JP5044360B2 - 電動モータ - Google Patents

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Description

この発明は、車両等に搭載される電動モータに関するものである。
従来から、車両等に搭載されるブラシ付きの電動モータが知られている。この電動モータは、内周面に複数個の磁石を取り付けた円筒状のヨークの内側にアーマチュアコイルが巻装されたアーマチュアが回転自在に配置された構成となっている。アーマチュアは回転軸に外嵌固定されたアーマチュアコアを有している。アーマチュアコアには、巻線を巻装するためのティースが放射状に形成され、これらティース間に軸方向に長いスロットが形成されている。
各ティースには巻線が巻装され、集中巻き構造のアーマチュアコイルが形成されている。
アーマチュアコイルは、回転軸に取り付けられた各セグメントに導通している。各セグメントはブラシと摺接可能になっており、このブラシからセグメント端子に電圧を印加することによってアーマチュアコイルに電流が給電されるようになっている。このとき、アーマチュアコイルに磁界が形成され、ヨークの磁石との間に生じる磁気的な吸引力や反発力によって回転軸が駆動するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
ところで、アーマチュアコアへの巻線の巻装方式としては、集中巻き方式の他に重ね巻き(分布巻)方式がある。この重ね巻き方式によって巻装されたアーマチュアと4つのブラシを用い、各ブラシの通電パターンを変えることで回転速度を切替える電動モータがある。
この種の電動モータの作用を図11〜図13に基づいて説明する。図11〜図13は、アーマチュア100への通電パターンを示す説明図であり、図11は2つの陽極側ブラシ101,103と2つの陰極側ブラシ102,104との4つのブラシに通電した状態、図12は1つの陽極側ブラシ101と2つの陰極側ブラシ102,104との3つのブラシに通電した状態、図13は1つの陽極側ブラシ101と1つの陰極側ブラシ102との2つのブラシに通電した状態を示す。
図11〜図13に示すように、重ね巻き方式にて巻線が巻装されたアーマチュア100は、並列回路数が4つの回路(直列コイル)C1,C2,C3,C4となる。
4つのブラシ101,102,103,104に通電すると(図11参照)、回路C1にブラシ101からブラシ104に向かう電流I1が流れ、回路C2にブラシ101からブラシ102に向かう電流I2が流れ、回路C3にブラシ103からブラシ102に向かう電流I3が流れ、回路C4にブラシ103からブラシ104に向かう電流I4が流れる。すなわち、全ての回路C1,C2,C3,C4に電流が流れる。
これに対し、3つのブラシ101,102,104に通電すると(図12参照)、回路C1と回路C2のみに電流I1,I2が流れる。したがって、3ブラシ通電時のトルクは、4ブラシ通電時の半分のトルクしか得られない。
一方、2つのブラシ101,102に通電すると(図13参照)、各回路C1,C2,C3,C4に電流I1,I2,I3,I4’が流れる。
ここで、図13に示すように、回路C4に流れる電流I4’はブラシ104からブラシ103に向かって流れる。つまり、2ブラシ通電時の回路C4に流れる電流I4’は、4ブラシ通電時の回路C4に流れる電流I4と向きが逆になり、回路C1または回路C3のトルクと打ち消しあう。したがって、2ブラシ通電時のトルクは、4ブラシ通電時の1/3のトルクしか得られない。
このように、各ブラシ101,102,103,104の通電パターンを変えることで、有効導体数や通電電流を変えてトルクを変化させ、回転速度を切替えることができる。
特開2006−204070号公報
しかしながら、上述の従来技術のように並列回路数が4回路の4ブラシ付電動モータでは、各ブラシ101,102,103,104の通電パターンを変えることで回転速度を切替えることができるが、アーマチュアコアに巻線を集中巻き方式にて巻装した場合にあっては並列回路数が2回路になるため、ブラシの通電パターンを変えても回転速度を切替えることが困難であるという課題がある。
そこで、この発明は、巻線を集中巻き方式にて巻装した場合であっても、4つのブラシの通電パターンを変えることで回転速度の切替えを行うことができる電動モータ用アーマチュア、および電動モータを提供するものである。
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、8極の磁極を有するヨークと、前記ヨークに軸支される回転軸と、前記回転軸に取り付けられ径方向に向かって放射状に延び、巻線が集中巻き方式にて巻装される10個のティースと、該ティース間に形成され軸線方向に沿って延びる10個のスロットとを有するアーマチュアコアと、前記回転軸に前記アーマチュアコアと隣接して設けられ20枚のセグメントを周方向に配置したコンミテータと、前記セグメントを介して前記巻線に給電を行うための4つのブラシとを備え、前記4つのブラシを陽極側ブラシと陰極側ブラシとの組みを2つ備えて構成し、同極側同士のブラシを前記回転軸を中心にして対向配置すると共に、異極側同士のブラシを電気角で180度周方向に間隔をあけて配置している5相構造の電動モータであって、前記セグメントを前記回転軸を中心にして互いに点対称位置に存在する2つのセグメント群で構成し、各セグメント群の同電位となるセグメント同士を短絡部材で短絡すると共に、各セグメント群の隣接するセグメント間に接続された各相の巻線をそれぞれ前記回転軸を中心に対向配置されている同相同士のティースに直列に巻装したことを特徴とする。
このように構成することで、ティースに集中巻き方式にて巻線を巻装しても2つのセグメント群にそれぞれ各相の巻線が接続されるので、5相構造の2つの閉回路が形成される。すなわち、集中巻き方式にて構成されている閉回路は、並列回路数が2回路であるため、これを2つ設けることで並列回路数が4回路になる。
また、各相の巻線はそれぞれ回転軸を中心に対向配置されている同相同士のティースに直列に巻装されているので、ブラシの通電パターンを変化させて例えば、3つのブラシに通電した場合であっても通電される巻線のバランスが悪化することを防止できる。すなわち、ブラシの通電パターンを変化させることで、2つの閉回路のうち、一方の閉回路の巻線のみが通電される場合であってもこの通電されている巻線が一方に偏ることなく、回転軸を中心に互いに点対称位置に存在する各巻線に通電される。
請求項2に記載した発明は、nを2以上の自然数、aを1以上の自然数で、かつnよりも小さい数としたとき、前記各相の巻線は、この巻線に対応するティースで、かつ巻き始め端が接続されているセグメントの近傍に存在するティースにn−a回巻回し、該ティースと同じ相であって、かつその他のティースにn回巻回した後、再度巻き始めのティースにa回巻回するように構成されていることを特徴とする。
このように構成することで、各相のコイルを形成するにあたり、巻線の巻き始めとなるティースと巻き終わりとなるティースとを同じティースに設定するので、巻き始め端から巻き始めのティースに至るまでの配線長さ、および巻き終わりのティースから巻き終わり端に至るまでの配線長さを短く設定することができる。
請求項3に記載した発明は、前記各相の巻線の巻き始めの配線長さと巻き終わりの配線長さとがほぼ等しくなる位置に、対応するセグメントを設定して各セグメント郡を配設したことを特徴とする。
このように構成することで、各相の巻線の巻き始め端と巻き終わり端とをコンミテータの首下周りで捻った状態にすることができる。
請求項1に記載した発明によれば、ティースに集中巻き方式にて巻線を巻装しても2つのセグメント群にそれぞれ各相の巻線が接続されるので、5相構造の2つの閉回路が形成される。すなわち、集中巻き方式にて構成されている閉回路は、並列回路数が2回路であるため、これを2つ設けることで並列回路数が4回路になる。
このため、4ブラシ通電時、3ブラシ通電時、および2ブラシ通電時において、電流が流れる巻線の本数を変化させることができ、それぞれトルクの大きさを変化させることが可能になる。よって、巻線を集中巻き方式にて巻装した場合であっても、4つのブラシの通電パターンを変えることで回転速度の切替えを行うことができる。
また、各相の巻線はそれぞれ回転軸を中心に対向配置されている同相同士のティースに直列に巻装されているので、ブラシの通電パターンを変化させて例えば、3つのブラシに通電した場合であっても通電される巻線のバランスが悪化することを防止できる。すなわち、ブラシの通電パターンを変化させることで、2つの閉回路のうち、一方の閉回路の巻線のみが通電される場合であってもこの通電されている巻線が一方に偏ることなく、回転軸を中心に互いに点対称位置に存在する各巻線に通電される。
このため、通電巻線によるアーマチュアの振れ回りを低減することが可能になると共に、回転軸を中心に対向する相の電磁気バランスの差異や抵抗差によって生じる循環電流を低減させることが可能になる。
請求項2に記載した発明によれば、各相のコイルを形成するにあたり、巻線の巻き始めとなるティースと巻き終わりとなるティースとを同じティースに設定するので、巻き始め端から巻き始めのティースに至るまでの配線長さ、および巻き終わりのティースから巻き終わり端に至るまでの配線長さを短く設定することができる。このため、アーマチュアコアとコンミテータとの間の巻き太りを解消することができ、アーマチュアの小型化を図ることが可能になる。
請求項3に記載した発明によれば、コンミテータの首下周りに配索される巻線を捻った状態にすることができる。
このため、アーマチュアコアとコンミテータとの間の巻き太りを容易に解消することができ、アーマチュアをさらに小型化することが可能になる。
次に、この発明の第一実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。
図1に示すように、電動モータ1は、例えば、自動車のパワーウインドウモータ、ワイパモータ、およびファンモータ等に用いられる車両搭載用の直流モータであって、有底円筒形状のヨーク2内にアーマチュア3を回転自在に配置している。ヨーク2の内周面には周方向にセグメント型の永久磁石4が磁極を順番に変えながら8個固定されている。
アーマチュア3は、回転軸5に固定されたアーマチュアコア6と、アーマチュアコア6に巻装されたアーマチュアコイル7と、アーマチュアコア6の一端側に配置されたコンミテータ13とから構成されている。アーマチュアコア6は、リング状の金属板8を軸線方向に複数枚積層したものである。金属板8の外周部には軸線方向平面視で略T字状を有するティース9が放射状に10個形成されている。各ティース9には、U相、V相、W相、X相、Y相の5相が周回り方向にこの順で割り当てられている。
複数枚の金属板8を回転軸5に外嵌することにより、アーマチュアコア6の外周には隣接するティース9間に蟻溝状のスロット11が形成されている。スロット11は軸線方向に沿って延びており、周方向に沿って等間隔に10個形成されている。このスロット11間にはエナメル被覆の巻線12が巻装され、これによりアーマチュアコア6の外周に複数のアーマチュアコイル7が形成される。
コンミテータ13は回転軸5の一端に外嵌固定されている。コンミテータ13の外周面には、導電材で形成されたセグメント14が20枚取り付けられている。セグメント14は軸線方向に長い板状の金属片からなり、互いに絶縁された状態で周方向に沿って等間隔に並列に固定されている。
各セグメント14のアーマチュアコア6側の端部には、外径側に折り返す形で折り曲げられたライザ15が一体形成されている。ライザ15には、アーマチュアコイル7の巻き始め端部と巻き終わり端部となる巻線12が掛け回わされ、巻線12はヒュージングによりライザ15に固定されている。これにより、セグメント14とこれに対応するアーマチュアコイル7とが電気的に接続される。また、ライザ15には、同電位となるセグメント14同士に後述する接続線25a,25bが掛け回されてヒュージングにより固定され、同電位のセグメント14同士が短絡されている。
回転軸5の他端側は、ヨーク2に突出形成されたボス内の軸受け16によって回転自在に支持されている。一方、ヨーク2の開口端にはカバー17が設けられており、このカバー17の内側にはホルダステー18が取り付けられている。ホルダステー18には周方向に沿ってブラシホルダ19が4箇所設けられている。
ブラシホルダ19には、それぞれブラシ21がスプリング29を介して付勢された状態で出没自在に内装されている。これらブラシ21の先端部は、スプリング29によって付勢されているためコンミテータ13に摺接しており、外部からの電源がブラシ21を介してコンミテータ13に供給されるようになっている。
図2に示すように、ブラシ21は、陽極側ブラシ51a,52aと陰極側ブラシ51b,52bとの組みを2つ備えた4つのブラシ51a,51b,52a,52bで構成されている。そして、陽極側ブラシ51a,52a同士、および陰極側ブラシ51b,52b同士は互いに回転軸5を中心に対向配置されていると共に、陽極側ブラシ51a,52aと陰極側ブラシ51b,52bは周方向に45°間隔をあけて配置されている。すなわち、同極側同士のブラシは、機械角で180°、異極側同士のブラシは電気角で180°間隔をあけて配置されている。なお、陽極側ブラシ51a,52aと陰極側ブラシ51b,52bとの配置を互いに反対にしてもよい。
このように、永久磁石4が8個、つまり、磁極が8極、スロット11が10個、セグメント14が20枚設けられ、8極10スロット20セグメントの5相に構成された電動モータ1のアーマチュア3には、以下のように巻線12が巻装されてアーマチュアコイル7が形成されている。
図3、図4はアーマチュア3のセグメント14(ライザ15)とティース9を展開した図面であり、隣接するティース9間の空隙がスロット11に相当している。なお、以下の図面においては、各セグメント14、各ティース9、および巻装された巻線12にそれぞれ符号を附し、各ティース9にU相、V相、W相、X相、Y相をこの順で割り当てて説明する。
ここで、セグメント14は、回転軸5を中心にして互いに点対称位置に存在する第一セグメント群41と第二セグメント郡42との2つのセグメント郡41,42で構成され、各々セグメント群41,42には、同電位となるセグメント14同士を短絡する接続線25a,25bが接続されている。すなわち、1番セグメント14aから10番セグメント14dに至る間で第一セグメント群41を構成すると共に、11番セグメント14eから20番セグメント14hに至る間で第二セグメント群42を構成している。そして、第一セグメント群41のうち、同電位となる4つ置きのセグメント14(例えば、1番セグメント14aと6番セグメント14c)同士が接続線25aによって短絡されていると共に、第二セグメント郡42のうち、同電位となる4つ置きのセグメント14(例えば、11番セグメント14eと16番セグメント14g)同士が接続線25bによって短絡されている。
巻線12は、例えば、その巻き始め端30が第一セグメント群41の1番セグメント14aより巻き始められた場合、まず、1番セグメント14aのライザ15に掛け回された後、1番セグメント14aの近傍に存在する1−10番ティース9の間のスロット11aに引き込まれる。続いて、1番ティース9にn回(nは2以上の自然数であって、各ティース9に対する所望の巻回数)巻回された後、1−2番ティース9の間のスロット11bから巻線12が引き出される。
そして、5−6番ティース9の間のスロット11cに引き込んで1番ティース9と同相であって、かつ回転軸5を中心にして対向位置に存在する6番ティース9にn回巻回される。その後、巻線12は6−7番ティース9の間のスロット11dから引き出され、1番セグメント14aに隣接する2番セグメント14bに巻き終わり端40が接続される。これにより、1−2番セグメント14a,14b間にはU相の1番ティース9、および6番ティース9に直列にn回巻装されたU相のアーマチュアコイルUが形成される。
また、V相のアーマチュアコイルV、W相のアーマチュアコイルW、X相のアーマチュアコイルX、Y相のアーマチュアコイルYについてもそれぞれU相のアーマチュアコイルUと同様に巻線12を巻装し、この巻き始め端30、および巻き終わり端40を対応する第一セグメント郡41のセグメント14間に接続する。すると、第一セグメント郡41には、4極5スロットの5相(U,V,W,X,Y相)構造の第一閉回路H1が形成される(図4参照)。
一方、第二セグメント郡42の11番セグメント14eより巻き始められた巻線12は、11番セグメント14eのライザ15に掛け回された後、11番セグメント14eの近傍に存在する5−6番ティース9の間のスロット11cに引き込まれる。続いて、6番ティース9にn回巻回された後、6−7番ティース9の間のスロット11dから巻線12が引き出される。
そして、1−10番ティース9の間のスロット11aに引き込んで1番ティース9にn回巻回される。その後、巻線12は1−2番ティース9の間のスロット11bから引き出され、11番セグメント14eに隣接する12番セグメント14fに巻き終わり端40が接続される。これにより、11−12番セグメント14e,14f間にはU相の6番ティース9、および1番ティース9に直列にn回巻装されたU相のアーマチュアコイルU’が形成される。
また、V相のアーマチュアコイルV’、W相のアーマチュアコイルW’、X相のアーマチュアコイルX’、Y相のアーマチュアコイルY’についてもそれぞれU相のアーマチュアコイルU’と同様に巻線12を巻装し、この巻き始め端30、および巻き終わり端40を対応する第一セグメント郡42のセグメント14間に接続する。すると、第二セグメント郡42には、4極5スロットの5相(U’,V’,W’,X’,Y’相)構造の第二閉回路H2が形成される(図4参照)。
したがって、図5に示すように、コンミテータ13には、5相構造の第一閉回路H1と第二閉回路H2とが並列に接続されている状態となる。なお、図5は、各陽極側ブラシ51a,52aがそれぞれ1−2番セグメント14a,14b間と11−12番セグメント14e,14f間とに存在し、各陰極側ブラシ51b,52bがそれぞれ4番セグメント14iと14番セグメント14jに存在している場合の回路図を示すものであって、4つのブラシ51a,51b,52a,52b全てが通電されている状態を示している。
次に、図6〜図8に基づいて、この第一実施形態のアーマチュア3の作用について説明する。
図6に示すように、例えば、陽極側ブラシ51a,52aがそれぞれ1−2番セグメント14a,14b間、11−12番セグメント14e,14f間に存在し、陰極側ブラシ51b,52bがそれぞれ4番セグメント14i、14番セグメント14jに存在している場合、つまり、各閉回路H1,H2上に各々一対のブラシ51a,51b,52a,52bが存在している場合であって、これら全てを通電させた状態では、V,W,X,Y相の8つのアーマチュアコイルV,V’,W,W’,X,X’,Y,Y’に電流が流れる。
すなわち、1−2番セグメント14a,14b間に形成されたU相のアーマチュアコイルUと、11−12番セグメント14e,14f間に形成されたU相のアーマチュアコイルU’は、陽極側ブラシ51a,52aによって短絡された状態となる。これに対し、V相のアーマチュアコイルV,V’とX相のアーマチュアコイルX,X’には順方向(図6における時計回り)に電流が流れ、W相のアーマチュアコイルW,W’とY相のアーマチュアコイルY,Y’には逆方向(図6における反時計回り)に電流が流れる。
図7に示すように、3つのブラシを通電させた場合、つまり、例えば、図7において1−2番セグメント14a,14b間、11−12番セグメント14e,14f間に存在する陽極側ブラシ51a,52aと、2つのセグメント郡41,42のうちの第一セグメント郡41に存在している(4番セグメント14iに存在している)陰極側ブラシ51bの3つのブラシに通電した場合にあっては、第一閉回路H1のV,W,X,Y相のアーマチュアコイルV,W,X,Yのみに電流が流れる。すなわち、4つのブラシ51a,51b,52a,52bを通電する場合と比較して、電流が流れるティース9の数は同一となるが、これらのティース9に流れる電流値は、第二閉回路H2に電流が流れていないので約半分になる。
これは、2つのブラシを通電させた場合であっても、各閉回路H1,H2上、つまり、各セグメント郡41,42に各々一対のブラシ51a,51b,52a,52bが存在している場合であれば同じことがいえる。つまり、図7において1−2番セグメント14a,14b間に存在する陽極側ブラシ51aと4番セグメント14iに存在する陰極側ブラシ52bの2つのブラシ51a,52bに通電した場合であっても第一閉回路H1のV,W,X,Y相のアーマチュアコイルV,W,X,Yのみに電流が流れる。
しかしながら、図8に示すように、例えば、2つのブラシ51a,52bに通電し、且つこれら2つのブラシ51a,52bが9−10番セグメント14k,14l間と、12番セグメント14f上に存在するとき、つまり、一対のブラシ51a,52bが2つの閉回路H1,H2(2つのセグメント郡41,42)に跨って存在しているときは、何れのアーマチュアコイルU,U’,V,V’,W,W’,X,X’,Y,Y’にも電流が流れない、無通電状態となる。
したがって、上述の第一実施形態によれば、8極10スロット20セグメントの5相に構成された電動モータ1のアーマチュア3に5相集中巻きで4極5スロットの閉回路H1,H2を2つ形成することで並列回路数を合計4回路とすることができる。
このため4つのブラシ51a,51b,52a,52b全てを通電させたときには、例えば、V,W,X,Y相の8つのアーマチュアコイルV,V’,W,W’,X,X’,Y,Y’に電流が流れ、通常の8極10スロット集中巻き方式と同様のトルク(モータ特性)を得ることができる(図6参照)。一方、3つのブラシに通電させたときには、例えば、第一閉回路H1のV,W,X,Y相のアーマチュアコイルV,W,X,Yのみに電流が流れる。このため、3ブラシ通電時のトルクを4ブラシ通電時の半分のトルクとすることができる(図7参照)。
また、2つのブラシに通電させたときには、例えば、第一閉回路H1のV,W,X,Y相のアーマチュアコイルV,W,X,Yのみに電流が流れる状態(図7参照)と、何れのアーマチュアコイルU,U’,V,V’,W,W’,X,X’,Y,Y’にも電流が流れない、無通電状態(図8参照)とがある。このため、無通電状態の間、アーマチュア3の回転軸5は惰性で回転することになり、この結果、2ブラシ通電時は3ブラシ通電時よりもトルクが低減される。
すなわち、4つのブラシ51a,51b,52a,52bの通電パターンを変えることで電流が流れる巻線12の本数(アーマチュアコイル7の数)を変化させることができ、トルクの大きさを変化させることが可能になる。よって、巻線12を集中巻き方式でアーマチュアコア6に巻装した場合であっても、アーマチュア3の回転軸5の回転速度の切替えを行うことができる。
さらに、各相のアーマチュアコイルU,U’,V,V’,W,W’,X,X’,Y,Y’は、それぞれ回転軸5を中心に対向配置されている同相同士のティース9に直列に巻装されているので、ブラシ51a,51b,52a,52bの通電パターンを変化させても通電される巻線12のバランスが悪化することを防止できる。すなわち、図7に示すように、例えば、3つのブラシ51a,51b,52aを通電させ、第一閉回路H1のV,W,X,Y相のアーマチュアコイルV,W,X,Yのみに電流が流れる場合であっても通電される巻線12が一方に偏ることがなく、回転軸5を中心に互いに点対称位置に存在する同相のティース9に巻装されている巻線12の全てに電流が流れる。このため、通電される巻線12によるアーマチュア3の振れ回りを低減することが可能になると共に、回転軸5を中心に対向する相の電磁気バランスの差異や抵抗差によって生じる循環電流を低減させることが可能になる。
次に、この発明の第二実施形態を図1、図2を援用し、図9に基づいて説明する。なお、第一実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明する(以下の実施形態でも同様)。また、以下の実施形態において、電動モータ1は8極10スロット20セグメントの5相に構成されたものである点、コンミテータ13に摺接する4つのブラシ51a,51b,52a,52bは同極側同士が機械角で180°、異極側同士が電気角で180°間隔をあけて配置されている点等の基本的構成は前記第一実施形態と同様である。
ここで、第二実施形態においては、各相のアーマチュアコイルU,U’,V,V’,W,W’,X,X’,Y,Y’を形成するにあたり、巻線12の巻き始めとなるティース9と巻き終わりとなるティース9とが同じティース9に設定されている。
すなわち、例えば、巻線12の巻き始め端30が第一セグメント群41の1番セグメント14aより巻き始められた場合、まず、1番セグメント14aのライザ15に掛け回された後、1番セグメント14aの近傍に存在する1−10番ティース9の間のスロット11aに引き込まれる。続いて、1番ティース9にn−a回(aは1以上の自然数であって、かつnよりも小さい数)巻回し、主コイル71を形成する。
そして、巻線12を1−2番ティース9の間のスロット11bから引き出して5−6番ティース9の間のスロット11cに引き込む。引き続き、1番ティース9と同相であって、かつ回転軸5を中心にして対向位置に存在する6番ティース9にn回巻回する。その後、巻線12は6−7番ティース9の間のスロット11dから引き出され、再び1−10番ティース9の間のスロット11aに引き込まれる。そして、1番ティース9に巻線12をa回巻回し、副コイル72を形成する。
この後、巻線12は1−2番ティース9の間のスロット11bから引き出され、1番セグメント14aに隣接する2番セグメント14bに巻き終わり端40が接続される。これにより、U相の1番ティース9には、n−a回巻回された主コイル71とa回巻回された副コイル72とによって巻線12がn回巻回されていることになる。したがって、1−2番セグメント14a,14b間にはU相の1番ティース9、および6番ティース9に直列にn回巻装されたU相のアーマチュアコイルUが形成される。
また、V相のアーマチュアコイルV、W相のアーマチュアコイルW、X相のアーマチュアコイルX、Y相のアーマチュアコイルYについてもそれぞれU相のアーマチュアコイルUと同様に巻線12を巻装し、この巻き始め端30、および巻き終わり端40を対応する第一セグメント郡41のセグメント14間に接続する。これにより、第一セグメント郡41に4極5スロットの5相(U,V,W,X,Y相)構造の第一閉回路H1を形成する。
一方、第二閉回路H2の6,7,8,9,10番ティースに巻装される各相のアーマチュアコイルU’,V’,W’,X’,Y’もn−a回巻きの主コイル71とa回巻きの副コイル72とで構成する。そして、第二セグメント郡42の各セグメント14間に各相のアーマチュアコイルU’,V’,W’,X’,Y’の巻き始め端30、および巻き終わり端40を接続する。これにより、第二セグメント郡42に4極5スロットの5相(U,V,W,X,Y相)構造の第二閉回路H2を形成する。
したがって、上述の第二実施形態によれば、前述した第一実施形態と同様の効果を奏することができる。これに加え、各相のアーマチュアコイルU,U’,V,V’,W,W’,X,X’,Y,Y’を形成するにあたり、巻線12の巻き始めとなるティース9と巻き終わりとなるティース9とが同じティース9に設定されているので、巻き始め端30から巻き始めのティース9に至るまでの配線長さ、および巻き終わりのティース9から巻き終わり端40に至るまでの配線長さを短く設定することができる。このため、アーマチュアコア6とコンミテータ13との間の巻き太りを解消することができ、アーマチュア3の小型化を図ることが可能になる。
次に、この発明の第三実施形態を図10に基づいて説明する。
この第三実施形態にあっては、各相のアーマチュアコイルU,U’,V,V’,W,W’,X,X’,Y,Y’の巻き始めの配線長さと巻き終わりの配線長さとがほぼ等しくなるように各セグメント郡41,42を配設している。
すなわち、例えば、第一セグメント郡41を構成する1番セグメント14aは1番ティース9の近傍に配置せず、この1番ティース9の近傍から周回り方向にずれた位置に配置されている。そして、各セグメント14は、1番セグメント14aから周回り方向に順に2〜20番セグメント14が配置されている。
このため、第一セグメント郡41は、1番ティース9から5番ティース9に至るまでの間の部位に対応するように配置されておらず、周回り方向にずれて配置された状態になっていると共に、第二セグメント郡42は、11番ティース9から20番ティース9に至るまでの間の部位に対応するように配置されておらず、周回り方向にずれて配置された状態になっている。
したがって、上述の第三実施形態によれば、前述した第一実施形態と同様の効果を奏することができる。これに加え、各セグメント郡41,42が対応するティース9に対して周回り方向にずれて配置されているので、コンミテータ13の首下周り、つまり、アーマチュアコア6とコンミテータ13との間に配索される巻線12を捻った状態にすることができる。このため、アーマチュアコア6とコンミテータ13との間の巻き太りを容易に解消することができ、アーマチュア3をさらに小型化することが可能になる。
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
また、巻線12の巻き始め端30、および巻き終わり端40がそれぞれ接続されるセグメント14は上述の実施形態に限られるものではなく、同じ閉回路内、つまり、対応するセグメント郡41,42であって、かつ接続線25a,25bによって短絡されている同電位のセグメント14であればよい。すなわち、上述の実施形態では、例えば、第一閉回路H1のU相のアーマチュアコイルUの巻き終わり端40が2番セグメント14bに接続されている場合について説明した。しかしながら、このアーマチュアコイルUの巻き終わり端40を同じセグメント郡41の7番セグメント14に接続してもよい。
本発明の実施形態における電動モータの縦断面図である。 本発明の実施形態における電動モータのブラシ配置図である。 本発明の第一実施形態におけるアーマチュアコイルの巻装状態を示すアーマチュアの展開図である。 本発明の第一実施形態におけるアーマチュアコイルの巻装状態を示すアーマチュアの展開図である。 本発明の実施形態におけるアーマチュアの回路図である。 本発明の第一実施形態におけるアーマチュアの作用説明図である。 本発明の第一実施形態におけるアーマチュアの作用説明図である。 本発明の第一実施形態におけるアーマチュアの作用説明図である。 本発明の第二実施形態におけるアーマチュアコイルの巻装状態を示すアーマチュアの展開図である。 本発明の第三実施形態におけるアーマチュアコイルの巻装状態を示すアーマチュアの展開図である。 従来の電動モータにおけるアーマチュアへの通電パターンを示す説明図である。 従来の電動モータにおけるアーマチュアへの通電パターンを示す説明図である。 従来の電動モータにおけるアーマチュアへの通電パターンを示す説明図である。
符号の説明
1 電動モータ
2 ヨーク
3 アーマチュア
4 永久磁石(磁極)
5 回転軸
6 アーマチュアコア
7,U〜W’ アーマチュアコイル(コイル)
9 ティース
11,11a〜11d スロット
12 巻線
13 コンミテータ
14、14a〜14m セグメント
21 ブラシ
25a,25b 接続線(短絡部材)
30 巻き始め端
40 巻き終わり端
41 第一セグメント郡
42 第二セグメント郡
51a,52a 陽極側ブラシ
51b,52b 陰極側ブラシ
71 主コイル
72 副コイル
H1 第一閉回路
H2 第二閉回路

Claims (3)

  1. 8極の磁極を有するヨークと、
    前記ヨークに軸支される回転軸と、
    前記回転軸に取り付けられ径方向に向かって放射状に延び、巻線が集中巻き方式にて巻装される10個のティースと、該ティース間に形成され軸線方向に沿って延びる10個のスロットとを有するアーマチュアコアと、
    前記回転軸に前記アーマチュアコアと隣接して設けられ20枚のセグメントを周方向に配置したコンミテータと、
    前記セグメントを介して前記巻線に給電を行うための4つのブラシとを備え、
    前記4つのブラシを陽極側ブラシと陰極側ブラシとの組みを2つ備えて構成し、
    同極側同士のブラシを前記回転軸を中心にして対向配置すると共に、異極側同士のブラシを電気角で180度周方向に間隔をあけて配置している5相構造の電動モータであって、
    前記セグメントを前記回転軸を中心にして互いに点対称位置に存在する2つのセグメント群で構成し、
    各セグメント群の同電位となるセグメント同士を短絡部材で短絡すると共に、
    各セグメント群の隣接するセグメント間に接続された各相の巻線をそれぞれ前記回転軸を中心に対向配置されている同相同士のティースに直列に巻装したことを特徴とする電動モータ。
  2. nを2以上の自然数、aを1以上の自然数で、かつnよりも小さい数としたとき、
    前記各相の巻線は、この巻線に対応するティースで、かつ巻き始め端が接続されているセグメントの近傍に存在するティースにn−a回巻回し、
    該ティースと同じ相であって、かつその他のティースにn回巻回した後、再度巻き始めのティースにa回巻回するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動モータ。
  3. 前記各相の巻線の巻き始めの配線長さと巻き終わりの配線長さとがほぼ等しくなる位置に、対応するセグメントを設定して各セグメント郡を配設したことを特徴とする請求項1に記載の電動モータ。


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