JP5049328B2 - 耐震補強構造 - Google Patents

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Description

本発明は、耐震補強構造に関する。
既設建物の耐震補強構造としては、例えば特許文献1や非特許文献1に開示されたものがある。
特許文献1の耐震補強構造は、既設の架構(柱や梁など)の前面にコンクリート造の補強架構を増設するものである。特許文献1の耐震補強構造では、既設架構の前面に植設されたアンカーボルト(せん断伝達部材)を利用して補強架構を既設架構の前面に固着している。
非特許文献1の耐震補強構造は、既設の架構に植設されたアンカーボルトを介して枠付き鉄骨ブレース架構を配置するものである。
特開2008−50788号公報
財団法人日本建築防災協会、「既存鉄筋コンクリート造建築物の『外側耐震改修マニュアル』」、平成11年、pp110−111
前記従来の耐震補強構造では、補強架構体の終局せん断強度(保有水平耐力)を保証するために、この耐力を設計用せん断力として、必要なアンカーボルトの本数を算出していた。そのため、アンカーボルトの本数は多数となり、この多数のアンカーボルト51,51,…は、図6に示すように、柱梁架構50に対して所定の間隔により一様に設置されていた。
ところが、アンカーボルト51,51,…の設置作業には、振動や騒音を伴うことがあるので、アンカーボルト51,51,…の設置本数が多くなるに従って、建物利用者に与える不快感が増大する虞がある。
また、既設構造物へのアンカーボルト51,51,…の設置作業は、工事が煩雑で、時間を要するため、工期が長いという問題点も有していた。
このような観点から、本発明は、既設柱梁架構と増設柱梁架構との間に介在させるせん断伝達部材の数を削減することが可能な耐震補強構造を提供することを課題とする。
このような課題を解決する本発明は、既設柱梁架構の既設柱に増し打ちされた増設コンリート柱とこの柱と交差する方向に沿って形成された増設コンクリート梁からなる増設柱梁架構と、該増設柱梁架構と前記既設柱梁架構との境界部に跨って配設されたせん断伝達部材と、を備える耐震補強構造であって、前記増設コンクリート柱と前記増設コンクリート梁との交差部に配設されたせん断伝達部材の単位面積当りの断面積は、前記交差部以外に配設されたせん断伝達部材の単位面積当りの断面積よりも大きいことを特徴としている。
かかる耐震補強構造によれば、曲げモーメント勾配が大きく変化する柱と梁の交差部にせん断伝達部材が集中して配置されているため、既設柱梁架構と増設柱梁架構との接合を合理的に行うことを可能としている。
また、せん断伝達部材は、交差部に集中して配置されているため、一様に配置することで既設柱梁架構と増設柱梁架構との一体化を図る従来の耐震補強構造と比較してせん断伝達部材の量を減らすことができる。
また、前記耐震補強構造において、前記増設コンクリート梁に配設されたせん断伝達部材の単位面積当りの断面積は、前記増設コンクリート柱に配設されたせん断伝達部材の単位面積当りの断面積よりも大きくなるように設定するのが望ましい。
また、前記交差部に配設されたせん断伝達部材の単位面積当りの断面積は、当該せん断伝達部材の耐力が前記増設柱梁架構の曲げ降伏時せん断耐力を上回り、かつ、前記増設コンクリート柱のせん断耐力以下となるように設定してもよい。
本発明によれば、既設架構と増設柱梁架構との間に介在させるせん断伝達部材の数を削減することが可能になるので、例えば建物の供用を継続しつつ耐震補強を行う場合には、建物利用者に与える不快感を緩和することが可能になる。
本発明の好適な実施の形態に係る耐震補強構造を示す斜視図である。 図1に示す耐震補強構造の断面図である。 図1に示す耐震補強構造の分解斜視図である。 (a)〜(d)は、耐震補強構造の各施工段階を示す断面図である。 (a)は既設柱に作用する曲げモーメント分布を示す模式図であり、(b)はせん断伝達部材の配置を示す正面図である。 従来の耐震補強構造におけるせん断伝達部材の一般的な配置を示す正面図である。
添付した図面を参照しつつ、本発明を実施するための好適な実施の形態を説明する。なお、以下の説明においては、既設建物の室外側を「前側」とし、既設建物の室内側を「後側」とする。
本実施形態に係る耐震補強構造1は、図1に示すように、既設柱21と既設梁22とからなる既設柱梁架構20と、既設柱21に増し打ちされた増設コンクリート柱11とこの増設コンクリート柱11と交差する方向に沿って形成された増設コンクリート梁12からなる増設柱梁架構10と、を備えている。増設柱梁架構10と既設柱梁架構20との間には、図2に示すように、せん断伝達部材30,30,…が跨って配設されている。
増設柱梁架構10および既設柱梁架構20は、鉄筋コンクリート構造からなる。
増設コンクリート柱11は既設柱21の前面に沿って形成されており、増設コンクリート梁12は既設梁22の前面に沿って形成されている。
増設コンクリート柱11は、その全体が既設柱21の前面よりも前側に位置していて、図3に示すように、既設柱21の前面に植設されたせん断伝達部材30,30,…を利用して既設柱21と接合されている。
増設コンクリート柱11は、図2に示すように、コンクリートからなる柱本体111と、柱本体111の内に配筋された前側柱主筋112および後側柱主筋113と、両柱主筋112,113を取り囲むフープ筋114と、を具備している。
柱本体111は、前側柱主筋112、後側柱主筋113およびフープ筋114とともに、増設コンクリート柱11の構造体部分(構造設計において考慮される部分)を形成している。
本実施形態の増設コンクリート梁12は、コンクリートからなる梁本体121と、梁本体121の内に配筋された前側軸補強材122および後側軸補強材123と、両軸補強材122,123を取り囲むあばら筋124と、を具備している。なお、両軸補強材122,123は、増設コンクリート梁12の長手方向に沿って配筋された鉄筋である。
増設コンクリート梁12は、増設コンクリート柱11または既設柱21の側面に、その端面が当接した状態で形成されている。
本実施形態では、前側軸補強筋122を、増設コンクリート柱11を貫通させた状態で配筋する。また、後側軸補強筋123は、その先端が増設コンクリート柱12の端部において所定の被りを有した状態となるように配筋する。
梁本体121は、前側軸補強材122、後側軸補強材123およびあばら筋124とともに、増設コンクリート梁12の構造体部分を形成している。
梁本体121の後面は既設梁22の前面に当接している。本実施形態では、図3に示すように、既設梁22の前面に植設されたせん断伝達部材30,30,…を介して梁本体121と既設梁22とを連結している。
なお、増設柱梁架構10の配筋は限定されるものではなく、適宜行えばよい。
せん断伝達部材30は、既設柱梁架構20の前面に植設されたアンカー筋である。本実施形態のせん断伝達部材30は、図2に示すように、増設柱梁架構10と既設柱梁架構20との境界部に跨って配設される線材である軸部31と、増設柱梁架構10側の突出部分先端には、軸部31よりも拡径された頭部32が形成されている。
本実施形態では、図3に示すように、せん断伝達部材30を、増設コンクリート柱11と増設コンクリート梁12との交差部13に集約して配置するものとする。
交差部13は、増設コンクリート柱11と同幅とし、増設コンクリート梁12の高さの上下に柱せいの1/2の高さを含めた範囲とする。なお、交差部13の範囲は前記の範囲に限定されるものではなく、例えば、交差部13の高さ方向の範囲を増設コンクリート梁12の高さと同じ高さとしてもよいし、交差部13の幅方向の範囲を増設コンクリート梁12の幅に柱せいまたは梁せいの1/2を左右に加えた範囲としてもよい。
交差部13に配設されたせん断伝達部材30,30,…の単位面積当りの断面積は、交差部13以外に配設されたせん断伝達部材30,30,…の単位面積当りの断面積よりも大きくなっている。
つまり、せん断伝達部材30としてすべて同一の部材を使用する場合には、交差部13に配置されるせん断伝達部材30の密度(見かけ単位面積当りのせん断伝達部材の断面積)が、交差部13以外に配置されるせん断伝達部材30の密度よりも大きくなる。
本実施形態では、増設柱梁架構10に対して配置されるせん断伝達部材30,30,…の面積(同一断面の場合は本数)の50%以上を交差部13に配置するものとするが、交差部13に配置されるせん断伝達部材30,30,…の比率は限定されるものではない。
交差部13に配設されるせん断伝達部材30,30,…の単位面積当りの断面積は、せん断伝達部材30,30,…の耐力が増設柱梁架構10の曲げ降伏時せん断耐力を上回るように設定されている。
このようにすると、せん断伝達部材30が破損せずに増設柱梁架構10に作用するせん断力を既設柱梁架構20に伝達することができる。
また、交差部13に配設されるせん断伝達部材30,30,…の単位面積あたりの断面積は、せん断伝達部材30,30,…の耐力が増設コンクリート柱11のせん断耐力以下となるように設定されている。
このようにすると、過大なせん断力を伝達することで増設コンクリート柱11に破損が生じることがない。
前記せん断伝達部材30の配置により、一定のピッチで柱梁架構全体にせん断伝達部材を配置する従来の耐震補強構造(図6参照)よりもせん断伝達部材30の本数を削減することが可能となる。
なお、交差部13以外の増設コンクリート柱および増設コンクリート梁12に配設されるせん断伝達部材30,30,…の配置は、単位面積当りの断面積が交差部13に配置されるせん断伝部材30,30,…の単位面積当りの断面積よりも小さければ限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
また、交差部13以外へのせん断伝達部材30,30,…の配設は、構造計算上不要と判断された場合には省略してもよいし、構造計算上または施工上必要と判断された場合等には適宜配置すればよい。
次に、本実施形態に係る耐震補強構造の構築方法を説明する。
図4の(a)に示すように、まず、既設柱21と既設梁22との交差部の前面に複数のせん断伝達部材30,30,…を設置する。せん断伝達部材30の設置方法に制限はないが、本実施形態では、既設柱21の前面を穿孔して装着孔を形成し、その後、金属系アンカー(金属拡張アンカー)または接着系アンカーを固着することにより行う。
また、本実施形態では、既設梁22の前面にせん断伝達部材30,30,…を設置する(図3参照)。
次に、図4の(b)に示すように、柱本体111(図2参照)を構築する領域に前側柱主筋112、後側柱主筋113、フープ筋114などを配筋するとともに、梁本体121(図2参照)を構築する領域に前側軸補強材(梁主筋、腹筋)122、後側軸補強材(腹筋)123、あばら筋124などを配筋する。
また、図4の(c)に示すように、柱本体111の柱用型枠14を既設柱21の前方に設置するとともに、梁本体121の梁用型枠15を梁用既設梁22の前方に設置する。
その後、図4(d)に示すように、既設柱21と柱用型枠14との間の空間に柱本体111となるコンクリートを打設するとともに、既設梁22と梁用型枠15との間の空間に梁本体121となるコンクリートを打設する。コンクリート打設後、所定の強度が発現するまで養生し、柱用型枠14および梁用型枠15を脱型することで耐震補強構造1が完成する。なお、柱用型枠14および梁用型枠15として、柱用外装材および梁用外装材を使用して、それぞれ脱型せずにそのまま残置してもよい。
以上のように構成された本実施形態の耐震補強構造では、図5の(a)および(b)に示すように、既設柱梁架構の曲げモーメントMに起因するせん断力が大となる交差部にせん断伝達部材30を集中して配置しているため、既設柱梁架構20と増設柱梁架構10との間で効果的に力の伝達が行われる。
なお、図5において、符号23は、梁主筋である。
そのため、柱梁架構に対して一様にせん断伝達部材を配置する従来よりも、せん断伝達部材の数量を大幅に削減することが可能となり、材料費の削減が可能となる。
また、せん断伝達部材の数を減らすことにより、補強工事に伴う騒音や振動の低減が可能となった。
なお、本実施形態においては、増設コンクリート柱11および増設コンクリート梁12を現場打ちコンクリートにて構成した場合を例示したが、フルプレキャストコンクリート部材やハーフプレキャスト部材を利用して構成しても差し支えない。
また、前記実施形態では、交差部以外の増設コンクリート柱の前面にはせん断伝達部材を配置しない場合について説明したが、当該部分に対してもせん断伝達部材を配置してもよい。この場合において、増設コンクリート柱の前面に配置されるせん断伝達部材は、適宜設定すればよいが、増設コンクリート梁に配置されるせん断伝達部材よりも単位面積あたりの断面積が少なく配置するのが望ましい。
また、前記実施形態では、既設柱の奥行き長さが既設梁の厚みよりも大きく、既設柱の前面および後面が、既設梁の前面および後面より突出している場合について説明したが、既設柱と既設梁の前面または後面は面一であってもよい。
1 耐震補強構造
10 増設柱梁架構
11 増設コンクリート柱
12 増設コンクリート梁
13 交差部
20 既設柱梁架構
21 既設柱
22 既設梁
30 せん断伝達部材

Claims (3)

  1. 既設柱梁架構の既設柱に増し打ちされた増設コンクリート柱とこの増設コンクリート柱と交差する方向に沿って形成された増設コンクリート梁からなる増設柱梁架構と、
    該増設柱梁架構と前記既設柱梁架構との境界部に跨って配設されたせん断伝達部材と、を備える耐震補強構造であって、
    前記増設コンクリート柱と前記増設コンクリート梁との交差部に配設されたせん断伝達部材の単位面積当りの断面積は、前記交差部以外に配設されたせん断伝達部材の単位面積当りの断面積よりも大きいことを特徴とする耐震補強構造。
  2. 前記増設コンクリート梁に配設されたせん断伝達部材の単位面積当りの断面積は、前記増設コンクリート柱に配設されたせん断伝達部材の単位面積当りの断面積よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の耐震補強構造。
  3. 前記交差部に配設されたせん断伝達部材の単位面積当りの断面積は、当該せん断伝達部材の耐力が前記増設柱梁架構の曲げ降伏時せん断耐力を上回り、かつ、前記増設コンクリート柱のせん断耐力以下となるように設定されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の耐震補強構造。
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