JP5046671B2 - 共形接触下の接触面圧および表面下応力計算方法 - Google Patents
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Description
一つは非共形接触問題(Counter-formal(またはNon-Conforming)Problem )であり、接触領域が接触部の物体半径に比べて小さい場合の問題である。
他の一つは、共形接触問題(Conformal (またはConforming)Problem )であり、接触領域が接触部の物体半径に比べて大きい場合の問題である。
特に接触面が二次関数で表される曲面の場合は、ヘルツ(Hertz )接触理論などが広く用いられており、数表を用いて電卓レベルで計算が可能である。二次関数で表すことができない曲面の場合は、半無限体に集中荷重が作用する場合の解析解(ブジネスク(Boussinesq)の解や、セルッティ(Cerruti )の解)の重ね合わせにより、数値的に面圧分布を求める手法が知られている。また、これらと類似の解法で各種文献(例えば非特許文献1や非特許文献2)が出ており、この手法をベースとした面圧計算ソフトウェアも市販されている。
有限要素法や境界要素法を使用して計算する場合、計算時間が多大になるという課題がある。
前記接触物体の接触面付近の形状、弾性係数、ポアソン比、および作用する外力を入力して記憶手段に記憶させる入力過程(S1)と、入力された値を用いて前記面圧を計算する解析過程(S2)と、計算した結果を出力する出力過程(S3)とでなり、
前記解析過程(S2)として、次の各過程(T1,T2,T4,T5)を含む。
各セルCに均一な単位分布荷重が作用したときの前記接触物体M1,M2の表面の前記各計算点Aに対応する点の変位への影響量を算出する変位影響算出過程(T2)と、
各セルCの面圧Pの合計が外力Fと釣り合い、かつ各セルCにつき面圧Pと前記単位分布荷重による影響量の積の合計が接触領域内部において接触物体間の接近量と初期隙間の差に釣り合うという釣り合い条件式から、各セルの面圧Pを算出する接触面圧計算過程(T3)(実施形態では「接触面圧・接触領域計算過程)とを含む。
なお、上記基準曲面Sは、2つの接触物体M1,M2の互いに接する面の接触面形状に近い形状であることが好ましい。
前記外力Fが法線方向の力である場合は、次式(1)〜(3)で表される単位集中荷重作用時の変位解析解であるブジネスク(Boussinesq)の解を積分することで前記影響量を計算する。
この発明は、このように、従来では共形接触には半無限体が適用できないと考えられていた共形接触問題に、ブジネスクやセルッティの半無限体近似の解を適用し、良好な面圧の解析結果を得ることができる。
なお、この発明方法は、非共形接触の場合にも適用可能であるが、非共形接触の場合はより簡単な計算で面圧を求めることができるため、共形接触の場合に効果的となる。
この表面下応力計算過程において、
セルに対する荷重が法線方向の力である場合は、次式(11)〜(16)で与えられる単位集中荷重作用時の表面下の応力を用いて、個々のセルCの全域にわたり積分して、かつ全セルCの影響の和をとって表面下応力を求める。
接触物体の接触面の形状によっては、接触領域の縁がギザギザになるなどして、離散化の誤差が大きくなる場合があるが、解析途中でメッシュを修正することで、離散化の誤差を低減させることができる。
このような球面座による支持を行う場合、接触領域がほぼ平面上にあると見なせず、共形接触の問題として面圧等を求めることが必要であるため、この発明方法を効果的に適用することができる。
また、この発明方法は、前記2つの接触物体が、例えば、転がり軸受における内輪または外輪である軌道輪と、ボール等の転動体とであっても良い。
転がり軸受の軌道輪とボール等の転動体との接触においても、接触領域がほぼ平面上にあると見なせず、共形接触の問題として面圧等を求めることが必要であるため、この発明方法を効果的に適用することができる。
前記接触物体M1,M2の接触面付近の形状、弾性係数、ポアソン比、および作用する外力Fを入力して記憶手段6に記憶させる入力処理手段4と、入力された値を用いて前記面圧を計算する解析手段7と、計算した結果を出力する出力処理手段5とでなり、
前記解析手段7として、次の各手段8,9,11,12を備える。
各セルCに均一な単位分布荷重が作用したときの前記接触物体M1,M2の表面の前記各計算点Aに対応する点の変位への影響量を算出する変位影響算出手段9と、
各セルCの面圧Pの合計が外力と釣り合い、かつ各セルCにつき面圧Pと前記単位分布荷重による影響量の積の合計が接触領域内部において接触物体間の接近量と初期隙間の差に釣り合うという釣り合い条件式から、各セルの面圧Pを算出する接触面圧計算手段10(実施形態では「接触面圧・接触領域計算手段」)とを含む。
この他に、各計算点Aにおける接触の有無を判定して接触領域を定める接触領域計算手段10を設けることが好ましい。
前記外力Fが法線方向の力である場合は、次式(1)〜(3)で表される単位集中荷重作用時の変位解析解を積分することで前記影響量を計算する。
かつ前記接触面圧計算手段10は、セルに対する荷重が法線方向の力および接線方法の力を含む場合は、各々の方向の力の場合の各セルCの面圧Pを算出し、両方の場合の計算結果を重ね合わせるものとする。
この表面下応力計算手段13は、セルに対する荷重が法線方向の力である場合は、次式(11)〜(16)で与えられる単位集中荷重作用時の表面下の応力を用いて、個々のセルの全域にわたり積分して、かつ全セルの影響の和をとって表面下応力を求める。
この発明の共形接触下の接触面圧,表面下応力の計算方法および計算装置によると、接触面圧に加えて、さらに表面下応力についても、比較的簡単に短時間で、また精度良く、共形接触における表面下応力の計算を行うことができる。
入力処理手段4は、入力装置2から、接触物体M1,M2の接触面付近の形状、弾性係数、ポアソン比、および作用する外力Fを入力して入力情報記憶手段6に記憶させる手段である。ここで言う「形状」は、大きさを含む概念である。入力処理手段4は、上記の形状等の情報の他に、後述の解析手段7でメッシュ分割する枡目の各軸方向の大きさやセル個数(NA,NB)等を、入力装置2から入力して入力情報記憶手段6に記憶させる機能を備えるものとしても良い。また、入力処理手段4は、入力装置2から入力された情報に対して、解析手段7で演算するための前処理を行う機能を有するものとしても良い。入力装置2は、キーボード等であっても、また通信手段や記憶素子等であっても良い。入力情報記憶手段6は、コンピュータ1の上記記憶手段における所定の記憶領域である。出力処理手段5は、解析手段7で計算した結果を、液晶ディスプレイ,プリンタ,あるいは通信機器等からなる出力装置3に出力する手段である。
解析手段7は、上記の他に、後に説明するメッシュ修正手段12を有している。
この解析仮定(S2)は、法線方向加重が作用したときのハーネット(Hartnett) の手法を拡張して共形接触問題(Conformal Problem )を解く手法であり、接線方向荷重作用時はセルッティ(Cerruti)の解を用いて法線方向荷重の作用時と同様に解き、また、法線方向と接線方向の両方の荷重が作用したときは、両方法による計算結果を重ね合わせる。
なお、基準曲面Sについて、接触面形状の正確な形状は本来わからないが、凸球面と凹球面の接触では接触面形状はほぼ球面とみなせる。ボールと内輪の接触では接触面形状は円筒面の一部に近いとみなせる(解析上もこの基準面を採用している)。従来の「接触面が平坦と見なせる」場合は平面である。複雑な曲面同士の接触では上記のような簡単な曲面で表現できない場合が出てくる。基準面形状をどのようにするかは解析精度に影響してくるため、できるだけ接触面形状に近い方が良いが、複雑にすると計算が難しくなるというデメリットがある。従って「基準曲面S」は解析する人がケースバイケースで適宜決定していく。
計算点Aは、接触物体M1,M2間の距離を離散的な点で評価するものとするためにセルCの位置を代表させる点である。計算点Aは、セルC内の適宜の位置に設定すれば良いが、ここではセルCの中心にとる。
メッシュ分割する枡目の大きさ、つまりセルCの大きさは、適宜設定すればよいが、入力処理手段4からの入力等によって自由に設定可能としても良い。また、基準曲面Sの広さは、接触物体M1,M2の接触領域を全て含むように、接触領域より広めに適宜設定する。ここでは、セルCがX軸方向にNA個、Y軸方向にNB個並ぶ基準曲面Sとする。
上記影響量の算出は、次のように行う。法線方向荷重が作用したときは、上記面圧分布によって生じる2つの接触物体M1,M2の表面上の点(上記計算点Aに対応する点)の変位量は、次式(1)〜(3)で表される単位集中荷重作用時の変位解析解(ブジネスク(Boussinesq)の解)を、次式(4)〜(6)のように積分することで得る。
なお、互いに直交する3軸方向の座標位置をx,y,z、これら3軸方向の変位を、それぞれu,v,wとする。
なお、Cijは、x軸方向にi番目でy軸方向にj番目にあるセルCを示す。Qklは、x軸方向にk番目でy軸方向にl番目の点Aを示す(なお、i:1〜NA、j:1〜NB、k:1〜NA、l:1〜NB)。
また、上記(4)〜(6)式において、θおよびφは、図4のように極座標で示されるセルCの中心である計算点Aのx軸回りの角度およびy軸回りの角度を示す。a,bは、それぞれセルCの中心である計算点AからそのセルCの周縁までのx軸回りの角度およびY軸回りの角度を示す。
この(8)式の値fijklが、セルCijに分布荷重Pijが作用したときに、他のセルCklの中心位置Qklに対応する点の変位への影響量である。
すなわち、以下の(9)式および(10)式が釣り合うように各セルの面圧値を決めれば、離散化された全体の面圧分布が求まる。
なお、上記のように(9)式を解く過程で、2つの接触物体M1,M2間の接近量と初期隙間の差Dijが正の値となるセルCijについては、そのセルCijの面圧は零としており、この接近量と初期隙間の差Dijが零または負の値となるセルCijの並び範囲が、上記「接触面圧・接触領域計算過程」で言う接触領域である。
まず、α値(:2つの接触物体M1,M2の接近量)の初期値を設定する(ステップH1)。
そのα値に応じて各セルCijの接触面圧を設定する(ステップH2)。この場合に、i=1〜NAの範囲、およびj=1〜NBの範囲で全てのセルCijの接触面圧Pijを設定する。 その設定した各セルCijの接触面圧Pijで(9)式が成り立つか否かを判定し、成り立たない場合は、セルCijの接触面圧の設定過程(ステップH2)に戻る(H3)。ステップH2では、各セルCijの接触面圧Pijを再度設定し直し、その設定したセルCijの接触面圧Pijで(9)式が成り立つか否かを判定し、成り立たない場合はセルCijの接触面圧Pijを設定過程(H2)に戻る。このような処理を(9)式が成り立つまで繰替し、(9)式が成り立つと、ステップH4に進む。
ステップH4では、(10)式が成り立つか否かを判定し、成り立たない場合は、ステップH1に戻ってα値を、再度設定し直す。
この後、前記と同様にしてステップH2〜H4,H1の処理を繰り返し、(10)式が成り立つと、処理を終了する。
このようにして求めた、式(9)、(10)が成り立つときの、ステップH2で設定した各セルCijの接触面圧Pijが、接触面圧・接触領域計算手段10の出力となる接触面圧の値である。
なお、セルCijの接触面圧の最初の値は何でもよいが、できるだけ実際の面圧に近い値を設定した方が早く収束する。
なお、セルに対して斜め方向の荷重が作用したときのその荷重の入力については、例えば入力過程(S1)で荷重の大きさと方向を入力し、この入力過程(S1)において、法線方向の荷重の成分と接線方向の荷重の成分を求める前処理を行うようにしても良く、また、予め入力過程(S1)で法線方向の荷重の成分と接線方向の荷重の成分をそれぞれ入力するようにしても良い。
図8のような凸球面の接触物体M1と凹球面の接触物体M2との接触において、軽荷重時(非共形問題(Counter-formal Problem))と重荷重時(共形問題(Conformal Problem )に分けて計算結果を示す。
軽荷重時にこの実施形態の計算方法により求めた面圧分布を図9に示す。また、ヘルツの接触理論との比較を表1に示す。両者はほぼ一致していることがわかる。
なお、FEMの計算時間はPentium (登録商標)4(クロック周波数3.7GHz)で約6分、この実施形態の計算ではPentium 4 (クロック周波数2.2GHz)で約20秒であり、計算時間が大幅に短縮できる。
図13(a)は実施形態の方法で求めた面圧を、図13(b)は従来のハーネットの手法での面圧をそれぞれ示す。
図14は、接触楕円長軸方向の面圧(短軸幅の中央の切断面での面圧)である。同図(a)は実施形態の方法で求めた面圧、同図(b)は従来のハーネットの手法での面圧、同図(c)はFEMでの面圧をそれぞれ示す。
また、この実施形態の計算方法を用いれば、有限要素法や境界要素法を用いる場合の高価なソフトウェアを導入する場合の初期費用、保守量、ライセンス本数といったコスト面の削減が図れ、またこの接触面圧・表面下応力計算装置を用いる場合、機能の専用化による使用方法の簡単化が図れ、これにより利用者の教育時間,教育コストの低減が図れるという利点も得られる。
図2のメッシュ修正手段13は、このようなメッシュ修正過程(T5)を実行する手段である。
このような球面座による支持を行う場合、作用荷重が大きくて、接触領域がほぼ平面上にあると見なせず、共形接触の問題として面圧等を求めることが必要となるため、この発明方法を効果的に適用することができる。
4…入力処理手段
5…出力処理手段
6…入力情報記憶手段
7…解析手段
8…メッシュ分割手段
9…変位影響算出手段
10…接触面圧・接触領域計算手段
11…表面下応力計算手段
M1,M2…接触物体
S…基準曲面
C…セル
Claims (7)
- 外力が作用したときに互いに共形接触を行う2つの接触物体の接触面における面圧を、コンピュータを用いて計算する方法であって、
前記接触物体の接触面付近の形状、弾性係数、ポアソン比、および作用する外力を入力して記憶手段に記憶させる入力過程と、入力された値を用いて前記面圧を計算する解析過程と、計算した結果を出力する出力過程とでなり、
前記解析過程として、
前記2つの接触物体の互いに接する面の近傍に、基準曲面を設定してこの基準曲面をセルが縦横に並ぶメッシュに分割し、接触物体間の距離を計算する点である計算点をセル上に定めるメッシュ分割過程と、
各セルに均一な単位分布荷重が作用したときの前記接触物体の表面の前記各計算点に対応する点の変位への影響量を算出する変位影響算出過程と、
各セルの面圧の合計が外力と釣り合い、かつ各セルにつき面圧と前記単位分布荷重による影響量の積の合計が接触領域内部において接触物体間の接近量と初期隙間の差に釣り合うという釣り合い条件式から、各セルの面圧を算出する接触面圧計算過程とを含み、
前記単位分布荷重による変位影響量算出過程では、互いに直交する3軸方向の座標位置をx,y,z、これら3軸方向の変位を、それぞれu,v,wとして、
前記外力が法線方向の力である場合は、次式(1)〜(3)で表される単位集中荷重作用時の変位解析解を積分することで前記影響量を計算し、
ことを特徴とする共形接触下の接触面圧の計算方法。 - 請求項1において、前記解析過程の途中で、前記メッシュに分割する大きさを修正してその修正結果により、メッシュ分割後の各過程を再度行うメッシュ修正過程を含む共形接触下の接触面圧計算方法。
- 請求項1または請求項2において、前記2つの接触物体が、球面座と、この球面座上を滑る球面部を有する部材とである共形接触下の接触面圧計算方法。
- 請求項1または請求項2において、前記2つの接触物体が、転がり軸受の軌道輪と転動体とである共形接触下の接触面圧計算方法。
- 外力が作用したときに互いに共形接触を行う2つの接触物体の接触面における面圧および表面下応力を、コンピュータを用いて計算する方法であって、
請求項1または請求項2または請求項3に記載の接触面圧の計算方法と、この計算方法で各セルの面圧を計算した後に、表面下応力を計算する過程を含み、
この表面下応力計算過程として、
前記外力が法線方向の力である場合は、次式(11)〜(16)で与えられる単位集中荷重作用時の表面下の応力を用いて、個々のセルの全域にわたり積分して、かつ全セルの影響の和をとって表面下応力を求め、
共形接触下の接触面圧および表面下応力計算方法。 - 外力が作用したときに互いに共形接触を行う2つの接触物体の接触面における面圧を計算する装置であって、
前記接触物体の接触面付近の形状、弾性係数、ポアソン比、および作用する外力を入力して記憶手段に記憶させる入力処理手段と、入力された値を用いて前記面圧を計算する解析手段と、計算した結果を出力する出力処理手段とでなり、
前記解析手段として、
前記2つの接触物体の互いに接する面の近傍に、基準曲面を設定してこの基準曲面をセルが縦横に並ぶメッシュに分割し、接触物体間の距離を計算する点である計算点をセル上に定めるメッシュ分割手段と、
各セルに均一な単位分布荷重が作用したときの前記接触物体の表面の前記各計算点に対応する点の変位への影響量を算出する変位影響算出手段と、
各セルの面圧の合計が外力と釣り合い、かつ各セルにつき面圧と前記単位分布荷重による影響量の積の合計が接触領域内部において接触物体間の接近量と初期隙間の差に釣り合うという釣り合い条件式から、各セルの面圧を算出する接触面圧計算手段とを含み、
前記変位影響量算出手段は、互いに直交する3軸方向の座標位置をx,y,z、これら3軸方向の変位を、それぞれu,v,wとして、
前記外力が法線方向の力である場合は、次式(1)〜(3)で表される単位集中荷重作用時の変位解析解を積分することで前記影響量を計算し、
ことを特徴とする共形接触下の接触面圧の計算装置。 - 外力が作用したときに互いに共形接触を行う2つの接触物体の接触面における面圧および表面下応力を計算する装置であって、
請求項6に記載の接触面圧の計算装置と、表面下応力計算手段とを含み、
この表面下応力計算手段は、
前記外力が法線方向の力である場合は、次式(11)〜(16)で与えられる単位集中荷重作用時の表面下の応力を用いて、個々のセルの全域にわたり積分して、かつ全セルの影響の和をとって表面下応力を求め、
共形接触下の接触面圧および表面下応力計算装置。
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