JP5047557B2 - 粘着剤組成物及びそれを用いた粘着シートと粘着性光学部材 - Google Patents
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Description
また、液晶セルに貼り合わせるこれらの光学部材は、加工や搬送時に生ずる傷や汚れなどを防止する目的で表面保護フィルムが粘着層剤を介して貼り合わされている。そして、この表面保護フィルムは不要になった段階で剥離して除去される。
ところで、液晶セルは、一般に配向層を形成した2枚の透明電極基板を、その配向層を内側にして、スペーサにより所定の間隙になるように配置し、その周辺をシールして該間隙に液晶材料を挟持させると共に、上記2枚の透明電極基板の外側表面に、それぞれ粘着剤層を介して偏光板が配設された構造を有している。
図1は、上記偏光板の1例の構成を示す斜視図である。この図で示されるように、該偏光板10は、一般的には、ポリビニルアルコール系偏光子1の両面に、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムI2及びII2'を貼り合わせた3層構造の基材を有しており、そして、その片面には液晶セルなどの光学部品に貼着するための粘着剤層3が形成され、さらに、この粘着剤層3には、剥離シート4が貼着されている。また、この偏光板の該粘着剤層3と反対側の面には、通常表面保護フィルム5が設けられている。
このような偏光板を前記液晶セルに貼付する場合には、まず剥離シート4を剥がし、露出した粘着剤層3を介して液晶セルに貼付したのち、表面保護フィルム5を剥離する。
前記剥離シート4や表面保護フィルム5を剥離する場合、これらのシートやフィルム、及び偏光板はプラスチック材料により構成されているため、電気絶縁性が高く、静電気が発生する。この際に生じた静電気が残ったままの状態で液晶セルに電圧を印加すると、液晶分子の配向に乱れが生じる。また、静電気の存在は、埃や塵を吸引してしまうなどの問題を引き起こす。したがって、偏光板、剥離シートあるいは表面保護フィルムに対しての静電気帯電の防止対策の開発が切望されている。
静電気帯電を抑制する試みとして、例えば粘着剤に低分子の界面活性剤を添加することにより、粘着剤層表面に移行した界面活性剤に、空気中の水分を吸着させ、帯電防止機能を発現させることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この場合、帯電防止性能及び接着力が湿度に大きく影響を受けるという欠点があった。
また、炭素数6〜14であるアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを主成分とする(メタ)アクリル系ポリマー、ならびにポリエーテルポリオール化合物およびアルカリ金属塩を含む粘着剤組成物において、前記(メタ)アクリル系ポリマーの酸価が1.0以下であり、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、前記アルカリ金属塩0.1重量部未満を含有してなる粘着剤組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、この粘着剤組成物は、導電剤としてポリエーテルポリオール化合物とアルカリ金属塩との組合わせを用いたものであり、剥離帯電防止性、接着性及び耐久性などの全てを十分に満足し得るものではない。
すなわち、本発明は、
(1)(A)(メタ)アクリル酸エステル重合体、及び(B)(b−1)アルカリ金属カチオンを有する電解質塩と(b−2)多価カルボン酸のエステルとの組合わせからなるイオン導電剤を含むことを特徴とする粘着剤組成物、
(2)さらに、(C)導電性ポリオルガノシロキサンを含む上記(1)項に記載の粘着剤組成物、
(3)(A)100質量部に対し、(B)0.05〜1質量部及び(C)0.05〜1質量部を含む上記(2)項に記載の粘着剤組成物、
(4)(C)導電性ポリオルガノシロキサンが、一般式(II)
(5)(B)イオン導電剤の(b−2)成分の多価カルボン酸のエステルが、一般式(I)
R 1 −[COO−(AO) n −R 2 ] k ・・・(I)
(式中、R 1 は置換基を有していてもよい炭素数2〜15の2〜4価の炭化水素基、R 2 は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数2〜6のアシル基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、kは2〜4の整数、nは2〜30の整数を示す。)で表される完全エステルである上記(1)〜(4)項のいずれかに記載の粘着剤組成物、
(6)(A)(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部に対して、(B)(b−1)アルカリ金属カチオンを有する電解質塩と(b−2)多価カルボン酸のエステルとの質量比0.1:99.9〜50:50の組合わせからなるイオン導電剤0.05〜1質量部を含む上記(1)項に記載の粘着剤組成物、
(7)基材の少なくとも片面に、上記(1)〜(6)項のいずれかに記載の粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を有することを特徴とする粘着シート、
(8)シート状光学部材の少なくとも片面に、上記(1)〜(6)項のいずれかに記載の粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を有することを特徴とする粘着性光学部材、及び
(9)シート状光学部材が偏光板である上記(8)項に記載の粘着性光学部材、
を提供するものである。
本発明の粘着剤組成物において、(A)成分の(メタ)アクリル酸エステル重合体としては特に制限はなく、従来粘着剤の樹脂成分として慣用されている(メタ)アクリル酸エステル重合体の中から任意のものを適宜選択して用いることができる。このような(メタ)アクリル酸エステル重合体としては、例えばエステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルと、活性水素をもつ官能基を有する単量体と、所望により用いられる他の単量体との共重合体を好ましく挙げることができる。なお、(メタ)アクリル酸エステルは、メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステルを意味する。
ここで、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一方、活性水素をもつ官能基を有する単量体の例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、モノメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、モノエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのモノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸などが挙げられる。これらの単量体は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂成分として用いられる前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、その共重合形態については特に制限はなく、ランダム、ブロック、グラフト共重合体のいずれであってもよい。また、分子量は、重量平均分子量で50万以上が好ましく、50万〜250万がより好ましい。この重量平均分子量が50万未満では被着体との接着性や耐久接着性が不十分となるおそれがある。接着性、及び耐久接着性などを考慮すると、この重量平均分子量は、70万〜180万のものが好ましい。
なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
さらに、この(メタ)アクリル酸エステル共重合体においては、活性水素をもつ官能基を有する単量体単位の含有量は、0.01〜10質量%の範囲が好ましい。この含有量が0.01質量%未満では架橋点が少なすぎて、架橋が不十分となり、粘着剤層の凝集破壊が生ずるおそれがあるし、10質量%を超えると液晶セルなどへの貼付適性が低下するおそれが生じる。この活性水素をもつ官能基を有する単量体単位のより好ましい含有量は0.05〜6.0質量%であり、特に0.2〜5.0質量%の範囲が好ましい。
本発明の粘着剤組成物においては、(B)成分としてイオン導電剤が用いられる。このイオン導電剤は、(b−1)成分のアルカリ金属カチオンを有する電解質塩と(b−2)成分の多価カルボン酸のエステルとの組合わせからなるものであって、前記(b−1)成分である電解質塩におけるアルカリ金属カチオンとしては、Li+、Na+、K+を挙げることができ、これらの中で、特にLi+が性能の点から、好適である。
また、電解質塩におけるアニオンとしては、特に制限はないが、例えばF-、Cl-、Br-、I-、BF4 -、PF6 -、SCN-、ClO4 -、CF3SO3 -、(CF3SO2)2N-、(CF3SO2)3C-、RSO3 -(R:アリール基)などを好ましく挙げることができる。これらの中で性能の点から、特にClO4 -が好適である。
(b−1)成分として用いられる電解質塩の具体例としては、LiBr、LiI、Li
BF4、LiPF6、LiSCN、LiClO4、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(CF3SO2)3C、さらにはオクチルベンゼンスルホン酸リチウム、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム、ジブチルナフタレンスルホン酸リチウムなど、並びにこれらの塩のLi(リチウム)を、KやNaに置き換えた化合物を挙げることができるが、これらの中でLi塩が好ましく、特にLiClO4(過塩素酸リチウム)が好ましい。
本発明においては、この(b−1)成分の電解質塩は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
R1−[COO−(AO)n−R2]k ・・・(I)
で表される完全エステルを挙げることができる。
前記一般式(I)において、R1は、置換基を有していてもよい炭素数2〜15の2〜4価の炭化水素基を示す。この炭化水素基としては、置換基を有していてもよい、炭素数2〜15の2〜4価の脂肪族炭化水素基、炭素数5〜15の2〜4価の脂環式炭化水素基及び炭素数6〜15の2〜4価の芳香族炭化水素基を挙げることができる。置換基としては、例えば水酸基を挙げることができる。
このR1の具体例としては、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、リンゴ酸、クエン酸、アコニット酸、ブタントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸などの脂肪族ポリカルボン酸、1,2−、1,3−、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ポリカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの芳香族ポリカルボン酸等の多価カルボン酸から、カルボキシル基を除いた残基を挙げることができる。
R2は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数2〜6のアシル基を示す。炭素数1〜6のアルキル基は直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、また水酸基などの置換基を有していてもよい。例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基を挙げることができる。炭素数2〜6のアシル基としては、水酸基などの置換基を有していてもよく、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基などを挙げることができる。
Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、このアルキレン基は直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。具体的には、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロパン−1,2−ジイル基、分岐状ブタンジイル基が挙げられるが、これらの中で、エチレン基及びプロパン−1,2−ジイル基(プロピレン基)が好ましい。
nは2〜30の整数を示す。また、オキシアルキレン基AOは、異なるオキシアルキレン基の混合物であってもよく、また付加モル数の平均値が2〜30の範囲にあれば、付加モル数の異なるものの混合物であってもよい。
前記一般式(I)で表される多価カルボン酸の完全エステルは、例えば前述で例示した多価カルボン酸と、HO−(AO)n−H(A及びnは前記と同じである。)で表されるポリオキシアルキレングリコール又はHO−(AO)n−R2'(R2'は炭素数1〜6のアルキル基を示し、A及びnは前記と同じである。)で表されるポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルを反応させることにより、製造することができる。
当該(b−2)成分は、多価カルボン酸の部分エステルであってもよいが、部分エステルは分子内に遊離のカルボキシル基が存在し、このカルボキシル基は、前記(b−1)成分の電解質塩との相互作用が大きく、イオン伝導を妨げる要因になるので、完全エステルが好ましい。
(B)成分のイオン導電剤において、前記の(b−1)成分と(b−2)成分の含有割合は、通常質量比で0.01:99.99〜30:70であり、好ましくは0.1:99.9〜50:50である。
本発明の粘着剤組成物における前記(B)成分のイオン導電剤の含有量は、剥離帯電防止性、接着性及び接着耐久性などの観点から、前記(A)成分の(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部に対し、通常0.05〜1質量部程度、好ましくは0.1〜0.7質量部、より好ましくは0.12〜0.5質量部である。
本発明の粘着剤組成物においては、所望により(C)導電性ポリオルガノシロキサンを含むことができる。
この導電性ポリオルガノシロキサンとしては、特に制限はないが、例えば一般式(II)
前記一般式(II)において、R3は一価の有機基を示す。この一価の有機基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、トリル基等の炭素数6〜8のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7〜9のアラルキル基などが挙げられ、水酸基等の置換基を有してもよい。
R4〜R6は、それぞれ独立にアルキレン基を示す。このアルキレン基としては、炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、プロパン−1,2−ジイル基(プロピレン基)、トリメチレン基、テトラメチレン基、分岐状ブタンジイル基、直鎖状又は分岐状のペンタンジイル基などを挙げることができる。−(R5O)c−及び/又は−(R6O)d−部分は、当該ポリオルガノシロキサンの親水性部分であって、導電性を付与すると共に、(b−1)成分の電解質塩との相互作用により、アルカリ金属カチオンのイオン導電性に関与する部分である。R5及びR6の少なくとも一方はエチレン基又はプロピレン基であることが好ましい。aは0〜100の整数、bは1〜100の整数を示し、c及びdは、それぞれ独立に0〜100の整数を示すが、c及びdが同時に0であることはない。また、−(R4O)−と−(R5O)−の配列順序は任意である。
R7は水素原子又は一価の有機基を示す。この有機基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜5のアルキル基、アセチル基、プロピオニル基等の炭素数2〜6のアシル基が挙げられ、水酸基等の置換基を有してもよい。
前記一般式(II)で表される導電性ポリオルガノシロキサンは、例えば水素化ケイ素を有するポリオルガノシロキサン主鎖に対し、不飽和結合及びポリオキシアルキレン基を有する有機化合物をヒドロシリル化反応によりグラフトさせることによって得ることができる。
本発明の粘着剤組成物においては、前記(B)成分と(C)成分の含有割合は、質量比で2:8〜9:1であることが好ましく、4:6〜7:3であることがさらに好ましい。
本発明の粘着剤組成物においては、架橋剤を用いることができる。この架橋剤を用いる場合、前記(A)成分の(メタ)アクリル酸エステル重合体は、(メタ)アクリル酸エステルと活性水素をもつ官能基を有する単量体と、所望により用いられる他の単量体との共重合体であることが肝要である。この共重合体における活性水素部分が架橋点となる。
この架橋剤としては特に制限はなく、従来アクリル系樹脂において架橋剤として慣用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。このような架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、アジリジン系化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩などが挙げられるが、ポリイソシアネート化合物が好ましく用いられる。
ここで、ポリイソシアネート化合物の例としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などを挙げることができる。
本発明の粘着剤組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、各種添加剤、例えばシラン系カップリング剤、粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、着色剤などを、所望により含有させることができる。
前記シラン系カップリング剤は、例えば本発明の粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を有する偏光板などの光学部材を、該粘着剤層を介して液晶セルのガラス基板に、湿熱条件下でも接着性よく貼着するために用いられる。
このシラン系カップリング剤としては、例えば、トリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
これらのシラン系カップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。またその添加量は、粘着剤組成物100質量部に対し、通常0.001〜10質量部程度である。
本発明の粘着剤組成物は、剥離帯電防止性、接着性及び接着耐久性などが良好な粘着シートや粘着性光学部材を与えることができる。
本発明の粘着シートは、基材の少なくとも片面に、前述した本発明の粘着剤組成物を用いて形成してなる層(以下、粘着剤層と略称することがある。)を設けたものである。基材としては、例えばグラシン紙、コート紙、キャストコート紙などの紙基材、これらの紙基材にポリエチレンなどの熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリメチルペンテンなどのポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、酢酸セルロース系フィルムなどのプラスチックフィルムや、これらを含む積層シートなどが挙げられ、粘着シートの用途により、適宜選択される。
基材がプラスチックである場合、当該基材は、帯電防止処理されてなるものを用いてもよい。帯電防止処理としては特に制限されないが、基材の少なくとも片面に帯電防止層を設ける方法やプラスチック基材に練り込み型帯電防止剤を練り込む方法が用いられる。
基材の少なくとも片面に帯電防止層を設ける方法としては、帯電防止剤と樹脂成分から成る帯電防止性樹脂や導電性ポリマー、導電性物質を含有する導電性樹脂を塗布する方法や導電性物質を蒸着あるいはメッキする方法などが挙げられる。
導電性ポリマーとしては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどが挙げられる。これらの導電性ポリマーは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。導電性物質としては、例えば、酸化錫、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化チタン、酸化亜鉛、インジウム、錫、アンチモン、金、銀、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、鉄、コバルト、ヨウ化銅、およびそれらの合金または混合物が挙げられる。
前記帯電防止性樹脂および前記導電性樹脂に用いられる樹脂成分としては、例えば、ポリエステル、アクリル、ポリビニル、ウレタン、メラミン、エポキシなどの汎用樹脂が用いられる。なお、高分子型帯電防止剤の場合には、樹脂成分を含有させなくてもよい。また、帯電防止樹脂成分に、架橋剤として、例えば、メチロール化あるいはアルキロール化したメラミン系、尿素系、グリオキザール系、アクリルアミド系などの化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物を含有させることも可能である。
本発明の粘着シートは、被着体に粘着剤層を転写するための部材として用いることができるし、また該粘着シートを所望の被着体に貼着するための部材としても用いることができる。前者の用途に用いる場合には、基材の粘着剤が塗付される面に、通常シリコーン樹脂などの剥離剤が塗布される。この場合、基材の厚さとしては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
後者の用途の場合、基材の種類及び厚さは、その用途に応じて適当なものが選定される。また、この場合、粘着剤層の上に、所望により、通常の剥離フィルムを設けることができる。
本発明の粘着シートにおいては、粘着剤層の厚さは、通常5〜150μm、好ましくは10〜90μm程度である。
次に、本発明の粘着性光学部材は、後述するシート状光学部材の少なくとも片面に、前述の粘着剤組成物を用いて粘着剤層を設けたものである。
上記シート状光学部材としては、特に制限はないが、例えば偏光板を始め、位相差板、反射防止板、視野角拡大フィルムなどを挙げることができるが、これらの中で、特に偏光板が好適である。この偏光板としては、例えば液晶表示装置用、光量調整用、偏光干渉応用装置用、光学的欠陥検出器用などがあるが、これらの中で、特に液晶表示装置における液晶セル用偏光板に、該粘着剤層を設けるのが有利である。
なお各例における諸特性は以下に示す方法に従って評価した。
(1)剥離帯電圧
粘着剤層付き偏光板、あるいは粘着シートを50mm幅、100mm長に切り出し、厚さ2mmのポリエチレン板に固定用のアクリル系粘着剤により貼り合わせた。このものを、23℃、湿度50%RHの常温常湿環境下で24時間放置したのち、剥離フィルムを高速剥離試験機[テスター産業社製、機種名「TE−701」]に固定し、剥離角度180°、剥離速度30m/minの条件で剥離した。
この際発生する粘着剤層表面の5秒後及び60秒後の電位(剥離帯電圧)を、粘着剤層中央部の表面から50mm離れた距離に固定してある電位測定機[シシド静電気社製、機種名「STATIRON−DZ3]を使用して測定した。測定は23℃、湿度50%RHの環境下で行った。
なお、実施例1〜実施例4は、粘着剤層付き偏光板、あるいは粘着シートを23℃、湿度50%RHの環境下で7日間放置後及び3ヶ月間放置した後の試験片を使用して剥離帯電圧を測定した。
図2は、この粘着剤層付き偏光板の場合の剥離帯電圧測定方法の説明図である。図2において、符号11は剥離フィルム、12は粘着剤層、13は偏光板、14は固定用のアクリル系粘着剤層、15はポリエチレン板、16はチャック、17は電位測定機である。なお、粘着シートの場合もこれに準じて測定を行った。
(2)粘着力
粘着剤層付き偏光板、あるいは粘着シートから、25mm幅、120mm長のサンプルを切り出し、剥離フィルムを剥がして(粘着剤層厚さ25μm)、ソーダライムガラス板[エヌ・エス・ジー・プレシジョン(株)製、「ソーダライムガラス(SiO2コートなし)」]に空気が入らないように、ラミネーターを用いて貼り付け、23℃、湿度50%RHの環境下で24時間放置した。
その後、万能型引張試験機[エー・アンド・ディ社製、「テンシロン」]を用いて、偏光板を、ガラスより剥離角度180°、剥離速度0.3m/minにて剥離した際の粘着力を測定した。
(3)耐久性
粘着剤層付き偏光板、あるいは粘着シートを23℃、湿度50%RHで1週間エージング後、幅210mm、長さ310mmの試験片を切り出し、前記(2)と同様な方法で無アルカリガラス板[エヌ・エス・ジー・プレシジョン(株)製、「コーニングガラス#1737」]に貼り付け、栗原製作所製オートクレーブにて、0.5MPa、50℃、20分間の条件で加圧を行った。その後、以下の(a)〜(c)のそれぞれの条件においたのち、偏光板の状態を目視により、下記の判定基準で評価した。
○:発泡、剥がれが全くない。
×:発泡、剥がれが多く観察される。
<条件>
(a)80℃、20日間
(b)60℃、湿度90%RH、20日間
(c)ヒートショック:60℃に30分間と−20℃に30分間を1サイクルとして300サイクル
ブチルアクリレート97.1質量部、アクリル酸2.9質量部、重合開始剤として2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部を、酢酸エチル200質量部に加え、60℃にて17時間撹拌することにより、重量平均分子量85万のアクリル酸エステル共重合体溶液を得た。
製造例2
ブチルアクリレート95.4質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート4.6質量部、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部を、酢酸エチル200質量部中に添加し、60℃で17時間撹拌することにより、重量平均分子量85万のアクリル酸エステル共重合体溶液を得た。
実施例1
製造例1で得たアクリル酸エステル共重合体溶液に2−ブタノンを加えて、濃度20質量%に希釈した。この溶液100gに、一般式(I)で表されるイオン導電剤[三光化学社製、商品名「0862−20R」、過塩素酸リチウム:アジピン酸ジエステル(一般式(I)のAはエチレン基である)質量比20:80]0.06g、架橋剤としてトリメチロールプロパントリレンジイソシアナートアダクト体[東洋インキ製造社製、商品名「BHS8515」]0.5g及びシランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン[信越化学工業社製、商品名「KBM−403」]0.02gを加えて、溶液状のアクリル系粘着剤組成物を調製した。
次に、この粘着剤組成物を、ナイフコーターにて、剥離フィルム[リンテック社製、商品名「SP−PET3811」]の剥離処理面に塗布し、90℃で1分間乾燥させたのち、厚さ180μmの偏光板にラミネートし、粘着剤層付き偏光板を作製した。粘着剤層の厚さは25μmとした。
この粘着剤層付き偏光板の諸特性を求めた。結果を第1表に示す。
実施例2
製造例1で得たアクリル酸エステル共重合体溶液に2−ブタノンを加えて、濃度20質量%に希釈した。この溶液100gに、一般式(I)で表されるイオン導電剤[三光化学社製、商品名「0862−20R」、過塩素酸リチウム:アジピン酸ジエステル(一般式(I)のAはエチレン基である)質量比20:80]0.03g、一般式(II)で表される導電性ポリオルガノシロキサン[丸菱油化工業社製、商品名「PC−3560M」、固形分60質量%]0.05g、架橋剤としてトリメチロールプロパントリレンジイソシアナートアダクト体[東洋インキ製造社製、商品名「BHS8515」]0.5g及び実施例1と同じシランカップリング剤0.02gを加えて、溶液状のアクリル系粘着剤組成物を調製した。
以下、実施例1と同様にして粘着剤層付き偏光板を作製し、諸特性を求めた。結果を第1表に示す。
実施例3
イオン導電剤の量を0.06gとした以外は、実施例2と同様にして、偏光板フィルムを作製し、諸特性を求めた。結果を第1表に示す。
実施例4
製造例2で得たアクリル酸エステル共重合体溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製し、諸特性を求めた。結果を第1表に示す。
比較例1
実施例1において、イオン導電剤を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様に実施した。結果を第1表に示す。
比較例2
実施例1において、イオン導電剤の代わりにカチオン系界面活性剤[東邦化学社製、商品名「アンステックスC−200X]0.2gを用いた以外は、実施例1と同様に実施した。結果を第1表に示す。
偏光板の代わりに厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム[東洋紡績(株)製、商品名「コスモシャイン A4100」]を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い粘着シートを作製した。この粘着シートの評価結果を第2表に示す。
実施例6
偏光板の代わりに厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム[東洋紡績(株)製、商品名「コスモシャイン A4100」]を用いた以外は、実施例2と同様の操作を行い粘着シートを作製した。この粘着シートの評価結果を第2表に示す。
実施例7
偏光板の代わりに厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム[東洋紡績(株)製、商品名「コスモシャイン A4100」]を用いた以外は、実施例4と同様の操作を行い粘着シートを作製した。この粘着シートの評価結果を第2表に示す。
2 TACフィルムI
2' TACフィルムII
3 粘着剤層
4 剥離シート
5 表面保護フィルム
10 偏光板
11 剥離フィルム
12 粘着剤層
13 偏光板
14 固定用のアクリル系粘着剤層
15 ポリエチレン板
16 チャック
17 電位測定機
Claims (9)
- (A)(メタ)アクリル酸エステル重合体、及び(B)(b−1)アルカリ金属カチオンを有する電解質塩と(b−2)多価カルボン酸のエステルとの組合わせからなるイオン導電剤を含むことを特徴とする粘着剤組成物。
- さらに、(C)導電性ポリオルガノシロキサンを含む請求項1に記載の粘着剤組成物。
- (A)100質量部に対し、(B)0.05〜1質量部及び(C)0.05〜1質量部を含む請求項2に記載の粘着剤組成物。
- (B)イオン導電剤の(b−2)成分の多価カルボン酸のエステルが、一般式(I)
R 1 −[COO−(AO) n −R 2 ] k ・・・(I)
(式中、R 1 は置換基を有していてもよい炭素数2〜15の2〜4価の炭化水素基、R 2 は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数2〜6のアシル基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、kは2〜4の整数、nは2〜30の整数を示す。)で表される完全エステルである請求項1〜4のいずれかに記載の粘着剤組成物。 - (A)(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部に対して、(B)(b−1)アルカリ金属カチオンを有する電解質塩と(b−2)多価カルボン酸のエステルとの質量比0.1:99.9〜50:50の組合わせからなるイオン導電剤0.05〜1質量部を含む請求項1に記載の粘着剤組成物。
- 基材の少なくとも片面に、請求項1〜6のいずれかに記載の粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を有することを特徴とする粘着シート。
- シート状光学部材の少なくとも片面に、請求項1〜6のいずれかに記載の粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を有することを特徴とする粘着性光学部材。
- シート状光学部材が偏光板である請求項8に記載の粘着性光学部材。
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