を作動させながらラックを通常の下降速度よりも遅い速度で下降させるので、ラックが(第一の加熱庫における加熱処理に比べて)相対的には低温の加熱処理の最中においても下降操作に応じてキャビネット外に下降してくることがないばかりでなく、下降操作に伴うラックの下降は加熱処理停止直後の第二の加熱庫内の高温を通知する警報とともにゆっくり行われることになり、使用者が不意に熱気に晒される事態を防止することができる。
また本発明の他の代表的な構成は、請求項9乃至請求項11のいずれかに記載の昇降式吊戸棚において、制御手段により制御されて第一の加熱庫内及び第二の加熱庫内を冷却する冷却手段を備え、制御手段が、第一の加熱庫内又は第二の加熱庫内のいずれかが所定温度以下になっていない状態でラックを下降させるときに、冷却手段を作動させることを特徴とする。冷却手段としては、加熱庫における熱源から熱風を送出する送風手段を利用することもでき、また熱源とは別途に排気ファンや排気ダクト、その他の冷却手段を設けてもよい。
上記構成によれば、制御手段が、第一の加熱庫内又は第二の加熱庫内のいずれかが所定温度以下になっていない状態でラックを下降させるときに、第一の加熱庫内及び第二の加熱庫内を冷却する冷却手段を作動させるので、加熱処理の停止直後で第一の加熱庫内又は第二の加熱庫内のいずれかの温度が所定温度より高くても下降操作がなされるとその加熱庫が積極的かつ自動的に冷却されながらキャビネット外に露出し、使用者が不意に熱気に晒される事態を一層確実に防止することができる。
本発明によれば、乾燥庫又は除菌庫といった加熱庫が乾燥のための加熱処理を行っているときにラックの下降操作がなされても、使用者が不意に熱気に晒される事態を防止することができる。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。なお、以下の実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。
本実施形態は、キッチン用の昇降式吊戸棚のラックに除菌庫及び乾燥庫を設け、ラックの下降時に使用者が除菌庫や乾燥庫から放たれる熱気に不意に晒される状況を防止し得ることを特徴としている。ここでは、本実施形態の理解を容易にするため、まず吊戸棚の構成について説明し、その後、実施例で本実施形態の特徴を詳述する。
図1は、本実施形態のシステムキッチンと吊戸棚との位置関係を示した斜視図である。システムキッチン100では、調理に必要な火(加熱)や水を使えるところ(後述のコンロ150やシンク130)を中心に、各収納庫が配されている。吊戸棚110は、システムキッチン100の上方に設置されているが、高所にある扉を開閉することなく、収納部分をキッチン使用者の目の高さまで下ろし、使用者が前方に手を伸ばして被収納物を収納又は取り出せるようにしたものである。
上記システムキッチン100は、シンク130、調理スペース140及びコンロ150の概ね3つの部位で構成されている。かかるシステムキッチン100のうち、シンク130及び調理スペース140の幅にわたる領域の上方において、吊戸棚110は、壁500に背面を固定支持されている。一方、火気を扱うコンロ150の上方には、吊戸棚110に隣接して、レンジフード160が吊戸棚同様に壁500に固定支持されている。
吊戸棚110は、下方が開放されたキャビネット170と、キャビネット170の下方にてキャビネット170の内外へ昇降する昇降ラック180とを含む。すなわち、昇降ラック180は、キャビネット170内に収容される上昇位置とキャビネット170外に露出する下降位置との間で昇降可能で、この昇降は使用者の操作部600の操作により電動で行われる。昇降ラック180は収納部を有し、前面の大部分が開放されていて、食器や台所回りの用品を出し入れすることができる。
また、キャビネット170の前面には上扉172と下扉174とが配置されていて、昇降ラック180が下降してキャビネット170の下方に出現するときは、これと連動して下扉174が上方へ移動する。したがって、昇降ラック180の上端がキャビネット170の下端より下降せずとも、昇降ラック180の開放前面は使用者の目の前に出現する。かかる構成により昇降ラック180の可動範囲を狭くすることができ、昇降動作時間を短縮したり、昇降ラック180の高さ方向の寸法を大きくして容積増大を図ったりすることができる。以下に昇降ラック180と、下扉174とを連動させる駆動機構について説明する。
図2は、昇降ラック180の駆動機構を示した図であり、図3は、その駆動機構等の制御系を示した図である。図2では理解を容易にするため下扉174は図示を省略している。
操作部600の上昇ボタン602又は下降ボタン604が押されると、これらのボタンからラック上昇信号又はラック下降信号がCPU等を含む制御回路630に送出され、制御回路630は駆動モータ190を正方向又は逆方向に回転させる。この駆動モータ190の回転によって、水平方向左右に延びる2条の幅広ベルト200が巻き取られ、又は、巻き出される。これらのベルトは、キャビネット170の両側板の近傍に固定設置された転向プーリ210(定滑車)によって垂直方向に転向され、端部はそれぞれ昇降ラック180に固定されたプーリ212(動滑車)を巻回して、キャビネット170の上方に固定されている。したがって、駆動モータ190の回転によって、昇降ラック180は昇降する。
昇降ラック180が下降すると食器類や調理器具を収納可能な収納部が出現し、収納部には、除菌庫230及び乾燥庫220が隔離設置されている。かかる除菌庫230は、周囲の除菌壁250と開閉扉252とによって他と隔離された空間を形成し(図5、図8参照)、乾燥庫220は、周囲の乾燥壁450と上扉172、下扉174とによって除菌庫230とは別の空間を形成する(図10参照)。
このように、払拭布やまな板等の調理器具の除菌加熱を行う除菌庫230及び食器類を乾燥する乾燥庫220を昇降ラック180内に設ける構成により、システムキッチン100のワークトップ下の空間を有効利用できる。また、昇降ラック180を降ろすと昇降ラック180内の調理器具も除菌庫内の調理器具も一度に取出可能になるので、調理器具の両者間移動も容易かつ迅速に遂行することができる。
図4は、除菌庫230及び乾燥庫220内の温風の経路を示した説明図である。ここでは、理解を容易にするため除菌庫230の開閉扉252の図示を省略する。図4では、温風器254で除菌可能な程度に温度が高められた温風が、ダクト256を通じて通風部258の中空部に送られ、さらに通風部258のノズル290から流出した温風は、除菌庫230内を循環する。また、温風器244で食器乾燥可能な程度に温度が高められた温風が、ダクト246を通じてノズル248に送られ、さらにノズル248から流出した温風は、乾燥庫220内を循環する。
ここでは、除菌庫230は密封構造を採らないが、温風器254からの温風は除菌庫230内に向けて送風されるため、温風器244が運転停止状態にあれば除菌庫230の気圧が高くなり、密封構造でなくても他の空間、例えば乾燥庫220からの空気の流入を防止することができる。また、温風器244が運転状態にあっても、温風器254、244の各風量を調整しておくことにより、除菌庫230の気圧を相対的に高くして乾燥庫220からの空気の流入を防止することができる。
以下、除菌庫230及び乾燥庫220の具体的構成を述べる。
図5は、除菌庫230の構成を示した斜視図である。当該除菌庫230は、除菌壁250と、開閉扉252と、温風器254と、ダクト256と、通風部258とを含んで構成される。本実施形態では、この除菌庫230によってまな板の除菌をなし得る。したがって、48cm×27cm程度に収まる通常のまな板はそのまま縦置きに載置することができる。
上記除菌壁250は、除菌庫230の周囲を形成し、昇降ラック180内における他の空間と隔離すべく設けられている。
上記開閉扉252は、透明又は半透明の耐熱性のある樹脂で形成され、ヒンジ機構によって昇降ラック180に回動自在に取り付けられている。本実施形態の除菌処理を遂行するときには、かかる開閉扉252を開状態にすることでまな板268を設置することができ、マグネット272の吸着力により開閉扉252を閉状態にした後、除菌処理を開始する。また、除菌処理が終了した後のまな板268の取出口としても機能する。
上記温風器254は、除菌壁250の外側で除菌庫230の鉛直上方に配置され、温風を生成する。詳細には、図3に示すように、温風器254は制御回路630によりオン/オフ制御されるファン650とヒーター652とを含み、操作部600の除菌ボタン606が操作されると、除菌ボタン606から送出された命令信号を受けた制御回路630がファン650及びヒーター652をオン/オフ制御する(除菌ボタン606が押されると、制御回路630は次述のようにファン650及びヒーター652をともにオンにして除菌処理を開始し、除菌ボタン606がもう一度押されると、制御回路630はヒーター652をオフして除菌処理を停止する。)。ファン650及びヒーター652がともにオンされると、温風器254は温風を送出して除菌庫230内を加熱し、ファン650のみがオンされると、温風器254は送風を行って除菌庫230内が高温であればそれを冷却する。温風の温度は、通風部258からまな板268に噴射する温風が80℃近辺となって除菌庫230内も80℃程度となるように設定される(温風の温度調整は、除菌庫230内に設けられた図示を略す温度計の測温結果が制御回路630にフィードバックされ、制御回路630がヒーター652のオン/オフを調整することによって行う。)。また、コストと除菌効果との兼ね合いで80℃以上の例えば、95℃といった設定も可能である。
なお、本実施形態においては温風器254のファン650を用いて冷却を行っているが、温風器とは別途の排気ファンや排気ダクト、その他の既知の冷却手段を設けてもよい。
上記ダクト256は、温風器254で生成された温風を通風部258に流し込むための管路として機能する。したがって、管路の一端が温風器254に、中央及び他端が2つの通風部258に接続されている。
このようなダクト256を用いると、温風器254と通風部258とを自由に配置することが可能となり、温風器254と通風部258とを同一平面に並置することなく鉛直方向に重ねて配置することができるので、空間の占有効率を向上させることができる。
また、ダクト256内の気圧は温風器254に近いほど高くなるので、各々の通風部258への温風の流量を等しくするために、ダクト256から通風部258への流入口の大きさを温風器254と通風部258との距離に応じて変化させている(図示せず)。すなわち、図5において温風器254に近い側の通風部258aへの流入口は、温風器254に遠い側の通風部258bへの流入口より小さくなる。
上記通風部258は、外表面がステンレスで形成され、除菌庫230内に突出し、まな板268が載置されるべき領域、ここでは図5の左方向に向かう所定の方向に温風器254からの温風を噴出するノズル290を有している。
かかる構成では、まな板268に向かって温風を直接噴出するので、まな板268に温風を深い角度で衝突させることができ、まな板268への効果的な熱伝導を遂行できる。したがって、まな板268を十分に加熱することが可能となり、高い除菌効果を得ることができる。
このとき、まな板268は、除菌庫230内に別途設けられた器具ラック260に載置されている。
図6は、器具ラック260及びまな板268の載置構造を示す説明図である。まず、除菌庫230内面には、樹脂から形成された4つの掛止部材262が予め除菌壁250にネジで締結されており、器具ラック260をその掛止部材に嵌合、掛止する。まな板268は器具ラック260に載置することで除菌庫230の底面及び側面とまな板268との間に空隙を形成する。
図7は、器具ラック260へのまな板268の載置による温風の循環経路を説明するための説明図である。温風器254で生成されダクト256から流入口288を通じて通風部258に流入した温風(図中破線で示す。)は、まな板268方向に噴出される。ここで、2つの通風部258のうち、通風部258aは、その温風をまな板268の通風部側表面に直接噴射する(図中実線で示す。)。また、通風部258bは、器具ラック260により形成された空隙に温風が流入する方向に温風を噴射する(図中実線で示す。)。
この器具ラック260によりまな板268を除菌庫230の外壁から離隔することができ、その間に温風を回り込ませることで、まな板268の通風部258に面していない部分にも温風を当てることが可能となり、まな板268を効果的に加熱、除菌することができる。このように複数の通風部258の少なくとも一つがまな板268の一面に、他の少なくとも一つが他面に温風を当てることで、まな板268全体を一度に加熱することができ、十分な除菌効果が得られる。
また、本実施形態では、通風部258の形状を工夫することで、通風部に払拭布を載置し、かつ、その払拭布を除菌、乾燥することも可能である。
図8は、除菌庫230の他の構成を示した斜視図である。上述した除菌庫230と比較すると、ここでは通風部358の構成のみ相異し、他の構成要素は実質的に機能が等しい。したがって、通風部358以外の構成要素に関する重複説明を省略する。
ここでの通風部358は、ステンレスで形成され、ダクト256からの温風が流入する中空部376と、中空部376に取り込んだ温風によって加熱される外壁378と、外壁378を加熱した温風を流出するノズル290とを有している。そして、除菌対象である払拭布370を外壁378の外表面に接触させて除菌する。
除菌を遂行するためには払拭布370を例えば80℃に加熱する必要がある。これは、同温度で加熱した場合に払拭布の湿度が高い状態の方が雑菌に与えるダメージが大きいからである。しかし、従来の送風や温風を直接当ててその水気を飛ばす方法では水気を飛ばすときの気化熱によって払拭布370の熱があまり上昇しない。本実施形態では、温風器254からの温風によりまず通風部358の外壁378が加熱され、その熱をもって払拭布370が間接的に加熱されるので、気化熱により熱が奪われることなく、払拭布370を雑菌の死滅温度である80℃まで上昇することができ、払拭布370が乾燥していない、濡れたままの状態において十分に除菌することが可能となる。
ここで、通風部358は、外壁378の外表面の少なくとも一部に払拭布370が接触する傾斜面を有している。かかる構成では、払拭布370が重力を受けて傾斜面に接するので、払拭布370と傾斜面との接触を安定的にかつ長時間維持することができる。したがって、外壁外表面の熱を払拭布370のみに十分に伝達することが可能となる。
また、通風部358の傾斜面は、断面が略三角形に形成されている。頂部を境にした2つの傾斜面に跨るように、払拭布370を広げた状態で掛けることによって、頂部を境に両方向に払拭布370の自重が作用する。したがって、払拭布370と傾斜面との接触をさらに安定的にかつ長時間維持することができ、外壁外表面の熱を払拭布370のみに十分に伝達することが可能となる。また、外観も布巾掛けに掛けたような状態になるので、使用者に清潔なイメージを与えることができる。
このようにして、通風部358の外壁を加熱した温風は、さらに通風部358の外に流出し、通風部358の周囲を循環して払拭布370を乾燥させる。
図9は、温風の循環経路を説明するための説明図である。温風器254で生成されダクト256から流入口288を通じて通風部358に流入した温風は、まず、通風部358の外壁378に当たり外壁378自体を加熱する(図中破線で示す。)。外壁378を加熱した温風は、通風部358の端部に設けられたノズル290から流出する。ノズル290は垂直に対して少し角度を有しているので、温風は一方向に偏って流出し、その温風が除菌庫230内で循環する(図中実線で示す。)。
かかる構成により、まな板268が除菌されるのは勿論のこと、払拭布370は、一面が外壁378からの熱で除菌され、他面が温風により乾燥する。したがって、除菌及び乾燥を迅速かつ効率よく遂行することが可能となる。
図10は、本実施形態の乾燥庫220の構成を示した斜視図である。当該乾燥庫220は、乾燥壁450と、温風器244と、ダクト246と、乾燥ラック452とを含んで構成される。
上記乾燥壁450は、乾燥庫220の周囲を形成し、除菌庫230と隔離すべく設けられている。
上記温風器244は、乾燥壁450の外側で乾燥庫220の上方に配置され、温風を生成する。詳細には、図3に示すように、温風器244は制御回路630によりオン/オフ制御されるファン654とヒーター656とを含み、操作部600の乾燥ボタン608が操作されると、乾燥ボタン608から送出された命令信号を受けた制御回路630がファン654及びヒーター656をオン/オフ制御する(乾燥ボタン608が押されると、制御回路630は次述のようにファン654及びヒーター656をともにオンにして乾燥処理を開始し、乾燥ボタン608がもう一度押されると、制御回路630はヒーター656をオフして乾燥処理を停止する。)。ファン654及びヒーター656がともにオンされると、温風器244は温風を送出して除菌庫220内を加熱し、ファン654のみがオンされると、温風器244は送風を行って除菌庫220内が高温であればそれを冷却する。温風の温度は、乾燥庫220内が60℃程度となるように設定される(温風の温度調整は、乾燥庫220内に設けられた図示を略す温度計の測温結果が制御回路630にフィードバックされ、制御回路630がヒーター656のオン/オフを調整することによって行う。)。なお、ヒーター656は温風器254のヒーター652と独立にオン/オフ制御することが可能となっているが、ファン654は温風器254のファン650と連動してのみオン/オフ制御することが可能となっている。
上記ダクト246は、温風器244で生成された温風を乾燥庫220の天井面に形成されたノズル248に案内する。
上記乾燥ラック452は、被乾燥器具を載置して乾燥庫220の底面及び側面と被乾燥器具との間に空隙を形成する。そして、ノズル248から噴出した温風はこの乾燥ラック452によって形成された空隙を通じて被乾燥器具を乾燥する。ここでは、ノズル248から噴出した温風の多くは左右の側面に沿って下降した後に底面に案内され、乾燥庫220内を循環して庫内温度を均一化する。
かかる乾燥ラック452により被乾燥器具を乾燥庫220の外壁から離隔することができ、その間に温風を回り込ませることで、被乾燥器具全体に満遍なく温風を当てることが可能となり、被乾燥器具を効果的に乾燥することができる。
つぎに、除菌庫230又は乾燥庫220の加熱処理(除菌処理若しくは乾燥処理)中又は加熱処理直後に操作部600が操作されたときの実施例について説明する。
[実施例1]
図11は、除菌庫230のみを運転して除菌運転(除菌乾燥運転)を行った場合の温風器254、244の動作を示した図(テーブル)である。
使用者により除菌ボタン606が操作されて制御回路630が除菌運転を開始すると、制御回路630の制御により操作部600における「除菌」のLED表示610(図3参照)が点灯し、ヒーター652がオンになるとともにファン650(及びファン654)がオンになる。
つぎに、除菌庫230内が設定温度の80℃に到達するとヒーター652がオフになり、設定温度を所定時間保つようにヒーター652のオン/オフ制御がなされる。
庫内温度が80℃に維持されて所定時間が経過すると除菌処理が完了し、ヒーター652がオフになってファン650(及びファン654)のみオンの状態が継続し、除菌庫230内(及び乾燥庫220内)が冷却される。このとき、制御回路630により、操作部600において「冷却中」のLED表示612が点灯する。ここでの冷却時間は、除菌庫230内が40℃以下となるまでの時間(ただし、最低限の冷却効果と環境温度が40℃よりも高い可能性があることとを考慮して、5分以上30分以内)とする。
この冷却処理が終了すると、ファン650(及びファン654)もオフになるとともにLED表示610、612が消灯する。さらに、制御回路630は、操作部600におけるスピーカー640を通じてブザー音を鳴らし、除菌運転の終了を通知する。なお、除菌時間(除菌処理に要した上記所定時間)と冷却時間との和である総運転時間は、ここでは最大でも2時間30分としている。
図12は、除菌運転の各段階で操作部600が操作されたときの制御回路630による処理の概要を示した流れ図である。
昇降ラック180がキャビネット170内に収まる上昇位置にあり、かつ、除菌庫230及び乾燥庫220の運転がなされていないことを前提として、下降ボタン604が押されると(S1)、制御回路630は除菌庫230内が40℃以下であるか否かを判断し(S10)、40℃以下であれば昇降ラック180を通常の下降速度で下降させ(S11)、40℃よりも高温であればスピーカー640によりアラーム音を鳴らすとともにLED表示612を点滅させ(S12)、昇降ラック180を通常の下降速度よりも遅い速度(速さ)で下降させる(S13)。
一方、除菌ボタン606が押されて除菌運転が開始され(S2、S3)、除菌処理中に下降ボタン604が押されても(S4)、制御回路630はこれを無視する(S5)。
除菌処理中に除菌ボタン606が押されると(S6、S7)、除菌処理は強制終了となって冷却処理が開始される(S8)。この段階で下降ボタン604が押されると(S9)、制御回路630は除菌庫230内が40℃以下であるか否かを判断し(S10)、40℃以下であれば昇降ラック180を通常の下降速度で下降させ(S11)、40℃よりも高温であればスピーカー640によりアラーム音を鳴らすとともにLED表示612を点滅させ(S12)、昇降ラック180を通常の下降速度よりも遅い速度(速さ)で下降させる(S13)。冷却処理中に下降ボタン604が押されることなく冷却処理が完了すれば(S14)、除菌運転は完了する。
また、除菌処理中に除菌ボタン606が押されることなく除菌処理が完了すれば(S7)、あとは上記のS8〜S14と同様のステップを辿る。
この実施例では、制御回路630が、除菌庫230における除菌処理を行っているときに使用者による下降ボタン604の操作がなされて下降ボタン604から昇降ラック180を下降させる命令信号を受けても、この命令信号を無視するので、昇降ラック180(ひいては除菌庫230)が除菌処理の最中に下降操作に応じてキャビネット170外に下降してくることがなく、使用者が不意に熱気に晒される事態を防止することができる。
また、制御回路630が、除菌庫230における除菌処理を行っているときに使用者による除菌ボタン606の操作がなされて除菌ボタン606から除菌処理停止の命令信号を受けると、除菌庫230における除菌処理を停止し、さらに除菌庫230内が40℃以下になっていない状態で使用者による下降ボタン604の操作がなされて下降ボタン604から昇降ラック180下降の命令信号を受けると、スピーカー640によりアラーム音を鳴らし、かつ、LED表示612を点滅させながら昇降ラック180を通常の下降速度よりも遅い速度で下降させるので、昇降ラック180(ひいては除菌庫230)が除菌処理の最中に下降操作に応じてキャビネット170外に下降してくることがないばかりでなく、除菌処理の停止直後で除菌庫230内の温度が40℃よりも高い状態では下降操作に伴う昇降ラック180の下降がアラーム音及びLED点滅とともにゆっくり行われることになり、使用者が不意に熱気に晒される事態をやはり防止することができる。
ここでは、特に、制御回路630が、除菌庫230内が40℃以下になっていない状態で昇降ラック180を下降させるときにファン650(及びファン654)の運転を継続するので、除菌処理の停止直後で除菌庫230内の温度が40℃より高くても下降操作がなされると除菌庫230が積極的かつ自動的に冷却されながらキャビネット170外に露出し、使用者が不意に熱気に晒される事態が一層確実に防止されている。
なお、除菌処理が終了して庫内温度が40℃よりも高い状態にあるときに再度除菌ボタン606が操作された場合(連続運転を行う場合)には、制御回路630は安全のため40℃以下になるのを待ってヒーター652を再始動する。図13は、そのような連続運転が行われる場合の温風器254の動作を示した図であり、ヒーター652の再始動により除菌処理が再開された後は以上説明した動作を繰り返す。
また制御回路630は、何らかの動作を指示されていない状態であっても、庫内温度を常時監視するよう構成することができ、例えば40℃以上である場合には冷却処理を行うようにしてもよい。これにより、例えば加熱処理後に電源をオフ/オンした場合であっても、迅速に加熱庫内の温度を低下させることができ、下降ボタンを操作したときにすぐに下降させられる可能性を高めることができる。
[実施例2]
図14は、乾燥庫220のみを運転して乾燥運転(食器乾燥運転)を行った場合の温風器254、244の動作を示した図である。
使用者により乾燥ボタン608が操作されて制御回路630が乾燥運転を開始すると、制御回路630の制御により操作部600における「乾燥」のLED表示614(図3参照)が点灯し、ヒーター656がオンになるとともにファン654(及びファン650)がオンになる。また、この乾燥運転では、使用者が選択した所定時間(30分、60分又は90分)だけ乾燥処理が行われ、乾燥処理完了までの残存時間がLED表示616に表示される。
つぎに、乾燥庫220内が設定温度の60℃に到達するとヒーター656がオフになり、上記残存時間が0になるまでヒーター656のオン/オフ制御がなされる。
庫内温度が60℃に維持されて所定時間が経過すると乾燥処理が完了し、ヒーター656がオフになってファン654(及びファン650)のみオンの状態が継続し、乾燥庫220内(及び除菌庫230内)が冷却される。このとき、制御回路630により、操作部600において「冷却中」のLED表示612が点灯する。ここでの冷却時間は、乾燥庫220内が40℃以下となるまでの時間(ただし、10分以内)とする。
この冷却処理が終了すると、ファン654(及びファン650)もオフになるとともにLED表示612、614、616が消灯する。さらに、制御回路630は、操作部600におけるスピーカー640を通じてブザー音を鳴らし、乾燥運転の終了を通知する。
図15は、乾燥運転の各段階で操作部600が操作されたときの制御回路630による処理の概要を示した流れ図である。
昇降ラック180がキャビネット170内に収まる上昇位置にあり、かつ、乾燥庫220及び除菌庫230の運転がなされていないことを前提として、下降ボタン604が押されると(S20)、制御回路630は除菌庫230内が40℃以下であるか否かを判断し(S21)、40℃以下であれば昇降ラック180を通常の下降速度で下降させ(S22)、40℃よりも高温であれば冷却処理が開始される(S26)。さらに、制御回路630はスピーカー640によりアラーム音を鳴らすとともにLED表示612を点滅させ(S27)、昇降ラック180を通常の下降速度よりも遅い速度で下降させる(S28)。
一方、乾燥ボタン608が押されて乾燥運転が開始され(S23、S24)、乾燥処理中に下降ボタン604が押されると(S25)、乾燥処理は強制終了となってLED表示616が消灯する。そして40℃以下であるか否かを判断し(S21)、40℃以上であればS26〜S28のステップを辿る。
また、乾燥処理中に乾燥ボタン608が押されることなく乾燥処理が完了すれば(S29)、冷却処理に移行する(S30)。この冷却処理の最中に下降ボタン604が押されると(S31)、必ずしも既に最適な温度にまで低下しているとは限らないことから、制御回路630は40℃以下であるか否かを判断し(S21)、40℃以上であればS26〜S28のステップを辿る。冷却処理中に下降ボタン604が押されず冷却処理が完了すれば(S32)、乾燥運転は完了する。
この実施例では、制御回路630が、乾燥庫220における乾燥処理を行っているときに使用者による下降ボタン604の操作がなされて下降ボタン604から昇降ラック180を下降させる命令信号を受けると、乾燥庫220における乾燥処理を停止するとともに、スピーカー640によりアラーム音を鳴らし、かつ、LED表示612を点滅させながら昇降ラック180を通常の下降速度よりも遅い速度で下降させるので、昇降ラック180(ひいては乾燥庫220)が乾燥処理の最中に下降操作に応じてキャビネット170外に下降してくることがないばかりでなく、下降操作に伴う昇降ラック180の下降は乾燥処理停止直後の乾燥庫220内の高温を通知するアラーム音及びLED点滅とともにゆっくり行われることになり、使用者が不意に熱気に晒される事態を防止することができる。
ここでも、実施例1と同様に、制御回路630が、乾燥庫220内が40℃以下になっていない状態で昇降ラック180を下降させるときにファン654(及びファン650)の運転を継続するので、乾燥処理の停止直後で乾燥庫220内の温度が40℃より高くても下降操作がなされると乾燥庫220が積極的かつ自動的に冷却されながらキャビネット170外に露出し、使用者が不意に熱気に晒される事態が一層確実に防止されている。
なお、乾燥処理が終了して庫内温度が40℃よりも高い状態にあるときに再度乾燥ボタン608が操作された場合(連続運転を行う場合)には、制御回路630は安全のため40℃以下になるのを待ってヒーター656を再始動する。このとき、使用者が選択した所定時間は、乾燥ボタン608が再度押されたときからカウントされ、ヒーター656の再始動前の時間についてもLED表示616においてカウントダウンされる。図16は、そのような連続運転が行われる場合の温風器244の動作を示した図であり、ヒーター656の再始動により乾燥処理が再開された後は以上説明した動作を繰り返す。
[実施例3]
除菌庫230及び乾燥庫220を同時に運転した場合には、温風器254、244はそれぞれが実施例1、2の動作を行う。ただし、ファン650、654は連動して動くため、制御回路630はいずれか一方のファンがオンであるべきときは他方のファンをそれに従属させてオンとし、運転終了を通知するブザー音については除菌運転と乾燥運転のいずれか遅く終わる方に合わせて鳴らすようにする。
また、他に除菌運転と乾燥運転とで整合的でない動作をしなければならないときは、制御回路630は加熱処理温度の高い除菌運転の内容を優先した制御を行う。例えば除菌処理中でかつ乾燥処理中の場合に、下降ボタン604が操作されたときは、制御回路630は除菌運転の内容を優先して下降ボタン604からの命令信号を無視する。
この実施例では、制御回路630が、除菌庫230における除菌処理を行っているときに使用者による下降ボタン604の操作がなされて下降ボタン604から昇降ラック180を下降させる命令信号を受けても、この命令信号を無視するので、昇降ラック180が(乾燥庫220における乾燥処理に比べて)より高温の除菌処理の最中に下降操作に応じてキャビネット170外に下降してくることがなく、使用者が不意に熱気に晒される事態を防止することができる。
また、制御回路630が、乾燥庫220における乾燥処理のみを行っているときに使用者による下降ボタン604の操作がなされて下降ボタン604から昇降ラック180を下降させる命令信号を受けると、乾燥庫220における乾燥処理を停止するとともに、スピーカー640によりアラーム音を鳴らし、かつ、LED表示612を点滅させながら昇降ラック180を通常の下降速度よりも遅い速度で下降させるので、昇降ラック180が乾燥処理の最中に下降操作に応じてキャビネット170外に下降してくることがないばかりでなく、下降操作に伴う昇降ラック180の下降は乾燥処理停止直後の乾燥庫220内の高温を通知するアラーム音及びLED点滅とともにゆっくり行われることになり、使用者が不意に熱気に晒される事態を防止することができる。
ここでも、実施例1及び実施例2と同様に、制御回路630が、除菌庫230内又は乾燥庫220内の少なくとも一方が40℃以下になっていない状態で昇降ラック180を下降させるときにファン650、654の運転を継続し、加熱処理の停止直後で除菌庫230又は乾燥庫220内のいずれかの温度が40℃より高くても下降操作がなされると除菌庫230及び乾燥庫220が積極的かつ自動的に冷却されながらキャビネット170外に露出するようになっており、使用者が不意に熱気に晒される事態が一層確実に防止されている。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば実施例1及び実施例3では、除菌処理中に下降ボタン604が操作されると制御回路630は下降ボタン604からの命令信号を無視することとしたが、除菌処理の終了を待って昇降ラック180を下降させてもよい。また、除菌処理や乾燥処理の強制終了は、除菌ボタン606や乾燥ボタン608の操作によらず電源ボタン(図示せず)によってもよく、ファン650、654を連動させずに独立駆動可能としてもよい。さらに、実施例1乃至実施例3では昇降ラック180の下降時にアラーム音とLED点滅とを併用して警報を行い使用者の聴覚及び視覚の双方に訴え、しかも昇降ラック180の下降速度を低速として安全性を高めているが、これらの機能は単独で用いてもかまわない。