JP5043791B2 - 鋼材のアレスト性能評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鋼材の脆性き裂を停止させる特性(アレスト特性)の評価方法に関するものである。特には、従来の評価パラメータであるKcaの代替として、鋼材の表層部近傍および板厚中央部の材料特性を考慮に入れた新たな評価パラメータを用いた評価方法に関するものである。
近年、コンテナ船は大型化が進んでおり使用される鋼板も厚肉化・高強度化が進んでいる。船体構造では脆性破壊を発生させないよう、材料選定から検査にいたるまで細心の注意が払われている。しかし、万一脆性き裂が発生した場合、き裂が停止せずに船体に致命的な損傷をもたらす危険性がある。一方、一旦発生した脆性き裂も、特別な特性を有する材料に進展すればき裂停止させることができ、そのような材料を構造として配すことにより、万一脆性き裂が発生したとしてもき裂停止させることができる。このような脆性き裂を停止させる特性をアレスト特性と呼び、評価パラメータはKcaと表される。船舶の安全性を高めるためには高いKcaが必要であり、今後はKcaを保障した鋼材が必要とされる。
Kcaは温度毎に求められるパラメータであり、通常ESSO試験により求められる。ESSO試験の概要を以下に示す。
(1)ある鋼材に対し上部にノッチを設けた試験体を製作し、その試験体を冷却して上部が低温となるように温度勾配を設定する。
(2)試験体の両端に応力がσとなるように荷重を加える。
(3)ノッチ部分にくさびを設置し、落錘等で衝撃荷重を加える。
(4)ノッチから脆性き裂が発生する。
(5)脆性き裂は進展するがある温度条件において停止する。
(6)このときの温度T、き裂長さaを測定する。
(7)σとaからK値(K=σ(π・a1/2)を計算する。
(8)KとTをグラフにプロットする。
(9)上記(1)〜(8)の実験・評価を、いくつかのσ条件(σi)で実施する。
(10)(K(=σ(π・a1/2、T)が数点プロットされる。
(11)船舶で用いられる設計温度(例えば−10℃)のときのK値を、グラフから内挿する。
(12)内挿により求められたK値がその鋼材の−10℃でのKcaと評価される。
上記の通り、Kcaを求めるためには煩雑な実験が必要となり、鋼材の出荷保証法としては適していない。この様な状況から、Kcaをより簡便に評価できる評価手法が求められている。
Kcaに関しては従来よりシャルピー試験結果を用いた評価が行われており、提案式もいくつか提案されており、非特許文献1では従来は簡易評価法としてt/4位置の脆性破面遷移温度vTrsを用いた式が提案されている(非特許文献1)。
しかし、板厚内部においては材料特性に分布があり、特に近年のように材料の厚肉化が進むにつれ板厚中央部と板厚表層部近傍の材料特性の関係は全く異なる傾向を示すことが多くなる。例えば、vTrsに代表される破壊靭性は、圧延時の冷却時間が比較的短い表層部は高靭性で、冷却時間が比較的長い板厚中央部は低靭性となる傾向があり、この傾向は厚肉化が進むにつれ高くなる。アレスト性能には板厚全体の破壊靭性特性が影響を及ぼすと考えられ、これをt/4部の破壊靭性特性のみで代表させることは困難である。しかし、板厚方向の材料特性分布を考慮したKca代替評価パラメータは現状では提案されていない。
低温用圧延鋼板判定基準、日本溶接協会、WES3003−1995 圧力技術、Vol.31、No.2(1993)、p2 日本造船学会論文集、Vol.177(1995)、p243 博士論文「TMCPによる降伏点40kgf/mm2級鋼板の実船適用にあたっての靱性要求基準に関する研究」(1990)、p.32 日本船舶海洋工学会講演論文集、Vol.3(2006)、p.359 熱処理、Vol.47、No.2(2007)、p.66
現状のように、Kcaをt/4のvTrsで整理し続けると、特に厚肉化が顕著となった場合においてKcaの評価精度が著しく低下することが懸念され、鋼材のKcaを保証するうえで大いに不都合である。本発明は、この様な状況に鑑み、鋼材の板厚方向の破壊靭性の分布を考慮に入れることにより、ばらつきを抑制できると共に、従来のESSO試験よりも簡便な評価方法を提供することを課題とするものである。
請求項1記載の発明は、鋼材のアレスト性能評価方法であって、対象鋼材を使用するにあたっての設計要件から決められる設計応力(σ)、設定温度(T)におけるき裂進展駆動力をK、前記対象鋼材の板厚中央部近傍のき裂進展に対する抵抗をKd、前記対象鋼材の表層に発生する延性破壊(シアリップ)によるき裂進展に対する抵抗をK・rとしたとき、Tにおけるき裂停止の条件を、K=Kd+K・rと設定し、rを、前記対象鋼材の板厚t、室温での降伏応力σy、シアリップ幅と塑性域寸法の比ksl、Tにおける前記対象鋼材の表層近傍の高速引張変形時の降伏応力σY1、前記対象鋼材に進展するき裂長さa、サイドリガメント長さlsl、及びシャルピー衝撃試験によって求まる前記対象鋼材の表層近傍における脆性破面遷移温度vTrsによって計算し、Kdを、Tにおける前記対象鋼材の板厚中央部近傍の高速引張変形時の降伏応力σY2、及びシャルピー衝撃試験によって求まる前記対象鋼材の板厚中央部近傍における脆性破面遷移温度vTrsによって計算し、rとKdの計算結果から求められたKの値によって前記対象鋼材のアレスト性能を評価することを特徴とする鋼材のアレスト性能評価方法である。
請求項2記載の発明は、鋼材のアレスト性能評価方法であって、対象鋼材を使用するにあたっての設計要件から決められる設計応力(σ)、設定温度(T)におけるき裂進展駆動力をK、前記対象鋼材の板厚中央部近傍のき裂進展に対する抵抗をKd、前記対象鋼材の表層に発生する延性破壊(シアリップ)によるき裂進展に対する抵抗をK・rとしたとき、Tにおけるき裂停止の条件を、K=Kd+K・rと設定し、rを、前記対象鋼材の板厚t、室温での降伏応力σy、シアリップ幅と塑性域寸法の比ksl、Tにおける前記対象鋼材の表層近傍の高速引張変形時の降伏応力σY1、前記対象鋼材に進展するき裂長さa、サイドリガメント長さlsl、及びシャルピー衝撃試験によって求まる前記対象鋼材の表層近傍における脆性破面遷移温度vTrsによって計算し、Kdを、Tにおける前記対象鋼材の板厚中央部近傍の高速引張変形時の降伏応力σY2、及びシャルピー衝撃試験によって求まる前記対象鋼材の板厚中央部近傍における脆性破面遷移温度vTrsによって計算し、rとKdの計算結果からKの値を求め、あらかじめ前記対象鋼材と同等の強度を有する鋼材において調べられている設定温度(T)におけるき裂進展駆動力Kの値とESSO試験によって求められているアレスト特性評価パラメータKcaの値との相関K−Kcaから、Kの値をKcaの値に換算することによって前記対象鋼材のアレスト性能を評価することを特徴とする鋼材のアレスト性能評価方法である。
本発明の鋼材のアレスト性能評価方法によれば、ESSO試験に比べて簡便で、且つ、従来のt/4部のvTrsのみにより整理した場合よりも精度良く、鋼材のアレスト性能を評価することができる
以下、本発明を実施形態に基づいて更に詳細に説明する。評価方法については、図1にその手順を示す。
前記したESSO試験において、試験体に応力σが加わっている場合に対し、脆性き裂がある温度Tを通過するときを考える。このときのき裂進展駆動力をKとする。この駆動力に対する抵抗としては、表層に発生する延性破壊(シアリップ)による抵抗K(なお、一般にKは、Kに比例するものと考えられることからK=K・rと記載できる。)と、板厚中央部における抵抗Kの2つがある。この2種類の抵抗がき裂停止に大きな影響を与える。これら2種類の抵抗を考慮に入れることにより、板厚方向の材料特性の分布影響を考慮に入れたより精度の高いKca評価が可能となる。
このとき、Tにおいて、き裂停止するためには下式が成り立つ必要がある。
=K+K=K・r+K
また、このときの駆動力KがTにおけるKcaと対応すると考える。上式よりKは以下のように表される。
=K/(1−r)
次に、rおよびKと材料特性の関係について説明する。前記した非特許文献2では、rは板厚表層部近傍の動的破壊靭性値KD(B)と関連があるとされている。動的破壊靭性は高速進展するき裂に対する破壊靭性値であり、一般的な破壊靭性値(Kci)とは異なるとされている。一方、非特許文献3では、高速に進展する脆性き裂も、シアリップが発生する表層近傍では極めてき裂進展速度は低下するとされている。ここで、表層近傍ではき裂進展速度はきわめて低いため、その動的破壊靭性値も通常の破壊靭性値と等価となる。これにより、rは表層近傍の破壊靭性値Kciと相関があることになる。
さらに、非特許文献3によると破壊靭性値KciはvTrsと相関があるとされており、これによりrは表層部近傍のvTrsと相関があることになる。例えば、表層部近傍の材料特性はt/4部の材料特性で代表できると考えると、rはt/4部のvTrs(vTrs(t/4))と相関があるといえる。
一方、板厚中央部の抵抗Kは同部の動的破壊靭性値であり、前記のとおり通常の破壊靭性値とは異なる。非特許文献3によると動的破壊靭性値Kは局部限界応力σと相関がある。σはき裂先端の極微小領域の引張破壊応力である。この引張破壊は結晶粒のへき開破壊と粒界の延性破壊の連続とされている。
ここで、粒界の延性破壊に対する強度(応力)は、延性破壊部が多いほど高くなると考えられる。延性破壊部は粒界が多いほど多く、すなわち結晶粒径dが小さいほど延性破壊に対する強度は高くなると考えられる。すなわち、局部限界応力σは結晶粒径dに反比例するといえる。一方、d−1/2は一般的にvTrsと比例関係にあるとされている。以上よりσはvTrsと相関があるといえる。
たとえば、板厚中央部近傍の材料特性はt/2部の材料特性で代表できるとすると、Kdはt/2部のvTrsと相関があるといえる。以上より、Kcaの代替パラメータであるKは以下の(1)式のように表される。
=K/(1−r)=f(vTrs(t/2))/(1−f(vTrs(t/4)))‥‥(1)式
(1)式のf( )、f( )はそれぞれ関数であり、例えば室温での降伏応力σ、板厚、および設計要件から得られる温度条件Tが把握できれば、vTrs(t/4)およびvTrs(t/2)の関数として定式化できる。
以下、定式化の手順について詳細に説明する。
まず、rについては、非特許文献2より下記の(2)式のように表される。
r=(4/π)+{(tsl1+tsl2)/2t}(σY1/σ)cos−1{(a−lsl)/a} ‥‥(2)式
以下に、この(2)式で用いるパラメータについて説明する。tsl1、tsl2:表層部(表層面は上下2面あるのでパラメータも2つ)の延性破壊(シアリップ)の幅であり、単位はmmであり、下記の(3−1)式、(3−2)式のように表される。:
sl1=ksl・rp1‥‥(3−1)式
sl2=ksl・rp2‥‥(3−2)式
ここで、kslは係数であり、非特許文献3よりksl=2とする。
また、rp1、rp2は各表層部近傍に発生した塑性域寸法であって単位はmmであり、下記の(4−1)式、(4−2)式のように表される。
p1=1/6π・(KD(B1)/σY1‥‥(4−1)式
p2=1/6π・(KD(B2)/σY1‥‥(4−2)式
ここで、KD(B1)、KD(B2)は各表層部近傍の動的破壊靭性値であり、単位はMPa・mm1/2である。非特許文献3によるとシアリップ発生部ではき裂進展速度は極めて低速とのことから、通常の破壊靭性値Kciと同等とする。すなわち、下記の(5)式のとおりである。
=Kci‥‥(5)式
破壊靭性値Kciは、前記した非特許文献4により下記(6)〜(8)式のようにvTrsとの相関が示されている。
ci=3.81×(σy0/9.8)・exp{k(1/iT−1/T)}‥‥(6)式
=6.65・iT−290‥‥(7)式
iT=(0.00321×σy0/9.8+0.391)vTrs+2.74(t)1/2+17.3‥‥(8)式
ここで、板厚t=60mm、降伏応力σy0=500MPaの鋼材を具体例に、応力σでESSO試験を実施した場合に、船舶等の設計要件から得られる温度条件TでのKを定式化してみる。ちなみに船舶の場合、設計要件から得られる温度条件Tは0〜−10℃の場合が多いことから、ここでは、T=−10℃とする。また、ESSO試験では様々な応力条件下で実験が行われるが、応力が低すぎるとき裂進展量は、極めて小さくT=−10℃の温度部まで、き裂進展しない可能性が高い。従って、十分に高い応力とする必要がある。船舶の場合、設計要件から設計応力が決められることが多く、この設計応力でのき裂停止性能を把握することが最も合理的である。そこで、ここでは、ABS規格(アメリカ船級協会規格)EH40に対する設計使用応力(前記した非特許文献5に記載)を用いてσ=252MPaとする。
このような例の場合、vTrsとKciの関係は、図2に示すようになる。この関係より、表層部のKci(Kci(B))を用いて下記の(9)式が得られる。
D(B)=Kci(B)=−92vTrs+32700 ‥‥(9)式
なお、前記した(2)式のσY1は、温度To(=−10℃)における鋼材表層近傍の高速引張変形時の降伏応力で、単位はMpaである。表層近傍のき裂進展速度に依存し、同速度を非特許文献3に基づき100m/secとすると、降伏応力σY1を非特許文献3のFig11(b)よりσY1=800MPaが得られる。また、(2)式で示す(a−lsl)/aにおいての、aはき裂長さ、lslはサイドリガメント長さであり、ともに単位はmmである。非特許文献3によるとサイドリガメント長さlslは10〜20mm程度となる。一方、通常のESSO試験でのき裂長さaは300mm程度となることが多いことから、(a−lsl)/aはおよそ0.95程度となる。
以上により、rは以下の(10)式のように定式化される。
r=3.288×10−9{(−92vTrs+32700)+(−92vTrs+32700)}/2‥‥(10)式
なお、ここでのvTrs、vTrsは鋼材上下面の各表層近傍の材料のvTrs(vTrs(表層部1の近傍)、vTrs(表層部2の近傍))となる。例えば、前述の通り、表層部1近傍のvTrsがt/4部のvTrs(vTrs(t/4))と同等、表層部2近傍のvTrsが3t/4部のvTrs(vTrs(3t/4))と同等、と考えると以下の(11)式となる。
r=3.288×10−9{(−92vTrs(表層部1の近傍)+32700)+(−92vTrs(表層部2の近傍)+32700)/2
=3.288×10−9{(−92vTrs(t/4)+32700)+(−92vTrs(3t/4)+32700)/2 ‥‥(11)式
以上が、rの具体的な定式化例であるが、rの定式化については以下のように理解することができる。すなわち、rは以下のような関数である。
r=f’(tsl1、tsl2、σY1、σ、(a−lsl)/a)
=f’(KD(B1)、KD(B2)、ksl、σY1、σ、(a−lsl)/a)
=f’(vTrs(t/4)、vTrs(3t/4)、σy0、T、t、ksl、σY1、σ、(a−lsl)/a)
ここで、パラメータは以下のように求められる。
vTrs(表層部1の近傍)、vTrs(表層部2の近傍):表層近傍の破面遷移温度、鋼材から採取。
t :鋼材の板厚、鋼材から採取。
σy0:鋼材の室温での降伏応力、鋼材から採取。
:設計要件から得られる温度条件である。
σ:設計要件から得られる負荷応力条件である。
sl:シアリップ幅と塑性域寸法の比、一般的な鋼材に対し非特許文献3などに示されている。
σY1:Toにおける鋼材表層近傍の高速引張変形時の降伏応力、一般的な鋼材に対し非特許文献3などに示されている。
(a−lsl)/a:aはき裂長さ、lslはサイドリガメント長さ、一般的な鋼材に対し非特許文献3より類推できる。
以上より、設計要件から求められる値と、従来文献から得られる値を除くと、 r=f’’(vTrs(表層部1の近傍)、vTrs(表層部2の近傍)、σy0、t) となり、あるσy0およびt条件に対し、r=f(vTrs(表層部1の近傍)、vTrs(表層部2の近傍))と表すことができる。
次にKdの定式化の手順について詳細に説明する。非特許文献3より、Kは以下の(12)式のように定式化される。
σ=σY2・Σyy{(1−ν)(K/σY2/r−s‥‥(12)式
以下に、この(12)式で用いるパラメータについて説明する。
σY2:温度T(=−10℃)における板厚中央部近傍の高速引張変形時の降伏応力で単位はMpaである。板厚中央部のき裂進展速度にも依存し、同速度を600m/sec(標準的なESSO試験で得られるき裂進展速度)とすると、非特許文献3Fig11(b)より800MPaとなる。
ν :ポアソン比であり0.3である。
:局部領域を表す定数であり、単位はmm、非特許文献3より0.3mmとした。
−s:応力特異性の強さを表す指数であり、ここでは−10℃、き裂進展速度600m/secでの−sを非特許文献3Fig11(c)より0.08とした。
Σyy:応力の強さを表す係数であり、非特許文献3よりΣyy=4とする。
σ:局部限界応力であり、単位はMPa、前述のとおり、粒径dを用いると1/d(=(−A・vTrs+B))と比例すると考えられる。ここで、A,Bは、前記した非特許文献6から、A=3、B=1000とする。vTrsの単位はKである。さらに非特許文献3よりσは4000〜4500MPaまでの値になるとし、それがvTrsの変化(273〜263K)に対応すると仮定すると、下記の(13)式のように表される。
σ=2.25×10−2vTrs−15vTrs+6418‥‥(13)式
以上より、Kは以下の(14)式のように定式化される。Kの単位はMPa・mm1/2である。
=5.68×10−20(2.25×10−2vTrs−15vTrs+6418)6.25‥‥(14)式
なお、ここでのvTrsは板厚中央部近傍の材料のvTrs(vTrs(板厚中央部近傍))となる。例えば、前述のとおり板厚中央部近傍のvTrsがt/2部のvTrs(vTrs(t/2))と同等と考えると以下の(15)式となる。
=5.68×10−20(2.25×10−2vTrs(板厚中央部近傍)−15vTrs(板厚中央部近傍)+6418)6.25
=5.68×10−20(2.25×10−2vTrs(t/2)−15vTrs(t/2)+6418)6.25‥‥(15)式
以上が、Kdの具体的な定式化例であるが、Kdの定式化については以下のように理解することができる。すなわち、Kdは以下の様な関数である。
=f’(σ、σY2、rc、ν、−s、Σyy
=f’(vTrs(板厚中央部近傍)、σY2、r、ν、−s、Σyy
ここで、各パラメータは以下のように求められる。
vTrs(板厚中央部近傍):板厚中央部近傍の破面遷移温度。鋼材から採取。
σY2:Toにおける板厚中央部表層近傍の高速引張変形時の降伏応力、一般的な鋼材に対し非特許文献3などに示されている。
:局部領域を表す定数、一般的な鋼材に対し非特許文献3などに示されている。
ν :ポアソン比、一般的な鋼材に対し0.3とされている。
−s :応力特異性の強さを表す指数、一般的な鋼材に対し非特許文献3などより類推できる。
Σyy:応力の強さを表す係数、一般的な鋼材に対し、非特許文献3などに示されている。
以上より、従来文献および従来知見から得られる値を除くと、K =f(vTrs(板厚中央部近傍))と表すことができる。
以上のように定式化されたr及びKdにより、Kcaの代替評価パラメータKは以下の(16)式にように表すことができる。
=K/(1−r)
=5.68×10−20(2.25×10−2vTrs(板厚中央部近傍)−15vTrs(板厚中央部近傍)+6418)6.25/[1−3.288×10−9{(−92vTrs(表層部1の近傍)+32700)+(−92vTrs(表層部2の近傍)+32700)}/2]
=5.68×10−20(2.25×10−2vTrs(t/2)−15vTrs(t/2)+6418)6.25/[1−3.288×10−9{(−92vTrs(t/4)+32700)+(−92vTrs(3t/4)+32700)}/2]‥‥(16)式
なお、以上の計算過程においては、鋼材の上下面のそれぞれの表層部近傍を別個に評価したものであるが、鋼材の特性が上下面にあまり差がない場合には代表して一面の値(vTrs(t/4))を使用して計算に用いることも可能である。その場合、上記(16)式は下記(16)’式のように変形される。
=5.68×10−20(2.25×10−2vTrs(t/2)−15vTrs(t/2)+6418)6.25/(1−3.288×10−9(−92vTrs(t/4)+32700))‥‥(16)’式
以上のようにして求めたKの代替評価パラメータとしての妥当性を、ESSO試験により求めた評価パラメータKca及び従来の簡易評価法である鋼材のt/4部のvTrsのみによる整理結果と比較した。
まず、JIS規格SM570に準拠する4鋼材(鋼種A〜D)に対して、前述のESSO試験を行いKcaを求めた。さらに、シャルピー試験を行いt/4およびt/2部のvTrsを求めた。得られたt/4およびt/2部のvTrsを前記Kの(16)式に当て嵌めてKの計算を行うと共に、t/4部のvTrsのみによる整理も行った。t/4およびt/2部のvTrs、Kca及びKの結果は表1に示す通りである。
Figure 0005043791
また、図3に、従来のt/4部の脆性破面遷移温度vTrsとアレスト特性の評価パラメータKcaの相関を、図4、図5に、本発明の代替評価パラメータKとアレスト特性の評価パラメータKcaの相関を夫々示す。図中の実線はデータ点から得られた近似式、破線はばらつきの上限と下限である。図3〜図5から明らかなように従来の方法ではばらつきが大きく、Kcaとの相関において最大で50%程度のばらつきが発生する。一方、代替評価パラメータKではばらつきは極めて小さく(10%以下)、特に表層部1及び表層部2を共に考慮した場合(図5)に、Kcaと精度良く相関していることが分かる。
従って、代替評価パラメータKを用いれば、ESSO試験に比べて簡便で、且つ、従来のt/4部の脆性破面遷移温度vTrsのみにより整理した場合よりも精度良く、アレスト性能を評価できることが分かる。
また、図5に示すデータからKcaと発明式(K)の関係は以下の(17)式のように表すことができる。
Kca=2/3・K ‥‥(17)式
以上の実験のように、同程度の強度レベルを有する鋼材で、KとKcaの相関を予め調べておくことができれば、測定対象の鋼材のKを測定することで、Kca値の予測も可能となる。なお、本近似式はさらにデータベースを増やすことによりさらに精度の高い近似式となる。
本発明のアレスト性能評価の手順を示す説明図である。 脆性破面遷移温度vTrsと破壊じん性値の関係を示す説明図である。 従来のt/4部の脆性破面遷移温度vTrsとアレスト特性の評価パラメータKcaの関係を示す説明図である。 本発明の代替評価パラメータKとアレスト特性の評価パラメータKcaの関係を示す図で、表層部1或いは表層部2のみで計算した説明図である。 本発明の代替評価パラメータKとアレスト特性の評価パラメータKcaの関係を示す図で、表層部1及び表層部2を共に考慮して計算した説明図である。

Claims (2)

  1. 鋼材のアレスト性能評価方法であって、
    対象鋼材を使用するにあたっての設計要件から決められる設計応力(σ)、設定温度(T)におけるき裂進展駆動力をK、前記対象鋼材の板厚中央部近傍のき裂進展に対する抵抗をKd、前記対象鋼材の表層に発生する延性破壊(シアリップ)によるき裂進展に対する抵抗をK・rとしたとき、Tにおけるき裂停止の条件を、K=Kd+K・rと設定し、
    rを、前記対象鋼材の板厚t、室温での降伏応力σy、シアリップ幅と塑性域寸法の比ksl、Tにおける前記対象鋼材の表層近傍の高速引張変形時の降伏応力σY1、前記対象鋼材に進展するき裂長さa、サイドリガメント長さlsl、及びシャルピー衝撃試験によって求まる前記対象鋼材の表層近傍における脆性破面遷移温度vTrsによって計算し、
    Kdを、Tにおける前記対象鋼材の板厚中央部近傍の高速引張変形時の降伏応力σY2、及びシャルピー衝撃試験によって求まる前記対象鋼材の板厚中央部近傍における脆性破面遷移温度vTrsによって計算し、
    rとKdの計算結果から求められたKの値によって前記対象鋼材のアレスト性能を評価することを特徴とする鋼材のアレスト性能評価方法。
  2. 鋼材のアレスト性能評価方法であって、
    対象鋼材を使用するにあたっての設計要件から決められる設計応力(σ)、設定温度(T)におけるき裂進展駆動力をK、前記対象鋼材の板厚中央部近傍のき裂進展に対する抵抗をKd、前記対象鋼材の表層に発生する延性破壊(シアリップ)によるき裂進展に対する抵抗をK・rとしたとき、Tにおけるき裂停止の条件を、K=Kd+K・rと設定し、
    rを、前記対象鋼材の板厚t、室温での降伏応力σy、シアリップ幅と塑性域寸法の比ksl、Tにおける前記対象鋼材の表層近傍の高速引張変形時の降伏応力σY1、前記対象鋼材に進展するき裂長さa、サイドリガメント長さlsl、及びシャルピー衝撃試験によって求まる前記対象鋼材の表層近傍における脆性破面遷移温度vTrsによって計算し、
    Kdを、Tにおける前記対象鋼材の板厚中央部近傍の高速引張変形時の降伏応力σY2、及びシャルピー衝撃試験によって求まる前記対象鋼材の板厚中央部近傍における脆性破面遷移温度vTrsによって計算し、
    rとKdの計算結果からKの値を求め、
    あらかじめ前記対象鋼材と同等の強度を有する鋼材において調べられている設定温度(T)におけるき裂進展駆動力Kの値とESSO試験によって求められているアレスト特性評価パラメータKcaの値との相関K−Kcaから、Kの値をKcaの値に換算することによって前記対象鋼材のアレスト性能を評価することを特徴とする鋼材のアレスト性能評価方法。
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