JP5047404B2 - シリカ多孔体およびこれを用いた光マイクロフォン - Google Patents

シリカ多孔体およびこれを用いた光マイクロフォン Download PDF

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Description

本発明は、音響伝搬媒質として用いられるシリカ多孔体および光マイクロフォンに関する。
一般にシリカエアロゲルと称される低密度のシリカ多孔体は、多くの細孔を有し、体積の90%以上が空孔で構成される。また、骨格は、数nmから数十nm程度の球状のシリカ微粒子がつながることによって構成されている。シリカ多孔体の密度および屈折率は小さい。また、シリカ多孔体中を伝搬する音速は、空気中の音速340m/sより小さい。このため、種々の音響装置における音響伝搬媒質として注目されている。
従来、シリカ多孔体は以下の方法によって製造される。まず、以下の(化1)で示されるテトラメトキシシラン(Tetramethoxysilane:TMOS)をエタノールなどの溶媒と混合し、ゾル液を作製する。
Figure 0005047404
次に、ゾル液に触媒水を加え、加水分解および縮重合反応をさせることにより、湿潤ゲルを生成させる。その後、湿潤ゲル中の溶液を気体に置換(乾燥)することによって、シリカ多孔体が得られる。
湿潤ゲル中の溶液を気体で置換する際、細孔内に残存している溶液の表面張力に基づく引っ張り応力がゲルの強度より大きくなると、ゲル構造が破壊される。これを防ぐため、湿潤ゲルを乾燥させる工程には、超臨界乾燥を用いることが多い。また、ゲルに疎水化処理を施すことにより、経時劣化が極めて少ないシリカ多孔体を得ることができる。
非特許文献1は、音速が小さいため、シリカ多孔体が、音波を効率よく取り込むことができる音響整合層として有用であると開示している。また、シリカ多孔体の密度と音速の関係も開示している。図24に示すように、密度を下げるほど、音速も低下する。
シリカ多孔体を用いた他の用途として、特許文献1は、光マイクロフォンを開示している。この光マイクロフォンは光音響伝搬媒質部を備え、音波を光音響伝搬媒質部に取り込むことにより、光を用いて光音響伝搬媒質部内に発生する歪を検出する。特許文献1は、この光音響伝搬媒質部としてシリカ多孔体が好適であると開示している。
特開2009−85868号公報
Hidetomo Nagahara, Takashi Hashida, Masa-aki Suzuki, Masahiko Hashimoto, "Development of High-Sensitivity Ultrasonic Transducer in Air with Nanofoam Material," Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 44, No. 6B, pp. 4485-4489, 2005. ウェブサイト「有機化合物のスペクトルデータベースSDBS(独立行政法人 産業技術総合研究所)」http://riodb01.ibase.aist.go.jp/sdbs/cgi-bin/cre#index.cgi
上述したように、シリカ多孔体の密度が小さくなるほど音速は小さくなり、音響整合層としての音響インピーダンスが小さくなったり、光音響伝搬媒質部における歪が大きくなったりするため、種々の音響装置における検出感度等を向上させることができる。しかし、音速を下げるために、シリカ多孔体の密度を下げていくと、シリカ多孔体は脆く壊れやすくなるという課題があった。
特に、音響装置の音響伝搬媒質としてシリカ多孔体を用いる場合、所定の強度を確保する必要があるため、音響装置の性能向上と、音響伝搬媒質の機械的強度の維持を両立させることが困難であるという課題があった。
本発明は、このような従来技術の課題を解決し、従来のシリカ多孔体と同等の密度を有し、かつ、従来より小さな音速を備えたシリカ多孔体、およびこれを用いた光マイクロフォンを提供することを目的とする。
本発明のシリカ多孔体は、シリカ粒子が3次元的につながったシリカ多孔体であって、空気の平均自由行程より小さい第1細孔と、前記第1細孔より大きい第2細孔を含む貫通孔を有し、100kg/m3以上300kg/m3以下の密度を備え、前記シリカ粒子を構成するシリカのケイ素にイソブチル基が結合している。
ある好ましい実施形態において、前記シリカ多孔体は、メトキシ基を含んでいない。
本発明のシリカ多孔体は、シリカ粒子が3次元的につながったシリカ多孔体であって、テトラメチルシランを外部基準とする13C固体NMR分析において、65ppm以上66ppm以下にシグナルがなく、24ppm以上27ppm以下にシグナルを有するか、または、65ppm以上66ppm以下および24ppm以上27ppm以下にそれぞれシグナルを有し、24ppm以上27ppm以下のシグナルの強度が65ppm以上66ppm以下のシグナルの強度の2倍より大きい。
本発明の光マイクロフォンは、上記いずれかに記載のシリカ多孔体によって構成される光音響伝搬媒質部を含む受信部であって、前記受信部の周囲の空間から音波が入射し、前記光音響伝搬媒質部を伝搬する受信部と、前記シリカ多孔体を透過する波長の光を出射し、前記音波が伝搬している光音響伝搬媒質部を透過することにより、前記音波による変調を受けた光を検出し、検出信号を出力する検出部と、前記検出信号を音圧に換算し、受信信号を出力する換算部とを備える。
本発明のシリカ多孔体の製造方法は、テトラメトキシシランおよびジイソブチルジメトキシシランを溶媒中で混合することによりゾルを得る工程と、前記ゾルに水を加え、所定の時間保持することによりゲルを得る工程と、前記ゲルから溶媒を除去し、乾燥させる工程とを包含する。
ある好ましい実施形態において、前記ゲルを得る工程において、前記テトラメトキシシランおよび前記ジイソブチルジメトキシシランを1:0.4以上1:1以下の質量比で混合する。
本発明によれば、シリカ粒子を構成するシリカのケイ素にイソブチル基が結合していることにより、シリケートネットワークの柔軟性が高く、また、緻密性が低下する。このため、従来のシリカ多孔体と同等の密度であっても、音速が低いシリカ多孔体が実現する。また、このシリカ多孔体を光音響伝搬媒質部として用いることで、より感度の高い光マイクロフォンを実現することができる。
本発明によるシリカ多孔体の実施形態の構造を示す模式的な斜視図である。 図1に示すシリカ多孔体の貫通孔の断面を示す模式図である。 従来のTMOSを用いたシリカ多孔体の合成方法を説明する図である。 実施形態のシリカ多孔体の合成方法を説明する図である。 実施形態のシリカ多孔体の窒素吸着等温線を示す図である。 図5に示す窒素吸着等温線A線からBJH法で計算した結果を示す図である。 図5に示す窒素吸着等温線B線からBJH法で計算した結果を示す図である。 実施例1のシリカ多孔体の13C-DDMAS-NMRスペクトルを示す図である。 比較例2のシリカ多孔体の13C-DDMAS-NMRスペクトルを示す図である。 イソプロポキシ基の13C-NMRのシグナル位置を示す図である。 実施例および比較例のシリカ多孔体の音速を調べるための非接触音速測定系の構成を示す図である。 図11に示す構成において、音速測定したシリカ多孔体の範囲を示す図である。 図11に示す構成において、オシロスコープより観察される波形の一例を示す図である。 図11に示す構成によって得られた測定結果であって、最大振幅値を表示したマップの一例を示す図である。 図11に示す構成によって得られた測定結果であって、最大振幅値の時間を表示したマップの一例を示す図である。 図11に示す構成によって得られた測定結果であって、音速を求めるグラフの一例を示す図である。 実施例1のシリカ多孔体と比較例1のシリカ多孔体の光透過率を示す図である。 実施例において、DIBDMSの調合比と得られたシリカ多孔体の光透過率との関係を示す図である。 実施例において、DIBDMSの調合比と得られたシリカ多孔体の音速との関係を示す図である。 実施例において、種々の密度を有するシリカ多孔体の減衰率を求めるための実験結果であって、シリカ多孔体の伝搬距離と最大振幅値との関係を示す図である。 実施例および比較例における、音速と減衰率との関係を示す図である。 実施例および比較例における、1/(音速)3と減衰率との関係を示す図である。 本発明による光マイクロフォンの実施形態の構成を示す図である。 シリカ多孔体の密度と音速の関係を示す図である。
本願発明者は、シリカ多孔体の構造とその物性との関係について詳細に研究を行った。その結果、空気より音速が小さいという特徴はシリカ多孔体の細孔構造に関連していることが分かった。また、TMOSおよびジイソブチルジメトキシシラン(Diisobutyldimethoxysilane:以下、DIBDMSと略す)を原料として用いることにより、従来のシリカ多孔体と同程度の密度を備え、かつ、従来よりも小さい音速を備えた新規なシリカ多孔体が得られることを見出した。DIBDMSの構造を以下の(化2)に示す。以下、本発明によるシリカ多孔体および光マイクロフォンの実施形態を詳細に説明する。
Figure 0005047404
(第1の実施形態)
以下本発明によるシリカ多孔体の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本実施形態のシリカ多孔体5の構造を模式的に表した図である。図1に示すように、シリカ多孔体5は、複数のシリカ粒子6が3次元的につながった構造を有している。シリカ粒子6同士は、所定の結合エネルギーで結合していると考えられる。シリカ粒子6は、数nmから数十nm程度の粒子径を有する球形状を有している。空気より小さい音速を実現するために、シリカ粒子6の粒子径は3.5nm以上であること好ましく、100m/s以下の音速を備えるためには、シリカ粒子6の粒子径は8nm以上であることが好ましい。また、光音響伝搬媒質部としてシリカ多孔体5を用いる場合には、光の透過性の観点から、シリカ粒子6の粒子径は20nm以下であることが好ましい。「粒子径」は、X線小角散乱(株式会社リガク製・試料水平型強力X線回折装置 RINT−TTR III)を用いて透過法により測定し、解析ソフトウェアNANO−Solverを用いて求めた平均サイズである。解析ソフトウェアNANO−Solverでは、散乱体モデルを球とし、粒子をSiO2とし、マトリックスをAirとして用いた。
シリカ多孔体5において、3次元的につながった複数のシリカ粒子6の間には空隙が形成されている。図2は、シリカ多孔体5の空隙の一部を示す模式的断面図である。空隙はシリカ多孔体5内で連続しており、全体として貫通孔7を形成している。図2に示すように、貫通孔7は、複数の空洞部1(第2細孔)と、空洞部1の間に位置する複数のくびれ部(第2細孔)2とを含む。空洞部1は、シリカ粒子6が3次元的にかつ、ランダムにつながることにより形成される貫通孔7の相対的に内径の大きい部分であり、くびれ部2は、相対的に内径の小さい部分である。図2に示すように、くびれ部2の内径L2は、空洞部1の内径L1よりも小さい。好ましくは、くびれ部2の内径L2は空気の平均自由行程より小さい。ここで、「内径」とは、後述する細孔分布測定においてBJH法で解析した結果得られる、試料中で最も存在割合の多い細孔径を意味する。
くびれ部2の内径L2が空気の平均自由行程より小さい場合、シリカ多孔体5の貫通孔7を満たしている空気中を音波は伝搬することはできない。このため、本実施形態のシリカ多孔体5では、細孔を満たしている空気を伝搬することなくシリカ粒子6によって構成される骨格を音波が伝搬すると考えられる。
空気の平均自由行程は、圧力および温度に依存する。ここで、「くびれ部2の内径L2は空気の平均自由行程より小さい」とは、シリカ多孔体5が使用される温度および圧力において、「くびれ部2の内径L2は空気の平均自由行程より小さい」ことを意味する。
例えば、シリカ多孔体5が常温常圧で使用される場合、空気の平均自由行程は、約68nmである。したがって、くびれ部2の内径L2は、68nmより小さいことが好ましい。
実用上、本実施形態のシリカ多孔体5を用いた光マイクロフォンが50000Pa以上120000Pa以下の圧力および−20℃以上200℃以下の温度範囲で使用されるとした場合、これらの圧力および温度範囲において、空気の平均自由行程は、約50nmより大きく180nm以下である。このため、くびれ部2の内径L2は50nm以下であれば、これらの温度および圧力範囲において使用可能である。つまり、シリカ多孔体5のくびれ部2の内径L2は50nm以下であることが好ましい。
シリカ多孔体5の密度は、100kg/cm3以上300kg/m3以下であることが好ましい。密度が300kg/m3より大きい場合、均一な物性を有するシリカ多孔体5を作製することが困難となる。また、密度が100kg/cm3より小さい場合、シリカ多孔体5は脆く壊れやすくなり、十分な強度を確保することが困難となる。ここで、「密度」とは、シリカ多孔体5の質量と、シリカ多孔体5の体積との比である。シリカ多孔体5の体積には、開気孔、閉気孔を問わず細孔を含む。
次に本実施形態のシリカ多孔体5の化学構造を説明する。シリカ多孔体5のシリカ粒子6は、シロキサン結合の一部がイソブチル基で置換されたシリカ化合物によって構成されている。より具体的には、このシリカ化合物は、ケイ酸塩四面体が隣のケイ酸塩四面体と酸素原子を共有しながら網目構造を形成しているシリカ(SiO2)骨格を有し、シリカ骨格のケイ素(Si)にイソブチル基(CH2CH(CH32)が結合している。上述の網目構造を「シリケートネットワーク」とも言う。シリカ中、イソブチル基が結合しているケイ素が含まれる限り、イソブチル基が結合しているケイ素とイソブチル基が結合していないケイ素の割合に特に制限はない。ただし、同程度の密度を有する従来のシリカ多孔体に比べて十分に小さな音速を有するシリカ多孔体5を実現するためには、イソブチル基が結合しているケイ素とイソブチル基が結合していないケイ素の元素比は、1:2200から1:400の範囲であることが好ましい。また、イソブチル基はケイ素に1つまたは2つ結合していることが好ましく、2つ結合していることがより好ましい。シリカ多孔体5において、イソブチル基が結合しているケイ素とイソブチル基が結合していないケイ素との割合を調べるには、例えば、29Si−NMR分析を用いることができる。
イソブチル基が結合していないケイ素は、酸素を介して隣接するケイ素と結合し、Si−O−Si結合を構成しているか、水酸基(OH)と結合している。出発原料(溶媒)に由来するエトキシ基(OCH2CH3)と結合していてもよい。あるいは、疎水化処理により、アルキルシリル基等と結合していてもよい。
このような化学構造を有するシリカ多孔体5は、例えば、TMOSとDIBDMSを出発原料に用いることによって合成することができる。シリカ多孔体5の作製方法を説明する前に、まず、従来のシリカ多孔体の合成方法を説明する。
図3は従来のシリカ多孔体の作製方法をしている。従来のシリカ多孔体は、例えば、TMOSを出発原料として用い、加水分解工程(S1)、縮重合工程(S2)およびゲル化工程(S3)によって作製される。図3に示すように、加水分解工程(S1)において、まずTMOSのメトキシ基が加水分解し、ケイ素に水酸基が結合する。次に、縮重合工程(S2)において、水酸基を有する2つのケイ素から脱水縮合により、水が脱離し、Si−O−Si結合が形成される。つまり、ケイ酸塩四面体のOH基が、隣のケイ酸塩四面体のOH基と縮重合反応すること(S2)で、酸素を共有して結合し、シリケートネットワークを形成する。その後、ゲル化工程(S3)において、シリケートネットワークの形成がゾル液全体で進むにつれ、ゾル液の粘性は高くなり流動性を失ってゲル化する。
TMOSは4官能性であるため、上述の反応は4つのメトキシ基において生じる。このため、4つのメトキシ基のほとんどがSi−O−Si結合に変換され、未反応基が少なく空隙が小さい、シリケートネットワークを構成すると考えられる。その結果、シリカ粒子は緻密で硬く、また、シリカ多孔体の弾性率が高くなると推測される。
これに対し、本実施形態のシリカ多孔体5は、TMOSおよびDIBDMSを出発原料として用いる。TMOSおよびDIBDMSを溶媒中で混合することによりゾルを生成し、ゾルに水を加え、所定の時間保持することにより、TMOSおよびDIBDMSのアルコシ基の加水分解、加水分解により生成した水酸基からの脱水縮重合および重合の成長によるゲル化を行う。その後、従来と同様、超臨界乾燥によって、ゲルから溶媒を除去し、乾燥させることにより、シリカ多孔体5を得る。溶媒には例えば、エタノールなどを用いることができる。また、ゾル化は、例えば70℃の温度で24時間放置することにより行う。
シリカ多孔体5の上記反応による合成中、図4に示すように、DIBDMSは、2つのメトシキ基および2つのイソブチル基を有しているため、DIBDMSにおいて、加水分解および縮合重合に寄与できるのは、2つのメトキシ基だけである。これらの出発原料を加水分解した場合、DIBDMSのイソブチル基は加水分解されず、縮重合反応をすることができない。また、DIBDMSのイソブチル基による立体障害のため、DIBDMSは縮重合反応を起こしにくくなり、ゆっくりゲル化が進む。このため、シリカ粒子が大きく成長する。また、ゲル化後、得られたシリカ粒子中において、DIBDMSに由来するケイ素は、最大でも2つのSi−O−Si結合を形成しているだけであり、ケイ素の他の2つの結合手には、イソブチル基が結合している。つまり、シリケートネットワークを構成しているケイ素の一部にはイソブチル基が結合している。
本実施形態のシリカ多孔体のシリカ粒子は、ソブチル基と結合したケイ素を含むため、従来のシリカ粒子に比べて、シリカネットワーク中のSi−O−Si結合の数が少なくなっており、シリケートネットワークの柔軟性が高く、また、緻密性が低下している。このため、シリカ多孔体5の弾性率が低下し、音速が低下する。
また、ゲル化したシリカの溶液を気体で置換する際、シリケートネットワークの柔軟性が高いため、乾燥時におけるシリカ多孔体5の構造が破壊されるのが抑制される。このため、構造破壊によるシリカ粒子の白濁が抑制され、本実施形態のシリカ多孔体は高い透過率を備える。このような特徴のため、本実施形態のシリカ多孔体5は、同じ密度を有する従来のシリカ多孔体に比べて、音速が小さい。よって、従来のシリカ多孔体と同程度の密度を備え、かつ、従来よりも小さな音速を有するシリカ多孔体を実現することができる。
また、以下の実施例において具体的に説明するように、本実施形態のシリカ多孔体によれば、音速が小さく、音波の減衰率も小さい。このため、本実施形態のシリカ多孔体を光マイクロフォンの光音響伝搬媒質に用いた場合、音速を小さくすることによって、光マイクフォンの感度を向上させることができ、また、光マイクロフォンの効率を高めることができる。
なお、イソブチル基のように、加水分解およびSi−O−Si結合を形成しない置換基として、アルキル基など他の置換基を有するアルコキシシランを出発原料として用いることも考えられる。しかし、以下の実施例で説明するように、イソブチル基以外の置換基を有するアルコキシシランを出発原料として用いた場合、本実施形態のシリカ多孔体ほど小さな音速および小さな密度を有するシリカ多孔体を得ることはできなかった。
本実施形態のシリカ多孔体5のシリカ粒子がイソブチル基を有するケイ素を含んでいるかどうかは、例えば、13C固体NMR分析によって好適に判断することができる。以下の実施例において詳細に説明するように、テトラメチルシランを外部基準とした場合、本実施形態のシリカ多孔体5においてケイ素に結合しているイソブチル基のシグナルは、24ppm以上27ppm以下に現れる。この領域にシグナルを有する他の炭素種としては、ケイ素に結合したイソプロポキシ基が挙げられる。しかし、ケイ素に結合したイソプロポキシ基(O−iPr)は65ppmから66ppmにもシグナルを有するため、65ppmから66ppmに現れるシグナルの有無によって、好適にイソプロポキシ基と、本実施形態のシリカ多孔体におけるイソブチル基とを区別することができる。
具体的には、テトラメチルシランを外部基準とする13C固体NMRの分析において、65ppm以上66ppm以下にシグナルがなく、24ppm以上27ppm以下にシグナルを有する場合には、シリカ粒子がイソブチル基を有している。また、65ppm以上66ppm以下および24ppm以上27ppm以下にそれぞれシグナルを有し、24ppm以上27ppm以下のシグナルの強度が65ppm以上66ppm以下のシグナルの強度の2倍以上である場合にも、シリカ粒子にイソプロポキシ基よりもイソブチル基が多く含まれているため、本実施形態のシリカ多孔体と同定することができる。
本実施形態のシリカ多孔体のシリカ粒子では、49ppmから50ppm付近にメトキシ基に由来するシグナルが見られない。この点については、以下において詳細に説明する。
以下、本実施形態のシリカ多孔体を作製し、種々の特性を測定した結果を説明する。
(実施例)
1.実施例1のシリカ多孔体の作製
大きさ10mm×10mm×厚み5mmのシリカ多孔体を、加水分解(S1)、縮重合(S2)、ゲル化(S3)および乾燥(S4)の各工程により作製した。
まず、市販(東京化成工業株式会社製)のTMOSと市販(Gelest社製)のDIBDMSとを混合し、エタノールに投入した。よく混合し、得られたゾル液に、加水分解工程(S1)および縮重合工程(S2)のために水を加えた。本実施例では、触媒効果を得るために0.01Nのアンモニア水を用いた。これらの調合比(質量比)を表1に示す。調合後、密閉した容器内に入れ、70℃の恒温槽内で24時間保持した。これにより、TMOSおよびDIBDMSの加水分解および縮重合が進行し、また、ゾル液のゲル化(S3)が進む。24時間後、TMOSおよびDIBDMSの脱水縮合生成物が分散した湿潤ゲルが生成した。
TMOSなどのケイ素のアルコキシドは、アルコールには可溶であるが、水には不溶である。このため、エタノールは、密度調整以外に、TMOSと水とを均一に混合する働きをする。得られる多孔体の密度を大きくするためには、エタノールの調合比率を小さくする。密度を300kg/m3よりも高くするためには、エタノールの調合比率を非常に小さくする必要があり、水が均一に混合しないため均一な湿潤ゲルを作製することが困難になる。また、密度を小さくし、音速を低下させるためにも、密度は300kg/m3より小さいことが望ましい。
その後、湿潤ゲルをエタノールに約24時間浸すことで、アンモニア水や反応物であるメタノールなどを洗浄し、除去を行った。次に、疎水化処理を行った。疎水化処理液は、38gのジメチルジメトキシシラン(以下DMDMSと称す)、38gのエタノール、2.05gの水および5.55gの1Nのアンモニア水を混合することにより作製した。作製した疎水化処理液に湿潤ゲルを浸し、70度で一晩反応させた。疎水化処理後、処理液を捨て、新しいエタノールに24時間浸して、未反応物の洗浄を行った。その後、二酸化炭素を用いて、17MPa、80度の条件で、超臨界乾燥により乾燥を行い(S4)、乾燥ゲルであるシリカ多孔体を得た。得られた試料を実施例1とした。
2.比較例1〜7のシリカ多孔体の作製
実施例1と同様の方法により、TMOSのみを出発原料とした比較例1、3、TMOSおよびDIBDMSを出発原料とした比較例2、TMOSと、ジメチルジメトキシシラン(化合物1、下記(化3))、1,5−ジエトキシヘキサメチルシロキサン(化合物2、下記(化4))、ベンゾイルオキシプロピルトリメトキシシラン(化合物3、下記(化5))またはヘキシアデシルトリメトキシシラン(化合物4、下記(化6))を出発原料とした比較例4〜比較例7を作製した。各比較例において用いた出発原料、エタノール、アンモニア水の調合比は表1に示す通りである。
Figure 0005047404

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Figure 0005047404


Figure 0005047404

Figure 0005047404
3. 実施例1のシリカ多孔体の細孔測定
実施例1のシリカ多孔体の構造を検討するため、まず、シリカ多孔体の細孔構造に着目した。図5に、実施例1である密度が約110kg/m3のシリカ多孔体の77Kにおける窒素吸着等温線を示す。「窒素吸着等温線」とは、材料を一定温度(本実験では77K)にし、圧力と吸着量の変化を測定したグラフである。
図5の横軸は、平衡圧力を飽和蒸気圧で割った相対圧(P/P0)を示し、0〜1の値である。P/P0≒1では、吸着ガスは試料管内で凝縮することを意味する。すなわち、吸着等温線は飽和蒸気圧よりも低い圧力で固体と吸着分子の相互作用力が働き、吸着、凝縮が始まり、気相よりも高い吸着質密度を測定したものである。図5の縦軸は、吸着量を示し、標準状態(0℃、1気圧)における気体の体積V0/cm3(STP)g-1で表す。
シリカ多孔体を真空下で110℃に加熱した後、株式会社日本ベル製BELSORP-miniIIを用いて窒素吸着等温線の測定を行った。
図5中のA線は、窒素ガスの細孔への毛管凝縮過程で評価した測定値であり、B線は、細孔に凝縮した液体窒素の蒸発過程で評価した測定値である。このように、毛管凝縮過程と蒸発過程とで異なる測定値を示す吸脱着ヒステリシスとなっていることは、一般に異なる径の細孔が連結していることを示唆している。
このことから、図2に示すように、シリカ多孔体の細孔は、空洞部1とくびれ部2とが連結している瓢箪型の構造を有していると推定できる。
吸着過程においては、空洞部1から窒素吸着が始まることにより、空洞部1の細孔径L1が吸着過程を支配する。また、蒸発過程においては、くびれ部2から脱離が始まることにより、くびれ部2の細孔径L2が蒸発過程を支配すると考えられる。
図5に示すA、Bの窒素吸着等温線から、それぞれの細孔分布をBJH法で計算した。BJH法は、1951年にBarrett、JoynerおよびHalenda により提案された、一般に広く用いられている細孔分布の解析手法である。
図6に、図5のA線から求めるBJH法による計算の結果を示し、図7に、図5のB線から求めるBJH法による計算の結果を示す。図6および図7の横軸は、細孔半径を示し、縦軸は、細孔体積を示す。
図6に示すように、BJH法による計算の結果、A線から求まる細孔半径は約34nmを中心とした分布をもつ。つまり、34nmのピークは、試料中で最も存在割合の多い細孔の半径を示す。そこで、試料中で最も存在割合の多い細孔の半径をこの試料の細孔の半径と定義する。
図7に示すように、B線から求まる細孔半径は約11nmを中心とした分布をもつ。図6と同様、この11nmが試料中で最も存在割合の多い細孔の半径であるから、B線から求まる細孔半径は11nmとする。
これらの結果から、細孔の直径(内径)を、細孔分布のすなわち、空洞部1は、約68nmの中心とした分布を直径(内径)を有する細孔であり、空洞部1につながるくびれ部2は、約22nmの中心とした分布を直径(内径)を有する細孔であることが確認できた。
つまり、実施例1のシリカ多孔体の細孔は、細孔であるものの、空気の平均自由行程よりも小さい細孔径のくびれで断続的に区切られていること、および、音波は細孔中の空気をほとんど伝搬しないことが確認できた。このことが、シリカ多孔体の音速が空気より遅い大きな原因の一つであり、音速の遅いシリカ多孔体の構造として重要な条件である。
4. 実施例1および比較例2のシリカ多孔体の13C固体NMRの測定
実施例1および比較例2のシリカ多孔体の13C固体NMR分析を行った。13C固体NMRの測定は、磁場中に置かれた物質中の原子核が、特定の波長の電磁波に共鳴する現象を観測し、分子の構造などを調べる分析方法である。NMR信号の化学シフトは、原子近傍の電子密度分布に左右されるパラメータであり、分子の局所立体構造を反映する。ある分子の構成原子の化学シフトを測定すれば、その分子の立体構造を推定することができる。
測定には、VARIAN社製の7mmCPMASプローブを備えたVARIAN社製UNITY INOVA400を用いた。測定は室温で行った。マジック角回転法(Magic Angle Spinningの略語で、MASと称す)によって4KHzの回転速度で回転させた。固体NMRの場合、磁場におかれた粒子の向きが様々であることによって、化学シフトの異方性がありシグナルの線幅が広がる。このため、磁場の方向に対して54.7°(マジック角)傾いた軸の周りに試料を高速回転して、測定する。これにより異方性を消去することができ、シグナルがシャープになる。
観測角は13Cである。観測周波数は100.567MHzであり、シフト基準物質としてテトラメチルシランを外部基準法で用い、0ppmとした。シグナルの取り込み時間は0.05secで、観測幅は40KHz、観測中心は20ppm付近である。パルス系列はDipole decoupling(DD)であり、コンタクト時間は4msecである。観測は45°パルスで、2.5μs行った。測定の繰り返し時間は120secで、積算回数は2600回行った。
図8は、実施例1のシリカ多孔体の13C-DDMAS-NMRスペクトルである。図8の縦軸はシグナル強度を示し、横軸は化学シフトを示している。図8には、横軸の化学シフトの値に帰属する分子構造を合わせて示している。以下、それぞれ化学シフトの値に帰属する分子構造を説明する。
化学シフト17ppm〜18ppmおよび60ppm〜62ppmに現れるシグナルCおよびシグナルAは、エトキシ基(OC25基)に由来する。化学シフト24ppm〜27ppmに現れるシグナルBは、イソブチル基に由来する。化学シフト49ppmから50ppm付近に現れるシグナルDは、メトキシ基(OCH3基)に由来する。化学シフト0ppm付近に現れるシグナルEは、メチル基(CH3基)に由来する。
図8に示す13C-DDMAS-NMRスペクトルから、4つのシグナルA、B、C、Eが観測できる。ここで、ノイズ強度(ベースライン)の2倍以上のシグナル強度が確認できたときに、シグナルが観測できたと判定した。
図8に示す13C-DDMAS-NMRスペクトルに表れる4つシグナルは、3種類の分子構造に帰属する。具体的には、化学シフトが0ppm付近にシグナルのあるメチル基(シグナルE)と、化学シフト24ppm〜27ppmにシグナルがあるイソブチル基(シグナルB)と、化学シフト17ppm〜18ppmと60ppm〜62ppmにシグナルのあるエトキシ基(シグナルAとC)の3種類である。
以下にそれぞれのシグナルを考察する。まず、測定を行った実施例1の試料は、洗浄および乾燥工程を経たシリカ多孔体である。このため、出発原料であり、揮発性の液体である未反応のTMOSおよびDIBDMや、疎水化処理液に含まれるDMDMS、溶媒であるエタノールが、13C−NMR測定においてノイズ強度よりも強くシグナルが観測されるほど実施例1の試料中に含まれていることは考えにくい。このため、これらの物質が独立して実施例1の試料中に含まれている可能性は排除できる。
まず、メチル基のシグナルEがあることから、疎水化処理のためのDMDMSがシリケートネットワークの末端基に結合していることが推察できる。また、エトキシ基のシグナルA、Cがあることから、溶媒であるエタノールが加水分解し、シリケートネットワークと縮重合することにより結合していると推察できる。また、イソブチル基のシグナルBがあることから、DIBDMSがシリケートネットワークを形成していることが推察できる。
一方、メトキシ基のシグナルDは、化学シフト49ppmから50ppm付近に現れる。しかし図8には該当するシグナルは観測されていない。したがって、出発原料のTMOSおよびDIBDMSに存在していたメトキシ基は、加水分解によってOH基になり、または、さらに脱水縮合によってSi−O−Si結合を形成し、シグナルが観測されるほどシリカ多孔体には残留していないことがわかる。以上の考察から、実施例1のシリカ多孔体は、シリカ粒子を構成するシリカのケイ素にイソブチル基が結合していると推定できる。
図9は、比較例2のシリカ多孔体の13C-DDMAS-NMRスペクトルである。
図9において、化学シフト24ppm〜27ppmの位置にシグナルBが見られない。このため、比較例2のシリカ多孔体は、シリカ粒子を構成するシリカのケイ素にイソブチル基が結合していないと推定できる。
表2は、実施例1および比較例2の13C-DDMAS-NMRスペクトルのシグナル強度から求めた、官能基の割合を示している。官能基により炭素数が異なるため、官能基に含まれる炭素数で標準化した強度を100分率で示している。また、エトキシ基には2つのシグナル(A、C)が見られるため、2つのシグナルの積分強度の平均を用いた。
Figure 0005047404
表2より、実施例1のシリカ多孔体を構成しているシリカにおいて、イソブチル基は、溶媒に由来するエトキシ基よりも少ないこと、シリカの結合手の多くは、疎水処理によるDMDMSが結合していると考えられる。また、比較例1のシリカ多孔体を構成しているシリカには、出発原料のTMOSおよびDIBDMSに由来すると考えられるメトキシ基が溶媒に由来するエトキシ基と同程度に存在していると考えられる。
なお、上述したように、24ppm〜27ppmにシグナルが見られる化学種として、イソブチル基以外に、イソプロポキシ基が挙げられる。図10は、非特許文献2に開示されているイソプロポキシ基のシグナルの化学シフトを示している。図9に示すように、イソプロポキシ基は、24ppm〜27ppm(図10中では25.36ppmで13番)、および、65ppm〜66ppm(図10中では65.72ppmで12番)にシグナルが現れる。24ppm〜27ppmのシグナルと65ppm〜66ppmのシグナルの比は2:1である。これは、24ppm〜27ppmのシグナルは、二つのCからのシグナルを積算した結果であるのに対し、65ppm〜66ppmのピークは一つのCからのシグナルを積算した結果であるためである。このことから、65ppm〜66ppmと24ppm〜27ppmの両方にシグナルが現れる場合は、試料中にイソプロポキシ基が存在することが示唆される。また、24ppm〜27ppmのシグナルの強度が、65ppm〜66ppmのシグナルの強度の2倍より大きい場合には、2倍を超える強度はイソブチル基に由来する。したがって、この場合には、イソプロポキシ基に加えて、イソブチル基が存在していることを示している。
実施例1の場合、図8に示すように、65ppm〜66ppm近傍にシグナルが観測されていないため、シリカ多孔体にはイソプロポキシ基が存在していないことが分かる。ただし、本実施形態のシリカ多孔体を作製する際に、溶媒としてイソプロピルアルコールを用いた場合、シリケートネットワークにより構成されるシリカとイソプロピルアルコールが反応し、イソプロポキシ基がシリカ多孔体に存在することが考えられる。この場合には、上述した65ppm〜66ppmおよび24ppm〜27ppmにおけるシグナルの有無およびその強度比を測定することによって、シリカ多孔体にイソプロポキシ基が含まれているか否か、および、イソブチル基が含まれているか否かを判断することができる。
5.実施例1および比較例1から7のシリカ多孔体を伝搬する音波の音速測定
作製したシリカ多孔体の音速を測定した。まず、音速測定の方法について説明する。図11は、レーザドプラ振動計(Laser Doppler Vibrometer、以下LDVと略す)を用いた非接触音速測定系の構成図である。図11に示すように、作製したシリカ多孔体5を、音波が入射する面以外の対向する2面において、透光性の透明アクリル板11および鏡面を有する支持体12によって挟み、保持した。透明アクリル板11側に配置したLDV14(Polytec社製:OFV3001)のヘッド13(Polytec社製:OFV353)から出射したレーザ光はシリカ多孔体5を透過し、支持体12の鏡面で反射され、再びシリカ多孔体5を投下してLDVヘッド13へ戻る。LDVヘッド13は、シリカ多孔体の測定点にあわせて、任意に移動させることができる。LDV14から得られる信号をオシロスコープ15(Tektronix社製:TDS744A)によって観測した。
ファンクションジェネレータ16(NF社製:1930)によって、周波数が40kHzの正弦波1波からなるバースト信号を発生させ、生成した信号を送信アンプ17(Pioneer製:M−10X)で増幅し、ツイータ18(Pioneer社製:PT−R4)からバースト信号による音波を発振させた。ツイータ18は、シリカ多孔体5における音波が入射する面から約210mm離して配置した。
ファンクションジェネレータ16から生成したバースト信号をトリガとして、オシロスコープ15にも入力した。
図12は、図11で示した非接触音速測定系の測定範囲を示す。図12は、図11において、ヘッド13側からシリカ多孔体5を見た図である。シリカ多孔体5の音波入射中心点19は、シリカ多孔体5の音波入射面の中心点である。音波入射中心点19を原点にとって、音波の伝搬方向と平行な方向をx方向とする。また、音波の伝搬方向と垂直な方向をy方向とする。音波入射中心点19から、x方向に10mm、y方向に±2mmの範囲において、0.2mmピッチでレーザー光を透過させ、測定を行った。
音波入射面の中心部を測定する理由は、シリカ多孔体5と透明アクリル11との境界から、他の部位よりも離れているからである。シリカ多孔体5内を伝搬する波は、透明アクリル11で反射する。このため、シリカ多孔体5と透明アクリル11の境界付近では、伝搬波と反射波が混在し、正確な音速の計測が困難である。
図13は、パルス状の音波信号を入力した場合において、シリカ多孔体5の任意の1点において、LDVにより測定された出力時間波形をオシロスコープ15で観測した結果を示す。図13において、横軸はオシロスコープ15の測定時間を示し、縦軸は検出した信号の振幅(50回平均値)を示している。観測した信号の最大振幅の到達時間から、ツイータ18からバースト波が発振されてからの時間を算出することができ、ヘッド13が測定した音波の速度vに換算することができる。また縦軸は、音波の振幅に換算できる。
図14は、測定範囲内を0.2mmピッチで測定した各測定点での最大振幅値をマップ化した図である。図14において、左側から音波が入射している。色の濃淡により、最大振幅値の大きさを表している。色が濃い部分は振幅値が大きく、色の薄い部分は振幅値が小さい。図14から、色の濃淡が測定点(位置)に依存せず、分布していることがわかる。
図15は、各測定点での最大振幅値が得られた時間をマップ化した図である。図15から、最大振幅値を測定した時間が、y軸方向においてはほぼ一定であり、x軸方向においては、ツイータ18から離れるにしたがって、変化している。このことから、y軸方向に平行に音波が伝搬していることが分かる。
図14および図15から、シリカ多孔体5に入射した音波は、測定した範囲内においてほとんど平面波としてシリカ多孔体を伝搬していることがわかる。
図16は、音波入射中心点19からx方向に10mmはなれたy軸と平行の直線上を0.2mmピッチで測定した結果であり、縦軸は音波入射中心点19から測定点までの距離を示し、横軸は最大振幅値が得られた時間を示している。このグラフの傾きが音速になる。図16に示すように、測定結果を直線で近似し、傾きを求めた。傾きから実施例1のシリカ多孔体の音速は約49m/sであることがわかった。
比較例1〜比較例7のシリカ多孔体の音速も同様にして求めた。結果を表3に示す。
Figure 0005047404
6. 実施例1および比較例1から7のシリカ多孔体の光透過率の測定
作製した実施例1および比較例1から7のシリカ多孔体の光透過率を測定した。光透過率の導出は、直線透過率ではなく、透過光を積分して求めた。測定には、日立製U−4000形分光光度計を用いた。この分光光度計は、透過光を積分球で受光している。表3に632nmの透過率を示す。また、図17に、実施例1および比較例3の300nmから2000nmの波長範囲における光透過率を示す。図17から分かるように、実施例1のシリカ多孔体のほうが、比較例3のシリカ多孔体に比べ特に1300nm以下の波長領域における光透過率が増大していることが分かった。
7. 実施例1および比較例1から7のシリカ多孔体の密度の測定
作製した実施例1および比較例1から7のシリカ多孔体の密度を測定した。密度は、重さをその体積で割って求めた。重さは、電子天秤(メトラー トレド社製AB204−S)を用いて測定した。また、シリカ多孔体は、大きさ10mm×10mm×厚み5mmになるよう型を用いて作製したが、乾燥工程により若干の収縮が発生するサンプルもあるので、測長顕微鏡を用いて4辺の長さと厚みを測定し、その平均値を用いて体積を計算で求めた。測定結果を表3に示す。
8.測定結果の考察
表3から分かるように、実施例1のシリカ多孔体は、同じ密度を有する比較例1および比較例6のシリカ多孔体に比べて、小さな音速を有している。密度が小さくなるにつれて、シリカ多孔体における貫通孔の割合が増え、脆くなると考えられるため、実施例1のシリカ多孔体は、比較例1などの従来のシリカ多孔体に比べて、同程度の密度を有しながら、より小さな音速を実現できることが分かる。これはSi−O−Si結合を形成しないイソブチル基がシリカ多孔体のシリカ粒子を構成するシリカのケイ素に結合しているため、シリカ粒子の緻密性が低下し、従来よりも、シリカ多孔体の密度および弾性率が低下し、音速が低下したためと考えられる。
また、実施例1の透過率は、比較例1のシリカ多孔体に比べて高い透過率を有している。これは、ゲル化したシリカの溶液を気体で置換する際、シリケートネットワークの柔軟性が高いため、乾燥時におけるシリカ多孔体の構造が破壊されるのが抑制され、構造破壊によるシリカ粒子の白濁が抑制されるからであると考えられる。透過率が高いという特徴は、シリカ多孔体が、光音響伝搬媒質として用いる場合に特に有利である。例えば、実施例1のシリカ多孔体は、音波を取り込み、音波によって発生するシリカ多孔体の歪を光を用いて検出する光マイクロフォンに好適に用いることができる。例えば、光マイクロフォンの光音響伝播媒質に、実施例1のシリカ多孔体および比較例1のシリカ多孔体を用いた場合、比較例1を用いた場合に比べて実施例1を用いた光マイクロフォンの出力は1.26となり、光マイクロフォンの感度が約30%程度向上する。
比較例4から7は、加水分解が生じない置換基を有するシランまたはシロキサンを出発原料として用い作製されている。これらの化合物(化3)〜(化6)は、シリカ多孔体を作製中に、加水分解およびその後に形成されるSi−O−Si結合が生じない置換基を有するという点では、実施例1のDIBDMSと類似した性質を備えていると言える。しかし、比較例4から7のシリカ多孔体は、実施例1のシリカ多孔体ほど、低い密度および小さな音速を備えることができなかった。詳細な理由は明らかではないが、加水分解が生じない置換基の大きさ(嵩高さ)や立体的な構造が密度および音速の小さいシリカ多孔体の形成に関係しているものと考えられる。
また、比較例2のシリカ多孔体は、出発原料としてTMOSおよびDIBDMSを用いているが、実施例1のシリカ多孔体ほど、小さな密度および音速が得られていない。図9に示す13C-DDMAS-NMRスペクトルは、イソブチル基に帰属するシグナルは観測されていないことを示しているため、密度および音速が小さくない理由は、比較例2のシリカ多孔体のシリカ粒子のケイ素は、イソブチル基が結合していないからであると考えられる。
詳細な理由は明らかではないが、比較例2では、出発原料として添加したDIBDMSがTMOSの10%と少ないことが原因ではないかと考えられる。出発原料中のDIBDMSの割合が少ない場合、イソブチル基による立体障害のため、DIBDMSとTMOSとの間で縮重合するよりも優先的にTMOSだけで縮重合が行われるからではないかと推測される。
9.TMOSおよびDIBDMSの調合比と作製したシリカ多孔体の特性
DIBDMSおよびTMOSの好ましい調合比を調べるために、TMOSとDIBDMSを1:0、1:0.1、1:0.4、1:1、1:2.3の割合で調合し、実施例1と同様の方法によってシリカ多孔体を作製し、上述した方法により音速および光透過率を測定した。調合比と光透過率との関係を図18に示す。また、調合比と音速との関係を図19に示す。
図18に示すように、調合比が1以下であれば、80%以上の光透過率が得られるが、調合比が2.3であれば、光透過率は70%に低下している。このため、光透過率の観点では、TMOSとDIBDMSの調合比は1:1以下つまり、DIBDMSはTMOSを1とした場合1以下の割合で用いることが好ましいことが分かる。
図19に示すように、調合比が0.4以上であれば、音速は60m/sより小さくなる。上述したように、DIBDMSの添加量がTMOSの10%である場合には、イソブチル基がシリカ多孔体のシリカに結合していないことから、音速の観点では、調合比が0.4以上2.3以下が好ましいことが分かる。
これらの結果を考慮すると、TMOSおよびDIBDMSの調合比は、1:0.4以上1:1以下が好ましいことが分かる。
10.シリカ多孔体の減衰率の測定
実施例1、比較例1および比較例5と同様の方法によって減衰率を測定するためのシリカ多孔体を作製した。それぞれの製造方法において、アルコキシシラン(TMOSやDIBDMSなど)と溶媒であるエタノールとの調合比率を変えることで密度をを異ならせ、種々の音速を有する試料を作製した。
作製した試料の減衰率を測定した。減衰率の測定は、図11に示すレーザドップラ振動計を用いて音速を求めた測定系で行った。音波入射中心点19からx方向に離れた距離をxとし、図13で求まる最大振幅値Pを用いる場合、減衰率αは下記式(6)で表すことができる。
Figure 0005047404
図20は、音波入射中心点19からx方向に10mm離れたy軸と平行の直線上を0.2mmピッチで測定した結果であり、横軸は音波入射中心点19から測定点までの距離を示し、縦軸は最大振幅値を示している。測定結果を指数で近似し、減衰率α(Np/m)を求めた。求めた減衰率をα[dB/m]=8.686×α[Np/m]に従って換算した。求めた音速と減衰率との関係を図21に示す。図21から分かるように、実施例1の方法に従って作製したイソブチル基を有するシリカ多孔体(○で示す)は、音速が小さくなるにつれて減衰率も小さくなる傾向を示している。これに対し、比較例1および比較例5の作製したイソブチル基を有するシリカ多孔体(●および×で示す)は、音速が小さくなるにつれて減衰率は大きくなる傾向を示している。
一般に、シリカにおける音波の減衰には、散乱による減衰および吸収による減衰が含まれる。吸収による減衰は、主としてシリカの粘性が原因である。この粘性による減衰は周波数の2乗に比例し、音速の3乗に反比例すると言われている(日本音響学会編、音響工学講座8 超音波(東北大教授 中村編、P28−29)。
上述したように、本実施例のシリカ多孔体の粒子径は20nm以下であることが好ましい。減衰率の測定に用いた音波の周波数は40KHzであり、音速は50m/s〜100m/sであるので、音波の波長は1.25nm〜2.5nm程度である。したがって、減衰率を測定した条件下では、音波の波長に比べてシリカ多孔体の粒子径は十分に小さく、散乱による減衰は非常に小さいと考えられる。つまり、実施例1の方法に従って作製したイソブチル基を有するシリカ多孔体では、散乱による減衰よりも、吸収による減衰が支配的要因であると考えられる。
図22は、実施例1、比較例1および比較例5と同様の方法によって作製したシリカ多孔体の1/(音速)3と減衰率との関係を示している。図22から分かるように、比較例1および比較例5と同様の方法によって作製したシリカ多孔体では、減衰率は、1/(音速)3に概ね比例しているのに対し、実施例1の方法によって作製したシリカ多孔体では、減衰率は、1/(音速)3に比例していない。このことから、比較例1および比較例5と同様の方法によって作製したシリカ多孔体は公知のシリカと同様の物理的特性を備えているが、実施例1の方法によって作製したシリカ多孔体は、公知のシリカとは異なる物理的特性を備えていることが推察される。
図21および図22に示されるように、従来のシリカ多孔体によれば、音速が低下すれば、減衰率は大きくなる。つまり、従来技術によれば、シリカ多孔体の音速を小さくすることによって音響装置の特性を改善しようとする場合、音波の減衰が大きくなり、効率が低下することがあった。これに対し、本実施形態のシリカ多孔体によれば、音速が小さくても、従来よりも減衰率を小さくすることができる。このため、以下の実施形態で説明するように、本実施形態のシリカ多孔体を光マイクロフォン等の種々の音響装置における音響伝搬媒質に用いた場合、高感度で高効率な音響装置を実現することができる。
(第2の実施形態)
本発明による光マイクロフォンの実施形態を説明する。図23は、光マイクロフォンの実施形態の構成を示す概略図である。図23に示す光マイクロフォンは、受信部120と、検出部121と、換算部110とを備える。
受信部120は、受信部120の周囲の空間を伝搬する音波が入射し、音波を光学特性の変動に変換する。このために、受信部120は、凹部103aを有するベース103と、凹部103aの開口を覆うように支持された透明支持板107とを含む。ベース部103の凹部103aと透明支持板107によって形成される空間には、第1の実施形態のシリカ多孔体からなる光音響伝搬媒質部102が配置されている。また、凹部103aには、光音響伝搬媒質部102の上面102aによって一面が規定される音響導波路106が設けられている。ベース103には音響導波路106へ音波を入射させるための開口104が設けられている。
検出部121は、受信部120で生じた光学特性の変動を光を用いて検出する。具体的には、シリカ多孔体を透過する波長の光を出射し、音波が伝搬している光音響伝搬媒質部102を透過することにより、音波による変調を受けた光を検出する。検出部121は、例えば、レーザドップラ振動計(LDVと略す)である。
空気中を伝搬してきた音波は、音波伝搬方向105に沿って、開口部104から音響導波路106内に伝搬する。音響導波路106を伝搬する音波は、その伝搬に伴って、光音響伝搬媒質部102の上面102aから光音響伝搬媒質部102を構成するシリカ多孔体の中に入射し、光音響伝搬媒質部102を伝搬する。
受信部120から光音響伝搬媒質部102向けて照射されたレーザ光100は、透明支持板107および光音響伝搬媒質部102を透過し、ベース103の凹部103aの底面103cにおいて反射する。反射したレーザ光100は、再び光音響伝搬媒質部102の中を透過し、光音響伝搬媒質部102から出射し、ヘッド108に受光される。レーザ光100が、光音響伝搬媒質部102中を通過する際、音波の伝搬に伴う光音響伝搬媒質部102を構成するシリカ多孔体の密度および屈折率が変化し、レーザ光100は、これらの変化による変調を受ける。
受信部120に受光されたレーザ光100は、電気信号に変換された後、検出部121へ出力される。検出部121は、電気信号を処理し、レーザ光100に含まれる変調成分を検出信号として換算部110へ出力する。換算部110は、検出信号を音圧に換算し、受信信号を出力する。換算部110における演算は、以下の通りである。
光音響伝搬媒質部102の内部を伝搬する音波の音圧により、光音響伝搬媒質部を構成するシリカ多孔体の体積Vは伸縮し、体積変化ΔVが生じる。体積変化ΔVにより、シリカ多孔体52の屈折率nはΔnだけ変化する。これらの関係は、式(1)で表される。
Figure 0005047404
また、シリカ多孔体の内部において、音波は音響平面波として伝搬しているため、体積変化ΔVは音波の進行方向の変位に限られるこのため、式(2)が成立する。
Figure 0005047404
ここで、lはシリカ多孔体の音波伝搬方向の長さであり、Δlは音波の伝搬によるシリカ多孔体の音波伝搬方向における変位であり、Sは音波伝搬方向におけるシリカ多孔体のひずみを示す。シリカ多孔体の内部の音圧Pは、ひずみSとシリカ多孔体の弾性定数Eにより式(3)で表すことができる。
Figure 0005047404
また、弾性定数Eは、シリカ多孔体の密度ρおよび音速Cを用いて、式(4)で表すことができる。
Figure 0005047404
式(1)から(4)より、シリカ多孔体の内部の音圧Pは、シリカ多孔体の密度ρ、音速Cおよび屈折率nと、ヘッド108から出力される電気信号である変位出力ΔLあるいは演算部109の出力である速度出力vとによって、式(5)で表すことができる。
Figure 0005047404
したがって、演算部109より出力される速度出力vを用いれば、音圧Pを計測することができる。また、式(5)より、音圧Pが一定であれば、シリカ多孔体の密度ρおよび音速Cが小さいほど、変位出力ΔLは大きくなる。つまり、検出すべき音波が一定であれば、シリカ多孔体の密度ρおよび音速Cが小さいほど、変位出力ΔLが大きくなり、光マイクロフォンの検出感度が高まる。
本実施形態の光マイクロフォンは、第1の実施形態であるシリカ多孔体を光音響伝搬媒質部として備えているため、光音響伝搬媒質部の音速が小さい。このため、音波が光音響伝搬媒質部を伝搬する際に生じる音圧の変化が大きくなり、出力値の振幅も大きくなる。また、光音響伝搬媒質部の透過率が高い。そこで光路長Lを長くすることができる。このため、音波を高い感度で検出することができる。さらに、第1の実施形態であるシリカ多孔体は、従来のシリカ多孔体と同程度の密度を有し、かつ、音速が小さい。また、音速を小さくしても、減衰率が大きくならない。このため、従来よりも高感度で高効率の光マイクロフォンを実現し得る。また、従来と同程度の感度を実現する場合には、従来より大きな密度のシリカ多孔体を用いることができるため、取り扱いが容易であり、実用性に優れた光マイクロフォンを実現することができる。
例えば、実施例1と比較例1で作製したシリカ多孔体を用いて、式(5)で求まる速度出力vの値を比較する。表3に示すように、実施例1および比較例1のシリカ多孔体の密度は同等なので、屈折率nは同等であると考える。また、光路長L、音圧は一定、密度ρと音速Cは表3に示すそれぞれの値を用いて、速度出力vを計算する。比較例1での出力が1のとき、実施例1の出力は1.26となり、出力値が26%上がり、感度が向上することがわかる。
なお、本実施形態では、検出部121としてレーザドップラ振動計を用いたが、光音響伝搬媒質部を透過することによって、光音響伝搬媒質部に生じた光学的変動を検出する他の検出装置、例えば、レーザ干渉計などを用いて、光に含まれる変調成分を検出してもよい。また、受信部の構造は図23に示す構造に限られない。
本発明のシリカ多孔体は、種々の音響装置や光音響装置の音響伝搬媒質として好適に用いられる。特に光マイクロフォンの光音響伝搬媒質等として有用である。
1 空洞部
2 くびれ部
5 シリカ多孔体
6 シリカ粒子
7 貫通孔
11 透明アクリル
12 アルミミラーの底板
13 LDVヘッド
14 レーザードップラ振動計
15 オシロスコープ
16 ファンクションジェネレータ
17 送信アンプ
18 ツイータ
19 音波入射中心点
100 レーザ光
102 光音響伝搬媒質部
102a 光音響伝搬媒質部の上面
103 ベース
103a ベースの凹部
103b ベースの凹部の側面
103c ベースの凹部の底面
104 開口部
105 音波伝搬方向
106 音響導波路
107 透明支持板
108 ヘッド
109 演算部
110 換算部
120 受信部
121 検出部

Claims (5)

  1. シリカ粒子が3次元的につながったシリカ多孔体であって、
    空気の平均自由行程より小さい第1細孔と、前記第1細孔より大きい第2細孔とを含む貫通孔を有し、
    100kg/m3以上300kg/m3以下の密度を備え、
    前記シリカ粒子を構成するシリカのケイ素にイソブチル基が結合している、シリカ多孔体。
  2. 前記シリカ多孔体は、メトキシを含まない請求項1に記載のシリカ多孔体。
  3. 請求項1または2に記載のシリカ多孔体によって構成される光音響伝搬媒質部を含む受信部であって、前記受信部の周囲の空間から音波が入射し、前記光音響伝搬媒質部を伝搬する受信部と、
    前記シリカ多孔体を透過する波長の光を出射し、前記音波が伝搬している光音響伝搬媒質部を透過することにより、前記音波による変調を受けた光を検出し、検出信号を出力する検出部と、
    前記検出信号を音圧に換算し、受信信号を出力する換算部と、
    を備えた光マイクロフォン。
  4. テトラメトキシシランおよびジイソブチルジメトキシシランを溶媒中で混合することによりゾルを得る工程と、
    前記ゾルに水を加え、所定の時間保持することによりゲルを得る工程と、
    前記ゲルから溶媒を除去し、乾燥させる工程と、
    を包含するシリカ多孔体の製造方法。
  5. 前記ゲルを得る工程において、前記テトラメトキシシランおよび前記ジイソブチルジメトキシシランを1:0.4以上1:1以下の質量比で混合する請求項に記載のシリカ多孔体の製造方法。
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