JP5044174B2 - 改質水を含有する細胞増殖促進剤 - Google Patents
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Description
活性酸素は、体内に吸い込んだ酸素を利用してエネルギーを生み出す過程で生成すると言われており、生体防御では重要な働きをしている。一方で過剰な活性酸素は、老化,動脈硬化,脳卒中,心筋梗塞,ガンといった疾病の原因になると言われており、生体に有害な作用を及ぼすことが最近の研究で明らかにされつつある。このように、酸化ストレスは様々な疾病の進展、発症、増悪に関与していることが明らかになってきている。
このような酸化ストレスを抑制するものとして、赤ワインやお茶に含まれるポリフェノール、あるいはビタミンCなどが知られている。これらは抗酸化作用を有しているため、老化予防,動脈硬化の予防,免疫力を高める,肝臓機能低下の予防といった作用があり、医療、保健、健康などの分野に応用されている。
従来、水に抗酸化機能を付与する技術として、例えば以下の様なものが知られている。
(特許文献1)には、「原水に水素をバブリングや加圧充填して溶存させて水素溶存水を製造する過程で、又は、水の電気分解によって水素溶存水を製造する過程で、PtやPdコロイドなどの触媒を作用させる水処理方法及び抗酸化水」が開示されている。
(特許文献2)には、「常温常圧下でpHが6.5〜9であり、酸化還元電位が−900〜−150mVである中性還元水からなる抗酸化性水」が開示されている。
(特許文献3)には、「二酸化炭素等を溶解させた酸性水にドロマイト等を溶解し、これを電解法より得られたアルカリ還元水で希釈することにより抗酸化性の機能を有するミネラル水を調製する製造法」が開示されている。
(1)特許文献1乃至3に開示の技術は、原水を電気分解したり原水に水素ガスを溶解したりすることによって水に抗酸化機能を付与するものであるため、水の電気分解等による改質処理のために電気エネルギー等を要し、省エネルギー性に欠けるという課題を有していた。
(2)水の電解処理によって製造された還元水がアルカリ性を有していたり、低い酸化還元電位を有していると、個人差はあるが、飲用した場合に血中のカリウム濃度を上昇させたり便秘や下痢症状を呈したりすることがあり、人体に負担をかけることがあるという課題を有していた。
また本発明は、線維芽細胞などの動物由来の細胞に対し非常に強い抗酸化作用を有し、酸化ストレスが関与する疾患の症例に対して抑制的に作用し優れた抗酸化ストレス作用を有する抗酸化ストレス剤を提供することを目的とする。
また本発明は、線維芽細胞等の動物由来の細胞に対する優れた増殖促進作用を有し、創傷治癒の促進等に優れた細胞増殖促進剤を提供することを目的とする。
また本発明は、植物や魚介類等に対して高い鮮度保持性を有し、淡水・海水魚等の魚介類の飼育、養殖などに使用することによって魚介類の生理活性及び免疫力増強をも期待できる活力増強剤を提供することを目的とする。
本発明の請求項1に記載の改質水を含有する細胞増殖促進剤は、原料水中で複数のセラミック粒子を0.03〜0.2m/sの条件で流動させ衝突させることによる外的刺激が加えられて改質された改質水を主成分として含有する動物の細胞に対する細胞増殖促進剤であって、
前記セラミック粒子が、(1)BET法による比表面積が0.01〜1m 2 /g、かつ、見掛け密度が1.6〜3.5g/cm 3 、粒径が0.1〜10mmに形成され、(2)シリカ、アルミナ、アルカリ金属、アルカリ土類金属の酸化物を含有するとともに、シリカとアルミナの割合が、シリカ100重量部に対しアルミナ10〜95重量部である鉱石粉末を造粒し、焼成し製造したものであり、
重クロロホルム中、内部基準にテトラメチルシランを使用して測定した1H−核磁気共鳴スペクトル(400MHz)が、次の(a)乃至(d)の内いずれか1以上を有するとともに、前記改質水のスピン−スピン緩和時間が前記原料水のスピン−スピン緩和時間に対して5〜40%短縮されている改質水を主成分として含有している構成を有している。
(a)主吸収ピークより低磁場側に、前記原料水には存在しなかった吸収ピークが出現したスペクトル
(b)前記原料水の主吸収ピークより高磁場側に存在した少なくとも一つの吸収ピークが消失したスペクトル
(c)前記原料水の主吸収ピークより高磁場側に存在した少なくとも一つの吸収ピークが低磁場側にシフトしたスペクトル
(d)主吸収ピークの半値幅が、前記原料水の主吸収ピークの半値幅より増大したスペクトル
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)本発明者らは、1H−核磁気共鳴スペクトル(400MHz)に現れるように構造を変化させた水が抗酸化性を発現し、線維芽細胞等の動物由来の細胞に対する酸化ストレスの抑制、線維芽細胞等の動物由来の細胞に対する増殖促進作用、植物や魚介類等の活力増強、動物の整腸効果といった特異的な効果が得られることを見出し、本発明を完成させた。1H−核磁気共鳴スペクトル(400MHz)の主吸収ピークより低磁場側に原料水には存在しなかった吸収ピークが出現したり、主吸収ピークの半値幅が原料水の主吸収ピークの半値幅より増大したことは、プロトンの数が増えたことを示している。これは水素結合性が強くなった、又は水素結合数が多くなった状態であり、強固で大きな水分子集団が形成され水分子が構造化された結果であると推察される。このような性質の改質水が酸化剤を取り囲めば、酸化剤が他の物質から電子を奪って酸化させる酸化反応を抑制することができ、改質水は抗酸化性を発現する。
(2)原料水の主吸収ピークより高磁場側に存在した吸収ピークが低磁場側にシフトしたり消失したりすることは、電子が水素の原子核を遮蔽する度合が原料水より改質水のほうが小さくなっており、水素の原子核の回りの電子密度が減少していることを示している。このため強固で大きな水分子集団が形成され易くなるので、このような性質の改質水が酸化剤を取り囲めば、酸化剤が他の物質から電子を奪って酸化させる酸化反応を抑制することができ、改質水は抗酸化性を発現する。
(3)水の構造を変化させて抗酸化性を付与しているので、改質水を摂取した人体が負担を受けることなく、線維芽細胞等の動物由来の細胞に対する酸化ストレスの抑制、線維芽細胞等の動物由来の細胞に対する増殖促進作用、植物や魚介類等の活力増強や鮮度の保持、動物の整腸効果といった特異的な効果を得ることができる。
(4)原料水に外的刺激が加えられて改質されているので、水の電気分解等による改質処理のような多大なエネルギーを必要とせず、省エネルギー性に優れる。
(5)はっきりとした理由は不明であるが、複数のセラミック粒子を原料水の中で流動させ衝突させることで水を活性化し改質することができるので、電解処理のような多大なエネルギーが不要であり、またセラミック粒子は繰り返し使用できるので、改質水の製造コストを抑えることができ改質水の生産性に優れる。
(6)改質水は線維芽細胞等の動物由来の細胞に対する増殖促進作用を有しているので、
創傷治癒の促進等に優れる。
飲料水として用いられるときは、水道水や地下水等が好適に用いられる。点滴,注射,透析,創傷治癒等の医療用や化粧料として用いられるときは、イオン交換水や蒸留水等が好適に用いられる。動物や植物の活力増強剤として用いられるときは、動物や植物の種類に応じて、工業用水,雨水,河川水,生活排水,産業排水,海水等が好適に用いられる。必要に応じ、濾過や浄化等を行った後、用いることもできる。
なお、スピン−スピン緩和時間(T2)の短縮率(原料水の緩和時間をTa、改質水の緩和時間をTbとしたときの(Ta−Tb)/Taを短縮率とする)が7%より小さくなるにつれ、原料水が十分改質されておらず抗酸化性が乏しくなる傾向がみられ、30%を超えるにつれ長時間の改質処理時間や改質操作を要し改質水の処理効率が低下する傾向がみられる。特に、5%未満になるか40%を超えると、これらの傾向が著しいためいずれも好ましくない。
シリカとアルミナの割合は、シリカ100重量部に対しアルミナが10〜95重量部好ましくは20〜80重量部が好適に用いられる。アルミナが20重量部より少なくなるにつれセラミック粒子の機械的強度が低下する傾向がみられ、80重量部より多くなるにつれ、所定の機械的強度を得るのに必要な焼成温度が高くなり省エネルギー性に欠ける傾向がみられる。特に、10重量部より少なくなるか95重量部より多くなると、これらの傾向が著しくなるためいずれも好ましくない。
比表面積が0.01m2/gより小さくなるにつれ原料水との接触面積が減少して改質効率が低下する傾向がみられ、1m2/gより大きくなるにつれセラミック粒子が脆弱になり粒子同士の衝突の際に磨耗し易く耐久性が低下する傾向がみられる。
見掛け密度が1.6g/cm3より小さくなるにつれ、粒子の機械的強度が低下し粒子同士の衝突の際に磨耗したり欠けたりする傾向や、粒子同士が水中で衝突した後に沈降し難く流動し難くなる傾向がみられ、3.5g/cm3より大きくなるにつれ沈降速度が速いため粒子が水中で流動し難く流動状態が低下し水の改質効果が低下する傾向がみられる。
粒径が0.1mmより小さくなるにつれ、流動するセラミック粒子の運動エネルギーが小さいためセラミック粒子が衝突した際の改質効果が低下する傾向がみられ、10mmより大きくなるにつれ、セラミック粒子を流動化させるのに必要なエネルギーが増加するとともに、粒子同士の衝突点が少なくなり粒子の衝突による改質効果が低下する傾向がみられる。
また、水道の元栓付近にセラミック粒子を充填した処理器を設置し、または水道蛇口開口部に該処理器を設置し、水流によってセラミック粒子を流動して相互摩擦させ衝突を起こさせ、セラミック粒子と水流界面の接触等を増やすことにより、改質水を製造することができる。処理器への水の導入方向は、原則として下方から上方へ向かう方向が望ましいが、水中で連続してセラミック粒子が流動し相互摩擦され衝突する水流環境が達成されていれば、どの方向より導入し取り出しても構わない。例えば、処理器の中にセラミック粒子を十分流動できる空所を設けて装填した上昇流動層方式、層内でセラミック粒子と原料水とを強制的に流動衝突させる強制循環方式等が用いられる。また、処理器の原料水流入部に整流板を設置したり、改質水の流出部の大きさ,形状,それらの位置を適宜選択することにより、原料水を渦流にしたり乱流にしたりするなどの方法も有効である。
(1)改質水を主成分としているので、線維芽細胞などの動物由来の細胞に対し非常に強い抗酸化作用を有し、酸化ストレスが関与する疾患の症例に対して抑制的に作用し優れた抗酸化ストレス作用を有する。
抗酸化ストレス剤は、直接体外から作用させる、点滴などの溶媒として用いる、飲料水として用いるなどの方法で摂取することができ、飲用、点滴用、注射用、透析用、創傷治癒用、手術用、化粧料等として用いることができる。体外から作用させた場合には、改質水は浸透性にも優れるため、皮膚に浸透して酸化刺激に常に晒されている皮膚の老化の予防やアトピー性皮膚炎の改善が期待される。また、皮膚のメラニン色素沈着の防止,改善など、ビタミンCの効能と同様の効果が期待される。体内での作用としては酸化ストレスが重要な病因の一つであると言われている動脈硬化,肺気腫,肺繊維症,喘息,糖尿病,すべての臓器の虚血再環流障害,白内障及び発癌の抑制,あるいは高圧酸素療法における副作用の防止に効果があると考えられる。化粧料用としては、改質水の低刺激性・保水性をその主たる効能とする化粧水などの分野で優れた効果を発揮することが期待される。
細胞増殖促進剤は、直接体外から作用させる、点滴などの溶媒として用いる、飲料水として用いるなどの方法で摂取することができ、飲用、点滴用、注射用、透析用、創傷治癒用、手術用、化粧料等として用いることができる。
細胞増殖促進剤には、改質水の他、用途に応じ、例えば増粘剤、等張化剤、緩衝化剤、保存剤等を加えることができる。
(1)強い抗酸化作用を有する改質水を主成分としているので、植物や魚介類に対して活力増強作用を有し、収穫後の植物に対して高い鮮度保持性を有する。
活力増強剤としては、養液栽培の植物体に与えると植物体の活力を高めることができ、収穫後の植物体の水分の保持力を高め鮮度を長期間維持できる。また、切花等の植物体に吸水させることで植物体を長持ちさせることができる。また、活魚・軟体動物・甲殻類等の魚介類の飼育・養殖や、運搬したり保存したりするときの製氷用や浸漬用の液体として用いることで、魚介類を衰弱させることなく生育させ輸送することができる。
なお、活力増強剤には、用途に応じ、改質水の他、肥料、栄養剤等を加えることができる。
請求項1に記載の発明によれば、
(1)水の構造を変化させて抗酸化性を付与しているので、改質水を摂取した人体が負担を受けることなく、線維芽細胞等の動物由来の細胞に対する酸化ストレスの抑制、線維芽細胞等の動物由来の細胞に対する増殖促進作用、植物や魚介類等の鮮度の保持や活力増強、動物の整腸効果といった特異的な効果を得ることができ、植物鮮度保持効果、動物の整腸効果、発毛・増毛効果、線維芽細胞に対する酸化ストレスの抑制のみならず、酸化ストレスが関与する疾患、即ち、体外からの作用としては皮膚の老化予防、アトピー性皮膚炎の改善、皮膚のメラニン色素沈着の防止、改善などに、動脈硬化、肺気腫、肺繊維症、喘息、糖尿病、すべての臓器の虚血再環流障害、白内障及び発癌の抑制、あるいは、高圧酸素療法における副作用の防止などに効果があると考えられる改質水を含有する細胞増殖促進剤提供することができる。
(2)原料水に外的刺激が加えられて改質されているので、水の電気分解等による改質処理のような多大なエネルギーを必要とせず、省エネルギー性に優れた改質水を含有する細胞増殖促進剤提供することができる。
(3)電解処理のような多大なエネルギーが不要であり、またセラミック粒子は繰り返し使用できるので、改質水の製造コストを抑えることができ生産性に優れた改質水を含有する細胞増殖促進剤提供することができる。
(4)線維芽細胞等の動物由来の細胞に対する優れた増殖促進作用を有し、創傷治癒の促進等に優れた細胞増殖促進剤を提供することができる。
(実施例1)
(セラミック粒子の製造)
SiO2:70wt%、Al2O3:11.9wt%、Na2O:4.79wt%、CaO:2.43wt%、Fe2O3:3.19wt%、K2O:4.17wt%、その他1wt%未満のMg、Cu、Snなどを含む天然鉱石を粒径8μm以下に微粉砕し、この微粉末をエタノールと共にボールミルにいれ、転動し、更に、微粉化と同時に混練した。この混練物をピン回転式造粒装置で遠心力が10000Gとなる条件で1〜2時間回転させ、エタノールを揮発させながら球形に造粒成形した。ピン回転式造粒装置とは、混練物を所定サイズの粒子に造粒する装置である。この造粒物を耐熱容器に充填して電気炉に入れ、空気雰囲気下又は不活性ガス雰囲気中で1150〜1190℃焼結した。得られた焼結体は、褐色光沢を有する硬質の粒径約3mmの球状粒子であり、見掛け密度は2.3g/cm3であった。また、その表面の比表面積はBET法で0.47m2/gであった。
製造したセラミック粒子を、ガラス製スクリュー管瓶(50ml)の内容積25%となるように充填した。該スクリュー管瓶に原料水である純水を内容積60%となるよう導入した後、蓋を閉め、セラミック粒子が水中で0.03〜0.2m/sの速度で流動し、相互摩擦、衝突するよう該スクリュー管瓶を数回振って改質水を得た。直ちに瓶の蓋を開けて改質水を採取し、採取直後の改質水と原料水の1H−核磁気共鳴スペクトル測定(400MHz)を実施した。
なお、原料水の純水は、香川県さぬき市の水道水を純水製造装置(ミリポア社製Milli-Q Academic A10)を用いて製造したものである。
核磁気共鳴スペクトルの測定装置はJEOL製JNM−ECA400、測定条件は測定温度;25℃、測定モード;single pulse、パルス幅;5.6μs(45°)、パルス待時間;5.0sec、積算回数;8回、ケミカルシフト;基準物質として、テトラメチルシランを少量添加した重クロロホルム溶液を2重管外側に用い、テトラメチルシランのプロトンシグナルを基準ピーク(0ppm)、ロックシグナル;重水であった。
図1(a)は改質水の1H−核磁気共鳴スペクトルであり、図1(b)は原料水の1H−核磁気共鳴スペクトルである。
原料水は、図1(b)に示すように、4.67ppmの位置にほぼ1本の主吸収ピークを示した。これに対し、改質水は、図1(a)に示すように、低磁場側である4.671ppmの位置に明確で大きな吸収ピークが新たに出現した。また、これらの吸収ピークが重なって、改質水の主吸収ピークの半値幅が、原料水の主吸収ピークの半値幅より増大した。このことは、改質水が水素結合性の強いまたは量的に水素結合数が多い状態に変化したことを示していると推察される。
原料水を静岡県富士市の水道水を使用した以外は実施例1と同様にして、実施例2の改質水を製造した。改質水を製造した直後に瓶の蓋を開けて改質水を採取し、改質水と原料水の1H−核磁気共鳴スペクトルを測定した。測定は、外部標準としてTMSクロロホルム溶液を2重管外側に用い、内部管に改質水または原料水を入れ、JEOL(株)製JNM-LA400を用いて行った。
測定条件は測定温度;25℃、測定モード;single pulse、パルス幅;5.0μs(45°)、パルス待時間;2.90sec、積算回数;100回、ケミカルシフト;TMS−0ppmである。
図2(a)は改質水の1H−核磁気共鳴スペクトルであり、図2(b)は原料水の1H−核磁気共鳴スペクトルである。
原料水は、図2(b)に示すように、主吸収ピークが4.673ppmに、副吸収ピークが4.670ppmに、さらに高磁場側(4.662ppm、4.658ppm)に明確なショルダーピークが存在する。これに対し、改質水は、図2(a)に示すように、主吸収ピークより高磁場側にあったショルダーピークが消失し、4.673ppm、4.670ppmの2つの吸収ピークを有するスペクトルに変化した。このことは、水素の原子核の回りの電子密度が減少していることを示している。このため強固で大きな水分子集団が形成され易く、水分子の構造化が容易な状態になったものと推察される。
実施例1で説明したセラミック粒子の製造方法と同様の方法で、粒径約2mmの球状のセラミック粒子を製造した。このセラミック粒子10gを容積が100mlのポリプロピレン製の容器に入れるとともに、「Milli-Q SP UFシステム(日本ミリポア株式会社製)」を使用して水道水から製造したミリポア水100mlを原料水として容器に入れた。密栓した後、セラミック粒子が水中で0.03〜0.2m/sの速度で流動するように1秒間に1回の頻度で容器を上下に大きく振とうして、セラミック粒子を衝突させ原料水を改質した。振とう前の原料水、振とう5秒後、10秒後、60秒後、300秒後の改質水の1H−パルス核磁気共鳴のCPMG法におけるスピン−スピン緩和時間(T2)を測定した(実施例)。
スピン−スピン緩和時間の測定は、パルス核磁気共鳴装置(JEOL製JNM−MU25A)の試料管に、所定量の改質水または原料水を入れて行った。測定条件は、測定温度;30℃、観測周波数;25MHz、測定モード;CPMG法、パルス幅;Pw1…2.1μs,Pw2…4.0μs、パルス待時間;15秒、積算回数;4、Loop;500であった。
比較のため、同じ大きさの容器にセラミック粒子を入れずに前述のミリポア水(原料水)だけを入れて振とうした場合の、300秒後の水のスピン−スピン緩和時間(T2)も測定した(比較例)。
図3は実施例と比較例の振とう時間とスピン−スピン緩和時間との関係を示す図である。
スピン−スピン緩和時間(T2)の測定の結果、原料水の緩和時間(Ta)は2.35秒であったのに対し、実施例の改質水の緩和時間(Tb)は、振とう5秒後では2.14秒であり、原料水の緩和時間に対する短縮率((Ta−Tb)/Ta)は約9%であった。振とう300秒後の改質水の緩和時間(Tb)は1.82秒であり、原料水の緩和時間に対する短縮率は約23%であった。一方、比較例では、300秒後の緩和時間は2.25秒であり、原料水の緩和時間に対する短縮率は、わずか4.3%であった。
なお、振とう5秒後の改質水の1H−核磁気共鳴スペクトルは図1(a)と同様のスペクトルであり、原料水の1H−核磁気共鳴スペクトルは図1(b)と同様のスペクトルであった。また、振とう時間が増加するにつれ低磁場側にみられる吸収ピークが、より低磁場側にシフトする傾向がみられた。
以上のように本実施例によれば、改質水は1H−パルス核磁気共鳴のCPMG法におけるスピン−スピン緩和時間(T2)を短縮させることができ、これは改質水が水素結合性の強いまたは量的に水素結合数が多い状態に変化し水分子が構造化されたことを示していると推察される。
(改質水の製造)
水道水から製造した前述のミリポア水を原料水として、容積が1000mlのポリプロピレン製の容器に500ml入れ、さらに実施例1で得られたセラミック粒子10gを入れて密栓した後、セラミック粒子が水中で0.03〜0.2m/sの速度で流動するよう容器を上下に大きく20回振とうすることで、セラミック粒子同士を衝突させ改質水を製造した。対照水としては、原料水のミリポア水を用いた。なお、改質水の1H−核磁気共鳴スペクトルは図1(a)と同様のスペクトルであり、原料水の1H−核磁気共鳴スペクトルは図1(b)と同様のスペクトルであった。また、パルス核磁気共鳴装置(JNM−MU25A)(CPMG法)を用いて改質水と原料水の1H−パルス核磁気共鳴のスピン−スピン緩和時間を測定し、原料水の緩和時間(Ta)に対する改質水の緩和時間(Tb)の短縮率((Ta−Tb)/Ta)を求めたところ、短縮率は11%であった。
セラミック粒子が水中で0.02m/s以下の速度で流動するように容器を緩やかに振とうした以外は実施例4と同様にして、比較例1の水を得た。比較例1の水の1H−核磁気共鳴スペクトルは図1(b)と同様のスペクトルであった。また、スピン−スピン緩和時間の短縮率は2%であった。
セラミック粒子が水中で0.3m/s以上の速度で流動するように容器を激しく振とうした以外は実施例4と同様にして、比較例2の水を得た。比較例2の水の1H−核磁気共鳴スペクトルは図1(b)と同様のスペクトルであった。また、スピン−スピン緩和時間の短縮率は2%であった。
実施例4の改質水、比較例1,2の水及び対照水(原料水)に培養液粉末{イーグルMEM培地粉末(Minimum Essential Medium)}を溶解した後、オートクレーブにかけ滅菌し、改質水培養液、比較例1,2の培養液及び対照水培養液を作成した。
改質水培養液、比較例1,2の培養液及び対照水培養液を使用して線維芽細胞株であるTIG3−20を培養した。
まず、96wellの細胞培養プレートを用い、10,000個/wellの細胞を対照水培養液(200 μl)で24時間培養し定着させた培養液を得た。次に、培養液を(1)対照水培養液のみ(対照水培地)、(2)対照水培養液に50μMの過酸化水素(H2O2)を加えたもの、(3)改質水培養液のみ(改質水培地)、(4)改質水培養液に50μMの過酸化水素(H2O2)を加えたもの、(5)比較例1の培養液に50μMの過酸化水素を加えたもの、(6)比較例2の培養液に50μMの過酸化水素を加えたものの6群(それぞれn=16)で培養した。24,48,72時間後に細胞数の計測を行うため、それぞれのwellに青色色素である5mMのMTT(3-(4,5-Dimethyl-2-thiazolyl)-2,5-diphenyl-2H tetrazolium bromide)を10 μl加え、37℃、4時間培養後、培養液を吸引除去し、DMSO(Dimethyl Sulfoxide) を100 μl 加え細胞を溶解し、室温で10分間振とうした後、吸光度(570 nm)を測定した。測定した吸光度は統計処理し、ANOVA及びBonferroni検定を用いて多群間比較を行った。
図4は、改質水培地及び対照水培地への過酸化水素の負荷の有無と吸光度(24時間後)との関係を示す図である。
生存している細胞は一定量のMTTを細胞内に取り込むため、生存細胞数と吸光度は正の直線的相関関係をもつ。このため、吸光度を測定し多群間比較を行うことで、改質水の細胞増殖作用や抗酸化作用が評価できる。
図4に示すように、過酸化水素の負荷がない場合(H2O2(−))、24時間培養後の吸光度は対照水培養液のみでは 0.225 ± 0.025であり、改質水培養液では0.323 ± 0.048であり、有意差をもって(p<0.01)改質水培養液のほうが高く、改質水に細胞増殖促進作用のあることが示された。
(抗酸化作用の評価)
過酸化水素を負荷した場合(H2O2(+))、対照水培養液では、ほとんどの細胞が死滅しているのが顕微鏡下で観察され、吸光度も 図4に示すように、0.022 ± 0.014 と極めて低くなった。同様に、比較例1及び比較例2の培養液に過酸化水素を加えたものでも、ほとんどの細胞が死滅しているのが顕微鏡下で観察された。一方、改質水培養液では多くの細胞が生き残り、吸光度は 0.243 ± 0.131 と対照水培養液に過酸化水素を負荷した場合に比して、有意に(p<0.001)高値であった。改質水培養液に過酸化水素を負荷した場合(改質水(H2O2(+))、対照水培養液で過酸化水素を負荷しない群(対照水(H2O2(−))との間には有意差が認められなかった。なお、48時間及び72時間の培養でも同様の結果が得られた。
以上のように、本実施例によれば、改質水は優れた抗酸化ストレス作用と細胞増殖促進作用を有していることが明らかになった。
(細胞増殖能の評価)
水道水から製造した前述のミリポア水に培養液粉末{イーグルMEM培地粉末(Minimum Essential Medium)}を溶解した後、オートクレーブにかけ滅菌したものに、濃度10%になるようにウシ胎児血清を加えた細胞培養液を作成した。この細胞培養液を用いて、線維芽細胞株であるTIG3−20を培養した。まず、96wellの細胞培養プレートを用い、5,000個/wellの細胞を細胞培養液(200μl)で24時間培養し定着させた。
次に、細胞を対照水培養液と改質水培養液に分けて培養(それぞれ、n=16)を開始し、24,48,72,96,120,124時間後に細胞数の増加を比較した。なお、対照水培養液は、水道水から製造した該ミリポア水に培養液粉末{イーグルMEM培地粉末(Minimum Essential Medium)}を溶解した後、オートクレーブにかけ滅菌した培養液であり、改質水培養液は、実施例4で得た改質水に同様の培養液粉末を溶解した後、オートクレーブにかけ滅菌した培養液である。
細胞数は血球計算板を用いて算定した。なお、細胞が弱って死滅することを避けるため、培養開始72時間後に、対照水培養液及び改質水培養液をそれぞれ新しいものと交換した。
図5は、改質水培養液及び対照水培養液で培養した細胞数の経時変化を示す図である。
図5から明らかなように、培養開始72時間後より、改質水培養液で培養した実施例の線維芽細胞数が、比較例の対照水培養液で培養した線維芽細胞数より有意に高く(p<0.01)、改質水に細胞増殖促進作用のあることが示された。
以上のように、本実施例によれば、改質水は優れた細胞増殖促進作用を有していることが明らかになった。このことから、改質水は創傷治癒の促進作用や細胞の生存環境の改善作用が期待できることがわかった。
(活力増強剤としての評価)
インキュベータ内(蛍光灯20W3本を使用、室温25℃)に恒温槽(型式:T−22L)を設置して、その中の養液栽培装置(縦53cm×横36cm×高さ19cm)の容器上に定植パネル(定植孔直径2.5mm、孔間隔2.0cm ×3.5cm、孔数40)を置き、送水ポンプ(流量10L/分)で培養液を循環供給させる方式により、コマツナ(夏楽天・タキイ交配)苗の根による吸収比較を行った。苗は水道水で生育させたものを用い、培養液は水道水にみかど水耕1号、2号を配合して初期pHを6.0、導電率を3.0dS/mに調整した原料水を、実施例1で得られたセラミック粒子と容積1Lのポリプロピレン製の容器に入れ、毎秒1回上下に往復する振とう機を使って5分間振とうし、セラミック粒子を流動・衝突させて改質処理したものを用いた。なお、振とう機の容器を振とうさせる加速度は、セラミック粒子が水中で0.03〜0.2m/sの速度で流動するように設定した。以上の改質処理を行った処理培養液と未処理培養液(対照区)の2試験区を設けた。各培養液は1週間毎に新しいものと交換した。
栽培野菜の品質に関わる実験として、収穫後のコマツナの鮮度保持比較実験を行った。収穫後のコマツナを新聞紙1枚に包んだ状態で5℃に維持された環境制御室内に保存し、経過時間ごとに重量を測定し、水分減少率(%)=(初期重量−経過時間後の重量)÷初期重量×100を求めた。
表1は、秋期に収穫したコマツナによる水分減少率を、収穫後の経過時間毎に24時間まで比較した結果である。表中の値は、対照区、処理区とも5株×6回反復(計30株)における水分減少率(%)の平均値であり、カッコ内は標準偏差である。
よって、本実施例によれば、改質水で育成された植物は収穫後の鮮度保持力が高く、本改質水は活力増強剤としても優れていることが明らかである。
原料水として、宮崎県宮崎市の水道水を使用し、実施例1で得られたセラミック粒子を用いて改質水を以下の方法により製造した。
500mlのポリエチレンテレフタレート製の蓋付きの容器を用意し、該セラミック粒子を容器の内容積25%となるように充填した。該容器に原料水である宮崎市の水道水を内容積60%となるよう導入した後、蓋を閉め、該容器をセラミック粒子が水中で流動、相互摩擦、衝突するよう数回振って改質水を得た。なお、改質水の1H−核磁気共鳴スペクトルは図2(a)と同様のスペクトルであり、原料水の1H−核磁気共鳴スペクトルは図2(b)と同様のスペクトルであった。また、パルス核磁気共鳴装置(JNM−MU25A)(CPMG法)を用いて改質水と原料水の1H−パルス核磁気共鳴のスピン−スピン緩和時間を測定し、その緩和時間から求めた短縮率は8%であった。
1日に体内に摂取する水を原料水あるいは改質水のみとする条件で、便秘の20歳代〜50歳代の女性10名を対象に、原料水を1日に2.5Lずつ連続して1週間飲料してもらい、その後連続して1週間は該改質水を1日に2.5Lずつ飲料してもらうこととし、改質水が便秘に与える影響を調査した。その結果、摂取飲料水が改質水の場合に便秘が治ったあるいは回数が減少し、便秘解消・低減に効果が認められたと答えた女性は10名中8名であり、実験対象者全体の80%に該改質水の便秘解消・低減効果が認められた。
本実施例によれば、改質水は便秘の解消や低減にも効果があることが確認された。これは、改質水が胃腸内の異常発酵を抑制したからであると推察される。
実施例1で得たセラミック粒子3gをガラスアトマイザー(30ml容量スプレー容器、株式会社マコト製)に入れ、香川県さぬき市志度の水道水を原料水として注入し、セラミック粒子が流動し互いに衝突するように、10数回上下に振って改質水を得た。なお、改質水の1H−核磁気共鳴スペクトルは図2(a)と同様のスペクトルであり、原料水の1H−核磁気共鳴スペクトルは図2(b)と同様のスペクトルであった。また、パルス核磁気共鳴装置(JNM−MU25A)(CPMG法)を用いて改質水と原料水の1H−パルス核磁気共鳴のスピン−スピン緩和時間を測定し、その緩和時間から求めた短縮率は12%であった。
この改質水を荒れ性肌の人に噴霧しパッチングしたところ、長時間に亘って滑らかな肌を維持した。また、蚊に刺された部位に噴霧すると、如実にかゆみ止め効果を確認した。さらに、充血した眼球に噴霧すると、速やかに充血を抑制する効果を認めた。
実施例1で得たセラミック粒子20gを内容量2Lのポリエチレンテレフタレート製の蓋付きの容器に入れ、宮崎県宮崎市の対象者(男性20名)の家庭に配布した。水道水を原料水として対象者の家庭で注いでもらい、セラミック粒子が流動・衝突するように、容器を上下逆さまにする動作を10回実施し、原料水を改質処理し改質水を製造してもらった。なお、改質水の1H−核磁気共鳴スペクトルは図2(a)と同様のスペクトルであり、原料水の1H−核磁気共鳴スペクトルは図2(b)と同様のスペクトルであった。また、パルス核磁気共鳴装置(JNM−MU25A)(CPMG法)を用いて改質水と原料水の1H−パルス核磁気共鳴のスピン−スピン緩和時間を測定し、その緩和時間から求めた短縮率は10%であった。
対象者には、この改質水を使って頭髪を1回/日の頻度で洗浄してもらった。1カ月続けたところ、対象者の60%以上が発毛・増毛の効果を認めた。
Claims (1)
- 原料水中で複数のセラミック粒子を0.03〜0.2m/sの条件で流動させ衝突させることによる外的刺激が加えられて改質された改質水を主成分として含有する動物の細胞に対する細胞増殖促進剤であって、
前記セラミック粒子が、(1)BET法による比表面積が0.01〜1m 2 /g、かつ、見掛け密度が1.6〜3.5g/cm 3 、粒径が0.1〜10mmに形成され、(2)シリカ、アルミナ、アルカリ金属、アルカリ土類金属の酸化物を含有するとともに、シリカとアルミナの割合が、シリカ100重量部に対しアルミナ10〜95重量部である鉱石粉末を造粒し、焼成し製造したものであり、
重クロロホルム中、内部基準にテトラメチルシランを使用して測定した1H−核磁気共鳴スペクトル(400MHz)が、次の(a)乃至(d)の内いずれか1以上を有するとともに、前記改質水のスピン−スピン緩和時間が前記原料水のスピン−スピン緩和時間に対して5〜40%短縮されている改質水を主成分として含有していることを特徴とする動物の細胞に対する細胞増殖促進剤。
(a)主吸収ピークより低磁場側に、前記原料水には存在しなかった吸収ピークが出現したスペクトル
(b)前記原料水の主吸収ピークより高磁場側に存在した少なくとも一つの吸収ピークが消失したスペクトル
(c)前記原料水の主吸収ピークより高磁場側に存在した少なくとも一つの吸収ピークが低磁場側にシフトしたスペクトル
(d)主吸収ピークの半値幅が、前記原料水の主吸収ピークの半値幅より増大したスペクトル
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