JP5050198B2 - ヒト補体制御因子発現遺伝子およびその利用 - Google Patents

ヒト補体制御因子発現遺伝子およびその利用 Download PDF

Info

Publication number
JP5050198B2
JP5050198B2 JP2006240852A JP2006240852A JP5050198B2 JP 5050198 B2 JP5050198 B2 JP 5050198B2 JP 2006240852 A JP2006240852 A JP 2006240852A JP 2006240852 A JP2006240852 A JP 2006240852A JP 5050198 B2 JP5050198 B2 JP 5050198B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
daf
protein
gene
amino acid
porcine
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2006240852A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2008061539A (ja
Inventor
周士 宮川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Osaka University NUC
Original Assignee
Osaka University NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Osaka University NUC filed Critical Osaka University NUC
Priority to JP2006240852A priority Critical patent/JP5050198B2/ja
Publication of JP2008061539A publication Critical patent/JP2008061539A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5050198B2 publication Critical patent/JP5050198B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Description

本発明はヒト補体制御因子発現遺伝子、即ちブタ内在性レトロウイルスをドナー(ブタ)からレシピエント(ヒト)に感染させないように改変されたヒト補体制御因子の発現遺伝子とその利用に関する。
腎臓や肝臓、あるいは心臓移植などの臓器移植は今や定着した医療となっている。しかし、近年各国とも深刻なドナー不足が問題となっている。ドナー不足を解決する手段の一つとして、異種移植が挙げられる。異種移植のドナーとしては、臓器の大きさ、生産性などからブタが異種移植のドナーの最有力候補と考えられている。しかし、ブタからヒトへの異種移植には、種の相違による免疫関連分子(補体と補体制御因子など)の不一致やGalactose α1-3 Galactose (Galα1-3Gal)をはじめとする異種糖鎖抗原などによる拒絶反応の問題がある。ブタの臓器をヒトに移植した場合、数分から数時間で急性拒絶反応がおこる。この急性拒絶反応は、抗体の抑制または補体の抑制、あるいはその両方の抑制によって回避され得る。抗体の抑制方法としては、各種薬剤を使う方法、脾臓摘出などをおこなう方法、抗体などの拒絶要因を吸着する方法などが知られている。また、ブタ血管内皮細胞に存在するがヒトには存在しない糖鎖(Galα1-3Gal)が抗原となることがわかっていることから、この糖鎖をもたないトランスジェニックブタをつくる方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。補体の抑制方法に関しては、各種薬剤を使う方法、sCR1などの補体制御蛋白の投与や、遺伝子工学的に例えばヒト補体制御因子(Decay Accelerating Factor;以下、DAF(CD55)と略記する。)のような、ヒトの補体制御蛋白をブタの血管内皮細胞などで発現するようなトランスジェニックブタを作る方法などが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
また異種移植における大きな問題は、例えばブタレトロウイルス(以下、PERVという。)のような病原体が移植を通してレシピエント(ヒト)に感染する危険性を否定できないことである。外来性の病原体はブタなどのドナーとなる動物をSPF(Specific Pathogen-Free;特定病原体不在)化することなどによって排除できるが、PERVなどはブタゲノム中に存在するので、その排除は困難である。PERVはブタに疾病を生じないとされている。現在のところ、生存ブタ由来組織を用いて治療されたレシピエント(ヒト)がPERVに感染したという報告はみられない(例えば、非特許文献1参照。)。しかし、ヒト培養細胞株にPERVがin vitroで感染したという報告(非特許文献2参照)があることから、ブタ臓器をヒトに移植した場合に、PERVがヒトにin vivo感染し疾病を起こす危険性があり、またヒトの体内で増殖したウイルスが突然変異を起こして新しいウイルスになる危険性もある。
特開平2002−291372号公報 特開平11−239430号公報 サイエンス(Science)、1999年、第285巻、p.1236 ネイチャー・メディシン(Nature Medicine)、1997年、第3巻(3)、p.282−286
異種移植の臨床応用に向け、DAFを発現するブタ血管内皮細胞などのブタ由来細胞や形質転換ブタが作出されている。DAFを発現するブタ由来細胞や形質転換ブタから分離した臓器など(以下、DAF発現細胞等と略記する。)がレシピエント(ヒト)に移植された場合、該DAF発現細胞等はレシピエント(ヒト)の血清に対し抵抗性を有するので、レシピエント(ヒト)が移植された細胞や臓器に対し拒絶反応をおこすのを抑制できる。しかし、DAF発現細胞等のゲノムに存在するPERVもヒト血清に対して抵抗性を有する可能性がある。このため、DAF発現細胞等を移植されるレシピエント(ヒト)は、PERVに感染する危険性が大きいと考えられている。
異種移植に伴うPERVによる感染症を回避する方法としては、レシピエント(ヒト)を処置する方法とドナーを処置する方法がある。これらのうち、レシピエント(ヒト)を処置する方法としては逆転写酵素阻害剤やプロテアーゼ阻害剤の投与などが考えられ、一方ドナー動物(例えば、ブタ)を処置する方法としては、交配によるPERV遺伝子を有さないブタ系統の育種、ブタPERV遺伝子のノックアウト、アンチセンスやリボザイムの適用も考えられるが現在迄のところ成功例は得られていない(ゼノトランスプランテーション(Xenotransplantation)、2002年、第9巻、p.242)。また、siRNA法が試みられているが完全ではない(ジャーナル・オブ・バイオロジー(J.Biol.)、2005年、第137巻、p.503)
そこで、本発明は、移植細胞、移植組織または移植臓器はDAFなどの補体制御因子を発現してヒト血清に対し抵抗性を有するが、該移植細胞、移植組織または移植臓器が産生するPERVはヒト血清に対し抵抗性を有さないDAFなどの補体制御因子発現遺伝子を創製することを目的とする。さらに、本発明は、前記遺伝子で形質転換したDAFなどの補体制御因子発現ブタ細胞またはDAFなどの補体制御因子発現ブタを創製することを目的とする。
本発明者は上記課題を解決するため、鋭意研究を行った。レトロウイルスなどのウイルスの多くは細胞の膜上に存在する脂肪酸ラフト(raft)を利用して出芽し産生される。そこで脂肪酸ラフトに対する親和性を変化させた改変型DAFの遺伝子を種々構築し、ブタ血管内皮細胞に導入し、該細胞を形質転換させた。その結果、動物細胞膜上に存在する脂肪酸ラフトと親和性を有さないか脂肪酸ラフトとの親和性が抑制された膜貫通ドメイン蛋白質とDAFまたはその部分蛋白質との融合蛋白質をコードする遺伝子を導入したブタ血管内皮細胞は、ヒト血清に対し抵抗性を有するが、該細胞が産生するPERVはヒト血清に対して抵抗性を増強しないことを見出した。本発明者はさらに研究を進め、本発明を完成するにいたった。
すなわち、本発明は、
[1] 動物細胞膜上に存在する脂肪酸ラフトと親和性を有さないか脂肪酸ラフトとの親和性が抑制された膜貫通ドメイン蛋白質と補体制御因子またはその部分蛋白質との融合蛋白質をコードする遺伝子、
[2] 膜貫通ドメイン蛋白質が、ヒトインフルエンザウイルスのヘマグルチニンの膜貫通領域であり、該膜貫通領域のアミノ酸配列の少なくとも1個のアミノ酸が連続する少なくとも3個のアラニンで置換されているか、膜貫通領域のアミノ酸配列中に連続する少なくとも3個のアラニンが挿入されていることを特徴とする前記[1]に記載の遺伝子、
[3] 膜貫通ドメイン蛋白質が以下の(a)または(b)のアミノ酸配列を含むものであることを特徴とする前記[2]に記載の遺伝子。
(a)配列番号3、4、5または6で表されるアミノ酸配列と同一;
(b)前記(a)のアミノ酸配列と実質的に同一、
[4] 補体制御因子が、DAF(CD55)、MCP(CD46)、CD59、CR1(CD35)、ファクターH,ファクターI、C4bp,C1−1NH、CrryおよびHSV−gClから選択される少なくとも1の因子であることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載の遺伝子、
[5] 補体制御因子が、DAF(CD55)であることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載の遺伝子、
[6] 部分蛋白質がDAF(CD55)の機能ドメインSCR2およびSCR3を有することを特徴とする前記5に記載の遺伝子、
[7] 部分蛋白質が、さらにDAF(CD55)の機能ドメインSCR4を有することを特徴とする前記[6]に記載の遺伝子、
[8] 以下の(a)または(b)のDNAからなる前記[1]に記載の遺伝子:
(a)配列番号7で表される塩基配列からなるDNA;
(b)前記(a)の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ補体制御因子と実質的に同質の活性を有し、動物細胞膜上に存在する脂肪酸ラフトと親和性を有さないか脂肪酸ラフトとの親和性が抑制された膜貫通部を有する蛋白質をコードするDNA、
[9] 前記[1]〜[8]のいずれかの遺伝子で形質転換された補体制御因子発現ブタ細胞、および
[10] 前記[1]〜[8]のいずれかの遺伝子で形質転換された補体制御因子発現ブタ、
に関する。
本発明に係る融合蛋白質としては、(1)動物細胞膜上に存在する脂肪酸ラフトと親和性を有さないか脂肪酸ラフトとの親和性が抑制された膜貫通ドメイン蛋白質と、DAF(CD55)との融合蛋白質、(2)動物細胞膜上に存在する脂肪酸ラフトと親和性を有さないか脂肪酸ラフトとの親和性が抑制された膜貫通ドメイン蛋白質と、DAF(CD55)の部分蛋白質との融合蛋白質が挙げられる。
融合蛋白質としては、例えば図1で表される蛋白質が好ましく挙げられる。図1で表される蛋白質としては、具体的には、例えば配列番号8で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質などが挙げられる。
補体制御因子は、細胞性補体制御因子であっても、血清中の補体制御因子であってもよく、またウイルス関連補体制御因子であってもよい。細胞性補体制御因子としては、例えば、DAF(CD55)、MCP(Membran-Cofactor-Protein:CD46)、CD59またはCR1(C3bレセプター:CD35)などのヒト補体制御因子が挙げられる。これらはヒトの補体制御因子に限定されない。例えばマウス特有の補体制御因子Crry(Complement receptor 1-related gene/protein y)などであってもよく、上記ヒト補体制御因子と類似するヒト以外の種の補体制御因子であってもよい。血清中の補体制御因子としては、例えばFactorH、FactorI、C4bpまたはC1−1NH(C1 Inhibitor)などが挙げられる。ウイルス関連補体制御因子としては、例えばHSV−gCl(Herpes Simplex Virus type 1 glycoproteins gCl )などが挙げられる。これらのなかでもDAF(CD55)、MCP(CD46)がより好ましく、DAF(CD55)がとりわけ好ましい。
DAF(CD55;以下、単にDAFと略記する。)は、ヒト赤血球から分離された分子量約65〜75kDaの膜蛋白質で、4個のSCR(short consensus repeat;SCR1、SCR2、SCR3、SCR4)機能ドメイン、O−結合型糖類の付加部位(O-glycosylation site)を有するセリン(S)とスレオニン(T)に富むSTドメイン、およびGPI(glycosylphosphatidylinositol)−アンカーを含む。
DAFは、CD55抗原ともいい、C4bC2a、C3bBbなどの2分子集合体のC3コンベルターゼを可逆的に解離してC3コンベルターゼの形成を阻害して補体の活性化を抑制できる。このため、例えばヒトに移植されたブタ臓器のブタ血管内皮細胞はヒトに存在する自然抗体に認識され、次いでその自然抗体がブタの血管内皮細胞に結合すると、ヒト補体が活性化され、最終的にブタ内皮細胞は拒絶反応により溶解または壊死する。しかし、DAFを発現するブタ臓器が移植された場合、DAFはヒト補体の働きを特異的に抑制できるので、ヒトにおいてブタ臓器の拒絶反応を抑制できる。
DAFには、DAFと実質的に同じ作用を有する限り、DAFのアミノ酸配列中の1若しくは複数個(例えば、約2〜20個、好ましくは約2〜10個;以下同様である。)のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加されていてもよく、また糖鎖が置換、欠失若しくは付加されていてもよい。ここで、アミノ酸配列について、「1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加」とは、遺伝子工学的手法、部位特異的突然変異誘発法などの周知の技術的手段により、または天然に生じうる程度の数(1〜複数個)が、欠失、置換若しくは付加などされていることを意味する。糖鎖が置換、欠失若しくは付加したDAFとしては、例えば天然のDAFに付加している糖鎖を酵素などで処理し糖鎖を欠損させたDAF、また糖鎖が付加しない様に糖鎖付加部位のアミノ酸配列に変異が施されたもの、あるいは天然の糖鎖付加部位とは異なる部位に糖鎖が付加するようアミノ酸配列に変異が施されたものなどが挙げられる。
さらに、DAFのアミノ酸配列と少なくとも約80%以上の相同性を有する蛋白質、好ましくは約90%以上の相同性を有する蛋白質、より好ましくは約95%以上の相同性を有する蛋白質であって、かつDAFと実質的に同質の活性を有する蛋白質も本発明に係るDAFに含まれる。上記アミノ酸配列について「相同」とは、蛋白質の一次構造を比較し、配列間において各々の配列を構成するアミノ酸残基の一致の程度の意味である。
DAFの具体例としては、例えばGeneBank/EMBL/DDBJなどでアクセッション番号(Accession No.)が付けられ登録されているDAFが挙げられ、例えばアクセッション番号NM_000574などが挙げられるが、これに限定されない。
DAFと実質的に同一であるアミノ酸配列を含む蛋白質としては、例えばDDBJ(DNA Data Bank of Japan)などによる相同性検索などにより、DAFのアミノ酸配列と相同性が高いアミノ酸配列を有する蛋白質であって、かつDAF活性を有する蛋白質などが挙げられる。例えばアクセッション番号NM_000574で登録されているアミノ酸配列と実質的に同一であるアミノ酸配列を含む蛋白質としては、アクセッション番号NM_000574で登録されているアミノ酸配列と少なくとも約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む蛋白質であって、DAFと実質的に同質の活性を有する蛋白質、例えばアクセッション番号NM_000574で登録されているアミノ酸配列から、1〜複数個のアミノ酸残基を挿入または欠失させたアミノ酸配列、1〜複数個のアミノ酸残基を別のアミノ酸残基と置換させたアミノ酸配列または1〜複数個のアミノ酸残基が修飾されたアミノ酸配列などを含む蛋白質であって、DAFと実質的に同質の活性を有する蛋白質が挙げられる。
DAFの部分蛋白質は、DAFを構成するアミノ酸配列の部分配列を有する蛋白質であり、DAFと実質的に同質の活性を有すればよい。DAFの部分蛋白質としては、SCR機能ドメインを有することが好ましい。DAFの部分蛋白質を構成するSCR機能ドメインは、例えば機能ドメインSCR1の除去はDAF機能に影響を与えないこと、SCR2とSCR3の両機能ドメインの欠如、および機能ドメインSCR4、特にSCR4のアミノ酸配列のうち、N末側のアミノ酸配列の欠如はDAF機能を無くすことが報告されているので(J. Immunology, Vol149, 2906-2913(1992))、少なくとも機能ドメインSCR2およびSCR3を有することが好ましく、さらに、機能ドメインSCR4を有することが好ましい。前記機能ドメインSCR4は該SCR機能ドメインのアミノ酸配列のうち、N末端から約190〜226位までのアミノ酸配列を含んでいればよい。さらにDAFの部分蛋白質は、SCR機能ドメインのC末側にセリンおよびトレオニンに富むSTドメインを有することが好ましい。また、該部分蛋白質は、機能ドメインSCR2のN末側にDAFのシグナルペプチドを有することが好ましい。
「脂肪酸ラフト」は、動物細胞膜に存在して例えばスフィンゴ脂質やコレステロールに富む膜ドメインで、その機能としては、例えば細胞のシグナル伝達や膜輸送などが挙げられる。またウイルスは、脂肪酸ラフトを利用して増殖し得る。このため、DAFは、脂肪酸ラフトと親和性を有さない膜貫通ドメイン蛋白質を有するDAFか、脂肪酸ラフトとの親和性が抑制された膜貫通ドメイン蛋白質を有するDAFが好ましい。そして、このようなDAFをドナーとなる異種動物に発現させることが好ましい。
異種動物としては、レシピエントとなる動物(例えばヒトなど)と異なる種に属する動物が挙げられ、レシピエントがヒトの場合、哺乳動物が好ましい。哺乳動物は、特に制限されないが、臓器の大きさ、生産性などからブタがとりわけ好ましい。
本発明において、「親和性」としては、膜貫通ドメイン蛋白質が脂肪酸ラフトと容易に結合(例えば、イオン結合、水素結合、共有結合など)する性質や傾向が挙げられ、「親和性を有さないか脂肪酸ラフトとの親和性が抑制された膜貫通ドメイン蛋白質」としては、脂肪酸ラフトと全く結合しない膜貫通ドメイン蛋白質、脂肪酸ラフトと容易に結合しない膜貫通ドメイン蛋白質、または脂肪酸ラフトと結合しても容易にはずれる膜貫通ドメイン蛋白質などが挙げられる。「膜貫通ドメイン蛋白質」としては、細胞膜を貫通または通過する機能を有する蛋白質が挙げられ、このような機能を有する蛋白質であれば特に制限されない。前記細胞膜としては、本発明の遺伝子で形質転換されるドナーの細胞の細胞膜、例えばブタ血管内皮細胞の細胞膜などが挙げられる。「脂肪酸ラフトと親和性を有さないか脂肪酸ラフトとの親和性が抑制された膜貫通ドメイン蛋白質」としては、例えばヒトインフルエンザウイルスのヘマグルチニンの膜貫通ドメイン蛋白質であり、該膜貫通ドメイン蛋白質のアミノ酸配列の少なくとも1個のアミノ酸が連続する少なくとも3個のアラニンで置換されているか、膜貫通ドメイン蛋白質のアミノ酸配列中に連続する少なくとも3個のアラニンが挿入されているアミノ酸配列を有する蛋白質などが挙げられる。またトランスフェリンレセプターの膜貫通ドメイン蛋白質のアミノ酸配列なども挙げられる。
ヒトインフルエンザウイルスのヘマグルチニンの膜貫通ドメイン蛋白質としては、例えばinfluenza A virus(A/Udorn/72 (H3N2))のヘマグルチニンやinfluenza A virus(A/ Beijing/353/89 (H3N2))のヘマグルチニン(GenPeptアクセッション番号AAB58297)のアミノ酸配列のうち第530番目〜第560番目のアミノ酸配列(WILWISFAISCFL LCVVLLGFIMWACQKGNI;配列番号1)、influenza A virus(A/Udorn/302/1972 (H3N2))のヘマグルチニン(GenPeptアクセッション番号AAA43099)やinfluenza A virus (A/Hong Kong/46/71 (H3N2))のヘマグルチニン(GenPeptアクセッション番号ABB82227)のアミノ酸配列のうち第530番目〜第557番目のアミノ酸配列(WILWISFAISCFLLCVVLLGFIMWACQR;配列番号2)などが好ましく挙げられる。
膜貫通ドメイン蛋白質において、連続する少なくとも3個のアラニンの置換または挿入の位置は特に限定されないが、前記膜貫通ドメイン蛋白質のアミノ酸配列のN末端から約10番目のアミノ酸までの位置が好ましい。脂肪酸ラフトと親和性を有さないか脂肪酸ラフトとの親和性が抑制された膜貫通ドメイン蛋白質の具体例としては、例えば表1で表されるアミノ酸配列などが好ましく挙げられる。アミノ酸配列における各残基のアミノ酸の名称は1文字略記法に従った(以下、同様。)。
Figure 0005050198
動物細胞膜上に存在する脂肪酸ラフトと親和性を有さないか脂肪酸ラフトとの親和性が抑制された膜貫通ドメイン蛋白質は、DAFまたはその部分蛋白質のC末側に融合されることが好ましい。
膜貫通ドメイン蛋白質と実質的に同一であるアミノ酸配列を含む蛋白質は、膜貫通ドメイン蛋白質と実質的に同じ作用を有する限り、膜貫通ドメイン蛋白質のアミノ酸配列中の1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加されていてもよい。膜貫通ドメイン蛋白質と実質的に同一であるアミノ酸配列を含む蛋白質としては、例えばDDBJ(DNA Data Bank of Japan)などによる相同性検索などにより、膜貫通ドメイン蛋白質のアミノ酸配列と相同性が高いアミノ酸配列を有する蛋白質であって、かつ膜貫通機能を有する蛋白質などが挙げられる。例えば配列番号1で表されるアミノ酸配列と実質的に同一であるアミノ酸配列を含む蛋白質としては、配列番号1で表されるアミノ酸配列と少なくとも約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む蛋白質であって、膜貫通機能を有する蛋白質が挙げられる。
前記融合蛋白質をコードする遺伝子としては、DAFをコードするDNAまたはDAFと実質的に同質の活性を有しDAFの部分蛋白質をコードするDNAと、動物細胞膜上に存在する脂肪酸ラフトと親和性を有さないか脂肪酸ラフトとの親和性が抑制された膜貫通ドメイン蛋白質を発現し得るDNAが挙げられる。融合蛋白質をコードする遺伝子としては、例えば図1で示される融合蛋白質をコードする遺伝子などが挙げられる。図1で示される融合蛋白質をコードする遺伝子を含むDNAとしては、例えば配列番号7で表されるDNAなどが好ましく挙げられる。図1で示されるSP(シグナルペプチド)をコードするcDNAとしては、例えば配列番号7の第13位〜114位で表される塩基配列(配列番号9)が挙げられる。図1で示されるSCR2、SCR3およびSCR4の機能ドメインをコードするcDNAとしては、例えば配列番号7の第115位〜681位で表される塩基配列(配列番号10)が挙げられる。図1で示されるS/T(STドメイン蛋白質)をコードするcDNAとしては、例えば配列番号7の第682位〜888位で表される塩基配列(配列番号11)が挙げられる。図1で示されるTM(脂肪酸ラフトと親和性を有さないか脂肪酸ラフトとの親和性が抑制された膜貫通ドメイン蛋白質)をコードするcDNAとしては、例えば配列番号7の第889位〜975位で表される塩基配列が挙げられる。
融合蛋白質をコードする遺伝子を含むDNAは、融合蛋白質をコードする遺伝子の開始コドンの上流にコザック配列(Kozak配列;5’−GCCACC)を有することが好ましい。コザック配列を有することにより、真核生物で融合蛋白質をコードするmRNAが効率よく翻訳され得る。また、融合蛋白質をコードする遺伝子の開始コドン(または前記コザック配列)の上流および停止コドンの下流には、制限酵素認識配列を有することが好ましい。制限酵素としては、特に制限はないが、例えばEcoRI、KpnIまたはXhoIなどが好ましく挙げられる。
また、融合蛋白質をコードする遺伝子と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつDAFと実質的に同質の活性を有し、動物細胞膜上に存在する脂肪酸ラフトと親和性を有さないか脂肪酸ラフトとの親和性が抑制された膜貫通部を有する蛋白質をコードするDNAも本発明に係る遺伝子として好ましい。前記遺伝子と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとしては、例えば上記遺伝子の部分配列をプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法などを用いることにより得られるDNAが挙げられる。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、約0.7〜1.0Mの塩化ナトリウム存在下、約65℃でハイブリダイゼーションを行った後、約0.1〜2倍の濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウムよりなる。)を用い、約65℃の条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるDNAを挙げることができる。
前記遺伝子と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAは、例えばDDBJなどによる相同性検索などにより、前記遺伝子と約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上の相同性を有するDNAであって、かつDAF活性を有し、動物細胞膜上に存在する脂肪酸ラフトと親和性を有さないか脂肪酸ラフトとの親和性が抑制された膜貫通部を有する蛋白質をコードするDNAなどが挙げられる。ハイブリダイゼーションは、公知の方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning,A laboratory Manual, Third Edition(J.Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Lab.Press,2001:以下、モレキュラー・クローニング第3版と略す。)に記載の方法などに従って行うことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行うことができる。
さらに、本発明に使用されるDNAは上記に限定されず、発現する蛋白質がDAFと実質的に同じ活性を有し、動物細胞膜上に存在する脂肪酸ラフトと親和性を有さないか脂肪酸ラフトとの親和性が抑制された膜貫通部を有する蛋白質をコードするDNAである限り、前記融合蛋白質をコードする遺伝子として使用できる。
DAFをコードするDNAまたは膜貫通ドメイン蛋白質をコードするDNAは、例えば通常のハイブリダイゼーション法やPCR(Polymerase Chain Reaction)法などにより容易に得ることができ、該DNAの取得は具体的には例えば前記モレキュラー・クローニング第3版などの基本書などを参考にして行うことができる。
なお、本発明で用いられるDAFまたは膜貫通ドメイン蛋白質をコードするDNAとしては、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、細胞・組織由来のcDNA、細胞もしくは組織由来のcDNAライブラリーまたは合成DNAなどが好ましく挙げられる。前記ライブラリーを調製するゲノムDNA断片がクローニングされるベクターとしては、バクテリオファージ、プラスミド、コスミドまたはファージミドなどが挙げられる。
また、本発明に係るDNAには、逆転写酵素によりDAFまたは膜貫通ドメイン蛋白質を発現することができるものであれば、DAFまたは膜貫通ドメイン蛋白質をコードするRNAも含まれる。該RNAとしては、例えば細胞または組織よりmRNA画分を公知の手段により調製して、RT−PCR法によって増幅したRNAなどが挙げられる。
本発明のDAF発現ドナー(例えば、ブタ)細胞は、上記融合蛋白質をコードする遺伝子を用いてドナー細胞を形質転換し、それらの遺伝子を過剰発現させることによって調製することができる。ドナー細胞としては、ヒトに異種移植可能な全てのドナーの臓器や組織の細胞が挙げられ、好ましい細胞としては、例えば、血管内皮細胞、膵島細胞、胎児膵島様細胞、膵内分泌細胞、膵臓幹細胞、肝細胞、脳細胞または骨髄細胞などが挙げられる。ドナー細胞を形質転換するために導入方法や導入条件などは公知の至適条件を選択することができる。ドナー細胞を形質転換するための導入方法や導入条件などは公知の至適条件を選択することができる。
また、上記融合蛋白質をコードする遺伝子を例えばブタの受精卵の前核にマイクロインジェクション法などの慣用の方法で導入してDAF発現ブタ(形質転換ブタ)を作製できる。これらの形質転換ブタ細胞または形質転換ブタを作製する方法としては、例えば、特開平11−239430号公報、特開2002−291372号公報、特開2004−357514号公報などに記載の公知の至適条件を適宜選択することができる。このように形質転換したドナーの臓器は、レシピエント(ヒト)の移植用臓器として使用し得る。移植用臓器としては、ヒトに異種移植可能な全てのドナーの臓器や組織が挙げられ、好ましい臓器としては、例えば、血管、肝臓、腎臓、膵臓、肺、腸、心臓、皮膚、半月版または腱などが挙げられる。
本発明に係る動物細胞膜上に存在する脂肪酸ラフトと親和性を有さないか脂肪酸ラフトとの親和性が抑制された膜貫通ドメイン蛋白質とDAFまたはその部分蛋白質との融合蛋白質をコードする遺伝子を含むDNAは、該遺伝子を導入されたドナー細胞またはドナーにおいてDAFを発現し得る。また該遺伝子を発現したドナー細胞またはドナーから摘出した臓器は、レシピエント(ヒト)において、拒絶反応を回避できるので、異種移植用の細胞または臓器となり得る。さらに、該遺伝子を発現したドナー細胞またはドナーから摘出した臓器がPERVを産生したとしても、レシピエント(ヒト)の血清に対して抵抗性を有さないか、抵抗性を有しても抵抗性が非常に低いため、該遺伝子を発現したドナー細胞またはドナーから摘出した臓器を移植されるレシピエント(ヒト)へのPERV感染の可能性を排除または抑制できる。
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において各略号の意味は、次のとおりである。
PI:フォスファチジルイノシトール
TM:膜貫通ドメイン
HLA:ヒト白血球抗原(Human Leukocyte Antigen)
HA:ヘマグルチニン
CYT:細胞質部分
LDH:乳酸脱水素酵素(Lactate Dehydrogenase)
LacZ:大腸菌βガラクトシダーゼ
PBS:リン酸緩衝生理食塩水
D−PBS:ダルベッコリン酸バッファー
NHS:Normal Human Serum
D−MEM:Dulbecco's Modified Eagle Medium
FCS:ウシ胎児血清(Fetal Bovine Serum)
また、実施例における%は特に明記しない場合は質量%を示す。
1.遺伝子発現細胞の調製
(1)cDNAの構築
DAFの部分蛋白質と膜貫通ドメイン蛋白質との融合蛋白質をコードする遺伝子を発現するブタ血管内皮細胞の調製
シグナルペプチド(配列番号9)、SCR2〜4(配列番号10)機能ドメインおよびSTドメイン(配列番号11)からなるDAFの部分蛋白質(以下、Delta-SCR1-DAFと略記する。)のC末端に以下(a)〜(d)の蛋白質:
(a)GTTRLLSGHTCFTLTGLLGTLVTMGLLT;配列番号12(以下、PI-anchorと略記する。)
(b)KQSSLPTIPIMGIVAGLVVLAAVVTGAAVAAVLWRKKSSD;配列番号13(以下、TM(HLA-G1)と略記する。
(c)WILAAAFAISCFLLCVVLLGFIMWACQR;配列番号3(以下、TM (HA-AAA)と略記する。)
(d)DVVWVIAVIVIAIVVGVAVICVVPYRS;配列番号14(以下、TM(MCP-delta-CYT)と略記する。)
を融合した蛋白質(図2)をコードする遺伝子を含むcDNA:
(i)Delta-SCR1-DAF(PI-anchor)(配列番号15);
(ii)Delta-SCR1-DAF(TM(HLA-G1))(配列番号16);
(iii)Delta-SCR1-DAF(TM(HA-AAA))(配列番号7);
(iv)Delta-SCR1-DAF(TM(MCP-delta-CYT))(配列番号17);
を調製した。
PI-anchorは、ホスファチジルイノシトールアンカー膜蛋白質であり、膜の脂質と結合する。TM(HLA-G1)は、HLA由来の膜貫通ドメイン蛋白質である。TM(MCP-delta-CYT)は、MCPの細胞質部分(CYT)を欠如させた膜貫通ドメイン蛋白質である。
上記(i)乃至(iv)のcDNAは、前記各遺伝子の開始コドン(ATG)の上流にコザック配列を、さらにその上流に制限酵素(EcoRI)の認識配列(GAATTC)を付加し、DAFの部分蛋白質の停止コドン(TAGまたはTGA)の下流に制限酵素(KpnI)の認識配列(GAGGTACC)あるいは制限酵素(XhoI)の認識配列(CTCGAG)を付加した。
調製した各cDNAは、製品プロトコルに従い発現Vector: pCX(ネオマイシン耐性遺伝子が組みこまれている;ジーン(Gene)、1991年、第108巻、p.193-199)に組み込み上記各cDNA挿入プラスミドをそれぞれ調製した。
(2)LacZ遺伝子が導入されたブタ血管内皮細胞への誘導蛋白質をコードするcDNAの導入
まず、LacZ遺伝子導入ブタ血管内皮細胞(BBRC、2003年、第310巻、p.327)5×105個を直径10cmの培養皿に蒔き、一晩培養した。
次いで、上記(1)で調製された各プラスミド4μgとD−MEM(FCS−)375μLとPLUS Reagent 10μLとのcDNA混合溶液と、リポフェクトアミン15μLとD−MEM(FCS−)375μLとを混合したリポフェクトアミン溶液とをクリーンベンチの中でピペッティングより混合した。この混合液を15〜30分間、室温で放置し、形質転換用cDNA溶液とした。次に、一晩培養したLacZ遺伝子導入ブタ血管内皮細胞の入った培養皿をD−MEM(FCS−)で3回洗浄した。洗浄後のLacZ遺伝子導入ブタ血管内皮細胞の入った培養皿にOpti−MEMRIまたはD−MEM(FCS−)を5mL入れ、さらに上記の形質転換用cDNA溶液を、ピペットを用いて添加した。37℃で、5%CO存在下、5時間培養した。次いで培養した培養皿の培養液を除去し、培養皿に10%FCS含有D−MEMを入れ、37℃で、5%CO存在下に培養した。翌日培養した細胞を2〜3枚の培養皿に分割し、さらに培養した。分割後48時間経ってから、ゲネチシンを10〜13μg/10cm培養皿となるよう添加した選択培地に交換した。細胞の状態を見ながらネオマイシン耐性細胞の選択の期間を決めた。凡そ、4〜6日で細胞がほとんど死んだところで選択をやめ、完全培地に戻した。
選択の済んだブタ血管内皮細胞に抗体(1C6;和光純薬工業株式会社製)を反応させ、FACS(fluorescence activated cell sorting;フローサイトメトリー)でその発現量を判定した。なお、コントロールとして、無処置のブタ内皮細胞(野生型細胞)と、ブタ血管内皮細胞に空プラスミド(Mock)をトランスフェクションした細胞(Mock細胞)を用いた。
FACSの結果を図3に示す。
2.LDHアッセイ
上記1.(3)で調製したDelta-SCR1-DAF(PI-anchor)、Delta-SCR1-DAF(TM(HLA-G1))、Delta-SCR1-DAF(TM(HA-AAA))、またはDelta-SCR1-DAF(TM(MCP-delta-CYT))遺伝子を含むcDNA挿入プラスミドが導入されたLacZ遺伝子導入ブタ血管内皮細胞1〜2×104個を、96穴のマイクロカルチャープレートに分注し、15時間培養した細胞を使用した。前記培養した細胞の生存を確認し、細胞をD−PBSまたはPBSで洗浄後、10%または20%のNHSを50μL加えた。NHSを添加した細胞を、37℃で2時間培養した。その後、1000rpmで1分間、遠心分離した。
遠心分離後の上清をLDHアッセイに付した。LDHアッセイは、微量毒性試験用試薬MTX−LDHキット(極東製薬工業株式会社製)を用い、製品プロトコルに従い測定した。すなわち、培養液をあらかじめ15μL分注した96穴のマイクロカルチャープレートに、前記遠心分離したNHS添加細胞培養液の上清を10μL添加し、基質発色試薬25μLを添加した。Tuple mixerで1分間振とう後、37℃で、10〜15分間反応させた。反応停止液50μLを添加した後、Tuple mixerで1分間振とうした。振とう後すぐに、波長560nmにおける吸光度を測定した。超音波で細胞を破壊して測定したときの吸光度から算出されるLDH量を細胞障害性100%(細胞死100%)とした。
LDHアッセイの結果を表2に示した
Figure 0005050198
ブタ血管内皮細胞にヒト血清をかけ、抗体・補体の反応により障害を受けたブタ血管内皮細胞から放出されるLDHの量で細胞障害性が判定できる。Delta-SCR1-DAF(PI-anchor)およびDelta-SCR1-DAF(TM(HA-AAA))遺伝子を導入したブタ血管内皮細胞では細胞障害性が非常に低いことが判明した。
すなわち、本結果は、ドナーとしてDAF遺伝子を導入したブタ血管内皮細胞をレシピエント(ヒト)に移植すると、その発現量と一定の相関をもってレシピエント(ヒト)において抗体・補体による拒絶反応を起こし難いことを示している。
3.LacZアッセイ
ほぼコンフルエントの状態の上記1.(3)で調製したDelta-SCR1-DAF(PI-anchor)、Delta-SCR1-DAF(TM(HLA-G1))、Delta-SCR1-DAF(TM(HA-AAA))、またはDelta-SCR1-DAF(TM(MCP-delta-CYT))遺伝子を含むcDNA挿入プラスミドが導入されたLacZ遺伝子導入ブタ血管内皮細胞の上清を捨て、培養液を交換し、24時間培養した。24時間培養後、それら細胞の培養上清を0.8μmフィルターに通し、上清をフィルター滅菌した。8mg/mLとなるようPBSまたはストック培養液に溶解したPolybrane溶液を、前記フィルター滅菌済みの各上清にPolybrane8μg/mLの濃度となるように各々添加し、Polybrane溶液添加フィルター滅菌済み溶液をそれぞれ調製した。
ヒト胎児腎細胞(293細胞)を、24穴のマイクロカルチャープレートに、2×105個/well(500μL/well)の濃度で播いた。37℃にて一晩培養後、293細胞の上清を吸い取って、上記Polybrane溶液添加フィルター滅菌済み溶液を500μL加え、4〜8時間培養した。次いでPolybrane溶液添加フィルター滅菌済み上清を吸い取って新鮮培養液を750μL加え、37℃で2日間培養した。2日間培養後、培養液に2%グルタルアルデヒド/PBSを培養液と等量加えた。15分間室温で静置後、培養液を吸い取り、細胞をPBSで一度洗った。X-gal溶液を130μL加えて1〜2時間培養した。顕微鏡下でtiterを数えた。
なお、コントロールとして、無処置のブタ内皮細胞(野生型細胞)と、ブタ血管内皮細胞に空プラスミド(Mock)をトランスフェクションした細胞(Mock細胞)を用いた。
結果を表3に示した。
Figure 0005050198
ブタ血管内皮細胞からは、レトロウイルスが培養液中に放出される。この培養液を293細胞に作用させ、一定時間後にレトロウイルスに感染した293細胞の数をX-gal染色で確認したものである。Delta-SCR1-DAF(PI-anchor)遺伝子を導入したブタ血管内皮細胞から放出されるPERVの場合、ヒト血清と反応させた後も反応前の51.7%のヒト293細胞への感染率を保っており、PERVの膜上にDAFが有効に発現し補体の攻撃を抑制していることが考えられる。一方、Delta-SCR1-DAF(TM(HA-AAA))遺伝子を導入したブタ血管内皮細胞からでるPERVでは、ヒト血清との反応で反応前の20.6%まで感染率が低下しており、PERV膜上にうまくDAFが発現していないことが考えられる。
すなわち、Delta-SCR1-DAF(TM(HA-AAA))遺伝子を導入したブタ血管内皮細胞をドナーとしてレシピエント(ヒト)に移植すると、レシピエント(ヒト)において抗体・補体による拒絶反応を起こし難く、かつPERV感染の可能性も非常に低いことを示している。
本発明に係る遺伝子は異種移植用の異種動物細胞または異種臓器の製造に有用である。
図1は、動物細胞膜上に存在する脂肪酸ラフトと親和性を有さないか脂肪酸ラフトとの親和性が抑制された膜貫通ドメイン蛋白質と、DAFの部分蛋白質との融合蛋白質の模式図を示す。図中SPはシグナルペプチドを示し、SCR2は機能ドメインSCR2蛋白質を示し、SCR3は機能ドメインSCR3蛋白質を示し、SCR4は機能ドメインSCR4蛋白質を示し、S/TはSTドメイン蛋白質を示し、TMは膜貫通ドメイン蛋白質(TM (HA-AAA))を示す。 図2はDelta-SCR1-DAFのC末端にPI-anchor、TM(HLA-G1)、TM (HA-AAA)またはTM(MCP-delta-CYT)を付加した融合蛋白質の模式図を示す。 図3はDelta-SCR1-DAF(PI-anchor)、Delta-SCR1-DAF(TM(HLA-G1))、Delta-SCR1-DAF(TM(HA-AAA))、またはDelta-SCR1-DAF(TM(MCP-delta-CYT))遺伝子導入ブタ血管内皮細胞のFACSの結果を示す。

Claims (9)

  1. レシピエントへのブタレトロウイルス感染率が低減された異種移植用補体制御因子発現ブタ細胞製造のための遺伝子であって、
    動物細胞膜上に存在する脂肪酸ラフトと親和性を有さないか脂肪酸ラフトとの親和性が抑制された膜貫通ドメイン蛋白質と補体制御因子またはその部分蛋白質との融合蛋白質をコードし、膜貫通ドメイン蛋白質がヒトインフルエンザウイルスのヘマグルチニンの膜貫通領域であり、該膜貫通領域のアミノ酸配列の少なくとも1個のアミノ酸が連続する少なくとも3個のアラニンで置換されているか、膜貫通領域のアミノ酸配列中に連続する少なくとも3個のアラニンが挿入されており、配列番号3、4、5または6で表されるアミノ酸配列からなるものであることを特徴とする遺伝子。
  2. 補体制御因子が、DAF(CD55)、MCP(CD46)、CD59、CR1(CD35)、ファクターH,ファクターI、C4bp,C1−1NH、CrryおよびHSV−gClから選択される少なくとも1の因子であることを特徴とする請求項1に記載の遺伝子。
  3. 補体制御因子が、DAF(CD55)であることを特徴とする請求項2に記載の遺伝子。
  4. 部分蛋白質がDAF(CD55)の機能ドメインSCR2およびSCR3を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の遺伝子。
  5. 部分蛋白質が、さらにDAF(CD55)の機能ドメインSCR4を有することを特徴とする請求項4に記載の遺伝子。
  6. 配列番号7で表される塩基配列のDNAからなる請求項1に記載の遺伝子:
  7. 請求項1〜6のいずれかの遺伝子で形質転換された補体制御因子発現ブタ細胞。
  8. 請求項1〜6のいずれかの遺伝子で形質転換された補体制御因子発現ブタ。
  9. レシピエントへのブタレトロウイルス感染率が低減された異種移植用補体制御因子発現ブタ細胞の製造方法であって、請求項1〜6のいずれかの遺伝子でブタ細胞を形質転換する工程を含むことを特徴とする製造方法。
JP2006240852A 2006-09-05 2006-09-05 ヒト補体制御因子発現遺伝子およびその利用 Active JP5050198B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006240852A JP5050198B2 (ja) 2006-09-05 2006-09-05 ヒト補体制御因子発現遺伝子およびその利用

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006240852A JP5050198B2 (ja) 2006-09-05 2006-09-05 ヒト補体制御因子発現遺伝子およびその利用

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2008061539A JP2008061539A (ja) 2008-03-21
JP5050198B2 true JP5050198B2 (ja) 2012-10-17

Family

ID=39284791

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006240852A Active JP5050198B2 (ja) 2006-09-05 2006-09-05 ヒト補体制御因子発現遺伝子およびその利用

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5050198B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7161940B2 (ja) 2017-05-10 2022-10-27 ウェルスタット イミューノ セラピューティクス, エルエルシー がんの治療のための、補体不活性化に耐性のエンベロープウイルス
CA3134654A1 (en) 2019-03-21 2020-09-24 The Uab Research Foundation Method for increasing cell susceptibility to complement-mediated lysis

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH10313865A (ja) * 1997-05-15 1998-12-02 Deinabetsuku Kenkyusho:Kk ヒト補体制御因子が呈示されたベクター
JP3543106B2 (ja) * 1999-07-21 2004-07-14 大阪大学長 膜結合型c1インアクチベーター
JP2003219884A (ja) * 2002-01-29 2003-08-05 Nipro Corp 高い補体制御機能を有するタンパク質

Also Published As

Publication number Publication date
JP2008061539A (ja) 2008-03-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US11667890B2 (en) Engineered artificial antigen presenting cells for tumor infiltrating lymphocyte expansion
RU2562868C2 (ru) Двойной вектор для подавления вируса иммунодефицита человека
JP6970525B2 (ja) ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス耐性動物
US20180220630A1 (en) Transgenic animals capable of being induced to delete senescent cells
TW201105794A (en) Reversibly immortalized cells as well as methods relating thereto
KR20220033468A (ko) 강화된 이종이식편 생존 및/또는 내성을 위한 하나 이상의 변형된 유전자를 갖는 세포, 조직, 장기 및/또는 동물
US8623815B2 (en) TRIM5alpha mutants and uses thereof
JP5050198B2 (ja) ヒト補体制御因子発現遺伝子およびその利用
Miller Hyaluronidase 2 and its intriguing role as a cell-entry receptor for oncogenic sheep retroviruses
CN109072220A (zh) 由成纤维细胞直接制造心脏祖细胞和心肌细胞的方法
Zhang et al. Role of erythropoietin receptor signaling in Friend virus-induced erythroblastosis and polycythemia
US20100210713A1 (en) Regeneration and survival of cardiac progenitors and cardiomyocytes with a stretch activated transcription factor
JP2009201518A (ja) Lcat欠損症の遺伝子治療用細胞並びにこれを産生するのに用いられる複製欠損性レトロウイルスベクター及びプラスミド
JP2013009742A (ja) 多能性幹細胞の増殖を抑制するための組成物及び方法
WO2020185073A1 (en) Optimised RAG1 deficient Gene Therapy
US20230180725A1 (en) Production of Human Cells, Tissues, and Organs in a Growth Factor Receptor-Deficient Animal Host
RU2824194C2 (ru) Способы генной модификации гемопоэтических клеток
Huang Neonatal Pig as an Alternative Source of Islets for Transplantation
JP3809189B2 (ja) 外来遺伝子の導入により高等霊長類の抗原型を発現した非霊長哺乳類の形質転換動物及びその作出方法
Moreno Carranza Self-inactivating gammaretroviral vectors for the gene therapy of chronic granulomatous disease
Okura et al. Differential human serum‐mediated neutralization of PERV released from pig cells transfected with variants of hDAF
JP2022519951A (ja) T細胞の再生を増強する方法
JP4167129B2 (ja) ブタ内在性レトロウィルス非感染性ブタ細胞とその調製方法
Park Assessment of therapeutic potential and risks of retrovirus mediated in utero gene transfer
WO2009103978A2 (en) Biological materials and uses thereof

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20090827

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120306

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120424

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120522

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120608

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120626

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150